※星蓮船の5ボスの人が出てきます。
とかく、ご主人は物をよく失くす人だった。
信じられないようなものを簡単に失くしては、困り切った顔で相談しに来る。何度注意したところで変わらない。それもすぐ目の前にあるものを見つけられないでいるのならともかく、予想の斜め上をいく場所に探し物があったりするからたまらない。
要するに、ご主人はとてつもないうっかりやだった。
他人にそのことを吹聴すれば、『そんな馬鹿な』と返されるだろうが、自分だけは知っている。人前では澄まして取り繕っているだけなのだ。
そして、後からこっそり自分のところに来て言うのである。
『ナズーリン、困りました』
と、今にも泣き出しそうな顔で。
『はいはい、今度は何ですか、ご主人様』
いい加減こちらも慣れてしまって、呆れるのを隠すこともしなくなった。失せ物を見つけて来た後、ついつい小言のひとつやふたつも言いたくなってしまう。
彼女はいつも『すみません……本当に』と縮こまって頭を下げる。お目付役の自分に。
全く、威厳も何もあったものではない。
自分の代理が鼠のダウザーに説教されているのを見たら、毘沙門天は卒倒するかもしれない。
――いや、案外毘沙門天も、彼女がこんなタイプだと知っているからこそ、ダウザーの自分をお目付役に指名したのだろうか。最近、そう思うようになった。
ともかく、現状を端的にまとめれば。
ナズーリンはいつものように、ご主人――寅丸星の失せ物を探していた。
『……袋、です』
何を失くしたのか、と問うた自分に、星は躊躇いがちにそう答えた。
『星柄の、小さな布袋です』
また教典でも失くしたのかと思っていたので、少々意外に思って自分は問い返した。
『中身は何です? 毘沙門天からの預かり物ですか?』
とかく、星は大事なものをすぐに失くす。毘沙門天の代理としていろいろなものを預かっている身の上でありながら、その預かり物の中で今までに星が失くしたことの無いものの方が少ないぐらいだ。そしてそのほとんどを見つけたのはナズーリンである。
だから今回も、その類のものだと思ったのだが。
『それは……ちょっと、言えません』
こんな風に星が言葉を濁すのも珍しいことだったので、ナズーリンは眉を寄せた。
『……まあいいですが。じゃあ、大きさは』
『小さいです。私の手の大きさぐらいの』
手のひらをこちらに向けて星は言う。
『解りました。中身が解らないんだと少し時間がかかるかもしれませんけど』
『どのくらいでしょう?』
『ご主人様が失くした場所にもよりますが、遠ければ数日も』
何故か毘沙門天の教典が中右の道から見つかったことがあるだけに、警戒せざるを得ない。
『そ、それは……少し、困ります』
心底困り切ったという顔で星は唸った。そんなに急ぎの大事なものなのか。
『出来れば明日までには……』
『――了解しました』
やれやれ。ため息を隠さずについて、ナズーリンは頷いた。
いい加減、こんなことも数え切れないほど繰り返してきた。その度に寅丸星という人物の持つ威厳とかそういうものは右肩下がりで、とっくにマイナスを通り越している。
『すみません。……やっぱり貴方にしか、頼めないので、その』
『解ってますから。――せいぜいボロが出ないようにしていてください』
『助かります、ナズーリン』
そう言って、お目付役の自分にふかぶかと頭を下げるのだ、あの毘沙門天代理は。
それがおおよそ、昨日の出来事である。
◇
で、期限の今日。
何しろ中身の解らないただの布袋とあっては、ダウジングでも見つけるのは難しい。
そんなわけでナズーリンは部下の鼠たちを動員して、人海戦術的にターゲット、星柄の布袋とやらを探し続けていた。
それがどれだけ星にとって大事なものなのか、今日中に見つからないとどう星が困るのか、具体的なことは結局何も解らないままだ。
だが、ナズーリンの役目は星に毘沙門天の代理の役目を全うさせること。
探し物が見つからないことで、それに支障が出てしまってはナズーリン自身の存在意義にも関わってくるのだから、困った話である。
(全く、本当にうちのご主人は――)
