私は自他共に認める和食派である。
朝食には白いご飯が欠かせないし、生まれてから今までに食べたパンの枚数を数えたら、両手両足の指で足りるほどだ。
しかしそんな私もときには、洋食が恋しくなることがある。
割合で言うと、週に三回くらいである。
え?
それは結構多いんじゃないかって?
いやいや。
考えてみてほしい。
一日三食が一週間で、計二十一食。
そのうち三食が洋食だとしても、たった七分の一の割合でしかない。
そう考えると、これは十分に少ない割合といえるだろう。いえるよね。
そして、その七分の一に、今日の夕食があたったわけなのだが。
ここで、大きな問題が私の前に立ちはだかる。
上に述べたとおり、私は和食派である。
したがって私は、洋食用の食材は常備していない。
だから、今日のようにふと洋食を食べたくなっても、私は自分で洋食を作ることができない。
では、どうすればいいのか。
答えは一つ。
家の外に食べに行くしかない。
では、どこへ行くのか。
ここで、候補地が四つほど挙げられる。
つまり私はこの中から、『洋食を食べたい』という欲求を充足するに相応しい訪問先を選択する必要があるということだ。
なお、その際に充足されるべき条件は四つある。
まずは、①洋食が食べられること。
これは当然の前提条件である。
次に、②その洋食が美味しいこと。
これも当然の条件である。
好んで不味いものを食べたい奴なんていない。
そして、③安いこと。
対価は安いに越したことはない。
言わずもがな、ただであれば最高である。
最後に、④すぐに行けること。
まあ私のスピードなら場所がどこであろうとさほど問題にはならないのだが、流石に幻想郷最果てとかは困るので、一応付加的な条件として挙げておく。
以上、条件①~④を充足するか否かを基準として、以下に挙げる四つの候補地のうち、最適なものを選択したいと思う。
一、人間の里
純粋に目的達成という観点から評価した場合、最も確実に目的を達成しうる候補地である。
ここには、洋食の専門店はないものの、洋食も提供している定食屋ならいくつかある。
つまりここへ行けば、確実に洋食が食べられる。
よって、条件①はクリア。
さらに、商売としてやっているだけあって、味も保証されている。
したがって、条件②もクリア。
しかし、次の条件③が問題になる。
どの店も商売として飲食物を提供しているのであるから、当然ながら有償であり、それ相応の対価を支払うことを余儀なくされる。
だがもし仮に、もっと安く――究極的には、ただで――食べることのできる場所が他にあるならば、それに越したことはない。
というわけで、この候補地は一旦保留とし、先に残りの候補地を検討することにしたい。
二、博麗神社
私が最もよく訪れる場所のひとつである。
だが残念ながら、今回の目的にはそぐわない。
なぜなら、この神社に住まう巫女は私以上の和食派であり、洋食など、それこそ吸血鬼の館の立食パーティーに招かれでもしない限り、口にすることがないからだ。
したがって、そもそも条件①を満たさないため、今回の訪問先としては断念せざるをえない。
三、紅魔館
上で少し触れた吸血鬼の館である。
ここは上の神社とは真逆で、主の吸血鬼が思い切り洋風なので、出てくる食事も当然洋食である。
とすれば、少なくとも条件①は充足するようにも思える。
しかし悲しきかな、この館に住まう人妖は、皆一様に私に対して冷徹なのだ。
まず門をくぐることすら容易ではなく、門より先に進みたければ、門番の妖怪と一戦交えなければならない。
なんとか門を突破して館内に入り込んでも、今度は怖い顔をした銀髪メイドがナイフを投げつけてくる。
さらに最悪、妹の方の吸血鬼にでも鉢合わせようものなら、命懸けの弾幕勝負に尽力せざるをえなくなる。
こんな館である。
私に洋食を振る舞ってくれる可能性など、皆無である。
というわけで、結局ここも条件①を満たさず、不適。
四、人形遣いの家
そして最後の候補地がここである。
まず、ここに住む人形遣いは生粋の洋食派である。
そして、彼女は一見クールに見えるが、その実すごく優し……もとい、お人好しな性格をしているので、そうしょっちゅうでなければ、つまり週三回程度なら、ただで料理を振る舞ってくれる。
この時点で、条件①及び③を同時に充足する。
さらに、彼女の作る料理はなかなか美味でもある。
よって、条件②もクリア。
さらに、彼女の家があるのは魔法の森。
つまり私の家のすぐ近く。
私のスピードで飛べば、五分もせずに着くことができる。
ということで、条件④も満たす。
おお。
こうして見事に、全ての条件を満たす訪問先が見つかった。
したがって、今日のように、私が洋食を食べたくなったときには、この人形遣いの家に行くのが最も合理的な選択といえる。
