「れいむううううううう!!」
博麗 霊夢は縁側で、お茶を啜っているところだった。
突然スキマから飛び出してきた涙と鼻水にまみれた幻想郷の賢者の顔面を、霊夢は事もなさげに足の裏で受け止めた。
霊夢に抱きつこうとした紫は両手を伸ばしたままべちゃり、と地面に倒れ込み、そのまま地面を相手にすすり泣いた。
「突然何よ。汚いわね」
「うぅ、霊夢、大変なのよ……」
スキマから上半身だけを出して呪いのビデオさながらの体勢をとった紫は、相変わらずの情けない顔を霊夢に向けてみせた。
倒れ込んだ際に涙で濡れていた顔が砂利にまみれたらしく、涙と一緒にぽろぽろと砂が零れ落ちる。
これは流石に可哀相かしら、と霊夢は急須に残ったお茶をだばだばと紫の顔面にかけてやった。
「一体何がどうしたのよ。あんたの顔のほうがよっぽど大変に見えるけど」
「そんなレベルの問題じゃないのよ……。口じゃ説明できないから早く来て!」
ひととおり紫の顔がきれいになったところで、紫は霊夢の腕を掴んでスキマの中へと引っ張った。
紫ほどの妖怪に力業を使われては霊夢も屈する他なく、仕方なしに湯呑みをお盆に置いて身を委ねる。
すると、そこには見慣れた畳の間が広がっていた。
「あれ、ここって……マヨヒガ? あんたの家じゃない」
「そう! そうなのよ。あれを見て!!」
「あれって……はぁ?」
短い次元旅行を終えたばかりの霊夢が紫に言われた方向を見る。
すると一見何の変哲もない畳の間は、ほんの一部だけ訳の分からないことになっていた。
「あれって、あんたんとこの化け猫よね」
「そうよ。橙なのよおぉ……」
「……何がどうしてああなっちゃったわけ?」
よよよと泣き崩れる紫の背後に見えたのは、万歳をしたままスキマに落下を『繰り返す』橙の姿だった。
というのもそのスキマの出口は入り口のすぐ上にあって、スキマに入ったそばからまたスキマに吸い込まれてしまうのだ。
重力加速度も相まって橙の落下スピードはすさまじいことになり、ついでに顔色もすさまじいことになっている。
万歳している橙の手が自身の尻尾に触れられそうなほどスキマとスキマの間は短いため、傍から見ている側からすれば非常に忙しない。
「橙がね……藍のお気に入りの花瓶を割っちゃったみたいでね、それを隠蔽しようとしてたのよ……
あの娘は藍を傷つけたくないと思ったのかもしれないけど……これって道徳上良くないことでしょう?
だから私、お仕置きの意味で橙をスキマ送りにしようとしたのよ。……でも」
「でも?」
「や、やっぱりまだ幼い橙にそれは可哀相かなって思ってね、スキマじゃなくてどこか遠い場所に送ることにしようかなと思ったの。
でも、でもあんまり遠いと帰ってこれないかもしれないし、藍にも怒られるからと思って、
とりあえずスキマの入り口は作っちゃったから、いったん我が家のどこかに送りなおそうしたら……」
「うっかり無限ループを作ってしまったと」
「そうなのよおおおおおお!!」
またしても冒頭と同じ泣き顔に戻った紫を見て、霊夢はげんなりとしたため息をついた。
「す、すぐに橙を回収できればよかったんだけど、あまりにシュールな光景に笑い転げちゃって、つい……。
そうしたら橙もいつの間にか気を失ってたのよおお!!」
「はぁ、馬鹿馬鹿しいってこういう事を言うのね……。で? これの一体何が問題なのよ?」
「と、とにかく橙を停めてやらなくちゃならないんだけど、このスピードじゃ捕まえるのが難しいのよ。
下手に押したりしたらスキマからはみ出て畳に激突しちゃうかもしれないし、何より捕まえる私のほうだって危ないじゃない」
「確かにこの速さに手を突っ込むのは無謀みたいね……。というか、強引に抱きつく程度じゃ全く止まりそうもないわ」
「そうでしょ、だから私はこの娘を私のスキマ空間に取り込んでやりたいの。
あそこなら私の裁量で物体の速さを変えられるから、橙を止めるのだって造作もないことなのよ」
