Coolier - 新生・東方創想話

今日だけは素直になれそう

2004/12/25 12:36:11
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   この作品には 
   自分勝手で 
   どうしようもないような 
   俺設定があなたを待ってます




   それでも



   この作品を読みますか?










藍「しまった、寝過ごした!?」

 私の名は『八雲 藍』、大妖怪『八雲 紫』様に仕える式だ。
私は今日発売の新作ソフト『ケツイ ―少女弾幕地獄―』を何としてでも手に入れるため、
朝一番で店へ向かい、並ばなければならない。
何故ここまで躍起になるのかというと、昨夜の出来事まで遡る事となる。













 夕食時、私と紫様と橙(私の式であり娘のような存在でもある)の三人で鍋を囲んでいた時だ。

橙「ねぇ、藍様」

藍「ん?」

橙「クリスマスって知ってる?」

藍「ああ、あの焼き菓子に牛乳餡を塗ったものを食べたり、木を飾りつけたりする西洋の祭りか?」

橙「そう・・・それでね」

橙の箸が止まる。元々、牡蠣鍋はあまり好きな方ではないが、
何か頼みづらいことでも頼むつもりか。私は身を正した。
まぁ、その間にも紫様は牡蠣を口へ運ぶわけだが・・・・・・

橙「橙、藍様にお願いしたい事があるんだ」

藍「何だい、遠慮せず言ってごらん」

橙「サンタさんって知ってる?」

藍「サンタさんに伝えて欲しい事があるんだな?」

橙「え、どうして分かるの?」

藍「橙の顔にそう書いてあるからね」

私は少し意地悪っぽく笑みを浮かべ、そう答える。牡蠣の残りは後半分くらいか・・・・・・

橙「それでね・・・欲しいものがあるから、クリスマスの日に持ってきてくれる様にお願いして欲しいの」

藍「何だい、言ってごらん」

橙「明日発売の『ケツイ ―少女弾幕地獄―』って言うゲームソフトなんだけど・・・」

『ケツイ ―少女弾幕地獄―』、香霖が発明した、
幻影を使った室内でも周囲を破壊することなく弾幕ごっこができるものだ。
セールスポイントはそれに加え、魅力溢れる登場キャラだとか、なんやらかんやら
正直、私でもその仕組みは理解できないシロモノなので、手に入れるにはかなり値が張る。
にも関わらず、発売日には早朝から長蛇の列ができるそうで・・・・・・

藍「う~~~ん・・・」

私は紫様へ目配せをし、判断を仰ぐ。

紫「藍、残りの牡蠣貰うわよ、貰っていいわよね♪」

紫様は橙に見えぬよう、左手でOKのサインを出している。
橙の喜ぶ顔と牡蠣、天秤にかけるまでも無いだろう。

藍「どうぞ。よし橙、分かった。私からサンタさんに伝えておくよ」

橙「ほんと!? ありがとう藍様」

まるでもう願いが叶ったかのように、橙は喜ぶ。
橙が喜ぶなら私はなんだってするよ・・・


再び三人の箸が、牡蠣の無い牡蠣鍋を囲み動き出した。



















 とまあ、そんなわけで今日は朝一で家を出て並ぶつもりだったわけだ。
枕元の時計は既に七時をまわっている。
前作『エスプルミナス ―少女の百合―』の発売日では、八時がデッドラインだったらしい。
移動を考えると七時三十分には出たいところだ。
限られた時間の中、すべき事を私は頭の中で整理する。
着替え、身だしなみ、排泄、朝食、歯磨き、・・・・・・


ちっ、何時も見ているレティ×チルの『おめざめ寒気団』で今日の運勢をチェックするのは諦めよう。
箪笥から何時もの服を取り出し、着替えを済ませる。
意識してポーズなどとっているが、決して他人に見せるためじゃない、断じて露出狂ではない、誤解なきよう。

と、余計なことをしている時間は無い、厠へと駆け込む。
当然のようにあるべき白い物体が無い。

藍「よりによってこんな時に・・・」

紙を探している暇など無い。大丈夫、いざとなったら店で用を足せばいいことだ。
そんなことより、今できる事をやれ 藍!!

藍「尻尾の手入れを・・・」

いくらなんでも寝ぐせだらけの尻尾で外を歩くわけにはいかない。
八雲の名を汚すような身なりなど、言語道断である。

藍「1・・・2・・・3・・・」

九尾の狐としての誇りはあるが、今ばかりは九本もある尾を恨めしく思わずにはいられない。

藍「8・・・フィニッシュ」

最低限の手入れを済ませ、台所へと急ぐ。

藍「雑炊、いや握り飯が妥当か」

居間を通り過ぎるとき、私は喜ぶべきであり、又、悲しむべき事態に遭遇する。
なんと、橙が朝食の用意をしているではないか。

橙「あ、藍様  おはよー」

藍「あ、あぁ・・・おはよう」

茶碗には大盛りの白米、焼き魚と納豆、加えて熱々の味噌汁がその横で待機している。

橙「えへへ、今日は早起きして私が作っちゃった♪」

ああ・・・嬉しいんだが・・・今すぐにでも抱きしめて誉めてあげたいのだが・・・

藍「あー、橙、悪いんだがちょっと急いでい 」

橙の顔から笑みが消える。

橙「え・・・ひょっとして私、余計なことしちゃった?」

藍「いや違う、違うぞ、橙。 さぁ、食べようか」



くっ、最短で食べきるには・・・(あぁ、でもせっかくの橙の料理・・・ゆっくり味わって)
私は考えをめぐらす。

納豆を手早く、かつスムーズにかき回し、米と共に流し込む。
焼き魚、骨を取る余裕など無い。
日本の箸を巧みに操り、身を削ぎ落とし味噌汁で流し込む。



藍「はぅぁ!?」



案の定、くっついてきた骨は喉へと攻撃を開始した。
味噌汁も熱い・・・・・・猫舌だろお前、嫌がらせか?

