チルノが雨宿りしていた。
ざあざあと雨が降っていて、雨水がびちゃびちゃと地面を叩く。
風が吹き込んで来て何粒かがチルノの頬を濡らす。
指で水滴を払いそっと呟いた。
「つまんないな……」
チルノは氷精だ。
氷精なので、水や雨は苦ではない。
しかし、好きでもない。いや、嫌いだ。
「なんで雨ばっかり降るんだろ……」
本当に好きなのは雪だ。
雨が凍って、白い塊になった雪が好きだ。
冬と言う季節が来て、空も、地面も、湖も、全てが凍える様に寒くなり
手足の先がかじかんでふるふると震えたくなるあの季節が好きだ。
しかし、いくら待っても冬が来ない。
「あったかい……」
今年はまだ暖かい。
暦からすれば、もう雪が降っていてもおかしくない時期だが。
外の世界で何かあったんだろうか?
いや、そんなことはどうでも良いとうつむいてしまう。
「はやく……こないかな」
毎年ならこの頃には来ていた筈。
寒さの代名詞にして冬の妖怪がまだ来ない。
「レティ……」
彼女の仲間であり、友であり、姉の名を呟く。
まだ暖かい。ふう、と吐く息は色が無い。無色。
雨が止んでいた。
雲が切れて、日の光が差し込んで来た、空に大きな輪が掛かる。
この季節に虹が出来た、大きくくっきりと7色が分かれている。
空が晴れた証拠。
しかし、輝く虹も今の彼女の心を晴れさせられない。
心の中では雨がざあざあと降っている。
「遅いよ……待ちくたびれたよ……」
ほろりと涙がこぼれた。
心の中で降る雨が溢れ出してした、まぶたの堤防が決壊寸前。
「レティ……」
もう一度待ち人の名前を呟いて、彼女は顔を伏せた。
ぽろぽろぽろぽろ、次から次へと涙がぽろぽろ止まらない。
両目にぐっと両手を当てて止めようとしても止まらない。
「レティ……レティ!! どこに行っちゃったの!?」
涙だけでなく、自分の感情もあふれ出して。
ついにその場でぐずりだしてしまう。
風が吹き始めた。
生暖かい風が北風で吹き飛び始める。
段々と勢いを強く強く、ひゅうひゅうと音を立て始める。
生暖かい空気が風に晒され、徐々に徐々に冷たく冷えていく。
不意に
リーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
堅い物が割れた音があたり一面に響き渡った。
「ふえ?」
間の抜けた声を上げて空を見上げるチルノ。
彼女の鼻面に輝く何かの欠片がヒラヒラと落ちてきた。
その欠片が涙と交わると、トロリと溶けて7色のスペクトルムを持って輝いた。
「これって?」
キラキラヒラヒラと、幾つも幾つも、無数に欠片が降り注ぎ。
地面に、水溜りに落ちると次から次へと7色に輝く。
オ・マ・タ・セ
音にならない言葉が頭に響いた。
聞きなれた声、久しぶりの、待ち望んだ声。
それを聴いた瞬間、チルノは空に飛び上がった。
雲の上にいるであろうレティを迎えるために。
「おかえりなさーーーーい!!!」
輝く欠片はあちこちに、それこそ幻想郷のあちこちに降り注いだ。
マヨヒガの庭で遊んでいた橙の目の前にも欠片が落ちてきた。
手で欠片を拾うと、一瞬だけ7色の輝きを放って消えた。
「冬だ! 冬が来たよ! 藍さま、冬が来たよ!」
全身で喜びを表現して、飛び跳ねながら庭を駆け回る橙。
「あ゛あ゛~~~もうそんな時季か」
その主人は炬燵で丸くなっていた。
「猫は喜び庭駆け回り、狐は炬燵で丸くなる……だっけ?」
更にその主人も丸くなっていた。
白玉楼にも輝く欠片が舞い降りて来た。
「ようやく冬なのだな……」
妖夢は庭の手入れの手を休め、空を見上げた。
