Coolier - 新生・東方創想話

縁河のすすめ

2009/09/20 10:28:06
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真夏の妖怪の山、その渓谷の一角――

炎天の日差しよりもなお熱い火に焙られて、つい先程までは清流の中で踊っていたアユが陽炎の中で身をかすかにくゆらせている。
そいつへの手向けとして、あたいは片手で拝む格好を作りながら焼香代わりの塩を一つまみ、ぱらぱらと振りかけてやった。
そんなあたいの仕草を不思議に思ったのか、対面にてアユに串を刺していたこの場限りの相棒が、首をかしげて問いかけてきた。

「何やってんの、船頭さん? いただきますの挨拶にはまだちょっと早いんじゃない」
「んー、ああ、癖でね。お迎え役でもないのに何かの命を刈り取ったときはこうするのが礼儀かと思っててねぇ。
 妖怪のお前さんには馴染みがないかもしれんが」
「ふーん……あ、そろそろ羽も乾かそうっと」

相棒は興味薄そうに呟くと、あたいに背中を見せた。そこには一対の雀の翼が広げられていて、雫をいくつも滴らせている。
この鳥妖、ミスティア=ローレライという名だが、つい先刻までは川で海女の真似事を繰り広げていた。
お目当ては夏バテ防止の為のウナギ。それを屋台で酒の肴に出すのだという。



そんなミスティアの漁をあたいが手伝ったのは、屋台の常連客だったことに加えて、思惑が二転三転した末に出した結論のためである。
ミスティアの経営する妖怪獣道のヤツメウナギ屋台、そこは妖怪ばかりか人間達にも覚えめでたい、希少な名店なのだ。
ただ、そこの幼女将(おさなおかみ)は腕は確かながらも、一つどうしても目に付く瑕疵があった。
それがために、当初は手を貸すことに多少の躊躇いを禁じえなかったのである。

だが振り返ってみると、自分の中のわだかまるものを吐き捨てつつ昼飯前の腹ごなしにもなったものだから、今では手伝って良かったと思っている。
ついでに、ささやかだった昼飯に新鮮な彩りも添えられて得したし。
いや、「徳は得に通ずる」というボスの言葉を頭の片隅に入れておいた甲斐があったというものだ。






ミスティアとあたいが渓谷で出会ったのは全くの偶然だった。
あたいはそのときのことを思い返す――



蒸し暑い日が続き、そのせいかここ最近の仕事量が倍増していたため、あたいは本腰を据える前の長休みをとるつもりで朝から此岸に出かけていた。
向かった先は渓谷、それも涼を得るのに相応しい高度と日陰を備えたあたり。
その条件に見合ったところ――河原のように水陸の高低差が少ない岸辺に降り立ち、さらにその付近に茂っていた木々の下で渓流と向き合うことにした。

あたいには仕事の合間を縫って、川の傍で一休みするという趣味がある。
三途の水先案内人という仕事を好き好んでやっているのは、あたいが川を好き好んでいるからでもあるのだ。
そんなわけだから仕事場である三途の静かな雰囲気が好きだし、森の中にある玄武の沢の穏やかな流れも気に入っている……
そしてここ妖怪の山の、九天の大瀑布から続く雄大な渓流にも、あたいの心を掴んで離さないものがあった。
最近天狗に聞いた話じゃ、山に突然現われた湖からも川が出来上がったらしい。今度試しに川下りに出かけてみるか。

そんな風に、大樹の陰に寝そべりながら取りとめもない物思いに耽っていると、はるか頭上の方から陽気な歌声が聴こえてきた。

「……地図さえもない それもまた じんせい~」

あたいはその歌詞にも唄っている奴の声にも覚えがあった。このところはご無沙汰だったが、会ったときには必ずといっていいほど聴かされてきた声音。
それにしても……素晴らしい、ちょうどその歌を思い浮かべていたところだ。ひとつデュエットと洒落込もうじゃないか。
独り勝手に話を進めるや、あたいは上半身を持ち上げて、聴こえてきた歌声に合わせて高らかに吟じた。

「「あ~あ~ 川の流れのよーにぃ~」……って何よいきなり!?」

……ああ、実に見事なハーモニーだったというのに、完膚なきまでに台無しにしてくれたか。何が気に入らなかったのだろう?
あたいは腰を上げて木陰から顔を覗かせた。
てのひらで目元に陰を作りながら頭上を仰ぎ見ると、子供っぽい柔らかな眉を尖らせて、ミスティアがこちらをにらんでいる。
全く迫力を感じさせないそれを軽く流しつつ、あたいはもう片方の手を振って挨拶した。

「やぁ、女将。しばらくぶりだ。いや、実に気持ち良さそうに唄っていたもんだから、つい口が勝手に動いてねぇ。
 あたいとしてはこの上なくぴったりハモったと思ったんだけど、ダメだったかい?」
「ふん、誰かと思ったら三途の船頭だったのね。あんたは歌を唄うんじゃなくて、歌を詠うのが本職なんでしょ? 私が唄っている時に邪魔しないで!」
「……邪魔と言われるとちょいと傷つくなぁ。それと、唄うか詠うかを決めているのは気分次第でね。どっちかが本職ってわけじゃあないんだ。
 それにしても真っ昼間から空飛ぶ夜雀だなんて、一体どういう風の吹き回しだい?」
「別にいつ飛ぼうと私の勝手でしょ。今日はほら、コレよコレ!」

互いに顔を見知っているゆえ軽々に言葉を応酬させた末に、ミスティアは両手に持っていた桶をあたいに示してみせた。
川に桶とくりゃ、入れるのは冷たくて清潔な山水ばかりではあるまい。

「……ははぁ、確かに昼間ものんびりできないわけだ。で、何が狙いなんだい?」
「んー、今は夏だからねぇ。アユやニジマス、あとはなんと言ってもウナギよウナギ!」
「ほほぅ、そいつは楽しみだ。晩になったら久々に寄らせてもらうとするか。んじゃ、そのカラ桶がいっぱいになるよう、あたいは祈っているよ」

軽い激励を言い残して、あたいは炎天の日差しから逃げるように木陰に戻っていった。
そう、このときのあたいはミスティアの漁労に付き合うつもりはなかった。
休憩に来たのに汗水垂らすというのは本末転倒だと思ったし、それに屋台の食材が調達される様子を窺う絶好のチャンスでもあったからだ。

というのもミスティアはたまに鳥目に効くヤツメウナギと偽って、普通のウナギを代わりに出したり、酷いときにはそこにドジョウを混ぜたりしているのだ。
今まであたいがこの舌で吟味してきたところ、それらの料理も味や効能に別段の問題はなかった。
だがやはりそういった詐欺が行われている以上、どこかに妙なからくりがあるのではと勘繰ってしまいたくなる。
材料調達の場面に出くわしたのは、その白黒をはっきりさせるちょうど良いタイミングだと思った。

先程とは違い、あたいは木陰の下で胡坐をかき、膝の角に肘をついたままてのひらで頬を支え、目を細めて寝た振りをする。
しかしその狸寝入りは、目の当たりにしたミスティアの行動によって自ら破ってしまうこととなった。
ミスティアは桶を傍らに置くや、なんと服の前を閉ざしている羽付きボタンの列を開け放っていく。
そしてあたいが目を見開いている間に、スカートやらブラウスやらを脱ぎ捨てていって下着姿になってしまった。さらにそれらにも手をかける。
その躊躇の全くない様子に、思わずあたいは声をかけてしまった。

