Coolier - 新生・東方創想話

香霖堂~喧嘩するほど仲がいい~

2009/09/20 02:19:10
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~注意書き~
タグを見てわかるように香霖と男オリキャラの話です。
ヤベッ今気付いたぜ、という人は左上を見てください。戻る のボタンがあると思うのでクリックしてください。
しかし、『アレっ?偶然にもオレの戻るボタンは効かないぜ!』とか、『そんな物元からついてないぜ!』とか、
『タグを理解してもオレは進む!』という方はどうぞお進みください。
では、お読みいただいて少しでも楽しんでいただければ幸いです。























ここは香霖堂、幻想郷において普通で普通の世界から見たら普通じゃないよろず屋である。
俺はもうほぼ毎日朝早くから夜遅くまで香霖堂に入り浸っている。
自分の家もあるがほとんど留守にしちゃっているな…。
霖之助の家にもうずっといてもいいんじゃないか…?
お夫、さすがにそれはまずいだろ…!?
とりあえず頭をぶんぶんふり邪念を捨て去る。
そんな奇怪な行動をとっているオレに霖之助が話しかけてきた。

 「大丈夫かい?僕は今日は無縁塚へ行ってくるけど?」
 「アイテム蒐集か?」
 「留守番頼めるかい?」
 「嫌だっつっても行くんだろうが?」
 「君がそんなこと言わないでちゃんといてくれると信じているからね。」
 「はいはい、いいから早く行ってこいよ。」
 「わかった、行ってくるよ。」

そう言って霖之助は背を向け香霖堂を出ていく。
そんな霖之助に向かって一言だけオレは言う。

 「あ、そうだ霖之助…、早く帰ってきてもいいんだぜ?」
 「…ふふふ、君がそういうなら早く帰ってきてあげるよ。」
 「なっ…!?べ、別に誰も早く帰ってきてほしいなんて言ってないだろ!?」
 「はいはい、行ってきます。」

むう、霖之助は何で都合のいい解釈をするんだ?
まあ、確かに早く帰ってきてくれたほうがいいけども…。
別にオレが早く帰ってきてほしいと言った覚えはないんだがなぁ…。
『本人に自覚がないのは怖いことね。』と、この前霊夢に言われたが何の事だったかな…?
さて、暇だし霖之助の本でも読むか…。
そう思って一冊の本を手にとってそれを読みだした。

カラカラカラッ。
…そんなまだ時間もたっていないうちに香霖堂の戸が開かれた。
霖之助…?ずいぶん早くないか?
と思ってパッと戸の方をみると、そこには二つの小さな影があった。
見覚えがある…、確かこの近くの紅魔館の湖の近くに住んでいる妖精の二人組だ。
氷のようなキレイな水色のショートヘアーの元気な妖精と、
青々と生い茂った植物のような可憐な緑の髪を横で結んでいる妖精だった。
(ふっ、霖之助の凛々しい銀の髪には負けるがな。)
そんな二人がこの香霖堂に何の用だろう?…何か嫌な予感がする。
なんて思っていると二人は香霖堂の店内に入り込んできた。

 「うわー!!すごーい!いろいろあるー!!」
 「だ、だめだよ…そんなに触ったりしたら危ないよぅ…。」

二人のうちの青い方がいきなり店内を物色し始めた。
店内の色々な商品を手に取ってみては危なっかしい手つきでいじっている。

 「おい、あんまり触ったりして壊すなよ?」

オレは霖之助のものを壊されたりはしたくなかったので妖精たちに声をかけた。
妖精たちはやっとオレに視線を合わせた。

 「いーじゃん別に!減るもんじゃないしさ!」
 「あ…あのっごめんなさい!ねぇ、もう帰ろうよ…?」
 「だってぇ、やることがほとんどなくなっちゃったんだもの!ここならいろいろあって暇をつぶせると思ったのに!」
 「触ってもいいが壊すなと言っているだけだぞ?」
 「うるさいなぁ、遊ばせてくれたっていいじゃない!?」
 「だ、だめだよそんなこと言っちゃ…!」
 「お、おいっ!?それは触るな!!」

その妖精が興味半分で手にしているもの、それはこの前霖之助が『これは今までで最高のアイテムかもしれない』と言って大喜びしていたものだった。
オレにはそんな物の価値はどうでもよかったが、霖之助の大事なものということである以上オレにとっても壊れたら困るものなのである。
…しかし、オレが急に大声を出したのが災いした。

