[文々。新聞コラム 『天狗の手帳』より抜粋]
幻想郷の名物騒霊、プリズムリバー三姉妹の日常は実に騒がしい物である。
主な活動は幻想郷の宴会や祭りを盛り上げるライブ活動。
場を盛り上げる音楽は、賑やかな空間にとって無くてはならない物なのだ。
長女のルナサ・プリズムリバーは欝の音を奏でるバイオリニスト。
その音色を耳にした者は、等しく生きる気力を失ってしまうと言う。
実に迷惑だ。
次女のメルラン・プリズムリバーは躁の音を奏でるトランペッター。
その音色を耳にした者は、等しくテンションが有頂天になってしまうと言う。
実に迷惑だ。
三女のリリカ・プリズムリバーは幻想の音を奏でるキーボード演奏者。
幻想の音色はどんなに頑張っても聞こえないので、彼女達のライブを観賞した客は誰しも『リリカさんは存在感が薄い』と言う。
実に可哀想だ。
本日は、そんなプリズムリバー三姉妹のもう一つのお仕事を紹介しよう。
その仕事とは、作曲活動である。
今回は、過去にプリズムリバー三姉妹に作曲を依頼した方々のお話を伺ってみよう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
・ケース1 八雲紫氏の場合
私――八雲紫がプリズムリバー三姉妹の住家を訪れたのは、ある夏の日の事でした。
夏祭りのライブに向けてセッションの練習をしている彼女達を見つけるのは、予想以上に簡単な事なのです。
何故なら、彼女達の周囲においては静と騒の境界が不安定だから。
だから、私は己の能力を用いてその場所を探せば良い。
練習中に突然の来訪をしたと言うのに、彼女達は私を快く受け入れてくれました。
ほんの少しだけ、隙間妖怪の唐突な登場に驚いている様ですけど……まあ、確かにキーボードの鍵盤の隙間から現れたのはちょいと演出過剰だったかもしれません。
今後は、もう少しおどろおどろしさを控えめにしようと思います。
「えーっと、長女のルナサ・プリズムリバーです。隙間妖怪の八雲紫さんですよね。
本日は、一体何の御用で私達の所へ?」
代表として、私の話を聞く事になったルナサが一歩前に出て私と相対します。
背後に控えるのは、ルナサの妹のメルランとリリカ。
リリカは私の登場がトラウマになってしまったらしく、私と目を合わせてくれません。
……ちょっとだけ、ショックですね。
とは言え、ショックを受けている場合ではありません。
今の私は、彼女達の貴重な練習時間を奪っているのですから。
話は手短に済ませなければ……!!
「実は、貴女達プリズムリバー楽団に作曲の依頼があります」
「作曲依頼……ですか?」
「私達が、紫さんの依頼で音楽を!?」
「ほへー。何だか分からないけど、凄い音楽が作れそうだねー」
怪訝な顔をしているルナサ。突然の依頼に驚いているリリカ。能天気な笑みを浮かべているメルラン。
三者三様の反応は、彼女達の性格の違いを現している様で実に面白い物です。
「ええ、その通り。この度は私に相応しい音楽を作曲して頂けないかと思い、依頼に参りました」
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!」
声を上げたのは、ルナサでした。
「紫さんに相応しい音楽なら既にあるじゃないですか!
大妖怪に相応しいおどろおどろしさ! 隙間妖怪に相応しい二重の旋律! 残酷さを体現した様な禍々しさ!
誰もが紫さんに相応しいと口を揃えて言うであろう、あの名曲――」
ああ、ルナサ……やはり貴女も『あの曲』が私の曲だと思っているのね。
けれども、私はそれでは満足が出来ないのです。
だからこそ、貴女達を訪れたと言うのに……
そして、私がほんの少しだけ残念な気持ちになっている間にも、ルナサは『あの曲』のタイトルを口にしていました。
「あの名曲――『ネクロファンタジア』が!」
ああ、やはり貴女もその曲を知っているのですね。
「あ、その曲は私も知ってるー。すっごくテンポが早くて、かっこいいんだよねー」
「同じく、私も知ってるわ。何時かソロで演奏したいと思っている、憧れの曲ね」
どうやら、メルランとリリカも私の曲を知っている様です。
それ程までに、この幻想郷においては『八雲紫=ネクロファンタジア』の図式が定番化しているのでしょう。
私が……私が、その曲のせいで深く傷付いていると言うのにっ!!!!
