昔々、空よりも高い所にある不思議な国に一人のお姫様が居りました。
彼女は周りから大切に育てられた所為かとてもわがままな性格でした。
ある日、そのお姫様は国で一番頭のよいと言われる家来にいつものようにおねだりをしました。
「ねぇ、私お人形が欲しいの。それもいつでも私のそばに居て、おしゃべりしてくれるお人形が。」
家来は言われたとおりの人形を作り始めました。それでもまだお姫様は人形に注文を付けにやって来ます。
「当然可愛い女の子よ。」
「髪は貴女と同じ色がいいわ。」
「目はとっても綺麗なものにして頂戴。」
「その人形はとびきり凄い魔法がつかえるの。」
賢い家来も流石に手こずりましたが、人形はやがて完成しお姫様の下に届けられました。
お姫様はその人形をとても大切に可愛がり、毎日のように一緒に遊びました。
人形はある時は召使の役、ある時は奇術師の役、またある時は本物の魔法使いの役を持ち主のために演じました。
毎日のように自分が何であるかは変わりましたが人形はそんな事がちっとも気になりません。
なぜなら持ち主さえ居てくれれば自分は自分のままでいられると思っていたからです。
けれどもお姫様は人形遊びに飽きたのか、それとも他に楽しい遊びを見つけたのか段々彼女が邪魔になってきました。
やがて彼女を家来の作った『魔法の箱』に閉じ込めてしまいます。
そのうち彼女のことをすっかり忘れてしまったお姫様は『魔法の箱』を
周りの皆が言う『きたないものをすてるばしょ』という深くて暗い穴にぽいっと捨ててしまいました。
眠っていた彼女が目を覚まし箱の外を見回すとと見たことも無い世界が広がっていました。
お姫様は何処にも居ません。唯周りに居るのは自分と同じ人形ばかり。
周りの人形達は自分達の考えで行動しているつもりの様でしたが、
捨てられた人形にはよくわからない『何か』に役を与えられて暮らしているようにしか見えません。
でも一つだけ彼女と彼らの間に違うことがありました。
それは彼らには決められた『名前』があり彼女には無いという事です。
―嗚呼、ワタシの名前は何だったのかしら
人形は自分の持ち主を探すため世界中を旅しました。でもいくら探しても見つかるはずがありません。
困ってしまった彼女はやがて自分で『持ち主の人形』を作り、名前を教えてもらうことにしました。
材料なら周りにいくらでもあります。
彼女は夜の街でぴったりの『部品』をあつめました。
でも『部品』を全て揃え、つなぎ合わせても『持ち主の人形』は名前を教えてくれるどころかピクリとも動きません。
結局人形には人形は作れなかったのです。
―要らないモノはゴミ箱へ…。じゃあ失くしたモノは…?
捨てられてからどれ位の年月が経ったのでしょう?
人形はいつの間にか自分が作られた不思議な国にどこか似た場所に迷い込んでいました。
体は頑丈に作られてはいましたが、長い長い旅の疲れの所為でもう一歩も動けません。
もう昔の持ち主の顔も全く思い出せません。
今では赤い満月の下で、紅い屋敷の前にだらしなく転がっているだけの存在です。
気が付くと人形は紅いベットの上に寝かされていました。
横を向くと一人の女の子がじっとこっちを見ています。
女の子は彼女が目を覚ましたのに気付くと質問をはじめました
「アナタはだぁれ?」
―ワタシはただの人形です。
「なんで私の屋敷の前に倒れてたの?」
―わかりません。気付いたらあそこに倒れていました。
「ふーん。それならあなたの持ち主は何処?」
―…それもわかりません。
女の子はしばらく考え込んだ後、彼女にこう言いました
「……それならきっと私がアナタの持ち主よ。実はずっと探してたの、
―身の回りの世話をしてくれて―
―遊びやお喋りに付き合ってくれて―
―ちょっとした手品や魔法なんかも使えて―
―何があっても私のそばに居てくれる―
そんな人形を、ね。どう?アナタがそうじゃないかしら?。」
―それなら全て得意です。
「じゃあ決まりね。『アナタ』は『私』のモノよ。」
―私も一つだけ質問してもいいですか?
