Coolier - 新生・東方創想話

手のかかる子ほど

2009/09/20 16:46:44
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「ふむ。異常なし、と」

 この頃結界が緩んでいたと聞いたが、大したことはないようだ。

 態々紫様が出張った後なのだから当然か。

 これで大体見終えたか……まだ陽が高いな。

 里でお茶でもしてから帰ろうかな。

「お? 珍しいのが居るな」

「おや魔理沙」

 箒に乗ってレトロスタイルの魔女が現れる。

「尻尾を何本かくれないか? もふもふが恋しい季節だぜ」

「断固として断る」

 まったく。成長しない奴だ。少しは考えてから口に出せ。

 けちんぼ、じゃない。尻尾は取り外せるようなものじゃないんだ。

「それにしてもおまえの尻尾はいい感じだよなぁ。やっぱくれないか、藍」

「絶対やらん。欲しければ魔法で自分に生やせばいいだろう」

「それもいいな」

 分厚い手帳になにか書き込み始めた。

 ……魔法使いという輩は本当に理解出来ん。

「基本野晒しだからこれからは寒いけどね」

「げ」

 こんな基本的なことにも気付かないのだから。

 ぶつくさ文句言いながらも最後まで書き切って手帳をしまう。

 そんなに尻尾が欲しいものだろうか? 尻尾のない奴の考えはわからないな。

 バランスを取ったり子供をあやすのには便利だが不便な時の方が多いのに。

「霊夢は?」

「私が来た時にはもう居なかったよ」

 言って幽かに漂う半獣の匂いに鼻を向ける。

「……里の守人の匂いが残ってるから、里に用事でも済ませに行ったんじゃないかな」

「入れ違いか。お茶でもたかろうと思ったのに」

 つくづく自分勝手だ。まぁ、ここまで一貫していればいっそ気持ちがいいがね。

「で。おまえは何してるんだ?」

「結界の様子を見て回ってるんだよ。紫様はお出かけになられてるからね」

「こき使ってるなぁ。流石大年寄りの大妖怪だ」

「人間から見れば大概の妖怪は年寄りだろうに、酷い云い様だ」

 主のことが悪し様に語られるが、ま、事実だ。軽く窘める程度で済ます。

 そも本人がそう思われるように振舞っているのだからむきになって否定する方が間違いだ。

「事実だろ? 九尾の狐なんてのを使うのは歳経た妖怪じゃなきゃ無理だ」

 だが、魔理沙の語りは的を外している。

 得意げに語るのが滑稽だ。

「妖怪ってのは歳食えば食うほど強くなるんだろ」

 まぁ、年若い人間は知らなくとも無理はない。

「いや紫様は私よりずっと年下だよ」

「え?」

 驚きの顔が愉快である。ころころ変わる表情は見ていて飽きない。

「千……いや二千歳は下かな。私から見れば小娘さ」

「こむ、いやおまえ何歳だよ……」

「さてな、数えるのをやめて久しいからね……三千歳くらいかな」

 少女の顔が引き攣る。

 思わず喉を鳴らして笑い出してしまいそうで、堪えるのが大変だ。

「なんだ? 私がそんな年寄りで驚いたかな?」

「いやそりゃおまえ、まぁうん……九尾の狐だもんな」

「納得がいかないようだね」

 意地の悪い笑みを浮かべる。人間をからかうのは面白い。

 美女の形に作ってある顔にそぐわぬ悪い笑みが貼り付いてしまう。

 三千年以上生きてきたがこの悪癖は直せそうになかった。

「初めて会った頃は……そうだなぁ、その辺の妖精みたいなお子様だったよ。紫様は」

「お子様!? あの紫が!?」

「失礼な奴だな。紫様にも子供だった頃くらいあるさ」

「……つまりおまえはそのお子様に負けて手下になったのか?」

「負けたというか――弱みに付け込まれたというか」

 薄ら笑いを浮かべたまま過去を語る。

「当時私は人間の軍団に退治されかけていてね。瀕死だったんだ」

 笑って語れるようになっていたのは……小さな驚きだった。

 屈辱の記憶であった筈なのに、な。

「いやはやもうボロ負けだった。敵がまたしつこくてね。一度負かしたのにすぐに建て直して来て。

流石に私も疲れて妖力の殆どを使い切り首と脇腹に矢を射らればっさり袈裟がけに斬られて」

 思い出したくもない過去だった筈なのに――ね。

「瀕死の大敗さ」

「……何したんだそこまでやられるって」

「国をお遊びで潰しちゃおうかな、と」

「やられて当然だぜ」

 呆れ顔にくすりと笑みがこぼれる。

 昔はそんな妖怪ばかりだったんだよ、魔理沙。

「ま、そんな死体同然の私を拾ってくださったのが紫様さ。それから仕えるようになった」

 今でも鮮明に思い出せる。

 血に霞む視界の先にあった少女の姿。

 棺桶に片足を入れた私に差し伸ばされたあの小さな手を。

「それから式神生活か。人に歴史ありってことだな……人じゃないけど」

 ふむふむと頷く少女に苦笑する。どこまで理解してるのやら。

「大悪党が超大悪党に救われるか。上手く出来てるもんだな世界ってのは」

「救われる? ……また大仰な言い方だ」

「命を救われたんだろ? 間違っちゃいないぜ」

「そんなドラマチックなもんじゃなかったよ」

「またまた。照れ隠しか?」

「苦労の始まりだったからね。美化もできやしないのさ」

「ああ……やっぱり苦労してんだ……」

 そりゃするさ。おまえ曰く超大悪党なんだから。

「いや苦労したよ。それまでは人間に命令してなんでもやらしてたのに家事をやらされるんだもの」

 くつくつと笑いを零しながら当時を振り返る。

 まぁ苦労したのは私だけじゃなかったろうけれど。

「よくそんな生活してたのが仕える側に回れたもんだ」

「当然反発はあったさ。紫様と戦ったのも一度や二度じゃない」

「大妖怪同士のケンカとはまた。一度観てみたいもんだ」

「観て楽しいもんじゃないよ」

 妖術体術を駆使した激戦を想像してるだろう魔理沙の期待には欠片も添えない。

 極々平凡な取っ組み合いだったのだから。

 真実ってのはえてして安っぽいものさ。教えないけどね。

「ふぅむ……続きを聞いてみたいところだが、こんなところで立ち話してると風邪引きそうだぜ」

 見れば魔理沙の服装は薄手だった。秋口には相応しいが、そろそろ寒さが勝るか。

 そんな服装で飛ぶ方が寒くなると思うんだがね?