「それじゃ簡単な話でしょ。今橙が飛び込んでるスキマをそのスキマ空間? につながるやつに変えればいいじゃない」
「ダメよ! 入り口のスキマを別の空間につなげるってことは、出口のスキマが閉じちゃうってことよ。
橙がこんな猛スピードで落下してるっていうのに、もし中途半端なところで出口のスキマが閉じたらどうするのよ。
あの娘の身体が真っ二つになっちゃうでしょ」
「……じゃあ、スキマとスキマの間にまたスキマを作って橙をスキマに取り込む、とか」
「それも考えたわよぉ……。でも橙がスキマにひっきりなしに落下してるから、開いたスキマがタイミング悪く橙と重なったらやっぱりあの娘は真っ二つよ」
「あーもー、意外と融通が利かないのねあんたのスキマって。
弾幕ごっこをやってるときはあんなに嫌らしい存在なのに」
実際知ってみればいろいろと制約のあるスキマを使いこなしているのは、流石に紫の力量と言ったところなのだろう。
今は褒める気など微塵も起こらないが。
「とりあえず増援をお願いしようかしら。私の力じゃどうしようもなさそうだし……紫、誰か呼んできなさいよ」
「そ、それもそうね。でも一体誰を呼べば……」
「ちょっとは自分で考えなさい。こういうときに使えそうな能力を持ってる知り合い、誰かいないの?」
「私としては橙の動きを停めてもらいたいんだけど、そんな自由に何かを停められる奴なんて……あっ!」
何かに気がついた紫が適当に大きなスキマを開くと、そこに洋風の豪華な扉が現れる。
その扉を開けてマヨヒガへやってきたのは、ティーセットを手にした紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜だった。
「おはよう御座いますお嬢様。……まあ、一晩見ない間に随分と老け込まれましたね」
「瀟洒にボケなくてもいから咲夜。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「咲夜! あなただけが頼りだわ!」
倒れこむようにしてばたばたと咲夜に駆け寄った紫が、ひざまづくような体勢で咲夜の両手を取る。
その衝撃で宙を舞ったティーポットが紫の脳天を捉え、紫の顔は緑茶に続き紅茶でまみれ和洋折衷になってしまった。
「……成る程。つまり、私が時間を停めて化け猫を回収してくれば良いのですね」
「その通りよ! お願い、橙を救えるのは貴女しかいないんだから……!」
紫の説明により状況を把握した咲夜は、ブーツのまま畳を踏みしめ橙の元へと歩み寄った。
物体の落下による風圧でおさげを揺らしながらも懐からスペルカードを取り出す。
が、咲夜ははたと何かに気がつき、スペルの宣言をやめてしまった。
「あの、化け猫を捕まえるのはいいんですが」
「どうしたのよ! 早く橙を助けてやって頂戴!」
「これ、回収した後はどこに持って行けばいいんですか?」
「ど、どこにって、私の膝の上にでも……」
「でもこのスピードが膝の上に乗ったりしたら、間違いなく下半身が上半身とサヨウナラになってしまいますわ」
「ええ?」
「……あー、なるほどね」
間抜け面で目をぱちくりさせる紫の隣で、霊夢はぽん、と手を打った。
「つまり咲夜は、橙の位置をずらすことは出来ても速度は変えられないと」
「そういうことになりますね。自分で投げたナイフならその辺りも調節できるのですが、
勝手に落下を始めた物体、ましてやそれが生き物となると……
ついでに言えば、時間を停めている間に横向きの力を加えることになるので、橙が垂直落下を続けるという保証もありません」
確かに飛んでくる物体の速度を自由に操れるのなら、咲夜は間違いなく弾幕ごっこで最強である。
「ど、どうするのよそれじゃあ! あなたに橙は助けられないっていうの!?」
「それはまあ、例えば上空まで橙を連れて行って、地表でスキマを開いて受け止めてやるとか……そういう方法なら取れますけど」
「ダメよダメ! もし橙が明後日の方向に飛び出して、私が受け止め損ねたらどうするのよ!
