「……上げなさい。小町」
「…………」
「顔を……」
「…………すぴー」
ベシッ
「へぶっ!」
「顔を上げなさい、小町」
そんな、可愛らしい声と、可愛らしくない威力の一撃で、頭を『仕事机』と『棒のような何か』に挟まれた小町と呼ばれた女性は、棒状の何かが後頭部からどかされた後、打撃を受けた部分をゆっくり撫でながら、机に預けていた上半身を起こす。
その際、何か口元に冷たいものを感じたので、慌てて手の甲で擦り……
後ろにいるはずの人物に向かって苦笑いを浮かべながら振り返っ……
パンッ
「あぃたっ!」
机と必要な書類棚しかならんでいない。
そんな殺風景な小部屋の中に、高い音が響き渡った。
仕事場で熟睡するという偉業を成し遂げた小町に弁解する隙すら与えず、彼女の上司は木製の棒を振り下ろしたのである。
「っいったぁぁ~~
二回もなんて酷いですよ」
「……二回叩いただけで今までの罪が消えるとでも?」
「……二回で抑えてくれてありがとうございます。
あ、いたい、いたいっ!
ごめんなさいっ 本当にごめんなさい!」
綺麗に小町の額に命中した悔悟の棒をぐしぐしと笑顔で押し当ててくる上司、四季映姫・ヤマザナドゥへと、感情のこもっていない感謝の言葉を返した。すると、小さな閻魔様のコメカミに少しだけ青筋が浮かび上がって、さらに圧力が与えられてしまう。
これは、からかってはいけない雰囲気だと本能で察した小町は、慌てて謝罪の言葉を続けたのだった。
「まったく、あなたは少々不真面目すぎる。
一昨日といい昨日といい今日といい……」
その謝罪を受けてやっと小町の額から、悔悟の棒を胸元に戻す。
うんざりとした表情で、叱り付ける小さな少女。その様子を客観的に見ると、母親の職場に忘れ物を届けにきて、「今度は忘れないでよ」とか文句を言われている構図なのだが、間違ってそのことを口にすると……
「黒です!」
気にしていないようで、幼い体形を非常に気にしているこの幻想郷の閻魔様から……
大きな雷が発言者の頭の上に落ちること間違いなし。
仕事中はそういう軽い冗談も通用しないような、厳格な閻魔なのだから。そんな彼女とこのサボリ魔の小町は非常に良い組み合わせというか、いろんな意味で職場でも有名な二人組なのだった。
「だ、だって、ですよ。ねぇ、映姫様。
ほら、私一ヶ月に一回くらいしか書類仕事しなくていいじゃないですか。
しかも、自殺した魂が何人、寿命で死んだ魂が何人、とか……
そんな数えるだけの書類、長くても半日で終わるというわけで、ね? だからどうしても昼ご飯を食べた後は、暇で……」
「暇?」
「う、え、あーっと、暇じゃなくて……
ああ、そうです! 時間を持て余してしまうというか。そんなときにこう、睡魔という恐ろしい悪魔に魅入られてしまうと、つい、うとうと……」
「へー、そうですかぁ。
あなたは、そうやって時間が余っているのですか。
では、あそこを見てどう思います?」
笑顔をまったく崩さないまま、映姫はその職場の一番偉い人が座る場所。
つまり自分の仕事机を手に持つ棒で指した。そこを見て……
「ぷっ、あはは……」
あまりのことに軽く噴出してしまった。
その机の上には仕事用の書類の他に、妙な薄紅色の書類が詰まれているわけだが……その高さは、もう書類の山と表現していいかわからないほどの芸術品で……
その席についている映姫の姿を想像しただけで、また笑いが込み上げそうになってしまった。何せ、絶対座った映姫よりも、書類の方が圧倒的に高いのだから。
「でしょう? 笑いたくなりますね」
「ええ、しかも普通の書類とは違いますよね。なんです、あれ?」
その奇妙な紅色の山を指差し、何の悪気もなく尋ねてみると……
なんだか映姫の背中から黒いオーラが湧き出てくるわけで……
「ええ、あれは仕事の書類ではなく……
苦情の書類ですよ。他の部署からの……
死亡したはずの魂がなかなか来ないとか、魂が来ないせいで書類作成できないとか、死亡日と移動日の間隔が長すぎるとか……
たった一人の死神の勤務態度を改善させなさいとかいう、ありがたい書類ですよ。
読んでも読んでも減らなくて♪」
「……へ、へぇ~…… と、とんでもない死神もいたものですねぇ」
その死神が誰を指すものか、それはこの職場にいるものなら即答できる。
即答できてしまうからこそ、その名を濁したまま、笑顔で話を進めようとする映姫の異常さが、小町の背筋を凍らせる。
唯一の救いは、書類を指差した拍子に視線を映姫から外した事で、その姿を直視せずにいられることだけ。
「やはり、そろそろこの案件について、白黒付けた方が……
お互いのためだとは思いませんか?
ねぇ? こぉぉまぁぁちぃぃ?」
「ひ、ヒィっ!?」
ぽんっとその小さな手が、小町の肩にかかりる。
その悪魔の手に捕われ、恐怖に慄く彼女にもう逃げ場はない。
そう誰もが思ったその瞬間。
ゴーンゴーン
大きな鉦の音が、彼女たちがいる建物の中に響き渡った。
この音は、ある時間が終わったことを示す音。
映姫はそれにわずかに気を取られ、わずかに小町から視線を外す。
そんなわずかな変化を小町は見逃さない。
今の鐘の音は、そう、業務時間が終わったことを示す定時の鐘。
部屋の窓の外を盗み見れば、鐘と同時に配達用の封筒を握り締めた一人の青年の死神が飛んでいるのが目に入る――
これだ!
それを見つけて、小町は迷わず能力を開放した。
「あ、しまっ――!?」
それに気付き、やめさせようとするも……
気が付いたときには、小町は 『窓の外』――
手を出しにくい外へとあっさり逃げられてしまった。
ほんの一瞬の油断のせいで……
「く、くぅぅぅ~~~! 明日、絶対時間を作ってお説教してあげますからね!!」
その場に残された映姫は、悔悟の棒が折れるんじゃないかと思うほど、力いっぱい握り締め……
その拍子に……
もう片方の手にも力が入るわけで……
「あ、あの、今どういう状況……ぎゃああああああ」
殺気すら放ちはじめたその映姫に肩を掴まれたままの被害者。
小町の能力で位置を入れ替えられただけ、ただそれだけの死神の肩がギリギリと握り締められ――
甲高い悲鳴だけがその部屋に響いたのだった。
ただ偶然にも……
その青年の手の中に収まった封筒……
その中に収まった、たった一枚の紙切れが……
『彼女の歯車』を狂わせる。
<悲しみを嫌う程度の職業>
ある日、珍しい客人が私の元へと訪れた。
妖精メイドや、咲夜につれてこられていないことを見れば、どうやってここに入ったかは明白。しかもいつ部屋に入ったかもわからないというおまけつきなのだから、不審者以外の何者でもない。それでも乱暴に扉を破るでもなく、慌てて注意する小悪魔と気さくに挨拶を交わしているのを見ると、今のところはこちらに害を成すわけでもなさそうに見える。だから私は、その客人を招き入れることにした。
あの無礼な魔法使いのようにいきなり備品を破損させたり、書物を泥棒するということはないだろう。そう思ったから。
それに普段ほとんど会わない相手と会話ができれば、自分の持っていない面白い情報を知ることができるかもしれない。そんな知識に対する貪欲さ、魔法使い独特の悪い癖が出てしまった結果だった。
それでも警戒しておくに越したことはないのは確か。
テーブルへ案内した客人の意外と落ち着いた物腰を観察しつつ、彼女に紅茶を振舞い終えた小悪魔へ視線を送る。その意を汲み取った小悪魔は無礼のないよう一度彼女に頭を下げてから私のすぐ横に待機した。もし相手が力づくで何かを要求してきたときのための、念のための保険。
見た目は可愛く見える彼女でも、間違いなく魔を司る眷族の一人。
油断して対処すればどうなるか、目の前の彼女もわかっているはず。
彼女にとってはここは完全な敵地。
だから無言の威圧を利用して、彼女から面白い情報を引き出したい。そんな思いが私にはあった。
けれど、目の前の人物は、ばつが悪そうに頬を指先で掻き、頬杖をついた。そうやって怠惰な印象を私に与えてくる彼女から出た言葉は、正直言えば期待はずれ。
長居するつもりはない。簡単なお願いをするだけだ、と。
まったく……久しぶりに本以外から知識を得る機会だと思ったのに。
そんな短い会話だけで話を終わらせようとする彼女の言葉を切ったのは、私なりの仕返しだったのかもしれない。勝手に期待して裏切られた方が悪いといわれれば、きっとそれまでなのだろうけれど。
「いきなり現れて挨拶も早々に、願い事。
私はそう簡単に願いを叶えられるような流れ星ではないわ」
そんな皮肉を受けて、そりゃそうだ。と目の前の女性が大きく笑う。
額に右手を当てて、一本取られたと言うように。