「んじゃまたな藍。いずれ昔話を聞かせてくれ」

 手を振って応じる。

 唐突にやってきた魔法使いは矢張り唐突に去って行く。

 遠ざかる影を見ながら、呟く。

「――語るようなことは殆ど無いさ」

 なんでもない日常ばかり。まだ私の過去の方が語り甲斐があろうというものだ。

 八雲藍となる前。様々な名で呼ばれ暴れ回った日々。

 人間に敗れ、紫様に終止符を打たれた過去の私。

 それに比べれば私と紫様の共に過ごした千年など、塵芥も同然の密度だ。

 しかし、久しぶりに口にして……郷愁に襲われているのも事実。

 他愛ない過去。語るほどでもない記憶。

 されど忘れ得ぬ日々。

 ――……たまには、追憶に耽るのも悪くない。































 もう痛みも感じなければ鼻も利かない。

 ただ体が重く、己の出す死の臭いに満ちた鼻がもげそうだ。

 今己が何処に居るのかもわからない。

 深い森の中、追手は撒いたようだがこのままではいずれ死ぬ。

 変化も解けかけ、宮廷一と謳われた黒髪も地の色が出てしまっていた。

 しかしその金色は、己の流した血で染められて赤錆びている。

 かつては豪奢だった着物もずたずたの襤褸と成り果て生きながらに亡者の様相。

 なんとも、まぁ……三国を震え上がらせた者の末路とは思えぬ惨めさだ。

 適当に国を崩して去ろうと思っていたのに――おのれ、陰陽師に侍め。

 あれほどの使い手だ。最後に毒を撒いたが効いてはいまい。

 かり、と土を掻く音。

 気づけば、倒れていた。倒れたという自覚もなければ、土の感触もない。

 いよいよ駄目か。

 死ぬ時は、どうせならもっと派手に死のうと思っていたのだが――

「あれほどの大軍に独りで挑むなど、傍目に見れば愚かの極み。

退くことを知らぬ猪武者か、それとも退くこと許さぬ誇り高き獣か」

 頭上から声。

 矢が刺さったままの首を捻り見上げれば、森の中に似つかわしくない少女の姿。

「私としては後者であれば喜ばしい」

 歳の頃は十を数えるか否か。

 明らかにこの国のものではない金糸の髪。

 夜闇の中にあってなお昏い紫色の瞳。

 雲の如く透ける白い肌。

 ――大陸で見た西方の異人のようだ。

「はじめまして金毛白面九尾の狐」

「誰だ――いや――……なんだ、貴様」

「私は八雲紫。妖怪です」

 ゆかり……紫? 貴人だとでも嘯くか小娘。

 少女は、否、少女の形をした妖怪はにこりと微笑む。

 実に胡散臭い笑い方だった。最早全身の感覚もないというに総毛立つ。

 死を覚悟した上で……なお恐ろしいと、感じた。

 恐ろしい? この金毛白面九尾が? 今際の際に何の冗談だ。

 見れば妖力も大したことはない。並以上ではあるが小娘の外見を裏切るとまでは云えぬ程度。

 全力の私なら片手間にくびり殺せるほどに弱そうに見える。

「あなたを私の僕にしようと参上しました」

 故にその言葉が理解できない。

 身の程知らずにも限度というものがある。

「僕……式神にすると? はっ、やめておけ小娘。扱いきれぬわ。

その程度の妖力ではこの九尾は養えん。下手に縛れば逆に取って食らうぞ」

 死に瀕しているからか私らしくもない情けをかける。

 我ながら優しいことだ。問答無用で食われても文句は言えぬ相手に大言を吐く小娘に。

「ですが私はあなたを僕にしたいのです。この八雲紫の僕に半端な妖怪など相応しくない」

 会話、する気がないのかこの小娘は。

 嗤ってやろうとしたが喉から出るのは血の塊。

 そろそろ喋ることも出来なくなりそうだった。

 ああ、死に掛けているから、こんな小娘さえも恐ろしく思ったのか。

「私ならあなたの命を救えます。如何でしょう?」