つくづく呆れる。そもそも、どうしてあんなうっかりやが、毘沙門天の代理など務めているのか。ナズーリンが居なければ、手元のものを片端から無くしてあっという間に何もかも立ちゆかなくなってしまうような、あのお間抜けさんが。
最初は一応曲がりなりにも敬意をもって『ご主人様』と呼んでいたナズーリンも、その間抜けぶりを目にするにつけて星への評価を下げ、今では『様』などと付ける気にもなれない。本人の前ではさすがに付けるが、敬意などそこには無い。あるのは呆れだけだ。
寅丸星。自分のご主人。
(……やれやれ、本当にどうしようもない)
そんなご主人に、何やかんやと文句を言いながらも、長いことこの役目を続けている自分。
星のことを考えると必ずそこに行き着くので、ナズーリンはそれ以上考えないことにした。
――ともかく。
「ん? 見つかったのかい?」
戻ってきた部下からの報告を聞いて、ナズーリンは振り返った。
どうやら部下たちがそれらしきものを見つけてきたようだ。運ばれてきたそれを受け取り、しげしげと眺める。星柄の編み込まれた、手のひらサイズの小さな袋。
「――これで正解、だろうね」
よくやったよ、と発見者の鼠たちに報酬のチーズを分け与えて、それからナズーリンは手のひらに載せたその袋を見下ろした。
小さな安っぽい布袋。中には固い感触がある。こんな安い袋にそんな大事なものを入れているとも思えないが、あのご主人のことだ。彼女はこちらの予想の斜め上をいく。
袋の中身を詮索するのは下種の勘ぐりというか、そもそもナズーリンは星の毘沙門天代理としての仕事にはあまり興味がない。あのうっかりやが精一杯見栄を張って、立派で真面目な代理として働いている(本人はそのつもりの)様は見ていて苦笑ものではあるが。
とにかく、これで自分の役目は果たした。
寺の方へとって返しながら、握った袋の感触に、ナズーリンは目を細める。
『すみません。……やっぱり貴方にしか、頼めないので、その』
心底困った顔でそう言った、昨日の星の表情を思い出す。
――いい加減、自分に頼らなくてもどうにかできるようになってください。
いつも自分はそんなことを小言で言うのだけれども。
それが自分の本心なのかは、ナズーリンにもよく解らなかった。
◇
「ああ、これです!」
ナズーリンが持ち帰った袋を見て、星は安堵の混じった歓声を上げた。
「ありがとうございます、本当に」
ぺこぺこと頭を下げる星の姿には、本当に威厳のいの字も無い。
やれやれと肩を竦めて、ナズーリンは目を細めた。
「いい加減、本当に懲りてくれませんかね。いつボロが出ても知りませんよ?」
「き、気を付けてはいるのですよ……?」
「結果が伴わなければ同じ事でしょう」
すみません、としおれる星。全く、どっちが主人だか解ったものではない。
「ともかく、期限内に見つかって良かったですね。――では」
くるりと背を向け、ナズーリンは星の元を辞そうとする。――が。
「あ、ナズーリン、待ってください!」
急に星が慌てた声をあげたので、訝しんでナズーリンは振り返った。
「何です?」
「いえ――その」
呼び止めたくせに、星はまた何やら唸って口ごもった。まさか、他にも失くし物があるとかこの期に及んで言い出すのではあるまいな。そうナズーリンが目を細めると、
「ええと――せっかく返していただいて、こう言うのも何なのですが」
「……なんですか?」
さっき、「これです!」と言ったではないか。今さら違うと言われても困る。
次にどんな言葉がこの間抜けなご主人の口から飛び出すかと、ナズーリンは身構え。
「これは――実は、ナズーリン、あなたのものなんです」
「――は?」
全く予想だにしない言葉に、ナズーリンは思わず目をしばたたかせた。
星は口の縛られた袋を、恭しくナズーリンに差し出す。
「ナズーリン。今日が何の日だか、覚えていますか?」
「……何、でしたっけ」
突然そんなことを言われても、全く思い当たる節がない。
眉を寄せたナズーリンに、星は苦笑するようにひとつ頷いて。
「――貴方と、初めて会った日です」
その言葉に、思わず目をしばたたかせて、ナズーリンは唸った。