表面だけを見れば、この女性は気さくで、どこか怠惰な雰囲気を持つ大人の女性なのだろうけれど。このときの私には、そうは思えなかった。この大袈裟な仕草の全てが、何かを誤魔化す材料なのではないかと。
何故と聞かれれば、答えることができない。私らしくない非論理的な思考。彼女の日常的な行動の噂、そして今の言動のどれを取っても組み上がらない結論。
「でもあなたが私の質問に正直に答えてくれれば、考えてあげてもいいけれど」
だから私は、私の直感が正しいか、目の前の彼女に聞いてみることにした。
その方が確実で、効率的だから。
「あなたが言う『おねがい』で、この館の誰かが不利益を被る事になるのかしら?」
そんな私の問いに、彼女は正直に首を縦に振る。
その仕草を見て……
私はまっすぐ入り口の扉を指差した。
「お客様がお帰りよ、扉を開けて差し上げなさい」
私の結論を受け、彼女は疑問の声を上げていた。
『考えてもいいと言ったじゃないか、と』
だから私も肩を竦め、小悪魔が入れてくれちゃ紅茶を一口喉に流し込んでから、何食わぬ顔でこう応えてやる。
「ええ、そうよ。
考えた結果、あなたのお願いには乗れない。それだけのこと。
何か問題があるのかしら?」
実に魔女らしい答えだと、我ながら思う。
普通『考えてもいい』という言葉を使う場合。相手に対してある程度の好条件を与えることを前提として使うことが多い。しかし、本当に考えただけで済ませてしまえば、正直に答えたものの損益となる。
こんな詐欺にも似た行為に対して、興奮するかと思いきや。
彼女はいたずらに引っかかった子供のように、苦笑いするだけ。
そして――
「また来るよ」
たったその一言だけを残して、彼女は忽然とその部屋から姿を消した。
まるで、最初からそこに誰もいなかったように……
(さて……
これであたいは一つ、選べなくなった)
あの歯車が噛み合ったときから、何か嫌な予感はした。
けれど、ここまで綺麗に廻るとは考えてもみなかった。
(戻れない道を選んで進むだけと言っても。
少しくらいは遊びがないと……)
気を休める時間が欲しい……
彼女はそう切に願い、天を仰いだ。
それでも、恐ろしいくらいに噛み合った運命の輪は止まることを知らず……
「あやや、これはこれは、またサボりですか」
死神でありながら、彼女は神様を恨んだ。
「……よりによってあんたに見つかるとは、あたいもついてないねぇ。
いやはや、偶然ってのは怖いもんだ」
「そうですね、偶然は怖いですよ。
私も偶然、死神がうろついているという噂を聞きまして♪
まさかそのサボリ魔さんにこんなところで出会うとは、いやぁ。偶然、偶然。
あ、ご主人。私にもお茶を、こちらのお客さんには団子の追加をお願いします」
秋晴れの日の昼下がり。
人が疎らに行き過ぎる人里の中、そんな清々しい日に一番会いたくない部類の妖怪に出会ってしまった小野塚 小町は、感情をまるっきり隠そうとせず、机に上半身を突っ伏した状態で彼女を迎える。
和菓子等軽食を扱う店なので、比較的大きな体の小町がうつ伏せになっただけで大部分が隠れてしまう。まるでその姿は、自分の机だから、席につくなと表現しているようだった。
それでも、そんな彼女の苦労を嘲笑うかのように、お茶を彼女の腕の隙間に置いて、その横にみたらし団子を並べた。
「ここは私がご馳走しますから、遠慮なくどうぞ」
「……断固拒否。あんたで勝手に食べればいいじゃないか。
少しくらいゆっくりさせとくれよ」
甘い茶菓子に、苦いお茶。
そんな典型的なわびさびを味わう午後の一時、それを妨害された彼女のやる気はマイナス方向に振り切っている。そんな小町の内心なんてどこ吹く風。笑顔の文がお茶の入った暖かい湯飲みを、ペタペタと頬にくっつけてくるので……
無視しようにもどんどん不快指数が急上昇。
この不届きな天狗に対し、店の壁に立てかけてある大鎌を振り下ろせたらどれだけ気が楽になることか。そうやってイライラを抑えている間にも、文のいたずらはエスカレート。
「はい、あーん♪」
ついには、甘い醤油ダレのついた団子を頬にくっつけようとしてくる。
さすがにそこまでされて黙っていられるわけがない。
小町は顔だけを団子の方に向け、串が折れるほどの勢いで噛り付き、一気に串に刺さったすべての団子を口の中に含む。
が――
「――!?」
寝そべった状態で、のどに引っかかりやすい団子を勢い良く食べればどうなるか。
そんなことは火を見るより明らかで……
慌てて飲み込もうとした瞬間、小町の顔が青くなり……
「そんなに急いで食べようとするから喉がつまるんですよ。
おや、そういえば、こんな丁度いいところにお茶が……」
バンバンッ
「おや、どうしたんです、そんなに机を叩いて。
もしかして、このお茶が欲しいと?」
コクコクコクッ……
「いやぁ、そうですか。
でも困りましたねぇ……
私ももうそろそろお団子を頂こうかと思っておりましたので、このお茶がなくなると少し困るんですよ。あ、でも、この退屈な私の話し相手になっていただけるような素敵な方にならお譲りしてもいいかと。
で、どうです? 少しだけお付き合いいただけません?」
…………………………コクッ
「おお、さすが小町さん。
その怠惰さの中にも一輪の花が咲いているといったところでしょうか。
はい、どうぞ♪」
パシッ
お茶を差し出された瞬間、幻想郷一の速さを誇る文すら驚かせるほどの速度で手が伸びてきて、そのまま一気に口に流し込む。すると反り返った小町の喉が大きく鳴って、詰まっていた団子の塊がやっと食道を通っていった。
しかし一難去ってまた一難。
なにせ、鬼の首を取ったような顔をした天狗が、頬杖をついたまま楽しそうに顔を左右に揺らしているのだから。
「さ~って、どのネタからお話を伺いましょうかねぇ。
あなたがこうも堂々と休んでいるときは異変の可能性もありますから」
おそらくその前例は、神社が倒壊したあの夏のことを言っているのだろう。
確かにあのときは興味本位でいろいろな人間の寿命や気質を見て回り、いつのまにやら真犯人である天人まで行き着いてしまった。
気質と性格、その共通点。それを考察するだけでも、時間を忘れるほど。
「……あー、そういえば天人という手もあったわけか……
あ、気質の合うやつを探さないといけないのが手間かもしれないね」
小町はその選択肢があったことを思い出し、後ろ頭を撫でた。しかしその意味深なつぶやきは、記者魂を燃やす文には待ち望んだご馳走。
「……ん? 何の話です?
気質に、天人? これはやはり大きな事件と見ました!
前回の異変のときは真相を一早く掴めませんでしたし、その話、じ~~~くり利かせていただきましょうか」
水を得た魚。
いや、風を得た天狗は、机から身を乗り出して手帖を構える。
「……ああ、わかった、わかったから、そんなに顔近づけないでおくれよ」
やはり、この天狗に出会ったらゆっくり歩いているわけにはいかなくなる。
それは初めからわかっていたから、同じことができる。他の種族、できればあの魔法使いか鬼を頼りたかったのだが……
おそらく距離を操る能力を使えば、あっさり引き離すこともできる。
けれど、その後しつこく付きまとわれては仕事にならないのは確実。
結果的にあの人の言うとおりになってしまい、自然と笑い声が口から漏れてしまっていた。
「ははっ、それに、あたいからも……あんたにお願いしたいことがあったんだ。
結果的に丁度いいよ」
「お願いしたいこと、ですか?
んー、あまり危険な作業なら遠慮したいんですが」
いくら取材のためとはいえ、そこは天狗。
しっかり危険さを見極めてから行動する。とはいえ、実際の作業は彼女にとってそう難しいものではないだろう。膨大な妖力は使うことにはなるが。
「なぁに、明後日ちょいとばかり、風を起こして欲しいだけさ。
それでも駄目かい?」
「……その後の影響については、教えていただけないので?」
「ああ、新聞記者には過剰に情報を与えるなって、神様が言ってる」
「……ふむ、なるほど。つまり、そうやって隠し立てする必要がある事件。ということですね。
ならば、裏事情大いに結構!
この射命丸 文、誠心誠意を持って嵐を吹かせてご覧にいれます!」
大事件、もしくは大異変の匂いを感じ取り、文は写真機を握り締めながら握り拳を作った。最近めっきり生活ニュースばかり書いていたせいで、こういう大きなネタに飢えていた反動だろう。
そんな文の態度を満足そうに見守りながら、小町は席を立ち壁に立て掛けてあった鎌を手に持った。
「話は決まり、でも嵐まではいらないよ。
最終的な打ち合わせは明日。妖怪の山の入り口に正午でどうだい?