橙が百パーセント助かる方法じゃないと……でもその案は一応保留にしておきましょう。どうにもならなかったときの最終手段ね」
「それではどうにか橙の目を覚まさせて、その後空中へ連れて行くという方法はどうでしょう。
猫は相当高いところから落ちても大丈夫だと聞きますし。
これなら受け止める者が居なくても、地面さえあれば橙が着地できますよ」
「いやー、いくら大丈夫って言っても流石にこの速さはやばいんじゃないの? まぁ、私は猫じゃないから知らないけどさ」
「うう、せめて猫の意見が聞ければ……あっ!」
またしても何かに気がついた紫がスキマを広げ、今度はその中に自分で手を突っ込む。
紫がスキマから引っ張り出してきたのは、地底の化け猫代表である火焔猫 燐と、なぜか手をつないで一緒にくっついてきた古明地 さとりだった。
「おぉ? 紅白のお姉さん久しぶり! どうして地底なんかにお姉さんがいるの?」
「残念ながらここは地上よ。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「同じ猫である貴女にしか聞けないことなのよ! 私の話を聞いてくれる?」
紫は咲夜の時と同様お燐の手を取り、涙ながらに状況を説明した。
その傍らで耳かきを手にしたままさとりが立ち尽くしている。霊夢はご愁傷様だと思った。
するとさとりも霊夢と目を合わせて深々と頷く。本当に便利といえば便利な能力である。
「ふんふん、つまりこの猫ちゃんがきちんと着地できるかどうかが知りたいと」
「そういう事! どう、橙も貴女も同じ化け猫でしょう、この娘でも無傷で着地できるかしら!?」
「んー、そりゃあもちろん化け猫としての力量も問われるところだけど、普通の妖怪ならちゃんと着地できるんじゃないかなー。
あたいだってこのスピードでも、五百メートルくらいあれば着地できる自信があるね」
「本当!? それじゃ早速橙の意識を取り戻しましょう。咲夜、飛び立つ準備をして!」
「……この娘の心の中、だけど」
「え?」
いつの間にかスキマに近づいたさとりが正座をし、ふっと優しく目を伏せる。
「……何だか妙に明るい場所ね。一面に咲いてるのはタンポポ……それと彼岸花かしら。
遠く向こうに見える川に向けて飛んでるところみたいだわ」
「おっ! それじゃもうすぐあたいの出番だねぇ」
「ちぇええええええんん!!!」
どうやら橙は三途の川に向けて爆進しているところらしい。
これでは意識を取り戻すのは難しそうである。
「まっ、じゃああたいは出番が来るまでもう少し待ってるから。
さとり様ー、耳かきしてくれるって約束でしょ?」
「はいはい。耳が四つもあると大変ね」
「ちぇえええええええん!!!」
いよいよ泣き崩れた紫のそばで、優しい笑みを湛えたさとりの膝枕によるお燐の耳掃除が始まる。
アットホームとバイオレンスの狭間で、霊夢は大きくため息をついた。
「どうするのよ紫。どうも橙に着地させる作戦は失敗みたいよ」
「ということは私、帰ってもいいんですか?」
「ま、待って待って。いざとなったら咲夜の力を借りるから、お願い」
「あっ、私一つ思いついたわよ。
咲夜が時間を停めてる間に橙を抱きしめて、それから時間を動かして自分で飛びつつ速度を落とす、ってのはどう?
これなら橙自身が飛ばなくても橙を止められるじゃない」
「ちょっと待ちなさいよ霊夢、橙に抱きつけだなんて簡単そうに言うけど……
時間を開放した瞬間突然あれだけの速さになったら、手が滑って橙を放しちゃうかもしれないでしょう。
もしそうなったら私と橙が空中で激突して大惨事になっちゃうじゃない」
「うーん、面倒くさいわね……じゃあもう紫が直接スキマに飛び込んで、橙と同じ速さまで加速して抱きしめちゃいなさいよ。
同じ速さになれば橙に触っても大丈夫なんでしょ」
「なかなかいいアイデアだけど霊夢、いくら私でもスキマ空間の中じゃないとこれ程の速さは出せないの。
もっと飛ぶのが得意な種族ならともかく……あっ!」
三度紫が何かに気付き、今度は新しく広げたスキマになにかを叫ぶ。
すると凄まじい風とともに天狗の射命丸 文が現れた。
「大事件と聞いて飛んできました!」
「何も本当に飛んでこなくてもいいのに。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「文! あなたの速さを見込んで頼みたいことがあるわ!!」
紫の目はすでに涙目を通り越して真っ赤になっており、さながらウサギさんのような瞳になっていた。
ちなみにそれに反比例するように橙の顔色は真っ青である。表情のほうは肉眼で確認するのさえ難しい。
「橙を抱いてほしいの!!」
「はぁ? 残念ながら私、そういう趣味は」
「違う、違うのよ! あそこで橙が面白いことになってるでしょ!?
私はあの橙を止めてやりたいの! スキマに飛び込んで橙を捕まえて、速度を落としてやって頂戴!」
「ははぁ、そういうことでしたか。構いませんよ、あの程度の速さでいいなら」
文は事もなさげにそう言い、二度三度と屈伸を繰り返すとおもむろにスキマの中に飛び込んだ。
最初のうちは明らかに速度の差があった二人も、徐々に残像が同じくらいのボケ方になるほど速度が近づいていく。
「いいわ文、その調子よ!」
「でも、なんか様子が変ねぇ」
天狗の速さなら一瞬で橙に追いついても良さそうなものなのに、文の速度は一定の値からなかなか上がらない。
と、今度は徐々に文の速度が落ち始め、ついに文はスキマからふらふらと飛び出し、がっくりとくず折れた。
「うぷっ、よ、酔いました……」
「何やってるのよ!!」
本当に吐いてしまいそうなほど青白い顔をした文が、思わず口の辺りを手で覆う。
霊夢と咲夜はその背中を優しくさすってやった。
「だ、だって、スキマに入った途端、視界一面に私の脚ですよ?