 「きゃっ!?」

妖精はソレを、見事に落としてしまった。
そしてソレはオレの出した声よりも大きな音を立てて、それは目に見える形で違う形になってしまった。

 「あ…えっと…その…。」
 「ど、どうするの!?」
 「おいおい、マジかよ…。霖之助の怒る顔は見たくないんだが…。」

うんうん、嫌な予感はしてたんだよなぁ。
…どうしよう?
このままだと二人は霖之助に怒られるだろう、悪いことをしたんだから当然と言えば当然。
しかし、こんな子供の妖精相手に怒る霖之助なんてーのも見たくない。
もしかしたら霖之助にとっても案外どうでもいいものかもしれない。
実は考えている程の事にはならないかもしれない。
…そんな都合のいい考えが頭をよぎりつつあったオレと呆然としている妖精二人をある音が現実の世界に連れ戻した。
カララっ…
戸を引く音である。
そう、そろそろ…戻ってくる時間だった。

 「ただいま!今帰った…よ…?」
 「ああ、おか…えり…。」

きっと霖之助の目に映ったのは世にも不思議な光景だろう。
呆然とする三人の人間と妖精、そして散らばっている何かの破片。
その破片を見ればソレが何だったのか霖之助にはすぐわかる。
だって、そういう能力を持っているんだから…。
次の瞬間、一番驚いたのは割った張本人ではなく…オレだった。

 「誰が…やったんだい?」
 「あの、その…あたいは…。」
 「………………。」

あまりにも冷たい、声と視線だった。
しかし、こういう時真っ先に口を開く奴っていうのは、目立ちたがり屋か犯人のどちらかだと思う。
この妖精はこの場合どっちでもあったため真っ先に口を開いてしまった。
霖之助は、オレも感じたことのない冷たさを放つ視線と声で妖精を問い詰めにかかった。

 「君かい?やったのは?」
 「あ…あの…その、あたいは…。」
 「あれがどれだけ大切な物か、君にはわからないだろうね?」
 「………………。」

妖精はその霖之助に気落とされて、もうほとんど何も言えない状態である。
霖之助はそのあとも口調こそ丁寧だが、ジワリジワリと妖精を追い詰めていく。
…オレにはそんな霖之助は見ちゃいられなかった。
というか、見ていたくなかった。

 「よせよ!霖之助!!」

つい、声を出していた。
一体声を出してどうしようというのか分からなかったが、霖之助の怒る顔は見たくない。

 「君は、今は少し静かにしていてくれないか?」
 「もういいだろう?その妖精もそんなに泣いているじゃないか?」
 「うっ…ひっく…ぐすっ…。」
 「だが、僕はまだこの妖精から謝罪の言葉をもらっていないぞ!?」
 「…そんなの、今言える状態じゃないだろ!?」
 「…何で君はこの妖精を庇うんだい?」

今はなんて説明したってこの妖精は何か言われ続けてしまうだろう。
この場を収める方法は一つしかない。
今思うと、何でこの方法しか思い浮かばなかったのか。
もっといい方法もあったろうに…。

 「違うんだ…!」
 「何がだい?」
 「オレが…、本当はオレがやったんだ!」
 「なっ!?」

今現状、この妖精から霖之助の注意を引き離す方法はこれだった。
その妖精は悪くない、オレがやったんだと…。
オレの甘い考えだった、霖之助もオレだったらしょうがないとか言うかもしれないと思っていたのかもしれない。

 「君は…そんなに最低な奴だったんだな?」
 「なんだと?」
 「君は最初、この妖精に罪を着せようとしたってことじゃないか?」

霖之助の言うとおりであった。
今この状況で自分がやったなどといっても、なぜいまさら言うんだという話になるのは当然である。

 「そ、それは…。」
 「…ふぅ、君がそういうやつだとは思ってなかったよ…でも。」
 「でも、なんだ?」
 「何で割ったんだい?確かにさっきの状況は僕が言うのもなんだが、自分がやったとはとても言いにくい状況だったかもしれない。なぜ割ったのか、その理由を聞くよ。」
 「なんだ?その高圧的な態度は?」
 「君だから!僕はこうやって聞いてあげようと言っているんだよ?」
 「なら、その妖精だったら聞かないのか!?お前こそ、人によって態度を変える!
  そんな奴だとは思ってなかったぜ!」
 「…!!、君こそなんだその言い方は!?」
 「お前こそなんだ!?その言い方!?そんなに聞きたきゃ教えてやる!!
  オレがそれを割った理由はな…!」

完全に頭に血が上っていた、その時隣に妖精二人がいることさえも忘れていた。
それに…そこでオレの答えた理由というのも最悪に近い答えだった。

 「手が…滑ったんだよ!!」
 「はぁ!?」
 「手が滑ったって言ってるだろう!?」
 「そんな…そんな理由通ると思っているのか!?」
 「本当なんだから仕方ないだろう!?最近よく手が滑るんだよ!!」
 「まさかそんなつまらない言い訳をするとはね!
もうちょっと君はマシなことを言う人間だと思ってたよ!!」
 「お前こそ!もうちょっと話がわかるマシな半妖だと思ってたぜ!」