言われてみれば、確かにそうだった気もする。毘沙門天から依頼を受けて、寅丸星という代理の元へ出向き――この底抜けにお間抜けなご主人と対面した日。もう、随分と昔のことだ。
『あなたがナズーリンですね。――これから、よろしくお願いします』
今にして思えば、あの笑顔にはそのお間抜けさが滲み出ていたような気もする。
お目付役の自分に、全く天真爛漫な、無防備な笑顔で頭を下げた彼女に。
鬱陶しい役目だと疎んでいた自分は、何だか毒気を抜かれてしまった。
――それが、自分と星の妙な関係の始まりだった。
「貴方には本当に、今までたくさんお世話になってきましたから」
少し照れくさそうに星は言って、「開けてみて下さい」と真剣な顔になって言った。
ナズーリンはどこか呆気にとられたまま、その袋の口を開けて。
中から出て来たのは――小さなペンデュラムだった。
「私は、ダウジングのことは詳しくないので、これはただのアクセサリーですけど」
ほのかなオレンジ色をしたその石は、どこか、目の前の星の色のように思えた。
「――貴方が喜んでくれそうなものが、こんなものしか思いつかなくて……」
ナズーリンの表情に、選択を誤ったと思ったのか、しおしおとまた星は小さくなる。
――ああ、全く、このご主人は、本当に。
どうしようもなく盛大な吐息を漏らして、ナズーリンは首を振った。
「……どうしてそうキミは、私なんかにそんな気を遣うのかな」
つい、素の言葉でそう問いかけてしまう。
けれど星は怒るでもなく、はにかんだように頬を少し紅潮させて。
「貴方のことが好きだから、ではいけませんか?」
どこまでも真っ正面から、そんなことを言ってのけるのだ。
――それを言われたときの自分の顔はたぶん、魔界の景色よりも赤くなっていた。
とかく、ご主人は物をよく失くす人だった。
信じられないようなものを簡単に失くしては、困り切った顔で相談しに来る。何度注意したところで変わらない。それもすぐ目の前にあるものを見つけられないでいるのならともかく、予想の斜め上をいく場所に探し物があったりするからたまらない。
要するに、ご主人はとてつもないうっかりやだった。
他人にそのことを吹聴すれば、『そんな馬鹿な』と返されるだろうが、自分だけは知っている。人前では澄まして取り繕っているだけなのだ。
そして、後からこっそり自分のところに来て言うのである。
『ナズーリン、困りました』
と、今にも泣き出しそうな顔で。
『はいはい、今度は何ですか、ご主人様』
いい加減こちらも慣れてしまって、呆れるのを隠すこともしなくなった。失せ物を見つけて来た後、ついつい小言のひとつやふたつも言いたくなってしまう。
彼女はいつも『すみません……本当に』と縮こまって頭を下げる。お目付役の自分に。
全く、威厳も何もあったものではない。
自分の代理が鼠のダウザーに説教されているのを見たら、毘沙門天は卒倒するかもしれない。
――いや、案外毘沙門天も、彼女がこんなタイプだと知っているからこそ、ダウザーの自分をお目付役に指名したのだろうか。最近、そう思うようになった。
ともかく、現状を端的にまとめれば。
ナズーリンはいつものように、ご主人――寅丸星の失せ物を探していた。
『……袋、です』
何を失くしたのか、と問うた自分に、星は躊躇いがちにそう答えた。
『星柄の、小さな布袋です』
また教典でも失くしたのかと思っていたので、少々意外に思って自分は問い返した。
『中身は何です? 毘沙門天からの預かり物ですか?』
とかく、星は大事なものをすぐに失くす。毘沙門天の代理としていろいろなものを預かっている身の上でありながら、その預かり物の中で今までに星が失くしたことの無いものの方が少ないぐらいだ。そしてそのほとんどを見つけたのはナズーリンである。
だから今回も、その類のものだと思ったのだが。
『それは……ちょっと、言えません』
こんな風に星が言葉を濁すのも珍しいことだったので、ナズーリンは眉を寄せた。
『……まあいいですが。じゃあ、大きさは』
『小さいです。私の手の大きさぐらいの』
