「いらっしゃい~」
可愛らしい声、香ばしい良い匂い、どこか懐かしい雰囲気がする森の中の屋台。
ミスティア・ローレライはこの屋台の店主で、焼き鳥ではなく、八目鰻だけを焼いて出している。
この店には様々な妖怪、妖精。時にはミスティアが道行く人を自らの能力で鳥目にし、
その人間に八目鰻を振舞うという悪戯じみたことをしている。
今日はそんな屋台にまた妖怪が一人、やってきた。
「やっほ、みすちー。今日はお客さんいないんだね」
「リグルもお仕事お疲れ様~。先刻鬼御一行様がいらっしゃいましたよ~。河童さんを引き連れて」
「あ、あぁ、災難だなぁにとりさんたち」
リグル・ナイトバグ、蟲の知らせサービスを最近始めたらしく、忙しく飛び回っているのをよく見かける。
お金が溜まってはここへ来る日々。チルノが最近遊んでくれないとブー垂れていた。
「っ~!美味しいっ!はぁ~。やっぱここ落ち着くなぁ」
「へへ、そういってくれると嬉しいな。焼いた甲斐があるよ」
「そういえばみすちーは売り上げどうしてるの?八目鰻は自分でとるし、お金かかると言ったら料理だけじゃない?
あとお酒とか。ここ結構繁盛してるけど、お金貯めて何か買うの?」
「え?…んー。特に考えてないんだよね、実は」
「えぇ!?じゃぁ何のために?」
「う、うーん。みんなの笑顔が見たいから、かな」
「…それ言われると反則だよ。じゃぁ何で八目鰻屋なんて始めたの?」
「何で…ねぇ。ちょっと昔の話だけどね―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「其処の道往く貴方様♪ちょっと休んでお歌は如何~♪」
「ひ、ひぃっ!何も見えないっ!?妖怪!?」
「今日も私は歌うだけ♪消えもせず溶けもせず♪ただただ歌う♪」
「う、うわぁぁああ…………」
夜。森に迷い込んだ人間を能力で何も見えぬ世界へと引きずり込み、そして、襲う。
悪戯にしては性質が悪すぎる事をしているミスティアの姿があった。
混乱している人間の周りを飛び回り歌を歌っているが人間は歌に恐れ、逃げ惑うのみ。
歌に夢中になるうちに、人間は木にぶつかりながらも森の奥のほうへと消えていった
「登るは富士の~♪って、あら?逃がしちゃった。でも、奥のほうに行ったからきっと…」
「…かえろ」
歌うのがすき。妖精や妖怪の友達に聞かせてあげるのがすき。でも、聞いてくれる人は少ない。
今日も、聞いてくれなかった。
「…。あ、また人間…」
目に入ったのは同じように村から来たのであろう人間であった。一日に二人以上来ることは珍しい。
何の用があって入ったのかは知らないが、迷っているのか、大層困った様子だった。
「…えい」
先ほどと同じように能力で鳥目に。彼はもう何も見えないであろう。顔にも戸惑いの様子が現れた。
「…其処の道往く貴方様♪ちょっと休んでお歌は如何~♪」
そしていつもしているように歌いだす。人間はミスティアの声を聞いただけで恐れ、逃げる。
ただ、その人間はどこか安心した表情でこういうだけだった。
「よかった、人がいたのか。聞きたいところだが、奈何せん暗くて何も見えぬ。
貴方の顔を見れず申し訳ないのだが、もしよければ聞かせて貰えないか。素敵な歌声を」
「!?―――………♪」
どういうことかその男が恐れをなすことは無かった。それどころか地面にどっかりとすわりミスティアの
歌声を楽しげに聞いている。こんな時間に森の中に女の声がすること自体奇妙だと言うのに。