それを言い終わった後、しばらくの沈黙が流れる。
十秒か、一分か、一時間か、本当に時の流れがわからなかった。
そして、オレがまず口を開いた。

 「オレは帰るぜ。」
 「ああ、帰ってくれ。」
 「………オレは帰るぜ。」
 「外の世界に…だろ?」
 「察しがいいな。」
 「僕は絶対に君を止めないぞ。」
 「オレも、帰る方法を見つけて絶対に帰るからな。」
 「霊夢にでも頼むといい、すぐに帰してくれる。」

お互いに意地になっていた。
だが、男が一度言ったことだ、オレは幻想郷を去ることになった。

家に帰り、たいしてない荷物をまとめる…というか荷物の少なさにかなり引く。
着替えが数着しかない…。
そうか…おれって霖之助に大分世話に…、
そこまで考えてやめた、あいつなんか…もうどうでもいい…か。
さて、博霊神社に行くか。

博霊神社に着くといつも通り、いつもの巫女が縁側でお茶を飲んでいた。
近くに行ってとりあえずそこそこの距離をあけ隣(?)に座る。

 「珍しいお客さんじゃない?」
 「相談があってきたんだ、聞いてくれるか?」
 「相談料とるわよ?」
 「霖之助にツケといてくれ。」
 「あら、あなたが霖之助さんにツケにするなんて、珍しいこともあるのね?」
 「もう…いいんだ。あいつとはもう、お別れだ。この幻想郷とも。」
 「…そういうことね。」、

霊夢はそのままお茶を一飲みしてほーっと息を吐いた。
…なにも言わない、何か待っているのだろうか?
その時であった、空からものすごいスピードで何かが…いや、あんなの魔理沙以外にあり得ない。
キキーッとなぜか箒からブレーキ音が聞こえて魔理沙が目の前で止まる。

 「よっ、霊夢!って、珍しいのがいるなぁ、香霖と喧嘩でもしたのか?」
 「ぐはぁっ!」
「やめてあげなさい、図星だから。」
「およ?それで霊夢に何の相談だ?恋の相談だったらこの恋の魔法使いの魔理沙さんにお任せだぜ!?」
「といっても、おれより年下だろ?魔理沙ちゃん?」
「だからちゃん付けで呼ぶな、気持ち悪い!だいたいこの幻想郷では私の方が先輩なんだから、さん付で間違いないんだぜ。」
「でも恋に関してはどうなんだ?」
「私は恋の魔法も使えるんだぜ?その時点で私の方が先輩だ!」
「そーゆーもんですかね、魔理沙さん。」
「そーゆーもんだぜ。」

さて、魔理沙との言葉遊びはこの辺にして霊夢に本題を投げかける。

 「まあ霊夢、そういうわけでオレを幻想郷から出してくれないか?」
 「当然だけど、もう戻って来れないわよ?」
 「…覚悟の上だ。」
 「霖之助さんにももう逢えないわよ?」
 「…それは、その、もちろんだ。」
 「…バカね。」
 「意地になっているだけじゃないのか?」
 「ぐおぁっ!」
「やめてあげなさい、図星だから。」

魔理沙はなんだかんだ言ってきちんと人のことをわかっているんだよな。
だが、その性格がまるでわかってないように振舞わせているだけで。

 「いいだろう、別に。男が一度決めたことだ。」
 「…じゃあ、とあるものが必要なんだけど。」
 「は?おいおい、帰るのに道具が必要なんて聞いたことないぞ?」
 「そりゃそうよ、初めて言ったもの。」

淡々と言いやがるな、この幻想郷でまさかの探し物か?
さっさと…帰ってやりたいんだが。
…だけど、なんだこのちょっとほっとした気持ちは。
すぐに帰してくれるなんて言われたら、どうしようと内心思っていたのだろうか?

 「わかったよ、何が必要なんだ?」
 「私が教えてやるぜ、それは吸血鬼の下着なんだぜ?」
 「は!?」
 「姉か妹かは問わないから、とにかくどちらかの物を取ってくるんだ。」
 「…オレに死ねと言うのか?」

この幻想郷には今吸血鬼と名乗る者は二人しかいないのはオレにもわかる。
そしてその二人の下着を取ってくるなんてそれこそ自殺行為である。
ごくごく普通の人間であるオレではやっと辿り着いて門番にも勝てないだろう。
万が一勝ったとして館に忍び込み下着を盗んでくるなど…、ん?下着?
…何で帰るのに下着なんかが必要なんだ?
…よくよく考えると、いや、考えなくてもわかる。