「おいおい、いくら女同士だからって少しは慎みを持って……てぇ!?」

ミスティアの頭がキャミソールをくぐりぬけようとしているあたりで、あたいの目はその胸のあたりに釘付けられた。
そこにあったのは肌の白ではなく、髪と同じ色――桜色混じりの茶色の羽毛だった。それがちょうど胸囲を隠すようにぐるりと覆っている。
唖然としているあたいをよそに、続けざまにドロワースが引き下ろされた。
すると、その腰周りには形は変化なく色だけが変わったような、羽毛でできたドロワースっぽいものが残された。

「……あれ? それ、水着……? それとも体毛? いやそんな、でも……」

あたいは口をコイみたいにぱくぱくさせた。そんなあたいに、足回りの服飾や帽子を取り払ったミスティアが声をかけてくる。

「うん、何かおかしい? これから川に入って魚の掴み取りだからねー。服を濡らすと面倒だし、かと言って素っ裸ってのもアレだもん。
 だからこうやって羽毛を一時的に濃くしてるのよ。あんまり慣れない感触だから、服を着なおしたらさっさと引っ込めるけど」

……なるほど、いや納得がいった。流石は妖怪、人間の常識の範疇にはないもんだ。おそらく妖獣の類はこういった芸当ができるのだろう。
問答の末に押し黙ったあたいを置いて、ミスティアは翼を大きく広げてから一打ち、渓流のはるか上空へと飛び立っていった。
いまさらこっそりと窺うこともできないので、あたいは立ち上がって木陰と日中の境界まで歩き、ミスティアの漁をじっくりと眺めることにした。






上空のミスティアは、流石に歌は封じた状態で急流に向けて目を凝らしているようだった。
普段は実に幼い顔つきをしているものだが、このときばかりは凛々しいと言いたくなる横顔を見せている。

と、ミスティアに動く兆しが見うけられた。
片腕の肘を曲げて後方に引き絞るや、空を掻くように翼を羽ばたかせると、一直線に渓流へと急降下していった。
あっという間に水面が轟音を上げ、その爆心地からは水柱が一筋、間欠泉のように吹き上がる。
そしてそれが治まるよりも先に、ミスティアが水中から飛び上がっていった。後に残された水飛沫は日光を受けて、虹を宙に描く。

「とったど~!」

勝ち鬨を上げるミスティアの片手には、虹色水飛沫を鋳型に流して固めたような魚・ニジマスが握られていた。

「あ、船頭さん! 桶に水を張っといてくんない?」

感心したように見つめていたあたいに向けて、ミスティアはまず声を放ってくる。
言われたとおりに桶に水を汲み終えると、今度は手にしていた獲物を放ってきた。
見事に桶へダイブしたニジマスは、澄んだ水の中で瑕疵一つなくきらきらと輝いている。
そういえばミスティアは長い爪を持っているのに、モリのように突き刺すことなくわざわざ手掴みにしていたっけ――
続いて聴こえてくる水音に目を覚まされるまで、あたいはしばらく泳ぐニジマスに心を奪われていた。



その後もミスティアは翡翠(かわせみ)のごとく飛び込み漁法を行っていたが、成果は思うようには上がっていないみたいだった。
おそらく昨日の大雨のせいなのか、渓流の勢いがいつにもまして激しいためだろう。狙いを定めにくそうにしている。
しかも、一番の目当てのはずのウナギはまだ一匹も捕れていない。

「ウナギってやつは夜行性でね、昼間は川底でじっとしているんだよ。だから面倒だけど下の方まで潜らなくちゃいけないの。
 おかげでこっちは低速移動並みにスピードを下げられちゃって、いやんなっちゃう」

というミスティアの解説を聞く限り、昼間のウナギを捕獲するのは困難なことらしい。
そのミスティアだが、今ちょうど川底にてウナギ掴み取りに挑戦しているところだ。もう長いこと、この激流の中に潜りっぱなしである。
近寄って川底を窺おうとしてみるも、流れが急すぎて中の様子が不鮮明だということしか分からなかった。

ちょうどそんな時だった、岸からかなり離れたところで水飛沫と共にミスティアが上半身を飛び出させたのは。
しかも頭上にぬめり輝く紐状の何かを両手で掲げていた。おそらくはウナギだろう。

「とったりぃ! ……って、きゃあ!?」

わざわざ不安定な持ち方をしていたためか、ミスティアはウナギを滑り落としてしまう。
いかん、このままでは川底へ逃げられてしまう――あたいは素早く懐からスキルカードを取り出し、ミスティアに向けて大声で呼びかけた。

「もう一ぺん川から跳ね上げな!」

届いたのか、ミスティアは慌てて両手を水中に差し入れ、すくい上げるようにして大きくかき上げた。
水飛沫と同時にウナギが空を踊る。そいつをしっかりと見据え、あたいはスキルカードに力を込めた。

「さぁ、楽しい寿命の時間だよ! 『お迎え体験版』ってね」

啖呵の切れと同時に、宙を舞っていたウナギがあたいに向けて勢いよく引き寄せられていく。
さて、これをどうしたものか――少し迷った後であることに気付き、あたいはそのままウナギを吸い寄せる。
そして手の届く範囲にまで至ったところで、あたいは足元に置いてあったカラ桶を掴み上げ、それでウナギを掻っ攫った。
すぐさま桶の底に目を向ける。するとそこには元気にのたうち回るウナギの姿が!
あたいは満足げに口元を緩め、桶の中身をミスティアに向けた。

「おおっ、やるじゃん船頭さん! 便利なワザ持ってるんだねぇ」
「ふふん、あたいの『距離を操る程度の能力』は狙った獲物を絶対に逃がさないのさ、っと言いたいところだけど、これでも色々と制約がある方なんだ。
 まず位置を把握しないと始まらなくてねぇ。目視するなり場所を覚えるなりしておく必要があるんだ。加えて対象自身の動きにも左右される。
 さっきの場合は流れの速い川から出てくれたおかげで上手くいったんだよ。魚は空を泳げはしないしねぇ」
「ふーん。でも川からすくい上げてやりさえすれば絶対に引き寄せられるってことだよね……ねぇ船頭さん。ものは相談なんだけどさ――」
「あー、いやいや、みなまで言わなくとも予想はつくよ。手伝って欲しいんだろう? いいさ、常連客としてお前さんには懇意にしてもらってるしねぇ」
「ホント!? 助かるよ、今度店に来たときはうんとサービスするからね! 歌を!」
「……あっはっは。ま、ありがたく受け取っとくよ」

ミスティアからの依頼を、今のあたいは快く請け負う。
もはやミスティアに抱いていた疑いは完全に捨て去ってしまっていた。それが実際の漁を目にしたうえでのあたいの判断だ。
ウナギ漁とはかくもやっかいなものだったのだ。ならばヤツメウナギの少ない時期においては、材料不足に陥ってしまうのも仕方がないのだろう。
……ただまぁ正直に示しては欲しいところだが。ウナギやドジョウでも夜盲に効くようだから偽る必要などないというのに。

