カチ、カチと音が続く。続く。
蓄光塗料が塗られた長針が六十を一度数える間にカチリと動き、六十を数えている間に秒針、……短が時間で、長が分なのはわかるけど、秒を刻む針は、秒針でいいのかな。呼び方、わからないし。
……まあ、とりあえず。五十八回ぐらい回ったのだ。早過ぎたかな数えるの。
「珍しいわね、停電なんて」
横から感じる呼吸音とそんな言葉。
自分から生まれる呼吸音と無駄な熱量。
暑いんだもの、今日。そんな中でカロリーを消費して熱に変換するなんて無駄でしかないってね。
「たしかに。かなり久々」
「予備電力とかに切り替わらないのかしら」
「変わらないんじゃない?外もまっくらだし」
まあ、病院なんかは自家発電施設があるらしいし、今も明るいんだろうけど。
「……暑いわね」
「そりゃあ、夏だし。というか、くっつくな」
「だって暗いんだもの」
「蹴るわよ」
ああ、もう。シャツがベタベタする。というか肌が。
冷房も止まってるし、窓開けるかなぁ。
面倒だけど。
「ねえ」
「なに?」
「窓開けてきてよ」
「やぁよ。暗いもの」
お前は子供か。いや、まあ面倒だから人に頼む私も子供みたいなものだけど。
「大丈夫。もう少ししたら停電も直って、部屋も冷えるから」
「直らないに10マッカ」
「直るに100えすぴー」
「えすぴー?」
「古いゲームの通貨」
始めて聞いた。
「ハードディスク、何個お釈迦にしたか。あれ、読み取りが多いから」
「読み取り、ね」
む、むむ。わからない話を聞くのって意外ともやもやする。
「ゲームの魔法みたいに、窓が勝手に開いて、明かりもついて、そんな風にいけばいいのにね」
「今の人間じゃ、そんなの無理でしょ」
人間は、そんな不思議を遠くに置いてきたんだから。
そして、まだ残る不思議も横に追いやって、何も知らないフリをして生きている。結界に境界、その存在を知ってるのに、なにもしないのが一つの例だ。
「夢がないわね、ほんと」
「夢見る少女じゃいられないわけよ」
「まあ、そうね。確かに少女じゃないもの」
「……喧嘩なら買うけど?」
いや、やっぱり買わないけど。暑いのにそんなのやってられないし。
「シャワーでも浴びたら涼しくなるんじゃないかしら」
「給湯機、動かないから」
「水を浴びるとか」
「私に死ねと」
せめてぬるま湯じゃないと風邪引くから。それで単位がいろいろと。
「だらしなくなったわねぇ、人間も」
「やあ、人間」
「なにかしら、人間」
本当馬鹿みたいな会話。頭、暑さで飴になったのかも。
「ん、ほら。外見てみなさいよ」
「え?外?」
隣りの人間が指差した方へ向き直る。後ろから抱き付かれて胸を触られた。
簡単に肘を食らわせとく。ごつん。
「いひゃい……」
「自業自得。で、なによ?」
「いやね、ほら、電気」
「電気?」
改めて指の先――窓の方――を見る。
「ああ」
窓の外は、燦々と輝く、とはいかないけど、それなりに明かりがついていた。
「私の勝ちよ」
「そ、そうね」
後ろの声に応える。
ん。あれ?でも、
「なんで、この部屋はつかないんだろ、電気」
「え?」
がばりと、後ろのが起き上がる。そんな簡単に起き上がれるなら、窓開けてくれたらよかったのに。
「ちょっと待って。今試してみるから」
そう言うと、奴……、まどろっこしい、メリーは立ち上がって、スイッチの方へ向かって行った。
カチ、カチとボタンを押してるけど、一向に電気はつかない。部屋自体は涼しくなってるんだけど。
「……壊れたかしら」
「さあ?」
「さあって、蓮子」
「だって、メリーの部屋だもん。人事よ、実際問題」
私は暗くても寝れるし。暑いのが問題だっただけで。
「寝たら、起きた時には明るいわよ?きっと」
「明日から困るじゃないの……」
「明日っていうか今日だけどね」
まあ、いいや。今のうちに寝よう。マッカの手に入れ方もわからないし。
「おやすみ、メリー」
「ちょっと蓮子、寝な、寝るなー!」
「すやすや」
「どこに、寝息を口に出す人がいるのよ、馬鹿ぁ!」
おやすみなさい。
暗い時には寝るに限る。えっと今が二時だから、六時間は寝れるかな。