そこからあんたの話しやすい場所にいくってことで」
「ええ、構いませんよ。
しかし、妖怪の山でいいのですか? どちらかと言えば……」
「いいんだよ、そこで。
じゃあまたぶらぶらと歩いてくるとするかな。団子ごちそうさん」
暗に『さぼる』と宣言しつつ、店を出て行く。
そのあたりが実に彼女らしいと思う。
それでも疑問が、かすかな違和感が、文の心の中に残った。
「……ふむ、内緒の相談、ですか」
幽霊以外がほとんどいない、小町の職場の方が適切ではないか。
純粋にそんなことを思いながら、文は自分の分の団子を店員に注文したのだった。
「では、お嬢様……」
「ええ、また明日ね」
「はい、お待ちしております」
主人と従者。
その関係上、普段は絶対に立ち入らないはずの従者の部屋から、小さな主が姿を見せる。桃色の服を揺らしながら微笑む姿は、誰が見ても上機嫌そのもの。そんな紅魔館の主、レミリア・スカーレットに深々と頭を下げるのは。この屋敷のメイド長 十六夜 咲夜。部屋を出て廊下を進む背中に向けてずっと礼をした体勢のまま動かず、レミリアの姿が完全に見えなくなってから、頭を上げてゆっくりと扉を閉めた。
そんな慎ましい態度とは対照的に……
「うふ、ふふふふふ……」
口元に手を当て、怪しい思い出し笑いを浮かべる主のなんとだらしないことか……
すれ違う妖精メイドたちもあまりの怪しさに、壁際まで身を寄せて震えている有様である。そんな彼女の前に、あまりやる気を感じさせない瞳の少女が現れて……
「昨日は、お楽しみだったわね」
「……! パ、パチェ! い、一体何のことかしら!」
床を足で擦りながら身を引き、羽をピンッと張る。
そうやってあからさまに反応されると『何かあります』と答えているようなものなのだが、本気で自覚がないのだから困り者である。
そんな小さな主の親友は、やれやれと額に手を当てて瞳を閉じた。
「そうやって惚けるなら教えてあげる。
第一に、あなたがいつも眠っているはずの遅い時間の朝。普通なら眠気で不機嫌でいるはずなのに含み笑いを浮かべていたこと。次に、あなたが咲夜の部屋から出てきて、そのときの咲夜が酷く疲労して見えたこと。
そして最後に、昨日の夜、地下の私の部屋にまで妙な物音が聞こえて……わぷっ!?」
「――――――!!」
指を立てながら一つ一つ根拠を説明をしていると――
ビュンっと風を切るような音と共に、おもいっきり口を塞がれる。
その手は当然目の前にいた少女――
湯気が出そうなくらい、顔を真っ赤にしたレミリアの小さな手。
「パ、パチェ。た、立ち話もなんだから、図書館行きましょう。
うん、それがいい!」
右手で口を塞いだまま、もう片方の手でパチュリーの体を強く抱きしめる。そうやってしっかり固定した状態で、ばさっと大きく羽を動かし、弾丸のようなスピードで廊下を飛んでいく。
そんなレミリアが過ぎ去ったあとには
「んうーーー! うーーーー……」
悲痛な叫び声の余韻だけが残ったという。
「…………え、えっと。もしかして怒ってる?」
「…………げほ、ごほっ!」
「……え~、う~、うん、ごめん……」
貧血、喘息、運動不足、その他諸々。
そんな日陰の少女の口を塞いで、おもいっきり連れ回したらどうなるか。レミリアが無茶をして無理やり図書館まで連れて来たものだから、パチュリーの肺は軽めの呼吸不全を引き起こしていた。
それで、部屋に到着した直後に倒れ、危険な咳を繰り返すことになってしまう。慌てて小悪魔が駆けつけ、魔力による応急処置を施したおかげでなんとか今は落ち着いているものの、まだ短い周期で咳が出る状態。
「けほっ! ……ふぅ、ありがとう。大分楽になったわ」
「いえ、パチュリー様がご無事でなによりです」
背中をさする従者と、座ったまま体を預ける主。
そんな姿を見ていると、少しだけ羨ましくなってくるが……
今はそんなことを言っていられる場合ではないわけで……
「わ、悪気はないよ?
ちょっとこう恥ずかしさが先にたっちゃったって言うか……」
「わかってるわよ、レミィがそのあたり不器用なことは。
知っていてからかった私にも非があるから、今日はこの辺で勘弁してあげる」
いったいどちらが屋敷の主かわからない。
まあどうしてもパチュリーは静かな印象が強いので、どちらかというとレミリアより年上に見えるのだが……
本当はレミリアの方がずいぶんと年上。時折見せる威厳も別格なのだ。
それでも普段の生活では子供のように振舞う場面が多く、どちらが本物の彼女かわからないのが困ったところである。
メイド長の咲夜に言わせれば……
「その両面があるからこそ、私はお嬢様をお慕いしているのですわ」
とのこと。
幼い部分も、主らしい部分も両方含んでいるのが『レミリアらしさ』ということだろうか。
「でもねぇ、あんなに慌てなくてもいいじゃない。
その年で情事くらい当然でしょう?」
「ちょ、だ、だからそういうのじゃない!
パチェ、私が一体どういう存在か忘れたかしら?」
「どういう存在と聞かれても……」
やっと咳から開放されたパチュリーは身近な椅子に腰をおろし、小悪魔に二人分の紅茶を出すようにと指示した。
「吸血鬼以外の何かで答えろといわれても難しいわよ?」
「ええ、そうね。私は吸血鬼。
それでも、いままで私には足りないものが合った……」
パチュリーが落ち着いた様子で椅子に座っているのを確認してから、ずっと入り口近くで棒立ち状態だったレミリアが正面の椅子に座る。少し穏やかな様子に見えるのは、親友が無事だったという安堵によるものだろう。
そうやって落ち着いた様子のまま、レミリアは静かに腕を組んだ。
その仕草には、年齢には不釣合いな……
人を惹きつける何かを感じさせる。
「パチェなら、わかっているでしょう?
吸血鬼として私が不完全だったことが」
「……身長と胸囲?」
「そうね、それも足りな――
じゃないわよ! それは一般的女性の悩み!
これよ、これ!」
レミリアは大きく口を開くと、その中の尖った歯を指差した。
それは吸血鬼と名のつくものが多く持っている吸血用の歯。
ならば、彼女がそれを指差すということはどういうことか。
「ああ、なるほどやっと乳歯が……」
「うー☆ やったー☆ これで私も大人の仲間入り……じゃないよ!
第一吸血鬼に生え変わりとかないから! 折れたら勝手に再生するけど」
「冗談はここまでにして……
あなたの悩みは確か、血の契約ができないことだったかしら」
その弱点は彼女がスカーレット・デビルの二つ名で呼ばれることになったことに起因する。普通、何も知らずにこの名を聞けば、赤い悪魔という印象を受けるだろう。その身を返り血に染めた悪魔を思い浮かべ、恐怖する。
……が、このスカーレット・デビルはそんな大層な代物ではない。
体が小さいということに関係するかもしれないのだが、実は彼女……契約を達成するのに必要な血量を自分の体に入れることができない。つまり極度の小食なのである。そのため部下を作ろうとして牙を首筋に突き立てるのはいいのだが……
すぐお腹が一杯になって口を離してしまうため、食べ残しの血で服を赤く染めてしまう。そこから赤い悪魔と名づけられてしまったのだから。それを証明するのが、館の中にいるメイドたち。
十六夜咲夜を除いては全てが妖精という構成こそが、動かざる証拠。
「そうよ、でもね。
最近、契約に必要な血の量を飲めることに気が付いた。
ふふ、それもこれも咲夜の料理のおかげかしら」
「そうね、あの子を雇ってから確かに食べる量が増えたのは確かかしら。
中々の料理の腕ですもの。
でも個人的には別な要因があるとおもうのだけれど……」
「別な要因?」
別な要因。
それを思い出したのは、今、小悪魔が紅茶を持ってきたから。
あの咲夜という人間のメイドはどこにも抜け目のない瀟洒な女性と思われがちだが、ただ一つ、妙な拘りがあるのだ。
それが……
紅茶に奇妙な物体を入れたがること。
それが果物や甘い野菜、ハーブであったときはまだマシなのだが……
この前は健康に良いからと……
紅茶に、どくだみを加えたのである。
「お、おおおいしぃいねぇ、さ、ささ、さくやぁ?」
その脂汗を流した状態でどう間違ったら美味と表現できるのかはわからないが、パチュリーが思うのは一つだけ。
その正体不明の紅茶で、胃が自然と鍛えられたのではないか、ということだ。
「そ、それでね……
やっぱり、そうやって契約できるようになったのは咲夜のおかげでしょう?
だから最初に契約するのは……えっと、当然、ほら、ね?
昨日は、その練習で……」
「なるほど、それで咲夜に付き合ってもらったってわけね。
それで上手くいきそうなの」
「ええ、この私にかかれば簡単。コツなんて一回で覚えた」
その話が本当であるなら、何故咲夜が眠そうな顔をしていたのかが非常に疑問に残るのだが……それに、途中で聞こえてきた物音や声から察すると、おそらく真相は、正反対。上手くできないレミリアが悔しがって上げた悲鳴か何か、といったところだろうか。
それで最後の最後の、やっとコツを覚え、また明日ということになったのだろう。
「そう、でも、忘れないことね。
それは咲夜にとって人間を捨てるということ。
人であるまま、あなたに忠誠を誓ったあの子を裏切ることにならないかしら?」
「……そうね、私は卑怯な吸血鬼。
主という権力を使って、無理やり契約を結ぼうとするようにも映る。
でも、あの子はしっかり首を縦に振ってくれたもの……
私の我侭を聞き入れてくれてね……」
穏やかに満たされたレミリアの表情。
まるでそれは、母になる女性の顔のようにも見え、パチュリーは思わず目を擦ってしまっていた。自分の見間違いかと思ったから……
しかし、なんど目を擦っても、その大人びた表情は変わることが……
「それでね! 咲夜ったら!
あーんな恥ずかしいことを、顔を真っ赤にして言ってくれたよ!
それがどういうのかっていうとね!」
……あっさり変わりすぎ。
そうやって、咲夜と過ごした一夜の惚気話を聞かされ続け……
その話が終わった頃には、すっかりと日が高くなった頃だったという。
「で? ……なんで私がこんなことまでしなければいけないのかしら?」
「ほ、ほら、ファイトですよ! パチュリー様!