手のひらをこちらに向けて星は言う。
『解りました。中身が解らないんだと少し時間がかかるかもしれませんけど』
『どのくらいでしょう?』
『ご主人様が失くした場所にもよりますが、遠ければ数日も』
何故か毘沙門天の教典が中右の道から見つかったことがあるだけに、警戒せざるを得ない。
『そ、それは……少し、困ります』
心底困り切ったという顔で星は唸った。そんなに急ぎの大事なものなのか。
『出来れば明日までには……』
『――了解しました』
やれやれ。ため息を隠さずについて、ナズーリンは頷いた。
いい加減、こんなことも数え切れないほど繰り返してきた。その度に寅丸星という人物の持つ威厳とかそういうものは右肩下がりで、とっくにマイナスを通り越している。
『すみません。……やっぱり貴方にしか、頼めないので、その』
『解ってますから。――せいぜいボロが出ないようにしていてください』
『助かります、ナズーリン』
そう言って、お目付役の自分にふかぶかと頭を下げるのだ、あの毘沙門天代理は。
それがおおよそ、昨日の出来事である。
◇
で、期限の今日。
何しろ中身の解らないただの布袋とあっては、ダウジングでも見つけるのは難しい。
そんなわけでナズーリンは部下の鼠たちを動員して、人海戦術的にターゲット、星柄の布袋とやらを探し続けていた。
それがどれだけ星にとって大事なものなのか、今日中に見つからないとどう星が困るのか、具体的なことは結局何も解らないままだ。
だが、ナズーリンの役目は星に毘沙門天の代理の役目を全うさせること。
探し物が見つからないことで、それに支障が出てしまってはナズーリン自身の存在意義にも関わってくるのだから、困った話である。
(全く、本当にうちのご主人は――)
つくづく呆れる。そもそも、どうしてあんなうっかりやが、毘沙門天の代理など務めているのか。ナズーリンが居なければ、手元のものを片端から無くしてあっという間に何もかも立ちゆかなくなってしまうような、あのお間抜けさんが。
最初は一応曲がりなりにも敬意をもって『ご主人様』と呼んでいたナズーリンも、その間抜けぶりを目にするにつけて星への評価を下げ、今では『様』などと付ける気にもなれない。本人の前ではさすがに付けるが、敬意などそこには無い。あるのは呆れだけだ。
寅丸星。自分のご主人。
(……やれやれ、本当にどうしようもない)
そんなご主人に、何やかんやと文句を言いながらも、長いことこの役目を続けている自分。
星のことを考えると必ずそこに行き着くので、ナズーリンはそれ以上考えないことにした。
――ともかく。
「ん? 見つかったのかい?」
戻ってきた部下からの報告を聞いて、ナズーリンは振り返った。
どうやら部下たちがそれらしきものを見つけてきたようだ。運ばれてきたそれを受け取り、しげしげと眺める。星柄の編み込まれた、手のひらサイズの小さな袋。
「――これで正解、だろうね」
よくやったよ、と発見者の鼠たちに報酬のチーズを分け与えて、それからナズーリンは手のひらに載せたその袋を見下ろした。
小さな安っぽい布袋。中には固い感触がある。こんな安い袋にそんな大事なものを入れているとも思えないが、あのご主人のことだ。彼女はこちらの予想の斜め上をいく。
袋の中身を詮索するのは下種の勘ぐりというか、そもそもナズーリンは星の毘沙門天代理としての仕事にはあまり興味がない。あのうっかりやが精一杯見栄を張って、立派で真面目な代理として働いている(本人はそのつもりの)様は見ていて苦笑ものではあるが。
とにかく、これで自分の役目は果たした。
寺の方へとって返しながら、握った袋の感触に、ナズーリンは目を細める。
『すみません。……やっぱり貴方にしか、頼めないので、その』
心底困った顔でそう言った、昨日の星の表情を思い出す。
――いい加減、自分に頼らなくてもどうにかできるようになってください。
いつも自分はそんなことを小言で言うのだけれども。
それが自分の本心なのかは、ナズーリンにもよく解らなかった。
◇
「ああ、これです!」
ナズーリンが持ち帰った袋を見て、星は安堵の混じった歓声を上げた。
