Coolier - 新生・東方創想話

東方幻想忌憚2

2004/12/27 11:00:09
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彼女は気づいてしまっている。

だけど彼女では止められない。止められないのだ。

禁忌を犯した彼女では。
心に傷を負う彼女では。


何より失う恐怖を知る彼女では。














雪が降る竹薮。入ったものを惑わす魔力を含むその土地には、永遠亭という屋敷とその屋敷の
名にふさわしい永遠の力を冠する姫と、その従者が暮らしている。
紫はこの場所へ幽々子と共に来ている。紅魔館を出た後、紫は急いで白玉楼へ向かったのだが
既に敵との交戦があったらしく、妖夢は傷の手当てと庭の修理を仰せつかり(押し付けられ)
しばらく合流には時間がかかるようだ。

「それにしても、短気な奴だったわ。今度あったらただじゃおかないんだから。」

と、珍しく幽々子が起こったような雰囲気の口調でぼそりと言った。
聞くところによると、妖夢が丁寧に使者を招きいれ、幽々子と会見するまではよかったらしいが
幽々子が、『面白くなさそうだからパス』と言い放ち、その言葉に激怒した使者と交戦することに
なったらしい。幸い妖夢の怪我もたいしたことはなく、敵も幽々子が追い払ったらしいが・・・・・

―そりゃぁ、そんなことを平然と言ってのけた幽々子が明らかに悪いような・・・

と、顔には出さないように思った。
そんないざこざのあと、紫が事情を説明すると、幽々子は『面白そう』と二つ返事でOKした。
そうして今度は輝夜のところへ向かう途中なのである。



そんなこんなしているうちに視界が開け、ひとつの大きな屋敷が見えてきた。
ここが月の姫・蓬莱山 輝夜と月の頭脳とも呼ばれる 八意 永琳、そしてその他のウサギ多数(w)
が住む永遠亭である。
入り口から入ろうとノックしようとした紫達だったが奇妙な違和感に囚われた。

「紫、おかしいわ・・なぜかここに死の気配が充満してる。不老不死の連中が住むところには不自然だわ。」
「・・っ!遅かった!」
「って、紫、ちょっと!?」

紫は幽々子が静止するのも聞かずに中に入り、全速力で違和感の先へ行く。あわてて幽々子も
それを追いかける。どれくらいか進んだ一番奥の部屋の襖を思いっきり開ける。そこにいたのは・・


「なっ・・いきなり入ってきて何の様?八雲 紫。」
「永琳、悪いけどその話は後よ。それよりも、何があったか説明して。
 何故、不老不死である輝夜が死に掛けてるの?」


・・・そこにいたのは、うろたえておろおろする鈴仙と、手ひどい疲労が伺える永琳。




そして、衰弱し、今にも命の灯火が消えかねない、輝夜の姿があった。




「もう一度言うわ、永琳。何があったの?」

永琳は、何からいえばいいのか分からないといった風にしばらく黙っていたが、ぽつりぽつり話し始めた。



その内容というのは、  紫達が訪れる数刻ほど前、一人の少女が突然現れて、永遠亭の一味と
交戦、圧倒的な力で防衛線を突破、誰にも致命傷を負わせることもなく、輝夜の元まで参じ、なにやら
黒い光を発したかと思うと、突然輝夜が苦しみだし、その少女も消えうせていた。 というものだった。



紫はその話を黙って聞いていたが、その少女の特徴を聞くと、突然顔が青ざめた。
そしてしばらくすると、こう切り出した。

「・・・間違いないわ、アイツの仕業ね。こんなことができるのはアイツしかいない。」

永琳はその言葉に反応し、顔を上げた。その表情は、すっかり疲れ果て、永夜の夜に初めて
出会った時のような自信に満ちた表情は影もなかった。
しかし、確実に力強い瞳の光と口調でこういった。

「貴方は姫が苦しんでいる原因が分かるの?原因は何なの?それにアイツって誰のことよ!」

だが、その質問に答えたのは紫ではなく幽々子だった。

「なぜか知らないけど、そいつの中で死が多重反応を起こしてるわ。蓬莱の薬と相反する力
・・いえ、この場合はさかしまの力を起こさせてるというのかしら。」

「ばかな・・そんなことが、できるわけが・・。」

否定する永琳だが、紫の一言が追い討ちをかける。

「あいつの能力なら可能ね。そもそも、蓬莱の薬がどのような効果で不老不死になれるかは分からないから
ここで2パターンの事例で考えて見ましょう。一つ目、中で生が多重反応をおこしている。
二つ目、本来直線である一生の末端である生と死を繋げ、円とすることで死という行為自体から逸脱する。
まず、前者だとすると、蓬莱の薬が生み出す生よりも多くの死を持って飲み込めばいい。おそらく彼女自身の
永遠を司る能力を利用しているのね。次に、後者だけど、もともと一本の棒を円にしたら元に戻ろうとする力
が発生する。だけど、本来は蓬莱の薬の結合力がある限り接合したところが離れることはないけど
この円の内部を死という代価物で埋めてやれば、一杯になったコップに亀裂を入れたかのように・・」