「さて、請け負ったものの桶はもう使えないか……ちょっと待ってな」

すぐにでも川底に向かおうとするミスティアを留め、あたいは自前の鎌を水平に構えて目を閉じる。そして記憶の中の自宅を引っ掻き回した。
……ええと、アレはどこにしまっておいたかな、確か……そうそう、ここだ!
目当ての物の位置をはっきり思い出すと、あたいは鎌を濃い桜色の魔方陣で囲ってやった。そしてうさんくさい文言を唱える。

「鎌一つを代償にして、魚網をドロー……『脱魂の儀』」

瞬間、あたいの持っていた鎌が魚網になった。
しかし代償などと大げさに言ったものの、実際は鎌と魚網の位置を入れ替えただけで、鎌は自宅にちゃんとある。
取り寄せた魚網を一振りして具合を確かめると、いつもは鎌を持ってそうやるように大上段に構えた。そして準備は万端とばかりにミスティアにウィンクしてみせる。

「いやー、多芸だねぇ。羨ましいわ、っと!」

目を輝かせていたミスティアの傍を通ったのか、アユがその腕の一振りですくい上げられた。
その姿をしっかりと認め、あたいは『お迎え体験版』で吸い寄せてから魚網を振り下ろす。ちょろいもんだ。
見るとミスティアは拍手を送ってくれている。

「うん、今の感じだね。じゃ、張り切ってじゃんじゃんすくっちゃうよー!」

手を止めて意気込みを宣言するや、ミスティアは川底へ向けて勢いよく潜って行った。
しばしの沈黙が訪れた後、それはもう何度目になるのか分からない水音によって破られる。
水面に上半身を出したミスティアは引っ張り上げるようにウナギを振り回し、炎天の日差しの下に跳ね上げた。
宙を舞う獲物をしっかりと見据え、引き寄せる――そうする前からあたいは高らかに歌声を響かせた。

「高いぃ~ やまぁかーらぁ~ たにぃぞぉーこぉー見ぃ~れぇばぁ――」

そして近寄るウナギとびっくりしているミスティアとを視界に入れつつ、笑顔で片目をつむってみせる。
するとミスティアも気を取り直して不敵に笑い、放歌高吟、あたいの唄った「ドジョウすくい女踊り」の続きを引き継いだ。

「乙女ぇすがぁたーのぉ~ うなぁぎぃすーくーいぃ~」

……ほう、そうきたかい。いやいや、粋な改変だとも。
目を丸くして破顔一笑しつつ、それでもあたいは狙いたがわずウナギを網で捕らえた。






――といった具合に谷川で獲得したアユの塩焼きに、あたいは大口開いてかぶりつく。
一汗かいた後だからか、この上なくうまいものに感じられた。
そのアツアツの脂でヤケドしかけた舌を、急いですすった冷や蕎麦でなだめる。
ちなみにこのざる蕎麦は人里の蕎麦屋に頼んでおいて、『脱魂の儀』を応用した出前――食膳と代金の位置入れ替えによって取り寄せたものだ。

「いやー、助かったわ船頭さん。おかげでかつてないほどの大成果なんだもん」

持参した握り飯をパクつきながら、対面に座っているミスティアは二つの桶に視線を流した。
中は屋台の目玉・ウナギやその他様々な川魚で埋め尽くされている。

「なんの、こっちも昼のおかずが増えて感謝してるよ。ここで一献傾けたいところだけど、それはまぁお前さんの屋台まで我慢するかねぇ」
「どうぞいらっしゃい。お安くしとくね。ついでに食欲がそそられるような歌もお聴かせしましょう」
「何だそれ? そんな便利なものがあるのかい?」
「ふふふ、こんな歌があるのよ。『さかなさかなさかなー 魚ーをー食べーるとー あたまあたまあたまー 頭ーがー良くーなるー』ってね。
 これを聴いたお客さんのウケもいいんだから! 『そーなのかー。もぐもぐ』とか『いっぱい食べたんだから、あたいったら天才ね!』とか」
「……なんだか、頭悪そうな話に聞こえてくるから不思議だねぇ」

力の抜けた苦笑いを返しつつ、あたいは焚き火の傍の串に手を伸ばす。
こうして、あたい達は一つ共同作業を終えた後の充実した昼食を、和気藹々と楽しんだ。
……あたいの方は本業ではないんだけど、細かいことは気にしない気にしない。マイペースマイウェイ。






桶をぶら提げたミスティアを見送ってから、あたいは改めて渓流に目を向ける。
そこで一つの木の葉が目に留まった。その動きを追っているうちに、ちっぽけなそれは濁流に叩かれ揉まれ、あっという間に飲み込まれてしまう。
ミスティアは平気そうに泳いでいたが、今日の渓流はこれほどまでに勢いがあったのかと思わされる。
……どうしよう、試しに川下りをしてみたくなるほど、心がうずいてきた。

あたいが是非曲直庁では人気の低い船頭という仕事を好き好んでやっているのは、舟の舵取りを好き好んでいるからでもあるのだ。

思い立つや、あたいは山の上の方まで足をのばした。
そして少し切り立った岸まで至ると、傍を流れる急流へ向けて身を躍らせようとして――空中で静止した。
次いで『脱魂の儀』の準備をする。今回思い出すべき物は……遠く離れた仕事場・三途の川岸に打ち上げておいた、仕事用の舟と櫂。
一寸のち、持っていた鎌と履いていた下駄が、それぞれ櫂と舟に形を変える。
あたいは櫂をしっかりと掴み、我が身と共に落下する舟の上に足袋を纏った足を着地させた。
そして水面に櫂を差し込み、まだ経験したことのない妖怪の山の荒々しい渓流を自在に下らんと、力強く漕ぎ出そうとした。



だが、その前進する動きが何かによって抑えられ、舟は大きく揺れた。
突然の出来事に動揺したあたいが振り返ると、舟の縁を何か丸っこい手のようなものが掴んでいる。
こんなちっぽけなものに、櫂の一漕ぎと水流の相乗効果が抑えられたのか、と訝しむ間もなく、舟が下へ向けて大きく引っ張られた。

「わわっ!?」

転覆を恐れたあたいは、慌てて舟を押さえ込んでいる手を振り払おうとした。
だがあたいの手が及ぶ前に、傍の水面が爆ぜた。どうやら何者かがあたいの舟を支点にして、水中から飛び上がったらしい。
その何者かは空高く舞い上がり、空中でくるくると身を回転させている。その度に、身に付けている空色の服の無数のポケットから弾頭がこぼれてくる。
ばら撒かれた鉛色の弾頭は不快なうなり声を上げて直進を始めた。向かう先はもちろん、水面に浮くあたいの舟――

「見つけた、逃がさんぞヤマメェ! 今日こそこの『空中魚雷』でお前をぎったんぎたんに……ってあんた誰ぇ!?」

空中の襲撃者はあたいに指を突きつけて啖呵を切ろうとするも、途中で言葉を自ら切り、興奮で紅潮した顔を真っ青なものに切り替えた。
どうも人違いらしい、それでこんなスキマのない弾幕を張られてしまうのだからたまらないねぇ、やれやれ……
と、暢気に考え事をしている間に『空中魚雷』とやらがあたいに向けて収束してきた。
これを待っていたあたいは懐からスキルカードを取り出し、櫂と共に握りこんで大きく水面を薙いでやった。