ミスティアは歌う。ただ一人だけの観客を前に、その表情は嬉しそうで、暖かかった。
「―――うん、素晴らしい!いい歌声だ。こんな歌を聴いたのは初めてだ。
しかし本当に暗いな、自分の手を見るのもやっとだ。君の顔が見れないのが残念でならない」
男は拍手をして虚空を見つめる。ミスティアはその視線の先ではなく、右の木に座っていた。
「ごめんなさい、私は顔を見せられない。でも、聞いてくれて嬉しかった。
視界が晴れたら右に曲がりそのまままっすぐ進んで。貴方の村に戻る筈。
この森は危険だからもう二度と来てはいけない」
そういうとミスティアは手を一振りする。すると男の視界が広がり、回りがぼんやりと見えるようになった。
「え!?ま、まって。最後に、君の名前だけ…」
「ミスティア…ローレライ」
そう聞こえたのが最後に、男の視界は正常に戻った。が、あの歌声を発していた少女はどこにもいない。
男は不思議に思ったが、言われたとおり進むと無事、村に戻る事ができた。
・
・
・
ミスティアはあの男のことを考えていた。声だけでは怖がらない能天気な奴もいるだろう。
やはりあの人は私の姿を見たら怖がって逃げてしまうのだろうか。そう考えると胸が痛んだ。
人とは違う耳と、背中の大きな羽が、憎たらしかった。
彼はもう二度と来ないだろう。そう考えながら、一人木の上で歌った。
・
・
・
しかしミスティアの予想は大きく外れた。あの男はその次の日にまたやってきた。
今度は迷っているようではなく、何かを探しているようだった。
…おそらく私だろう。そう考えたミスティアはまた男を鳥目にし、こう告げる。
「何故来たの?ここは危険。妖怪がうじゃうじゃいるよ。早く、帰って」
言葉を発するミスティアの表情は暗かった。
「早く」
「待って!また君の歌が聞きたい!お願いだ!」
…嬉しい、という感情と同時に、切なさも感じた。この男は私を少女だと思っている。
本当の私は妖怪、人に恐れられ、人に退治される存在。この男もまた、同様だろう。
なんにせよ、ここは危険。ミスティアは苦肉の策をとる。男の鳥目を解除した―――
「…。」
「ん?また目が…っ!」
男は驚いている。無理も無い。思い描いた少女とは違う、羽の付いた人外がそこにいたからだろう。
しかしその後発する言葉は考えもしない言葉だった。
「やっと顔を見れた!思ったとおり、綺麗な顔をしている」
「!?」
もともと目が悪いのか。羽が見えていないのか。いろんな考えが頭を駆け巡りながらも、かろうじて言葉を発する。
「わ、私は妖怪!人を襲い、恐れられる存在!あなたも私の餌食になりたいの?」
「その羽、妖怪かぁ。君は僕を食べるのか?」
「…っ!た、食べる!私の骨の一部となれっ!」
精一杯人間が怖がるような言葉を吐く。しかし、
「まぁ、それも仕方ないのかもしれないな。ただ、頼みが一つだけ。歌を、聞かせてくれないかな」
「…」
言葉が、それ以上でなかった。
・
・
・
結局男は歌を聴くと、満足した、殺せと言う。ミスティアはまた男を鳥目にし、村へと導いた。
その後も男はやってきた。ミスティアはその度「怖くないの?」と尋ねたが、帰ってくる答えはいつも一緒だった。
「こんなに可愛くて素敵な歌を聞かせてくれるんだから、怖がることなんて一つもないよ」
初めて、人を『好き』だという感情が芽生えた。
・
・
・
ある日毎日来ていた男が来なかった。最初は気にしなかったが、来ない日は続く。ミスティアは不思議に思う。
男が来なくなり十日が過ぎる。ミスティアは人間が寝静まる頃、村へと忍び込んだ。
