あたいはいつも悪戯する。みんながあわわってなるのが面白いから。
でも霊夢に
「困らせるだけが悪戯じゃないわよ」
って言われた。だから今日は嬉しい悪戯をして驚かしてみよう。
―紅魔館―
いつも門で寝てるめーりん。今日は起きてた。
「あら、チルノちゃん。遊びに来たの?」
「めーりん、しゃがんで」
何か聞かれたけど早く悪戯したいから気にしない。
「ん?何?」
怒らないでお願い聞いてくれた。やっぱりめーりんは良いやつだ。
早速悪戯してみた。めーりんの顔が赤くなった。
「な、なななななななな…」
なな?そっか、もっとして欲しいんだ。あたいはさっきのと合わせて七回…?長く悪戯した。
さっきよりもっと赤くなって驚いた顔してる。でも泣きそうじゃないし。
「嫌だった?めーりん」
一応聞いてみた。
「い、いえ!全然嫌じゃないですよ!全然!!」
嫌じゃないってことは嬉しいってことだもんね。うん、ちゃんと嬉しい悪戯できた。
成功したから嬉しくて、えへへって笑ったらめーりんもニコッて笑った。この悪戯は良い悪戯。
「じゃーね、めーりん」
めーりんに手を振って紅魔館の中に進んだ。広いお屋敷の中をパタパタ飛んで、本がいっぱいある部屋に来た。
「何か用?」
声が聞こえたから周りを見回した。椅子に座って本を読んでる。
「パセリ?」
「パチュリーよ、チルノ」
名前間違えた。でもパセ…パチュリーは怒らなかった。意外と良いやつだ。
「で、何の用?」
本を机の上に置いてこっち見た。椅子に座ってるからあたいより今は背が低い。丁度良いや。
悪戯した。さっきのめーりんみたいに顔が赤くなってる。
「…何よこれ」
パチュリーの目がジトッってなった。でもあたいは最強だから、
「嬉しい悪戯なのさ!」
って笑って言った。そしたらパチュリーがキョトンってなって、
「嫌ではないわね」
って言って小さく笑った。良い悪戯、すごい。
「じゃーね、パチェリー」
「だからパチュリーよ」
また名前間違えた。だけど優しく笑って手を振ってくれたからいっか。
本の部屋を出てすぐに、ドサドサって音がした。そっちの方に飛んでいく。本がたくさん、いっぱい落ちてた。
「あちゃー、やっぱり無理だったか」
本の向こう側に小悪魔が居た。多分運んでる途中で落としたんだ。
「あれ、チルノちゃん?こんにちは」
あたいに気付いて挨拶してきた。こんな状態でも挨拶出来るなんて、意外とすごいやつだ。
あたいは天才だからちゃんと
「こんにちは」
って挨拶した。あたいえらい。
「いけると思ったんだけどなー…」
とか言いながら小悪魔は膝を着いて本を拾い集めてる。ぁ、またあたいより背低くなってる。
この隙に悪戯。小悪魔の手が止まる。あたいの顔を見てパチュリーみたいに赤くなった。
こうなると悪戯は大成功なんだって分かってきた。
「ぇ、えと…これはどういう…」
お、聞いてきた。ふふん、と得意顔になって
「嬉しくなる悪戯だよ」
って答えた。あれ?目が点になってる。と思ってたら、
「悪戯…そうですか」
ってくすぐったそうに笑った。さすが良い悪戯。
「手伝わなくて良いの?」
「ええ、私の仕事ですし。チルノちゃんは悪戯頑張って」
応援された。
「うん、あたい頑張るよ!じゃーね、小悪魔」
少し進んでぶんぶん手を振ったら小悪魔も振り返してくれた。よし、次次。
廊下を飛んでたら良い匂いがした。気になったから良い匂いがする場所を探してみる。着いたのは台所っぽいとこだった。
机に何か乗ってるから近づいてみたら
「つまみ食いはダメよ」
って後ろから聞こえた。振り返って見えたのはメイドっぽい服。あ、咲夜だ。
「これ何?」
甘い匂いがするからオヤツだと思うけど、何か分かんないから聞いてみた。
「アップルパイよ。お嬢様のオヤツに作ったんだけど」
やっぱりオヤツだった。あたいったら天才ね!
