Coolier - 新生・東方創想話

蛙と妖精

2009/10/03 18:52:44
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 むかしむかし、あるところに、何でも凍らせてしまうのが得意な妖精がおったそうな。

 妖精はやんちゃで、イタズラ好きで、とある山の、大きな沼に住むカエルを捕まえては、凍らせるのが趣味じゃった。


「またいっぴき捕まえた! 今年のかえるは豊作ね!」


 と、言っても、妖精はカエルを食べるわけでもなく、凍ったカエルが可愛い、とか、お手玉にすると面白い、とか……。

 沼のあるじである、大ガマには、頭の痛い話じゃった。

 この妖精と来たら、何度こらしめても、何度こらしめても、やめようとしないのだから。

 あるとき大ガマは、沼のある山の神社に棲む、えらい神さまの噂を聞きつけた。

 何でも、この神さまは、カエルの神さまだそうなのだ。

 早速大ガマは、大きな体でぴょんぴょんと跳ねて、山の神社に向かった。


 ――ああ、神さま、神さま、カエルの神さま。あの妖精をなんとかしてください。このままでは仲間が減るばかりでございます!


 大ガマはゲロゲロと、大きな声で鳴いて訴えた。

 ああ、こりゃあうるさい。

 あんまりうるさいものだから、神社で昼寝をしていたカエルの神さまも、たまらず起きた。


「はいはい、わかった、わかった。何とかするから、大声でなくのをやめて」


 カエルの神さまは、そう言って、大ガマをなだめると、また昼寝を始めるのじゃった。

 次の日も、大ガマの鳴き声が、神社にひびいた。


 ――ああ、神さま! お願いします、どうかわしらを助けてください!


