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「霊烏路空、神妙にお縄につけい!」
間欠泉管理センターに突然あらわれてこんなことをほざいているのは、岡っ引きではなく東風谷早苗である。
「うにゅ? なに? え?」
言われたほうは状況が飲み込めなくても仕方がなかろう。
そもそも、お縄につけといきなり言われて心当たりがあるほうが珍しい。
「ついてくればいいのです!」
「怒られるからやだ」
管理センターは空の仕事場である。そこを勝手に離れれば怒られるのは当然。
空の意見は至極まっとうな意見である。
しかし、早苗は聞く耳をもたなかった。
「関係ありません。それに私は神奈子様の風祝です。だから怒られません」
「えっ? 神奈子って誰?」
また忘れたようだ。
空の記憶は新しい記憶が古い記憶をところてん方式で押し出していくらしい。
そして、新しい記憶が押し出されるのに一週間とかからない。
つまり、一週間ぶりに会った場合はもはや知らない人になっているから注意が必要だ。
この間はさとりのことを忘れていた。
「いいからきなさい!」
「ああ、もう! ロイヤルフレア!」
と言いながら、空は通常弾を放った。
いつからここは図書館になったのだろう、と早苗は思った。
「ふん、この超時空風祝☆東風谷早苗@神にそんな弾幕が通用するとでも思っているのですか?」
早苗が迎撃態勢をとる。しかし、遅かった。
空から発射される高速の黄弾にあっさりと被弾した。
「ざ、残機はまだあります!」
気を引き締めなおした早苗が、今度は順調に避けていく。
早苗は蛙を投げつけながらいくつかのスペルを取得した。
空があらたなスペルカードを発動し、赤玉を発射する。
早苗はそれが自機狙いだと判断すると、小さく避けた。しかし、その瞬間である。その赤玉は爆発し、早苗は被弾した。
「く、まさかここで一機失うとは思いませんでした。でも、次でラスト。なんとか避けますよ」
空が最後のスペルカードを宣告する。そして、赤弾をばらまき警告音を発した。
「ウィー、ウィー、ウィー」
「あ、それって口で言ってたんですね」
「経費削減しろってさとりさまに怒られたから」
地霊殿の財務状態はあまり良くないようだった。
きっと、さとりがペットを拾いすぎるのだろう。
最近も虎を拾ったらしい。
そして、早苗は無駄口を叩いている場合ではなかった。
早苗の体がどんどん空のほうへと引っ張られていく。
「え? なんですかこれ?」
早苗は状況把握が追いつかず、あえなく被弾し満身創痍となった。
「コンティニューする?」
勝ち誇っている空に早苗は「はい」を選択する。
空は強い。しかし、早苗は根気強くコンティニューを繰り返しなんとか空を倒した。
「easyモードクリアです! さぁ、ついてきてください!」
「んー、わかったよ。でもどこに行くの?」
「次ぎは雲の中です!」
というと早苗は空を連れて空高く舞い上がっていった。
雲に突入するなり、涼むまもなく早苗が叫ぶ。
「天子がくるぞー」
「うにゅ? なにそれ?」
「竜宮の使いを呼び出す魔法の呪文です!」
「いやいや、そんなものありませんよ」
キャーイクサーン!
