※ちょっと補足ですが、小町と文の過去と思って見てください。
今日もいい天気だなあ……よし寝るか。
それじゃ、おやすみなさ――
「やってられるかああああああああ!!!」
――ドスンッ!
「きゃ……ぐぁぁあああああああああああああ!!!」
いつものように昼寝をしようとしていた死神――小野塚小町は、突然の襲撃者によって平和な一日をぶち壊された。
…………否、人生を終わらせかけた。
「ああ、もう! 何なんですか何ですかどいつもこいつも『文さんの新聞は信用できない』だの『新聞配ってる暇あったら家事ぐらいしてください』だのなんなのよもう!! 指でさして笑ってくれたほうがまだマシなのに――!」
「くっ……い、息が…………!」
突然の来訪者――射命丸文は、怒りを理不尽な形で押し付けてきた。
というより、物理的に。
さらに付け加えるならば、みぞおちに。
「そうですかそうですよね貴方も私の新聞を見ながら『ああ、ホント学級新聞だなコレ』とか言って笑ってるんですよね!? そんなに笑いたいなら笑ってくださいよむしろ罵って下さいよというか――――」
「……――いい加減どけやあああああああああああ!!!」
「ちょ、痛ァ!?」
このとき、あたいは初めて『死』について心から理解できた気がする。
だって見えたもん。四季様がこっち見て驚いた顔してたもん。
その後『大丈……サボって無いで仕事に戻りなさい!』って叩かれたけど。きゃん。
「ハァハァ……お、お前! 本当に死ぬかと思ったぞ!?」
「い、いきなり鎌で殴らないでください!」
「突然みぞおちに爪先を差し込まれたこっちの身にもなれ。むしろそれで済んだことに感謝しろ」
「あややや……すみません」
「ああ……『ぐぁぁああああ!』ってなんだ……『きゃん』って可愛らしく悲鳴を上げるつもりが…………」
「キャラにこだわってると、未来の人気投票にも影響しますよ」
「うるさい。とりあえず座れ」
ちと、心広すぎるんじゃないかなあ――とか自分を誉めつつ、小町は文へと座るように促した。
ただ進められた場所がただの岩だったので、しぶしぶといった感じではあったが。
「……で、一体何のようだい? いきなり蹴られて愚痴られたわけだけど、少しなら話を聞いてやらんでもない」
「それについては謝ったじゃないですか。そうです小町さん聞いてください」
よく見てみると、怒りのせいか文の顔が赤い。
私のお腹も赤いには赤いが……
くど過ぎるのもあれなので、とりあえずだまって話を聞いてみた。
愚痴だ。
本当に酷い愚痴だ。
何というか……文の愚痴は酷いものだった。
聞いていて気分の良いものではないし、人を馬鹿にしたような発言がとても多すぎる。
自分の新聞を認めてもらいたいのに素直じゃないなあ――という感じで聞いてはいたが。
「――で、そういうわけなのですよ」
「ふむ。簡単に言うと最近新聞に対しての風当たりが悪いと」
「大雑把過ぎです……まあ、その通りですが。他の天狗ならいざ知らず……この私に対する文句なんて、誰かのの陰謀としか思えませんよ」
――ああ、それにしても何でこの郷には自己中心的なのが多いんだ。
素直じゃないなんてかわいらしく言ったけど……
『私の新聞を理解できない人は⑨以下の知能』って言ってたよ。
人を馬鹿にするのもやめてほしいもんだ、この烏天狗。
「それになんだい。お前さんは自分に何も非が無いと?」
「何で私に非なんてあるんですか。私に狂い何てあるはずがありません」
ああ、四季様……ここに阿呆がいます。
今あたいは貴方の気持ちが少し分かった気がします。
貴方の仕事を少し借りますね。
これからもサボり続けますけど。
「ほほう。文は他の生き物すべてを見下したような言い方をするんだね」
「見下してないですよ。私とは住む世界が違うだけです」
「そうかいそうかい……」
はあ……と、深いため息をつく。
こいつは何も分かっちゃいないな、と。
「なあ、文」
「何ですか?」
私はなるべく優しい声で呼びかけ――そして、キレた。
「甘えてんじゃない。年増の割には中身は全然赤子だね」
「――なっ」
一気に顔が赤くなる文。
先ほどまでの愚痴っていた時よりも更に真っ赤になりそうだ。
しかし、先ほどの理不尽な怒りを受けた身として、言葉は止まらない。
「何が『私の新聞は⑨以下じゃ分からない』だ。ふざけんじゃないよ。いいかい、あんたが新聞を作ってるのは自分のためだろう? そん