橙「藍様、大丈夫?」

藍「ごふぉっ、っつつ・・・・・・いや大丈夫だ」

残っていた米を、殆ど噛まずに、流し込み私は早々に席を立つ。

藍「ごちそうさま、おいしかったよ」

橙「うわっ、はやっ」

藍「橙の作った料理が美味しかったから、思わずこんな勢いで食べてしまったよ」

完璧だ、料理を誉めつつ最短の時間でこの窮地を切り抜けた。
食器を水に放り込んで支度を済ませる。




紫「藍ちゃ~ん、こんな寒い朝早くからご苦労様~」

藍「橙のためですから!!!!!!」

玄関の扉を蹴り開け、目的の店へと急ぐ。
引き戸だった気もするが、今はそんな事取るに足りない問題だ。































藍「896・・・・・・」

どうにか購入規制には引っ掛からなかったものの、この整理券番号ではかなり絶望的だろうか。
でも、黙って並ぶしかないよな。しかし、寒い、寒い、寒い。



















ちらほらと私と同じくプレゼント目的だろうという人(等)が見受けられる。
ああ、どこの親(?)も子を思う気持ちは変わらないんだなぁ、等と感傷に浸っていると
朝出来なかったことの一つが、ヤツが、私を襲ってきた。
やばい、今列を抜けるわけにはいかない、我慢だ、藍。
橙の笑顔を見るんだ、ここで負けたら駄目だ。














何とか列も動き出し、レジも近い。
目的のものは買えそうだ・・・が、ヤバイ、別の事が危険だ。

藍「『ケツイ ―少女弾幕地獄―』くださ・・・い」

店員K「贈り物用のラッピングはするかい?」

藍「お願いします・・・ (できるだけ早く)」

K「えーと、今日が初めてみたいだけど『香霖堂ポイントカード』は作るかい?
  これがあると毎回のお買い上げ金額の5%がポイントとして蓄積されて・・・」

藍「いえ、結構です (要らん、早くしろ!!)」

K「じゃあ、こちらお釣りね。壱・弐・・・」

藍「(数えるな、こっちは金で解決できない緊急事態なんだ!)」

K「参、と。こちら品物ね、今後も御贔屓に」


品物を受け取り、私は一目散に行くべき場所へ駆け込んだ。




























橙「あ、藍様 おかえりなさ~い」

藍「ああ、ただいま」

紫「ちぇ~ん、お鍋吹いてるわよー」

橙「はーい、紫様 今行きます。藍様、今日はおでんだよ♪」

橙はトテトテと台所へ駆けて行った。
入れ替わりで紫様が台所から出てくる。

紫「で、どうだった?」

藍「ミッションコンプリートです」

紫「そぅ、ご苦労様・・・・・・と言いたい所だけど」

藍「はぁ・・・」

紫「私は夕食まで寝るから、夕食お願いね」

藍「いいですよ別に、拒否した所で紫様がやって下さるわけ無いですし」

紫「あの娘、『サンタさんが来るんだ』ってずっとはしゃいでるのよ。
  藍、もう要らないかもね」

藍「はは・・・・・・それだけは勘弁して欲しいですよね」
















夕食の間も橙は大はしゃぎ。

橙「ねぇねぇ、藍様  ちゃんとサンタさんに伝えてくれた!!」

橙「やっぱり早く寝ないと来てくれないのかなぁ?」

橙「あ、サンタさんにお手紙書こう♪」

橙「ね、ね、サンタさんって一晩で世界中をまわるんだよね」

橙「ちゃんと来てくれるかな、道分かるかな」


正直、見ていて飽きないしこの笑顔を見れただけでも私にとって最高のクリスマスプレゼントだと思う。
あ・・・ハンペン取られた。

紫「橙、今日は早く寝ないとね。夜更しする子にはサンタさん来てくれないわよ」

橙「はーい、ごちそーさま」

藍「ちゃんと歯を磨いて用を足したから寝るんだぞ」

橙「わかってまーす♪」

















夕食を済ませ、洗い物も終わった頃。

紫「寝たみたいよ・・・」

藍「そうですか、それじゃあ藍サンタさん お仕事に参りますか」












紫「藍、ご苦労様」

藍「いえいえ、橙のためですから・・・あいつの喜ぶ顔を見られるなら、苦痛なんて無いですよ」

紫「本当にあの子の事が好きなのね、ちょっと嫉妬しちゃうかな」

藍「はぁ、紫様でもそんな事お考えになるんですか」

紫「どういう意味よ?」

藍「いえ、何でもありませんよ、毎日毎日好きでやってる事ですから」

紫「ふーん。あ、遅くなったけどこれは私からあなたへのプレゼントよ」

藍「え・・・と、どれです?」

紫「ちょっと目を閉じて・・・・・・」

藍「はい」






















































                 一年に一度のこの日、あなたは大切な人に何を送りますか

























まー、何と言いますやら、言わない方がいいか。


ケツイが出したかった。
エスプレイド面白かった。
八雲一家は『一家』なんですよ、家族ですよ。
修くりーむ
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