「ほれ、出てきました!」
衣玖は雲の中に誰か来たから様子を見に来ただけである。
呪文は関係ない。
第一、天子が来たら、衣玖は逃げる。
「まぁ、いいでしょう。それで何の用ですか?」
「大人しく煎じられなさい!」
「いや、意味がわかりません」
もっともである。これで意味がわかるのは地下のさとり妖怪ぐらいだ。
「いいから、ライスシャワーです!」
伝わらない。
「問答無用ということですか。ならばこちらも手加減しませんよ?」
伝わった。空気を読む能力も侮れない。
「え? えと、easyでお願いします」
現人神はひよった。が、衣玖は甘えを許さない。
「いいえ、認めません。lunaticです!」
密度の濃い弾幕が早苗に襲い掛かる。
早苗はひとつもスペルをとることなく、ボムを撃つことすらできずに満身創痍となった。
「コンティニューしますか?」
早苗は、衣玖の問いにもこう答えるしかなかった。
「・・・・・・いいえ」
「もう諦めるのですか?」
「うう、悔しい。でも、lunaticは無理です」
「そうですか。何の用事だったのか結局わかりませんでしたが、大人しく帰ってくれますね?」
「はい、ごめんなさい」
早苗は途方にくれた。
崇高なる目的を達成するために必要なファクターを一つ失ったのだから。
「困りましたね。どうしましょうか?」
空が帰りたそうに早苗を見ている。
「だめです。目的を達成するまでは帰しません」
空の希望はあっさりと踏みにじられた。
青い巫女と地獄の鴉が連れ立ってふらふらと飛んでいると、いつの間にか霧の湖上空まで来た。
そんな一人と一羽の前に飛び出してきたのは、夏に大人気の妖精、チルノである。
チルノの弾幕は納涼によい。夏場は紅巫女やらメイドやら魔法使いやら転生娘などが、弾幕ごっこや鬱憤晴らしにやってくる。
早苗も涼んでいくことにした。
「ここはあたいの縄張りだ。ここに来たということは、あたいに挑戦しにきたんだな」
涼みたいだけです、と早苗は言いそうになる。しかし、ここは調子を合わせておくほうが都合がいい。
早苗は斜に構え、ハンペン状のものでチルノを指す決めポーズをとった。
「最強のチルノさんを倒して最強の称号を戴きます!」
デレッデレー デレッデレー デッデッデレデレ デレーレ
早苗の脳内ではこんな感じの音楽が鳴っている。
「よし、ならば弾幕で勝負!」
「望むところです」
「アイシクルフォール !」
アイシクルフォール。今や弾幕ごっこをしたことのない者でも知っている程の超有名スペルである。
「ふふ、これは知っていますよ! 目の前ががら空きです!」
早苗はチルノに張り付いた。が、次ぎの瞬間目を疑った。
チルノから5way弾が発射されたのだ。
突然目の前に現れた黄弾に早苗は反応できない。
早苗は被弾した。
「どうしてですか? アイシクルフォールは目の前が安地だって聞いたのに・・・・・・」
「あ、それeasyモードだけのサービスだから」
チルノが可愛そうな人を見る目つきで早苗を見る。
今回はnormalモードであった。
早苗はeasyシューターでありながら、妖精が相手だからと見栄を張ってしまったのだ。
「そうだったのですか!うう、騙されました」
「今時誰も引っかからないって」
normalモードの世界。それは早苗には厳しかった。
厳しかったが、開き直った早苗はボムを連発し、チルノを倒した。
早苗はせっかく勝ったので、チルノに一応質問してみることにした。
「チルノさん、龍を知りませんか?」
「龍? 人里に像のあるやつ?」
「そうです。龍を探しているのです」
「龍だったらなんでもいいの?」
「はい。龍だったらなんでもいいのです」
「だったらあっちにいるよ」
というとその方向をチルノが指さす。
「あっちですね」
早苗は方向を確認すると空を連れて飛んで行った。
チルノの指差す方向には悪魔の館、紅魔館があった。
「紅魔館に龍なんていたのでしょうか?」
そんなことを考えながら、早苗は門前に降り立った。
その早苗達にいきなり怒鳴りつける者がいた。紅魔館の門番紅美鈴である。
「なにやつ!」
「見つけた!」
早苗は美鈴を見ると目を輝かせた。
美鈴の帽子には龍の文字がある。
「侵入者は全て排除します」
「ちょっとついてきてください」
「紅魔館はこの紅美鈴が守る!」
「うにゅ?」
いまいちかみ合わない会話に空が混乱をきたした。