男の家は以前送りつけた際にわかっていた。障子を空け覗くと、そこには咳をし苦しむ男の姿があった。
「ど、どうして!?」
「あ、あぁ。流行病ってやつかなぁ。村からも隔離され、敬遠され…。もうすぐ、死ぬだろうな」
「…っ!!」
あの日の夜、殺せと言っていた意味が分かったのかもしれない。
この人はずっと一人でいたんだろう。そして、ある日死のうと森に入った。
そこで私と出会ったのではないか。ミスティアはそう考えた。
「まさかまた君の顔が見れるとは思ってもいなかった。ありがとう」
「なんで!また聞かせてあげるから!一杯歌うから!だから!」
「じゃぁ、歌ってくれ。一番静かで、でも暖かい曲が良いな」
「…………!」
「そんなに涙を流しては歌えないだろ。ほら。涙を拭いて、聞かせておくれ」
「………………――――――――― ~♪」
・
・
・
「ありがとう。素敵な曲だ。初めて会ったとき聞いた曲だったかな。やっぱりこの歌がすきだ」
「…うぇぇ…」
「泣かないでくれよ。僕よりも強いだろう?きみは。でも、お願いがある。
人をあやめるようなことはしないでくれ。もう、涙を見ることはしたくない。
君も歌うのが好きなら分かるだろ?聞く相手には笑って欲しいものだよ。だから、頼む。
…君も笑っておくれよ」
「…わかった、だから、だからぁ!」
「…。ありがとう君の笑顔は素敵だった…―――」
「…っ!!…!…………―――――――」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「へぇ、ミスティアにもそういうことがねぇ」
「は、恥ずかしいな、やっぱり。でも、今でもやっぱり、涙、が」
「…。」
「ごめんね?へへ。で、歌を聞いてもらう方法を考えたら、鳥目のことと、あとお料理好きだから、これ。」
そうしてミスティアは屋台の机を指差した。
「そっか。いっぱい、笑顔見れた?」
「…うん」
・
・
・
「今日のお仕事おしまい!」
リグルは帰り、明日の支度も済ませ、屋台をたたもうとしたそのとき、遠くから人間が歩いてくるのが見えた。
提灯の灯りが見えたのでこちらに向かっているのだろう。ミスティアは悪戯する子供のような笑いをもらすと、
その人間に近付いていった。
「…其処の道往く貴方様♪ちょっと休んでお歌は如何~♪
…おいしい鰻も、ありますよ♪」
可愛らしい声、香ばしい良い匂い、どこか懐かしい雰囲気がする森の中の屋台。
ミスティア・ローレライはこの屋台の店主で、焼き鳥ではなく、八目鰻だけを焼いて出している。
この店には様々な妖怪、妖精。時にはミスティアが道行く人を自らの能力で鳥目にし、
その人間に八目鰻を振舞うという悪戯じみたことをしている。
今日はそんな屋台にまた妖怪が一人、やってきた。
「やっほ、みすちー。今日はお客さんいないんだね」
「リグルもお仕事お疲れ様~。先刻鬼御一行様がいらっしゃいましたよ~。河童さんを引き連れて」
「あ、あぁ、災難だなぁにとりさんたち」
リグル・ナイトバグ、蟲の知らせサービスを最近始めたらしく、忙しく飛び回っているのをよく見かける。
お金が溜まってはここへ来る日々。チルノが最近遊んでくれないとブー垂れていた。
「っ~!美味しいっ!はぁ~。やっぱここ落ち着くなぁ」
「へへ、そういってくれると嬉しいな。焼いた甲斐があるよ」
「そういえばみすちーは売り上げどうしてるの?八目鰻は自分でとるし、お金かかると言ったら料理だけじゃない?