「『無間の道』っと」

割れた水面から、桜色の大瀑布が空へ向けて逆行し、あたいに向かっていた弾頭を全て相殺していった。それ以外は全て舟の傍を通り抜け、水柱を上げる。
事なきを得たあたいは生み出した桜色の奔流の中へ舟を入れ、川に流されてしまわないように固定する――これは本来の使い方ではないが。
いきなり勘違いから謂れのない攻撃を受けたのだ。事情を説明してもらわないと、本来の客を差し置いてこの喧嘩に貨幣を叩きつけてやりたくなる……
そんな気分で見つめていると、あたいの舟に向かって襲撃者が降りてきて、帽子を取って深々と頭を下げてきた。

「いや申し訳ない! つい慌てちゃってて、相手をしっかり確認せずに攻撃しちった。本当にごめんなさい!」
「……まぁいいさ。大事なかったからね。でも、次からはちゃんと気をつけなよ」

襲撃者はなんども頭を下げ、その度に艶のある青い髪が二尾を揺らす。どうやら相当にせわしない気質のようだ。
いでたちから察するに、この襲撃者は妖怪の山に住む代表的な妖怪・河童だろう。
しかし、その河童がこうも血相を変えてまで追うほどのものなのだろうか? その――

「さっきお前さん、ヤマメがどうとか言っていたけど、河童のお前さんが遅れを取るほど逃げ足が速いもんなのかね? そもそもヤマメがふね――」

そんな疑問を口にしている途中、申し訳なさ一色だった河童の表情が一転し、真剣な目つきで顔を近づけてきた。
気圧され、あたいは思わず口をつぐんでしまう。

「あんた、ヤマメをなめちゃいけないよ! 最近のあいつときたら、舟を使って恐ろしい速さで川を下っていくんだ」
「……なんだって!?」
「嘘じゃあない、その常識外れのスピードで渓流を跋扈し、我が物顔で山川の幸を荒らしまわっているんだよ!」
「!」

驚き半分、訝り半分で言葉が出てこない。
河童の顔をまじまじと窺うが、嘘を言っているとは思えないほど迫真にせまるものがある……こちらをからかっている様子など欠片もない。
……あたいが彼岸と此岸の狭間で右往左往しているうちに、ヤマメはそんなとんでもないものに進化してしまったというのか?
とかいう考え事をしているうちに、河童の顔色がまた変わった。今度のそれは、最初に戻ったと言える、怒りに満ちたもの。

「おおっと、こうしちゃいられない! もっと先に逃げたんなら急いで追わないと。そう何度も土足で踏みにじられっぱなしでたまるかい!」
「あ、おい!」

怒号を残すや、あたいが止めるのも聞かず、河童はすぐさま川へダイブしていった。
その様、まさに鉄砲水のごとく、である。
天狗に聞いた話じゃあ、超妖怪弾頭などという二つ名を持った谷河童がいるとのことだったが、あいつがそうなのだろうか?






桜色の奔流が範囲を徐々に狭めていく。『無間の道』がその効果を終わらせようとしているのだ。
そんな頃になってようやく、あたいは河童の興奮に当てられて考え違いをしていたのだと気付いた。

「いやいや、あたいよ。いくらなんでも魚のままのヤマメにあいつの言ったようなことはできんだろ。つまりだ――
 あいつが追っていたのは、ヤマメを原型とする妖怪だな。
 人型化すりゃ肺呼吸になるし、四肢も生えるから舟も漕げる……それは元魚としてどうかとは思うがね。
 そういえばなんと言ったかな、永江だったっけ? 竜宮の使いなんてのもいたねぇ」

あたいは恥ずかしさを紛らわすために、わざと心中を声に出して語る。
直前までミスティアと一緒に川魚を獲っていたからだ、と誰かに言ってやりたくもなった。生憎と聞き手はいなかったけど。

「それにしても身の丈五尋の魚が霧の湖にいることといい、水棲の妖怪ってのも色々だねぇ。
 やはり定期的に此岸に遊びに来ないと見識が狭まってしまうな。もう少し休憩の頻度を多くするか――」

と、ボスに聞かれたらただではすまない冗談を述べたところで、上流の方から大きな水音が聴こえてきた。

ミスティアと漁をしていたところとは異なり、渓谷のこの辺りは川が切り立った崖に挟まれているようにして流れている。
この上流には九天の滝があるため、川の両脇がその傾斜を鋭くしているのだ。
今、落ちてきた何かは、おそらく崖から飛び降りたのだろう。上流の方から次第にその姿をあたいの前に晒してきた。



最初にそれを見たあたいは呆気に取られた。

「いやー、うまく――たねぇ。河童も――崖の上――とは思――っただろうさ」

それは二人の人影を乗せた舟だった。緑髪、白い襦袢の幼子が櫂を回し、金髪で茶色いジャンパースカートじみた格好の女の子が何か話している。
その二人組みには見覚えがなかったが、二人を乗せている特徴的な舟のことをあたいは知っていた。

「……ええと、どこだったかな? さ、さで……違う、さど。そう、佐渡のタライ舟だ」

かつて幻想郷の外からの幽霊を彼岸に送ったときに聞いた話だ。その幽霊も生前はあたいと同じく女船頭(おんなせんどう)だったというから印象に残っていた。
巨大な洗濯桶を改良して舟の体に整えた、伝え聞いたとおりのタライ舟があたいの方に近付いてくる。
ちょいと感動していたあたいは、タライ舟の二人組みが血相を変えて何か叫んでいることに気付くのが遅れた。

「あぶないよ! 崖っ!」
「へっ?」

あたいの背後を指している金髪の女の子に従って振り返ると、岩壁がすぐ近くまで迫っていることに気付く。
しまった! 『無間の道』が消え、いつの間にか急流に煽られていたのか。
このままではぶつかる、という段になって、舟が再び何かに抑えられ、大きく揺れた。
転倒しそうになるのをなんとか踏みとどまり、それから舟自身の無事を確かめ、あたいは胸を撫で下ろす。

「ふぅ……やばかった」

安堵の溜息を吐きながら、あたいは声のした方へ向き直る。
舟が衝突すれすれのところで留まったのは、どうも金髪の女の子が糸の束を舟に巻きつけてくれたおかげらしい。
その子はまた、あたいの舟とは反対方向にも手を伸ばしていて、そこからも糸が伸びて岩場に絡み付いているようだった。
色々と詮索のために頭が回るが、ひとまずそれは後回し。まずは傾け、感謝を伝える。

「いやー、危ないところを助けてもらって、恩に着るよ。舵取りを忘れてしまうなんて船頭失格だねぇ、情けない話さ」
「なんの、大事なくて良かったよ。今日はどうも流れが急だからさ、気をつけたほうがいいよ、お互いにね」
「肝に銘じておくさ。それにしても……土蜘蛛とは珍しい。地上にも出てくるもんなんだねぇ。
 あれかな、わざわざそっちの……釣瓶落としの嬢ちゃんを捕まえて、川下りでもやろうと思ったのかい?」