 貴様程度に助けられるとも思えんが、随分な取引だ。

 此方の命を秤に乗せるなど、普通なら断れもしない。

「あなたの死体を使ってもよいのですが、それは少々気分が悪いので。

できれば生きたまま私のものにしたいのですが……駄目ですか?」

 甘える少女の猫なで声。

 状況がわかってないとしか思えない場違いな優しい笑み。

 ああ、なにもかもが胡散臭い。

 だが……どうせ終わる命、だ。

 最期まで、遊んでみるのも、悪く――ない。

「は――死に損ないの命、拾うも捨てるも好きにするがいい」

 血に染まった紅い視界の中で



   少女が


     笑う



「契約は成立です。あなたに名を与え存在を縛りましょう」



 意識が途切れる寸前



「あなたの命、八雲紫が貰い受けます」



 冷え切った体に、なにか――



 あたたかい物が、触れた気がした













 鈍痛に目を覚ます。

 痛い、ということはまだ死んではいないか。

 我ながらしぶといものだと思う。はて、どうして生きているのやら。

 そういえば気を失う前に、誰かに……

 腕が上がらない。何やら重しが、いやこれは布団か?

 布団に寝かされている?

 どこの物好きが変化も解けかけ獣の相を見せる女を助けるというのか。

 吐息に目を向ける。

 傍らで船を漕いでいるのはあの少女。

 ……本当に私を助けたか。となればここはこの娘の屋敷か。

「――――む」

 手当てされている。多少拙さが目立つがちゃんとした治療の跡。

 大言を吐いておいてどんな秘術を使うかと思えば存外に堅実な。

 さて、どれ程眠っていたのか。妖力は回復しているが……

「…………」

 ふむ……? ただの手当てではなかったやもしれぬ。

 如何に私とてあれから回復するには徳の高い高僧百人は食わねばならなかった。

 これは、百人には及ばぬが……十人は食ったかのような回復。

 痛みを無視すれば動くには支障ない。

「あら……ようやく起きた?」

 身を起こす。それだけで痛みが走るが即座に倒れる程ではない。

「八雲……紫とかいったか。褒めてつかわす」

「なによその上から目線。ずっと看病してあげたのに」

 生意気よ、と怒られる。

 だが、そんな些末事より少女の変わり様の方に驚く。

 慇懃無礼に胡散臭い空気が感じられない。喋り方まで違う。

 これでは見かけ相応の子供ではないか。

「なに黙ってるのよ。生意気よ、藍」

「そうは言うがな、おま――……今なんと言った?」

 極自然に、当たり前のように返事をしてしまった。

 なに? 藍? それが何故『私の名だと認識してしまっている』のだ?

 音として聞いただけでどのような字を書くかまでわかってしまう。

 生来の名の如く馴染んでしまっている。

「藍。あなたの名前だと言わなくても理解してしまっているでしょう?」

 にたりと、胡散臭い笑み。あの夜、森の中で見た笑い方。

 得体の知れない、妖怪の笑い方。

「貴様、私に何をした」

「概ね察しているんじゃないかしら? 多分それで正解」

 こいつ――私が気を失っている間に式を憑けて式神にしたな……!?

 名を奪い名を与え『金毛白面九尾の狐』を『八雲紫の式神』に縛り付けたな……っ。

 確かに私は好きにしろと言った。少女は僕にすると言った。

 しかし誰がそんなことを出来ると思う。陰陽寮の腕こきを百人揃えようと不可能だ。

 この金毛白面九尾、使う妖力はそこらの妖怪と比べ物にならぬ。

 更に私は死にかけていた。傷を癒すために契約した瞬間霊力妖力を根こそぎ食らう。

 如何なる術者であろうが即死は免れぬ筈なのに――何故、この小娘は生きている?

