むかしむかし、あるところに、何でも凍らせてしまうのが得意な妖精がおったそうな。
妖精はやんちゃで、イタズラ好きで、とある山の、大きな沼に住むカエルを捕まえては、凍らせるのが趣味じゃった。
「またいっぴき捕まえた! 今年のかえるは豊作ね!」
と、言っても、妖精はカエルを食べるわけでもなく、凍ったカエルが可愛い、とか、お手玉にすると面白い、とか……。
沼のあるじである、大ガマには、頭の痛い話じゃった。
この妖精と来たら、何度こらしめても、何度こらしめても、やめようとしないのだから。
あるとき大ガマは、沼のある山の神社に棲む、えらい神さまの噂を聞きつけた。
何でも、この神さまは、カエルの神さまだそうなのだ。
早速大ガマは、大きな体でぴょんぴょんと跳ねて、山の神社に向かった。
――ああ、神さま、神さま、カエルの神さま。あの妖精をなんとかしてください。このままでは仲間が減るばかりでございます!
大ガマはゲロゲロと、大きな声で鳴いて訴えた。
ああ、こりゃあうるさい。
あんまりうるさいものだから、神社で昼寝をしていたカエルの神さまも、たまらず起きた。
「はいはい、わかった、わかった。何とかするから、大声でなくのをやめて」
カエルの神さまは、そう言って、大ガマをなだめると、また昼寝を始めるのじゃった。
次の日も、大ガマの鳴き声が、神社にひびいた。
――ああ、神さま! お願いします、どうかわしらを助けてください!
ああ、これではおちおち昼寝もできぬ。
カエルの神さまは、願いをかなえてやりたいとは思ったが、どうにも、いい知恵が思いつかんかった。
妖精は頭が良くないし、死ぬこともないので、神さまの言葉も聞きやしない。
「ああ、めんどくさい。誰か代わりにやってくれないかな」
困りはてた神さまは、山に棲む、カッパとテングを呼び、相談することにした。
「――と言うわけなんだけど、何かいい考えはないかな?」
カッパは道具作りの名人で、話を聞くなり、こう言った。
「ふふん、なら任せてよ。私の道具で、凍ったカエルを生き返してみせるから」
「ああ、うん……。まあ、それでもいいや……」
カエルの神さまは、カッパの自信満々な態度が、ちょっとだけ不安じゃったが、とりあえず任せてみることにした。
その様子を見ていたテングは、ふむふむ、と、何かを考えたあと、こう言った。
「それじゃあ、私は大ガマが心配しないよう、この事を新聞でお伝えしましょう」
「お願いするね」
これでしばらく、大ガマが神社に来ることはないだろうと、神さまはまた昼寝に興じることにした。
カッパは意気揚々として、家に帰り、早速、道具つくりを始めたそうな。
そしてテングは次の日、『カッパが妖精退治を引き受けた』と言う内容の新聞を、山や野にばら撒いた。
何を思ったか、テングは妖精にも、その新聞を手渡した。
「カッパがあたいの邪魔をするって?」
「ええ、それはもう、ぎったんぎたんにしてやる! って、息巻いてましたよ」
それを聞いた妖精は、顔を真っ赤にして、ぷんぷんと怒った。
「最強のあたいに挑むなんていい度胸ね! 返り討ちにしてやるわ!」
「そうですか。じゃあ、カッパの家まで案内しましょう」
「え? あ、ありがとう」
テングはしれっと言ってのけた。
どうしてこのテングは、自分の手伝いをするのか、妖精は少し不思議に思ったが、カッパの家がわかるんだから、と、ついていかないわけにはいかなかった。
「やい、カッパ! あたいを退治するだなんて、いい度胸じゃないの!」
「ひゅい!?」
妖精はカッパの家の扉を、いきおいよく開けて言った。
カッパは少し驚いたが、相手が妖精だとわかると、いきおいづいて言い返す。
「ええい、よくも私を驚かせてくれたね! お前が件の妖精だな?」
「そーよ、こっちから出向いてやったわ!」
「このっ……生意気な妖精め! ぎったんぎたんにしてやる!」
うでっぷしには自信が無かったが、妖精なんかに負けるはずはない、と、カッパは思っておった。
二人は家を飛び出し、近くの川原で、にらみあった。
