「なにそれ?」
私は家に帰って早々、椅子に座って緩みきった顔をしている一番上の姉、ルナサの膝の上に座ってプリンを食べさせてもらっているその子供を指差しながらそう言った。
「もぐもぐ」
「嫌ねぇリリカったら。見てわからない? ルーミアよ」
その、当の本人とルナサに聞いたはずだったが華麗にスルーされ、変わりとばかりに台所の方から出てきた二番目の姉、メルランがそう告げてきた。メルランはそのまま私の目の前を通り過ぎると、ルナサとルーミアの前に焼きたてのクッキーを置く。香り立つ甘い芳香にルーミアは瞳を輝かせた。
「いやそれはわかるけど……どうしてんなとこにいるのかはさっぱりわからないわ」
「そう、じゃあ教えてあげましょう」
言って、手に持っていたお盆をテーブルに置いた。
「実はこの前気付いたんだけど」
そしてメルランはルーミアの頭にぽんと手を乗せる。
「ルーミアは私達の妹だったのよ」
「待て」
思わず静止の言葉と共に、姉の背中へ手が伸びる。が、メルランはこちらの手をやけにぬるぬるした動きで華麗に避けた。
「そんなわけで、姉妹なら同じ屋根の下で暮らすのは当然でしょう? だから家に連れ去……連れて来たのよ」
「今連れ去るって言おうとしたよね」
「ぱぷー♪」
そ知らぬ顔でトランペットを吹き始めるメルラン。能力を使えば手も口も使わずに吹けるくせに。
私は相変わらずのわけのわからない方の姉の行動にわしゃわしゃと自分の頭をかき回す。そして、比較的わけのわかる方の姉へ向き直った。
「まさかルナ姉、メルラン姉の世迷言を信じてるわけじゃないでしょうね」
さすがに真正面から問いただされて無視するわけにもいかなかったのか、ルナサは顔を上げてこちらを見た。……若干、「あれ? いつの間にいたの? 気付かなかった」みたいな顔をされた気がするが、きっと気のせいだろう。ルナサは一瞬だけこちらの顔を見て、それから何かを誤魔化すようにふいっと視線を切った。
「私も信じがたかったわ。ずっとこれまで、姉妹三人で暮らしてきて急にもう一人妹がいたって言われても、ね」
遠くを見る目で語りだしたルナサ。その目はどこか昔を懐かしむような、憂いを秘めた瞳だった。
――ふと特に根拠も無い嫌な予感が脳裏を過ぎった。
「だけどね、リリカ。さっきメルランに言われて思い出したの」
一転、ルナサが強い眼差しをこちらに向ける。強く、優しく……それでいて、まるで見当違いの所を眺めているようなズレた視線。
――まさか、ね。
ルナサは膝からルーミアを下ろし、私の目の前に凛と立って、はっきりとこう言った。
「私達って四姉妹だった気がするのよ」
「レイラを忘れるなァァァァァァァァァァ!!!」
ごがん、と。
思わず放った右アッパーがルナサの下顎に直撃して、そのような鈍く生々しい音を立てた。私は血を吐きながらテーブルに直角に突き刺さる姉という非現実的なものを見ながら、「あぁ、騒霊でも前歯って折れるんだな」なんて事を考えていた。
と、そこでどがっしゃーんとけたたましい音が響き、正気に戻る。そして口の端から血を零しながら痙攣しているルナサの襟を掴んでがくがくと揺すりながらまくし立てる。。
「この馬鹿! 馬鹿ルナ! よりにもよってそこを忘れる普通?! 私たちの根幹でしょ!」
「そんな事言われても、立ち絵や台詞はおろか設定集にしか乗ってない存在が妹って言われても実感わかないし」
「そんな理由があるかこのアホルナ! 第一それでどうしてルーミアが妹になるの!? 接点が全くないでしょ?!」
「だってほら、私どことなく似てるじゃない……名前とかカラーリングとか」
「姉妹だからって似てるとは限らないでしょ?! 第一私たちもそんな似てないし!」
「あと、ほら、その……可愛いし」
「何それ?! 私たちは可愛くないって言うの?!」
「いえ、あなたもちゃんと可愛いわよ……身内への贔屓目をうまく利かせれば結構可愛く見える事もあるわ……うん、可愛く見える事もあるわよ……うん……可愛いわよ……可愛い……」
「なんか自分に言い聞かせてるように見えるんだけど! すごく無理をしてるように見えるんだけど! あぁもう!」
だんだんと視線が下に、語尾が低くなっていくルナサに業を煮やして襟ごと投げ捨てる。ルナサはヒェーと言いながらまたテーブルに直角に突き刺さった。私はそちらにはもう目もくれず、今度はメルラン姉の膝元でクッキーを食べ始めたそれをきっと睨みつける。
「えぇい! そこの子供!」
「むしゃ?」
「食いながら疑問符返すな! とにかく、本当に私たちの妹ならこの問題が解けるはずよ!」
びしっと人差し指を突きたて、怪訝顔をしているルーミアを問いただす。
「私たちプリズムリバー三姉妹の次女、メルラン=プリズムリバーが操る音は?!」
ルーミアは間髪いれずに答えた。
「躁なのかー」
「「「妹だー!」」」
「わーい」
三姉妹による胴上げが行われ、ここにプリズムリバー家の四女、ルーミア=プリズムリバーが誕生した。
数日後、飽きたメルランが「そんなわけないでしょ」と言うまで四姉妹は仲良く暮らしたという。
私は家に帰って早々、椅子に座って緩みきった顔をしている一番上の姉、ルナサの膝の上に座ってプリンを食べさせてもらっているその子供を指差しながらそう言った。
