―――博麗神社。
紫と藍と橙は外(現界)から戻って来た。
紫と橙は外の世界の服を、藍は変化の術を使い男性用のスーツを着こなしていた。
三人でマヨヒガに帰ろうと紫がスキマを開いた―――
「おっと、橙。この魔理沙様に報告がまだじゃないか? 外はどうだったんだ?」
「んにゃ?!」
「今日は橙メインの宴会だ! 萃めるぞぉ。超萃める!!」
「あわわ……」
―――その時、橙は魔理沙に捕まってしまい神社の中に連れて行かれてしまった。
魔理沙は行き際に二人の方を見て、帽子をクイッと下げた。
萃香が近寄って来た。
「さて……私は人妖萃(あつめ)をしなきゃね。しかし今日は二人ほど……幻想郷に『いない』みたいだ」
「ちょ、ちょっと萃香」
「戻って来たのは橙と美鈴だけ。後の二人は……」
そこから先は何も言わず、ニヤッと笑い何処かへ飛んでいった。
残された二人。
「……」
「……」
気まずかった。そういえば、事が済んでから二人っきりなんてなかったと考える……
「とりあえず……」
「帰りますか……」
気配りに甘え、二人はマヨヒガに戻った。
* * * * * * * * * * * * * * * *
荷物を整理し炬燵に入る。沈黙が続く。
「……お茶、飲みますか?」
「ええ……お願い」
藍は湯呑みを取りに―――
「あ」
「どうしたの?」
「紫様の湯呑み、割れちゃってました……」
「そういえば……」
そして気まずい沈黙が再び走った。
「「あの」」
声がダブる。そして、俯く。
「紫様から」
「じゃあ……藍。お墓参りで、その、何を……」
「……」
「い、言いづらかったらいいの。それだけ」
「ただ、お久しぶりです、と」
静かに告げる。紫はそうと相槌を打った。
「彼らは何か言っていた」
「何も……死人に口無しです」
「そうね。ごめんなさい」
「残るのは……後悔と、思い出、だけです」
悲しい声で答える。
「そう……いつまでスーツ着てるつもり?」
「まあ、たまには。男装もいいかな、と」
藍は恥ずかしそうに頬を掻いた。
紫はそんな、どこか初々しい藍の様子に微笑んだ。
「それで……藍は」
「あ、いや……湯呑み。どうしましょうか」
「え、ああ。今度買ってくる。コーヒーあったかしら」
「はい」
「じゃあ、それで」
「わかりました」
藍はインスタントのコーヒーをカップに入れて持ってきた。
「久しぶりですね。コーヒーなんて」
「そうね……橙がいない時はよく飲んでたけどね」
「ふふふ。はい……」
「……」
藍はブラックを、紫は砂糖とクリームを淹れて口にする。
再び沈黙が走ったが、嫌な沈黙では無かった。
ふと、紫は藍の癖に気付いた。
「薬指」
「え?」
「煙草、喫ってもいいのよ」
「ああ……よく覚えてましたね」
カップの取っ手に薬指を掛け、人指し指と中指の間で煙草を持つ。藍の癖だった。
「いいんですか?」
「別に。橙いないし」
「はは。じゃあ、甘えます」
トランクから煙草を取り出し、咥えた。紫煙が立ち上る。
メンソールの冷たさが藍の口の中に広がった。
「KOOL、ね」
「え、あ、はい」
紫がスキマから灰皿を出す。
藍はコーヒーを一啜りし、灰を落とそうと手を伸ばした―――
「藍」
「え」
その時、手を掴まれた。
「彼らはきっと、私の悪口を言っていた」
「……いいんです」
「そうね。私は気にしない」
「はっきり、言いますね」
「私、残酷でしてよ」
「知ってます」
紫は暫く手を握っていた。
「貴女は許せないはず」
「……許さないと、言ったはず」
「……そうね」
藍の言葉に、紫は手を離した。
「ごめんなさい」
「許さない」
紫はカップを持とうと手を引いた。
その時―――藍に掴み返された。
「あ」
「許(はな)さない。と、言ったはず」
「ら、藍……」
「彼らに言いました。許せない人ができた、と」
そして、紫を引き寄せ―――口付た。
「ん……苦い」
「ふふ。可愛いですよ。紫(メリー)」
「……卑怯だ」
「ええ、誰かさんのおかげで捻くれちゃいました」
「ばか」
「KOOLな味です」
KOOL……Kiss Of One Love。
再び、強引に唇を奪う。
「ん……あっ……ぷはぁ。わ、わかった! わかったから……離して。その……」
「許さない……」
「だ、だめぇ……」
「フフフ……橙はいませんよ」
「……ばか」
そして、女は最愛の人に身を委ねた……
* * * * * * * * * * * * * * * *
誰にでも許せない言葉はある。
しかし、アナタがもし、大切な人からそれを言われたら……
簡単です。
思う存分、喧嘩しましょう。
そして、その人を許(はな)さなければいいだけのこと。
決して許してはいけません。
私は、そうすることにします。
(Fin)
紫と藍と橙は外(現界)から戻って来た。
紫と橙は外の世界の服を、藍は変化の術を使い男性用のスーツを着こなしていた。
