テンポのよい漫才? のようなものを表現しようと
ほとんどの内容が会話のみになっています。
動作がなくても比較的イメージしやすいように組み立ててみましたが、その辺をご容赦いただきまして、楽しんでいただければ、幸いです。
< 笑いのわかる二人組? >
舞台の幕が上がり、舞台袖から駆け足で登場。
その二人組、鈴仙と妖夢は中央までやってくると、ぺこりっと頭を下げた。
舞台横の紙にはその二人組の名前『鈴夢従者組』という文字が書かれていた。
「はいどうも~鈴仙です」
「魂魄妖夢です」
「二人合わせて~」
「うどん粉用従者組で――」
「ちょ、ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待った!
おかしい、おかしいよね! さっきの打ち合わせと名前違うよね?」
「あれ? そうでしたっけ?」
「私の 鈴 と あなたの 夢 で 鈴夢従者組(すずゆめ)っていってたじゃん」
「……そのへんはあれですよ。
なんというかアドリブってやつですよ」
「なんでその対象がコンビ名なのかがすごーーくに気になるわけだけど……
従者組はわかるとして、なんで『うどん粉用』なのよ」
「ほら、鈴仙さんの名前の中に、たしかそれっぽいものあったじゃないですか。
えーっと、ほら。
……あ、そうそう! うどん屋イン!!」
「うん、違うね。ぜんっっっっぜん違うね!」
「……一文字しか違わないのに」
「意味合いが違うでしょうが、意味合いが!
……って、ちょっと待ちなさいよ。一文字違ってることわかってるってことは、本当は知っててそういうこと言ったんでしょ!」
「…………
それで、残りの 粉用 という部分が魂魄の こ と 妖夢 の よう をとったわけで――」
「さらっと無視して進めるなー!!
とにかく、そのコンビ名はなし! いいわね」
「もう、強引な人ですねぇ」
「コンビ名いきなり変えるのは強引っていわないの?」
「そういう細かいことを気にしていては、従者の仕事は務まりませんよ。
気疲れする仕事ですし」
「……なんだか納得いかないけど。
確かに、疲れるわね、毎日。私は従者というよりも師弟関係になりそうだけど、師匠が厳しくて。毎日涙を流しているせいか、ほら、こ~~んなに目が紅く♪」
「………」
「え、え~っと、ほらほら。こ~んなに目が紅く」
「……え?」
「首を傾げるなああぁぁぁ!!
突っ込むとこ!! 目が紅いのは元からでしょう? って突っ込むとこ!
打ち合わせしてたでしょう!」
「……あぁ、あのときの。ただの雑談じゃなかったんですね」
「なんで雑談でこんな話題振らなきゃいけないのよ!
あなたが突っ込まないせいで、私がへんなポーズとっただけみたいになっちゃったじゃないの!」
「……それはお可愛そうに」
「人事かっ! 思い出して! 私たちコンビ。
ね? 今お笑いコンビでしょう?
協力し合うことって、すごい大切でしょう従者にとって」
「協力、いいですねぇ。心に染みる言葉ですよ」
「だから、もっとしっかりがんばって盛り上げていかないと」
「はい、おまかせください!」
「その返事、元気いいけどいまいち信用できないんだよなぁ……
まあ、いいけど……」
「そういえば協力で思い出しましたが、鈴仙さんはいつも誰かと協力してるんですか?」
「私は妖怪兎たちと協力して、満月の夜に餅をついたり。
それに、てゐと一緒に師匠の手伝いくらいかな。
一人で黙々とするよりも、やりがいがあるというか、そっちはどう?」
「ええ、助かってますよ。
でもみんな幽霊で、あまりしゃべらないからちょっと怖いんですけど。
夜に人魂が浮いているのを見ただけで正直鳥肌がたってしまって」
「あー、そういえば苦手でしたもんね。幽霊。
半人半霊だから少しは耐性あるのかと思うところだけど」
「お恥ずかしいことに全然慣れないんですよ。自分の半霊なら大丈夫なんですが。
それでも、仕事に集中している間はそんなこと忘れてしまいます。
特に、食事の準備なんて」
「そういえば食べるって有名ですからね。そちらの主人は。
妖怪の夜雀も食べようとしているとか」
「そうなんですよ、あれを止めるのに私も苦労するんですよ」
「あはは、もしかして。
白玉楼の幽霊の半分くらいが、あなたの主人に食べられた妖怪とか人間の魂だったりして」
「………え~」
「いやいや、そんな嫌そうな顔しないでよ。
単なる思いつき――」
「……なんで知ってるんですか?」
「こわっっ!!
真剣な顔になったと思ったら何なの?