ちなみに、私と彼女は、いわゆる『犬猿の仲』として知られているが、今はそれも瑣末な問題に過ぎない。
敵に塩を送ることもあれば、自ら頂戴しに行くことだってある。
私だって、アリス……あ、いや、その人形遣いに、和食をご馳走したりするし。
だから別に、何らおかしなことではないのだ。ないよね。
……とにかくそういうわけで、私は人形遣いの家にやってきた。
一応断っておくが、決して、私がその人形遣いに会いたいからだとか、あるいは人形遣いの手料理が食べたいからだとか、そういう理由ではない。
あくまでも、上の検討の結果、全ての条件を満たす場所がここだったというだけの話である。
それだけの話である。
ゆめゆめ、誤解しないで頂きたい。
さて。
私は早速ドアの前に立ち、勢いよくノックをする。
あの人形遣いは人形作りとかの作業に没頭していることが多く、小さなノックじゃ気が付かないことがあるからだ。
決して、少しでも早く人形遣いに出迎えに来てもらいたいからとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
「アリスー。アリスー」
ノックをした後、今度は人形遣いの名前を大きめの声で呼ぶ。
これも上と同じ理由だ。
決して、来客が私であることに早く気付いて欲しいからとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
それから、私が彼女をファーストネームで呼ぶのは、単にファミリーネームだと舌を噛みそうになるからだ。
決して、彼女のファーストネームを呼ぶと、自分の名前と語呂が似ているということを実感できて嬉しくなるからとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
間もなくガチャリとドアが開き、人形遣いが顔を見せた。
相変わらず可愛……じゃなくて、えっと、ま……まあいいや。
「あら、また来たの」
私を見るなり、少し呆れたような口調で彼女は言った。
……これにはさしもの私もちょっとムッとしたので、そのままムッとした表情を作ってやる。
これは正当な抗議の意思表示だ。
別に拗ねてるとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
「もう、そんな顔しないの」
彼女はそう言って微笑むと、私の頭に手を乗せてきた。
身長差を巧みに利用した攻撃だ。
流石は魔女。
実に狡猾である。
あ、べ、別に嬉しいとかそういうことはない。ないから。
「よしよし」
あ、頭を撫でるな。
こいつはなんで、こう、いつもいつも。
「ふふ。可愛い」
だ……だからそういうことをさらっというなばか。
せっかく論理的な思考をかさねてきたのにあーきもちい……。
「喉もごろごろしてあげる」
こ、こら。
なに、やって。
「ごろごろ。ふふ、気持ちいい?」
こ、この。
ひとを、ねこみたいに。
うあ。
あ。
…。
「……で、今日は何の用で来たのかしら?」
「……え?」
なんかどっかに飛びかけてた意識を引き戻すと、人形遣いの青い瞳が、私をじっと見下ろしていた。
いつのまにか、私の頭と喉を蹂躙していた手も離れていた。
ちぇ。
……って、私は何を惜しがっているんだ。
私は別に、こんなことをされるために来たんじゃない。
……あれ?
じゃあ何しに来たんだっけ。
……えっと。
ああ、そうだ。
思い出した。
「ご」
「ご?」
「ご……ごはん」
「ごはん?」
私はこくりと頷く。
そうだ、そのために来たのだ私は。
「ごはんが、何?」
うっ……。
やっぱり、この人形遣いはいじわるだ。
もう分かっているくせに、あくまで私に言わせようとする。
「ねえ。ごはんがどうしたっていうの」
「…………」
……仕方が無い。
背に腹は代えられない。
「ご、ごはん、……つくって」
「…………」
私が羞恥心を押し殺して言ったのに、なぜだかこの人形遣いは何も言わない。
じっと、透き通るような瞳で私の顔を凝視してくるだけ。
人をなめるのもいい加減に……って、あ、ま、また喉を……。
「ふふ。ごろごろ」
や、やめれ。
わたしはねこじゃないといっとろう。
「ほれほれ。ごろごろ」
「にゃ、にゃん……」
わ、わたしはなにをくちばしってるんだ。
そ、そうか。
これが、まじょののろいというやつか。
このさかしいまじょののろいによってわたしはしんしんともにねこに。
「魔理沙」
「……ふにゃ?」
なんか、なまえをよばれたようなきがする。
でも、のどのごろごろがきもちよすぎて、しこうがおいつかない。
「何が食べたいの?」
「…………?」
「ごろごろ」
「…………ぁう」
……このまじょは、いま、なんていったんだろう?