そのくせ周りを流れる景色はずーっと同じものの繰り返しだし、き、気持ち悪くて、もう……」
「どうするのよおおおおお!! このままじゃ橙が天に召されちゃうわ!!」
「さとり様、次はこっちの耳やってー。 右の耳、猫のほう!」
「いくら猫だからって人の家でごろごろしてんじゃないわよあんたはぁああああ!!
同じ猫が苦しんでるのになんとも思わないの!?」
「だ、だって仕方ないじゃないか。私の仕事は死体運びだもん、人が死んだっていちいち落ち込んでられないのさ」
「ぐぬううう!! どこまでも生意気な猫ね! こうなったらあんたから先に死神に、死神に……あっ」
敗者復活四度目の閃きで紫がスキマを開き、ついには自らその中に飛び込む。
紫がずるずると引きずってきたのは、寝ぼけ眼をした死神、小野塚 小町だった。
「んあ、ここはどこだい?」
「もう突っ込むのも面倒くさくなってきたわ。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「小町! 何も言わずに私の指示に従って!!
あそこにスキマとうちの可愛い橙が見えるでしょ、あのスキマとスキマの間の距離を思いっきり広げて頂戴!
出来る限り垂直に、軸がぶれないようにね!!」
「なるほど、考えましたね」
スキマとスキマの間が広がりさえすれば、その間にスキマを作り出して橙をスキマ空間に取り込むことが出来る。
小町は眠そうな顔をしながらも起き上がり、んっ、と一つ伸びをしてみせた。
「あそことあそこの間だね? お安いご用さ。
天井までだと少し高さが物足りないけど、そこまででいいのかな」
「霊夢! 天井をブチ破って!」
「霊符『夢想封印 集』!! ……ってなんで私なのよ」
別段強化もしていない天井は簡単に破壊され、その間からお天道様が顔を覗かせる。
紫は今度こそ勝利を確信し、威勢よく号令を発した。
「さぁ今よ小町、あの空の彼方にスキマを飛ばして!」
「おうともさ、そらっ!」
小町が力を込めた瞬間、忙しなく入退場を繰り返していた橙の姿が遥か彼方に消える。
そしてその彼方から再び橙が落下してきて、元と同じ位置にある入り口のスキマに綺麗に飛び込んで行った。
「や、やったわ、ついに成功よ!」
「良かったわね紫。これで何とかなりそうじゃない」
「これはおめでとうございました。そしておめでとうついでに私は帰らせてもらいますね」
「迷惑をかけたわね咲夜、貴女にもお礼を言うわ。さて……それじゃ最後の仕上げよ」
撤収ムードが漂うマヨヒガの室内で、新たに開くスキマが橙と重ならないよう、長縄跳びに入り込む少年のような瞳をして紫がタイミングを計る。
その場にいる全員が固唾は呑まずに見つめる中、ついに紫が大きくスキマを開き――橙は無限ループを脱出した。
「や、やったわ!! ありがとうみんな!!」
「はいはい、本当に目出度かったわね」
今度こそ霊夢も成功を確信し、なんとはなしに橙が飛び込んだばかりのスキマを覗き込む。
すると、中からずちゃあっ、っと何やら生々しい音が聞こえてきた。
「……何? 今の音。なんか、すごくいやな予感がするんだけど」
「あ、あああああ……」
先ほどまでの喜びはどこへやら、歓喜していたはずの紫は死人のように顔面蒼白になり、膝から崩れ落ちてうつ伏せに畳に倒れてしまった。
「わ、私……橙がひどいことになってるのを見たら、きっとあの娘が取り乱すと思って……」
「あの娘?」
「藍を先にスキマ送りにしてたのを……忘れてたわ……」
「…………。」
猛スピードでスキマ空間に飛び込んだ橙と、先ほど聞こえた生々しい衝突音。
これら二つの符号から導き出される答えは、どう考えても一つしかなかった。
「大変、さとり様! あたい手押し車を持ってくるの忘れちゃったよ」
「あらあら、それはいけないわね。壮絶なことになってるだろうからしっかり準備してきなさい」
「おっと、映姫様が呼んでるみたいだ! すごく強い魂が三途に流れ着いたらしい」
「ちぇええええええんん!! らあああああああんん!!」
幻想の賢者の愚かな叫びが、あたり一面にむなしくこだまする。
葬式の準備でもしてくるかと、霊夢は博麗神社へ向けて飛び立った。
博麗 霊夢は縁側で、お茶を啜っているところだった。
突然スキマから飛び出してきた涙と鼻水にまみれた幻想郷の賢者の顔面を、霊夢は事もなさげに足の裏で受け止めた。
霊夢に抱きつこうとした紫は両手を伸ばしたままべちゃり、と地面に倒れ込み、そのまま地面を相手にすすり泣いた。
「突然何よ。汚いわね」
