※このSSは作品集87「今日も元気に水難事故」の設定を少しだけ引き継いでいますが、「村紗と小傘が知り合って、少しだけ仲良くなった」ということだけ知っておいて頂ければ、前作を読まなくても大丈夫だと思います。
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「さ~て、来週の南無さんはー!?」
(サ○エさんのBGM)
「どうも、雲山です。最近良い天気が続いて良いですなぁ。
こういう時は縁側で昼寝でもしたくなりますな。
それはそうと、最近わしの扱いがどうも酷いと思うのですが、
そこの所について聖さんはどう思われてますかな?」
「はいはい、おじいちゃんそんな所で寝てたら消しますよ。
扱いについては私もある意味同じようなものなので、受け入れてしまうが吉です。
悩みがあるのでしたら、最近相談所を開いたので是非訪れて下さい。
ということで次回は、
『ひじりんのお悩み相談室☆』
『一輪の七輪』
『ナズーリン、恋のダウジング?』
以上の三本でお送り致します!
来週もまた、見てくださいねー!
いざ、南無、三☆うふふふふふ☆」
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「とまあ、こんな感じで命蓮寺のPRをするのはどうでしょう?」
「聖様、私に何を焼けと……?」
「深い意味はありません」
「私の出番がないなんてひどいです!」
「大丈夫ですよ村紗、貴方はエキストラで出演予定ですから」
「とりあえず、じゃんけんに指三本はないですよ聖」
「グーチョキパーがあるじゃないですか!」
「そんなものは幻想です!」
「……」
ナズーリンはそっと喧騒から抜け出し、ダウジングで常識を探す旅に出た。
数々の苦難の果てにようやく見つけ出すことが出来た。
そこは夢の島だった(別名ゴミの島)
環境汚染のあまりの深刻さに涙しながら、ナズーリンは諦めて帰ろうとする。
『萌える常識と萌えない常識の分別はきちんとしましょう!常識を大切にね! ―東風谷電力―』
近くに立っていた看板はとりあえず蹴り倒しておいた。
そんなこんなで命蓮寺の平凡な一日は始まる。
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「本日は総出で命蓮寺の大掃除をしたいと思います」
朝食の最中、聖が突然そんなことを言い出した。
「大掃除ですか?」
黙々と食べていた星が聞き返す。
「ええ、しばらくはここで暮らすことが出来そうですし、一度全体を点検してみた方が良いと思いまして」
「なるほど。確かに姐さんの言う通りですね」
「そういえば、船はお掃除してたけどお寺のお掃除はあんまりしてなかったなぁ」
一輪と村紗も聖の意見に同意を示す。
言われてみれば、聖が封印されてから本格的な大掃除などはやった覚えがない。
最も、基本的な清掃は星が行っていた為、目立って命蓮寺が汚れている訳ではないが。
「分かりました。ナズーリンも良いですか?」
「仕方ないですね」
あんまり気が進まないが、自分だけ断るのも何なので了承するナズーリン。
(まあ、ご主人と一緒なだけまだマシだと思うことにしよう)
「私と一輪は寺の中を担当します。村紗は寺の外を中心にお願いします」
「はい、分かりました姐さん!」
「任せて下さい、聖様!」
「星とナズーリンは裏の倉庫をお願い出来ますか?」
「ああ、そういえば放置してましたね。了解しました」
「了解」
全員の同意の返事を得て、聖が頷く。
食事の片付けも終わり、皆が恒例の合図を待つ。
「では、大変だとは思いますが宜しくお願いします」
パン!と手を叩く。
静まり返った場に、聖の一喝が響く。
「南無散!」
各々は持ち場へと散らばっていった。
かの一言には挨拶から幻想郷の未来まで全てが込められているのだ。
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シーン1:星&ナズーリンの場合
星とナズーリンは寺の裏にある倉庫の掃除を担当することとなった。
ここは聖が封印される前から余り使っていなかったこともあり、ほとんど清掃されていない状態である。
「うわ、埃っぽいですね」
「倉庫というよりはほとんどガラクタ置き場と言った感じですね」
「では私は少し奥の方を見てきます」
そう言って、星の姿は倉庫の奥に消えていった。
やれやれ、ここを掃除するのは一苦労だな、とナズーリンは思う。
とりあえず物が溢れすぎている状態なので、一目見て明らかにガラクタと思えるものを片っ端から外に放り出していく。
そうこうしている内に、少しずつ壁が見えるようになってきた。
「さて、とりあえずはこんなところだろう。この中に必要なものがあるとは思えないが、
念のためにご主人にも確認を取ってみるか」
すると向こうから聞きなれた声が近づいてきた。
「ナズーリン、大変です!大変です!」
やれやれ、またかとナズーリンは溜息をつく。
星のあの台詞は、大抵何かを失くした際の決まり文句だからである。
(大方、片付けている最中に何か落としてしまい、見つからなくなったといったところか)
「どうしたんです、ご主人。また何か失くし……うおっまぶしっ!」
そこにいたのは寅丸ではなかった。
「髪の毛を失くしてしまいました!どうすれば良いでしょう!?」
「それじゃハゲ丸じゃねえかぁああああ!!??」
失くした!?髪の毛を!?どうやればそんなもん失くせるんだこの人は!