すごく知りたくない事実が飛び込んできたんだけど!」
「冗談ですよ。
いくら幽々子様でもそんなことはしませんから」
「そ、そう、ほんとにそう?」
「ええ、申し訳ありません怖がらせてしまって、お詫びといっては何ですが。
今日の夕食にご招待させてください」
「なんか急に大事になってきたよ……
いや、いいよそんな。
先につまらないこと言ったの、私だし」
「いえいえ、どうぞご遠慮なさらず。
よろしければ、あのいたずら兎たちもご一緒にどうぞ」
「え、てゐたちも一緒でいいの?
じゃあ正式な白玉楼と永遠亭のお食事会ってことになっちゃうんじゃない?
外出用で一番いい服、これくらいしかないんだけど、正装とかしなくていいのかなぁ」
「大丈夫です。幽々子様は寛大ですから服装なんて、気にしませんよ。
むしろ裸で来ていただいても」
「……そこは気にしようよ。
普通の人間とは違うけど、一応女の子なんだし。まあ、服装なんでもいいならこのまま行かせてもらおうかな。あ、そうそうそういえば、こういうお誘い受けたときって、ありがとうって感謝を込めて何か品物を持って行ったりするよね。何か準備した方がいいかなぁ」
「そうですね、あえてお願いするなら豆腐とネギを。
材料が多く必要になりますからね」
「ずいぶん現実的な注文ね。まあいいけど。
あ、豆腐にネギね、うさぎ達に準備させるわ。あ、その二つを要求するってことは……
鍋をみんなで囲んでワイワイ騒ごうってことね!」
「…………確かに騒がしくなるでしょうね」
「……その間がすごく気になるんだけど。
あ、まさか。兎鍋を食べようって思ってるんじゃない?
それなら頼まれても行かないからね」
「いえいえ、皆さんをお招きするわけですから、そんな鍋を作るわけないじゃないですか」
「あ、そうなの、なら安心ね。
じゃあやっぱり鳥鍋かな?」
「いえ、兎鍋じゃなくて、妖怪兎鍋です」
「なお悪いわ!!
……大体、私たちを招くから妖怪兎鍋って嫌がらせにもほどがあるでしょう?
共食いもいいところ……
って、まさか……
さっき服を着ずに来いって言ったのは……ある意味騒がしくなるって言ってたのは……」
「悲鳴とか?」
「食べる気満々じゃないの!
やっぱりあなたの主人はとんでもない人ね!」
「申し訳ありません、人ではなく亡霊らしいのですが」
「そこは気にしなくていいのよ!
まったく、今後兎たちには白玉楼のまわりをうろつかないように注意しておかないと」
「敷地に入ったと思ったらいつのまにか口の中だったとか、おもしろいですよね」
「ちょっとしたホラーじゃないの、それ。
私たちにとっての死活問題をおもしろいの一言で済まさないでよ、まったくもう。
当然今の話は冗談なんでしょうね?」
「ええ、冗談です、あたりまえじゃないですか」
「なら、いいんだけど。あなたの主だと本当にやりかねないから怖い」
「だから大丈夫ですって、本当に冗談なんですから」
「……絶対でしょうね?」
「ええ、もちろん。半分くらい」
「そうね、ならよかっ――って全然よくない!
何よ、どこの半分なのよ!」
「まあ、そんなどうでもいいことは置いておくとして、屋敷を持つ従者としてはこの時期、大変なことがありますよね」
「うん、何かすごく重大なことを放置されたけど、秋に大変なこと?
なんだろう……
食べ物の準備が大変って話はさっき出たから……」
「あれ? おもいつきませんか。
ほら、この時期になると、落ち葉とか枯草の掃除が大変じゃないですか」
「あー、そうか、掃除か。
でも竹林の管理は一年中やってるし、秋だけ特別ってわけじゃないから。それに私が師匠の手伝いをしている間に、てゐの部下がほとんどやってくれるから大助かり。
私が手伝うとすれば、そうね……庭木の落ち葉集めとか草刈くらいかな。
姫様盆栽が趣味だから、棚の周りを綺麗にしておきなさいとか、うるさくて」
「集めた落ち葉とか、草はどうするんです?
私の場合は裏で燃やしたりしてますが」
「そうだね、私たちも燃やしたりするけど、この季節なら焚き火かな。
あったかいし、火を囲みながら雑談するのって意外と楽しいし」
「それは羨ましいですね、たまに幽々子様からおっしゃってくれるのですが、私から言うのはおこがましい気がして……」
「そっちの方が羨ましいよ。
私姫様とご一緒に焚き火なんてしたことないし。食事のときくらいしかお話もできないし」
「そうですか、では今度お誘いするために私をその姫様だと思って、練習してはいかがでしょう?」
「あ、それいいね、やろうやろう」
「じゃあ、私は輝夜さんを、半霊が鈴仙さん役をやりますのでそちらは残った役をどうぞ」
「うん、わかった、じゃあ何にしようかなぁ……
え~っと……
う~んと……
……ねえ、これなんて嫌がらせ?」
「えっ? 何か気になることでも?」
「気になるどころか! 私の練習なのに私がまったく参加できない配役じゃないの!