糸を張る土蜘蛛少女の陰に立って、もじもじと櫂を回す緑髪の幼船頭(おさなせんどう)にあたいは目を向ける。
どうも引っ込み思案な気質らしい。はきはきと喋る土蜘蛛とは対照的だ。

「いやいや、違うよぉ……あ、もう離してもいいかい?」
「ん? ああ、どうも」

あたいが改めてお礼を言うと、土蜘蛛は巻きつけていた糸を引っ込めていった。袖の中に入っていったように見えた。
係留していたものが解除されたため、あたいの舟とタライ舟は再び急流にもまれ始める。
だが舵取りに意を注いでいる今のあたいにとって、この程度の流れならば体勢を保つことなど造作も無かった。
そして、あたいが平気そうな様子を確認してからか、土蜘蛛が話を再開する。

「さてさて、道すがら話そうかね。ところで、あんたはこのまま川を下るんでよかったの?」
「ああ。それと、もう舵取りをしくじることはないだろうから、遠慮なく話しかけてくれればいいさ」
「そう。じゃ言うけど、私達が今日この渓谷に来たのは川魚を獲るためなんだよ。それを地底の旧都に売りさばくってのが目的。
 旧都でも鬼の方々が養殖場を作っちゃいるけど、まだまだ天然物の需要も声高いからね」

波打つ川に揺られて、舟が一際大きく沈んだ。しかしあたいはそんな些事ではなく土蜘蛛の言葉の方に目を丸くする。

「へぇ、お前さん方もかい。いやなに、つい先程まで、あたいは知り合いの漁を手伝っていてね。
 ……そうだな、これも奇縁ってやつかな。よかったらお前さん方の漁も手伝おうか?」
「おや、いいのかい?」
「構わんさ。おそらく河口あたりまで下りていくんだろう、お前さん方も。それならあたいとしても目的は果たせるしね。
 なにより恩返しをしたくてねぇ。お前さん方のおかげでこのボロ舟もとうとうお釈迦、なーんてことにならずに済んだわけだし」
「あらら、そんなこと気にしなくてもいいのに。でもありがと」

土蜘蛛はころころと笑って返した。随分と親しみやすい気質のようだ。
感染症を撒き散らすため土蜘蛛は忌み嫌われる存在であるのだが、あたいの目の前のに限って言えばそんな奴でもなさそうである。






それからしばらくはお互い静かに激流を下ることに専念した。
だが増水したとはいえ、それなりに慣らしたところを航行するとあっては特に不都合なことはなかった。
余裕綽々の体で隣を見やると、タライ舟の幼船頭も、あたいみたいに髪の二尾を躍らせて――向こうは緑色だが――川を巧みに流れていく。

「ははっ、そっちの嬢ちゃんもやるじゃないか。そんな丸っこい舟だからきりきり舞いになっちまうかと思ったが、上手く丸め込んでいるんだねぇ」

あたいが賞賛の言葉を贈ると、幼船頭は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
その代わりに土蜘蛛が笑いながらフォローを入れてくる。

「あっはっは、ごめんごめん。どうもこの子は初対面の誰かと話すことに慣れてないのよ。まぁ一つ勘弁してやってよ。ほら、キスメ――」

土蜘蛛に言われてようやく、幼船頭になんらかのアクションが見られた。
櫂を回す傍ら、片手をこちらに軽く振り、そこから青白く輝く鬼火を生み出した。
それはあたいの目の前までゆっくりと進み、火線を描くことで空中に文章を作り上げた。曰く――

「ありがと」
「どういたしまして。これもまた巧みだねぇ……ま、ちょいと回りくどいコミュニケーション方法とも感じられるけど」

苦笑しつつ、あたいは器用に鬼火を扱ってみせた釣瓶落とし――キスメに返答した。
と、間を置かず今度は土蜘蛛が話しかけてくる。

「そういえばあんた、気になることを言ってたね。知り合いが漁をしてたって。そいつは河童にとっ捕まることはなかったの?
 この渓谷では谷河童の連中が睨みを利かせているって言うのに」
「ん? ああ、許可をもらってから漁をやっているって聞いたねぇ。妖怪の山の連中は確かに排他的だけど、話せば通じないこともないみたいだよ。
 かく言うあたいも川下りをしに来た時にゃ、天狗の先導のお世話になっているしね。もっともあれは監視も兼ねているんだろうけど」
「あれ、そうだったの? ふーむ、許可ねぇ……」

あたいの説明を聞いて、土蜘蛛は腕を組んで唸った。その様子にピンときたあたいは、少し悪戯っぽい笑みを浮かべて言葉を続ける。

「……ははぁん、さてはお前さん方、知らず密漁に手を染めていたんだね?」
「うっ、そ、それはその……」
「ま、あたいは山の者じゃないからとやかく口出しはしないよ。ただまぁ、今度からは試しに話を付けてみるといい」
「……んまぁ、出来ればね……とと、そろそろちょうど良いポイントかな」

そう言って土蜘蛛は川をざっと見渡した。あたいもそれに倣う。
川幅はだいぶ広がり、流れもそれに合わせて穏やかになっている。とはいえ、普段よりも勢いがついていることに変わりはない。
隣を見ると、キスメは流れに逆らって一つ所に留まるように櫂を操っている。
話を続けるためにタライ舟と轡を並べるようにして漕ぎながら、あたいは土蜘蛛に尋ねた。

「それで、お前さんの得物と獲物はそれぞれ何なんだい? 見たところ徒手空拳だけど、土蜘蛛というからにはやっぱり網かな?」
「ご明察。私の得物はいつだって網なのさ。あと、獲物の方は入ってきてくれるんならなんだって大歓迎だよ。
 さてと、それじゃああんた、向こう側の岸近くまで行ってくれるかい?」
「ああ、お安い御用さ、恩人」

返答するや三途を横切るときと同じ要領で、あたいは向こう岸まで自分の舟を運んでいく。そしてタライ舟と向き合った。
それを確認してから土蜘蛛が舟から飛び上がり、ちょうど二つの舟の中間に浮かぶ。
その両手にはそれぞれ一枚ずつ、いつの間に取り出していたのかスペルカードが握られていた。

「さぁさお立会い! 今より一つ、息つく間もなく紡ぎ上げるは、悠々流れる大河を跨いで、橋渡される仕掛け網。
 皆様、どうぞ瞬くことなくしっかとご覧あれ……罠符『キャプチャーウェブ』」

土蜘蛛は口上の切れと同時に、カードを二つの舟に向けて投げつけた。
すると驚くべきことに、カードの形をしていたものが一瞬で宙にばらけ、細く輝く繊維の幕となって広がる。
能の『土蜘蛛』を髣髴させるその光景に、あたいは目を奪われる。あちらは確か和紙の束で蜘蛛の糸を表現していたっけ――
などと思い浮かべているうちに、網の一端が舟の舳先に絡みついてきた。