「もう、わけわかんない。ギガントフレア!」
空が放ったその弾幕で、見事に紅美鈴を撃破した。
まさに瞬殺であった。
空が飲み込んだ八咫烏の力は、やはり凄まじいものであった。
「よくやりました、空さん。さぁ、美鈴さん、ついて来てください」
「え? あの、私はここを動くわけにいかないのですけど」
門番をしているのだから当然である。
勝手に出かけて職務放棄すれば、あとでどんなお仕置きが待っているかわからない。
咲夜に叱られるだけならいい。レミリアの興が乗ってしまえば、何をされるかわかったもんじゃない。
過去にはバニースーツでの門番を一週間強制させられたこともあった。美鈴の脳裏に数々の悪夢が甦る。
そんな美鈴に早苗は決定打を放つ。ハンペンで口元を隠し、笑みを浮かべてこう言い放ったのだ。
「スペルカードルールは全てを決定づけるのよ。それはそれは残酷なことですわ」
ご丁寧に声色まで似せて行われた宣告に、美鈴はうなだれるしかなかった。
美鈴はせめて近くのメイドに言付けたかった。しかし、早苗はその猶予すら与えてくれなかった。
早苗は空と美鈴を守矢神社へと連行してきた。
早苗は風呂を準備すると二人に入浴を勧める。
「あの、お風呂に入るのはいいんですけど、これ何ですか?」
美鈴が疑問に思うのも無理も無い。
風呂の湯が緑色の濁り湯であり、浴室には独特な匂いが立ち込めていた。
「入浴剤を入れたのです」
「うにゅよくざい?」
早苗は空を無視して美鈴に説明をする。
「これを入れると温泉になるんです」
「へぇ、いいですね。今度咲夜さんに教えてあげよう。でも、この匂いってお茶ですよね?」
「カテキンはお肌にいいのです!」
「そうなんですか? 初めて聞きますけど、外の世界では常識なのでしょうか?」
「そうですよ。だからちゃっちゃと入ってください。あ、美鈴さんは帽子被ったままで入ってくださいね」
美鈴と空を風呂に押し込むと、早苗は神奈子と諏訪子を呼びにいった。
神奈子が聞く。
「早苗、どうしたんだ?」
「浴室についてきてください」
今度は諏訪子がニヤニヤしながら聞く。
「何? 一緒に風呂に入ってくれっていうのかい?」
「それは後でお願いします」
二柱はとりあえず、早苗についてきた。
早苗は二柱を連れ浴室の前にくると、戸を思い切りあけた。
「ジャーン!」
浴室には当然、空と美鈴が入浴している。
しかも、美鈴は入浴中にも関わらず帽子を被っている。
その妙な光景を目の前にして、神奈子も諏訪子も状況が飲み込めない。
そこへ得意げに早苗が告げる。
「烏と龍が入ったお茶、烏龍茶です!」
沈黙が支配し、浴室は凍てついた。納涼にも程がある。
この日、寒さに誘われて出てきたレティ・ホワイトロックが、「急に冬がきたので」と霊夢に退治された。
extra start
美鈴は守矢神社で緑茶風呂を堪能し、結局、早苗の手料理までご馳走になった。
早苗の渾身のギャグが滑ったこと意外は、美鈴も空も楽しい時間を過ごす事ができた。
美鈴はそんな守矢神社の平和さを少し羨ましく思ったりもした。
そして、お肌つやつやでいい感じにほろ酔いの美鈴は、恐る恐る紅魔館に帰ってきた。
その紅魔館の門前ではメイド長である十六夜咲夜と主レミリア・スカーレットが出迎えていた。
美鈴は絶望した。レミリアがそこに居る時点でろくなことにはならないのだから。
「さて、美鈴。言い訳を聞こうかしらね?」
咲夜が美鈴を睨み付け、美鈴に釈明を求める。
咲夜はレミリアの手前厳しい表情こそ見せているが、これは救済措置であった。
美鈴が筋のとおる説明さえしてくれれば、仲裁に入るつもりなのだ。
咲夜が普段真っ先に美鈴を叱るのも、レミリアの気まぐれにつき合わされずに済むようにとの配慮である。
しかし、そういった咲夜の意図は美鈴には伝わっていない。
気を使う程度の能力も気を使われることには役に立たないのだろう。
「あの、早苗さんがですね」
美鈴がことの顛末を正直に説明する。
説明が進むにつれて、咲夜の表情に諦めが浮かぶ。
咲夜としては嘘をついてでも、まともな言い訳をして欲しかった。
レミリアをなだめる手がかりが欲しいだけなのだから。
「美鈴、あなた」
咲夜が小さく溜息をつく。
「早苗についていく必要はどこにもないわよね」
「え?」
「そもそもあなたは早苗と弾幕ごっこをしていない」