な新聞なんて読みたい奴どこ探してもいるわけがないね。人の心を踏みにじるような文章は書けるけど、自分の心を踏みにじる文章は書け
ないんだろ?」
「なっ……私は真実を書いてるだけです!」
「真実ねえ……じゃあ、何で『信用できない』って言われるんだい。それは自分の主観だけでしか文章を書いてないからじゃないか? 人に見せるための文章じゃ無くて私欲を埋めるだけの文章なんか読みたいとは思わないね」
「…………」
いったん話を区切って、文を見てみる。
下を向いていてよく見えないが……さっきとは違い、その表情は怒りたいけど怒れない表情だ。
そこで私は確信した。
――分かってるじゃないか。
真顔を苦笑に変えて、今度はできるだけ優しい口調で文に言葉をかけてみる。
「文。あんたは何で新聞を人里まで配ってるんだい?」
「……え?」
やはり怒鳴られて精神的なショックが大きかったためか、上げた顔は思いつめた表情をしていた。
「どうしてだい?」
「――もっと喜んでほしいからですよ…………」
「聞こえないね」
「……! も、もっと私の新聞を読んでほしいからですよ!! そして私の新聞で笑顔になって欲しいからですよ!」
怒った顔でこちらを見てくる文。
しかし、その表情はむしろ泣きそうである。
対照的に小町は、むしろ嬉しそうな表情をしていた。
――怒鳴られたことじゃなくて、自分の新聞が認められないことを決めつけられたのがショックだったのか。
「な、何で笑ってるんですか!?」
「ははは。そう怒るなって」
「貴方は人がショックを受けてるのを見て笑う妖怪ですか!」
「――いや、あんたを見て安心したんだよ」
「……はい?」
今度はよく分からないという表情をしている。
いつか弄って表情を見て楽しんでやろうか。
そんな未来を想像しつつ、小町は言葉を続ける。
「見てくれる皆が笑顔になれる新聞を作りたいんだろ?」
「……はい」
「ならさ」
そして私は、思いついた名案を実行するための言葉を文に告げた。
「――今すぐ、何でもいいから面白いと思う新聞を書いてみろ」
「はい?」
「何でもいいから、ほら」
「いやあの、ちょっと無理がありますって!」
「ほらほら! 早く書け、真実から面白おかしく変えていいからさ!!」
「いや、ちょっ……わ、分かりました分かりました! 書きますから引っ張らないでください!!」
そう言うと、文は自らの家へと飛んで行った。
というよりも、いきなり風が起こったと思ったら消えてたわけだが。
「まあ、少し待ってみるかな。その間昼寝してもいいけど…………」
――今日は忙しくなりそうだ。
そう思ったので、とりあえず持ち場を離れても上司が来ないように霊をいっぱい送ろうと思った小町であった。
四季映姫は驚いていた。
「なっ……何ですかこれは!?」
――そう。
小町が久々にやる気を出したせいか、普段の5倍以上の霊が集まってきているだ。
これは異変か――そう思った映姫ではあるが、さすがに部下をそこまで無下に扱うのも悪い。
と、そこで映姫は思い出した。
「……そういえばさっき…………気のせいでは無かったのでしょうか?」
感動が一気に心配へと変わる中、仕事が終わったら小町に会いに行こうと思う映姫であった。
「――って、これはあまりにも多すぎですよ小町!」
「はあ……」
「――おや、書けたかい?」
「まあ、それなりに――って、何であなたがここにいるんですか! 私の家は分からないはずでしょう!?」
「気になったから仕方ない。あたいは『距離を操る程度の能力』があってねえ……」
「私との距離を縮めたわけですか……」
「そんなとこだねえ」
霊を送り出した後、小町は文が心配で様子を見に来たのだが…………
――順調そうじゃないか。
この調子ならそう待たなくともすぐに書き終わるだろう。
そして、書き終わった新聞の一枚を手に取り――
「はあ!?」
「ちょ、どうし……何勝手に見てるんですか!」
「なんだこの堅過ぎる文章は! 子供なんて理解する前に読むのやめるだろ!」
「そ、そんなこと言われたって…………」
一気に落ち込む文に小町は一言。
「はい、書き直しね」
「そりゃないでしょ!?」
「例えばほら……『数年前、魔法の森に出来た≪香霖堂≫では今では外来の品を多く扱い……』」
「外来の品と言われれば、誰でも興味をひかれるでしょう」