「紫さん……私達に依頼をするのなら、教えてくれませんか。
何故、あんなにも美しい音楽を持ちながら、貴女が他の音楽を望むのか」
「……分かりました。クライアントとして、私の事情を説明するとしましょう。
『ネクロファンタジア』と言う曲を与えられた事で、この八雲紫が周囲に言われ続けた様々な言葉の暴力を……」
そして、私は隙間の中からメモを取り出すと、そこに記された言葉を読み上げました。
その言葉を発した、暴力の主の名も一緒に添えて。
「……博麗霊夢の言葉より抜粋。『あんたねぇ……服も口調も能力も性格も弾幕も胡散臭いのに、音楽まで胡散臭くしてどうするのよ?』」
瞬間、目の前の三姉妹の顔色がさぁっと青ざめるのが分かりました。
三人とも、『地雷を踏んでしまったぁ!!!!』とでも言いたげな表情です。
「因幡てゐの言葉より抜粋。『私も貴女も年齢や性格はさほど変わらないのに、こうも音楽のせいで周囲のイメージが変わるんだね』」
「あ、あのっ! 紫さんっ!!!」
ルナサの静止も構わず、私はメモを読み続けます。
「ルーミアの言葉より抜粋。『おばちゃんは、怖い妖怪なのかー?』
上白沢慧音の言葉より抜粋。『すまん。寺子屋の子供達にあまり近寄らないでくれないか……お前の音楽を怖がってる子も居るんだ』
射命丸文の言葉よりっ……う、ううぅっ…………ぁぁぁぁっ…………!!!!!!
どうして……!? ねぇ、どうしてなのっ……!?
あの妖怪さとりだって、私と同じく一家の長なのでしょう!? なのに、どうしてあの地底娘は少女扱いされているの!?
『少女さとり ~ 3rd eye』だって禍々しい音楽じゃない!
なのに、あっちは『影がある少女って素敵!』『哀れな俺を踏んでください!』『さとりちゃんに心を読まれたい』って意見ばかり!!!
私なんかよりもずっと禍々しい能力を持っていて、地底ですら嫌われていると言うのに……なのに、あの娘はどうして少女扱いされているの!?!?」
「紫さん! もう止めてくださいっ!」
「分かりましたからっ! 紫さんの気持ちは痛い程伝わりましたから!!」
辛辣な言葉の刃をなぞり返していた私の瞳からは、何時の間にか涙が零れ落ちていました。
誰もが、私を誤解しているのです。
本当の八雲紫はちょっぴりお茶目で、可愛くて、ドジなネボスケ少女だと言うのに……!!!
誰も彼もがおどろおどろしい、残酷で狡猾、残虐な年増妖怪だと思っているのですっ!!!!
そして、その原因は……あのおどろおどろしい音楽、『ネクロファンタジア』に他なりません!!!
あの音楽が、私の可憐なイメージを禍々しいイメージで塗りつぶしているのです!!!
まるで、純白のハンカチが墨汁で染め上げられる様にっ!
「私達に任せてください! 必ずや、紫さんのイメージアップを実現出来る様な音楽を作って見せますから!」
「そうですよ! もう紫さんを怖い妖怪だなんて呼ばせません! 紫さんは可憐でちょっぴりドジな乙女として生まれ変わるんです!」
「私も頑張っちゃいます! もう絶対に、音楽で紫さんを泣かせたりなんかしません!!」
三人の騒霊は、こんな私に優しい声を掛けてくれました。
ああ、こんなにも温かい気持ちになれたのは……今朝、二度寝をした時のぽかぽか気分以来です……
そのせいで寝汗をかいてしまい、じっとり嫌な気分になってしまったのですけど。
「メルラン、リリカ――これは、絶対に失敗出来ない仕事だ」
「分かっているわ……紫さんの名誉と明るい未来の為にも、絶対にこの仕事は成功させないとね!」
「ええ。紫さんを救えるのは、私達プリズムリバーだけなのよ!」
「お願いします……どうか……どうか、こんな私を救って下さいな!」
そして、プリズムリバー三姉妹の作曲活動が始まりました。
彼女達が打ち上げたテーマは『可愛さ』『ドジっ娘アピール』『少女』の三つのフレーズ。
それらを如何に音楽で表現するかが最大の問題だったと聞きます。
ですが、彼女達はやってくれました。
こんな、哀れな隙間妖怪である私を音楽の力で救ってくれたのです!
