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「遊びに来たの~」
「帰れ」
竹林丁妹紅宅、早朝にそこを訪れた客が一人。
「何の用かしら、西行寺幽々子殿」
「天敵を放置しておくわけにはいかないの、藤原妹紅さん」
早朝朝早くから火花を散らす二人、
それは不死人と不生人の戦いの始まりでもあった。
「とりあえず、お茶でも飲む?」
「桶でお願いするわ」
「……ほう」
妹紅がお茶を勧めたかと思うと、湯飲みに桶を要求、
ひとまず先制攻撃と行ったところである。
「悪いな、今手ごろな入れ物が鍋しか無いんだ」
「……ふふ」
だがしかし妹紅も負けてはいない、
黒光りした鍋に並々と注がれたお茶の海、
見事なまでの返し技だ。
「遠慮しないで飲んで飲んで」
「ええ、いただくわ」
「いいお茶だから、残さないでね、勿体無いから」
「ご馳走様」
「なっ!?」
だが幽々子はそれを難なく飲み干した、
それも一瞬の内にである。
「あ、やっぱりもう一杯いただけないかしら? 勿論このお鍋で」
「……面白いじゃないか」
お茶など一滴も残っていない鍋を返し、お得意の微笑を浮かべる幽々子、
妹紅も対抗するように笑みを浮かべると、鍋を乱暴に持ち上げて台所へと下がる。
「(さて、どう来るかしらね……予想としては熱いお茶なのだけど)」
幽々子の脳裏に浮かんだのは、鍋一杯に煮えたぎるお茶、
嫌がらせとしては基本ではありながらも、その量から効果は高い。
「はい、お待ちどう」
「……なっ!」
しかし、妹紅はその思考を上回る。
「藤原家名物、葉茶だ」
「……お茶が一割にお茶の葉が九割」
「お茶の味、とくとご堪能あれ」
鍋一杯のお茶の葉、そして僅かににじみ出ているお茶、
茶葉の奥に溜まっているお茶の味は、抹茶など足元にも及ばぬ代物、
かつて藤原家は嫌悪する客が来た場合、これで追い返していたとか。
「ささっ、遠慮なさらずに」
「ええ、いただくわ……」
幽々子は茶葉が崩れないように丁寧に鍋を傾け、
その濃厚なお茶を口に含む。
「(苦っ!!)」
「どうかなされましたか?」
「……い、いいえ、結構なお手前で」
「茶の席ではないのですから、かしこまらずによく味わってくださいな、存分に」
さすがにそれは幽々子の想定外であった、
食べることに関しては古今の歴史を見ても無双と呼べる彼女であっても、
その食物が食用に耐えうる物ではない場合、さすがに無事とはいかない。
「お、お茶請けは無いのかしら?」
自分がもっとも得意としている分野で負ける、
それは幽々子にとって耐えがたい事であった、
しかしこのままでは敗北は必至、ならば死中に活を見いださんと、
妹紅に対してさらなる攻撃を要請したのだ。
「どうぞ、タケノコです」
返ってきたのは、あまりにも容赦の無い一撃だった。
「ふふっ」
「(笑った!?)」
しかし幽々子はタケノコの山を前にしながらも、不敵に微笑んだ、
妹紅からすれば磐石のとどめ、だが幽々子からすればそれは逆転の一手。
「ご馳走様でした」
それから一分も立たぬ内に、鍋の中から葉も含めて全ての茶が消えていた。
「(馬鹿な……茶を調味料にしたというのか……!)」
それは茶の味の濃さを逆手に取った見事な返し技であった、
空となった鍋、満足そうな幽々子の笑み、
それを前にとうとう妹紅は自らの膝を折る。
「私の……負けだ……」
幽々子が妹紅宅に足を踏み入れてから二十二分後の事だった。
「さて、それじゃ妹紅さん」
「……何だ?」
「あなたにはこれを着てもらうわ」
敗者は勝者に逆らってはいけない、それは古代より続く掟、
妹紅は幽々子から手渡された箱を開けると、その中身に頭を捻る。
「これは羽織袴じゃないか、こんなものを私に着せてどうするんだ?」
「私と祝言をあげてもらうのよ」
「そうか、祝言か……は?」
「えっと……その、ね、私と……ね」
幽々子は顔を真っ赤にしながら細々と喋る、
当の妹紅はといえば固まったままだ。
「……夫婦になって!」
「はひっ!」
突然強い口調で叫んだ幽々子に、妹紅はつられて首を縦に振る。
「本当ね! 本当に夫婦になってくれるのね! 嬉しい!」
「……ああああ! いやいやいやいや! ちょっと待ってちょっと待って!」
「あなたっ! 愛してる! ずっと! ずっと一緒よ!!」
「落ち着いて! なんだか全部おかしいから! 最初喧嘩越しだったじゃない!」
「だって……あなたの良い所だけじゃくて、悪い所も受け止めたかったの……」
「えっ、それはどういう……」
「それが愛、というものでしょう?」
「愛……」
涙ぐみながらも見上げつつ素敵に微笑む幽々子に、
妹紅の心の奥底から熱いものが込みあげてくる。
「……いいの? 私なんかで」
「あなたじゃなきゃ……嫌よ」
決まり手――愛。
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あとがきの妖夢が秀逸すぎるww
そしてあとがきwww
でも最初の妹紅と幽々子のやりとりがおもしろかったのでこの点数で
と言う事でこの点数に
それが問題だ…
はっ、パッチか!
本文の方で表現してほしかったというのが正直な感想でした。
会話回しとかそっちの方で勝負していただきたかったなと。
作品自体は勢いで押し切り、読む側はそれなりの読解力必要と、面白いねぇ。
鍋茶で吹き
葉茶で撃沈しました
しかもこれで客を追い返してたとかw
テンポよくて面白かったです。
正直な所、元ネタ不明でギャグもあんまり面白くなかったなあと言うのが感想です
仄かに甘いんだぜ。