 「下着なわけないだろうがぁー!!」
 「そんなことないぜ!それがあれば霊夢のやる気がみなぎってお前を幻想郷の外に帰すことができるんだぜ!」
 「私は変態じゃないわよ?」
 「こんなくだらない嘘を信じてしまうとは…。」
 「ああ、まさか信じるとは思わなかったぜ。」
 「で、本当は何が必要なんだ?」
 「ただの石よ、ちょっと特別な。」
 「そんなのあったか?霊夢、私も初耳…もがもが。」

ついに霊夢が魔理沙の口を押さえつける。
ちょっと黙っていろ、ということだろう。

 「帰還石って言って淡い青色を放っている石よ。」
 「どこにあるんだ?」
 「彼岸の滅多に誰も近づかないところ。」
 「…遠いな。本当に必要なのか?」
 「本当に必要よ、あなたにとってね。それにとっても貴重だから万が一見つけても無くさないようにね。」
 「…見つけるのが万が一の確率なのか?ずいぶん貴重だな。」
 「それだけ貴重な物だから一つ見つけたらもう見つからないわよ、きっと。」
 「なんだそれ?まあいいや、とにかくここからかなり時間がかかるよな?」
 「そんなことないわ、飛べばそんなにかからないわよ?」
 「あっ、そうか飛べばいいんじゃないか!」
 「何をいまさらだぜ。頑張って行ってこいよ!」
 「おう!任せろ、ちゃっちゃと取ってきてやるぜ!」

そして俺はさっと立ち、数歩歩いて立ち止まる。
…この終わることないオレの悲劇(喜劇)に、お前らは突っ込まないのか!?

 「できるかぁーー!!」
 「どうしたんだぜ急に?」
 「オレが飛べないの知っているだろうがぁーー!!」
 「私は飛べるぜ?」
 「私も飛べるわよ?」
 「オレは飛べん!!」

なるほど、この二人には今ここでとある常識を教えといた方がいいんだな。
オレは二人の方を向いた。
そして二人に向かって指を突き出し言い放った。

 「いいかおまいら、普通…人間は空を飛ばないんだよ!!」
 「そんなことないぜ、人間も飛ぶぜ?」
 「そうね、ここでは飛ばない人間の方が珍しいかも知れないわよ?」
 「………おー、まい、ごっど…」

オレは一つ、やっと気付いた。
幻想郷では、常識にとらわれてはいけないのですね!?

 「…それはわかった、じゃあ俺はそこまでどうやっていけばいい?」
 「飛ぶ練習でもするか?」
 「大の男が箒にまたがり空飛ぶ練習か?」
 「おう、相当気持ち悪いけどな。」
 「…霊夢、どうしたらいい?」
 「しょうがないわねぇ。」

そういうと霊夢は立ち上がりタンスの中からお札を一枚出した。
それをオレの目の前に突きつける。
お札にはもう読めないような文字が書かれている。

 「これは?」
 「転移札、これを使えば一気にそこまで飛べるわ。」
 「使い方は?」
 「これを持って、行きたい場所を思い浮かべる、それだけ。」
 「おお、しかし悪いなー。こんないいものをタダでくれるなんて…?」

それを取ろうと思ったオレの手は空を切った。
霊夢がひょいっと転移札を後ろに下げたのだった。

 「さすがに、そうは問屋が卸さないってことか?」
 「もちろんタダじゃないわ、結構貴重なのよ。」
 「といってもオレは一文なしだぜ?」
 「じゃああなたの持っている何かを頂戴。」
 「オレの持っている何か?」

いまオレが持っているものと言えばさっき風呂敷に包んだ着替えくらいしかないが…。

 「いる?」
 「いるわけない。」

だよな。
じゃあ、ああ、いいのがあった。

 「オレの家ってのはどうだ?」
 「あんたの家?」
 「ああ、使わないまでも売ればそこそこの値段にはなるだろう?
  オレももう住まない訳だしな。」
 「…なるほど。」
 「交渉成立だな。」

オレは霊夢の持ってきた紙に確かに家を譲りますみたいなことを書いて拇印を押して、
転移札を一枚譲り受けることができた。
さて、これで出発の準備はできた。

 「じゃあな、行ってくるぜ。」
 「そうだった、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
 「何だい?」
 「あなたって、男が好きなの?」
 「………何を勘違いしてるのか知らないが、オレが好きなのは男ではなく霖之助…って何言わせるんだ!」
 「ふぅ、やっぱりねぇ。」
 「だったら謝っちまった方がいいんじゃないか?
  恋のことならこの魔理沙さんにお任せだぜ?」
 「…誤ることなんてできないんだよ、魔理沙『ちゃん』。」
 「だからちゃん付けで呼ぶな!私の方が先輩だろ!?」
 「しかし、男のことに関しては…オレの方が先輩だろ?」