もう少しじゃないですか」
「…………へぇ~~?」
「う、うぅぅぅぅ、そ、そんなめでみないでくださいよぉぉ」
図書館には本が集まるもの。
パチュリーもその知識を得るのが目的で、この尋常でない広さの図書館に篭りきっている。暇さえあれば新しい本を読み、知識の収集に努め、それを魔法の実験に応用する。そうやって魔法の技術を高めるのが彼女の喜びで、生涯の目的。
だから基本的に、ここには本や実験器具以外は置いてないはずなのだ。
が――
パチュリーが座るテーブルの上には白い紙が置かれていて……
彼女はその紙を一枚取っては、貼り付け、一枚取っては貼り付け……
そんな地道な作業を繰り返し、真っ白い花を作り出す。そして完成したそれを横に置いてあった木箱の中にぽいっと投げ捨てる。
「わ、私はてっきりパチュリー様がそういう魔法を使えるんじゃないかなぁ、と思いまして……」
その対面にいる小悪魔はというと、口を動かしながらもパチュリーの数倍以上のスピードで同じ作業に取り組んでいた。細かな仕事をいつもしているので、この作業も得意分野なのかもしれない。
「だから、いつも言っているでしょう?
魔法は万能ではなくて、使い手が万能に見せているだけだと」
「は、はい。以後気をつけます……」
肩を竦め、俯き加減になりながらも手は常に動かし、箱詰めの花を作り続ける。
何故この二人がこんな地道な作業をやっているかと言えば……
レミリアの契約の話まで遡る。
だいたい、レミリアの惚気話が終わったところで、パチュリーが『成功したら何かお祝い品でも送ろうか?』と言った事から始まる。そのときレミリアは何もいらないと言っていたのだが……
『ほら、お花とかあると綺麗ですよね。
永遠を誓い合った二人を飾れたら……きっと素敵でしょう』
そう小悪魔が口を滑らせたことにより……
『じゃあ、真っ赤な薔薇がいいわ。情熱的で』
『わかりました。頑張りましょうね、パチュリー様!』
のような流れになった、というわけである。
満足して、一眠りしに部屋へ戻るその背を見送りながら……
パチュリーは頭に疑問符を浮かべていた。
『薔薇? 薔薇なんて庭に咲いていたかしら?』
そう、思い出してほしい。
バラという花は、秋には咲かない。
つまりこの時期には蕾すらないのである。そんなものをどうやって準備するのかと小悪魔に尋ねてみると……
『パチュリー様の魔法ならなんとかなりますよね!』
『…………ぇ?』
そんな恐ろしい回答が返ってきた。
そこでパチュリーは一旦冷静さを取り戻すために天井を見上げ……
瞳を閉じて、肩を落とす。
『……無理なんだけど?』
『…………ぇ?』
というわけで、急遽お手軽内職がスタートしたわけである。
本当は要望どおり赤い薔薇にしたかったのだが……
赤い紙の枚数が足りないため、白い薔薇だけでも作ろう。という結論に至ったわけである。
「まあ、こうやって一生懸命手作りで作ってあげれば、喜ぶには違いないと思うけど」
「そ、そうですよね! 大事ですよね! 真心!」
「枯れてるけどね、っていうようり命ないけどね」
「ぅぅぅぅぅぅ……」
そんな小悪魔いじめを繰り返しながら、花を作り……もう3時間。
とうとう、残りは後一本分の材料というところまで漕ぎつけた。慣れない作業でこってしまった肩を回しながら横を見れば……
「……悪くないわね」
箱に一面に咲いた白い花。
それが心を癒してくれるようだった。パチュリーは残りの一本の作成を小悪魔に命令し、紅茶へと手を伸ばしたところで――
コンコンっとドアが鳴る。
今日は朝までレミリアに付き合った咲夜は自室で休んでいるはずなので、そのノックはおそらく妖精メイドのもののはず。
コンコンっ
しかし、何やらドアを叩く位置が少しだけ……
高すぎるような気がするのは、彼女の聞き間違いだろうか。
そうであれば、門番の美鈴が何か異常を知らせにやってきたか。
それともあの白黒の魔法使いが……いや、ノックするはずがない
「入ってきていいわよ」
とりあえず、ノックをする人物がいきなり攻撃を仕掛けてくるはずもないだろう。そう思ったパチュリーは客人を招き入れるために声を上げ……
「邪魔するよ、魔法使いさん」
やってきた客人の声に、耳を疑った。
知らない人物だからではない。
つい最近やってきて、妙な提案をしてきた人物。
「……死神さん。ここにはあなたが好みそうな本はないわよ?
どれも生きていくのに必要な知識ばかりだから」
「そうかい? あたいはこれでもしっかり生きてるつもりだから、ここの本は読んでいいってことだね。いやぁ、また今度借りにくるとするよ」
皮肉を言いながら、パチュリーはその身の中に魔力を高める。
花をつくり終え、主人の変化に気づいた小悪魔も小町に向かって敵意を向けた。それでも目の前の死神はぽんぽんっと肩で大きな鎌を跳ねさせながら、堂々と二人の目の前まで歩いてきた。
まるで恐怖を感じていないように……
「……あんたは聡明だから、あたいがここに何をしに来たか、わかるだろう?」
「……そっちの都合なんて知らないわ。
私はただ、少しだけ運動をしようかと思っただけよ。
幻想郷風のおもてなしの仕方でね」
「運動か、悪いがさっき少々汗を流したからねぇ。
遠慮したい気分なんだよ」
この小町という死神が汗をかく運動。
そうなれば、館の妖精メイド程度では束になっても無理かもしれない。では一体誰がこの小町と対峙し、争ったのか。
そして、その結果、彼女がここにいるということは……
「――っ!?
あなた、美鈴に何をしたの!!」
「ほら、やっぱり頭の回転が速い。
心配しなさんなって、ちょっとだけ気絶してもらっただけさ。
死神は下手な殺生はしない。それは信じてもらってもいいよ」
「その言い方からすると、下手な殺生以外ならやる。
というようにも取れるのだけれど」
「ああ、そう取れるように会話しているから当然そうなる。
ま、本当は門を通る必要もなかったんだが、一応挨拶しておかないと失礼だろう?」
その軽い口振りからして何も考えていないように見えるのだが、まだ夕方よりも早い時間。レミリアが眠っているときにやってくることから判断しても、彼女はすべてを理解して行動している。
ならば小細工をすること事態、無理な話か……
「死神さん、今日は日が悪いわ……
できればお引取りいただけると助かるのだけれど……」
魔力をいつでも放てるような状態での、脅し。
こんなものに乗って来る者でないことは、最初から理解している。
だから、彼女が会話を半分ほど進めたところで――
「そうだねぇ……」
隙を突き、一気に魔力を――
「わかった、じゃあ明日出直すよ」
「……え?」
そこで予想外のことが起きる。
会話の途中でパチュリーに背を向け、入り口の方へ戻っていくのだから。
その様子に、しばらく呆気に取られていたパチュリーだったが、はっと我に返って身構えた。
「そうやって、帰ったと見せかけて実行するつもりなのね?」
そんな疑り深い彼女の言葉を背に受け、小町は手のひらを天井に向けパタパタと左右に振る。
「……違うよ、今日のところは本当に帰る。
あたいも昼に仕事するのはあんまり気が乗らなくてねぇ。
でも明日はそうはいかないから、そう覚えておくといいよ。じゃあ、また」
そう言って、以前出会ったときのように、空気に溶けるように消えてしまう。
屋敷の中を探ってみなければ正確なことはわからないが、おそらくこの近くにはもういない。あの死神を信じるわけではないが、約束を破ってまでここに止まるとは思えなかった。
「明日、か。でもなんとか間に合ったわね……」
パチュリーはそうやってつぶやくと、今作った花をレミリアの部屋に届けるように伝えて、少しだけ仮眠を取ることにした。慣れない作業で疲れたというのもあったが、朝からずっと気疲れし続けているのが大きく影響していたのだろう。
図書館の横にある仮眠室へとゆっくり足を運び……
柔らかい布団へと、全身を預け、まどろみに落ちていく……
そう、始まりはたった一枚の紙切れ。
茶色い封筒に入った、なんの変哲もない紙切れ。
赤い押印と、重々しい文字が浮かぶだけの、紙切れ……
「……おめでとう、ございます……小町……」
その言葉は、初めて彼女が上司から受けた祝いの言葉だったはず。
だってそれは死神にとって、栄誉なこと……
だから、その上司は胸を張って、送り出す。
それなのに……
いつも厳しい顔をしている上司の顔は今にも泣きそうで。
でも、涙を流したところで何も変わらないから……
それをわかってしまうほど、彼女は頭が良いから……
そのやるせない感情だけを噛み殺し続ける。
だから小町は、このときの『おめでとう』を忘れることはないだろう。
「ありがとうございます。はは、あたいがまさか昇進なんて、嘘みたいですけどね」
『おめでとう』と形式的に言わなければいけない立場にありながら。
彼女が、そうやって自分のために悲しんでくれるのが嬉しくて。
小町は素直に『ありがとう』と返す。
「……命令があるまで、人里での待機を命じます」
彼女がどうしていつも、仕事に対して不真面目なのか。
その意味を、上司だけは知っている。
こうならないように、絶対こんなことにならないように。
さぼっていれば絶対にその職務を与えられないから……
だから彼女はずっと、怠惰な勤務態度を取っていたというのに……
その勤務態度から、ある仕事を任せてみてはどうか……
そんな声が上層部からあったそうだ。
「いやぁ、正規な仕事を受けたままさぼれるって良いですね。
中々ない経験ですよ」
その職務は……
三途の川の渡しのように、いつ来るかわからない魂を待つものでもなく。
事務や経理と言った、他の閻魔や死神を支える仕事でもない。
命令が与えられるまで、合法的にサボれる。
自由時間が与えられる、唯一の職場……
「それでは……死神、小野塚 小町に『魂狩』の任を……
正式に……正式に与えることとします!」
血を吐くように、嘆くように吐き棄てられた言葉。
そう、それこそが、死神なら誰もが憧れる職種……
人や妖怪の魂を収穫する『魂狩』だった。
満天の星空……
闇の部分が多いのに、まるで星が夜を覆っているような、そんな錯覚さえ感じさせる。
だが、星だけでそう思わせるには光量が圧倒的に足りない。
ならば、何がそう感じさせるのか。その答えは単純。
一際大きな存在感を放つ満月が、世界を淡く照らしているから。
「闇夜の鴉、その翼に背負うは満月か、風流だねぇ」
そんな満月が映る湖の畔で、大鎌を地面に突き立てたまま寝転ぶ。日中は霧に覆われているこの湖だが、夜はその霧が消え美しい湖面を堪能することができる。その美しい湖面に満月が映るのだから、これほどの酒の肴があるだろうか。
