Coolier - 新生・東方創想話

「幽々子殿、柏餅でござる」

2009/10/07 05:12:11
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人は、本当に混乱した時、途方に暮れるという。
唖然とする、とも言える。

「や、今宵の桜も風情があっていいものでござるな」

しかし、西行寺幽々子は冷静だった。
混乱しつつも、これまでの経緯を振り返ることに努めた。




─────────




幾度と繰り返される。日々。
今日もまたゆっくりと時を過ごす。
彼女の朝はいつも妖夢に起こされることから始まる。

「幽々子様、朝ですよ。起きてください」

「んー、あと五年……」

「三年寝太郎も真っ青な発言ですね……」

「おふとんと合体しちゃったのよー……後生よー……」

「もう死んでます」

「じゃあセカンド後生ー」

「今日の朝ごはんは炊き込みご飯ですよ」

「妖夢ー! おかわりー!」

「え、ちょ、いねぇ! てか既に食ってやがるぜヒャッハー」

そんなこんなの、いつもと変わらない日常。

「あ、そう言えば妖夢」

はい? と返事をする妖夢は、20合の炊き込みご飯が入っていたおひつを片付けている最中であった。

「ううん、何でもないの」

この時、幽々子に一つのイタズラ心が芽生えた。
頭に疑問符を浮かべる妖夢も、特に気に留めた様子もなく作業へと戻っていく。

(お昼ごはんが楽しみだわー)

その後はいつも通り、だらだらとしたりダラダラとしたりと、忙しい時間を過ごした。
そして、昼食時。

「妖夢、これ、運んでおくわね」

「あ、すみません。 お願いします」

元来、仕える者と主人の距離は遠いが、時は移り、変わるものである。
主人たる幽々子の性格もあり、この二人の間には主従の関係さえあれど、一方で家族でもあった。
だからこうして食卓の用意の手伝いなども、共同で行う。
そこには決して、早く食事を開始したいなどという邪な思いはない。
ないったらない。

(ふふ、さらさらっとね)

二人の食卓、妖夢の指定席に置かれた湯飲みに彼女は白い粉を注ぐ。
ちなみにこの粉、彼女のものではない。
彼女が先日拾ったものである。
気になる点はその包み紙に大きく丸珍と書いてあったことである。
丸秘、ならばわかる。しかし、丸珍。
珍妙の珍である。
当然、気になる。
当然、自分は飲まない。
当然、対象は絞られる。

「それでは、いただきましょう」

「はーい、いただきまーす」

腹が減っては戦はできぬ。彼女には午後からハードなスケジュールが埋まっている。
食後の昼寝、まずこれが難しい。ついさっきまで12時間寝ていた者が飯を食って即寝、聞くだけで身震いがするというものだ。
そして起床、きっちり2時間。これを少しでも遅れるわけにはいかない、事実、彼女はいままで遅れたことがない。
15:00ジャストにおやつの時間、食べ終わるまで気を抜くことはできない。
甘味のする白粒と茶褐色の豆を煮沸したものからなる加工物が主流である。
受精卵の粘液と卵を分離して得られたものから作り出される、生成物。
白と黒のまだら模様の畜生の乳房から得られる白濁液を混ぜ合わせることもある。
全神経は口に、舌に、手に、集中する。
そして……食す!
それはまさに戦場であり、食うか食われるか。想像を絶する戦い……っ!

その後は散歩をする。しない日は縁側でボーっとする。ここからがきつい。
まず常人には耐えられないだろう苦痛。灼熱に煮え滾った湯と苦味のある緑色の植物を乾燥したものを混ぜ合わせる。
そしてできた汁を啜らなくてはいけない。まさに苦汁をなめる試練……っ!
しかし彼女はその抽出液を平然な顔をして飲み干す。心中察するに、彼女の神々しさが知れるというものである。
たまに乾燥物が浮き出て柱のように立つことがある。その様子はまさにゴミが浮いている様を連想させる。
しかし、彼女は

「あら、今日はいいことがありそうね」

などと余裕の表情である。恐るべし西行寺幽々子。

閑話休題。

多忙な彼女も、今だけはそのことを忘れ全神経は妖夢と湯のみのみに注がれる。
もぐもぐと、むしゃむしゃと、妖夢は食事を続けていたが、ふと箸を止める。

(きた!)