「いや、これはむしろ『数年前、魔法の森に出来た≪香霖堂≫では毎回赤ふんを巻いた肉体美を披露であろう店主が……』」
「営業妨害でしょう!?」
「そっちのほうが面白いけどなあ。それに仮定形だから大丈」
「ああもうそれ以上言わなくていいですよ! ……分かりましたよ、もう分かりました」
嘆く文はさっきの出来事がショックだったせいか、冷静な判断がそこまで出来ていないようである。
小町が面白おかしく言ってくるせいで、どうでもよくなってきたというのもあるだろうが。
「……何ですか。真実から微妙に遠ざからないのにふざけてる内容の文章は」
「いや、こっちのほうが面白いって!」
「そうなんでしょうか?」
「そんなもんさ」
「なら……私自身だけの言葉で、最後に一つ載せましょうかね」
「ほほう、そりゃ楽しみだ」
ニカッ――と、元気に笑う小町を見てると文もなんだか嬉しい気分になる。
怒ったり笑ったり――死神とは思えない感情豊かなこの女が、文は少し羨ましくなった。
「――さて」
印刷が済んだ新聞の束を小町が持つ。
文は驚いた顔で小町を見ていた。
「さて行きますか……ん、どうしたんだい。あたいの胸が羨ましくなったか?」
「それはもう会ってから――て、違いますよ! 最初いきなり踏みつけたりしたのに、何でそこまでしてくれるんですか?」
「んー、そう言われてもねえ……」
実のところ、文と小町が会うのはこれが二度目である。
新聞を配ってる途中で文が声をかけてきたのだ。
死神を見るのが珍しかっただけだろうが。
「まあ、あたいが無理やり書けって言ったしねえ」
「急に押しかけて来た私がいきなり踏みつけられた挙句、愚痴を長々とこぼされましたけどね」
「じゃあ、たまに遊びに来てくれ。正直退屈なんだ」
「仕事ぐらい真面目にやりましょうよ」
「それは無理難題だな」
「また踏みつけますよ?」
「あたいの船に乗ってみるかい?」
そんな他愛もない会話をしながら、新聞を配る準備をする。
久々に笑ったなあ……と、文は一人感じていた。
「……さて」
「……よし、私も準備できました。それじゃ、配りますか!」
「はい、配り終わったー」
「それじゃ行きま――はい?」
見ると小町の手には鎌以外何も握られておらず、いつも通りの状態である。
「……その能力卑怯ですよ」
「いやはや、誉めてくれて嬉しいねえ」
「どこに配ったんですか?」
「人里」
「ええっ! そこはさすがに……」
「まあ、それで飽きられたらどんまいとしか言えないな」
「ううっ……もう自信が無いです」
実際のところ、今回の文のストレスが爆発した原因は人里にある。
軽く目を通した後にすぐ捨てられ、子供は新聞を丸めて『かたじけのうござる』とか言いながらちゃんばらをしていた。
「まあ、なるようになるさ」
――そういうと小町は、残っていた新聞すべてを幻想郷中に振りまいた。
「おい、また天狗の新聞なんかあるぞ!」
「今日二度目か……全く、やめてほしいな」
――人里。
その町の中心部は、村人たちで賑わっていた。
否、一つのものに視線が釘付けになっていた。
その視線の先には大量の新聞――というよりも、新聞の山があった。
まるで一気に持って来たものをそのまま放置したほうになっている。
そして、その頂上には――
【新リニューアル! あややの新聞速報!】
と、書かれた看板が立てかけてあった。
「ハァ? ホワッツ!? ホワイ!!?」
「落ち着けって」
「落ち着いてられますか! なんですかあの看板は!!」
「タイトルだろ」
「誰が『あやや』ですか! というか……ああ、もう! 私自身がネタですよこれじゃあ!」
「いいじゃないか」
「小町さん! 貴方って人は」
「皆、笑ってるじゃないか」
「――え?」
「ねーねー、おとーさん」
「ん、どうした?」
「あかふんって――」
「ほら、こっちのページにある『百合と薔薇の違い』のほうを見なさい」
「ダメだろ」
「ハハハ! この三姉妹の演奏聞くと踊りがうまくなるそうだぞ!」
「いや、うるさい子供が静かになるとも書いてあるぞ!」
「是非聞いてみたいもんだ!」
「あたいチルノ」
「この新聞には『ちるの』じゃなくて『さるの』って書いてあるよ」
「あたいサイキョー」
「って、これ写真じゃん! チルノちゃんの字じゃん!? 自分の名前ぐらい書けるようになろうよ!」
――あれ?