しかも何で半霊が私よ!」
「主人の前で緊張してしゃべれなくなる従者役には適切かと」
「だからそれじゃ練習にならないじゃない!
わ・た・し・の!」
「そうですか、仕方ないですね。じゃあ半霊には天井裏のネズミ役として静かにしてもらいましょう」
「いや、だから無理に役振り分けなくても……
じゃあ、私は、私のままってことでいいのね。
あ、そうそう、姫様面倒くさがりだから、消極的な感じでお願い」
「消極的な感じ、ですか。わかりました。
ではいつでもどうぞ」
「じゃあ、部屋に入る前からね」
コンコン
「姫様、いらっしゃいますか?」
「…………」
コンコン……
「ひめさま~~?」
コンコン……
「……ただいまお呼び出しになった姫は、声の届かないところにいるか。
布団に入ったままなので、出られません。
御用の方は、ぴーっという甲高い音を聞いてから、4時間後に出直してくださ――」
「ちょっとまてゐ!」
「え、何か? だいぶ消極的さを出せたとは思うんですが」
「うん、消極的さも混ざってたけど、別の混ざってはいけない要素も加わってるよね?」
「……あー、なるほど。家庭的すぎましたか」
「そんな要素ひと欠片もなかったわよ!
もうちょっとほら、人の会話っぽく、ね?」
「はい、おまかせください!」
「……返事だけはいいんだけどなぁ……
じゃあいくからね」
コンコン
「姫様、いらっしゃいますか?」
「……呼んだ覚えはないけど、何用かしらイナバ。まさかつまらない用事なんかじゃないわよね?」
「……お~、やる気のないときの姫さまっぽい……」
「……何用かと、聞いているの。
イナバの癖に待たせるなんて良い度胸ね」
「え、あ、すいません。
じ、実はですね、庭の掃除をしていたら落ち葉がいっぱい集まりまして、それで焚き火でもして体を暖めてはどうかと思いまして」
「……気が乗らないわ」
「そうは言わずに、お願いしますよ。
ほら、体を温めながら火を囲むというのも風流で楽しいですって」
「……そう、それならイナバ。
部屋に入って私の肩掛けを持っていってくれない?
火にあたるまでは寒いかもしれないから」
「はい、わかりました。
ではお邪魔しま……えっ?」
ドサ……
「ふふ、イナバ……どうせ温まるなら、こっちの方が愉しいわよ?」
「ひ、姫様、いったい……」
「わからないはずがないでしょう?
イナバ……いえ、鈴仙……
私の体で暖めてあ・げ・る」
「ひ、ひめさま、ひめさまあああぁぁぁぁあぁ……
……ぁぁあぁあああ! うりゃああ!!」
ターンッ
「……至近距離で弾幕を撃たないでください、危ないじゃないですか」
「私の方がいろんな意味で危なかったわよ!
なんで焚き火の誘いがそっちの誘いになるのよ! おかしいでしょう話の流れが!」
「そうですか?
焚き火、暖かい、体が暖まる、つまり火照る。
そんな場所で従者と主人が二人……ああ、もう、いい性格ですね。鈴仙さん」
「どっちが!?
まったく、こうなるってわかてったら別な人を選んでやるんだった。
どうして私がこんな苦労を……」
『……どうです、いい写真とれました?』
『イヒヒ、ばっちりウサ♪』
『了解』
「って、今舞台袖になんか居たよね!
なんか凄く見たことのある妖怪兎がいたよね!
しかも、何か密談してたよね!」
「気のせいでは?
幻覚が見えるほどお疲れとは、永遠亭は大変なんですね」
「ああ~、もう~。もういい、姫様誘わない!
妖怪兎たちと一緒に焚き火する」
「それもまたいいですよね、余計な気を使わずに落ち着けますから」
「まあね、それで、火が段々とおおきくなってきたら、さつまいもを準備して……」
「兎と一緒に投げ込むと」
「だから兎を食べようとするな!
もういいわ!」
一礼。
『ありがとうございました~』
幕が閉まる中、満足そうに微笑む妖夢と、何か腑に落ちない様子の鈴仙が舞台袖へと歩いていく。
そして、二人がいなくなった舞台の端。
そこで小さな妖怪兎が、ある一冊の台本を持って、ニヤリと笑う。
『台本製作:鈴仙』という部分が横棒で消され、
ひらがな二文字を足された台本を――
追伸:舞台上で撮影されたと思われる写真が出回り。
白玉楼と永遠亭の一部の財布を暖かくしたのは、また別の話。
改善点としては一文を短くして、相の手を入れるなど、会話の応酬にするといいんじゃないかな、と。
しかし、やろうとしてることはよく分かったし、内容もうまく、面白かったです。
誤字かな?
>イナバの癖『を』待たせるなんて
なるほど、テンポよくするためには合いの手ですか。
今後似たようなものを各機械があったら試してみたいと思います。
スイマセン誤字報告までしていただきまして、ありがとうございましたっ