そういうとオレは転移札を使用した。

 「行ったわね…。」
 「なあ霊夢、男ってめんどくさいな。」
 「ほんとね、素直に謝ってくれれば私がこんなに気を使う必要もないのにね。」
 「帰還石のことか?あれは本当に必要なのか?」
 「必要よ、取りに行かせると時間が稼げるでしょ?ついでに家までもらえたし。」
 「家がついでなのか、それと…転移札って使い捨てじゃなかったか?」
 「そうだけど?」
 「あいつ帰ってくるときは?」
 「その心配はなぜか要らないのよ。」
 「何でだぜ?」
 「ほら、来た。」

そして話は少しさかのぼる…。

彼が去った後の香霖堂、妖精たちも出て行かせて片付けをしてとりあえず座っていた。
本を手に持っているが読んではいない、ただ持っているだけだ。
何でこんなことになってしまったのか。
我ながらまだよくわかっていないが、彼があれを割ったのはおそらく嘘だろう。
あの時の状態を見ればあの妖精が割ったことなど明白だ。
わからないのは、どうして彼があの妖精を庇ったかである。
自分勝手な考えだが彼なら僕の味方をしてくれると思っていた。
彼は今どうしているだろう、時間的に考えてもう自分の家に帰ってそろそろ博霊神社に着くくらいだろうか?
このまま僕は、彼を帰らせて本当にいいのだろうか?
…知ったことではない、彼は僕が思ったより嫌な人間だったのだ。
そんなことを考えていたときである。

 「ご、ごめんくださぁい!」

この声はさっきの妖精じゃないか、このタイミングで何の用だ?
どうぞと声をかける前にさっきの妖精二人が入ってきた。

 「あっ、あの!さっきの奴の話なんだけど!」
 「…もういいよ、あれは彼が壊したんだから。ああ、そういえばまだ君に謝っていなかったね。すまなかった、君を勝手に犯人扱いしてしまって。」
 「そ、それだけど本当は違うんだよ!やっぱり本当はあたいが壊したんだ。
  確かにあいつが大声出さなきゃ落とさなかったかもしれないけど。
ご、ごめんなさい!!」
 「あの人が壊したわけではなかったんです、でもこの子を庇うために自分がやったって言ってくれて…。」
 「…やっぱりか、でもわからない。」
 「何がですか?」
 「何で彼がその子を庇おうとしたかだよ。」
 「確かあの人言ってたよ、香霖の怒る顔は見たくないって…。」
 
そういうことなのか?
つまり僕が妖精相手に怒っているのを見たくないから、自分のせいだなんて言って妖精から注意をそらしたのか?

「バカだなぁ、彼は…そして僕も。」

独り言のように言った。
そんなことしても彼が今度は怒られる対象になるのは理解できるだろう、そして僕も彼がよせよと言って来た時になぜやめられなかったのだろうか?
考えれば考えるほどにとある衝動に駆られる。
…彼に会いたい!会って話がしたい!
何の話をするかなんて考えていなかった、とにかく彼に会いたい!
そんなこと思うや否や僕は博霊神社にむかっていた。

博霊神社に着くとそこには霊夢と魔理沙がいた。
二人は何もない方向を見ながら座って話をしている。
ほどなく、近づいてくる僕に気付いたらしい。

 「ほら、来た。」
 「おお、香霖じゃないか?」
 「ここに、彼が来なかっただろうか!?」

着くといきなり大きな声で彼のことを聞いた。
すると霊夢も魔理沙も、仕方ないなという感じで笑っていた。

 「ど、どうなんだ!?」
 「来たわよ、ちょっと前にね。」
 「おう、この魔理沙さんに無礼を働いてな。」
 「もう、行ってしまったのか!?」
 「ええ、行ったわよ。」
 「霊夢、意地の悪い言い方よしてやれよ。まだ帰っちゃいないだろ?」
 「でも、行ったことには変わりないわ。」
 「どこに行ったんだ?」
 「彼岸。」
 「遠いな、しかしそんなところに何をしに行ったんだ?」
 「帰還石を探しに。」
 「それがなきゃ帰れないんだぜ!」
 「…それを持って帰ってきてしまったら?」
 「もちろん、彼に本気で帰る気があると判断して帰らせるわ。」
 「結構簡単に見つかるものなのか?」
 「滅多に見つからないわ、それこそ結構な確率じゃないかしら?」
 「それでも、見つかる可能性はあるんだな?」
 「あるかもね、見つけられなかったら帰ってくるでしょう?」
 「…そういう男じゃないんだよ。」

多分彼なら見つけるまで探し続けるだろう。
僕の知っている彼はとても意地っ張りだから。

 「霊夢、転移札はあるかい?」
 「あれはもう売り切れなのよ、今はないわ。」
 「空飛ぶ練習でもするか?」
 「生憎だが、僕はもう飛べる。」
 「そうだったか、でもそこそこかかるぞ?」
 「それでもいい、早くしないと間に合わないだろ?」