いかん、ねこになるのろいのせいで、もはやじんごがりかいできなくなっている。
「だから、何が食べたいの、って」
「なにが……?」
ああ、そっか。
わたしは、ようしょくがたべたくて、ここにきたんだった。
えっと。
じゃあ。
いまだにのどをごろごろしてくるゆびさきのかんしょくを、なんとかいしきからとおざけて。
わたしはひっしに、いまじぶんがたべたいりょうりをおもいうかべる。
「お、おむらいす……」
もうろうとするいしきのなか、わたしはなんとかおもいついたりょうりのなまえをくちにした。
するとこのいまわしきまじょは、くすくすとわらった。
「……オムライス、ねぇ。相変わらず、お子様なんだから」
う、うるさい。
おまえが、おまえが。
こうやって、わたしののどをごろごろするからだろうが。
「いいわよ、作ってあげる。ふふ。ごろごろ」
「うー……」
もう、だめだ。
わたしは、まじょの、のろいに。
「……さて。じゃあそろそろ、おうち入りましょうか」
「…………」
ようやくまじょはわたしののどもとからてをはなし、わたしにせをむけた。
ああ。
どうやらわたしは、かんぜんに、まじょののろいにやられてしまったみたいだ。
だから、いまからすることは、きっとこののろいのせいだ。
そういうことに、しておいてください。
「…………」
「え?」
つぎのしゅんかん、わたしは、うしろからまじょのこしにりょうてをまわし、ぎゅっとしがみついていた。
さすがのまじょも、きょとんとしているもよう。
「魔理沙」
「…………」
まじょになまえをよばれるだけで、あたまがいっそうぼうっとする。
わたしは、りょうてにちからをこめて、もっとつよく、ぎゅっとする。
もう、どうにでもなれ。
「……もう。困った子」
「…………」
ためいきをついて、まじょがわたしのあたまをなでる。
いつくしむように、やさしく。
わたしはそのかんしょくをたのしみながら、まるでねこのようにめをほそめる。
「ふふ。可愛い。魔理沙。可愛い」
「…………にゃあ」
ああ。
もはやわたしにゆるされるのは、ねこのようになくことだけ。
「ほら。ごろごろ」
「……にゃああ」
ああ。
まじょののろいは、ほんとうにおそろしい。
にゃん。
了
朝食には白いご飯が欠かせないし、生まれてから今までに食べたパンの枚数を数えたら、両手両足の指で足りるほどだ。
しかしそんな私もときには、洋食が恋しくなることがある。
割合で言うと、週に三回くらいである。
え?
それは結構多いんじゃないかって?