「まったく。あなた大食らいで疲れてしょうがないったら」

 つい、と紫色の瞳が私に向けられる。

「何故生きている、って顔ね。答えは単純明快。私が八雲紫だから」

 答えになっていない。あの時感じた妖力で賄い切れるものではないのに。

 なのに、何故……私は納得してしまっている。

 頭ではその通りと頷き本能は警鐘を鳴らしている。

 明らかな矛盾。私の思考が私のものではなくなっている違和感。

 目の前の小娘に支配され、式神になっている、ということ。

 八雲紫に全てを奪われたということ。

「……得体の知れない小娘だ」

「失礼な物言いね、藍」

 何の変哲もない部屋が化物の胃袋の中に見えてくる。

 私は捕われ――もう逃げることすら叶わない。

 ふぅ、と息を吐く。

 今更なんと言おうが事実は覆らぬ。私は負けて支配された。

 大妖怪と謳われ続けてきた日々は終わり。下僕として生きるしかない。

「まぁ、いい。約束だ。私はもう貴様のものだよ」

「あら素直ね。もっと抵抗されると思ったのに」

「逆らうだけ見苦しい。契約の果てがこれなら受け入れるさ」

「私としては恩を感じてもらえたらよかったのだけど」

 恩とは。妖怪に言うことではないし、妖怪が言うことでもないな。

 そんな義理堅いのは鬼だけで十分だ。

「狐は情に厚いと聞いたのだけど」

「信太の狐と一緒にしてもらっては困るな。私は大陸の生まれだ」

「む。もしかして私あしらわれてるのかしら」

 流石気付くのが早い。

 落ちついて話せば見かけ通りの小娘だ。口八丁手八丁で私に敵うわけがない。

 術を使われてしまえばどうしようもなくなるが、そうでなければどうとでもなる。

「それで? 私は何をすればいいのだ主よ」

 からかいついでに問うと、肩を掴まれ無理矢理寝かされた。

「まずは傷を癒しなさい。下手に無理させてまた倒れられても困るわ」

 ――道理ではある。あるのだが……胸にすとんと落ちない感覚。

 そう、何故この小娘はこんな手間のかかることをしているのだ。

 術で強制的に治せばいいだけの話だし……こうして己で看病せずとも側女にやらせればいい。

 見回せばそれなりに広い部屋。

 一部屋見ただけでは全体を予測することはできないが、それなりに立派な屋敷だろう。

 それにこの少女の身なりも上等なものだ。

 見慣れぬ着物だが相当に値が張るだろうことくらいはわかる。

 側女の一人や二人は居てもよさそうなものだが……

「何を心配そうな顔をしてるのよ藍。ちゃんと私が看病してあげるわ」

「いや、なにもおまえがやらんでもいいだろう。側女にでも世話を」

「そんなの居ないわ」

 強い否定。

「いいからあなたは傷を癒すのに専念なさい。ほらお粥あるから」

 どこから出したのか不思議と冷めてない粥を口に突っ込まれる。

 ふむ……わからないことだらけだが、時間はたっぷりとあるようではある。

 少しずつ見聞きしていけばよいか……

 とりあえずは、少女のやりたいようにやらせるとしよう。

 粥は意外と美味かったことであるし。

 そうして数日が過ぎる。

 立って歩けるようになった頃、少女は看病も飽きたと言い出した。

 もう看病が必要というほどでもないので支障はないのだが、やはり何か引っ掛かる。

 その違和感がなんなのかわからぬまま私は少女に連れられ屋敷を案内されていた。

 一部屋見ただけでは気付かなかったが――実に奇妙な屋敷だ。

 くるりと見回すだけで見知った建材と見知らぬ建材が混在している。

 鉄で装飾された扉や、いやに滑らかな石の壁などが当たり前のようにそこらにある。

「見たこともない建築様式だな……都の外ではこんなのが流行ってるのか?」

「いずれ都でも流行るんじゃないかしらね。未来の建築だから」

「……未来?」

 これが今はまだ存在しないものだと? それを引き寄せる力を持っていると言うのか。

 この少女の得体の知れなさならあり得ないとは言い切れない。

「貴様は時を操れるのか? 成程、然様な常軌を逸した能力を持っているのなら」

「いいえ。そんな力は持っていません。ちょっと未来と現在の境界をあやふやにしてみただけ」

「……悪いがさっぱり理解出来ん」

「あら、三国一の大妖怪は頭が悪かったのね」

 言い返したいがまったくもって理解出来ていない。

 何を言おうが恥の上塗りなので黙っておく。

「はいこれ」

 そして連れられて入った部屋にて包丁を渡される。

「なんだこれは」

「見てわかるでしょう」

「だからなんで包丁を寄越す」

 当然の問いに少女はやれやれと肩を竦めた。

「あなたは私の僕なんだから。身の回りの世話くらいしなさいよ」

 ……それもまた当然の言い分ではあるのだが、実に腹が立つ。

 場所は調理場。持たされるのは包丁。

 この私に飯炊きをしろと抜かすか小娘が。

「態々私にやらせんでも他の使用人にでもやらせればいいだろうが」

「他の、なんて居ないわ」

 ――耳を疑う。

「この屋敷には私と藍、あなただけよ」

 かなり大きな屋敷だった。下手をすれば私の住んでいた宮廷よりも大きいかもしれない。

 だが、確かに案内されている間誰にも会わず……なにかの気配すらしなかった。

 それでも信じられない。こんな、年端もいかぬ娘が、独りで?

 誰かが居たという気配すら残ってなかった屋敷。

 私を拾うまで、こいつはずっと独りで暮らしていたのか……?