すごくおいしそうだからジーッと見てたらお腹がグーって鳴った。そしたら
「良かったら食べる?」
って咲夜が言った。クスッと口に手をやって笑ってる。
「ぇ、良いの?さっきダメって…?」
「『つまみ食い』はダメと言っただけで、別に食べたらダメとは言ってないわ。それに、お嬢様も全部は食べられないだろうし」
あんまり難しいことは分かんないけど、これが食べれるなら良いかな。
「じゃあちょうだい!」
早く早くって羽をパタパタさせてたら、またクスッて笑って用意してくれた。
椅子に座って机に向かった。目の前のお皿には大きめに切ってくれたアップルパイ。手にはフォーク。
「いただきまーす!」
ってしっかり言って大きく一口齧ったら、甘くておいしい味がした。
「どうかしら?」
向かい側の椅子に座って、机に肘を着いて手に顎を乗せたまま咲夜が聞いてきた。モグモグ噛んで飲み込んで、あたいは
「おいしい!」
って思ったことを言った。こんなおいしいものつくれるなんて、やっぱり咲夜はすごいやつだ。
「そう、良かった」
ぁ、また笑った。怒ると怖いけど、咲夜ってこんなに優しかったんだ。ちょっと驚いた。なんて考えてるうちに全部食べちゃった。
いつの間に。あたいすげぇ。
「ごちそうさまー」
「お粗末様」
お腹も膨れて机にペタッて凭れた。おいしかったなー、また食べたいなーって思ってたら、お皿とかを洗い終わった咲夜がこっちに戻ってきて
「で、あなたは何で此処に来たの?」
って聞いてきた。んー、あたい何で此処に来たんだっけ…?ぁ、
「そだ、嬉しくなる悪戯しに来たんだった」
手をポン、と叩いた。思い出したり思いついた時にやるってけーねが言ってた。
「嬉しくなる悪戯…?」
「うん。だから咲夜、しゃがんで」
咲夜のエプロンを引っ張りながら言った。首を傾げながらだけどしゃがんでくれた。やっぱり優しい。
で、悪戯をした。小悪魔よりは赤くならなかったけど、頬っぺたが熱くなってた。
いつも表情はあんまり変わらないのに、悪戯したらなんかあわわってなってた。
「嬉しくならない?」
って言ったら、あわわってなってた顔がえっ?ってなって、その後少しして
「ぅ、嬉しいって言うのかしら、これ」
ってはにかむように笑った。さっきおいしいって言った時とは違う笑顔。あたいの次に最強ね、良い悪戯。
「またおいしいの食べさせてね!」
「そのうちね」
何かあいまいだったから、絶対だよって約束した。咲夜は笑って
「はいはい」
って言った。むー、ごまかされた気がする。こんな時は
「指きり」
小指を立てて咲夜の前に出した。咲夜はやれやれのポーズをしてから小指を絡めてきた。それじゃ、
「ゆーびきーりげーんまーん嘘つーいたら凍ったカエル飲ーます、指切った!」
「針じゃないの!?」
あれ?なんか青い顔してる。カエルの方が痛くなさそうなのに。
「針の方が良いの?」
「カエルを飲みたいとは思わないもの」
ほっぺた掻いて苦いもの食べたみたいな顔で笑ってた。
「ふーん。まぁ約束を破らなければモーマンタイよ!」
これよ!やっぱりあたいったら天才ね!そろそろ次の悪戯の相手を探そうと思って、
「じゃあ、あたい行くね!」
って言って咲夜に手を振った。笑って振り返してくれた。今日はずっと笑ってたなー、咲夜。
廊下ばっかり飛んでるのもつまんなくなってきたから、近くの部屋のドアに突っ込んでみた。
中は薄暗くって、でも見えないほどじゃなかった。誰も居ないのかなって思ってキョロキョロしてたら、
ソファの上にフランが寝てた。
「うにゅー…」
なんか寝言言ってるけど、寝てたら悪戯出来ないじゃん。ていうかけっこう大きい音させて入ってきたんだけど起きない。
それでも寝続けられるなんて、やっぱりフランはすごいやつだ。まぁ寝ててもいっか。
寝てるフランに悪戯してみた。起きちゃうかなって思ったけど全然起きない。寝顔が段々笑顔になった。
寝てても効くなんて、あたいより最強かもね、良い悪戯。いや、その悪戯が出来るあたいの方が最強ね!
