メリー・クリスマス!
お祝いの声が聞こえる。
どいつもこいつもおつむが足りない、今日は何の日? クリスマス!
だからそいつは何なのさ?
んなこた誰も気にしない。
皆でわいわいドンチャン騒ぎ、飲むもの飲んで食うもの食って、
それで楽しきゃいいじゃない!
~~
「おこんばん~」
「はいはい、こんな夜中にどちら様?」
「ちょいとわけあって、紅かったり白かったりする人を探してるんだけど」
「心当たりが無いわね」
「あんた、あんた。道往く黒い女の子に聞いたのよ、素敵な飛び方してる子に。
ここに目出度い紅白がいるって」
「あれのどこが素敵なのか判らないけど、私に用があるのはわかったわ。
で、何? 夜は寝なきゃ」
「今日は何日?」
「判ってて聞いてるわけね。あんたが何かは判ったけれど、
わざわざ私に何の用? 通れるようにはしてある筈よ」
「うちの大将、風邪引いちゃって」
「不養生ね。まぁ息災に」
「どうもどうも、で、ついでといっちゃあ何だけれども」
「とても何ね」
「まぁそう言わず、今晩だけ、ね?」
「しょうがないわねぇ。でも冬の空って寒いし」
「ほら、こんなに目出度い紅白スーツ」
「あら、暖かそう」
「さぁさ急いで、あんまり時間が無いの」
「そう急かすものでもないんじゃない? 子供は夜更かしする時間よ?」
「早寝する子がいい子なの」
「にしても私、何すればいいの?」
「簡単簡単、大した事ない。ニコニコ笑って、乗ってて頂戴」
「乗るって何に?」
「ソリだよ」
~~
「おかあさん、おかあさん!」
「どうしたの坊や。こんな夜更けに、またトイレ?
いい加減、一人でいけるようにならないと・・・」
「違うよ、違う! ほらこれ見て!」
「まぁ、靴下に? ステキね、坊や。サンタさんだわ!
いい子にしてて、良かったわね」
「うん! でも、あの人。サンタさん?」
「あらあら坊や、サンタさんに会ったの?」
「そうだよ、でもね、あの人違うんじゃない?」
「坊や、どうしてそう思うの? クリスマスに来るのはサンタさんでしょう?」
「だっておかあさん、サンタさんって、髭もじゃのおじさんだよ!
あの人、おじさんじゃなかったもの!」
「ええ? じゃあ、どんな人だったの?」
「紅くて白い服着てたの。だからサンタさんだと思ったんだ!
でも、お顔を見たら、女の人だった!」
「まぁ。女の子のサンタさん?」
「そうなんだ! それで、プレゼントをくれて、言ってくれたんだ!
メリークリスマスしょうくん、って!」
「そう、そう。良かったわねぇ。最高のクリスマスになったわね」
「でも、サンタさんじゃあ、なかったんだね! じゃあ、なんだったんだろ?」
「そう、そうねぇ。紅くて白くて、女の子・・・」
「巫女さん?」
~~
「子供の相手は疲れるわ」
「そう? 楽しそうだったよ?」
「つまらないわけないわよ。疲れるけど」
「お疲れ~。じゃ、今日はこんなもんで」
「あら、もういいの?」
「もうこんな時間だよ。良い子タイム終了」
「厳しいわね、門限」
「プレゼントの意味わかってる?」
「少なくとも妖怪には貰えないってことぐらいは」
「しかし運悪いよね、うちの大将も」
「年に一度の仕事をさぼったなら、運が良いんじゃないの?」
「うんにゃ、年に一度のものでも、さぼったら寂しい方」
「あー? 話が見えないわ」
「うちの大将、今日誕生日。祝いのケーキは一年一個。
風邪引きは甘いもの食べちゃ駄目」
「良い子は早く寝ろ、ね。そりゃお気の毒」
「歯磨きしてから寝ればいいんだけど、困った事にそんな習慣が無いの」
「あのインテリさんは良い子の寝る時間を理論で決めてそうだわ」
「さぁ神社に着いた。そろそろ帰るね」
「はいはい、それじゃ締めるわよ」
「そうだ、乗り心地はどう?」
「悪くないわ。特別に良くも無いけれど」
「言うと思ったよ。じゃ!」
「はいはい、ナザレさんによろしくね」
「巫女さん、また来年! メリー・クリスマス!」
「めりーくりすます」
「動物霊って皆躁病なのかしら?
・・・あれ、まだこんな時間か。
うーん。良い子はもうちょっと夜更かししてもいいような」
「しかし、今日って何の日なのかしらね?」