「いいわよ。」
―教えて下さい……ワタシと貴女の名前。
「私の名前はレミリア・スカーレット。アナタの名前は…」
女の子はふと窓の外を見ました。そこには真っ赤な満月が浮かんでいます。
「そうねぇ……………なんてどうかしら」
―それがワタシの名前なのですね。…なんて素敵なのかしら。
欲しくて欲しくて堪らなかった答を手に入れ、人形は再び瞳を閉じ深い眠りにつきました。
明日から自分に与えられるであろう役を『完璧に』演じるために…
「ちょっと門番、あなたちゃんと仕事してるの? またあの騒がしい連中がお嬢様の所に来てるじゃない。」
「あいつらを止めろって言われても無理ですよ~。それに咲夜さん、私の名前は……。」
もう何回も繰り返されてきた美鈴の自己紹介を気にも留めず、咲夜はすたすたとお嬢様の所へ向かいます。
「あぁ待って、待って下さ~い。」
振り返ることなく咲夜は言いました。
「大切なことを教えてあげるわ。名前なんてものは『名乗る』モノじゃない…。『名付けられる』モノよ。」
「?」
もう人形を操る糸が切れることは無いでしょう。
なぜなら今の彼女を操る糸は運命という名の紅く太い糸なのですから…
めでたし めでたし
彼女は周りから大切に育てられた所為かとてもわがままな性格でした。
ある日、そのお姫様は国で一番頭のよいと言われる家来にいつものようにおねだりをしました。
「ねぇ、私お人形が欲しいの。それもいつでも私のそばに居て、おしゃべりしてくれるお人形が。」
家来は言われたとおりの人形を作り始めました。それでもまだお姫様は人形に注文を付けにやって来ます。
「当然可愛い女の子よ。」
「髪は貴女と同じ色がいいわ。」
「目はとっても綺麗なものにして頂戴。」
「その人形はとびきり凄い魔法がつかえるの。」
賢い家来も流石に手こずりましたが、人形はやがて完成しお姫様の下に届けられました。
お姫様はその人形をとても大切に可愛がり、毎日のように一緒に遊びました。
人形はある時は召使の役、ある時は奇術師の役、またある時は本物の魔法使いの役を持ち主のために演じました。
毎日のように自分が何であるかは変わりましたが人形はそんな事がちっとも気になりません。
なぜなら持ち主さえ居てくれれば自分は自分のままでいられると思っていたからです。
けれどもお姫様は人形遊びに飽きたのか、それとも他に楽しい遊びを見つけたのか段々彼女が邪魔になってきました。
やがて彼女を家来の作った『魔法の箱』に閉じ込めてしまいます。
そのうち彼女のことをすっかり忘れてしまったお姫様は『魔法の箱』を
周りの皆が言う『きたないものをすてるばしょ』という深くて暗い穴にぽいっと捨ててしまいました。
眠っていた彼女が目を覚まし箱の外を見回すとと見たことも無い世界が広がっていました。
お姫様は何処にも居ません。唯周りに居るのは自分と同じ人形ばかり。
周りの人形達は自分達の考えで行動しているつもりの様でしたが、
捨てられた人形にはよくわからない『何か』に役を与えられて暮らしているようにしか見えません。
でも一つだけ彼女と彼らの間に違うことがありました。
それは彼らには決められた『名前』があり彼女には無いという事です。
―嗚呼、ワタシの名前は何だったのかしら
人形は自分の持ち主を探すため世界中を旅しました。でもいくら探しても見つかるはずがありません。
困ってしまった彼女はやがて自分で『持ち主の人形』を作り、名前を教えてもらうことにしました。
材料なら周りにいくらでもあります。
彼女は夜の街でぴったりの『部品』をあつめました。
でも『部品』を全て揃え、つなぎ合わせても『持ち主の人形』は名前を教えてくれるどころかピクリとも動きません。
結局人形には人形は作れなかったのです。
―要らないモノはゴミ箱へ…。じゃあ失くしたモノは…?
捨てられてからどれ位の年月が経ったのでしょう?
人形はいつの間にか自分が作られた不思議な国にどこか似た場所に迷い込んでいました。
体は頑丈に作られてはいましたが、長い長い旅の疲れの所為でもう一歩も動けません。
もう昔の持ち主の顔も全く思い出せません。
今では赤い満月の下で、紅い屋敷の前にだらしなく転がっているだけの存在です。
気が付くと人形は紅いベットの上に寝かされていました。
横を向くと一人の女の子がじっとこっちを見ています。
女の子は彼女が目を覚ましたのに気付くと質問をはじめました
「アナタはだぁれ?」
―ワタシはただの人形です。
「なんで私の屋敷の前に倒れてたの?」
―わかりません。気付いたらあそこに倒れていました。
「ふーん。それならあなたの持ち主は何処?」
―…それもわかりません。
女の子はしばらく考え込んだ後、彼女にこう言いました
「……それならきっと私がアナタの持ち主よ。実はずっと探してたの、
―身の回りの世話をしてくれて―
―遊びやお喋りに付き合ってくれて―
―ちょっとした手品や魔法なんかも使えて―
―何があっても私のそばに居てくれる―
そんな人形を、ね。どう?アナタがそうじゃないかしら?。」
―それなら全て得意です。
「じゃあ決まりね。『アナタ』は『私』のモノよ。」
―私も一つだけ質問してもいいですか?
「いいわよ。」
―教えて下さい……ワタシと貴女の名前。
「私の名前はレミリア・スカーレット。アナタの名前は…」
女の子はふと窓の外を見ました。そこには真っ赤な満月が浮かんでいます。
「そうねぇ……………なんてどうかしら」
―それがワタシの名前なのですね。…なんて素敵なのかしら。
欲しくて欲しくて堪らなかった答を手に入れ、人形は再び瞳を閉じ深い眠りにつきました。
明日から自分に与えられるであろう役を『完璧に』演じるために…
「ちょっと門番、あなたちゃんと仕事してるの? またあの騒がしい連中がお嬢様の所に来てるじゃない。」
「あいつらを止めろって言われても無理ですよ~。それに咲夜さん、私の名前は……。」
もう何回も繰り返されてきた美鈴の自己紹介を気にも留めず、咲夜はすたすたとお嬢様の所へ向かいます。
「あぁ待って、待って下さ~い。」
振り返ることなく咲夜は言いました。
「大切なことを教えてあげるわ。名前なんてものは『名乗る』モノじゃない…。『名付けられる』モノよ。」
「?」
もう人形を操る糸が切れることは無いでしょう。
なぜなら今の彼女を操る糸は運命という名の紅く太い糸なのですから…
めでたし めでたし
ミステリアスな雰囲気が素敵だと思います。