作曲された新BGMは『少女ゆかり ~ 3rd sleep』
既存の曲である『少女さとり ~ 3rd eye』を大胆にアレンジした、実に美しい音楽でした。
まず、タイトルが可愛いのです。
『3rd sleep』ですよ。
『3rd sleep』――直訳するならば『三度寝』ですよ。
ついつい、ウトウトと居眠りをしてしまうドジっ娘な私を表現している素晴しいフレーズだと思いました。
そして、『少女ゆかり ~ 3rd sleep』の最大の特徴は原曲である『少女さとり ~ 3rd eye』のメインメロディー部分で、私の寝言や歯軋り、いびきが使われている事。
そう……この音楽を聴けば、私が貴方の隣で寝ていると言うドキドキシチュエーションを擬似体感できると言う、プリズムリバー三姉妹の心憎い演出なのです。
想像して下さい――貴方の隣で、可憐な隙間妖怪の少女が添い寝をしている風景を。
きっと、胸の鼓動が高鳴ってしまうでしょう?
そう。その胸のトキメキは、言うなれば結界なのです。
八雲紫と言う可憐なドジっ娘に囚われてしまった貴方を二度と離さない、幻想郷で何よりも強固な結界なのです!!
「ありがとう……本当に、ありがとう!」
「お礼には及びません。私達プリズムリバー三姉妹は、紫さんの本来のイメージを形にしただけなのですから」
「頑張って下さい! イメージアップ活動、応援しています!」
新BGMの楽譜を胸に抱きながら、私はプリズムリバーの皆さんと固い握手を交しました。
僅かな紛れもありません――音楽で誰かを幸せに出来る彼女達は、幻想郷で最高にして至高の楽団なのです!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
・ケース2 八坂神奈子氏の場合
軍神である私――八坂神奈子が、噂に名高いプリズムリバー三姉妹を神社に招いたのは、言うなれば必然だったのかもしれない。
古来より、戦場において音楽は心を昂らせ、士気を上げる目的で頻繁に使用されていた文化の一つ。
軍神と楽団――実に馴染む組み合わせだ。
「お招き頂けて光栄です。三女のリリカ・プリズムリバーと申します。
こちらの神社で神様をしておられる、八坂神奈子さんですよね……内密な依頼があると聞いて、参りました」
拝殿の中、私とプリズムリバー三姉妹代表のリリカは、互いに向き合って座っていた。
背後に控えるのは、彼女の姉のルナサとメルランだ。
拝殿の中が珍しいのだろうか? 二人は、きょろきょろと周囲を見回している。
――おっと、モタモタしている時間は無いのだったな。
今の私は、早苗や諏訪子に秘密で彼女達を招いているのだ。
依頼話は、何よりも手短に済ませなければならない。
「実はな……高名なプリズムリバー三姉妹の腕を見込んで、作曲の依頼があるのだ」
「作曲依頼……ですか? 成程……詳しくお話を聞かせて下さい」
「うむ……実は、私の新たなるBGMを作曲して欲しいのだ」
「えぇっ!?」
瞬間、リリカは声を上げていた。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 神奈子さんに相応しい音楽なら、もう既にあるじゃないですか!
軍神に相応しい荘厳なメロディー! 神の圧倒的な迫力を現すパートと幻想的なパートの芸術的なコラボレーション!
諏訪の名を冠した、誰もが神奈子さんに相応しいと口を揃えて言うであろう、あの名曲――」
ああ、リリカよ……やはりお前も『あの曲』が私の曲だと思っているのだな。
だが、私はそれでは満足が出来ないのだ。
だからこそ、楽団であるお前達を内密に招いたのだよ……
やがて、私がほんの少しだけ切ない気持ちになっている間に、リリカは『あの曲』のタイトルを口にしていた。
「あの名曲――『神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field』が!」
ああ、やはりお前もその曲を知っているのか……もはや、私と言えばその曲なのだな……
「私も知っている。神の威厳を漂わせる、実に壮大な音楽だ」
「同じく。守矢神社の二柱の一角の代名詞と言っても良い、素晴しい音楽よね」
どうやら、ルナサとメルランも私の曲を知っているらしい。
それ程までに、この幻想郷においては『八坂神奈子=神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field』の図式が定番化しているのか……!!
私が……私が、その曲のせいでとても深く傷付いていると言うのにっ!!!!