 ああ、これではおちおち昼寝もできぬ。

 カエルの神さまは、願いをかなえてやりたいとは思ったが、どうにも、いい知恵が思いつかんかった。

 妖精は頭が良くないし、死ぬこともないので、神さまの言葉も聞きやしない。


「ああ、めんどくさい。誰か代わりにやってくれないかな」


 困りはてた神さまは、山に棲む、カッパとテングを呼び、相談することにした。


「――と言うわけなんだけど、何かいい考えはないかな?」


 カッパは道具作りの名人で、話を聞くなり、こう言った。


「ふふん、なら任せてよ。私の道具で、凍ったカエルを生き返してみせるから」

「ああ、うん……。まあ、それでもいいや……」



 カエルの神さまは、カッパの自信満々な態度が、ちょっとだけ不安じゃったが、とりあえず任せてみることにした。

 その様子を見ていたテングは、ふむふむ、と、何かを考えたあと、こう言った。


「それじゃあ、私は大ガマが心配しないよう、この事を新聞でお伝えしましょう」

「お願いするね」


 これでしばらく、大ガマが神社に来ることはないだろうと、神さまはまた昼寝に興じることにした。

 カッパは意気揚々として、家に帰り、早速、道具つくりを始めたそうな。

 そしてテングは次の日、『カッパが妖精退治を引き受けた』と言う内容の新聞を、山や野にばら撒いた。

 何を思ったか、テングは妖精にも、その新聞を手渡した。


「カッパがあたいの邪魔をするって?」

「ええ、それはもう、ぎったんぎたんにしてやる! って、息巻いてましたよ」


 それを聞いた妖精は、顔を真っ赤にして、ぷんぷんと怒った。


「最強のあたいに挑むなんていい度胸ね! 返り討ちにしてやるわ!」

「そうですか。じゃあ、カッパの家まで案内しましょう」

「え? あ、ありがとう」


 テングはしれっと言ってのけた。

 どうしてこのテングは、自分の手伝いをするのか、妖精は少し不思議に思ったが、カッパの家がわかるんだから、と、ついていかないわけにはいかなかった。


「やい、カッパ! あたいを退治するだなんて、いい度胸じゃないの!」

「ひゅい!?」


 妖精はカッパの家の扉を、いきおいよく開けて言った。

 カッパは少し驚いたが、相手が妖精だとわかると、いきおいづいて言い返す。


「ええい、よくも私を驚かせてくれたね! お前が件の妖精だな?」

「そーよ、こっちから出向いてやったわ!」

「このっ……生意気な妖精め! ぎったんぎたんにしてやる!」


 うでっぷしには自信が無かったが、妖精なんかに負けるはずはない、と、カッパは思っておった。

 二人は家を飛び出し、近くの川原で、にらみあった。

 カッパは怪しげな術を使い、えいや、と、川の水をぶつけたが、妖精はその水を片端から凍らせてしまった。


「ふふん、最強のあたいにそんなもの、通じるわけないじゃない」

「ええい、妖精のくせに……! 次は本気でいくからな!」


 カッパは、えいと、気合を入れて、川の水を操り、津波のようにして妖精にぶつけた。

 それでも、妖精に近づいた水は、まるで止まるようにして全部凍ってしまうのじゃった。


「ふふん、いくらやったって無駄よ。あたいの氷は最強なんだから」

「なんてこった……。妖精なんかに止められるなんて……」


 さすがのカッパもこれには驚いた。

 口をあんぐりと開けて、驚くカッパに、空から見ていたのだろう、テングが近づきこう言った。


「いいえ、これでいいのよ、続けなさい」

「あっ! あんただね! 彼奴に私ん家を教えたのは……!」

「いいから、いいから」


 テングにせかされ、カッパは水をぶつけ続けた。

 しかし、いくらやっても、妖精はぴくりとも動かない。

 しだいにカッパも疲れ果てて、その場に座り込んでしまった。


「あー、もうだめ……」


 カッパがへばる頃には、妖精の周りに、山みたいな氷のたまが出来上がっておった。


「へへん、やっぱりあたいってば最強ね」


 妖精はふんぞりかえって言う。


「さあ、今度はあたいの番よ! ……ってあれ?」


 妖精は、はっと気が付いた。

 どうしたことか、分厚い氷に囲まれて、動きがとれない。


「ねぇ、助けて! 出られないの!」


 妖精は氷のかべを叩くが、頑丈にできた氷には、ひび一つはいらない。

 そのうち、妖精は困り果て、氷の中でわんわんと泣き出してしまった。


「凍らされたカエルの気持ちになって反省するといいよ」


 カッパはそう言い放って、テングと一緒にそこから離れてしまった。

 つまらないよ、おなかがすいたよ、さびしいよ。

 妖精は声をあげて泣いたが、誰も助けてくれない。

 分厚い氷も、ぜんぜんとけてくれず、三日三晩、妖精はそこで泣き続けた。

 そして四日目の朝、テングとカッパ、神さまと大ガマがそろって妖精のもとへとやってきた。


「身に染みましたか?」


 そう、テングがといかけると、妖精はわんわんと泣きながら答えた。


「もう、カエルを凍らせたりしないから、ここから出して!」

「だそうだけど、どうします?」

「んー、それを決めるのは私じゃなくて、こいつかな?」


 大ガマはゲコッと一つ鳴いて答えた。


「良かったね、許すってさ」


 そう言うと、神さまは地中に潜って、妖精の足元まで穴を掘って進んだ。

 妖精はその穴をくぐって、やっとこ外に出る事が出来た。



 それからと言うもの、沼のカエルは凍らされる事もなく、神さまはゆっくりと昼寝ができるようになったそうな。

 めでたしめでたし。
「あーあ、せっかくカエル解凍器をつくったのになぁ……。」

「どんな仕組みだったんです?」

「えへん、よくぞ聞いてくれました。これは電子レンジという、外の世界の道具を改造したもので――」

「……嫌な予感しかしないんですが」



昼寝してたら思いついたもので、つい。
千と二五五
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コメント



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1.80名前が無い程度の能力削除
大ガマ様、良かったねw

絵本みたいで読みやすかったですw
3.100名前が無い程度の能力削除
まんが日本昔話的な感覚のほのぼの物語りですね。
えぇ話や~
5.100名前が無い程度の能力削除
市原悦子の声が聞こえる…
10.100名前が無い程度の能力削除
レンジで生き物はやばいだろwww
12.100名前が無い程度の能力削除
サイクロプスシステムですね、わかります。
18.100名前が無い程度の能力削除
実際、アメリカで水で濡れた猫をレンジにいれた奴がいるそうな。   
19.100名前が無い程度の能力削除
童話風でほのぼのするなぁ、と思っていたらあとがきがw
22.90名前が無い程度の能力削除
絵本的で面白かった
23.100名前が無い程度の能力削除
ちょっとまてw電子レンジ・・・だと?
26.100名前が無い程度の能力削除
紙芝居を見ているようで面白いですね。
28.100名前が無い程度の能力削除
猫に電子レンジで高額訴訟ですね、分かりますww
29.100名前が無い程度の能力削除
電子レンジ……。蛙は鶏肉の味がするって聞いたことがあるぜ
35.100名前が無い程度の能力削除
登場人物がそれぞれ綺麗に自分の役割を果たしていましたね。
最強の妖精にビビるにとりが可愛かったwww