「うぅ、霊夢、大変なのよ……」
スキマから上半身だけを出して呪いのビデオさながらの体勢をとった紫は、相変わらずの情けない顔を霊夢に向けてみせた。
倒れ込んだ際に涙で濡れていた顔が砂利にまみれたらしく、涙と一緒にぽろぽろと砂が零れ落ちる。
これは流石に可哀相かしら、と霊夢は急須に残ったお茶をだばだばと紫の顔面にかけてやった。
「一体何がどうしたのよ。あんたの顔のほうがよっぽど大変に見えるけど」
「そんなレベルの問題じゃないのよ……。口じゃ説明できないから早く来て!」
ひととおり紫の顔がきれいになったところで、紫は霊夢の腕を掴んでスキマの中へと引っ張った。
紫ほどの妖怪に力業を使われては霊夢も屈する他なく、仕方なしに湯呑みをお盆に置いて身を委ねる。
すると、そこには見慣れた畳の間が広がっていた。
「あれ、ここって……マヨヒガ? あんたの家じゃない」
「そう! そうなのよ。あれを見て!!」
「あれって……はぁ?」
短い次元旅行を終えたばかりの霊夢が紫に言われた方向を見る。
すると一見何の変哲もない畳の間は、ほんの一部だけ訳の分からないことになっていた。
「あれって、あんたんとこの化け猫よね」
「そうよ。橙なのよおぉ……」
「……何がどうしてああなっちゃったわけ?」
よよよと泣き崩れる紫の背後に見えたのは、万歳をしたままスキマに落下を『繰り返す』橙の姿だった。
というのもそのスキマの出口は入り口のすぐ上にあって、スキマに入ったそばからまたスキマに吸い込まれてしまうのだ。
重力加速度も相まって橙の落下スピードはすさまじいことになり、ついでに顔色もすさまじいことになっている。
万歳している橙の手が自身の尻尾に触れられそうなほどスキマとスキマの間は短いため、傍から見ている側からすれば非常に忙しない。
「橙がね……藍のお気に入りの花瓶を割っちゃったみたいでね、それを隠蔽しようとしてたのよ……
あの娘は藍を傷つけたくないと思ったのかもしれないけど……これって道徳上良くないことでしょう?
だから私、お仕置きの意味で橙をスキマ送りにしようとしたのよ。……でも」
「でも?」
「や、やっぱりまだ幼い橙にそれは可哀相かなって思ってね、スキマじゃなくてどこか遠い場所に送ることにしようかなと思ったの。
でも、でもあんまり遠いと帰ってこれないかもしれないし、藍にも怒られるからと思って、
とりあえずスキマの入り口は作っちゃったから、いったん我が家のどこかに送りなおそうしたら……」
「うっかり無限ループを作ってしまったと」
「そうなのよおおおおおお!!」
またしても冒頭と同じ泣き顔に戻った紫を見て、霊夢はげんなりとしたため息をついた。
「す、すぐに橙を回収できればよかったんだけど、あまりにシュールな光景に笑い転げちゃって、つい……。
そうしたら橙もいつの間にか気を失ってたのよおお!!」
「はぁ、馬鹿馬鹿しいってこういう事を言うのね……。で? これの一体何が問題なのよ?」
「と、とにかく橙を停めてやらなくちゃならないんだけど、このスピードじゃ捕まえるのが難しいのよ。
下手に押したりしたらスキマからはみ出て畳に激突しちゃうかもしれないし、何より捕まえる私のほうだって危ないじゃない」
「確かにこの速さに手を突っ込むのは無謀みたいね……。というか、強引に抱きつく程度じゃ全く止まりそうもないわ」
「そうでしょ、だから私はこの娘を私のスキマ空間に取り込んでやりたいの。
あそこなら私の裁量で物体の速さを変えられるから、橙を止めるのだって造作もないことなのよ」
「それじゃ簡単な話でしょ。今橙が飛び込んでるスキマをそのスキマ空間? につながるやつに変えればいいじゃない」
「ダメよ! 入り口のスキマを別の空間につなげるってことは、出口のスキマが閉じちゃうってことよ。
橙がこんな猛スピードで落下してるっていうのに、もし中途半端なところで出口のスキマが閉じたらどうするのよ。
あの娘の身体が真っ二つになっちゃうでしょ」
「……じゃあ、スキマとスキマの間にまたスキマを作って橙をスキマに取り込む、とか」
「それも考えたわよぉ……。でも橙がスキマにひっきりなしに落下してるから、開いたスキマがタイミング悪く橙と重なったらやっぱりあの娘は真っ二つよ」
「あーもー、意外と融通が利かないのねあんたのスキマって。
弾幕ごっこをやってるときはあんなに嫌らしい存在なのに」
実際知ってみればいろいろと制約のあるスキマを使いこなしているのは、流石に紫の力量と言ったところなのだろう。
今は褒める気など微塵も起こらないが。