「ありがとうございます、本当に」
ぺこぺこと頭を下げる星の姿には、本当に威厳のいの字も無い。
やれやれと肩を竦めて、ナズーリンは目を細めた。
「いい加減、本当に懲りてくれませんかね。いつボロが出ても知りませんよ?」
「き、気を付けてはいるのですよ……?」
「結果が伴わなければ同じ事でしょう」
すみません、としおれる星。全く、どっちが主人だか解ったものではない。
「ともかく、期限内に見つかって良かったですね。――では」
くるりと背を向け、ナズーリンは星の元を辞そうとする。――が。
「あ、ナズーリン、待ってください!」
急に星が慌てた声をあげたので、訝しんでナズーリンは振り返った。
「何です?」
「いえ――その」
呼び止めたくせに、星はまた何やら唸って口ごもった。まさか、他にも失くし物があるとかこの期に及んで言い出すのではあるまいな。そうナズーリンが目を細めると、
「ええと――せっかく返していただいて、こう言うのも何なのですが」
「……なんですか?」
さっき、「これです!」と言ったではないか。今さら違うと言われても困る。
次にどんな言葉がこの間抜けなご主人の口から飛び出すかと、ナズーリンは身構え。
「これは――実は、ナズーリン、あなたのものなんです」
「――は?」
全く予想だにしない言葉に、ナズーリンは思わず目をしばたたかせた。
星は口の縛られた袋を、恭しくナズーリンに差し出す。
「ナズーリン。今日が何の日だか、覚えていますか?」
「……何、でしたっけ」
突然そんなことを言われても、全く思い当たる節がない。
眉を寄せたナズーリンに、星は苦笑するようにひとつ頷いて。
「――貴方と、初めて会った日です」
その言葉に、思わず目をしばたたかせて、ナズーリンは唸った。
言われてみれば、確かにそうだった気もする。毘沙門天から依頼を受けて、寅丸星という代理の元へ出向き――この底抜けにお間抜けなご主人と対面した日。もう、随分と昔のことだ。
『あなたがナズーリンですね。――これから、よろしくお願いします』
今にして思えば、あの笑顔にはそのお間抜けさが滲み出ていたような気もする。
お目付役の自分に、全く天真爛漫な、無防備な笑顔で頭を下げた彼女に。
鬱陶しい役目だと疎んでいた自分は、何だか毒気を抜かれてしまった。
――それが、自分と星の妙な関係の始まりだった。
「貴方には本当に、今までたくさんお世話になってきましたから」
少し照れくさそうに星は言って、「開けてみて下さい」と真剣な顔になって言った。
ナズーリンはどこか呆気にとられたまま、その袋の口を開けて。
中から出て来たのは――小さなペンデュラムだった。
「私は、ダウジングのことは詳しくないので、これはただのアクセサリーですけど」
ほのかなオレンジ色をしたその石は、どこか、目の前の星の色のように思えた。
「――貴方が喜んでくれそうなものが、こんなものしか思いつかなくて……」
ナズーリンの表情に、選択を誤ったと思ったのか、しおしおとまた星は小さくなる。
――ああ、全く、このご主人は、本当に。
どうしようもなく盛大な吐息を漏らして、ナズーリンは首を振った。
「……どうしてそうキミは、私なんかにそんな気を遣うのかな」
つい、素の言葉でそう問いかけてしまう。
けれど星は怒るでもなく、はにかんだように頬を少し紅潮させて。
「貴方のことが好きだから、ではいけませんか?」
どこまでも真っ正面から、そんなことを言ってのけるのだ。
――それを言われたときの自分の顔はたぶん、魔界の景色よりも赤くなっていた。
相変わらずの甘さは流石ですな。ちょっと砂糖吐いてきます。
GJ!
開祖たるサバトラさんにはどんなに敬意を払っても足りないくらいだぜ
ふぅまったく、こっちまで恥ずかしくなっちまうのぜ
顔が火照っているのは確かです。
ただあの作品を投稿した理由のひとつが「誰かリスペクトしてくれ!!」だったので
願いを叶えてくれてありがとうございます。
なんとなく本人が得点を入れるべきではない気がしたので、フリーレスで失礼します。
くそっ、すばらしい❗️