「幽々子様~~!!」
不意に何かを思い出して、二百由旬も一閃する勢いで空に飛び上がる妖夢。
「外で寝ていると体に毒で御座いますよ~!」
どうやら、縁側で寝っ転がったまま放置していた主人の事を思い出したらしい。
「ひっくちん!」
紅魔館の正門で、門番がくしゃみをした。
「冷え込んできたなあ……あれ?」
彼女の目の前にも輝く欠片が飛び込んできた、あちらこちらが7色に輝く。
「わぁ……やっと冬なのですね。よーし……」
なにやら懐から一枚の符を取り出すと。
「極彩颱風ァァァ!!!」
同じく7色の弾幕を出して対抗を始める門番の人。
・
・
・
「……アレ、いかがしましょうか?」
「そのうち疲れて止めるでしょう、放っておきなさい」
メイド長と館の主人が呆れていた。
風に吹かれて、博麗神社にも欠片が飛び込む。
その一つが、境内の掃除をしていた霊夢の目に飛び込んだ。
「ふにゃっ!?」
目の前が一瞬7色に輝いて飛び上がる霊夢。
「何? 誰かの悪戯?」
「霊夢、慌てるなよ。単なる虹だ」
「へ?」
2人の前だけではない、そこら中にいくつもの欠片が舞い降りてくる。
境内のあちらこちらで欠片が溶けて、あたり一面虹色になる。
「こりゃ、凍ったな。あまりの寒さに」
「そうかあ、やっと冬なのかぁ。」
2人が空を見上げると、さっきまで掛かっていた虹が無い。
冬の訪れと共に、寒さで虹が凍って吹き飛ばされたらしい。
虹の欠片はあちこちに降り注ぐ。
どこかの人形屋敷にも、暗くて暖かい森にも。
都会にも、人里にも、人里を守っている半獣の元にも。
この凍った虹の欠片が舞い降りるのを見て。
幻想郷の人々はようやく冬が来た事を知るのです。
ざあざあと雨が降っていて、雨水がびちゃびちゃと地面を叩く。
風が吹き込んで来て何粒かがチルノの頬を濡らす。
指で水滴を払いそっと呟いた。
「つまんないな……」
チルノは氷精だ。
氷精なので、水や雨は苦ではない。
しかし、好きでもない。いや、嫌いだ。
「なんで雨ばっかり降るんだろ……」
本当に好きなのは雪だ。
雨が凍って、白い塊になった雪が好きだ。
冬と言う季節が来て、空も、地面も、湖も、全てが凍える様に寒くなり
手足の先がかじかんでふるふると震えたくなるあの季節が好きだ。
しかし、いくら待っても冬が来ない。
「あったかい……」
今年はまだ暖かい。
暦からすれば、もう雪が降っていてもおかしくない時期だが。
外の世界で何かあったんだろうか?
いや、そんなことはどうでも良いとうつむいてしまう。
「はやく……こないかな」
毎年ならこの頃には来ていた筈。
寒さの代名詞にして冬の妖怪がまだ来ない。
「レティ……」
彼女の仲間であり、友であり、姉の名を呟く。
まだ暖かい。ふう、と吐く息は色が無い。無色。
雨が止んでいた。
雲が切れて、日の光が差し込んで来た、空に大きな輪が掛かる。
この季節に虹が出来た、大きくくっきりと7色が分かれている。
空が晴れた証拠。
しかし、輝く虹も今の彼女の心を晴れさせられない。
心の中では雨がざあざあと降っている。
「遅いよ……待ちくたびれたよ……」
ほろりと涙がこぼれた。
心の中で降る雨が溢れ出してした、まぶたの堤防が決壊寸前。
「レティ……」
もう一度待ち人の名前を呟いて、彼女は顔を伏せた。
ぽろぽろぽろぽろ、次から次へと涙がぽろぽろ止まらない。
両目にぐっと両手を当てて止めようとしても止まらない。
「レティ……レティ!! どこに行っちゃったの!?」
涙だけでなく、自分の感情もあふれ出して。
ついにその場でぐずりだしてしまう。