これ以上やって、本当にフランが起きたら大変だからほどほどにしといた。
そーっと部屋から出て静かにドアを閉める。
さてと、ここまで来たからにはレミリアにもやらないと。
近くに居た妖精メイドに、レミリアが居る部屋を教えてもらってまたパタパタ飛んでった。
ちょっと遠かったけど部屋の前まで来た。ノックしてってメイドに言われたけど分かんないから
「のっく!のっくのっく!」
ドアの前で叫んだ。ゴンッ、て中から音が聞こえた。
「レミリアー?」
居るはずなのに何も言わないから聞いてみる。そしたら
「…入りなさい」
やっと声が聞こえた。ドアを開けて中に入る。椅子に座ったままおでこを擦っているレミリアが居た。
「おでこどうしたの?」
「あなたのノックにやられたのよ」
あたいののっくがぶつかったらしい。でも、
「あたい何も投げてないよ?」
「…まぁ良いわ」
良くない、気になるじゃんか。
「ねぇ、どういうことさ?」
「それより、私に何か用があったんじゃないのかしら?」
ぁ、そうだった。手をポンっと叩く。これけーねの押し売り。
「嬉しくなる悪戯しに来たの」
って言ったら、レミリアの目が点になった。瞬きしてない。目乾いちゃうよ?
「は?悪戯?」
「うん、嬉しくなる悪戯」
信じられなさそうに目をパチパチしてる。きっと目が乾いちゃったんだ。
「だからそのままで居てね」
そう言ってあたいはレミリアが座ってる椅子のそばまで行って、悪戯した。
レミリアがキョトンってして動かない。失敗したのかな。
「嬉しくならない?」
って聞いてみたけど反応してくれない。ぁ、こっち見た。
「悪戯ってこれのこと…?」
「そだよ」
目をパチパチしながら聞いてきた。吸血鬼を驚かせるなんて、やっぱりあたいったら最強ね!
えっへん、って威張ったら、いきなりレミリアがあははっておっきな声で笑い出した。
今度はあたいの方が目をパチパチした。
「これが悪戯、さすが妖精というところかしらね」
褒められてる?あたいったら天才ね!
「じゃあ嬉しかったのね?」
一応聞いておく。
「まぁ、そうね。そういうことで良いわ」
びみょーだった。だから
「嬉しいって言えー!」
っていっぱい悪戯してやった。
「や、やめなさいこら」
笑いながら抵抗してくる。まだまだ、
「嬉しいって言うまでは止めないもんね」
あたいは最強だから、これくらいじゃ諦めないわよ!なんて思ってたら腕を掴まれた。
そのまま引っ張られてポスっとレミリアの腕の中に。
「分かった分かった、嬉しいわ。すごく嬉しい」
そう言ってギューってしてくれた。ぉー、レミリアって案外良いやつだ。
「ほんと?」
念のため聞いといた。そしたら
「嘘ついてどうするのよ」
って言いながらあたいの背中をポンポン叩いた。
やった、悪戯成功しました。やっぱりすごいぞ良い悪戯。あたいも嬉しくなってレミリアにギューってした。
その後顔を見たらちょっと赤くなってた。悪戯した時はならなかったのに、何でだろ。
「どしたの、顔赤くなってるけど…?」
風邪引いたのかなって思っておでこ同士くっつけた。そしたらもっと赤くなって
「な、なな何でもないの。気にしなくて良いわ」
って少しオロオロしてた。変なの。まぁ気にしない!