「神奈子さん……もしも私達に依頼をするのなら、どうか教えて下さい。
何故、あんなにも壮大な音楽を持ちながら、貴女が他の音楽を望むのか」
「……そうだな。依頼者として、私の事情を説明するのは当然の流れだ。
説明しようか……『神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field』と言う曲を与えられた事で、この八坂神奈子が幻想郷を訪れてから受け続けていた、数々のむごい仕打ちを……」
私は、懐から台帳を取り出すと、そこに記された言葉を読み上げていた。
その言葉を発した人物の名を添えながら。
「まずは我が神社の風祝、東風谷早苗の言葉より抜粋しよう。
『神奈子様の音楽って、子供が怖がりそうですよね。最近ではそれが信仰回復の妨げになっているんじゃないかと思うんです』」
瞬間、目の前の三姉妹の顔色がさぁっと青ざめるのが嫌でも分かってしまった。
三人とも、『神は死んだッ!!!!!』とでも言いたげな表情だ。
「同じく我が神社の神、洩矢諏訪子の言葉より抜粋。
『神奈子は見た目が怖いんだから、音楽くらい可愛くしないとダメだよー? 私は見た目のおかげで得してるから、派手な音楽も受け入れられてるけど』」
「だ、ダメですっ! それ以上言っていたら、神奈子さんがっ!!!」
リリカの静止も構わず、私は台帳を読み続ける。
「鍵山雛の言葉より抜粋。『神奈子さんの音楽はやたらと怖いだけって感じがするわ。ああ……厄が溜まりそう。他のお二人の音楽は、女の子の儚さや元気が感じられるのにね』
チルノの言葉より抜粋。『あたい、音楽とか神様の事は良く分からないけど……でも、おばちゃんがすっごく怖いのは分かるよ!! サナエおねーちゃんにお祓いしてもらいなよ!!』
ミスティア・ローレライの言葉よりっ……う、ううぅっ…………ぁぁぁぁっ…………!!!!!!
何故だ……!? 何故なのだっ……!?
この守矢神社において、私はもはやお荷物なのか!?
信仰回復を妨げているのは、他ならぬ神である私自身だと言うのか……!?
最近では神社内での扱いも徐々に悪くなっている……今朝の食事は、私だけ漬物が無かった!!! 神に対する不信は、大切な風祝の心まで荒ませてしまったのか!?
早苗と諏訪子っ――外の世界では手と手を取り合って生きていたと言うのに、今となってはあの二人が憎いのだっ!!!」
「神奈子さん! もう止めてくださいっ!」
「分かりましたからっ! 神奈子さんの気持ちは痛い程伝わりましたから!!」
悪夢を思い返していた私の瞳からは、何時の間にか涙が零れ落ちていた。
誰も彼もが、私を誤解しているのだ。
本来の八坂神奈子は、負けず嫌い故についつい勝負にムキになってしまう、植物を愛する可憐な少女だと言うのに……!!!
人も妖怪も、誰も彼もが私を、高圧的で好戦的、暇さえあれば戦争を仕掛けようとする物騒な神だと思っているのだ!!!!
そして、その原因は……あの壮大過ぎる音楽、『神さびた古戦場 ~ Suwa Foughten Field』に他ならないっ!!!
あの音楽が、私の純真なイメージを荒々しいイメージで塗りつぶしているのだ!!!
そう……純白のキャンバスが、どす黒い黒絵の具で染め上げられる様に!!!
「どうか私達に任せてください! 必ず、神奈子さんの信仰回復と家庭円満を実現出来る音楽を作って見せます!!」
「ああ……もう、神奈子さんを物騒な神だなんて呼ばせはしない。音楽で傷付いた家庭を救えるのは、音楽の力だけだ」
「頑張るよっ! 絶対に、音楽で神奈子さんの家庭を幸せにして見せます!!」
三人の騒霊は、こんな哀れな私に頼もしい言葉を掛けてくれる。
ああ、こんなにも頼もしい気持ちになれたのは……昨日の夜、寂しくて寝付けなくて御柱を眺めていた時以来だ……
湖に聳え立つ、何本もの御柱は私の神徳の根源。
あの御柱がある限り、何だって出来る。私が神であるのだと認識する事が出来る。
深夜徘徊をしている不審者だと思われて、早苗に術を撃たれた時はショックだったが……夜に出歩いていた私が悪いのだろう。
「ルナサ姉さんもメルラン姉さんも――これは、絶対に失敗出来ない仕事になるわよ」
「分かっているさ。神奈子さんの家族の幸せの為にも、絶対にこの仕事は成功させないとな」
「そうね。守矢神社を救えるのは、私達プリズムリバーだけだわ!!!」
「頼んだぞ……どうか……どうか、私と私の家庭、そしてこの神社を救ってくれ!!」
そして、プリズムリバー三姉妹の作曲活動が始まった。
彼女達が打ち上げたテーマは『純真さ』『幼さ』『負けず嫌い』の三つのフレーズだった。
それらの要素を、如何にして音楽で表現するかが最大の問題だったと聞く。
だが、彼女達はやってくれた。
恐れられていた私と、不協和音が鳴り響いていた私の家庭を、音楽の力で救ってくれたのだ!!!!