蓄光塗料が塗られた長針が六十を一度数える間にカチリと動き、六十を数えている間に秒針、……短が時間で、長が分なのはわかるけど、秒を刻む針は、秒針でいいのかな。呼び方、わからないし。
……まあ、とりあえず。五十八回ぐらい回ったのだ。早過ぎたかな数えるの。
「珍しいわね、停電なんて」
横から感じる呼吸音とそんな言葉。
自分から生まれる呼吸音と無駄な熱量。
暑いんだもの、今日。そんな中でカロリーを消費して熱に変換するなんて無駄でしかないってね。
「たしかに。かなり久々」
「予備電力とかに切り替わらないのかしら」
「変わらないんじゃない?外もまっくらだし」
まあ、病院なんかは自家発電施設があるらしいし、今も明るいんだろうけど。
「……暑いわね」
「そりゃあ、夏だし。というか、くっつくな」
「だって暗いんだもの」
「蹴るわよ」
ああ、もう。シャツがベタベタする。というか肌が。
冷房も止まってるし、窓開けるかなぁ。
面倒だけど。
「ねえ」
「なに?」
「窓開けてきてよ」
「やぁよ。暗いもの」
お前は子供か。いや、まあ面倒だから人に頼む私も子供みたいなものだけど。
「大丈夫。もう少ししたら停電も直って、部屋も冷えるから」
「直らないに10マッカ」
「直るに100えすぴー」
「えすぴー?」
「古いゲームの通貨」
始めて聞いた。
「ハードディスク、何個お釈迦にしたか。あれ、読み取りが多いから」
「読み取り、ね」
む、むむ。わからない話を聞くのって意外ともやもやする。
「ゲームの魔法みたいに、窓が勝手に開いて、明かりもついて、そんな風にいけばいいのにね」
「今の人間じゃ、そんなの無理でしょ」
人間は、そんな不思議を遠くに置いてきたんだから。
そして、まだ残る不思議も横に追いやって、何も知らないフリをして生きている。結界に境界、その存在を知ってるのに、なにもしないのが一つの例だ。
「夢がないわね、ほんと」
「夢見る少女じゃいられないわけよ」
「まあ、そうね。確かに少女じゃないもの」
「……喧嘩なら買うけど?」
いや、やっぱり買わないけど。暑いのにそんなのやってられないし。
「シャワーでも浴びたら涼しくなるんじゃないかしら」
「給湯機、動かないから」
「水を浴びるとか」
「私に死ねと」
せめてぬるま湯じゃないと風邪引くから。それで単位がいろいろと。
「だらしなくなったわねぇ、人間も」
「やあ、人間」
「なにかしら、人間」
本当馬鹿みたいな会話。頭、暑さで飴になったのかも。
「ん、ほら。外見てみなさいよ」
「え?外?」
隣りの人間が指差した方へ向き直る。後ろから抱き付かれて胸を触られた。
簡単に肘を食らわせとく。ごつん。
「いひゃい……」
「自業自得。で、なによ?」
「いやね、ほら、電気」
「電気?」
改めて指の先――窓の方――を見る。
「ああ」
窓の外は、燦々と輝く、とはいかないけど、それなりに明かりがついていた。
「私の勝ちよ」
「そ、そうね」
後ろの声に応える。
ん。あれ?でも、
「なんで、この部屋はつかないんだろ、電気」
「え?」
がばりと、後ろのが起き上がる。そんな簡単に起き上がれるなら、窓開けてくれたらよかったのに。
「ちょっと待って。今試してみるから」
そう言うと、奴……、まどろっこしい、メリーは立ち上がって、スイッチの方へ向かって行った。
カチ、カチとボタンを押してるけど、一向に電気はつかない。部屋自体は涼しくなってるんだけど。
「……壊れたかしら」
「さあ?」
「さあって、蓮子」
「だって、メリーの部屋だもん。人事よ、実際問題」
私は暗くても寝れるし。暑いのが問題だっただけで。
「寝たら、起きた時には明るいわよ?きっと」
「明日から困るじゃないの……」
「明日っていうか今日だけどね」
まあ、いいや。今のうちに寝よう。マッカの手に入れ方もわからないし。
「おやすみ、メリー」
「ちょっと蓮子、寝な、寝るなー!」
「すやすや」
「どこに、寝息を口に出す人がいるのよ、馬鹿ぁ!」
おやすみなさい。
暗い時には寝るに限る。えっと今が二時だから、六時間は寝れるかな。
蓮子はぺったんだから触ってもうわきさまなにをするやめ……
いい距離でべたついてる二人はなんと楽しそうなんだろう
非常によい日常でした
日常の話は好きだけど何故かキリが悪い気もしたのでこの点数で