大体は悪戯できたからあたい満足。
「じゃーねーレミリア」
レミリアの部屋の窓から出ておっきく手を振った。レミリアも優しい顔で手を振ってくれた。
みんな紅魔館は怖いところって言うけど、あたいはそうは思わないなぁ。だってみんな優しいもん。
今日の悪戯も楽しかった。最後は帰る時の合言葉、
「また来るからね!」
そう言ったらレミリアが笑った。きっとあたいも笑ってた。
湖の上を飛んでたら思い出した。今日の悪戯は霊夢に言われて思い付いたんだった。
それなら霊夢にもしないと不公平よね。そう思って神社の方に行った。
もう夕方なのに霊夢は縁側に座ってお茶を飲んでた。お茶好きだなぁ。
あたいはそんな霊夢のそばに行って
「あたい嬉しい悪戯してきたよ!」
って大きく報告。霊夢は耳塞いで
「そんな大声で言わなくても聞こえるわよ」
って言ってあたいの頭をポカって叩いた。あんまり痛くなかった。加減してくれたんだ。
やっぱり霊夢は良いやつだ。その後
「で、どんな悪戯してきたの?」
聞いてきた。やっぱり気になるんだ。
「今からやるよ」
あたいはそう言って縁側のところに膝立ちして高さを調節。霊夢はお茶を置いてあたいの方を見てる。
霊夢はどんな反応するのかな、ちょっと楽しみだ。
今日最後の悪戯をした。そしたら霊夢が止まった。段々顔が赤くなる。でも嫌な顔はしてないからあたいは
「嬉しいでしょ」
って笑った。霊夢は少ししてから
「…まぁね」
ちっちゃい声で返事した。今日は一回も悪戯失敗しなかったし、怒られもしなかった。あたいも悪戯も最強ね!
「…悪戯って、撫でることなの?」
「そうだよ、あたいがしてもらって嬉しいことなのさ!」
「でも、撫でながら『良い子良い子』って言うのは止めない?恥ずかしいし、私子供じゃないんだから」
「レティがあたいにしてくれるときはいつも言ってるよ?」
「そりゃアンタ子供だし」
「あたい子供じゃないもん!」
「はいはい、ゴメンゴメン」
「むぅー…」
「ほら、拗ねないの。最強なんでしょ?」
「あたい最強!」
「良い子良い子」
霊夢が撫でてきた。やっぱり嬉しくなる。
…あれ?これって悪戯だったのかな?
―氷精、今日の出来事説明中―
「で、座ってる時は良いけど、立ってる時はしゃがんでもらって撫でたのよ」
「何でしゃがんでもらったの?」
「だって手が届かないじゃない」
「飛んだら届くのに?」
「!」
ま、チルノが夢に出てきてくれるなら望むところかw
フランがいれば、最高でしたね。
マジで可愛いなぁ。ご馳走様です。
よし、これでチルノが夢に出る!
すいません。
>>2様
それが狙いだったのです!
>>5様
それが狙(ry 私はチルノが来てくれたら起きたくないです。
>>7様
レミチル、チルレミ大好物です。いつか書ければ、と思っております。フラン寝かせちゃってすみません。
>>9様
満足いただけたようで何よりです。そうです、チルノは最強なんです!
>>10様
それが(ry チルノー、撫でてあげてー。でもチルノは私の嫁。
>>煉獄様
ほのぼのは味わってもらえたようですね。嬉しい限りです。
>>15様
それはそれは、また今度のネタに使えそうですね。提供感謝いたしま(ry
和みました。
頭を撫でてたのか。
もう一度読み直してほのぼのとした。
おれにもナデナデシテー
よし、チルノカモン!
チルノってば最強ね!
「のっく!のっくのっく!」がほっこりした読後感の後にじわじわ襲い掛かってくる破壊力
つまりなにが言いたいかというと別に勘違いしても良いよね。
ノックノック、ゴンッ!は笑ってしまいましたw