Coolier - 新生・東方創想話

第二次春雪異変

2009/11/22 22:07:46
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「本当に、闘わなくてはならないのね……?」
桃色の亡霊が、もう八分咲ほどになった桜を背にし、悲しそうにに問いかけた。
「ええ、それが私……博麗の巫女の存在理由だから」
札を持ち、針を構えた巫女がそれに答える。
「霊夢さん!」
妖夢が悲痛な声を上げるが、巫女はもう答えない。ただ、眼前の敵を睨みすえるだけである。


そして、霊夢は唐突に動き出した。針を牽制に投げ付け、一気に距離を詰めようと地面を蹴る。
対して幽々子は半歩だけ右に動いて針をやり過ごし、逆に突っ込んでくる霊夢の足元に向けて光弾を放つ。
霊夢はその着弾地点を越えるように前方に跳び、さらに針を飛ばす。弾を撃ってすぐ、さらに距離をとっていた
幽々子は、空中の霊夢に向かって死へと誘う必殺の蝶をけしかける。
霊夢が不吉な蝶に取り囲まれ、その姿が確認出来なくなり、その場にいた全員が息を呑んだ次の瞬間、凄まじい
閃光がその中心から迸った。霊夢の十八番、夢想封印である。

傍目には、一進一退の攻防に見えたし、霊夢自身も初めはそう思っていた。しかし、幾つかの重要な事実が、
霊夢の頭からは抜け落ちていた。

一つは、これは「弾幕ごっこ」ではないということ
もう一つは、実体を持たない亡霊相手では、徒手格闘が意味を為さないということ

数十分後、その失敗は、誰の目にも明らかなほどに肥大化していた。
片や、ほぼ無傷な西行寺の亡霊。
片や、全身が薄汚れ、何とか立っていられる程度にまで削られた博麗の巫女。

「貴女、まだやるつもり?今度こそ、本当に死ぬわよ?」
「うるさい!私は、博麗の巫女は、絶対に負けるわけにはいかないのよ!」
ふらふらの体で、霊夢はなおも武器を構えようとする。


「もうやめたらどうだ?」
そんな霊夢を見かねたか、屋敷から白黒の帽子を被ったままの魔理沙が出てきて、言った。
その魔理沙の言葉に、霊夢は振り返り、
「どうしてよ!?目の前で異変が起きているのに……って、え?」
目を疑った。
屋敷から覗く、顔、顔、顔。誰もが例外なく、頬を赤く染めている。
それらに、霊夢は見覚えがあった。
いつの間にやら霊夢の背後に立っていた紫が、一言
「落ち着いて、地上の様子を思い返してみなさい」
霊夢の脳裏には、出発する直前の地上の様子。
春だというのに全く咲くそぶりを見せようとしない、神社の桜。
そして、
「ま、まさか……」
今にも雨が降り出しそうな、どんよりした空。もし雨が降り出したら、桜の花など瞬く間に散ってしまっていただろう。
「……だからね、紫に頼まれて、春度を一時避難しておいたのよ。そしたら、みんなどうして気がついたのかぞろぞろと集まってきちゃって……」
幽々子がすまなさそうに言う。霊夢は呆然としながら、
「つまり、私の、」
「そうよ、貴女の早とちり」
紫が嬉しそうに続ける。
「なんてことなの……」
あまりのことに気力も底を尽き、がっくりと膝をつく霊夢。だが、
「私にも酒を寄越せええええええええええ!」
直ぐに立ち直ると、屋敷へと駆け込んでいくのであった……。
初めましてでした、さとうとしおと申します。

実力不足と描写の矛盾でとても痛々しいものが出来上がりましたが、
意図した意外性が伝わっていることを願います。
さとうとしお
[email protected]
https://twitter.com/sugarAsalt
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