風が吹き始めた。
生暖かい風が北風で吹き飛び始める。
段々と勢いを強く強く、ひゅうひゅうと音を立て始める。
生暖かい空気が風に晒され、徐々に徐々に冷たく冷えていく。
不意に
リーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
堅い物が割れた音があたり一面に響き渡った。
「ふえ?」
間の抜けた声を上げて空を見上げるチルノ。
彼女の鼻面に輝く何かの欠片がヒラヒラと落ちてきた。
その欠片が涙と交わると、トロリと溶けて7色のスペクトルムを持って輝いた。
「これって?」
キラキラヒラヒラと、幾つも幾つも、無数に欠片が降り注ぎ。
地面に、水溜りに落ちると次から次へと7色に輝く。
オ・マ・タ・セ
音にならない言葉が頭に響いた。
聞きなれた声、久しぶりの、待ち望んだ声。
それを聴いた瞬間、チルノは空に飛び上がった。
雲の上にいるであろうレティを迎えるために。
「おかえりなさーーーーい!!!」
輝く欠片はあちこちに、それこそ幻想郷のあちこちに降り注いだ。
マヨヒガの庭で遊んでいた橙の目の前にも欠片が落ちてきた。
手で欠片を拾うと、一瞬だけ7色の輝きを放って消えた。
「冬だ! 冬が来たよ! 藍さま、冬が来たよ!」
全身で喜びを表現して、飛び跳ねながら庭を駆け回る橙。
「あ゛あ゛~~~もうそんな時季か」
その主人は炬燵で丸くなっていた。
「猫は喜び庭駆け回り、狐は炬燵で丸くなる……だっけ?」
更にその主人も丸くなっていた。
白玉楼にも輝く欠片が舞い降りて来た。
「ようやく冬なのだな……」
妖夢は庭の手入れの手を休め、空を見上げた。
「幽々子様~~!!」
不意に何かを思い出して、二百由旬も一閃する勢いで空に飛び上がる妖夢。
「外で寝ていると体に毒で御座いますよ~!」
どうやら、縁側で寝っ転がったまま放置していた主人の事を思い出したらしい。
「ひっくちん!」
紅魔館の正門で、門番がくしゃみをした。
「冷え込んできたなあ……あれ?」
彼女の目の前にも輝く欠片が飛び込んできた、あちらこちらが7色に輝く。
「わぁ……やっと冬なのですね。よーし……」
なにやら懐から一枚の符を取り出すと。
「極彩颱風ァァァ!!!」
同じく7色の弾幕を出して対抗を始める門番の人。
・
・
・
「……アレ、いかがしましょうか?」
「そのうち疲れて止めるでしょう、放っておきなさい」
メイド長と館の主人が呆れていた。
風に吹かれて、博麗神社にも欠片が飛び込む。
その一つが、境内の掃除をしていた霊夢の目に飛び込んだ。
「ふにゃっ!?」
目の前が一瞬7色に輝いて飛び上がる霊夢。
「何? 誰かの悪戯?」
「霊夢、慌てるなよ。単なる虹だ」
「へ?」
2人の前だけではない、そこら中にいくつもの欠片が舞い降りてくる。
境内のあちらこちらで欠片が溶けて、あたり一面虹色になる。
「こりゃ、凍ったな。あまりの寒さに」
「そうかあ、やっと冬なのかぁ。」
2人が空を見上げると、さっきまで掛かっていた虹が無い。
冬の訪れと共に、寒さで虹が凍って吹き飛ばされたらしい。
虹の欠片はあちこちに降り注ぐ。
どこかの人形屋敷にも、暗くて暖かい森にも。
都会にも、人里にも、人里を守っている半獣の元にも。
この凍った虹の欠片が舞い降りるのを見て。
幻想郷の人々はようやく冬が来た事を知るのです。
虹の欠片の雪の華、そろそろ八島のそこここで舞い始めますな……
こういう、童心にかえしてくれるというか、夢を感じさせてくれる様な話は好きなんですよ私。
あと、美鈴がんばれ(笑)。