僕はそのまま、彼の居る場所へと飛び立った。

 「なあ霊夢、男って単純だな。」
 「ホントね、もっと単純だといいんだけどね。」
 「帰還石って本当にそんなにレアなのか?」
 「かなりね。」
 「もしあいつが持って帰ってきたら私が貰ってもいいか?」
 「いいわよ、別に私は必要ないし。」
 「おい、帰るのに必要じゃないのか?」
 「生き『返る』のに必要な石なのよ、あれは。」
 「…じゃあ幻想郷から帰るのに必要じゃないのか?」
 「そんなの、その気になればもう帰させてるわよ?」

そんなことは全く知らず、二人の男は帰還石を巡って奔走する。
そして場所はここへやってくる。

 「おおう!?」

まさに『転移』してきたおれはちょっと酔ったような不思議な感覚に包まれた。
自分が転移したというよりかは、周りがグニャッてまた元に戻った時には風景がチェンジしていた感じだ。
これは便利な物をもらったなと思って転移札をみると…。

 「消えてるーーー!?」

しっかりと持っていたはずの転移札が無くなっている。
あの状態で手放したというのは有り得ない、とするともともと一回しか使えないものだったとしか考えられない。
…帰りはどうしよう?
まあ、今はとりあえず帰還石を探すとするか。
どこから探したものかとも思ったが何となくな感じで探し始めた。

…どのくらい時間が経っただろう、思えばそれがどのくらいの大きさとか、どこらへんにあるとか、そういった情報は全く聞いていなかった。

そろそろ日も落ちてきて周りも暗くなってきた。
手に入れた情報は帰還石は青く光るって、思えばそれだけだな…。
そんな事を思いつつあたりを見渡すと…。

 「…あれは!?」

ある!ほかの石などに多少埋もれてしまっているが青く光る拳くらいのサイズの石!
急いでそこに走り出す、そしてほかの邪魔な石をどけて帰還石を掘り返した。
淡く青い光を放っている、まるでこの世のものではないみたいな感じだ。
それを手に取り改めて思う。
これを持って帰ったら、…もう霖之助には会えないんだな。
そんな感傷に浸っていたが、もう日も沈み始めている。
そろそろ帰らなければ、ここらも今は何も出てないが夜になれば妖怪も出るかもしれない。
幻想郷は香霖堂に来るような人間に好意的な妖怪ばかりではないと感じている。
さて、と腰を上げ博霊神社の方角へ足を向けたそのときである。

 「待ってくれ!!」

懐かしい声である、オレのよく知る、今でも好きな声である。
オレはその声がした方へ顔を向ける。
そこには、暗いので表情まではよくわからないが間違いなく霖之介の姿があった。

 「霖之助…、何の用かな?」
 「帰還石はもう……っ!」

オレの持っている帰還石を見て、オレがもう帰還石を見つけたことを悟る霖之助。
きっとその能力でこれが帰還石であるということもはっきりわかったのだろう。
そしてその用途が『かえる』ためということも

 「ああ、見つけた。」
 「君はすごいな、それはものすごく貴重で見つけにくいんだぞ?」
 「人間って、欲しくない時に見つかって、欲しい時に見つからないような変な特技を持っているんだよ。」
 「つまり、それは今の君にとって欲しくない物だったということかい?」
 「そんなこと言ってないだろう?ただ、そんな生き物ってことさ。」

あの喧嘩のあとだっていうのになぜか普通に喋れているオレ達。
…わかっている、お互い意地を張っているだけだ。
どちらかが帰りたい、帰らせたくないと言えれば、お互いに相手のことを許してまた元の鞘に戻ることができる。
だが、お互いに一度言ったことを撤回するほど軽くはない。
霖之助もオレを許してくれたからここにきた、それはわかっている。
オレも霖之助のところに帰りたいというのもさっきのちょっとの会話で霖之助はわかってくれているはずだ。
なのに、お互い意地になってしまって…。

 「じゃあ、オレはこれで帰るぜ。」
 「…そうか、今までありがとう。」
 「オレも…世話になったよ、ありがとう。」

オレのすぐ横で流れている川の水の音だけがしばらく響いた。
オレは霖之助に背を向けてここから去ろうとする、その時霖之助が喋り始める。

 「僕は…!僕は君を決して止めない!」
 「ああ、霖之助はそう言ってた。」
 「でも…でも…!!」

月明かりで霖之助の顔がはっきり見えた、少し…泣いていた。

 「せめてっ!君を見送るくらい…させてくれないか!?」

霖之助は少し泣きながら言っていた。
その一言で、霖之助が俺を本当は行かせたくないけど、オレがどうしてもというなら止めはしない…と言っているように感じられた。
オレは…霖之助を泣かせてまで何をしているんだろう?
オレが霖之助のところに帰りたいと言えば霖之助はオレを笑ったりしないでちゃんとオレを迎え入れてくれるだろう。
しかし、ここで素直になれるほど、オレもできた人間じゃなかった。
ここまで捻くれている自分がどうしたら霖之助のところに戻れるかな?
捻くれもののオレは、捻くれたやり方でしか返せなかった。

