果てしなく広い緑の海に気付けば一人で佇んで。
何処かも分らない。
何故かも分らない。
只、気持ちのいい風が吹いていた。
風は緑の絨毯を靡かせて。
風は紫色の髪を靡かせて。
空は何処までも蒼く澄んでいて。
私の心も澄んでいた。
ザーッという草の靡く音が聞こえてくる。
その音を聞いているとなんだか心が軽くなった気がした。
夢。
そう、これは夢。
夢だと分かってしまっても、私の心は軽快なワルツを踊っている。
何処だろう?
何故だろう?
私の疑問は置き去りに、私の心を置き去りに。
世界はずっと綺麗なままで、世界をずっと眺めてた。
世界は私只一人、緑の海に只一人。
もう少しだけこの世界に浸っていよう。
醒めてしまえば二度と同じ世界には戻って来れないだろうから…。
* * * * * *
シトシトと雨の音が静かな室内に響いていた。
紅魔館地下大図書館。どんな場所かと一言で表すと本の山。
これは、比喩表現ではなく本当に本の山。
そんな図書館の中央にある小さなテーブルの椅子に一人の魔女が座って本を読んでいた。
テーブルの上には沢山の本が積み重なっており、グラグラと揺れている。
魔女のバランスの取り方が絶妙なのか揺れてはいるが外部から力を加えない限り倒れる事はなさそうだった。
「パチュリー様、何してるんですか?」
地下大図書館の主、魔女のパチュリー・ノーレッジ。
そして、使い魔の小悪魔。
今このだだっ広い地下図書館には二人しかいない。
「見て分らない? 本を読んでいるのよ。」
魔女は淡々と述べる。
「いや、それは分かりますけど…。」
使い魔はそんな己が主を見ながら苦笑していた。
「分かってるならいいじゃない。」
「ぱちゅりー様のいけず…。」
使い魔がわざとらしく泣き真似を始めた。
「何処からそんな言葉を覚えてくるのよ…。」
魔女がとうとう折れる。
苦笑しつつも続きを話し始めた。
「外の本よ。西洋の童話を読んでいるのです。」
彼女は何故か言葉を丁寧語にしつつ白状した。
「へぇー、パチュリー様って魔導書ばかり読んでいるのかと思っていたんですけどそういう本も読むのですね。」
「あら、私はどんなジャンルの本でも読むわよ。」
使い魔が割りと驚いているのを見てパチュリーは機嫌が良くなったのか普段より口が軽くなっていた。
「本にはね、作者の魂が宿っているの。それがどんな内容だとしてもね。ねぇ、貴女は
此処にある本達が何処から来たのか知っている?」
使い魔がもちろんと前置きして
「外からですよね。」
そう言った。
流石に図書館の整理をしているだけあって即答だった。
「正解です。では、何故外の世界の本が此処に流れてくるか何故だか分かる?」
「えーっと、幻想郷の結界の事を踏まえると…外の世界で忘れられたからでしょうか?」
今度は考えながら答えた。
「正解よ。」
「やった!!」
何かが嬉しかった様で羽を揺らして喜んでいる。
「私の夢はね…」
唐突に魔女が真剣な口調で話し始めた。
「いきなりですね。」
使い魔が苦笑しつつ言葉を遮ってみると
「いいから黙って聞きなさい。」
怒られた。
「私の夢は此処に流れてくる本を記憶し、この身に刻んでおく事…。
忘れられた魂を、たった一つの想いを私は知りたいの。」
「……」
使い魔は主の言葉を黙って聞いていた。
「誰の記憶にも存在していなんて、それはもう存在してないのと同じなのよ…。」
「そんなものですかね?」
魔女は使い魔の言葉を無視して続ける。
「それに、忘れられた想い程哀しい物は無いじゃない…。」
「ねぇ、小悪魔。貴女はどんな夢を見るの?」
うーんと、唸りながら使い魔は
「そうですねぇ…。私の夢は…」
自ら描いた夢を語り出す。
* * * * * *
夜空。
真っ暗なスクリーンに星屑の海が広がって、キラキラと私を照らしだしていた。
星の明りで見える髪の色。
くすんだ紫いつものままで。
夜空をずっと眺めていた。
前とは違うこの世界。
やっぱり私は只一人。
小さな丘に佇んで。
涼しい風が吹いてきた。
音の無い世界の中で、風は緑を靡かせながら。
世界は私を中心に、ぐるぐるぐるぐる回ってた。
何時かは知らない、けれども理由は知っている。
だから私は世界の中で、独りぼっちで存在してた。
変化を拒んだ世界の中で。
私という変化が生まれてしまう。
いずれ無くなる夢と想い。
私はその身に刻む為。
世界は次に伝える為に。
世界が消えるその時までは、私は一人で存在しよう。
夢が夢で在るために、想いが想いで在るために…。
何処かも分らない。
何故かも分らない。
只、気持ちのいい風が吹いていた。
風は緑の絨毯を靡かせて。
風は紫色の髪を靡かせて。
空は何処までも蒼く澄んでいて。
私の心も澄んでいた。
ザーッという草の靡く音が聞こえてくる。
その音を聞いているとなんだか心が軽くなった気がした。
夢。
そう、これは夢。
夢だと分かってしまっても、私の心は軽快なワルツを踊っている。
何処だろう?
