ここは地底。地底の出入り口の穴の近く。ここにいるのはキスメとヤマメの二人。
ヤマメが持ってるのは一つの新聞。二人の目線の先にあるのは地底にある唯一の橋。
「キスメ、問題です。今日は何の日でしょう」
「……ハロウィン、だよね? 」
キスメは先ほど新聞から得た行事を頭の中からひっぱりだしてくる。
「そう。ハロウィンだね」
「たしか、今日博麗神社で仮装宴会するんでしょ?そのためにこれ持ってきて……」
「そう。だから―――面白いことをしよっか」
顔に笑みを浮かべていたヤマメは、手に持っている新聞を力強く握りしめた。
そして、それからもう少し時間が経ってからのこと。
――――地底の橋にて
「パルスィ!パルスィ!」
「元気ー?」
「ん?その声はヤマメとキスメね……一応元気よ」
「そっか、それはよかった」
パルスィは、手元にある布をちくちくと針で縫っていた。その布が、勇儀の服であることを二人は知っている。
これは、前に勇儀が破いた服なのだが、勇儀は針と糸を使って服を直すような器用なことができないので、パルスィに頼んだ品なのだ。最初はめんどくさがったパルスィだが、きちんと頼まれたことをやるのはパルスィらしいというかなんというか……
それを知っている二人は、顔をあげずに話をつづけようとするパルスィを笑顔で見ることはするが、怒ることはしない。
「で、どうしたの?」
「見て見てー仮装したのー」
キスメにそう言われて、さすがにパルスィも顔をあげる。すると、パルスィの目に、二人のかわいらしい仮装が入った。
キスメは頭からすっぽりとシーツを被っていた。いつも桶の中で、小さくなっている彼女は、今日も例外なく桶の中に入った上でシーツを被っていたため、足のない幽霊のように見えなくなかった。
一方のヤマメは真っ黒い服を纏い、帽子は、魔理沙が被っているような帽子を被っていた。
いわずもがな、魔女らしい。というか、魔理沙の服っぽくなっている。
「あら、本当ね。今日はそういう格好して神社で宴会するらしいわね」
というか、妖怪が他の妖怪の仮装をするってどうなのよ、とパルスィはつぶやく
そんなパルスィのつぶやきを聞きながら、でも……と前置きしてから、キスメは言った。
「パルスィもやるよね?仮装」
「私はしないわよ。宴会行く気ないし」
「えー!パルスィ仮装しないの?」
「あいにくと、ハロウィンなんてものに興味がないのよ。二人で楽しんできなさい」
キスメとヤマメはこのパルスィの言葉を聞いて、少し作戦会議をするようにお互いの顔を近付けた。そして、ある程度、会議が終わったのだろう。キスメがパルスィを見つめた
「ねぇ、パルスィ」
「ん?なによ」
さすがになにかおかしいと感じたパルスィは、見つめているキスメを見つめ返した
「トリックオアトリート!」
そういったのはキスメだけではない。隣りにいるヤマメもである。
「………なんのつもりかしら?」
「ハロウィンってそういう事を言う日だからね!」
「ヤマメ……でも、私はお菓子持っていないんだけど?」
「知ってるよ。わかってて言ってるに決まってるじゃない」
「じゃあなにがしたいのよ?」
キスメとヤマメはその言葉を聞いて、お互いで笑いあった。そして、ヤマメが言葉を発する
「ねぇ、パルスィ。トリックオアトリ―トの意味だけど……お菓子をくれなきゃ?」
パルスィがげっという言葉をいいながら、続きを告げた
「……いたずらしちゃうぞ……?」
「正解!」
その言葉がきっかけとなった。キスメの手には猫耳のついたカチューシャがヤマメの手には、猫の尻尾が持たれていた。
「ちょっ……用意万端!?」
「本当は勇儀にこの格好させるために持ってたんだけどね……」
「でもパルスィがこの格好して、勇儀を迎えに行った方が喜ぶよ!」
「意味わからないわよ!」
パルスィがそういうのと同時に、キスメとヤマメがパルスィに襲いかかった。
