Coolier - 新生・東方創想話

雨降りの日に

2009/09/11 20:05:59
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 稗田阿求は、縁側で横になっていた。
 ぱた、ぱた、と地面が濡れ出し、数秒も置かず、本降りになるのを眺めている。
「なんともまぁ、憂鬱な雲行きで」
 足元には猫布団。数匹が寄り掛かり、乗り、爪先から膝下までを隠している。すぅぴぃ、すぅぴぃ、という寝息が聞こえてくる様。
「一枚」
「はいよ」
 阿求が口を開けると、そこに一枚のビスケットが突き出された。片面には、ざらりとした砂糖が振られている。
 サク。サク。サク。
「……湿気る前に食べるんだった」
「湿気っててもおいしいけど」
 頭の上からも、サク、サクとビスケットを食む音が聞こえた。一口、一口毎に阿求の頭の下が震え、柔く絹が撫でる。
「あっつくないの?そいつら」
「……まあ、少し」
 ちりぃんと鳴る風鈴、体を一直線に伸ばしてから起き上がる白毛の子猫、ざぁぁと降り続ける雨、さらりと、軽く阿求の髪を撫でる、手。
「こりゃあ、夜は出せないなぁ」
「おやすみですか」
「おやすみですよ。屋台だし、まあ仕方がないけどね」
 くあぁ、と白と黒の斑模様が欠伸をする。それに呼応するかの様に、一段と雨脚が強まった。
「……いや、こりゃあ明日もかな。困るなぁ、仕入れとか」
「お金に困ってるわけでもないんですし、もう少し気楽にやればいいのに」
「まあ、ね。食べ物だって、そこらから人さらえばいいんだし」
「ここ数年は食べてない人が何を言うやら」
 くつ、と喉を震わせ笑う。
「そりゃあね。お客さんとか食べたら、次来なくなるし」
「まあ、確かにお代に命を取られたら大変ですけど」
「お客さん、そろそろ店終いですさぁ」
「お代はいくらだい?」
「お客さんの右腕一本になりますさぁ」
「ぽきり」
 阿求が擬音を言い終えると、少しの間が開いた後、笑い声が二人分になった。
「いやいや、本当に怖いですね、それ」
「お客の方が怖いって。ぽきり、って差し出してるじゃん、腕」
「実は凄い筋肉質な方で、鉄串をぽきりと」
「もっと怖いって」
 みゃん、と声。
 何匹かが立上がり、頭を振り、毛並みを調え、とと、と歩いて行く。
「ん」
「ああ」
「暗いですね、よく見たら」
「慣れちゃってたのかな、目が」
 縁側の端などは、もう既に見ることが出来ない程影が浮いていた。とは言っても、阿求から見て見えない、ではあるが。
 そう思えば風が冷たくなった、などと考えながら、体を起こして阿求は薄く笑った。
 彼女のすぐ横には、膝枕の主がいる。
「おはようございます、ミスティア」
「おはよ、阿求。もう夜になるよ」
「あなたに食べられない様気をつけないと」
 阿求の言葉のためか、ミスティア――膝枕の主――は阿求の右手を取って、ぱくりと口につけた。
「こんな風に?」
「そんな風に」
「――寒くなってきた」
「ですね」
 はむはむと、右手を甘噛みしながら、されながらの会話が続く。
 にゃん、とどれかが一鳴きした。
「部屋、入りましょうか」
「だね」
 ちん、と一鳴き。腕を天井へ上げ、背を伸ばし、よいしょと立ち上がる。
「ほら。手」
「ありがとう」
「はいはい、どういたしまして」
 二人、立ち上がると微かに魚の匂いがした。
 雨の匂いは、未だ強くなるばかりだ。
「夏も、そろそろ終わりますか」
「まだまだ続くかと思ったけどね」
 代わりに、草木の燃える様な、萌ゆる様な、つんとした匂いは成りを潜めている。
「いきましょうか、まずはご飯でも食べに」
 背の方にあった襖を開き、
「馬みたいに肥らない様にしないと」
 カタン、と閉まった。


 雨はまだ降り続けている。
「――にゃあん」
 猫が鳴く。
 その声も雨に隠れ、
「みすちー!お客さん待ってるよー!」
「えー!?」
 代わりに、他の音が顔を出した。
 雨はまだ降り続けている。
 夜も、まだ終わりが見えない。
梅雨の頃に書き始めたはず
その名残が少々あるようなないような
まあ、そんな話
◆ilkT4kpmRM
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コメント



0.280簡易評価
3.90名前が無い程度の能力削除
あきゅ…ミス…だと…?

猫布団いいなぁ…
6.90名前が無い程度の能力削除
なんかいい雰囲気の作品だw

ちょっとどっちが膝枕をしてるのかがわかりづらかったのが玉に瑕
それでもこの作品は他にも読みたいなぁ……
あきゅミスとは非常に斬新だ
どっちも好きなだけに、本当にごちそうさまでした