「あのぅ……」

「にゃ?」

「あまり見つめられると、その……食べにくいのですが……」

そう言い顔を赤らめてしまう妖夢をよそに、幽々子は心の中でガッデムと叫んだ。

「そ、そうね、ごめんなさい」

ふっと妖夢から視線を外し、茶を啜る。
再び見つめて見つかるのも気まずい。茶を啜りつつチラ見作戦に切り替えた。

「んく……」

妖夢が茶を飲んでいた。

「ぶふぁ」

「汚っ!」

「ご、ごめんなさいね」

「まったくもう、さっきから変ですよ……」

「へへ、ごめんごめん」

「…………」

「…………」

「何か顔についてます?」

「ん? んーん、付いてない……わよ」

おかしい、そう思ったがどうしようもなかった。
その後も特に何もおこらず、そのまま昼食は終了してしまった。

「んー……」

畳に寝転び、丸珍薬を眺める。

「飲み薬じゃないとか……?」

拾ったとき、既に粒状になっていたから飲み薬だと思った。
しかし、素人目にはそうかもしれないが、もしかしたらこれは溶かして注射するものなのかもしれない。

「うーん……」

考えむなしく、彼女は寝転んでいる体勢ゆえ、睡魔に惨敗を喫することとなる。

「幽々子殿、柏餅でござる」

辺りが暗い。

(しまった!)

寝過ごした。

(うたた寝しちゃった!)

あってはならない、失態。
これまでで始めての、おやつ遅刻。
度し難い、屈辱!
徐々に覚醒していく、頭。

(んんん……?)

「や、今宵の桜も風情があっていいものでござる」




─────────




「で、なーんで私のところに来るのよ」

はぁ、っとため息をつく紅白ガール。

「だってぇ、異変解決は霊夢の仕事でしょ~」

「これは異変というより変異……って何してんのあんた」

「いやなに、日課の素振りでござるよ。 はっはっは」

さわやかな笑顔が目に眩しい。
妖夢の汗が夕日に煌いたその瞬間、草陰から飛び出す影が一つ。

「曲者!」

右袈裟に切り下ろされた太刀は虚しく空を切り、影は彼女の背後へ回り込む。

殺気。

それを感じた妖夢は背中に嫌な汗が吹き出るよりも早く、相手が行動するだろうことが理解できた。
それほどまでに完璧で、高速の奇襲。
この時、妖夢は死を覚悟した。

(速……避……否……死っ!)

カシャ!  と、何とも形容しがたい擬音が境内の虚空に鳴り響いた。
そして再び姿を現す静寂。
その静寂を看破したものも、やはり静寂を作った張本人であった。

「んんー! グッチラ!(※グッドパンチラ)」

ぐっ、と親指を立てて突き出すその人物。ウインクと白い歯微笑も忘れずに。
射命丸文その人(?)である。

「きき、貴様! 何奴! 名を名乗れ!」

「あるぇー、私を忘れたんですかー? というか知らないとは言わせません……よっ」

我武者羅に切りかかる妖夢、それらをムーンウォークで避ける文。
一種の大道芸大会が博麗神社に参上仕った状態である。

「幽々子、私忙しいからそろそろ帰ってくれないかしら」

「えー、まだ何も解決してないわよー」

「私にこれをどうしろと……」

「話は聞かせてもらいました」

「げっ」

縁側で揉めていた二人の間、いつの間にか文が座っていた。
二人が境内に視線を戻すと、そこには亀甲に縛られた妖夢の姿があった。

「天誅! 天誅でござる!」

「突っ込みきれないから話を戻すけど」

「何を突っ込むんですか?」

「あらー、妖夢になら突っ込まれてもいいわねぇ」

無視。

「んで、あんた何か心当たりでもあるの?」

と、どうでもよさげに文に問いただす。

「もちろんですとも!」

「まぁ」

この時、三者の利害が一致した。

「ならあれを早くなんとかしてとっととでてってくれないかしら」

「霊夢が動いてくれないのは寂しいけど、お願いねー」

「サーイエッサー!」

文は妖夢に近づくと妖夢をひょいと担ぎ上げ居間の隣部屋に運び、襖を閉めた。

「意外と軽いですねぇ、緊縛妖夢さん」

「魂魄妖夢だ!」

などどぎゃーぎゃー騒いでいたのも束の間、蝉が落ちる時のように突然、シンと喧騒が鳴り止んだ。

「……で………………すよ」

「な………………やめ…………」

「……っへっへ……………………」

「……ぁ………………」

「…………………………」

「…………………………」















「拙者は魂魄妖夢でござる!」

「射命丸文でござる!」

「「増えたー!」」




─────────





某月某日。

「魔理沙ー! 待つでござるよー」

「ちょっと借りるだけでござるー」

今日も魔理沙達は元気だなぁ。
……おや、お客さんだ。

「新聞でござる」

「はい、ありがとう」

僕は新聞と引き換えに、小銭を渡す。

「文々。新聞か……」

そういえば久々だな、少し読んでみようか。

『先日、幻想郷に発生した謎の奇病は現在も拡大を続けており、発症率は既に90%を超えたと言われている。
かくいう筆者も発症しており、この記事も内なる己と別の己が戦いながらなんとか書いてある状態でござる。
このままでは拙者はそのうち、かゆうま状態になるかもしれず、非常に恐怖しているのでござる
なお、その治療法などは未だ解明されていない(八意永琳氏がさじをなげたほど不明である)
続いて今日のエクチラ(※エクセレントパンチラ)のコーナー…………』