 この白面九尾とて、幼き人間に化ければ誰かに養わせる。

 本当の意味で孤独であった験しなどなかった。

「…………わかった。向こうで待っていろ」

 ようやく違和感の正体に気付いた。

 八雲紫と名乗るこの小娘は――寂しかったのだ。誰かと係わりたかったのだ。

 恐らくあの時あの森で死にかけていたのが私でなかったとしても、白面九尾の大妖怪でなかったとしても。

 こいつは拾い、縛り付け、看病をしただろう。

 共に生きたいと願い捕まえようとしただろう。

「それじゃ任せるわよ、藍」

 小さな背を見送る。

 ――決して同情などではない。同情出来るほど孤独を知らぬ。

 そも、この私に情など無い。悪辣非道の金毛白面九尾の狐。

 式を憑けられたとて変わりはしない。

「……私はどうしてしまったのかな」

 変わりはしないと思っていたのだが……なんでこんなことをしているのだろうな。

 存外、もう白面九尾ではなく藍となっているのかもしれない。

 自分でも気づかぬうちにあの小娘の寂しがりに感化されているのかもしれない。

 さて、さっさと作るか。

 帝を誑かし宮廷に上がるまでは一応家事もやっていた。

 何年ぶりだか自分でもわからんが簡単なものなら作れるだろう。

 で、作りはしたのだが。

「まず、いやまずいというか、うぇ、なにこれ」

 ……青い顔をするな。

「炭に、泥……? うぇっぷ」

 言うな。っく、ここまで鈍っていたとは……

 …………我ながら不味いなんていう言葉じゃ表せない。

 どろどろなのにじゃりじゃりいう米など見たこともなかった。

「……作り直す」

「うぇぷ……いいわよ」

 悪し様に扱き下ろされると思っていたからその言葉は意外だった。

「まったく、使えないわね藍は。しょうがないから私が料理教えてあげるわ」

 青い顔のまま、少女は笑う。

 楽しそうな笑み。胡散臭さや異質感など感じない、見かけ相応の子供の笑み。

 なんとも――妖怪らしからぬ毒気を抜く笑い方だった。



 ――――気付けば一年が過ぎていた。



 縫物をする手を休める。

 こんなものかと確かめてみれば、我ながらいい仕事だ。

 この一年で家事の腕はすっかり戻っていた。いや、以前よりも上手くなっているかもしれない。

 ま、休む間もなく家事を続けていれば誰でも上達するか。

 兎角あの娘は手がかかるのだからしょうがない。

 この服だって何度破いたのか。

「藍! おなか空いたわっ!」

 お子様のお帰りだ。

「作るから手を洗ってきなさい」

「美味しいのじゃなきゃ嫌よ」

「口の減らん小娘だ。ほれさっさと行け」

 我が事ながら、随分子供の相手が板に付いてきたものだ。

 子を産んだこともなければ育てたこともないというに。

 ……存外、こういうのが性に合っているのかな、私は。

 そして調理を済ませ食卓に付く。

「行儀が悪いぞ紫」

 焼き魚を箸でつつく小娘を叱る。

「これきらい」

 好き嫌いの多い奴だ。

「文句言わず食べろ」

「だって美味しくないんですもの」

「はん。舌が子供なんだ」

「……なんですって」

「あー美味い美味い。岩魚の塩焼きは美味いなぁ」

「聞き捨てならないわ」

「魚の味もわからん子供は可哀想だなぁ」

「ぐ……」

 ふふん。おまえの扱い方はもうわかっているんだよ。

 簡単な挑発で容易に乗る。

 ほらむきになって食べ始めた。

 っくっく、苦いのは駄目か。涙目になりおって。

 ん。次からはワタは抜いて焼いてやるか。

 口には出さない。言えば反発して無理に苦手なものを食おうとするだろうから。

「あとで甘いものを作ってやるよ、紫」

 それでも褒美くらいはくれてやる。