あとお酒とか。ここ結構繁盛してるけど、お金貯めて何か買うの?」
「え?…んー。特に考えてないんだよね、実は」
「えぇ!?じゃぁ何のために?」
「う、うーん。みんなの笑顔が見たいから、かな」
「…それ言われると反則だよ。じゃぁ何で八目鰻屋なんて始めたの?」
「何で…ねぇ。ちょっと昔の話だけどね―――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「其処の道往く貴方様♪ちょっと休んでお歌は如何~♪」
「ひ、ひぃっ!何も見えないっ!?妖怪!?」
「今日も私は歌うだけ♪消えもせず溶けもせず♪ただただ歌う♪」
「う、うわぁぁああ…………」
夜。森に迷い込んだ人間を能力で何も見えぬ世界へと引きずり込み、そして、襲う。
悪戯にしては性質が悪すぎる事をしているミスティアの姿があった。
混乱している人間の周りを飛び回り歌を歌っているが人間は歌に恐れ、逃げ惑うのみ。
歌に夢中になるうちに、人間は木にぶつかりながらも森の奥のほうへと消えていった
「登るは富士の~♪って、あら?逃がしちゃった。でも、奥のほうに行ったからきっと…」
「…かえろ」
歌うのがすき。妖精や妖怪の友達に聞かせてあげるのがすき。でも、聞いてくれる人は少ない。
今日も、聞いてくれなかった。
「…。あ、また人間…」
目に入ったのは同じように村から来たのであろう人間であった。一日に二人以上来ることは珍しい。
何の用があって入ったのかは知らないが、迷っているのか、大層困った様子だった。
「…えい」
先ほどと同じように能力で鳥目に。彼はもう何も見えないであろう。顔にも戸惑いの様子が現れた。
「…其処の道往く貴方様♪ちょっと休んでお歌は如何~♪」
そしていつもしているように歌いだす。人間はミスティアの声を聞いただけで恐れ、逃げる。
ただ、その人間はどこか安心した表情でこういうだけだった。
「よかった、人がいたのか。聞きたいところだが、奈何せん暗くて何も見えぬ。
貴方の顔を見れず申し訳ないのだが、もしよければ聞かせて貰えないか。素敵な歌声を」
「!?―――………♪」
どういうことかその男が恐れをなすことは無かった。それどころか地面にどっかりとすわりミスティアの
歌声を楽しげに聞いている。こんな時間に森の中に女の声がすること自体奇妙だと言うのに。
ミスティアは歌う。ただ一人だけの観客を前に、その表情は嬉しそうで、暖かかった。
「―――うん、素晴らしい!いい歌声だ。こんな歌を聴いたのは初めてだ。
しかし本当に暗いな、自分の手を見るのもやっとだ。君の顔が見れないのが残念でならない」
男は拍手をして虚空を見つめる。ミスティアはその視線の先ではなく、右の木に座っていた。
「ごめんなさい、私は顔を見せられない。でも、聞いてくれて嬉しかった。
視界が晴れたら右に曲がりそのまままっすぐ進んで。貴方の村に戻る筈。
この森は危険だからもう二度と来てはいけない」
そういうとミスティアは手を一振りする。すると男の視界が広がり、回りがぼんやりと見えるようになった。
「え!?ま、まって。最後に、君の名前だけ…」
「ミスティア…ローレライ」
そう聞こえたのが最後に、男の視界は正常に戻った。が、あの歌声を発していた少女はどこにもいない。
男は不思議に思ったが、言われたとおり進むと無事、村に戻る事ができた。
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ミスティアはあの男のことを考えていた。声だけでは怖がらない能天気な奴もいるだろう。
やはりあの人は私の姿を見たら怖がって逃げてしまうのだろうか。そう考えると胸が痛んだ。
人とは違う耳と、背中の大きな羽が、憎たらしかった。
彼はもう二度と来ないだろう。そう考えながら、一人木の上で歌った。
・
・
・
しかしミスティアの予想は大きく外れた。あの男はその次の日にまたやってきた。
今度は迷っているようではなく、何かを探しているようだった。
…おそらく私だろう。そう考えたミスティアはまた男を鳥目にし、こう告げる。
「何故来たの?ここは危険。妖怪がうじゃうじゃいるよ。早く、帰って」
言葉を発するミスティアの表情は暗かった。
「早く」
「待って!また君の歌が聞きたい!お願いだ!」
…嬉しい、という感情と同時に、切なさも感じた。この男は私を少女だと思っている。