「おっとと!? よっ!」

途端、タライ舟の方向に引きずられたために、あたいは軽くよろめいた。もっとも、すぐに持ち直すことは出来たが。

「だいじょうぶ?」

そんなあたいを心配したのか、キスメの鬼火がメッセージを宙に描いてきた。

「ああ、ちょっと揺れただけさっ、心配ないよ! ……なるほど、二つの舟の間に網を張って待ち構えるってのが土蜘蛛のやり方かい。
 ……って、あ、あれ!?」
「え」

漁法を察して川に目を向けるが、そこに見えたのは網が水面あたりを漂っている様子だった。
どうも、急流に煽られて底まで及んでいないらしい。これでは仕掛け網として機能しないだろう。
土蜘蛛も水面近くまで下りてきて、渋い顔を作る。

「やれやれだねぇ。今日の水流は足元をすくうばかりか、漁までも邪魔してくるのね。
 ……んん、こうなると今日一番の収穫は、船頭さんってことになるじゃないか」

唇を尖らせて愚痴っていた土蜘蛛だったが、突然あたいを見やるとニヤリと唇を歪めた。
収穫とは何のことだろう? 出会った時のことを考えればこの土蜘蛛にすくわれた、としか言えないと思うのだが。
訳が分からず見つめ返すあたいに向けて、土蜘蛛は笑みをそのままに話を続ける。

「どうやらあんたが手伝ってくれるおかげで、この問題も楽に解決しそうだよ。ところで突然なんだけど、あんたは水グモと聞いて何を思い浮かべる?」
「え? あ、そうだなぁ……アメンボ、かな? あとは忍者が水面を歩くのに使う草履みたいなやつとか。
 だがお前さんの顔を見ていると、どうもそれだけじゃないみたいだね。そういう名前の蜘蛛がいるってことかな」
「まぁマイナーなやつだからね、知らなくても無理はないよ。そいつは常に水中で生活する唯一の蜘蛛でね。
 とはいえエラ呼吸じゃないから直接水に浸かることなく暮らしているんだ。こんな風にして、ね」

土蜘蛛は不敵に笑い、片手を空に向けて掲げた。
その手から――正確には袖の中から細い糸が螺旋を描くようにして出現し、渦巻きながら土蜘蛛の周囲を覆っていく。
同時に、妙に膨らんでいたジャンパースカートの裾がみるみるうちに萎んでいった。あの中に糸を収めているのだろうか?
それを使って最終的に出来上がったのは、内部に土蜘蛛を収めた球形の蚊帳のような構造体。
編みあがった様子に満足したのか、土蜘蛛はその中で胸を張って堂々宣言する。

「これがホントの水グモの術、なーんてね」
「へぇ、糸で繭みたいなもんを紡ぎ上げて、水の浸入を防いでいるってのかい。いやはや、器用なやつもいるもんだねぇ」
「加えて私の糸は防水加工済み、そんじょそこらの水グモよりも派手に動き回れるってもんよ。
 さ、準備は完了、これから潜って仕掛け網を底まで届かせてくるわ。三箇所押さえてりゃ充分でしょ」
「お、そういう心積もりだったのか。それなら水上は任しときな。キスメともども、上手くやるさ」
「頼りにしてるよ。んじゃ、行くとするかね」
「きをつけて、ながれがはやいから」

最後に宙に描かれたキスメのメッセージにウィンクを返すと、土蜘蛛は繭のような巣とともに川へのダイブを敢行した。
なんとなく、あたいはミスティアの姿を思い出していた。
形は違えど、大自然のハンターにはどことなく共通する印象があるのかもしれない……そんなことを考えながら。






黄昏時――とは言っても夏は日が落ちるのが遅いため、時間帯としては夜といって差支えはないだろう。
そんな頃合に、日の具合とは関係なくいつでも暗い樹海の中を、あたい達は山の麓へ向けて歩いていた。
聞くところによると、土蜘蛛達は最近山の麓に出来た深い洞穴から地上へ昇ってきたらしい。そこは間欠泉地下センターと呼ばれているそうだ。
この穴の底には核融合炉と呼ばれる施設があるそうだが、途中の崖にはいくつか通路があり、それぞれ地底の様々な場所に繋がっている、のだという。

「やー、大漁大漁! これなら旧都のみんなも喜んでくれるだろうさ。後は新鮮なうちに運んでやらないとねぇ」

先頭にて、空飛ぶタライ舟と化したキスメと肩を並べる土蜘蛛が、両手に携えた桶を振りつつ上機嫌で喋っている。
そのスカートは再び丸々と膨らんでいた。曰く、パニエを履くことで形を整えているらしい。
舟を引き留めたときや水グモの術で出していた糸は、パニエから紡ぎ出してきたものを使っていたようだ。今は再び織り直して元の形に戻している。
その固定された形のスカートを翻すことなく、土蜘蛛はあたいの方を振り返った。そして後ろ歩きのままに、笑顔で謝辞を述べてくる。

「今日はありがとね、あんたがいてくれたおかげで漁がスムーズに進んだわぁ」
「いやいや、たいしたことはやってないさ。ただ舟を漕いでいただけじゃ、寝ていたのと変わりないしねぇ。こんなもんじゃ恩返しには程遠い。
 どうだい、これから親睦も兼ねて一杯やらないかい? さっき話に出した知り合いってのが屋台をやっててね。
 昼間手伝ったことでタダ酒が飲めそうなんだが……お前さん方におごらせてはくれないか?」
「おお、そりゃ魅力的な話だわ! 是非ともご相伴に預かりたいねぇ。そうとなりゃ、いよいよもって地底に急がなくっちゃ。
 ……さて、ここいらでお別れかな。ああそうそう、その屋台ってのはどこにあるんだい?」

話しながら歩いているうちに樹海の出口が見えてきた。このまま土蜘蛛達は洞穴の方へ、あたいは直接屋台の方へ向かうことだろう。

「ああ。妖怪獣道って言ってね。場所、わかるかい? もし知らないようだったら、あたいはここで待っていた方が――」
「しってる、よくいくところだから。やたいがあるのはしらなかったけど」

意外なことに、キスメがそんな内容の鬼火文字を挟んできた。暗い夜道に木の上から落ちてくる釣瓶落とし……言われてみればぴったりな気もする。

「ふむ、それならば問題はなさそうだね。では……って、ああ!」

別れの挨拶を告げようとしたところで、あたいは肝心なことを今までほったらかしにしていたのに気付き、思わず天を仰いで叫んだ。
目を丸くしてこちらを見つめる二人に向けて、深い溜息を吐き出してから言葉を続ける。

「全く、なんということだ! あたいとしたことが恩人の名前をずっと聞きそびれていたんだねぇ!」
「え? あ、そういやそうだったね。あんたに土蜘蛛って呼びかけられてから、まぁそれでいいかと思って流していたような気がするよ」
「いや、薄情な話になるところだったよ。ま、名乗るならこちらからってのが礼儀かな?
 あたいは小野塚小町。三途の川の水先案内人を勤める、しがない死神船頭さ。よろしくお見知りおきのほどを」
「ご丁寧にどうも。私は黒谷ヤマメ。遠い昔に地底に追いやられた、土蜘蛛のなれの果てだよ」
「ほぅ……ヤマメ、ねぇ」

あたいはその名前が何故か印象に残った。というのも、最近どこかで聞いたような気がしていたからだった。
あるいは今日ミスティアや、このヤマメと川で漁をしたという経験が、川魚と同じ名前ということで何か余韻を残したのかもしれない。
そのように、あたいは頭に覚えたもやもやの正体を説明付けることにした。
……まぁ、記憶に残りやすくていいか。この恩人の名、二度と忘れることはないだろう。