カッパは怪しげな術を使い、えいや、と、川の水をぶつけたが、妖精はその水を片端から凍らせてしまった。
「ふふん、最強のあたいにそんなもの、通じるわけないじゃない」
「ええい、妖精のくせに……! 次は本気でいくからな!」
カッパは、えいと、気合を入れて、川の水を操り、津波のようにして妖精にぶつけた。
それでも、妖精に近づいた水は、まるで止まるようにして全部凍ってしまうのじゃった。
「ふふん、いくらやったって無駄よ。あたいの氷は最強なんだから」
「なんてこった……。妖精なんかに止められるなんて……」
さすがのカッパもこれには驚いた。
口をあんぐりと開けて、驚くカッパに、空から見ていたのだろう、テングが近づきこう言った。
「いいえ、これでいいのよ、続けなさい」
「あっ! あんただね! 彼奴に私ん家を教えたのは……!」
「いいから、いいから」
テングにせかされ、カッパは水をぶつけ続けた。
しかし、いくらやっても、妖精はぴくりとも動かない。
しだいにカッパも疲れ果てて、その場に座り込んでしまった。
「あー、もうだめ……」
カッパがへばる頃には、妖精の周りに、山みたいな氷のたまが出来上がっておった。
「へへん、やっぱりあたいってば最強ね」
妖精はふんぞりかえって言う。
「さあ、今度はあたいの番よ! ……ってあれ?」
妖精は、はっと気が付いた。
どうしたことか、分厚い氷に囲まれて、動きがとれない。
「ねぇ、助けて! 出られないの!」
妖精は氷のかべを叩くが、頑丈にできた氷には、ひび一つはいらない。
そのうち、妖精は困り果て、氷の中でわんわんと泣き出してしまった。
「凍らされたカエルの気持ちになって反省するといいよ」
カッパはそう言い放って、テングと一緒にそこから離れてしまった。
つまらないよ、おなかがすいたよ、さびしいよ。
妖精は声をあげて泣いたが、誰も助けてくれない。
分厚い氷も、ぜんぜんとけてくれず、三日三晩、妖精はそこで泣き続けた。
そして四日目の朝、テングとカッパ、神さまと大ガマがそろって妖精のもとへとやってきた。
「身に染みましたか?」
そう、テングがといかけると、妖精はわんわんと泣きながら答えた。
「もう、カエルを凍らせたりしないから、ここから出して!」
「だそうだけど、どうします?」
「んー、それを決めるのは私じゃなくて、こいつかな?」
大ガマはゲコッと一つ鳴いて答えた。
「良かったね、許すってさ」
そう言うと、神さまは地中に潜って、妖精の足元まで穴を掘って進んだ。
妖精はその穴をくぐって、やっとこ外に出る事が出来た。
それからと言うもの、沼のカエルは凍らされる事もなく、神さまはゆっくりと昼寝ができるようになったそうな。
めでたしめでたし。
妖精はやんちゃで、イタズラ好きで、とある山の、大きな沼に住むカエルを捕まえては、凍らせるのが趣味じゃった。
「またいっぴき捕まえた! 今年のかえるは豊作ね!」
と、言っても、妖精はカエルを食べるわけでもなく、凍ったカエルが可愛い、とか、お手玉にすると面白い、とか……。
沼のあるじである、大ガマには、頭の痛い話じゃった。
この妖精と来たら、何度こらしめても、何度こらしめても、やめようとしないのだから。
あるとき大ガマは、沼のある山の神社に棲む、えらい神さまの噂を聞きつけた。
何でも、この神さまは、カエルの神さまだそうなのだ。
早速大ガマは、大きな体でぴょんぴょんと跳ねて、山の神社に向かった。
――ああ、神さま、神さま、カエルの神さま。あの妖精をなんとかしてください。このままでは仲間が減るばかりでございます!
大ガマはゲロゲロと、大きな声で鳴いて訴えた。
ああ、こりゃあうるさい。
あんまりうるさいものだから、神社で昼寝をしていたカエルの神さまも、たまらず起きた。
「はいはい、わかった、わかった。何とかするから、大声でなくのをやめて」
カエルの神さまは、そう言って、大ガマをなだめると、また昼寝を始めるのじゃった。
次の日も、大ガマの鳴き声が、神社にひびいた。
――ああ、神さま! お願いします、どうかわしらを助けてください!