さらにはその湖面で踊る妖精たちの淡い光。
満月が映る湖面で遊び、冷たい水を掛け合って遊び、空中を鬼ごっこして遊ぶ。その全てがこの世のものとは思えない美しさで……
「それは私に対する褒め言葉と受け取ってよろしいので?」
その湖を覆う薄い林の中の、木の頂点。
そこに一本足で立つ少女が、得意げに扇を振るい。満月の光の中で大きく羽を揺らす。
「ああ、あんたは人間に似た美人だからねぇ、割と自信を持ってもいいと思うよ、あたいは」
黒髪と、活発そうな印象を与える肩まで伸びた髪と、営業スマイルとはいっても愛らしく見えるその微笑。月光の下でそんな女性が、楽しそうに木の上で舞を踊っていれば、奇妙とか不自然さを考える前に、まず美しいという言葉が出てくるだろう。寝転んだままの足を組み、そんな文の動作に合わせるようにして、上に被せた足を上下させた。
「……ふむ、世辞とはわかっていても悪い気はしませんな」
調子の良い死神のお伊達言葉かもしれないと思っても、少々頬を紅くした文は、鼻の頭を軽く指で触って照れ隠し。それでも踊るような動作は止めず、両の翼で天を扇いだ。
その動作はまるで、巫女が祈祷を行うときの舞に似ている。
人が成すことのできない、奇跡を呼び込むための……
「そういえば、文。
頼んでいたことをやるには、その見たことのない踊りが必要というわけなのかい?」
「んー、そういうわけではありませんけどね。
いよっと! まあ、こういう美しい夜には体を動かしたくなる。
満月の光に照らされた妖怪の悲しい性質ですよ。まあ簡単に言えば、そういう気分ってことです」
最後の締め、そう言わんばかりに空中で大きく体を捻ると、そのまま重力に任せるように頭から地面へと落下し、地面に触れる寸前で扇を一閃。
すると、慣性の法則を無視して文の体が空中で停止する。独特の角張った帽子が地面に触れるか触れないかのところで停止したその肉体を支えるのは、もちろん彼女の力。
風を操る天狗だからこそできる芸当なのである。
「ほら、川や池に入るには準備運動をする。
それと同じですね」
「なるほど、全力を出しやすいように体をほぐしたと言うわけか。
やっぱり疲れるものなのかい? それは?」
「ええ、まあ仕込みは簡単なのですが、その動作をさせるために短い期間で大量の妖力の操作が必要になるんですよ。それさえ終われば後は制御に少し力を割いてやればいいだけ。
小町さんが満月の日を選んでくれたおかげで、調子も上々ですし、失敗する要素は何一つありません」
「まあ、それはいいんだが……
あまりその体勢でいるのはよろしくないんじゃないか? 服装的に」
「……あやや? おっとっと、これは失礼」
逆さまに停止した状態から、ぱんっと手を地面に付き一回転して地に足をつける。
他の妖怪が人間の服よりも裾が短いスカートを穿いている文は、少し体勢が崩れただけで危険なアングルというか。中が見えそうになってしまう。
普段は風で見えないように調整しているのだが、目の前に小町しかいないので油断していたのかもしれない。もしくはそんな些細なことを気にすることができないほど、気が高ぶっているか。
「さて、じゃあ準備の方はできたと思っていいのかな?」
「ええ、あとは大気中の風を操ってやるだけですよ。
範囲は館から湖をぐるっと覆う範囲でよろしいか?」
「ああ、十分だ……」
「そうですか、では……」
文は一度その身を沈めると、その反動を利用して一気に飛び上がり……
満月を背にして大きく翼を広げた。
普段、羽を隠す彼女がこうやって黒い翼を披露しているときは、相手を威嚇する必要があるときか……
自分の力の本質を解放しようとしているときだけ……
「さあさあ、皆さんお立会いっ! さて、鴉天狗が一人。射命丸 文の力を括目して見るがいい!」
文が扇を振り払った瞬間。荒れ狂った風が周囲に吹き荒れる。
そんな暴風をその身にうけながらも、小町は満足そうに……
それでもどこか、悲しそうに、横になったまま夜空を見上げていた。
死神――
それがどんなものか、私は嫌というほど書物で調べた。
何故なら魔法使いというものは、その『死』という概念を極端に恐れるから。
研究や知識の探求、それができなくなる、絶対的な死という概念。
それから逃げるために、特殊な術を生み出し、寿命で死ぬことがないようこの世の理を捻じ曲げた。それでもいつか来るんじゃないかという死神の影に脅え、どうしようもない恐怖に枕を濡らしたこともあった。
それでもそれは杞憂と知る。
死神は、神とは言っても単なる農夫のような存在だから。
天寿を全うした、熟した魂の元にしか訪れない。
そうやって死神に命を奪われた者は、どんな過去を背負っていようが転生を約束され死後の安寧を約束される。つまり天国へと招待状を手に入れたと同義。
だから、私には……
寿命をいじり、無様に生きる私には、絶対にそのお迎えが来ることはないのだ。
なら、あの紅魔館に訪れた死神が何故最初に私のところに着たのか。
その理由は今でもわからないけれど。
彼女が何のためにここに来て、何を求めるかは予想が付く。
『また来る』
そう言ったのは、ここに死神が欲する何かがあるから。
おそらく、彼女が求めるのは『命』そのもの。
三途の渡しをしていた彼女が何故……そう疑問に感じたけれど……
そんな悠長に考え事をしている場合ではなかった。彼女が狙う一番可能性の高い目標を事前に知る必要があったから。
死神が、命を狙うと仮定して……
妖精メイドはどうか?
命という概念が自然と同化している彼女たちはありえない。
レミリアやフランドールは?
吸血鬼の寿命は永遠に等しい、そんなものが500年程度で訪れるわけがない。
美鈴や小悪魔は?
可能性はないわけではないが、もしそうなら今日の昼の時点で命を奪っているはずだ。
そうやって自問自答を繰り返し……
何度考察しても、何度仮定を変更しても、一番可能性が高い人物は一人しか当てはまらない。
紅魔館の中で唯一人間である『十六夜 咲夜』
人間の身でありながら、種族の枠を逸脱した時間に干渉する能力を持つもの。
彼女の年齢はまだそんなに高くはないけれど、もし能力の使用が彼女の命を削るようなものであれば、その寿命が今であってもなんら不自然ではない。
故に、パチュリーは密かにその対策を考えていた。
もし咲夜が望むのであれば、その命を全てこの屋敷に捧げるのであれば……
永遠に近い時間を与えようと。
でも、その不安は良い意味で裏切られることとなった。
私が手を下す前にレミィが独自に動いていたから。咲夜と契約を結び、一生を共に生きようとしていたから。そうなれば人としての寿命は意味を成さなくなり、死神も諦めて帰るしかなくなるだろう。
それが……今夜……
ガバッ!!
頭の中が真っ白になる。
そんな感覚を味わったのはいつの頃からだろうか。
布団の上で慌てて上体を起こし、這うようにして必死に懐中時計を探す。
どこっ? 寝る前にはちゃんと枕元に……
寝る前にたまっていた疲労がすっかり消え、体が軽い。
ということは、仮眠どころではない時間を布団の上で過ごしてしまったことになるだろう。こんな大事な、レミィにとって大きな事件のある日に、親友である私が眠っているわけにはいかない。
そうやって、まだぼやける視界の中で固い感触を探し……
カツ……
やっとその指先に金属の冷たさが伝わってくる。
それはちょうど枕の下、どうやら眠っている間にその場所に滑り込んでしまったという訳か。私は心臓を跳ねさせながら、恐る恐るその時計の針を覗いてみると……
00時40分……
……これは、まずいわ。
ちゃんとお祝いすると言いながら。
すっかり出遅れてしまった……
レミィも小悪魔も起こしてくれればいいのに……
たぶん、契約のことで頭が一杯で私を仮眠室まで探しに来る余裕がなかったのだろう。
私は調子の良くなった体を起こし、布団のしわを直してからゆっくり着衣を整える。どうせ遅刻しているんだろうから、今更慌てたところでどうしようもないだろう。
とにかくどうやって謝ろうか頭に思い浮かべながら髪の毛を串で梳いていると、こんこんっと控えめなノックの後に……
「あのぅ、パチュリー様……えっとレミリア様が咲夜の部屋に来るようにとのことで……
……00時30分ごろから契約を始める、と」
妖精メイドの声、しかも何故か今よりも前の時間を指定し、何かに脅えている。
ということは……
「……もしかして、私を起こすのを忘れていたとか?」
「……はぃぃ、ごめんなさぃぃ」
「……そぅ、うん、そういうことね。
なら、下がっていいわよ」
出遅れた理由を得たパチュリーは晴れ晴れとした顔で帽子を被る。
うん、妖精が起こすのを忘れたなら、仕方ないもの。仕方ない、仕方ない。
自分にそう言い聞かせて、お気に入りの魔導書を持ったら準備完了。
なにやらゆっくり準備していたせいでさらに5分ほど経過した気はするが、たいした問題はないだろう。私はその体を魔力で浮かせて、いつもより速い速度で廊下を進んだ。
進みながら、昼間にレミィが惚気ていた表情を思い出し、少しだけ胸の辺りがざわつくのを感じる。その感情も私にはよく知ったもの。自分より才能を持った魔女に、羨望のまなざしを向けながら、心の中では別の感情が芽生えていたときと同じ。
そのときの感情より、大分小さなものだけれど……
ああ、私は少しだけ咲夜に嫉妬しているのか。
あんなに楽しそうに、契約することの嬉しさや、その後を語るレミィの姿がとても輝いて見えて、そんな表情をさせたことがない私の心を揺らしたということだろう。
そういえば昨日こんなことを言っていただろうか。
レミィが咲夜の部屋を出る前の、ほんの一瞬だけの……出来事。
それを彼女は本当に嬉しそうに、瞳を潤ませて語っていた。
『そこで、私はこう言うの……こほんっ
人の子よ、私は闇を生きるもの。
汝とは生きる時間も、過ごす世界も異なるもの。
されど、もし、汝に我と共にあろうとする意志があるのなら……
共に歩むことを許そう』と。
黙って聞いていた私は頬杖をつきながら、ある単語を思い浮かべていた。
ウソツキ。
そんな難しい言い回しなんて本当はしたくない癖に……
『……それは人ではなくなるということ。ですねお嬢様』
『ええ、二度と引き返すことはできない道。
だから私はあなたに、選んで欲しい。
私と共に生きるか、人として生を謳歌するか。あなたが選ぶの……』
ウソツキ。
本当は命令したいくせに。
無理やりその手を取って、抱き寄せたいくせに……
『ふふ、そうやって尋ねたとき、咲夜。どんな顔をしたと思う?