いやいや。
考えてみてほしい。
一日三食が一週間で、計二十一食。
そのうち三食が洋食だとしても、たった七分の一の割合でしかない。
そう考えると、これは十分に少ない割合といえるだろう。いえるよね。
そして、その七分の一に、今日の夕食があたったわけなのだが。
ここで、大きな問題が私の前に立ちはだかる。
上に述べたとおり、私は和食派である。
したがって私は、洋食用の食材は常備していない。
だから、今日のようにふと洋食を食べたくなっても、私は自分で洋食を作ることができない。
では、どうすればいいのか。
答えは一つ。
家の外に食べに行くしかない。
では、どこへ行くのか。
ここで、候補地が四つほど挙げられる。
つまり私はこの中から、『洋食を食べたい』という欲求を充足するに相応しい訪問先を選択する必要があるということだ。
なお、その際に充足されるべき条件は四つある。
まずは、①洋食が食べられること。
これは当然の前提条件である。
次に、②その洋食が美味しいこと。
これも当然の条件である。
好んで不味いものを食べたい奴なんていない。
そして、③安いこと。
対価は安いに越したことはない。
言わずもがな、ただであれば最高である。
最後に、④すぐに行けること。
まあ私のスピードなら場所がどこであろうとさほど問題にはならないのだが、流石に幻想郷最果てとかは困るので、一応付加的な条件として挙げておく。
以上、条件①~④を充足するか否かを基準として、以下に挙げる四つの候補地のうち、最適なものを選択したいと思う。
一、人間の里
純粋に目的達成という観点から評価した場合、最も確実に目的を達成しうる候補地である。
ここには、洋食の専門店はないものの、洋食も提供している定食屋ならいくつかある。
つまりここへ行けば、確実に洋食が食べられる。
よって、条件①はクリア。
さらに、商売としてやっているだけあって、味も保証されている。
したがって、条件②もクリア。
しかし、次の条件③が問題になる。
どの店も商売として飲食物を提供しているのであるから、当然ながら有償であり、それ相応の対価を支払うことを余儀なくされる。
だがもし仮に、もっと安く――究極的には、ただで――食べることのできる場所が他にあるならば、それに越したことはない。
というわけで、この候補地は一旦保留とし、先に残りの候補地を検討することにしたい。
二、博麗神社
私が最もよく訪れる場所のひとつである。
だが残念ながら、今回の目的にはそぐわない。
なぜなら、この神社に住まう巫女は私以上の和食派であり、洋食など、それこそ吸血鬼の館の立食パーティーに招かれでもしない限り、口にすることがないからだ。
したがって、そもそも条件①を満たさないため、今回の訪問先としては断念せざるをえない。
三、紅魔館
上で少し触れた吸血鬼の館である。
ここは上の神社とは真逆で、主の吸血鬼が思い切り洋風なので、出てくる食事も当然洋食である。
とすれば、少なくとも条件①は充足するようにも思える。
しかし悲しきかな、この館に住まう人妖は、皆一様に私に対して冷徹なのだ。
まず門をくぐることすら容易ではなく、門より先に進みたければ、門番の妖怪と一戦交えなければならない。
なんとか門を突破して館内に入り込んでも、今度は怖い顔をした銀髪メイドがナイフを投げつけてくる。
さらに最悪、妹の方の吸血鬼にでも鉢合わせようものなら、命懸けの弾幕勝負に尽力せざるをえなくなる。
こんな館である。
私に洋食を振る舞ってくれる可能性など、皆無である。
というわけで、結局ここも条件①を満たさず、不適。
四、人形遣いの家
そして最後の候補地がここである。
まず、ここに住む人形遣いは生粋の洋食派である。
そして、彼女は一見クールに見えるが、その実すごく優し……もとい、お人好しな性格をしているので、そうしょっちゅうでなければ、つまり週三回程度なら、ただで料理を振る舞ってくれる。
この時点で、条件①及び③を同時に充足する。
さらに、彼女の作る料理はなかなか美味でもある。
よって、条件②もクリア。
さらに、彼女の家があるのは魔法の森。
つまり私の家のすぐ近く。
私のスピードで飛べば、五分もせずに着くことができる。
ということで、条件④も満たす。
おお。
こうして見事に、全ての条件を満たす訪問先が見つかった。
したがって、今日のように、私が洋食を食べたくなったときには、この人形遣いの家に行くのが最も合理的な選択といえる。
ちなみに、私と彼女は、いわゆる『犬猿の仲』として知られているが、今はそれも瑣末な問題に過ぎない。