ああ、これではおちおち昼寝もできぬ。
カエルの神さまは、願いをかなえてやりたいとは思ったが、どうにも、いい知恵が思いつかんかった。
妖精は頭が良くないし、死ぬこともないので、神さまの言葉も聞きやしない。
「ああ、めんどくさい。誰か代わりにやってくれないかな」
困りはてた神さまは、山に棲む、カッパとテングを呼び、相談することにした。
「――と言うわけなんだけど、何かいい考えはないかな?」
カッパは道具作りの名人で、話を聞くなり、こう言った。
「ふふん、なら任せてよ。私の道具で、凍ったカエルを生き返してみせるから」
「ああ、うん……。まあ、それでもいいや……」
カエルの神さまは、カッパの自信満々な態度が、ちょっとだけ不安じゃったが、とりあえず任せてみることにした。
その様子を見ていたテングは、ふむふむ、と、何かを考えたあと、こう言った。
「それじゃあ、私は大ガマが心配しないよう、この事を新聞でお伝えしましょう」
「お願いするね」
これでしばらく、大ガマが神社に来ることはないだろうと、神さまはまた昼寝に興じることにした。
カッパは意気揚々として、家に帰り、早速、道具つくりを始めたそうな。
そしてテングは次の日、『カッパが妖精退治を引き受けた』と言う内容の新聞を、山や野にばら撒いた。
何を思ったか、テングは妖精にも、その新聞を手渡した。
「カッパがあたいの邪魔をするって?」
「ええ、それはもう、ぎったんぎたんにしてやる! って、息巻いてましたよ」
それを聞いた妖精は、顔を真っ赤にして、ぷんぷんと怒った。
「最強のあたいに挑むなんていい度胸ね! 返り討ちにしてやるわ!」
「そうですか。じゃあ、カッパの家まで案内しましょう」
「え? あ、ありがとう」
テングはしれっと言ってのけた。
どうしてこのテングは、自分の手伝いをするのか、妖精は少し不思議に思ったが、カッパの家がわかるんだから、と、ついていかないわけにはいかなかった。
「やい、カッパ! あたいを退治するだなんて、いい度胸じゃないの!」
「ひゅい!?」
妖精はカッパの家の扉を、いきおいよく開けて言った。
カッパは少し驚いたが、相手が妖精だとわかると、いきおいづいて言い返す。
「ええい、よくも私を驚かせてくれたね! お前が件の妖精だな?」
「そーよ、こっちから出向いてやったわ!」
「このっ……生意気な妖精め! ぎったんぎたんにしてやる!」
うでっぷしには自信が無かったが、妖精なんかに負けるはずはない、と、カッパは思っておった。
二人は家を飛び出し、近くの川原で、にらみあった。
カッパは怪しげな術を使い、えいや、と、川の水をぶつけたが、妖精はその水を片端から凍らせてしまった。
「ふふん、最強のあたいにそんなもの、通じるわけないじゃない」
「ええい、妖精のくせに……! 次は本気でいくからな!」
カッパは、えいと、気合を入れて、川の水を操り、津波のようにして妖精にぶつけた。
それでも、妖精に近づいた水は、まるで止まるようにして全部凍ってしまうのじゃった。
「ふふん、いくらやったって無駄よ。あたいの氷は最強なんだから」
「なんてこった……。妖精なんかに止められるなんて……」
さすがのカッパもこれには驚いた。
口をあんぐりと開けて、驚くカッパに、空から見ていたのだろう、テングが近づきこう言った。
「いいえ、これでいいのよ、続けなさい」
「あっ! あんただね! 彼奴に私ん家を教えたのは……!」
「いいから、いいから」
テングにせかされ、カッパは水をぶつけ続けた。
しかし、いくらやっても、妖精はぴくりとも動かない。
しだいにカッパも疲れ果てて、その場に座り込んでしまった。
「あー、もうだめ……」
カッパがへばる頃には、妖精の周りに、山みたいな氷のたまが出来上がっておった。
「へへん、やっぱりあたいってば最強ね」
妖精はふんぞりかえって言う。
「さあ、今度はあたいの番よ! ……ってあれ?」
妖精は、はっと気が付いた。
どうしたことか、分厚い氷に囲まれて、動きがとれない。
「ねぇ、助けて! 出られないの!」
妖精は氷のかべを叩くが、頑丈にできた氷には、ひび一つはいらない。
そのうち、妖精は困り果て、氷の中でわんわんと泣き出してしまった。
「凍らされたカエルの気持ちになって反省するといいよ」
カッパはそう言い放って、テングと一緒にそこから離れてしまった。
つまらないよ、おなかがすいたよ、さびしいよ。
妖精は声をあげて泣いたが、誰も助けてくれない。
分厚い氷も、ぜんぜんとけてくれず、三日三晩、妖精はそこで泣き続けた。
そして四日目の朝、テングとカッパ、神さまと大ガマがそろって妖精のもとへとやってきた。
「身に染みましたか?」
そう、テングがといかけると、妖精はわんわんと泣きながら答えた。
「もう、カエルを凍らせたりしないから、ここから出して!」
「だそうだけど、どうします?」
「んー、それを決めるのは私じゃなくて、こいつかな?」
大ガマはゲコッと一つ鳴いて答えた。
「良かったね、許すってさ」
そう言うと、神さまは地中に潜って、妖精の足元まで穴を掘って進んだ。
妖精はその穴をくぐって、やっとこ外に出る事が出来た。
それからと言うもの、沼のカエルは凍らされる事もなく、神さまはゆっくりと昼寝ができるようになったそうな。
めでたしめでたし。
絵本みたいで読みやすかったですw
えぇ話や~
最強の妖精にビビるにとりが可愛かったwww