全然悩まなかったのよ。
私が、その一言を口にするのにどれほど苦悩したか、本当に馬鹿に思えるくらい。
あの顔、きっと私は一生忘れられない。
だから私は堂々と、その言葉を受け止めてやったの』
ウソツキ。
どうせ泣きそうだったくせに。
その後に続く言葉が怖くて、本当は耳を塞ぎたいほどだったくせに……
私はその話を聞きながら、どんどん輝いていく彼女の表情に見惚れていた。
ああ、これがたぶん、レミィにとっての……
『お嬢様の、望むままに……』
幸せ、陳腐な言葉で言えばそういうことなのだろう。
そういう場面を見せ付けられに、私は咲夜の部屋へ向かっているわけだ。
ああ、今夜もきっと、ずっと惚気話を聞かされて夜が明けるのだろう。
そうやってため息をつきながら廊下を進めば、扉が開きっぱなしの部屋が見えてくる。
無用心と思いながらも、扉の影から中の様子を伺うと……
「……へぇ」
昼間小悪魔と一緒に作った薔薇の造花。
その上に、御伽噺のお姫様のように咲夜が横になり、レミィはその横にしゃがみ愛おしいその従者の顔を撫でていた。その眠り姫のように瞳を閉じ、胸の前に両手を組んで……
まるで王子のキスを待っているような……
造花の白とレミィの桃色がよく生えて、後姿しか見えないものの、単純に綺麗だと思ってしまう。
(まったく……ネーミングセンスもあれだけど……
いいけどね。本人が満足なら)
白い薔薇の野原で、安らいでいるように見える二人。
あまりに幸せそうな二人の雰囲気に声を出すべきか悩んでいると……
部屋の隅で涙を流していた小悪魔が私の体を抱きしめてきた。
「……ぱぢゅりぃさぁまぁ~~……」
「……うん、重いんだけど」
元々涙もろい彼女のこと。
きっと一番熱愛中なところを見せられ、もらい泣きしてしまったというところだろうか。落ち着いた場面でこれなら、もしその現場を目撃していたらどうなっていたことか……
私は涙やその他いろいろでぐちゃぐちゃになった小悪魔の顔をハンカチで綺麗してやり、改めて咲く夜の首筋を見る。目を細めてじっと観察してみれば、控えめな赤い点が二つ。それはレミリアがつけた繋がりの証。
その赤い点は傷として残るかもしれないが……
きっとそれは心地よい傷……
すでに血が止まり、赤い点になっている場所をレミィは何度も何度も……
……あれ?
…………すでに、血が止まっている?
どくん……
人間の血というものは、そんな簡単に止まるものだっただろうか?
確か吸血鬼は血をすうと同時に血の流れを良くする成分を獲物の中に注ぎ込むはず。
だから、吸血した直後は……中々血が止まらない。
私が遅れたとは言っても、30分と同時に始めたわけではないだろうし……
10分経過しているかどうかも怪しい……
そんな中で、一体どうして……
血が、止まる?
どくん……
私は、自分の知識の豊富さを恨んだ。
冷静に回転を続ける思考を恨んだ。
恨んでも、いくら止まれと命令しても……
暴走した回路は止まらない。
暴走した意識は私にこう告げてくる。
ならば、こう仮定してはどうか……
血が止まったのではなく……
流れていなかった、とするなら。
そうなれば、全ての答えは当てはまるだろうと……
どくん……
小悪魔が鳴いているのは、感動ではなく、悲しみだとしたら。
ああやって咲夜が横になって……
安らかに眠っているように見えるのが……
本当に、眠っているように見えるのが……
魂の、抜け殻だとしたら?
どくん……
で、でも、違うわ!
絶対に違う。
だってほら、見なさい、私。
ああやってレミィが幸せそうに咲夜の頬を撫でているじゃない、あんなに……
あんなに優しそうな仕草で……
瞳だって、あんなに……!?
「……ねぇ、パチェ……」
そこで、やっとレミィは私がいることに気付いたのだろう。
咲夜に寄り添って座ったまま、体を小刻みに震わせて……
微笑を、浮かべていた。
光を灯さない、真っ暗な瞳をしたまま……
それでいて、口元だけは微笑を崩さない。
何が起こったかわからないから。
感情の整理が付かないから。
たった一つの単純な真実を、受け入れることができないから……
自分の心を閉ざして、涙を流しながら……
……微笑み続ける。
「おかしいよ……
血を、吸ったのに……契約文を読み上げたのに……咲夜が……答えてくれないの。
ぜんぜん、動いてくれないよ……」
「――っ!?」
なんだ、やっぱり簡単な結論じゃないか
ああやって、優しく撫でていたのは、血を吸った場所を触っていればいつか彼女が目を覚ましてくれるんじゃないかという、単なるレミィの願望。
その姿を見て、いたたまれなくなった小悪魔が号泣しているだけ……
はは、なんて単純な……
単純な……
「小野塚……こまちいいいいいいいいいいいいいいいい!!」
私は、驚愕する。
喘息の自分が、館を振るわせるほどの声を……
冷徹な魔法使いのはずの私が、感情を爆発させることができるんだと。
その高ぶった感情の中で……白い、作りものの薔薇だけが……
小さく、小さく揺れていた。
その作り物の……
枯れた白い薔薇の花言葉は……『生涯を誓う』
二人を祝福するはずの言葉だった。
距離を操る程度の能力――
その力を持っている小町は、死神の中でも一番素質に恵まれていたらしい。
自分の背丈以上のものを一撃で破壊するような攻撃的な能力でもないし。
相手の精神を破壊できるような、死神らしい能力でもない。
ただ目標との距離をいじるだけ。
しかしそれは、死神にとって誰もが羨望とする能力。
他の死神は相手に精神的な干渉をすることが多いらしいが……
面倒くさがりな小町の場合、その過程を省略する。
相手の命を奪う術式を鎌に組み込み、ただ相手に振り下ろすだけ。普通なら大鎌の大振りなんて、実力の拮抗する相手には見切られて当然。
しかし……
振り下ろす瞬間に、相手との距離を操作し、
間合いの中に入れてしまえば……
避ける時間すら与えない。
例え、時を止められる相手でも、知覚できない範囲から一気に屋敷の中に入ってやれば……
それで終わり。
なんてつまらない仕事だろう。
上司が命令した相手と世間話をすることすら許されず、ただ黙々と命を狩るだけ。
命を刈った後には、恨みの言葉を告げられるだけ。
それでも、死神を死神足らしめる、もっとも尊敬される職種。
「……さて、この感触だけは味わいたくなかったんだがねぇ」
それでも、小町にはその職にどうしても付きたくなかった。
幻想郷に深く関わりすぎたから……
笑って話をできる相手が増えすぎたから……
だから、わざとサボって評価を下げて、一生関係のない道を歩んでいたかった。
『雨が降る湖』の畔で、小町は雲に隠れた満月を思い浮かべるように顔を上げる。
雨の中でも傘を差すこともなく、肌に張り付いた服を疎ましく思うこともなく。その手の中に握る魂の暖かさだけを感じ取る。
「ま、あれか。
幸せな表情のまま逝けたことが、あんたに対してのせめてもの償いと思っておくれ……」
「…………そういうこと、どこまで私をコケにすれば気が済むのかしら」
「それはお互い様、そっちだって最初にあたいを小馬鹿にしただろう?