いや、でもご主人様の普段のボケっぷりからしてあり得ない話では……。
待て待て、髪の毛なんて失くそうとして失くせるものか!?
そもそもあんな綺麗に一本残らずなんて……。
あ、何気に一本だけ残ってる。
はっ!まさか普段のご主人はカツラだったということか!?
だとしたら私は仕えるべき主人を見誤ったのか……!
「なーんて、冗談ですよ。」
「へ?」
星は頭に手をやると、光り輝いていたそれをスポっと外す。
すると、いつも通りの星の髪型が出てきた。
呆然とするナズーリン。
「とりあえずいらなそうなものを処分しようと探していたら、こんなものが見つかったんです。
どうでしょう?驚きましたか?」
星はまるで子供みたいに瞳をキラキラと輝かせて聞いてくる。
恐らく、本人に悪気は全くないのだろう。
それが分かってしまえるから、余計にやるせなくなる。
これでは怒りたくても怒れない。
「ああ、驚いた……驚いたからもうそれは着けないでくれ。
ちょっとしたトラウマになってしまいそうだよ……。」
疲労感に満ちた溜息をつくナズーリン。
驚きの余り、星に対して敬語ではなく地の口調が出てしまっている。
星はそんなナズーリンを咎めるでもなく、してやったりと嬉しそうに微笑んでいる。
(ふふ、久しぶりにナズーリンと普通にお話できそうですね)
普段、どうしても態度が固くなりがちなナズーリンに対しては、
一度何かでそれを崩してからの方が自然に話せる。
星はそのことを良く知っているのであった。
「しかし、あんなものがなんで倉庫なんかにあったんだろうか?」
「雲山が威厳を出す為に手に入れたとも、一輪が坊主になるのを嫌がって、
ごまかす為に手に入れたとも諸説あるようですが……」
「……どちらにせよ、深く追求しない方が良さそうだね」
ナズーリンは想像しようとして、思わず首を振る。
前者はともかく後者は余り考えたくない。
「で、とりあえずいらなそうなものは大体引っ張りだした訳だけど、何か必要なものはあるかい?」
星は外に積んである山を一瞥して、首を振った。
どれもこれも使い道の分からないものや、もう使うあてのないものばかりである。
「ほとんどガラクタばかりですし、全て処分で良いと思います。ですが、どうしましょう?」
「それに関しては私に考えがある。以前、宝塔を見つけた古道具屋の店主がこういうガラクタを集めているらしい。
上手くすればお金にもなるかもしれないし、あそこに持っていくのが良いだろう」
「なるほど、さすがナズーリンですね!」
「い、いや……別に大したことではないさ」
星の裏表のない称賛にナズーリンは照れて顔を少し赤くする。
その機を逃すような星ではなかった。
「では、早速行くとしましょう!」
「え?今すぐにかい?」
「ええ、善は急げと言いますし、処分するまでが掃除です!さあさあ、行きましょう!