「とりあえず増援をお願いしようかしら。私の力じゃどうしようもなさそうだし……紫、誰か呼んできなさいよ」
「そ、それもそうね。でも一体誰を呼べば……」
「ちょっとは自分で考えなさい。こういうときに使えそうな能力を持ってる知り合い、誰かいないの?」
「私としては橙の動きを停めてもらいたいんだけど、そんな自由に何かを停められる奴なんて……あっ!」
何かに気がついた紫が適当に大きなスキマを開くと、そこに洋風の豪華な扉が現れる。
その扉を開けてマヨヒガへやってきたのは、ティーセットを手にした紅魔館のメイド長、十六夜 咲夜だった。
「おはよう御座いますお嬢様。……まあ、一晩見ない間に随分と老け込まれましたね」
「瀟洒にボケなくてもいから咲夜。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「咲夜! あなただけが頼りだわ!」
倒れこむようにしてばたばたと咲夜に駆け寄った紫が、ひざまづくような体勢で咲夜の両手を取る。
その衝撃で宙を舞ったティーポットが紫の脳天を捉え、紫の顔は緑茶に続き紅茶でまみれ和洋折衷になってしまった。
「……成る程。つまり、私が時間を停めて化け猫を回収してくれば良いのですね」
「その通りよ! お願い、橙を救えるのは貴女しかいないんだから……!」
紫の説明により状況を把握した咲夜は、ブーツのまま畳を踏みしめ橙の元へと歩み寄った。
物体の落下による風圧でおさげを揺らしながらも懐からスペルカードを取り出す。
が、咲夜ははたと何かに気がつき、スペルの宣言をやめてしまった。
「あの、化け猫を捕まえるのはいいんですが」
「どうしたのよ! 早く橙を助けてやって頂戴!」
「これ、回収した後はどこに持って行けばいいんですか?」
「ど、どこにって、私の膝の上にでも……」
「でもこのスピードが膝の上に乗ったりしたら、間違いなく下半身が上半身とサヨウナラになってしまいますわ」
「ええ?」
「……あー、なるほどね」
間抜け面で目をぱちくりさせる紫の隣で、霊夢はぽん、と手を打った。
「つまり咲夜は、橙の位置をずらすことは出来ても速度は変えられないと」
「そういうことになりますね。自分で投げたナイフならその辺りも調節できるのですが、
勝手に落下を始めた物体、ましてやそれが生き物となると……
ついでに言えば、時間を停めている間に横向きの力を加えることになるので、橙が垂直落下を続けるという保証もありません」
確かに飛んでくる物体の速度を自由に操れるのなら、咲夜は間違いなく弾幕ごっこで最強である。
「ど、どうするのよそれじゃあ! あなたに橙は助けられないっていうの!?」
「それはまあ、例えば上空まで橙を連れて行って、地表でスキマを開いて受け止めてやるとか……そういう方法なら取れますけど」
「ダメよダメ! もし橙が明後日の方向に飛び出して、私が受け止め損ねたらどうするのよ!
橙が百パーセント助かる方法じゃないと……でもその案は一応保留にしておきましょう。どうにもならなかったときの最終手段ね」
「それではどうにか橙の目を覚まさせて、その後空中へ連れて行くという方法はどうでしょう。
猫は相当高いところから落ちても大丈夫だと聞きますし。
これなら受け止める者が居なくても、地面さえあれば橙が着地できますよ」
「いやー、いくら大丈夫って言っても流石にこの速さはやばいんじゃないの? まぁ、私は猫じゃないから知らないけどさ」
「うう、せめて猫の意見が聞ければ……あっ!」
またしても何かに気がついた紫がスキマを広げ、今度はその中に自分で手を突っ込む。
紫がスキマから引っ張り出してきたのは、地底の化け猫代表である火焔猫 燐と、なぜか手をつないで一緒にくっついてきた古明地 さとりだった。
「おぉ? 紅白のお姉さん久しぶり! どうして地底なんかにお姉さんがいるの?」
「残念ながらここは地上よ。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「同じ猫である貴女にしか聞けないことなのよ! 私の話を聞いてくれる?」
紫は咲夜の時と同様お燐の手を取り、涙ながらに状況を説明した。
その傍らで耳かきを手にしたままさとりが立ち尽くしている。霊夢はご愁傷様だと思った。
するとさとりも霊夢と目を合わせて深々と頷く。本当に便利といえば便利な能力である。
「ふんふん、つまりこの猫ちゃんがきちんと着地できるかどうかが知りたいと」
「そういう事! どう、橙も貴女も同じ化け猫でしょう、この娘でも無傷で着地できるかしら!?」