「もぐもぐ」
「嫌ねぇリリカったら。見てわからない? ルーミアよ」
その、当の本人とルナサに聞いたはずだったが華麗にスルーされ、変わりとばかりに台所の方から出てきた二番目の姉、メルランがそう告げてきた。メルランはそのまま私の目の前を通り過ぎると、ルナサとルーミアの前に焼きたてのクッキーを置く。香り立つ甘い芳香にルーミアは瞳を輝かせた。
「いやそれはわかるけど……どうしてんなとこにいるのかはさっぱりわからないわ」
「そう、じゃあ教えてあげましょう」
言って、手に持っていたお盆をテーブルに置いた。
「実はこの前気付いたんだけど」
そしてメルランはルーミアの頭にぽんと手を乗せる。
「ルーミアは私達の妹だったのよ」
「待て」
思わず静止の言葉と共に、姉の背中へ手が伸びる。が、メルランはこちらの手をやけにぬるぬるした動きで華麗に避けた。
「そんなわけで、姉妹なら同じ屋根の下で暮らすのは当然でしょう? だから家に連れ去……連れて来たのよ」
「今連れ去るって言おうとしたよね」
「ぱぷー♪」
そ知らぬ顔でトランペットを吹き始めるメルラン。能力を使えば手も口も使わずに吹けるくせに。
私は相変わらずのわけのわからない方の姉の行動にわしゃわしゃと自分の頭をかき回す。そして、比較的わけのわかる方の姉へ向き直った。
「まさかルナ姉、メルラン姉の世迷言を信じてるわけじゃないでしょうね」
さすがに真正面から問いただされて無視するわけにもいかなかったのか、ルナサは顔を上げてこちらを見た。……若干、「あれ? いつの間にいたの? 気付かなかった」みたいな顔をされた気がするが、きっと気のせいだろう。ルナサは一瞬だけこちらの顔を見て、それから何かを誤魔化すようにふいっと視線を切った。
「私も信じがたかったわ。ずっとこれまで、姉妹三人で暮らしてきて急にもう一人妹がいたって言われても、ね」
遠くを見る目で語りだしたルナサ。その目はどこか昔を懐かしむような、憂いを秘めた瞳だった。
――ふと特に根拠も無い嫌な予感が脳裏を過ぎった。
「だけどね、リリカ。さっきメルランに言われて思い出したの」
一転、ルナサが強い眼差しをこちらに向ける。強く、優しく……それでいて、まるで見当違いの所を眺めているようなズレた視線。
――まさか、ね。
ルナサは膝からルーミアを下ろし、私の目の前に凛と立って、はっきりとこう言った。
「私達って四姉妹だった気がするのよ」
「レイラを忘れるなァァァァァァァァァァ!!!」
ごがん、と。
思わず放った右アッパーがルナサの下顎に直撃して、そのような鈍く生々しい音を立てた。私は血を吐きながらテーブルに直角に突き刺さる姉という非現実的なものを見ながら、「あぁ、騒霊でも前歯って折れるんだな」なんて事を考えていた。
と、そこでどがっしゃーんとけたたましい音が響き、正気に戻る。そして口の端から血を零しながら痙攣しているルナサの襟を掴んでがくがくと揺すりながらまくし立てる。。
「この馬鹿! 馬鹿ルナ! よりにもよってそこを忘れる普通?! 私たちの根幹でしょ!」
「そんな事言われても、立ち絵や台詞はおろか設定集にしか乗ってない存在が妹って言われても実感わかないし」
「そんな理由があるかこのアホルナ! 第一それでどうしてルーミアが妹になるの!? 接点が全くないでしょ?!」
「だってほら、私どことなく似てるじゃない……名前とかカラーリングとか」
「姉妹だからって似てるとは限らないでしょ?! 第一私たちもそんな似てないし!」
「あと、ほら、その……可愛いし」
「何それ?! 私たちは可愛くないって言うの?!」
「いえ、あなたもちゃんと可愛いわよ……身内への贔屓目をうまく利かせれば結構可愛く見える事もあるわ……うん、可愛く見える事もあるわよ……うん……可愛いわよ……可愛い……」
「なんか自分に言い聞かせてるように見えるんだけど! すごく無理をしてるように見えるんだけど! あぁもう!」
だんだんと視線が下に、語尾が低くなっていくルナサに業を煮やして襟ごと投げ捨てる。ルナサはヒェーと言いながらまたテーブルに直角に突き刺さった。私はそちらにはもう目もくれず、今度はメルラン姉の膝元でクッキーを食べ始めたそれをきっと睨みつける。
「えぇい! そこの子供!」
「むしゃ?」
「食いながら疑問符返すな! とにかく、本当に私たちの妹ならこの問題が解けるはずよ!」
びしっと人差し指を突きたて、怪訝顔をしているルーミアを問いただす。
「私たちプリズムリバー三姉妹の次女、メルラン=プリズムリバーが操る音は?!」
ルーミアは間髪いれずに答えた。
「躁なのかー」
「「「妹だー!」」」
「わーい」
三姉妹による胴上げが行われ、ここにプリズムリバー家の四女、ルーミア=プリズムリバーが誕生した。
数日後、飽きたメルランが「そんなわけないでしょ」と言うまで四姉妹は仲良く暮らしたという。
「躁なのかー」は秀逸すぎる。
ルーミアの楽器は……うーん……
バカルナアホルナがなんかよかった自分は異端
とりあえずどこから突っ込めばいいのかわからないくらい躁なので草はやしときますねwwwww
これはいいwww
「躁なのかー。…ふふっ」っと思い出し笑いしそうです。