で? なんのつもりだい、あんたたちは?」
そんな空を見上げる小町の後ろに、三つの影があった。
一人は傘を手に、一人は魔導書を手に、一人は冷たくなった従者をその手に……
咲夜を抱えたレミリアは、息を荒く足元もおぼつかない状態で、小悪魔がそれを必死に支えて雨から護っている状況。その中で唯一自由に動けるパチュリーの体からはすでに魔力の奔流が立ち上り、その体に触れた雨を蒸発させていた。
「その魂を返してもらいに来た、見てわからないかしら?」
「……おや、ちゃーんと約束は守ったんだけどねぇ。
一日、日付が変わるのをしっかりとね」
言葉遊びの仕返しを、こんな手段で返してくる。
パチュリーは手に持っていた魔導書を開き、術式を空中に展開する。普段の彼女からは考えられない行動力。それは咲夜を思ってのことか、それともレミリアを思ってのことか。
どちらにしろ、その瞳から怒り以外の感情を探す方が難しい。
「……それが、最初にあなたを騙した私への当てつけということなのかしら」
「いや、偶然だよ。
一応あたいの死神の目に映ったその子の寿命がちょうど今日だった。それだけのことさ。
だが、あたいばっかり気にしてていいのかい? あんたの大事なお友達は雨の中だいぶきつそうだけど?」
小町が背中越しに視線だけをパチュリーの隣、レミリアの方へと向ける。
本来、流水が苦手な吸血鬼は雨の中を出歩くことはしない。わずかな流水にふれただけで激痛が走りそれを飛び越えることすら恐怖を感じるのだから。
「レミリア様ここはパチュリー様に任せて……」
「嫌よ! 誰が引くものか!
絶対に、咲夜を返してもらうのだから!」
強い意志で小町を睨みつけるが、その体は咲夜を抱くだけで精一杯。
一度でも膝を突けば、流水の激痛で立ち上がれなくなるだろう。
それでも彼女は雨の中、必死に取り戻そうともがき続ける。
「へぇ、返してもらう、か。
人の魂はそういう所有物とは違うと思うんだがねぇ……っと、おやおや、驚いた」
そんなレミリアを覚めた目で見つめる小町は、彼女たち三人に体を向けながら咲夜の首筋を鎌の先で指した。
「……とっくに死人になったものと、契約しようとしたのかい?
あっはっは、なんて可愛らしくて、いじらしくて……愚かな吸血鬼だ」
愚か……その言葉をぶつけられた瞬間。
レミリアの瞳が大きく見開かれ、体を震わせ、首を激しく左右に振りながらその言葉を必死に否定する。
「――っ!? 黙れ!」
「どうだい? 命を失った後の従者の血は美味しかったかい?
まだ温もりがあっただろう?
諦め切れなかっただろう?
それでも、もう手遅れだと、理解していたのだろう?」
「黙れっ! 黙れ黙れ黙れ黙れっ!
私の、私の運命の能力にかかれば貴様など!」
「だ、駄目です! レミリアお嬢様!」
小悪魔が止めるのも聞かず、レミリアが瞳孔を開き能力を使おうとするが……
「……へぇ、使えるのかい?
この雨の中、自分の体を維持するだけで必死なお前さんに、その力が使えると?」
「ぐ……ぅぅう……ううぅぅ!!」
震える体は魔力を使うことを拒否し、魔力はただその身を守るためだけに利用され続ける。
咲夜を守るどころか、何もできない自分。
それが悔しくて、レミリアは小悪魔に体を寄り掛かったまま、大粒の雫を胸に抱く咲夜の頬に落とす。
雨さえ、雨さえ降っていなければ……
雨、さえ……雨……?
「……少し、質問してもいいかしら?」
パチュリーは自分の指先が、冷え切っていくのを感じた。
雨で体温を奪われたからではない。
貧血を起こしたわけでもない。
ただ、自分の冷たい感情が……殺意にも似た黒い感情がその全身を覆っていたから……
「今日は、快晴だったわよね?」
「ああ、そのとおり。降水確率なしの秋晴れの夜。
月見日和といったところさ」
「そう、ということは、この雨はレミィの力を封じるためにわざと降らせてたもの、そう受け取っていいのかしら」
ということは、天気を意図的に変えられる誰かの強力を得たということか。
それとも口車に乗せて、利用しただけか……
しかし、パチュリーにとって、そんなことはもうどうでもいい……
「まさか、あなたは……私に、似たようなことをやらせようとしていたのかしら?
ここまで、ここまでレミィが傷つくことを……」
そんな、感情を殺した質問に、小町はただ何の緊張感のない声を返すだけ。
何故そんな質問をするのか、それが理解できないと言うように……
「ああ、そのとおり。
術者が近場にいた方が、成功しやすいだろう?」
この瞬間――
パチュリーの中で何かが切れた。
それが何かはわからないが、その爆発した感情の中で一つの魔法を紡がせる。
スペルカードに込めた、遊びの魔法。
そんなまやかしではない…… ホンモノの……
『ロイヤルフレアアアアア!!』
展開した魔法陣が一際輝き、
至近距離で放ったその魔法は、パチュリーの前面に放射状に広がり……
雨粒を一瞬で蒸発させ、小町に向かって突き進む。
大地を焦がし、暴力的な熱量を帯びたそれが迫る中でも、小町は余裕の笑みを崩さず……
「残念だが、距離を操れる相手に……」
その身を軽く後ろに傾けた。
それだけにしか見えなかったというのに……
夜の闇にその姿が溶け込み、消えていく。
「逃げの一手を取らせた時点で、あんたらに勝ちなんてないのさ……」
空間を焼く炎が行き過ぎた後は、消し飛ばされた草木の後が残るだけで……
ただ、取り残された三人を冷たい雨が打ち続けていた。
その事件から、どれほど年月が経っただろう。
その日、久しぶり客人が私の元へと訪れた。
妖精メイドに連れられていないところを見ると、どうやら不審者に間違いはない。
しかもその不審者は、一番会いたくない部類の不審者。
小悪魔なんて、その姿を見た瞬間飛び掛っていってしまったのだから。爪を伸ばし本気相手を切り裂こうとする彼女の動きを気だるそうに見つめていた招かれざる客人は、理解できない動作で小悪魔との距離を開けあっさりその一撃を回避する。
それでもまだ食い下がる小悪魔に停止の声をかけ、私はその客人を招くことにする。
相手が何をしにここに来たのかは知らない。
また誰かの大切なものを奪うために来たのかもしれない。
小悪魔は私の意見に納得せず、大声を出して非難していたけれど。
私がお願いよ、と一言だけ伝えたら、静かに身を引いてくれた。それでも同じ空気を吸うのも嫌と言うように、無言のまま部屋から出て行ってしまう。
「はは、嫌われたね、やっぱり」
「ええ当然ね、私もあなたをこの手で焼き尽くしてやりたいと思っているもの」
彼女にとってはここは完全な敵地だけれど……
あのときとは事情が違う。
いや、もうすでにこの館は、過去の風貌とは変わりすぎていた。
小悪魔は頑張って屋敷のことをこなしていても、どうしても一人では手が足りず部屋の天井にはいくつかくもの巣ができあがってしまっている。あの子がいるときならそんなことはなかったのだけれど……
「それで、あなたはまた私にお願いをしにきたのかしら?」
「ああ、そうだね。
そのとおり、お前さんならできる簡単なことさ」
まるで、あのときの……
最初に彼女がここを訪れたときのよう。
だから私は、昔のようにこんな質問をしてみることにした。
「あなたが私の質問に正直に答えてくれれば、考えてあげてもいいけれど」
「んー、簡単な質問にしてくれればいいさ。こっちもあまり余裕がないし」
「そう……」
あのときのように、どこか怠惰な雰囲気のまま私に語りかけてくる女性。
それなのに、私は何かを期待していた。
馬鹿げているとは思うかもしれないが、彼女が何か……
今の状況を好転させられる材料を持っているのではないかと、そう感じて……
「あなたが言う『おねがい』で――
レミィがまた、涙を流すことにはなるのかしら?」
そんな私の真剣な眼差しを受け止め、彼女は自信満々にこう答えたのだ。
「ああ、もちろん」
だから私は――
――彼女に、協力することにした。
……どうでもいい。
それが、最近の私の口癖らしい。
あの子を失ってから……
私らしくない、もっとしっかりしてよ。ってフランに怒られたのは?
パチェが、辛そうな瞳を私に向けてきたのは?
小悪魔が、私に食事を与えてくれたのは?
美鈴が、私を寝室まで連れて行ってくれたのは……
一体何回くらいなんだろう?
感情を忘れ、ただ、生かされているだけの毎日が続いていく。
だって、私の時間はずっと止まったままなのだから。
きっと、今の私は、とても弱々しく。
情けなく映っているのだろう。
主の椅子に座っているだけの、形式だけの主。
自分からは何も望まず、与えられたものだけを受け続けるだけ……
そんな私の代役として、この屋敷を支えてくれているのは、フラン……
私よりも強い力を持ったあの子なら、私が居なくても十分ここを管理していける。
だからもう……どうでもいいの。
私のことは放っておいてくれていい。
その辺の道端に捨ててくれても構わない、そのまま日の光に焼かれても……どうでもいいもの。
いつもと変わらない、生かされ続ける日々。
その日に変化が訪れたのは唐突だった……
「……レミィ、一応今の状況を報告するわ」
「……うん」
「現在、正体不明の相手と美鈴が交戦中、正直言えば分が悪い相手よ。
いつ突破されるかわからない。
私も迎え撃つつもりだけれど……」
「……うん」
「あなたのところまで通すつもりはないわ。
だから安心して待っていて」
「……うん」
どうやら、何者かにここが攻められているらしい。
最近幻想入りした何者かだろうか……
この幻想郷の中で、フランの名を聞いてもここに攻めてくる馬鹿な妖怪や人間はまずいない。
きっとあの子ならなんとかしてくれる……
でも、もしフランが敗れるようなことがあれば……
私は、咲夜の側にいけるのだろうか?