「んー、そりゃあもちろん化け猫としての力量も問われるところだけど、普通の妖怪ならちゃんと着地できるんじゃないかなー。
あたいだってこのスピードでも、五百メートルくらいあれば着地できる自信があるね」
「本当!? それじゃ早速橙の意識を取り戻しましょう。咲夜、飛び立つ準備をして!」
「……この娘の心の中、だけど」
「え?」
いつの間にかスキマに近づいたさとりが正座をし、ふっと優しく目を伏せる。
「……何だか妙に明るい場所ね。一面に咲いてるのはタンポポ……それと彼岸花かしら。
遠く向こうに見える川に向けて飛んでるところみたいだわ」
「おっ! それじゃもうすぐあたいの出番だねぇ」
「ちぇええええええんん!!!」
どうやら橙は三途の川に向けて爆進しているところらしい。
これでは意識を取り戻すのは難しそうである。
「まっ、じゃああたいは出番が来るまでもう少し待ってるから。
さとり様ー、耳かきしてくれるって約束でしょ?」
「はいはい。耳が四つもあると大変ね」
「ちぇえええええええん!!!」
いよいよ泣き崩れた紫のそばで、優しい笑みを湛えたさとりの膝枕によるお燐の耳掃除が始まる。
アットホームとバイオレンスの狭間で、霊夢は大きくため息をついた。
「どうするのよ紫。どうも橙に着地させる作戦は失敗みたいよ」
「ということは私、帰ってもいいんですか?」
「ま、待って待って。いざとなったら咲夜の力を借りるから、お願い」
「あっ、私一つ思いついたわよ。
咲夜が時間を停めてる間に橙を抱きしめて、それから時間を動かして自分で飛びつつ速度を落とす、ってのはどう?
これなら橙自身が飛ばなくても橙を止められるじゃない」
「ちょっと待ちなさいよ霊夢、橙に抱きつけだなんて簡単そうに言うけど……
時間を開放した瞬間突然あれだけの速さになったら、手が滑って橙を放しちゃうかもしれないでしょう。
もしそうなったら私と橙が空中で激突して大惨事になっちゃうじゃない」
「うーん、面倒くさいわね……じゃあもう紫が直接スキマに飛び込んで、橙と同じ速さまで加速して抱きしめちゃいなさいよ。
同じ速さになれば橙に触っても大丈夫なんでしょ」
「なかなかいいアイデアだけど霊夢、いくら私でもスキマ空間の中じゃないとこれ程の速さは出せないの。
もっと飛ぶのが得意な種族ならともかく……あっ!」
三度紫が何かに気付き、今度は新しく広げたスキマになにかを叫ぶ。
すると凄まじい風とともに天狗の射命丸 文が現れた。
「大事件と聞いて飛んできました!」
「何も本当に飛んでこなくてもいいのに。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「文! あなたの速さを見込んで頼みたいことがあるわ!!」
紫の目はすでに涙目を通り越して真っ赤になっており、さながらウサギさんのような瞳になっていた。
ちなみにそれに反比例するように橙の顔色は真っ青である。表情のほうは肉眼で確認するのさえ難しい。
「橙を抱いてほしいの!!」
「はぁ? 残念ながら私、そういう趣味は」
「違う、違うのよ! あそこで橙が面白いことになってるでしょ!?
私はあの橙を止めてやりたいの! スキマに飛び込んで橙を捕まえて、速度を落としてやって頂戴!」
「ははぁ、そういうことでしたか。構いませんよ、あの程度の速さでいいなら」
文は事もなさげにそう言い、二度三度と屈伸を繰り返すとおもむろにスキマの中に飛び込んだ。
最初のうちは明らかに速度の差があった二人も、徐々に残像が同じくらいのボケ方になるほど速度が近づいていく。
「いいわ文、その調子よ!」
「でも、なんか様子が変ねぇ」
天狗の速さなら一瞬で橙に追いついても良さそうなものなのに、文の速度は一定の値からなかなか上がらない。
と、今度は徐々に文の速度が落ち始め、ついに文はスキマからふらふらと飛び出し、がっくりとくず折れた。
「うぷっ、よ、酔いました……」
「何やってるのよ!!」
本当に吐いてしまいそうなほど青白い顔をした文が、思わず口の辺りを手で覆う。
霊夢と咲夜はその背中を優しくさすってやった。
「だ、だって、スキマに入った途端、視界一面に私の脚ですよ?
そのくせ周りを流れる景色はずーっと同じものの繰り返しだし、き、気持ち悪くて、もう……」
「どうするのよおおおおお!! このままじゃ橙が天に召されちゃうわ!!」
「さとり様、次はこっちの耳やってー。 右の耳、猫のほう!」
「いくら猫だからって人の家でごろごろしてんじゃないわよあんたはぁああああ!!