「あっ!」
今さら気付いても後の祭りである。
「そして、早苗が必要だったのは、貴方の帽子だけ」
「そ、そうですね、はい」
美鈴がうなだれた。
「あなたに情状酌量の余地はない。お嬢様、どのようにいたしましょうか?」
こうなってしまっては仕方が無い。咲夜がレミリアに伺いを立てる。
レミリアの羽が異様に広がる。何かとんでもないことを思いついたときの癖だ。
美鈴は最悪の事態であると理解せざるを得なかった。咲夜は美鈴に同情することしかできない。
そして、レミリア裁判長の判決が下される。
「美鈴、あなたは暫く旅に出なさい」
「え?」
「星の入った玉を七つ集めるまで帰ってこなくていいわ」
そう宣告すると、レミリアはさっさと自分の部屋に戻っていった。
レミリアは天狗の漫画に毒されていた。しかも冗談で言っているわけではなさそうであった。
美鈴は観念し、すぐに支度をして旅立った。
七つ揃えるとどんな願いでも叶うという不思議なアドベンチャーに。
「咲夜、美鈴は帰ってきた?」
美鈴が旅立ってから数ヶ月。レミリアは目を覚ます度にそのことを咲夜に聞いていた。
「いえ、まだ帰ってきておりません」
そう聞くとレミリアの羽がたれる。落胆しているのだ。
「あの、お嬢様。よろしければ美鈴を探して連れ戻して参りますが?」
咲夜が助け船を出す。
実際、咲夜はある程度美鈴の消息を掴んでいた。
咲夜の持つ妖精達のネットワークをフル活用すれば、それぐらいは容易いことであった。
もっとも、妖精達の伝達能力は、玉兎達のそれと比べてもはるかに劣るのであるが。
レミリアはその咲夜の助け船を一撃で破壊する。
「連れ戻さなくていいよ」
レミリアの意志はかたかった。こう返されてしまうと咲夜としては困ってしまう。
咲夜は美鈴に早く帰ってきて欲しい。しかし、動きようがない。
レミリアが毎日わくわくしながら美鈴の帰りを待っている。それだけが救いだった。
咲夜はそんなレミリアの様子を毎日見ているうちに、レミリアが大切な願いを抱いているのだと、次第に考えるようになっていった。
そして、そのことは妖精を通じて美鈴にも伝えた。
その美鈴は出立以来ずっと落ち込んでいた。
しかし、妖精から咲夜の伝言、相当話が大きくなっていたであろう伝言を聞き、気を取り直して精力的に捜索した。
愛らしき我が主レミリアの為に、紅魔館の明るい未来の為に、そして、幻想郷のすべての住人の幸せの為に。
そして、美鈴の旅立ちから数年が過ぎた、ある夏の日。美鈴は見事七つ集めて帰ってきた。
レミリアが歓喜して羽をばっさばっささせながら、美鈴を出迎える。その喜びようは尋常ではなかった。
食べかけのプリンを放り出してまで出迎えに行ったのだから。
咲夜は美鈴からその玉を受け取り、庭に七つ並べた。
「それではお嬢様、呼び出しますよ」
レミリアの表情が期待感で満ち溢れ、羽がせわしなく動く。
咲夜はレミリアの願いに期待した。
レミリアがこれほど待ち望んでいた願いであり、美鈴にこれほどまでの苦労をしいたのだ。
何か素晴らしい願いを言ってくれるはずだ、と咲夜は思っていた。
紅魔館の皆が幸せになれるような素晴らしい願いを。
「願いを言え」
玉から出てきた何かが偉そうに言う。
咲夜は緊張した面持ちで見守る。
美鈴はこれで苦労が報われると、感慨に浸っていた。
そして、レミリアは羽をピンと伸ばして願いを伝える。
「巫女のドロワおくれ」
空からドロワが一枚、ひらりひらりと舞い降りてきた。
咲夜唖然。美鈴呆然。
紅魔館は静まり返り、はいてない巫女に退治された冬の妖怪のピチューン音だけが響き渡る。
「え? あの、面白くなかった? あの、パロディーなんだけど」
レミリアの羽が所在無げにもぞもぞしている。
咲夜は主の問いには答えず、美鈴にナイフを渡した。
今日も平和なんだな。って強く思った。
明日もたぶん幻想郷は平和なんだな。って確信した。
これぞ幻想郷。
美鈴のいたたまれなさが全て持ってった……
ギガントフレアとかいうのはありません。
そして懐かしいサクサク落ち
ロイフレはただのネタでしょ
ギガントもネタだと思うし
ネタにマジレスいくない
ドラゴンボールは実在したというの…か?
このままでは戦闘力53万とかが幻想郷に来襲してしまうッ!
妙につぼにはまった。
そしてカオスぶりもまたよいものだww
お寺に帰してあげてくださいw