文は困惑していた。
さっきまで『かたじけのうござる』と言いながら武器として使われていた新聞は、本来の用途通り読まれている。
何よりも――
「皆笑ってる…………」
何故だか文は気持ちが落ち着くのが感じられた。
無論、文章は変だし真実から多少遠回りな表現ばかりで新聞というのかも分からないものではあるが――
「私の新聞で……笑ってくれてます…………」
何だろう。
さっきまで憎かった人里の人間たちが、今じゃとても――
「こりゃまた…………」
小町は驚いていた。
文の新聞が人里でどういう風に扱われていたかは知らないが、少なくとも皆が笑顔である。
文字が読めない子供は、へたくそな絵や写真で笑い――。
大人は誰もが口の端を釣りあげながら文字を目で追い――。
夫婦は肩を並べて笑いあいながら新聞を見つめ――。
そして文は――笑顔だった。
――数年後。
文は約束通り、小町のところへと訪れていた。
多い時は週に5回は来ると言うのだから、その分天狗の縦社会への影響が気になるが。
「ああ、来たかい」
「こんにちは小町さん」
そういうと文は――今ではもう定位置になっている――石へと座りこんだ。
「そういえば、今日は『文々。新聞』初刊発行の記念すべき日ですよ」
「懐かしいねえ」
「私たちが生きた年月からしたら、つい最近と言っても良いかもしれませんが」
「ああ、懐かしい……そういえば、何で『文々。新聞』なんだっけ?」
「小町さんが『あやや新聞』を押してきて私が全力で拒否したからですよ」
「そういえばそうだったねえ。それで文字も読み方も変わったと」
「ええ。だから『文々(あやや)』と書いて『文々(ぶんぶん)』なんですよ」
そういう二人は過去を振り返る。
初めて文が新聞――当時のを新聞というのもあれだが――を、自分なりにアレンジしたものである。
実際は小町も手を加えているが、あれが文の原点になっていることには変わらないだろう。
「そういえば最後の記事」
「はい?」
「最後の記事に『死神の鳴き声は意図的に作られたものだった』って記事はどうかと思ったけどねえ」
「『きゃん』って言おうとして『ぐぁぁあああ』でしたからね」
「もう忘れてくれ」
「忘れませんよ」
「あの後四季様に会って言われたんだ……『貴方は善行を行いました。それは誉められるべきものです。しかし、しかしです! あの記事
のおかげで同僚から『映姫もギャァァアアア!って言わないの?』とか面白おかしく言われる身にもなって下さい!』ってな…………」
「良いことじゃないですか」
「全く酷い話だ」
あれから文は、面白い記事を書くために取材を始めた。
最近ではそのために結構な友好を広げているらしい。
ここに来るよりも友達がいそうだけどなあ――と小町は思う。
その気持ちを察してか、文は一言――小町に、当たり前のように告げた。
「これからもよろしくお願いします。貴方は私の最初で最後の無二の親友なんですから。これからも……ね」
――顔が赤くなってるなあ。
前と違うのは赤いのは怒りではなくて……親友に親友ということの気恥ずかしさであった
(終)
また新しい妄想の燃料が……
いくつか言わせて頂きますと、「被」ではなく「非」ではないですか?
それから、一人称と三人称が混ざっている場面がいくつかあったのはどうかと
あと所々にある無意味な改行が気になりました
続編、楽しみにしています。
以下ネチネチ小姑タイム
・被→非
・文章がずれていて、かなり読みづらいところが多々ありました。何かソフトを使って書いているのなら、別のソフトに移して推敲してみるといいかもしれません。
>>2さん
コメントありがとうございます。
無意味な改行は投稿して分かりましたが、やはり結構な隙間が開いてしまいますね。
キャラ発言とナレーションの間に改行を開けすぎた感じが自分でも見てわかります。
「被」は「非」の完全なる誤字です。ご指摘ありがとうございます。
一人称と三人称、文体に関しては修正しないでこのまま残させていただきます。
誤字以外は、最初の作品として残しておこうと思います。
誤字報告
>子供何て
×何→○なん
発想はいいと思います
コメントありがとうございます。
これから勉強しながら精進しますので、よろしくお願いします。
誤字報告感謝です。
>>11さん
コメントありがとうございます。
少し先走ってしまったかもしれません。
もう少し投稿前にいろいろ見直してみたいと思います。
改行注意
コメント有難うございます。
区切りごとに改行しすぎた感が自分でもあります。
今後に期待してますと言ってみる
コメントありがとうございます。
どうぞ、今後ともよろしくお願いします。
きゃ……ぐぁぁあああああああああああああ!!!
きゃ・・・・・・ぐぁぁあああああああああああに吹いたwwwwwww
このカップリングは珍しい!
掴みどころのない二人ですね。おもしろかった!