 「霖之助、お前はオレを見送ることはできないよ。」
 「どうしてさっ!?君は見送りさえもさせてくれないのかっ!?」
 「違うよ…霖之助。」

そういうとオレは、手に持っていた帰還石を川へ放り投げた。
思っていたよりも川は深く流れも速い、帰還石はもう流れて行ってしまっただろう。

 「オレは帰る方法を見つけて絶対に帰るって言ったけど、これでもう帰れなくなっちまった。帰らないなら見送りもできないだろう?」
 「…いいのかい?それを捨ててしまったから、もう君は帰ることができないんだよ?」
 「バーカ、誰がせっかく手に入れた帰還石を捨てるって言うんだ?」
 「じゃあ、どうして川へ投げ入れたんだい?」
 「違うぜ、川へ投げたわけじゃないさ…実はな…。」

今度は本当に冷静だった。
それに…そこでオレの答えた理由というのも最高に近い答えだったと思う。

「手が…滑ったんだよ。」
「は?」

最初霖之助は何を言っているのか分からないという顔をしていたが、それも一瞬だけだった。
さすがに捻くれもののオレと過ごしてきただけあって、すぐに半分笑いながら返してきた。

 「そんな…そんな理由、通ると思っているのか?」
 「本当なんだから仕方ないだろう?最近よく手が滑るんだよ。」
 「都合よく滑ってくれる手だな。」
 「全くだぜ。」

もう我慢の限界だった、この状況が面白くって。
笑いがもう堪えられなかった。

 「あっはっはっはっは!!」
 「あっはっはっはっ!!」

二人して一気に笑った。
この状況が面白いのと、今まで意地を張っていた自分たちが馬鹿らしいのとで。

…しばらくして、もう暗くなった空の下。
オレと霖之助はてきとうな場所に座っていた。
そして、少しずつ話し始める。

 「これから君は…どうするんだい?」
 「どうしような。」
 「今日はとりあえず帰るとして、明日から…。」
 「のあっ!?」
 「ど、どうしたんだい?」
 「いま思い出した、オレ…もう家がないんだった。」
 「家がない?」
 「ああ、霊夢にもう使わないと思ってあげちまって…。」

ああ、なんてことしてるんだオレ!
このままじゃニートどころかホームレスじゃないか!?
うう、ここは最後の手段に出るしかないか?

 「なあ、霖之助…?」
 「ふっふっふ、なんだい?」

こいつ、これからオレが何を言うかわかってるな?
くっそー、いつか見ていろよ。

 「その…お前さえよければオレをお前の家に、その住まわせてくれないか?」
 「君をかい?なーんにも持ってない君をタダでかい?」
 「むぐっ。」

確かにその通りである、オレは金もなければ物もない。
さっきの帰還石が貴重とか言ってたからそれがあれば何とかなったのかもしれないが…。
そんなうんうん唸っているオレに霖之助がある提案をしてきた。

 「そこで提案があるんだが…。」
 「提案?」
 「妖精から聞いたんだが、確かに割ったのは妖精らしいな。」
 「む、聞いたのか…。」
 「しかし、妖精はこうも言っていた。君が大声を出したから手を滑らせ割ってしまったのだと。」
 「そ、それは…。」
 「そこで君にアレを弁償してもらいたい!」
 「オ、オレは金がないぞ!?」
 「知っているさ、だからその分君には働いてほしい。」
 「ちなみに、オレはアレの二割分くらい弁償すればいいのか?」
 「何言っているんだい?全額だよ?」
 「な、なんでだよ!?」
 「君はあんな子供の妖精に借金背負わせようというのかい?
  ああ、僕は君がそんな小さな男だとは思っても…。」
 「わかったよ!オレが全額払えばいいんだろう!?」
 「さすが僕の見こんだ男!!
  じゃあ、さっそく明日から働いてもらうよ!」

これも霖之助の優しさなんだろう。
結局オレは霖之助の家に居候することで話はまとまった。
そしてその帰り道、歩いて帰った。
つまらない事を話しつつ、今回の埋まりきった溝をさらに埋めるように話していた。
途中、会話が途切れた時言えなかったことをこそっと言った。