ヤマメ、キスメと別れてから、あたいは妖怪獣道目指してふらふらと飛んでいた。
そんな頃にはもう陽も完全に姿を消し、雲ひとつない星空が天蓋いっぱいに広がっていた。

「今日はまた、新たに面白い縁が釣れたねぇ。やはり水辺というのは格好の漁場かもしれないな」

一日も終わるというところで、あたいは出会った人物の姿をざっと思い浮かべていた。



三途の船頭という仕事は、故人の築き上げてきた人間関係――縁の数を判断基準にしてその者に裁定を下すことである。
具体的に言うと、その者の持つ縁が多ければ三途の川を素早く渡せる一方、縁が少ないと時間がかかり、最悪川を渡せず底に沈めてしまうことになる。

ゆえにあたいとしては自分の仕事がスムーズに進むよう、生者達にはなるべく多くの縁を築くよう忠告することにしている。
その忠告に説得力を持たせるため、あたい自らの縁の数も出来るだけ多く集めておかなくては、とも考えている。
縁を築くにはどうすればよいか、その具体的な範例を何パターンも熟知しておけば、孤立しがちな者へのアドバイスもやりやすくなるってなもんだし。
だからこうして休憩の時に此岸に出かけては、色々な者達と縁を築く努力をして、本業への貢献としているのだ。

……残念ながらボスは理解を示してはくれないが。曰く、「天秤がそっちに偏りすぎているのよ。貴女は相変わらず言い訳がましい!」とのことらしい。






そうこうしているうちに、妖怪獣道の、ミスティアの屋台にたどり着いていた。
暗い夜道を紅提灯が仄かに照らし、甘く香ばしい蒲焼の匂いが煙と共に立ち込め、そして幼女将の陽気な歌声……が、珍しく聴こえてこなかった。
少し不思議に思いながらも、あたいは暖簾をくぐった。



「あー、ちくしょー! 今日もみすみす逃がしちったー!」

ちょうど暖簾をかき分けたタイミングで、聞き覚えのあるような先客の怒声が耳朶を打った。
思わずそちらに目をやると、なんと昼間すれ違った河童が荒っぽく琥珀色の酒を呷っていた。
……どうやらあれっきりと思っていたあの河童との縁も、まだまだ妙な形で続いているのかもしれない。

「お客さん、あんまり無茶な飲み方はやめときなよ。それ、ウィスキーの『ポロロッカ』でしょ? 半端なくキツいんだから。
 ……あ、いらっしゃい船頭さん! ちょっと待っててね」

ミスティアはその河童をなだめつつ、こちらに挨拶をくれる。歌がなかったのはこのためか、とあたいは納得した。
突っ立っているのも何なので、あたいは手近な席に腰を下ろす。しばらく待っているとミスティアがこちらに向かってきた。

「お待たせ。やー、あの河童さん、ここに来てからずっとあんな感じでさぁ」
「荒れてるねぇ。まぁ、別に気にはならないけど。あ、『死神の河』をロックでお願いするよ」
「かしこまりー! あ、お酒は有料ね。その代わり食べ物は全部タダにしとくから」
「ああ、その方が理に適っているな」

きちんと昼間のことを覚えてくれていたようだ。実は少し不安もあった、幼女将は鳥頭で有名でもあったから。
そのミスティアは注文を受けてから、赤い江戸切子の杯にかち割り氷を入れてくれている。
透き通る二つの物が互いにぶつかり合う音を耳に入れる傍ら、ふと、あたいは横目で二つ向こうの河童を見た。

この河童、確か昼間出会ったときは何かを追っている途中だったんだっけ、そしてあたいはそいつと間違えられたわけだが。
はて、何だったかな? 魚の妖怪……だったような気がする。しかし詳細が思い出せない。直後に起きた出来事のインパクトが強すぎて吹っ飛んでしまった。

「はい、おまちどーさん! 霧の湖直送の氷で割った麦焼酎『死神の河』だよ」
「おお、すまないねぇ」

頭を回しているうちにミスティアが焼酎の杯を手渡してくれたので、ひとまずあたいは一献傾ける。
氷水に薄められる前の、濃厚な味わいを舌の上でしばし転がしてから飲み下そうとして――

「う~……次はないと思えよ。絶対に捕まえてやるからなぁっ、ヤマメェ!」
「ぶっ!? ゲホッ、ゴホッ!」
「うわぁ! だ、だいじょうぶ、船頭さん? ほ、ほら、手ぬぐい」

そのタイミングで水を差してきた河童の怒声を受けて、むせ返ってしまった。
しばらく待って落ち着いてから、ミスティアが差し出してきた手ぬぐいを受け取った。一応、手で礼を返す。
口まわりを拭いている間、あたいは河童の言葉がもたらした自らの変化を整理していた。

そう、あたいは全てを思い出していた。河童がヤマメを追っていたこと。そのヤマメは舟を使って移動し、山川の幸を集めているらしいこと。
ここで出てくるヤマメとは、その魚を原型とする妖怪ではなく、土蜘蛛・黒谷ヤマメである可能性が非常に高い。
だとしたら……このままでは非常にまずいことになる。そのヤマメがここに来る予定なのだ。そうなれば一触即発の事態は免れえまい。
最悪、ミスティアに迷惑をかけぬよう河岸を移す必要が出てくるだろう。

そんな風にあたいが今後の身の振りについて必死に考えを巡らせている傍ら、ミスティアは再び河童の愚痴を向けられていた。

「くそぅ、いつもいつも逃げ足だけは速いんだからっ……このままやられっぱなしじゃ、ちゃんと許可をとってる女将達に申し訳がたたないよぉ」
「うーん、私は別に気にしていないんだけどね。そいつが来ようと来まいと、収穫量が変わったことはなかったし」
「収穫量の問題だけじゃないの! あいつ等が来ると川が汚されるんだよ! あいつの通った後には常に疫病が蔓延り、そこに棲む者を苦しめるんだから!」
「って言うけどさぁ、私とそこの船頭さんは今日渓谷で漁をして、しかもその獲物を食べたんだよ?
 その時に魚の死体なんて見やしなかったし、獲った魚も溌剌としていて、しかも美味しかったし。
 そいつも後々の漁のことを考えて、川を汚染するような馬鹿な真似はしてないんじゃないかなぁ」
「……うぁ、うー、でも、あんな物騒な奴が来てるとあっちゃ、いつ疫病を撒かれるか分かったもんじゃない……もん」

二人のやり取りを聞いているうちに、あたいは考え方を変えることにした。
ミスティアの諫言が功を奏したのか、河童の鼻息は大分勢いを削がれてきているようだ。
このままあたいも河童をなだめていけば、後にヤマメが来たときに上手く話を回せるかもしれない。

幼女将の証言の通り、そして実際に人となりに触れてみた感触から、あたいもヤマメが疫病を撒き散らすような輩ではないと判断している。
加えて舟を助けてくれた恩義もある。もしあそこでぶっ壊れていたら、その件でボスにこってり絞られるところだった。
恩人のためにも、なんとかこの因縁を良縁となるようにしてみせる――そうあたいは決意し、そのための言葉を紡ぎ始めた。