何故だろう?
私の疑問は置き去りに、私の心を置き去りに。
世界はずっと綺麗なままで、世界をずっと眺めてた。
世界は私只一人、緑の海に只一人。
もう少しだけこの世界に浸っていよう。
醒めてしまえば二度と同じ世界には戻って来れないだろうから…。
* * * * * *
シトシトと雨の音が静かな室内に響いていた。
紅魔館地下大図書館。どんな場所かと一言で表すと本の山。
これは、比喩表現ではなく本当に本の山。
そんな図書館の中央にある小さなテーブルの椅子に一人の魔女が座って本を読んでいた。
テーブルの上には沢山の本が積み重なっており、グラグラと揺れている。
魔女のバランスの取り方が絶妙なのか揺れてはいるが外部から力を加えない限り倒れる事はなさそうだった。
「パチュリー様、何してるんですか?」
地下大図書館の主、魔女のパチュリー・ノーレッジ。
そして、使い魔の小悪魔。
今このだだっ広い地下図書館には二人しかいない。
「見て分らない? 本を読んでいるのよ。」
魔女は淡々と述べる。
「いや、それは分かりますけど…。」
使い魔はそんな己が主を見ながら苦笑していた。
「分かってるならいいじゃない。」
「ぱちゅりー様のいけず…。」
使い魔がわざとらしく泣き真似を始めた。
「何処からそんな言葉を覚えてくるのよ…。」
魔女がとうとう折れる。
苦笑しつつも続きを話し始めた。
「外の本よ。西洋の童話を読んでいるのです。」
彼女は何故か言葉を丁寧語にしつつ白状した。
「へぇー、パチュリー様って魔導書ばかり読んでいるのかと思っていたんですけどそういう本も読むのですね。」
「あら、私はどんなジャンルの本でも読むわよ。」
使い魔が割りと驚いているのを見てパチュリーは機嫌が良くなったのか普段より口が軽くなっていた。
「本にはね、作者の魂が宿っているの。それがどんな内容だとしてもね。ねぇ、貴女は
此処にある本達が何処から来たのか知っている?」
使い魔がもちろんと前置きして
「外からですよね。」
そう言った。
流石に図書館の整理をしているだけあって即答だった。
「正解です。では、何故外の世界の本が此処に流れてくるか何故だか分かる?」
「えーっと、幻想郷の結界の事を踏まえると…外の世界で忘れられたからでしょうか?」
今度は考えながら答えた。
「正解よ。」
「やった!!」
何かが嬉しかった様で羽を揺らして喜んでいる。
「私の夢はね…」
唐突に魔女が真剣な口調で話し始めた。
「いきなりですね。」
使い魔が苦笑しつつ言葉を遮ってみると
「いいから黙って聞きなさい。」
怒られた。
「私の夢は此処に流れてくる本を記憶し、この身に刻んでおく事…。
忘れられた魂を、たった一つの想いを私は知りたいの。」
「……」
使い魔は主の言葉を黙って聞いていた。
「誰の記憶にも存在していなんて、それはもう存在してないのと同じなのよ…。」
「そんなものですかね?」
魔女は使い魔の言葉を無視して続ける。
「それに、忘れられた想い程哀しい物は無いじゃない…。」
「ねぇ、小悪魔。貴女はどんな夢を見るの?」
うーんと、唸りながら使い魔は
「そうですねぇ…。私の夢は…」
自ら描いた夢を語り出す。
* * * * * *
夜空。
真っ暗なスクリーンに星屑の海が広がって、キラキラと私を照らしだしていた。
星の明りで見える髪の色。
くすんだ紫いつものままで。
夜空をずっと眺めていた。
前とは違うこの世界。
やっぱり私は只一人。
小さな丘に佇んで。
涼しい風が吹いてきた。
音の無い世界の中で、風は緑を靡かせながら。
世界は私を中心に、ぐるぐるぐるぐる回ってた。
何時かは知らない、けれども理由は知っている。
だから私は世界の中で、独りぼっちで存在してた。
変化を拒んだ世界の中で。
私という変化が生まれてしまう。
いずれ無くなる夢と想い。
私はその身に刻む為。
世界は次に伝える為に。
世界が消えるその時までは、私は一人で存在しよう。
夢が夢で在るために、想いが想いで在るために…。
ただ惜しむらくは、なにも感じられませんでした