「……いいわよ、別に」

「拗ねるな拗ねるな」

 おまえが甘いものが好きだってこともわかっているんだから。




 そんな密度の薄い日常は続いていく。

 そう、日常――これといって事件もなく、戦もないただ生きるだけの毎日。

 平和そのもので……まるで人間の母子が過ごすような、日常。

 三国を滅ぼさんとした私が、そんな刺激のない毎日を悪くないと思い始めていた。

 変われば、変わるものだな。

 二千年を軽く超えるほどに生きてきた私が、たった数年前のことを懐かしんでいた。

 懐かしむほどに、遠くのものと感じていた。

 それほどに紫と共に過ごす毎日は……充実していたらしい。




 書き物を終え筆を置く。

 ふと外に目をやれば天狗が飛んでいた。

 流石は妖怪の里ということか――そこらじゅうに妖怪がごろごろしている。

 私のような群れない妖怪には見慣れぬ光景だ。

 ここは幻想郷と呼ばれる古より存在する妖怪たちの棲む里。

 しかし、陽が暮れる前から妖怪が飛びまわっているというのもどうか。

 夜に暴れてこそ妖怪だろうに。

 と、陽が暮れるか……風呂の用意をしておかねばな。

 あの小娘は今日も遊びに行っている。どうせ泥だらけで帰ってくるだろうからな。

 どすどすばたばた。

 ほら噂をすればなんとやらだ。

 しかし今日はまた荒れているな?

「ん」

 なにがあったのやらと見に行けば廊下に折れた傘が落ちていた。

「あいつはまた……」

 この間も風見の大妖と喧嘩して傘を壊したばかりだというに。

 奴の部屋まで続く泥の足跡を追い乱暴に扉を開ける。

「紫! また喧嘩したのか!」

 叱りつけてやろうと意気込んだのだが、その姿を見てその気も萎える。

 泥だらけでしゃくりあげる子供を叱るほど鬼にはなれん。

「……負けたわ」

 まったく……そうやって泣くくらいなら喧嘩などせねばよかろうに。

「だから言ってるだろう。おまえは力はあっても経験が全く足りてないんだから」

「うるさいわね! 私は強いのよ!」

「はいはい。まずはその泥だらけの服を着替えなさい。風呂沸かしておくから」

「なによ! あんたが居れば負けなかったわよ! 私の力の半分を置いてったから負けたのよ!」

「喧嘩に式神を持ち出すな。相手の力量を見誤ったおまえの過失だよ」

「……うー……」

 座り込んだまま動こうとしない少女を抱え風呂に向かう。

 風呂を沸かし泥だらけの服を剥いて私も風呂場に入る。

 体を見回すが大した怪我はしてないようだな。

 桶で掬ったお湯をざばりとかけて泥を落とす。

「っつ……一人で入れるわよ」

「おまえが動かなかったんだろうが」

 うむ、擦り傷程度か。後で膏でも塗っておけばよかろう。

「……あと一歩よ。あと一歩だったのよ」

「はいはい」

「ほんとよ! だってあいつ涙目だったもの!」

 どこまで本当だかなぁ。こいつは無駄に自尊心が高いのだから。

「この間は風見の大妖。その前は西行寺の姫。今度は誰だ」

「伊吹め……!」

「ん、伊吹? 伊吹山の総大将とやったのか?」

 また凄い名が出たものだ。

「ありゃ齢二千年を超えるような鬼の大将だぞ? 敵うわけ」

「あと一歩だったもん!」

「わかったわかった。ほら、髪洗ってやるから」

 お湯を頭からかけて黙らせる。

「っぷ……藍! あなた私の式神なんだから主の言うことくらい信じなさいよ!」

「喧嘩を少しでも控えてくれれば信じてやるさ」

 毎度毎度服を繕う身にもなれというのだ。

 今回も傘まで壊して。あれを直すのは面倒なんだぞ。

「次は勝ってやるわ!」

「まったく、付き合いきれんぞ」

 そういう話じゃないというに。

 我儘が過ぎるなこの娘は……ん?