「ちょっと確認したいんだが、お前さんの言うヤマメとやらは、土蜘蛛かなんかなのかい? 魚の妖怪じゃあないんだね?」

まずあたいはそこから河童に切り出すことにした。
いきなり横から口を挟んできたあたいに、河童は胡乱な目を向け、まじまじと見つめてくる。果たしてこっちの顔を覚えているだろうか?
なかなか返事を返そうとしない河童に代わって、ミスティアが答えてくれた、大笑いのおまけつきで。

「あっはは! ないない、そりゃないよ船頭さん。長いことあの渓谷で漁をやってるけど、ヤマメの妖怪なんて見たことも聞いたこともないって」
「そうかい、じゃあヤマメって名の土蜘蛛がいるんだね。疫病をばら撒く妖怪なんて他には考えられないからねぇ」
「……ああそうだよ。あんたも地獄の死神なら知ってるでしょ? あいつらのヤバさを。
 土蜘蛛みたいなのが渓谷に侵入しているのをほっといたら、そのうち川が疫病まみれになるんじゃないかと気がかりでしょうがないよ」

ミスティアにつられて河童も答えてくれた。その返答の終わりに、河童はウィスキーを乱暴に呷る。
酒によって再び河童の怒気が煽られる前に、あたいは言葉を続けることにした。

「ふむ。実はあたい、お前さんと別れたすぐ後に、そのヤマメと偶然出くわしたんだよ」
「なんだって!?」
「それも危ないところを助けてもらう形で、ね」

言葉の切れ目に、あたいは焼酎で口を湿らせた。そういう間を作っても河童は口を挟んでこない。
どうやら聞くことに集中してくれそうだ、そう考えてあたいは滑りの良くなった口を動かす。

「その縁で、しばらくあたいはヤマメと一緒に川を下ることにしたのさ。その道すがら色々と話を聞いたよ。
 あいつが渓谷で漁をしているのは、地底の旧都に天然物の魚を売って生計を立てるためらしい。
 まぁ普通に考えれば商品を傷物にするような行為は出来るかぎり避けようとするだろうね。ねぇ?」

あたいはちらっとミスティアに流し目を渡す。しかし幼女将は何のことか分からなかったらしく、首をかしげるばかりだった。

「それと、谷河童と話をつければ川で自由に漁をしてもいい、という事情をどうも知らなかったみたいだよ。
 あるいは、土蜘蛛の名はこのとおり忌み嫌われているようだから、交渉を持ちかけるにしてもやりにくかったのかもしれないね。
 因みに、あたいはあまり嘘は言わないようにしている。なにぶん、ボスがボスなんで、ね」
「う……」

何か思い当たる節でもあったのか、河童が小さく呻いた。

「お前さん達としては、谷川が病で汚されるのではないかという懸念に加えて、谷河童の面子に泥を塗られていると思ったからムキになっていたのかな?
 まぁ、秩序立った社会制度を敷くお前さん達のやり方も別に悪くはないが、あまり閉塞的にならんようにしてくれるとありがたいねぇ」
「……決してそれだけじゃあ、ない。山に入ってきた、客と認めた者の利益と安全を保障することも私達の立てるべき面子なんだ。
 そのためには客以外のならず者の侵入はきっちり防がなきゃならん。多少疎まれるくらいに厳格に、ね」
「そうかい……いや失礼した」

掌中の杯が中の氷とぶつかり、からんと小気味よい音を立てた。
それっきりの沈黙が生まれたタイミングで、注文した覚えのないウナギの蒲焼をミスティアが二つ、それぞれ河童とあたいの前に置いてくれた。
ウィンクしてくるミスティアに向けて、あたいは笑いながら焼酎のおかわりを頼み、代金の代わりとした。
それからあたいは急ぎ杯を空け、香ばしい香りを漂わせている蒲焼を一口頬張った。
隣を見ると、河童も同じように蒲焼を口にしている。一つ噛み締める度に、そのしかめっ面が和らいでいくように見えた。

「……んまい」
「でしょ? そいつは今日獲れた中でも、いっとう生きのいい奴だったからね」
「うん……本当に、おかしな病気は持っていないんだね……」

幼女将の料理はあたいの口先の何倍も、縁を取り持つのに役に立つな――河童の声を聴いて、そのことを痛感させられた。
それを苦笑に混ぜつつ、あたいは再び口を開く。

「まぁさんざん偉そうなことを言ってきたわけだけど、あたいだって早とちりや観察力不足から色々と迷惑をかけたこともあるから、説得力はいまいちだね。
 それにさっきまでの話には、恩人の名誉のためにという恣意も込められているしねぇ。最終的な判断は、お前さんがそのヤマメときっちり話をすることで下すんだ」
「……わかったよ。確かに今まではちょっと乱暴過ぎたかも。次にあいつを見かけたときは、話くらいは聞いてやることにするよ」
「よろしく頼むよ」

あたいは掌中の杯を河童に向けて差し出す。河童も少し遅れて、かすかに微笑みながらウィスキーのグラスを重ねてきた。
そのまま互いに酒を呷ろうとして……あたいは自分の杯が空っぽになっていることに気付き、渋い顔を作る。
ミスティアに向けて催促するために杯を掲げようとした……というところで、目の前に見覚えのある青白い輝きを捉えた。

「ありがとう。もう、わたしたちがはいってもだいじょうぶそう?」

ふっ――と、力の抜けた笑みを浮かべ、あたいは静かに杯を置いた。そしておもむろに立ち上がり、河童を見下ろす。
この行動を怪訝に思ったのか、河童もあたいを見上げてきた。
それを確認すると、あたいは必要以上に大きな声で、しかも脈絡のない話を切り出す。

「唐突だが、あたいの能力は『距離を操る程度』のものでね。
 例えば不倶戴天の敵同士が巡り合った時に、そのとばっちりを受けないよう自分から遠ざけておくことができる。
 あるいは、そいつらの首根っこを押さえて、そもそも喧嘩が出来ないようにすることもできる。
 というわけだから、遠慮なく腹を割って言いたいことをぶつけ合ってくれればいいさ!」

そしてあたいは屋台の暖簾を大きく開き、背後に来ているであろう恩人達をこの宴の席へ導いた。
 
 
 
 
 
 
●あとがき(小学校の夏休みには、長野の釣堀で虹鱒を釣りに行くのが楽しみだったなぁ)

・小町以外のツインテールの出番が少ないかな、申し訳ない。そしてサニーもっとごめん。

・たらいとは、広く浅い桶。狭いところが好きなキスメさんとは相容れないかもしれませんが、著者の都合の良いようにしてしまいました。

・一応、糸はお尻の辺りに収納されている上、袖を経て手の辺りから出しているという体裁にはなったかな?

・「蜘蛛っぽいでしょ、ヤマメって」 著者は幻樂団長の発想にただただ感服するばかりであります。
山野枯木
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コメント



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粋だ。もうそうとしか言えない。
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大江戸小町噺、と ふと思ってしまった。
13.100名前が無い程度の能力削除
粋だなぁ……
キスメの桶船…いいなぁ…
15.90名前が無い程度の能力削除
面白し