「ちょっと……どこ触ってんのよっ!」
「どこって……腰?」
「セクハラよ!」
「まぁまぁ、パルスィ落ち着いて……」
パルスィは必死に抵抗したが、さすがに2対1だし、二人に対してパルスィは弾幕を打つことは出来なかったので、パルスィは猫耳と尻尾を着けられ、いつの間にかに服さえも何枚か脱がされており、かなりエロい服装となっていた
「さて……完成…」
「うぅ……もうお嫁に行けない」
パルスィはいつもの少しツンツンした感じもなく、すでにただの女の子と化していた。
目が微妙に潤んでおり、ヤマメの位置からは丁度パルスィが上目遣いで見られる位置となっているため、少しぐっときたのだった。だが、ヤマメはキスメの前ということでさすがに理性を保った。
「勇儀に貰ってもらえばいいよーね?ヤマメ!」
「うっ……うん。そうだね!」
キスメに言われて我に返ったヤマメは咄嗟にうなづいた
「ヤマメ!いったいキスメになにを教えた!!」
「あははー私は知らないわよー」
ヤマメはキスメの手を掴み、パルスィに追いかけられるまえに逃げ出していた。
「そうそう、パルスィは勇儀迎えに行かなきゃだめなんだよ!勇儀にはパルスィが迎えにくるって言ってきたから!」
「余計なことするなぁぁああああ!」
パルスィは息をきらし、その場にへたりこんだ。ふぅ、と息を吐き、自分を落ち着かせる。
そして、勇儀を迎えにいくのなんかサボって、こんな耳なんて外せばいいかと思ったとパルスィは思った。しかし、ヤマメは約束を破られたらすごく怖いことをパルスィは思い出した。
肩を震わせ、歯をがたがたさせ、顔までが青ざめた。
「………破ったらまずい……行こう」
決意したパルスィは勇儀の家へと向かった。
「勇儀、いるんでしょー!出てきなさい!」
勇儀の家はとても大きい。さすが鬼の四天王の一人、と言える大きさだ。
「相変わらずでかい家。妬ましい」
と、パルスィが口ずさむほどに大きい家―――まぁ、パルスィが妬むのはいつものことなのだが。
そして、少しパルスィが待った後、家の扉が開いた。
「待たせたかぃ?すまんね?――――っ」
勇儀が、パルスィの姿を確認した瞬間、勇儀の中で時間が止まった。
前述したとおり、現在のパルスィの格好は猫耳に猫尻尾。さらに言えば、普段よりも着ている服――――布も少ないのだ。
おそらく、勇儀のこのときの思考を言葉として表わすならば、「パルスィかわいい」の一言に尽きるだろう。
「まったくよ、どんだけ待たせる気……ってあれ、勇儀?なにかたまってるのよ。あんた」
その一言によって、勇儀も我に返る。意外と、勇儀も理性は強かったのだ、まる
「いや、あぁ、すまんね。パルスィがかわいかったからつい見惚れてしまったよ」
「っ――――馬鹿言ってないで、さっさといくわよ」
パルスィは顔を真っ赤に染めながら、そっぽを向いた。
「はいはい、パルスィ。私の愛しい橋姫」
「よくもそんな歯がゆいセリフが言えるわねっ……」
「鬼は嘘をつかないからね」
「そういう問題じゃないと思うわ」
パルスィは呆れて、今度はしっかりと前を向く。だが、勇儀は、なにかを思いついたようで、パルスィの名前を呼んだ。
パルスィは、振り返らないことも考えたのだが、さすがにこの状況で振り返らないのもどうかと思って、振り返った。
「なによ?」
「トリックオアトリ―ト」
パルスィは、またか、と呟いて大きなため息をついた。
「私はお菓子もってないのよ」
「じゃぁ、いたずらか」
「えっちょっ……勇儀!?」
そして、勇儀はそのままパルスィに近寄って、いたずらという名目で、パルスィの唇に己のそれを重ねたのだった―――――
その後、博麗神社で左のほほを真っ赤に染めた勇儀と、顔どころか耳まで真っ赤にしたパルスィが酒を飲んでいたそうだが、それは――――また別のお話―――――
パルパルかわいいよパルパル
この勇パルはいい!