「輪廻自体が自己崩壊を起こし、消滅する・・・というわけ?」
永琳は、禁断の知識を聞かされたかのように皮肉な笑みを浮かべて話を聞いていた。

「・・・それで、元来の目的は姫の力を借りるつもりだったのだろうけど、見たとおり無駄足だったわね。」

紫は、少し迷った風に、

「永琳。貴方も、月の頭脳と言われるほどの使い手なら、もっとしっかりしなさい。輝夜を直す方法は
アイツを倒すほかないの。力を貸して。」

「私は、姫のそばについていながら、何もできなかった。私は、無力だ。そんな私がついて行った所で・・・・」

スパーン!

子気味よい音と共に、幽々子の扇が永琳の脳天にクリーンヒットした。

「従者如きが何を言ってるのかしら?従者は主人の剣となり盾となるもの。主人の命の危機に黙って
メソメソ泣いて寄り添ってるつもり?貴方に選択権はないわ。黙って私たちについてきて、黒幕を倒して
輝夜を助ければそれでいいのよ。わかった?」

・・・なんとも無茶苦茶な理屈だが、紫はこの友人のこういうところが好きなのかもしれない。それに
口ではこんなこと言っていても、妖夢と永琳をすこしかぶらせたのかもしれない。その証拠に、扇を開いたり
閉じたりする癖は幽々子が恥ずかしがってるときにやる癖だ。

永琳は少しあっけに取られていたが、その瞳と顔には明らかにさっきまでとは違う、決意と力が宿っていた。

「・・亡霊如きに説教されるなんて思ってもみなかったわ。それに、貴方の従者が可哀相ね。」

永琳は笑みを浮かべると、紫に問いかけた。


「それで、今の状況と、今後について説明してもらおうかしら?」














永琳は暫く考えたあと、口を開いた。
「なるほど・・それが今回の敵・・。となると、姫の永遠の力が使えないのは痛手ね。私も蓬莱の薬の
影響下にあるけど、姫には遠く及ばないわ。一人の力じゃぜんぜん足りない。」
「紅魔館のメイド長は?永遠ではないけど一時なら時間を操れるわよ。」
「だめ、一時じゃだめなのよ。それこそ、あのときのような永夜でないと。それに、アイツ相手じゃ
境界を操るのもあまり効果がないわ。」


「あのぉ・・」


ここで、急展開ばかりの状態にまだ対応し切れていない、鈴仙が口を開いた。

「蓬莱の薬の力が使える人が必要なのですよね?それなら師匠以外にももう一人いるじゃないですか。ほら・・」

・・・一同は暫し沈黙していたが、やがてその答えに到達し、
「ウドンゲ、貴方偉いわ!よく気づいたわね。」
「あぁ、そういえばもう一人いたっけ、蓬莱の人の形が。」
「でも、あの人が素直に手伝ってくれるでしょうか・・・?」
「大丈夫、私に任せて。人を煽動するのなんて、人を死に誘うぐらい簡単よ。」

さらりと物騒なことを言ってくれた幽々子だが、ここは皆も任せることにした。
これでアイツに対抗できる力が揃う。そう思いながらも、紫は深いため息をついた。


・・・それにしても、永琳から聞いたアイツの特徴。それはまるであの子の・・・・。

いえ、そんなことがある訳は。そうでないとあの子に申し訳がない。

身を挺して幻想郷を守った彼女。生贄という役を進んで買って出たあの子。



そう、アイツあの子のはずが、 あやめ であるはずがないのだ。あって欲しくなかった。


しかし、それの期待は確実に裏切られることも、紫は知っていた。


なぜなら・・・
























私と、ゆかりは彼女を贄として、アイツを滅ぼし、幻想郷の礎としたのだから。そして、ゆかり自身も・・・・



















名も無き私に名をくれた彼女。


今はその名を聞くたびに胸を締め付けられる。


自らの罪の刻印を背負い生きてきた今、


守りたかったものの幻影を追い続ける・・・・・

話の筋が壊れかけてます。最初は勢いで行こうと思ってましたが、こちらも燃料不足です。最初と最後は頭の中で浮かんでるのですが、途中は難しいですね。

最初の数行は黒幕、最後の数行は紫さんのショートメッセージでお送りしています。


大晦日に間に合うか、微妙です。
てーる
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