同じ猫が苦しんでるのになんとも思わないの!?」
「だ、だって仕方ないじゃないか。私の仕事は死体運びだもん、人が死んだっていちいち落ち込んでられないのさ」
「ぐぬううう!! どこまでも生意気な猫ね! こうなったらあんたから先に死神に、死神に……あっ」
敗者復活四度目の閃きで紫がスキマを開き、ついには自らその中に飛び込む。
紫がずるずると引きずってきたのは、寝ぼけ眼をした死神、小野塚 小町だった。
「んあ、ここはどこだい?」
「もう突っ込むのも面倒くさくなってきたわ。ちょっとこの馬鹿の相談に乗ってやって」
「小町! 何も言わずに私の指示に従って!!
あそこにスキマとうちの可愛い橙が見えるでしょ、あのスキマとスキマの間の距離を思いっきり広げて頂戴!
出来る限り垂直に、軸がぶれないようにね!!」
「なるほど、考えましたね」
スキマとスキマの間が広がりさえすれば、その間にスキマを作り出して橙をスキマ空間に取り込むことが出来る。
小町は眠そうな顔をしながらも起き上がり、んっ、と一つ伸びをしてみせた。
「あそことあそこの間だね? お安いご用さ。
天井までだと少し高さが物足りないけど、そこまででいいのかな」
「霊夢! 天井をブチ破って!」
「霊符『夢想封印 集』!! ……ってなんで私なのよ」
別段強化もしていない天井は簡単に破壊され、その間からお天道様が顔を覗かせる。
紫は今度こそ勝利を確信し、威勢よく号令を発した。
「さぁ今よ小町、あの空の彼方にスキマを飛ばして!」
「おうともさ、そらっ!」
小町が力を込めた瞬間、忙しなく入退場を繰り返していた橙の姿が遥か彼方に消える。
そしてその彼方から再び橙が落下してきて、元と同じ位置にある入り口のスキマに綺麗に飛び込んで行った。
「や、やったわ、ついに成功よ!」
「良かったわね紫。これで何とかなりそうじゃない」
「これはおめでとうございました。そしておめでとうついでに私は帰らせてもらいますね」
「迷惑をかけたわね咲夜、貴女にもお礼を言うわ。さて……それじゃ最後の仕上げよ」
撤収ムードが漂うマヨヒガの室内で、新たに開くスキマが橙と重ならないよう、長縄跳びに入り込む少年のような瞳をして紫がタイミングを計る。
その場にいる全員が固唾は呑まずに見つめる中、ついに紫が大きくスキマを開き――橙は無限ループを脱出した。
「や、やったわ!! ありがとうみんな!!」
「はいはい、本当に目出度かったわね」
今度こそ霊夢も成功を確信し、なんとはなしに橙が飛び込んだばかりのスキマを覗き込む。
すると、中からずちゃあっ、っと何やら生々しい音が聞こえてきた。
「……何? 今の音。なんか、すごくいやな予感がするんだけど」
「あ、あああああ……」
先ほどまでの喜びはどこへやら、歓喜していたはずの紫は死人のように顔面蒼白になり、膝から崩れ落ちてうつ伏せに畳に倒れてしまった。
「わ、私……橙がひどいことになってるのを見たら、きっとあの娘が取り乱すと思って……」
「あの娘?」
「藍を先にスキマ送りにしてたのを……忘れてたわ……」
「…………。」
猛スピードでスキマ空間に飛び込んだ橙と、先ほど聞こえた生々しい衝突音。
これら二つの符号から導き出される答えは、どう考えても一つしかなかった。
「大変、さとり様! あたい手押し車を持ってくるの忘れちゃったよ」
「あらあら、それはいけないわね。壮絶なことになってるだろうからしっかり準備してきなさい」
「おっと、映姫様が呼んでるみたいだ! すごく強い魂が三途に流れ着いたらしい」
「ちぇええええええんん!! らあああああああんん!!」
幻想の賢者の愚かな叫びが、あたり一面にむなしくこだまする。
葬式の準備でもしてくるかと、霊夢は博麗神社へ向けて飛び立った。
ゲテモノを食べさせられた慧音はご愁傷さま。
後は、物語の締めかたを若干ミスっている気がしたよ。
……あれ?あの童話ってコメディだっけ?
能力のインフレが甚だしい幻想郷において、中々良く考えられた解決法だと思いました。
小町が出てきたときに「なるほど」と。
そこら中の地雷をすり抜けた最後に安堵して息をついた瞬間にやられた。そんな感じ。リアルに。
ってけーねが言ってたwww
いいドタバタコメディでした。
これでいいじゃん
…水を無限ループさせれば永久機関できるんじゃね!!
いろんな人を巻き込んだドリフ的なドタバタ劇が面白かったです。
でも一番の被害者はスキマに入れられてあげく超高速で降ってくる青ざめた橙が当たった藍しゃまだよね……。
藍「急に橙が来たから。」