「……どうした? 急に黙りこんで」

 お湯をかけても黙らなかったのに、急に静かになる。

 何か、拙いことを言ったかな? いやいつも通り叱ってるだけ、の筈……

 いつもなら、即座に言い返してくるのに。

 こちらが辟易するほど癇の強い娘なのに、こんな考え込むように黙るのは珍しい。

 いや。珍しいを通り越して不気味ですらある。

「……おい? ゆか」

「じゃあっ! 式を剥がしてあげるわよ! どこにでも行きなさいっ!」

「っつ」

 ばちりと弾かれる感覚。

「あ、おい紫っ!」

 濡れたまま走り去ってしまった。

 いや待て、なんだこの喪失感。気持ちが悪いほどにさっぱりしてしまっている。

 ――式が憑いてない? 

「な、あいつ……」

 本当に式を剥がした。何を考えている。式は力を与えるだけのものじゃない。

 存在を縛り私の自由を奪う為の枷でもあるんだぞ。

 まさか、本気で私を逃がすつもりなのか……?

「…………」

 よもや――本気で私がどこかに去るとでも思っているのか。

「馬鹿娘が」

 乱雑に服を引っ掛け家を飛び出す。

 あいつが行くところといえば……ええい、心当たりが思いつかん。

 どこだ。あいつが逃げ出したらどこに行く。

 思い出せ思い出せ。どこかに行ったことがあるぞ。

 心当たりと言うほどでもないが一度、きつく叱ったら行った場所が……

「っくそ」

 式が剥がれたからかあいつの妖力を探ることも出来ん。

 九尾の大妖が情けない……! いつから私はこんな無能に成り下がった。

 自慢の頭脳はどうした。国一番の賢女と謳われた知性はどこに消えた……!

「勝手が過ぎるぞ、紫」

 思わず愚痴を吐く。猫の子じゃあるまいし拾ったものを簡単に捨てるなど、

「――……あそこか」

 風を呼び文字通り飛び上がる。

 程なく目的地に辿り着く。人間が迷い家と呼ぶ無人の家々が連なる集落……

 どういうわけか猫が無数に住み着いている、幻想郷の外れにある集落だ。

 以前叱られた紫がここまで逃げてきたのだが…………居た。

 無人の家の軒先で猫にちょっかいを出している小さな背中。

 あんな金色の頭をしているのは私以外では紫だけだ。

「…………紫」

「なによ。付き合いきれないんでしょう?」

 振り返りもしない。

 やれやれ。相当に臍を曲げているな。

「さっさとどっかに行けばいいでしょ。金毛白面九尾の」

「違う」

 反射的に言葉を遮る。おまえに、そんな名で呼んで欲しくはない。

 私は、あの名を捨ててない。おまえに付けられた名を忘れてはいない。

「式が落ちても私は藍だよ」

 ぴくりと紫の肩が震える。

 ――強大な力に、他者を寄せ付けない胡散臭い振る舞い。

 それらに騙されがちだが、紫はまだ子供だ。癇が強く、傷つきやすい。

 大人のように――私のようにあれこれ割り切ることなど出来はしない。

 わがままを言って困らせて、わざと私の言いつけに背いて。

 全部、私の気を引こうとしての行いだった。

「紫、私はどこにも行かないよ」

 ゆっくりと近づく。

 紫が逃げ出してしまわないように。

「式神だからおまえの傍に居るんじゃない。私が居たいから、私の勝手で居るんだよ」

 つかまえた。

 私より随分小さなその体を抱き締める。

 おまえのことで、私にわからないことなんてないんだよ。

 寂しかったんだろう?

 ――……甘える相手が欲しかったんだろう?