敵に塩を送ることもあれば、自ら頂戴しに行くことだってある。
私だって、アリス……あ、いや、その人形遣いに、和食をご馳走したりするし。
だから別に、何らおかしなことではないのだ。ないよね。
……とにかくそういうわけで、私は人形遣いの家にやってきた。
一応断っておくが、決して、私がその人形遣いに会いたいからだとか、あるいは人形遣いの手料理が食べたいからだとか、そういう理由ではない。
あくまでも、上の検討の結果、全ての条件を満たす場所がここだったというだけの話である。
それだけの話である。
ゆめゆめ、誤解しないで頂きたい。
さて。
私は早速ドアの前に立ち、勢いよくノックをする。
あの人形遣いは人形作りとかの作業に没頭していることが多く、小さなノックじゃ気が付かないことがあるからだ。
決して、少しでも早く人形遣いに出迎えに来てもらいたいからとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
「アリスー。アリスー」
ノックをした後、今度は人形遣いの名前を大きめの声で呼ぶ。
これも上と同じ理由だ。
決して、来客が私であることに早く気付いて欲しいからとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
それから、私が彼女をファーストネームで呼ぶのは、単にファミリーネームだと舌を噛みそうになるからだ。
決して、彼女のファーストネームを呼ぶと、自分の名前と語呂が似ているということを実感できて嬉しくなるからとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
間もなくガチャリとドアが開き、人形遣いが顔を見せた。
相変わらず可愛……じゃなくて、えっと、ま……まあいいや。
「あら、また来たの」
私を見るなり、少し呆れたような口調で彼女は言った。
……これにはさしもの私もちょっとムッとしたので、そのままムッとした表情を作ってやる。
これは正当な抗議の意思表示だ。
別に拗ねてるとかじゃない。
誤解しないで頂きたい。
「もう、そんな顔しないの」
彼女はそう言って微笑むと、私の頭に手を乗せてきた。
身長差を巧みに利用した攻撃だ。
流石は魔女。
実に狡猾である。
あ、べ、別に嬉しいとかそういうことはない。ないから。
「よしよし」
あ、頭を撫でるな。
こいつはなんで、こう、いつもいつも。
「ふふ。可愛い」
だ……だからそういうことをさらっというなばか。
せっかく論理的な思考をかさねてきたのにあーきもちい……。
「喉もごろごろしてあげる」
こ、こら。
なに、やって。
「ごろごろ。ふふ、気持ちいい?」
こ、この。
ひとを、ねこみたいに。
うあ。
あ。
…。
「……で、今日は何の用で来たのかしら?」
「……え?」
なんかどっかに飛びかけてた意識を引き戻すと、人形遣いの青い瞳が、私をじっと見下ろしていた。
いつのまにか、私の頭と喉を蹂躙していた手も離れていた。
ちぇ。
……って、私は何を惜しがっているんだ。
私は別に、こんなことをされるために来たんじゃない。
……あれ?
じゃあ何しに来たんだっけ。
……えっと。
ああ、そうだ。
思い出した。
「ご」
「ご?」
「ご……ごはん」
「ごはん?」
私はこくりと頷く。
そうだ、そのために来たのだ私は。
「ごはんが、何?」
うっ……。
やっぱり、この人形遣いはいじわるだ。
もう分かっているくせに、あくまで私に言わせようとする。
「ねえ。ごはんがどうしたっていうの」
「…………」
……仕方が無い。
背に腹は代えられない。
「ご、ごはん、……つくって」
「…………」
私が羞恥心を押し殺して言ったのに、なぜだかこの人形遣いは何も言わない。
じっと、透き通るような瞳で私の顔を凝視してくるだけ。
人をなめるのもいい加減に……って、あ、ま、また喉を……。
「ふふ。ごろごろ」
や、やめれ。
わたしはねこじゃないといっとろう。
「ほれほれ。ごろごろ」
「にゃ、にゃん……」
わ、わたしはなにをくちばしってるんだ。
そ、そうか。
これが、まじょののろいというやつか。
このさかしいまじょののろいによってわたしはしんしんともにねこに。
「魔理沙」
「……ふにゃ?」
なんか、なまえをよばれたようなきがする。
でも、のどのごろごろがきもちよすぎて、しこうがおいつかない。
「何が食べたいの?」
「…………?」
「ごろごろ」
「…………ぁう」
……このまじょは、いま、なんていったんだろう?