本当の私は妖怪、人に恐れられ、人に退治される存在。この男もまた、同様だろう。
なんにせよ、ここは危険。ミスティアは苦肉の策をとる。男の鳥目を解除した―――
「…。」
「ん?また目が…っ!」
男は驚いている。無理も無い。思い描いた少女とは違う、羽の付いた人外がそこにいたからだろう。
しかしその後発する言葉は考えもしない言葉だった。
「やっと顔を見れた!思ったとおり、綺麗な顔をしている」
「!?」
もともと目が悪いのか。羽が見えていないのか。いろんな考えが頭を駆け巡りながらも、かろうじて言葉を発する。
「わ、私は妖怪!人を襲い、恐れられる存在!あなたも私の餌食になりたいの?」
「その羽、妖怪かぁ。君は僕を食べるのか?」
「…っ!た、食べる!私の骨の一部となれっ!」
精一杯人間が怖がるような言葉を吐く。しかし、
「まぁ、それも仕方ないのかもしれないな。ただ、頼みが一つだけ。歌を、聞かせてくれないかな」
「…」
言葉が、それ以上でなかった。
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結局男は歌を聴くと、満足した、殺せと言う。ミスティアはまた男を鳥目にし、村へと導いた。
その後も男はやってきた。ミスティアはその度「怖くないの?」と尋ねたが、帰ってくる答えはいつも一緒だった。
「こんなに可愛くて素敵な歌を聞かせてくれるんだから、怖がることなんて一つもないよ」
初めて、人を『好き』だという感情が芽生えた。
・
・
・
ある日毎日来ていた男が来なかった。最初は気にしなかったが、来ない日は続く。ミスティアは不思議に思う。
男が来なくなり十日が過ぎる。ミスティアは人間が寝静まる頃、村へと忍び込んだ。
男の家は以前送りつけた際にわかっていた。障子を空け覗くと、そこには咳をし苦しむ男の姿があった。
「ど、どうして!?」
「あ、あぁ。流行病ってやつかなぁ。村からも隔離され、敬遠され…。もうすぐ、死ぬだろうな」
「…っ!!」
あの日の夜、殺せと言っていた意味が分かったのかもしれない。
この人はずっと一人でいたんだろう。そして、ある日死のうと森に入った。
そこで私と出会ったのではないか。ミスティアはそう考えた。
「まさかまた君の顔が見れるとは思ってもいなかった。ありがとう」
「なんで!また聞かせてあげるから!一杯歌うから!だから!」
「じゃぁ、歌ってくれ。一番静かで、でも暖かい曲が良いな」
「…………!」
「そんなに涙を流しては歌えないだろ。ほら。涙を拭いて、聞かせておくれ」
「………………――――――――― ~♪」
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「ありがとう。素敵な曲だ。初めて会ったとき聞いた曲だったかな。やっぱりこの歌がすきだ」
「…うぇぇ…」
「泣かないでくれよ。僕よりも強いだろう?きみは。でも、お願いがある。
人をあやめるようなことはしないでくれ。もう、涙を見ることはしたくない。
君も歌うのが好きなら分かるだろ?聞く相手には笑って欲しいものだよ。だから、頼む。
…君も笑っておくれよ」
「…わかった、だから、だからぁ!」
「…。ありがとう君の笑顔は素敵だった…―――」
「…っ!!…!…………―――――――」
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「へぇ、ミスティアにもそういうことがねぇ」
「は、恥ずかしいな、やっぱり。でも、今でもやっぱり、涙、が」
「…。」
「ごめんね?へへ。で、歌を聞いてもらう方法を考えたら、鳥目のことと、あとお料理好きだから、これ。」
そうしてミスティアは屋台の机を指差した。
「そっか。いっぱい、笑顔見れた?」
「…うん」
・
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「今日のお仕事おしまい!」
リグルは帰り、明日の支度も済ませ、屋台をたたもうとしたそのとき、遠くから人間が歩いてくるのが見えた。
提灯の灯りが見えたのでこちらに向かっているのだろう。ミスティアは悪戯する子供のような笑いをもらすと、
その人間に近付いていった。
「…其処の道往く貴方様♪ちょっと休んでお歌は如何~♪
…おいしい鰻も、ありますよ♪」
男との出会いや屋台を始めた理由とか良いものでした。