「ほら、泣くな」

「泣いてなんか、ない」

 まったく、自尊心の高い奴だ。

 こんなときまで意地を張らずともよかろうに。

「……じゃあ、また式をつけてあげるわ」

 はいはい。ご随意に。

「でも」

 式を打とうと手を掲げたまま紫は止まる。

「でも――嫌じゃ、ないの?」

 問いの意図がわからない。

 そんなことを言い出す気持ちがわからない。

「あなたは、名の知れた大妖怪だし、こんな風に使われるのなんて」

 また……らしくもない気遣いだ。

 慇懃無礼に傲岸不遜なのがおまえだろうに。

 しかし、そんな気遣いも嬉しくはある。

 甘えるだけではなく、私のことを考えているということなのだから。

「――まぁ」

 単なる道具ではなく、情をかける相手だと見てくれていることが、嬉しい。

「宮廷で無聊を慰むのも飽きていたし、こういうのもいいさ」

 抱き締める腕に力を込める。

「少なくとも、おまえが立派に育つまでは面倒見てやるさ」

 私の気持ちが伝わるように、強く抱き締める。

 腕に触れるぬくもり。腕に落ちるあたたかさ。

「泣くな泣くな。特別なことなんか言ってないぞ」

「…………――っ」

 ほんの一瞬力を緩めた隙に抱き返される。

 私の胸に顔を埋め、紫はしゃくりあげた。

「泣き虫だなおまえは。……もっと素直に甘えてもいいんだぞ?」

 頭を軽く撫でる。

「そうだな、母とでも呼んでみるか?」

「っば、そんなの、言えるか」

「歳の差を考えろ小娘。おまえくらいの子が居てもおかしくない歳だよ私は」

 元気が出るようにからかってやる。

 まったく、手のかかる娘だ。目を離せないじゃないか。

 ぎゅう、と一際強く抱き締められる。

「……特別に、八雲を名乗らせてあげる」

 小さな声。

 消え入りそうな、恥ずかしさを押し殺した声。

「八雲藍。どう?」

 すっと紫の顔が私の胸から離れる。

 不安げな顔。

 怯えるように揺れる紫色の瞳。

 まったく――馬鹿な娘だ。

「……嬉しいな」

 私が、嫌がる筈ないじゃないか。

「ありがとう、紫」






























 風が強くなってきた。

 流れる雲を見上げながら呟く。

「……本当に手のかかる娘だったなぁ」

 途端背筋に走る悪寒。広がる妖気。

「ら~~ん~~……」

 ずるりと背後から現れた腕に捕まる。

「主の個人情報をべらべらと。訴えて勝つわよ」

「これはこれは。何時から聞いておられたので」

「あなたのことでわからないことなんて無いわ」

 追憶に耽っていたせいか、余計巨大に感じる妖力。

 ご立派になられたものです、紫様。

「あんな口の軽いのにぺらぺら喋って。三日後にどれだけ捻じ曲がって広まってるか見ものだわ」

 ははは。こいつはうっかり。でもまぁそれくらいいいんじゃないでしょうか。

 あなたは少々得体が知れないと思われ過ぎですから。

 私としては、心配するところでもあるのですよ、紫様。

「なににやにやしてるの。怒られてる自覚ある?」

「昔のあなたに言ってあげたい台詞ですね。いくら叱っても堪えないで困ったものでした」

「っな」

 意地の悪い笑みのまま振り返る。

 珍しく、大人になってからは本当に珍しく顔を引き攣らせていた。

「っくっく。あの頃はよく『生意気よ、藍』と鼻息を荒くしていましたね」

 どちらが生意気なのやら。

 ふふふ、そんなに顔を真っ赤になさらずともよいのに。

「なによ。子育てが癖になったくせに」

「おやおや。嫉妬ですか?」

 ここで私の式を持ち出すか。

 やはり、まだまだ可愛いものですねあなたは。

「また甘えてもいいんですよ?」

「生意気ね」

 そんな真っ赤な顔で言っても説得力は皆無だよ、愛娘。

「手のかかる子ほど可愛いんだよ、紫」
没タイトル「八雲藍の母子手帳」

三十一度目まして猫井です

藍様のおかあさんっぷりの原点はゆかりんだった

という妄想を形にしてみました

ここまでお読みくださりありがとうございました
猫井はかま
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コメント



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らんゆか
最高
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藍さま格好良すぎる!!
ぐはああぁぁぁぁぁぁぁらんゆか万歳\(^O^)
18.100名前が無い程度の能力削除
うは……おk…
22.100名前が無い程度の能力削除
あぁん紫様かわゆす、藍様カッコよす
この二人の主従関係も相当年季入ってますなー
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珍しい形か……?

何にしろ、良かった。
26.100名前が無い程度の能力削除
紫が藍を育てたってのはよくある話ですが、逆パターンはそういや見かけなかったなぁ…
何故か過去藍様の台詞がACfAのオペさんのボイスで脳内再生されてしまった。
32.100名前が無い程度の能力削除
ジャストミートすぎた
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やられたぜ・・・GJ!!
38.80名前が無い程度の能力削除
あれ……何か、良い
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こういう関係のゆからんもいいな
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珍しいパターンですが、
こういう暖かいのは良いですね。
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良いなぁ これ
らんゆかバンザーイ!!!
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珍しいけどGood!
らんゆか万歳。ゆかりん受け万歳。
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ロリらんしゃまを育てるゆかりんも捨て難いがこれも実にいい!
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その はっそうは なかったわ
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わたしの こころが はなぢを ますぱしている

何このゆかりん、かわいすぎるってこれわ
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この発想はなかった
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藍さまの母性は無限大ぃぃぃっ!
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これは斬新。
八雲一家の新たな可能性を見せてもらいました。
73.100Keigo削除
ハアァアアアアアアアアアアアアアアァン

最高
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良い……
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なんてこった。
めちゃくちゃはまってるじゃないか。
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娘ゆかりんもいいな!
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あかん……心臓持ってかれたわ