 「霖之助、やっぱりオレはお前のことが大好きだよ…。」
 「えっ!?今…もう一度言ってくれないか!?」

やべぇっ、聞こえていたか。
しかし、オレはまたもや最高の答えで逃げ切った。

 「バ、バカっ!今のは…口が滑ったんだ!」
                              

















































おまけ

そして居候することになったオレ。
今は香霖堂で留守番中、よく考えれば今までとやっていることは変わりない。
寝室もオレの希望あって別々である。
寝室一緒とか、恥ずかしくて眠れません。
…とそこへお客(?)が来る。

 「ちょっとー、この前発注した服だけどー。」
 「本日の営業は終了しました。」
 「ちょっとほつれている所があったんだけどどういうこと?」
 「聞いてるかい?」
 「とりあえずさっさと直してね。」
 「聞いてないな。」

ふぅ、このテの話は多くなったので裁縫も大分慣れた。
やってきた霊夢はちゃっちゃと店内にあった服に着替えて今まで来ていた巫女服をこっちによこす。
ここよ、と言われたところを見てみると確かにほつれているが…。
オレがこの前見た時は何ともなかったんだがな…。

 「これも例のツケなのか?」
 「当然じゃない?」
 「一体そのツケはどれだけあるんだ?」
 「それはもうかなりよ、だって私のおかげであなた今ここにいるんでしょ?」
 「それは、まあそうだけど…。」

霊夢とオレの言っているツケというのは前に霊夢が言っていた相談料である。
軽々しく霖之助にツケてくれなんて言ったもんだから、今やいいネタにされている。
オレがチクチクと裁縫をしていると霖之助も帰ってきた。

 「や、帰ったよ。」
 「おう、お帰り。」
 「お邪魔してるわ。」

霖之助は一瞬霊夢がいることに驚いたが、またかみたいな顔をするともう一つの椅子に腰かけた。

 「霊夢、やっぱりそれのお代は…?」
 「もちろんツケよ?」
 「すまん霖之助、オレのせいで…。」

謝るオレに笑いながら答える霖之助。

 「まあ、そのツケも君が今までにためたツケとは大きさが違うからな?」
 「ええそうね、ずいぶんと違うわね?」

おそらく霊夢は今まで自分がためたツケより、今回のツケの方が多いと思っているのだろう。

 「本当にすまん、霖之助。」
 「…まあ、しょうがないさ。」
 「怒らないのか?」

その問いに霖之助は笑顔で答えてくれた。

 「だって君は、僕の怒る顔は見たくないんだろう?」
 「霖之助、お前…。」

それを見ていた霊夢に言われてしまった。

 「バカップル…。」
                                     おわれ。
あとがき
霖之助かっこいいな…。
でも今回はオリキャラをメインにしすぎたなー。
でも最後の霖之助はかっこいいなー。

誤字指摘ありがとうございました。
フェイル
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コメント



0.330簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力削除
『霖之助』ですよ!
5.50名前が無い程度の能力削除
需要があるから作るんじゃない、作りたいから作るんですよね!
でも需要は謎w
8.10名前が無い程度の能力削除
自分の作品しか見えていない痛烈な独自設定になんの魅力も無いオリキャラ、
どんなに注意書きで誤魔化そうとしても駄作は駄作だということがよく解る作品でした。
9.60名前が無い程度の能力削除
ちょいとゴリ押しが過ぎるのではw
いや…新たな方向としてアリ……か?w
12.80名前が無い程度の能力削除
俺は楽しめたぜ!
13.20名前が無い程度の能力削除
じっくり読んでみたが
オリキャラと霖之助の感情が単純すぎる
話の流れが転々としすぎ

そして何より
霖之助のカッコよさが伝わってこない

誤字?報告
5行目
「お夫」ではなく「おおっと」ではないかと
14.90名前が無い程度の能力削除
この評価は真剣につけさせて貰いました。
内容は…多少…もとい、かなりカオスですがw

私は色んな意味で楽しむことが出来ました。
変に気取らないでさらりと読めるので、アリじゃないでしょうか。

ただし、原作を重視する人には厳しいかも知れません。

とはいえ、アリですw
面白かったですよ!
15.90名前が無い程度の能力削除
hahaha,霖之助に男を絡ませてみるというのも面白くってアリだな
色々感情の移行が単純な気もするけど、そのありがちの展開にむしろニヤニヤさせられた。男の意地の張り合いねぇ、いじらしいw

ところで、ここの注意書きって何か誤魔化しているのか?
俺にはむしろ明記しているように見えたんだが。
『オリキャラ出ますよ。苦手な人は回れ右』って

ブラウザの不具合は自己責任♪
16.10名前が無い程度の能力削除
ぶっちゃけ腐女子が増えてから霖之助二次創作は駄目になったような気がします
そのことがよくわかるいい作品でした
17.無評価名前が無い程度の能力削除
すっごくBLでした