「ふぅ……」

この魔法の森は人が来ることも少ない故、今まで難を逃れてたようだが、これからはそうもいかなくなりそうだ。
それは魔理沙の感染からも明らかだろう。

「とくに僕の店は入り口だからね」

とにもかくにも、僕が発症するのもこのままでは時間の問題となりそうでござる。




─────────




ここは博麗神社。

「ござるござる」

「ござるござる」

「うぁぁぁぁぁぁ」

ここは博麗神社跡地。
現・隔離所。

何故か発症しない霊夢はその体質を買われ、今回の異変の感染防止主任である永琳に博麗神社の隔離所化を命ぜられた。

(っつーか、まさか本当に異変になるとは……)

まさに嘘からでた誠。
そしてその嘘の元凶である幽々子であるが。

「幽々子様、柏餅でござる」

「ご苦労、どれ…………んむ、美味である」

普通に御家人と殿様だった。

「霊夢殿! 霊夢殿!」

今日の寝場所を確保するため境内のござる達を吹き飛ばそうとしたその時、階段の下から見慣れた顔が見えた。

「何よ、永琳から伝言?」

「いかにも」

長い耳を垂らして息を切らしつつも、伝言をこと細かに伝えていく。
概要がこうだ。
ようやく感染病の特効薬ができたから取りに来い、私は無菌室の中にいるから出られない。
だから何とやらは風邪を引かない、の何とやらであるあなたがきなさい、と。
そういうわけである。

「売られた喧嘩は買ってやろうじゃない……タダだし」

上等、と神社を勢いよく飛びだす霊夢、ここのところストレスが溜まっていたのもあり、沸点は下がっていた。

「天誅でござる!」

「天誅でござる!」

「御用改めである!」

「あ゙あ゙ーもう!!」

途中現れる敵、敵、敵、その全てが感染者だから始末に終えない。

ある妖精などはこちらのボムを居合いで切り払った。

「またつまらぬものを切ってしまった……」

などとぬかしていたので蜂の巣を切らせておいた。

「つ……着いた…………」

ぜぇぜぇと息を切らしつつも、霊夢が永遠亭に着いた時には既に日は暮れていた。

「早く入らないと……」

日が暮れると侍タイプの感染者はいなくなり、変わりに忍者タイプの感染者が飛び交うようになる。

「来たわよ……」

疲労困憊、その一言で表せる霊夢の前に、無菌室の中から出てきた永琳が向かえた。

「いらっしゃい、疲れているところ悪いけど、はいこれ」

渡されたのは箱、そして血清と思わしきもの。

「これ、どうやって使うの? 私使えないわよ」

「あぁこれはね、こうやって……」

そう言い、永琳はおもむろに注射器を箱から取り出した。

「痛っ……」

「こうするのよ……ふふ」

不意をついた一瞬、みるみるうちに霊夢の腕に液体は注ぎ込まれていく。

「な、なに……を…………」

「空気感染も粘液感染もしないあなた、感染させるにはこれが一番ね」

「あ……あなた…………どういう……」

「お休み、次に起きたらきっと幸せな世界よ」

「…………」




─────────





某月某日某所。

「月が綺麗ねぇ」

八意永琳は、話していた。

「月ねぇ、私は後ろのあれが気になって仕方ないんだけど」

二人が振り返ると、そこには先ほどから同じ寝言を言う輝夜の姿があった。

「働きたくないでござる! 絶対に働きたくないでござる!」

「あれで寝言かよ……」

「ふふ……」

「ところでさ」

「なぁに?」

「何で幻想郷全ござる化計画なんてしたの?」

「ん、それはね……」

「それは?」





























「いや、なんとなく」
「オチがないでござる!」

「落ち着け!」
ハリー
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コメント



0.940簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
一体どういう事でござるか・・・
5.70名前が無い程度の能力削除
ゴレイヌですね。わかるでござる。オチが弱い気がするのでこの点数で。
10.無評価名前が無い程度の能力削除
誤字を見つけたので報告を

>僕が発祥するのも
発祥→発症
11.100名前が無い程度の能力削除
面白かっただけにオチが残念…
忍者タイプが気になるwww
15.80名前が無い程度の能力削除
これは酷い幻想郷
24.90名前が無い程度の能力削除
くの一を連想した・・・・ 
26.70名前が無い程度の能力削除
どうしてこうなったでござる…
どうしてこうなったでござる…
31.100名前が無い程度の能力削除
最悪でござるw