ついでに終わったら散歩でもしましょう!」
星はそう宣言すると、躊躇しているナズーリン手を強引に引く。
急に伝わってくる手の温もりに、ナズーリンの顔が少し赤くなる。
「ちょ、ちょっと星!……じゃなかった、ご主人!まだ倉庫の掃除が全部終わった訳じゃ……!」
「いいじゃないですか、せっかく良い散歩日和なんですし」
一応抗議をしてみるも、星は笑顔を崩さない。
ああ、また自分は結局ご主人に振りまわされるのか、とナズーリンは思う。
だが、思っていることとは反対にその顔は笑顔であった。
□
シーン2:聖&一輪の場合
「僕の名前は聖~!」
「僕の名前は白蓮~!」
「二人合わせて南無三だー!きーみと僕とで南無三だー!」
合ってない!姐さん、まったく合わさってないですからそれ!
一輪は突っ込みたい気持ちを懸命に抑える。
機嫌良く歌いながら掃除を続ける聖を見ているとなぜか突っ込むことが吝かに思えてしまう。
「どうしました、一輪。手が止まっていますよ?」
「あ、はい、すいません。」
聖は奇妙な歌を歌いながらではあるが、そのペースは速い。
慌てて掃除を再開する一輪。
しばらくは会話らしい会話もないままに掃除を続ける。
ある程度片付いてきたところで、おもむろに一輪が口を開いた。
「姐さん、お聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか?」
「どうしたんですか、改まって」
きょとん、と首をかしげる聖。
「姐さんは、封印されていた間はどのような状況だったのでしょうか?」
それが一輪にはどうしても気になっていたことであった。
封印というのだからてっきり意識も含めて完全に封じられていると思っていたが、
封印が解かれた直後の聖は現状こそ把握していなかったが、封印されてからの時間の経過は把握していた。
その上、スペルカードルールも知っており、自らもそれを使用していた。
「ああ、法界にいた時のことですか。そうですね……。意識ははっきりしてました。
ただ、力は完全に封印されていたので身動きは取れませんでした。
周りを見渡しても誰もいないし、何もない。法界はそういう場所でした」
「寂しくは……なかったんですか?」
一輪は自分が聖の置かれた状況になったら、と想像してみる。
とてもではないが、精神が保ちそうになかった。
「寂しくなかった、と言えば嘘になります」
そこで聖は一息ついて、顔をあげる。
「ただ、一人ではありませんでした」
「え?」
「いつの頃からだったかは忘れましたが、封印されているはずの法界に誰かが入り込むようになったのです」
「ええ!?」
「頻度は何年かに一回程度でしたが、それが私にとっては他者との他者との唯一の繋がりでした。
彼女との話は他愛もないものばかりでしたが、とても楽しいものでした。
彼女がいなければ、私はどうなっていたか分かりません。
何処に住んでいるかも分かりませんが、いずれ会って改めてお礼を言いたいと思っています」
「そうだったのですか……そのような方が……」
一輪はその妖怪に対して深い感謝の念を抱いた。
同時に、自分がもっと早く姐さんを救えていれば、とも思った。
「その妖怪はどんな方だったのでしょうか?」
「『ゆかりん☆生後204ヶ月☆』と名乗る謎の女性でした。何故か妙に気が合いました」
一輪は口から血を吐いて倒れた。
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シーン3:村紗の場合
「うーん、私だけ一人っていうのはちょっと寂しいなぁ」
箒と塵取りを器用に使って寺の外を掃除していた村紗だが、
やはり一人でやっていると次第に飽きてくる。
レレレのレーと叫びながら箒を動かしたりもしてみたが、途中で虚しくなってやめた。
「よし、さっさと終わらせて皆に混ぜてもらおう!」
村紗は箒を持つ手に力を込める。
目の色が変わり、全神経を手に集中する。
その全ての力を今まさに解放しようとした瞬間、突然背後から何かが降ってきた。
「う~らめ~しや~!」
「うきゃあ!?」
落下物の招待は小傘だった。
全神経を集中してたところを突然崩された上に、小傘の傘の舌が首の敏感なところに重なり、
その何とも言えない感触に村紗は思わず悲鳴をあげてしまう。