いかん、ねこになるのろいのせいで、もはやじんごがりかいできなくなっている。
「だから、何が食べたいの、って」
「なにが……?」
ああ、そっか。
わたしは、ようしょくがたべたくて、ここにきたんだった。
えっと。
じゃあ。
いまだにのどをごろごろしてくるゆびさきのかんしょくを、なんとかいしきからとおざけて。
わたしはひっしに、いまじぶんがたべたいりょうりをおもいうかべる。
「お、おむらいす……」
もうろうとするいしきのなか、わたしはなんとかおもいついたりょうりのなまえをくちにした。
するとこのいまわしきまじょは、くすくすとわらった。
「……オムライス、ねぇ。相変わらず、お子様なんだから」
う、うるさい。
おまえが、おまえが。
こうやって、わたしののどをごろごろするからだろうが。
「いいわよ、作ってあげる。ふふ。ごろごろ」
「うー……」
もう、だめだ。
わたしは、まじょの、のろいに。
「……さて。じゃあそろそろ、おうち入りましょうか」
「…………」
ようやくまじょはわたしののどもとからてをはなし、わたしにせをむけた。
ああ。
どうやらわたしは、かんぜんに、まじょののろいにやられてしまったみたいだ。
だから、いまからすることは、きっとこののろいのせいだ。
そういうことに、しておいてください。
「…………」
「え?」
つぎのしゅんかん、わたしは、うしろからまじょのこしにりょうてをまわし、ぎゅっとしがみついていた。
さすがのまじょも、きょとんとしているもよう。
「魔理沙」
「…………」
まじょになまえをよばれるだけで、あたまがいっそうぼうっとする。
わたしは、りょうてにちからをこめて、もっとつよく、ぎゅっとする。
もう、どうにでもなれ。
「……もう。困った子」
「…………」
ためいきをついて、まじょがわたしのあたまをなでる。
いつくしむように、やさしく。
わたしはそのかんしょくをたのしみながら、まるでねこのようにめをほそめる。
「ふふ。可愛い。魔理沙。可愛い」
「…………にゃあ」
ああ。
もはやわたしにゆるされるのは、ねこのようになくことだけ。
「ほら。ごろごろ」
「……にゃああ」
ああ。
まじょののろいは、ほんとうにおそろしい。
にゃん。
了
ゴロゴロ~
可愛い魔理沙、ごちになりました。
にゃんにゃん。
「にゃん」と鳴く魔理沙の可愛い姿や二人の作り出す雰囲気など面白いお話でした。
けっして魔理沙が猫可愛くってぬこ可愛くってぬっこぬこにされた訳ではない
誤解しないで頂きたい。
100点入ってるのは押し間違えたからだ。そこは勘違いしないでもらいたい!
しかし俺得と知りながら突き進んだ、その心意気は評価したい。
けっして魔理沙が可愛かったとか、そういう理由ではない。
誤解しないで頂きたい。
アリスのSっぷりも相変わらず良かったw
いいぞ、もっとやれーww
決して1000点与えたくてもそんな点数がないからがっくり肩を落としているとかそういうことではない。
誤解しないで頂きたい。
大丈夫。私も得してますw
○○よね。
が可愛すぎる。
誰得?我得!
寝る前だってのにテンション上がっちまいましたよ、どうしてくれるんですかww
これは『でれねこ』ではないのだろうか? と。
まあ、美味しかったのでこの点数で。
今回も最高でした
決して
『ねこになっちゃった魔理沙さんが可愛らし過ぎてお持ち帰りしたくなった』
とか
『とうとう私も墜ちたか…………OK素直に行こう、魔理沙さんは可愛い』
などという考えから満点を献上致した訳では一切御座らん。
誤解無き様に申し上げ候。
今転がり回ってるのはプロレスの練習である。
決して猫魔理沙のかわいさにやられたわけじゃない。
誤解しないで頂きたい。
誤解しないでいただきたい。ご、誤解しないでよねっ
ツンネコ様が御光臨なさっ……あれ?
これ……ツン?
で……デレてなんかないんだからねっ!
決して魔理沙が可愛すぎて画面が直視できない訳じゃない。
誤解しないで頂きたい。
私はアリマリが大好物であるだけであって、この作品に悶えて悶えて悶え尽くした結果この点数を入れたという訳ではない。
飽くまでもアリマリが好きだからなのであって、別にこの作品に思い切り肩入れしている訳ではないのだ。
ゆめゆめ、誤解しないで頂きたい。
まったくこの程度のありきたりな話に100点入れるとは皆どうかしてるぜ
まじ ょ こあい
無糖コーヒーでも押さえきれないこの甘さ。
嗚呼猫じゃらしが欲しい。
気がついたら魔理沙がアリスの嫁になっていた
決してアリスに甘える魔理沙の可愛らしさに久々に「萌え」マインドを思い出したからじゃあない。
誤解しないで頂きたい。
皆得である。
ゆめゆめ誤解の無きよう……
うわあああああああああああ!!!!
誤解しないで頂きたい。
ただ週に3回の洋食を
結局3回共アリスにご馳走になってその度に
こんなやりとりをしているのを
想像して震えてしまっただけだ。
決してあなたの作品が面白かったからではない。
要約(あなたの作品大好きです…)