Coolier - 新生・東方創想話

バカルテット ~夜~

2009/10/21 07:48:37
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ミスティアの屋台に、今日もまたお客様がぽつりぽつり。

「はい、蒲焼きだよ」

今日のお客はいつもの顔なじみ、チルノとルーミアの二人だった。

「私さ……いつまで、馬鹿で通せばいいのかな?」

チルノはコップ一杯のお酒を飲み干すと、深い溜息をついた。

「これでもさ、相当長く生きてるんだよね」

指先で木目をなぞり、うつむきながらぽつりぽつり。

「知識だってさ、人並み以上にあるよ、なのにさ、弾幕を少しミスっただけでさ、
 延々と馬鹿馬鹿って言われるんだよね……もうあたい疲れたよ」
「……そうなのか」

ルーミアが相槌を打ち、チルノのコップに酒を注ぐ、
ふとチルノは、その手が震えている事に気づいた。

「それ、どうしたの?」
「何でもない、ただの五十肩」
「ああ……」

ルーミアは肩に手を当てて、ぐりぐりと動かす、
やはり痛みが走るのか、少し顔をゆがめていた。

「最近は十字架のポーズをとるのも辛いわ」
「人肉ばかり食べてるからじゃないの? 栄養偏るよ」
「……そうなのか」

ルーミアも溜息をつく、チルノはそっとルーミアのコップに酒を注いだ、
ふとその時、暖簾をくぐって新しいお客さんが訪れる。

「やぁ、飲んでるかい?」
「あ、リグルだ……って、どうしたのその大怪我」
「これ? ははっ、また幽香さんにアタックしたんだけど、このざまだよ」

遅れて現れたリグルは、全身が痛々しい包帯姿だった。

「まだ諦めてなかったんだ」
「うん、今日は腐葉土をプレゼントにもっていったんだけど、気に入らなかったみたい」
「……馬鹿なのか」
「だって何を送ればいいのかわからないし……あ、お酒と蒲焼一つ」
「あいよ」

ひとまず差し出された酒瓶をコップに注ぎ、かけ付け一杯。

「はぁ~、染み渡るなぁ」
「もう諦めたらどう?」
「それも考えたんだけどねぇ……やっぱり好きなんだよ、あの人のこと」
「……そうなのか」
「どんなに殴られてもさ、蹴られてもさ、引き寄せられちゃうんだよ」
「虫だからじゃない?」
「……否定はしない」

ことり、と蒲焼きが二つのった皿がリグルの前に置かれる。

「あれ、一つしか頼んでないけど」
「サービスよ、これで精力つけて、また頑張って」
「……ありがとう」

箸で蒲焼きをほぐし、一口、二口と口へ運ぶ、
リグルにつられてチルノも、ルーミアも共に。

「んー……やっぱりここの蒲焼きは幻想郷一だね」
「褒めても何もでないよ」
「ういー、お酒もう一本頂戴」
「チルノちゃん、飲みすぎは体に悪いよ」
「いいの、あたいは最強なんだから……」

チルノはいい感じに酔いが回り、リグルはよしよしとたしなめる、
その中でルーミアだけが蒲焼きを食べながら顔を捻っていた。

「ミスチーこれ、タレ変えた?」
「……ああ、気づいちゃったのね」

ルーミアの問いに、ミスティアは少し顔を背けて、申し訳なさそうに答えた。

「私で……三代目なのよ」
「……先代は?」
「食べられちゃった」
「そうなのか……」

少し悲しげな表情を浮かべ、誤魔化すように蒲焼きを焼き続けるミスティア、
ルーミアは棚からコップを取り出し酒を注ぐと、それをミスティアの前に置いた。

「私の奢り」
「……ありがとう」

悲しみを飲み干すように、コップを傾けるミスティア、
飲んで、飲んで、飲み干して、コップを置いて笑顔を一つ。

「よし、湿っぽいのもなんだし、そろそろ歌うよ! リクエストはある?」
「ういー、まずは天城越えでしょー」
「あ、じゃあ僕も天城越えで」
「……天城越え」

ミスティアの屋台から、今日もよく響く声が、遠くまで。

.
.

さて、飲みましょうか。
.
幻想と空想の混ぜ人
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コメント



0.5930簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
みすちーはいつも通りだと思ったのにっ!
3.100アイス削除
みすちーはネルフで造られたクローンかよ(笑)
4.80名前が無い程度の能力削除
無性に切ないなこれww
11.100名前が無い程度の能力削除
きゃぁぁああロリ分を摂取しにきたのにぃぃいい
おっさんくさいよぉぉ


だがそれもいいかもしれない(開拓精神
12.90名前が無い程度の能力削除
そうなのかw
14.80名前が無い程度の能力削除
うぉおおおおおい!!!!!
みすちーの扱いが切なすぎて泣ける
15.90名前が無い程度の能力削除
笑っておくれよミスチー
19.80名前が無い程度の能力削除
な、なんだこれは……なんだこの哀愁……
20.100名前が無い程度の能力削除
中年どもの集いかw
24.100名前が無い程度の能力削除
この哀愁がたまらない。
38.100名前が無い程度の能力削除
哀愁漂うはずの作品なのになぜか大笑いしてしまった…
45.90名前が無い程度の能力削除
ばかにはばかなりのいきかたがある
なんという悲哀。湿っぽく笑わせていただきました。
53.100名前が無い程度の能力削除
流石。
59.100名前が無い程度の能力削除
とりあえずゆゆ様自重。

無理だろうなあwww
62.100名前が無い程度の能力削除
そうなのか・・・
67.50名前が無い程度の能力削除
あなたの作品をいくつか読ませていただいたことがありますが今回はネタ、内容ともにいささか物足りなく感じます
そういったものを抜きにしてもよくあるネタをよくあるように、と感じました
過剰に期待しすぎていると言われればなにも言えませんが……
70.90名前が無い程度の能力削除
何故か泣きたくなった;ww
73.100名前が無い程度の能力削除
そう……なのか……
77.100名前が無い程度の能力削除
涙無くして語れませぬ。
82.100名前が無い程度の能力削除
コメントが悪戯でけされてしまったようなので再投稿。

この設定でガチガチにシリアスな長編読みたくなった。
84.100名前が無い程度の能力削除
リグルだけなぜか普通に見えるwww
88.90名前が無い程度の能力削除
ミスチーが死んでも代わりはいるのか……
90.100名前が無い程度の能力削除
そーなのかー…(涙)
93.100名前が無い程度の能力削除
そう・・・なのですか。
95.80名前が無い程度の能力削除
はい、飲みましょうか。

 
97.100名前が無い程度の能力削除
そーなのかー・・・
111.90名前が無い程度の能力削除
……年を取るって、不思議やね。
しかしルーミアは相変わらずのつかめないキャラで素敵。
116.100名前が無い程度の能力削除
五十肩て。
世の無常を感じる……
128.100名前が無い程度の能力削除
のっけから吹いたw
バカルテットたちにもいろいろと事情があるんですねw
しんみりな雰囲気最高でしたw
132.100名前が無い程度の能力削除
な、なんだってー
135.90名前が無い程度の能力削除
歳をとるというのはいろいろ大変なんだな…
150.100名前が無い程度の能力削除
なんかつらくなった