「わーい!やっぱり水蜜ちゃん驚いてくれるから大好きー!」
一方の小傘は村紗が驚いてくれたことに大喜びの様子で、むぎゅーと抱きしめる。
「こ、小傘ちゃん、落ち着いて―!」
嬉しそうに抱きつく小傘を振りほどくことも出来ず、真っ赤になってわたわたする村紗。
実は最近小傘は命蓮寺によく訪れている。
最初に訪れた時には命蓮寺の面々を驚かそうとしたが、ことごとく失敗に終わった。
聖に至っては、「あら、今日も来たのね。くつろいでいってね」と完全にスルーしていた。
そんな中、唯一小傘に驚いてくれる村紗の存在は正に救世主だった。
「うう、最近ひもじい思いばっかりしてたけど、ようやくお腹が膨れたよ……」
「いや、まあいいんだけどね、今日はどうしたの?」
「遊びに来た……じゃなかった、今日こそここの寺の人々を驚かせに来たのよ!」
手に持った傘をくるくるまわして「うらめしや~」と決めポーズをする小傘。
ちなみに小傘の存在は命蓮寺の面々にはもはやマスコットのようなものであり、
そのことを知っている村紗は「あはは……」と苦笑するしかない。
「ええと、今日はちょっとやめた方が良いかもしれないよ。今大掃除中だから」
普段ならともかく、今中に入っても相手にされない可能性が高い。
「あれ、そうなんだ?じゃあもしかして水蜜ちゃんも?」
「うん。私は外の掃除だけどね」
村紗は自分の手にある箒を見せる。
それを聞き、腕を組んでうんうん唸る小傘。
やがて、何か良い案を思いついたかのようにパッと顔をあげる。
「じゃあせっかくだから私も手伝うよ!」
「ええ!いいよ、悪いし……」
「ううん、水蜜ちゃんにはいつもお世話になってるし、何かお礼をしたいと思ってたんだ!」
小傘の言葉に村紗はくすぐったそうに照れ笑いをする。
「じゃあ……二人で一緒にやろっか!」
「うん!」
二人は笑顔で協力しながら掃除を開始する。
先ほど感じた寂しさは、もう村紗の中にはなかった。
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シーン4:大掃除終了
「皆、今日は一日お疲れ様でした。つたないお礼ですが、本日の夕飯は私が担当させて頂きました」
「さすが聖ですね。見事な腕前です」
「むう、さすが姐さん。私ももっと勉強しなきゃ……」
「ところでナズーリンって料理出来るの?」
「それは機密事項につき教えられない」
仕事を終えた満足感からか、
そんな中、ポツリと小さな声が食卓に届いた。
「……あの、ところで私は何でここにいるの?」
食卓には何故か小傘もいた。
「貴方もお掃除を手伝ってくださったんですから、是非ご一緒にと思いまして」
「うう、嬉しいんだけど、驚いてくれたらもっと嬉しいのに……」
その言葉に村紗を含め全員が苦笑する。
聖は母親のような優しい笑みで、小傘の頭を撫でる。
「や、やめてー」と真っ赤になるが、満更でもない表情だった。
ちなみに一輪はその光景を羨ましそうに見ていた。
「さて、せっかくの御飯が冷めてしまうので、頂きましょう」
食卓についた全員が手を合わせて、一礼する。
「「「「「「いただきます」」」」」」
こうして、命蓮寺の平凡な一日は終わりを告げるのであった。
(終)
「あら?そういえば雲山が見当たらないけどどうしたのかしら?」
「ああ、何かひなたぼっこしてたら蒸発したみたいですよ」
「そうですか。まあ天気が悪くなれば帰って来るでしょうし、問題はないですね」
「なあ、聖も一輪もどうしてそんなに冷静なんだ……?」
星とナズーリン、小傘と水蜜の仲の良い姿とか白蓮が歌っているのとか面白かったです。
ほのぼのとギャグが上手く融合してて、おもしろかったです!
笑いすぎて腹筋が大変な事に…。
やっぱり聖蓮船メンバーの話はほのぼのするね
信仰は儚き人間の為にで良いですか?
二人合わせて南無三とかヤバいwww
のっけから吹いちまった。笑いの沸点低くてサーセン
「僧侶たるもの、やはり頭は丸めなければいけませんね」と言って被って
「みんな俯いて肩を震わせながら聞き入ってくれるなんて……」
とか思いながら恍惚の表情で説法をしていたに違いない。
そして真実を知りひじりんが封印したものかと……
あとBB・・・紫は204世紀の間違いjy(スキマ
あんた、天才以外の何者でもないw