三人でマヨヒガに帰ろうと紫がスキマを開いた―――
「おっと、橙。この魔理沙様に報告がまだじゃないか? 外はどうだったんだ?」
「んにゃ?!」
「今日は橙メインの宴会だ! 萃めるぞぉ。超萃める!!」
「あわわ……」
―――その時、橙は魔理沙に捕まってしまい神社の中に連れて行かれてしまった。
魔理沙は行き際に二人の方を見て、帽子をクイッと下げた。
萃香が近寄って来た。
「さて……私は人妖萃(あつめ)をしなきゃね。しかし今日は二人ほど……幻想郷に『いない』みたいだ」
「ちょ、ちょっと萃香」
「戻って来たのは橙と美鈴だけ。後の二人は……」
そこから先は何も言わず、ニヤッと笑い何処かへ飛んでいった。
残された二人。
「……」
「……」
気まずかった。そういえば、事が済んでから二人っきりなんてなかったと考える……
「とりあえず……」
「帰りますか……」
気配りに甘え、二人はマヨヒガに戻った。
* * * * * * * * * * * * * * * *
荷物を整理し炬燵に入る。沈黙が続く。
「……お茶、飲みますか?」
「ええ……お願い」
藍は湯呑みを取りに―――
「あ」
「どうしたの?」
「紫様の湯呑み、割れちゃってました……」
「そういえば……」
そして気まずい沈黙が再び走った。
「「あの」」
声がダブる。そして、俯く。
「紫様から」
「じゃあ……藍。お墓参りで、その、何を……」
「……」
「い、言いづらかったらいいの。それだけ」
「ただ、お久しぶりです、と」
静かに告げる。紫はそうと相槌を打った。
「彼らは何か言っていた」
「何も……死人に口無しです」
「そうね。ごめんなさい」
「残るのは……後悔と、思い出、だけです」
悲しい声で答える。
「そう……いつまでスーツ着てるつもり?」
「まあ、たまには。男装もいいかな、と」
藍は恥ずかしそうに頬を掻いた。
紫はそんな、どこか初々しい藍の様子に微笑んだ。
「それで……藍は」
「あ、いや……湯呑み。どうしましょうか」
「え、ああ。今度買ってくる。コーヒーあったかしら」
「はい」
「じゃあ、それで」
「わかりました」
藍はインスタントのコーヒーをカップに入れて持ってきた。
「久しぶりですね。コーヒーなんて」
「そうね……橙がいない時はよく飲んでたけどね」
「ふふふ。はい……」
「……」
藍はブラックを、紫は砂糖とクリームを淹れて口にする。
再び沈黙が走ったが、嫌な沈黙では無かった。
ふと、紫は藍の癖に気付いた。
「薬指」
「え?」
「煙草、喫ってもいいのよ」
「ああ……よく覚えてましたね」
カップの取っ手に薬指を掛け、人指し指と中指の間で煙草を持つ。藍の癖だった。
「いいんですか?」
「別に。橙いないし」
「はは。じゃあ、甘えます」
トランクから煙草を取り出し、咥えた。紫煙が立ち上る。
メンソールの冷たさが藍の口の中に広がった。
「KOOL、ね」
「え、あ、はい」
紫がスキマから灰皿を出す。
藍はコーヒーを一啜りし、灰を落とそうと手を伸ばした―――
「藍」
「え」
その時、手を掴まれた。
「彼らはきっと、私の悪口を言っていた」
「……いいんです」
「そうね。私は気にしない」
「はっきり、言いますね」
「私、残酷でしてよ」
「知ってます」
紫は暫く手を握っていた。
「貴女は許せないはず」
「……許さないと、言ったはず」
「……そうね」
藍の言葉に、紫は手を離した。
「ごめんなさい」
「許さない」
紫はカップを持とうと手を引いた。
その時―――藍に掴み返された。
「あ」
「許(はな)さない。と、言ったはず」
「ら、藍……」
「彼らに言いました。許せない人ができた、と」
そして、紫を引き寄せ―――口付た。
「ん……苦い」
「ふふ。可愛いですよ。紫(メリー)」
「……卑怯だ」
「ええ、誰かさんのおかげで捻くれちゃいました」
「ばか」
「KOOLな味です」
KOOL……Kiss Of One Love。
再び、強引に唇を奪う。
「ん……あっ……ぷはぁ。わ、わかった! わかったから……離して。その……」
「許さない……」
「だ、だめぇ……」
「フフフ……橙はいませんよ」
「……ばか」
そして、女は最愛の人に身を委ねた……
* * * * * * * * * * * * * * * *
誰にでも許せない言葉はある。
しかし、アナタがもし、大切な人からそれを言われたら……
簡単です。
思う存分、喧嘩しましょう。
そして、その人を許(はな)さなければいいだけのこと。
決して許してはいけません。
私は、そうすることにします。
(Fin)
シリーズは見たので、この二人のイチャつきっぷりには、納得かな?たぶん。
なんか他の話も考えているようなので、そちらにも楽しみに待ちます。
他の話も凄い期待してますっ
言葉遊びも面白く、なにより紫が可愛かったです。