作曲された新BGMは『おてんば戦神』
既存の曲である『おてんば恋娘』を軽快にアレンジした、実に可愛らしい音楽だった。
まず、タイトルが可愛らしい。
『おてんば』だ。
『おてんば』――漢字で『お転婆』と書かず、あえて『おてんば』と表記しているのだ。
『婆』と言う漢字を避ける事で、私の既存イメージを塗り替えようと言う大胆な試みがこの四文字からひしひしと伝わっているではないか!!!!
そして、『おてんば戦神』の最大の特徴は原曲である『おてんば恋娘』のサビ部分で、天より降り注ぐ御柱が奏でる騒音・地鳴り・草の葉が擦れ合う音が使用されていると言う事。
そう……この音楽を聴けば、私の神としての厳格なイメージが自ずと伝わってしまうのだ。
少女らしい幼いメロディーに、神としての威厳を合わせる事で矛盾した二つの要素を無理なく調和させている。
想像してみたまえ……可憐でおてんばな戦神、八坂神奈子が両手でブンブンと、まるで魔法のステッキを振り回す様に御柱を振り回している姿を!!!
可愛いけれど、強い! 絶対に勝負に負けたくないから、頑張って御柱を振り回すその姿は何よりも魅力的ではなかろうか!!! 今なら草が奏でる自然のメロディー付きだぞ!!
そう、この音楽は八坂神奈子と言う負けず嫌い少女と我が神社の信者の間を強固に繋ぐ、幻想郷で何よりも頑丈な注連縄なのだ!!!
「ありがとう……本当に、ありがとう!!! これで信仰も回復間違い無しだ!!」
「お礼には及びませんよ。私達プリズムリバー三姉妹は、神奈子さんの本来のイメージを音楽で表現しただけです」
「信仰回復が成功する事を、私達は心から祈っています」
「頑張ってね! おてんばな神様!!!」
新BGMの楽譜を胸の谷間に挟みながら、私はプリズムリバー三姉妹と固い抱擁を交していた。
音楽の力で信仰回復と家庭円満を同時にこなしてしまう、素晴しい楽団――それが、プリズムリバー三姉妹。
彼女達が、幻想郷で最も偉大な音楽家である事は、神である私が保証しよう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
如何だっただろうか?
隙間妖怪と軍神――異なる二者が抱えていた悩みを、プリズムリバー三姉妹は音楽の力で見事に救っていたのだ。
音楽の力とは、実に偉大な物である。
筆者である私、射命丸文は『風神少女』や『妖怪の山 ~ Mysterious Mountain』と言った二種類のBGMを所有している。
しかし、それで表現されるのはあくまでも新聞記者としての私と天狗としての私なのだ。
射命丸文と言う、少女の私を表現する音楽は果たして存在するのだろうか?
何時の日か――私が、己のBGMによって苦しみを味わい、絶望に飲み込まれる日が来るかもしれない。
だが、私は不安を感じていない。
何故なら、この幻想郷には偉大なる作曲家――プリズムリバー三姉妹が居るのだから。
彼女達が居る限り、幻想郷の音楽は人々を幸せにし続けるのだ。
(記者 射命丸文)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
[同新聞より、コラム以外の記事の見出しを抜粋]
・隙間妖怪の新BGMのせいで不眠症になる男性が続出! 八意永琳激白!! 「あれは不眠推進BGMよ」
・守矢神社の信仰が激減!! 原因は……謎の騒音? 地響きが五月蝿くて発狂する河童も!!!
・プリズムリバー三姉妹 命蓮寺とコラボレーションで新曲を発表! 「Welcome Temple -763- ナムサン!!」
一つ貰おうか
メロンブックスで限定発売ですね分かり(ry
私にも一つ
永琳は困ってないんですか?
で鼻に午後ティー入っちまったぜ
いつ発売するんだよ
古戦場だって転調後は…
冬コミ心待ちにしておりますwww
読みながら、東方の懐の深さを感じました。
しかし、確かにゆかりんの可愛らしさを全面に出した楽曲もあってもいい。
星「・・・」
>植物を愛する可憐な少女
幽香「・・・」
「「・・・ねーよ」」