……いや、無理だ。
咲夜は死神に連れ去られ、安らかに天界で過ごしているはずだし……
いままで、好き勝手やってきた私が、同じ場所にいけるはずがない……
……どうでも、いいや。
私は、膝を抱いたまま、部屋の外から聞こえてくる音を耳に入れる。
聞こえてくるのはパチュリーの魔法の音と、フランの叫び声。
そして……
ザァァァァ……
屋敷の天井を打つ、雨の音。
何故、雨が降るのだろう? 確か、朝……小悪魔は今日は一日中晴れだといっていた気がする。
夜になったら一緒にどこか飛び回りましょうか? そんなことを聞いてきたはずだ。
なら、この雨は……
そんなことを考えていると、部屋の外が急に静かになる……
「……フラン? ……パチェ?」
少しだけ大きな声で呼びかけてみても、返事は返ってこない。
その返事の変わりに、聞こえてきたのは……
コンコン
そんな規則正しいノックの音。
「……フランなの?」
コンコン
返事がない。
打ち続けられる乾いた音だけがその部屋に響き、雨と合わさってレミリアの心を小さく揺らした。
ああ、そうか。
この雨はきっと、私を逃がさないようにするための雨……
そして、部屋の外に居る誰かは、きっと……
フランでもパチュリーでも……
小悪魔でも美鈴でも、ましてや妖精たちでもない……
私の命を奪いに来た、誰か……
「……鍵は、開いているわ。狩人さん」
どうでもいい。
今の私には、ただ毎日を行きぬく程度の魔力しかない。
そんな私に、フランを退けた相手をどうこうできるわけがない。
ふふ、それでも雨まで使って、こんな状態の私を閉じ込めようだなんて……
「……それでは、失礼します。レミリアお嬢様」
そのとき、止まったままの私の時計の針が、軋みを上げて動き出す。
だって、扉を開けた狩人の声はずっと求めていたはずの声で……
私の凍った心を溶かす、優しい声。
「……私の居場所は、まだここでよろしいのでしょうか?」
戸惑いながら、それでいて恥ずかしそうに部屋に入るその女性に向かって。
私は、よろける体に鞭をうち、駆け出していた。
それを支えるように抱きとめた、彼女の温もりはとても懐かしくて……
雨が届かないはずのその広間に、大きな雨粒が、メイドの服を濡らしていた。
「……なるほど、感情を失っていた彼女に涙を流させるということは、そういうことですか。
いやはや素晴らしいお手際で」
大きな荷物を届け終え、紅魔館から小町が飛び上がると……
そこには拍手をして待ち構える鴉天狗の少女が一人。
「あっはっは、褒めたって何も出ないんだけどねぇ……
それで、いい記事はかけそうかい?」
「ええ、もう。
何せ10年以上待たされた特ダネですからね、もうばっちりですよ。
後は、ほら、小町さんがどうやって、あの咲夜さんを短期間であそこに戻すことができたかって言うところだけが疑問なのですが?」
「あー、できればそこは内緒にして欲しいんだがねぇ」
あの咲夜が小町に連れられてから、かなりの年月が経過していた。
とは言ってもそれは人間たちにとってだけのもの。
寿命の長い妖怪にとっては、そんなに長い時間ではないのかもしれない。それでもいろいろな情報を知っている文でさえ、こんなに早く人間が転生するなんて異例中の異例。
しかも……
「いや、気にするなって方が無理じゃないでしょうかねぇ。
それに、転生したものが前世の記憶を持ったままだなんて、素敵ですし。
記事にするにはその内容は外せませんよ!」
文が言うように、人間が転生した場合は過去の記憶を消すのは当然。
なぜなら過去に縛られたままでは新しい生を謳歌することができないから。それでも極稀に前世の記憶が蘇るようなケースがあると聞いたことがある文は、たぶん今回のそれも同じようなものだと思っていた。
だから小町からもそういう綺麗な話を聞けると、期待したのだろう。
「仕方ないねぇ、少しだけだよ?」
期待して手帖を広げる文に対して耳打ちするように口を近づけた小町は、周囲をキョロキョロと見渡してからぼそりと……
「……書類を入れ替えた」
「…………はぃ?」
なんだか聞いてはいけない事実が、文の耳に届いてくる。
これ以上はまずいと身を引こうとするが、逆に小町に腕を掴まれてしまい……
「……まあ、あれだよ。
あたいがまずあの子の魂をあっちに持っていくだろ? そのときにさやっぱり書類作らないといけないんだよ。それでぱぱーっと作り終えて次の事務のやつに書類を渡そうとしたんだけど……
ちょうど転生待ちの書類棚が空きっぱなしだったんだよ。うん、ほんとに、偶然ね。
だからさ、その咲夜って子の書類をね、ぽいっとそこに……」
「…………聞いてません、私は何も聞いてません」
「いやぁ、そしたらさ……
記憶を消す事務手続きも軽くすっ飛ばしちゃってさ……
赤ちゃんのときから妙に大人びた子供が生まれてね。困ったよ、ホント。
うん、ばれないように何度裏工作したことか」
「…………聞きたくないですっ!!
綺麗な記事を書かせてくださああああああい!」
衝撃的な事実を知らされ、これ以上記事にできない情報を聞かされてはたまらないと文は慌てて小町の腕を振り払い、逃げていく。
そんな文を見送りながら、小町は後ろを振り返って……
「……って、ことなんですけど。
やっぱり不味いですかね?」
「……公文書偽造、魂管理不備、死神法第19条の侵犯……
まったく、あなたって人は……」
いつのまにそこにいたのか、小さな閻魔が彼女を見下ろしてため息をついていた。
本気になれば、どの死神よりも功績を上げられるのに、それを嫌がる変わり者の部下。
空中に浮きながら彼女を見下ろす上司は、悔悟の棒で自分の額を押さえ……
思いため息をつきながら、あることを告げた。
「……小野塚 小町……あなたに、降格処分が出るそうですよ」
「あら、いやぁ、結構頑張ってたんですけどねぇ……で、処分のほどは?」
「三途の川の渡しを命ずる、正式文書は後ほど、とのことでした。
残念でしたね、小町」
「ええ、残念無念♪」
これほど残念そうじゃない二文字は聞いたのは初めてだと、
四季映姫は少しだけ嬉しそうに頭を抱えたのだった。
色々言いたい事はあるけど、もう江戸っ子小町に満点です。
彼女に汚れ仕事は似合いません!たとえなっても、こうなるはず!
いいセンスだ!
寿命のネタは結構あるけどこの手の展開は
あまり見たことがないようなきがするな。
しかし転生のところの話が思わず笑ってしまった。
こういう話は珍しいね
>表現していい皮からないほどの芸術品で……
感想ですが、文章としては……が非常に多すぎて読みにくい。
また、ハッピーエンドにしてもとってつけたような感が強すぎる。
小町の昇格降格をやりたかったなら紅魔組いらないし、咲夜の死にネタがやりたいなら彼岸組が必要ない。
こまっちゃん大暴れ、というならパチュリーが必要ない。
このキャラこのネタを使いたいだけだ、と言われればそこまでなのですが、どうにも不自然かと。
ともあれ、ご馳走様でした
が、渡し守をサボタージュしてまで避けたかった魂狩であるにも関わらず、
なぜ小町は数分待てば殺さずに済む状況で咲夜を殺したのでしょうか。
それもパチュリーに予告も同然の行動をしたり、わざわざ紅魔組を待ち構え嘲弄した上で逃げるなど
不必要な恨みまで買うやり方で。
このあたりの理由、心情が伝わってこなかったのが残念でした。
あとこれは解釈の問題だけど、「距離を操る程度の能力」が字義どおりのものならば
中間の障害物は無視できないと思うので、知ってさえいれば対策は立てられるんじゃないかな。
>3さん
口調こんな活きが良くていいのかなと思って書いてみました。
もう少し怠惰な感じを出せればよかったのですがっ
>9さん
小町の能力、距離を操るというのを、自分が感じ取れる場所との距離を縮めるとしたり、入れ替えというものとして定義して書いた結果、こんな感じに仕上がってしまいました。
まあ、わざと棚に入れたのか、それともついうっかり、かっ
>10さん
サンクス!(’’ また楽しめる作品を書ければうれしいくおもいます。
>12さん
寿命ネタはどうしても鬱エンドになりがちですからね、それを転生ネタでいじれないかなと。
>13さん
ハッピーエンドってすばらしいですわぁ(’’
まあ、作者がこっちの流れの方がすきってこともあります。
>18さん
小町さんは、さぼってるけどやるときはやる、そんな女性だと信じております。
>20さん
誤字報告ありがとうございます。んー、毎回申し訳ない……
なるほど……これを間を置くために多数使ってみたのですが、裏目にでたところがありましたか。キャラの配置も少し不自然に感じたのであれば、今後の課題ですねっ
>22さん
あのサボり方はどうしても昇進したくないようにもみえてしまうのであります。
>23さん
ある意味、そんな作品をみてみたいでありますな。
>24さん
なるほど、そういう部分をもう少し書いたほうが、確かに感情移入しやすいですね。
勉強になるであります!
間の障害物、の問題なのですが。例えば、学校から自分の家までの距離とか大体わかる部分については瞬間移動のイメージで縮めることができないかな、とかそういう考え方からこんな能力になっております。
>28さん
まあ、逆らわなくてもみんなそこのお世話になりそうですけどね。最終的にっノ
取り敢えず、転生した咲夜さんとレミリア様の為に白い薔薇でも作りましょうか。