Coolier - 新生・東方創想話

おとめのろまん

2009/09/05 19:44:41
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 こんにちは。東風谷早苗です。とんぷーやじゃないです。こちやです。

 いつもどおり神社の境内を掃除しています。ふぅ。風が涼しいですねぇ。

 もう夏の風じゃないですね。冷たさを混じらせた風は秋の訪れを知らせています。

 見上げれば空も僅かに高く、雲も薄くなっていました。

 あの騒がしかった夏も終わりです。おイモが美味しくなる季節ですねぇ……

 ……今日のおやつはなにかなぁ。神奈子様のホットケーキが食べたい気分です。

 自分で作ると炭になっちゃうから作ってくれるのを待ちましょう。

 神奈子様がお作りになるメープルシロップ美味しいんですよえへへ。

「こんにちは」

「うひゃあ」

 ぬるり、と表現するのがしっくりくる感じで物凄い美人さんが現れました。

「こ、こんにちは紫さん」

 八雲紫さん。なんか物凄い大妖怪らしいです。もう何度も会ってるのにこの登場だけは慣れません。

 妖怪らしい妖怪でなんとも掴みどころが無いのが苦手です……

「頼まれていた物持ってきましたよ」

「あ、ありがとうございます」

 苦手だけどいい妖怪さんなのは間違いないですね!

 手渡された新聞を早速開いてみます。

 もちろんお山の天狗が発行してるものじゃなくて、外の世界の新聞です。

 懐かしいなぁこの安っぽい紙質。文さんの新聞とか薄くても和紙ですからね。

「勤勉ね。もう外のことなんて知っても無駄でしょうに」

「あはは……未練なのかもしれませんね」

 ちょっと寂しくなります。私はもう幻想郷の住人。外の世界とは関係のない存在。

 紫さんに言った通り、未練があって外の情報を見たくなってしまうのでしょうか。

 神奈子様たちとこちらに来たことに後悔はないのですけれど。

「さぁて。世界情勢はっと……」

 ん? 見間違いかな。はははやだなぁなんで新聞にアレが。

 ……見間違いですよね? なんか写真っぽかったのが気になるんですけど。

 えーと。ふむふむ。お台場に。へぇ。ほうほう。あははもう冗談ばっかりー。

 なんですかこれ文さんの新聞ですか? もう紫さんったら手の込んだ嘘を。

 文々。新聞じゃないですね。私の知ってる大手新聞社発行の新聞ですね。

「…………こ……これ、は」

 自分の目が信じられない。

 だって嘘でしょう? 誰がこんなことにお金出してくれるんですか。

 いやいやいや毎日大混雑とか嘘でしょって。

「1/1ガ●ダムがお台場にっ!!?」

 嘘だっ!!!

 絶対嘘だっ! あれですよ? 外人さんが段ボール着たGU●D●Mじゃないんですよ!?

「そんな、まさか、しかも立ってる!? 富士急の寝ているのじゃなくて!?」

 私アレだって見に行けてないんですよ!?

 丁度公開始まってたけど引越しの準備で忙しくて泣く泣く諦めたんですよ!?

「あははいやそんなまさかコラですよねよくできた偽記事ですよねうわあああ本物だあぁぁぁっ!?」

 日付が昨日だ! 四月一日じゃない! え? もう解体始まってる?

 今から行っても見られないじゃないですかぁぁぁぁぁっ!!

 どうやって大結界の外に行けるのかなんてわかりませんけどっ!!

「ちょっ、早苗ちゃん?」

「フルスケールですよ!? 1/1ですよ!? 18mですよ!? ガ●ダムですよっ!?」

 夢にまで見た巨大ロボが現実になってるなんて!

 劇中みたいに動かないから本物じゃないなんて子供のヤジは聞きません!

 18mのガ●ダムってだけで十二分に本物なんです! 本物のガ●ダムなんですっ!!

「うあああああと二年、あと二年こっちに来るのが遅ければあぁぁぁぁぁぁぁ」

 見たかった、見たかったああぁぁぁぁぁ…………――――

「失礼しました」

 ぐしゃぐしゃになっていた新聞を広げて綺麗に畳みます。

 あっは。

 天気いいですねー。妖精さんが楽しそうに飛んでますよあははー。

 ……見てる……

 …………すっごい見てる……! 大注目されちゃってる……!

 しまったぁぁぁぁっ! 今度こそ、今度こそ脱オタクできたと思ってたのにぃぃぃぃっ!

 染みついた習性は抜けないんでしょうか……

 それとも香霖堂さんで同人誌こそこそ買い漁ってるのがいけなかったんでしょうか!?

 だって今じゃ買えない昔のアニメの同人誌が時たま入ってるんですもん!

 無視しろって方が無理じゃないですか!

 ……ダメだ。こんな理論通じる訳ありませんよね……

 紫さんすごく外人さんな容姿ですし。ふふ、日本のロボアニメなんて知ってる筈……

 いや思い切り日本人名ですけど。でもだからって大人の女性である紫さんが……

「……あの、早苗ちゃん?」

「ご、ごめんなさい……誰にも言わないでください……」

 うう、絶対呆れてます……ごめんなさいごめんなさい私日蔭者のオタクなんです……

 隠れオタクなんです……どうかこのことは秘密に……

「……ガ●ダム00のDVD全巻あるんだけど、観る?」

 耳を疑う。

「ダブル……!? そんな、まさか二年前ちょろっと情報が出てたガ●ダムっ!!」

 富士急の1/1ガ●ダムと並んで私の悔いとなっていたガ●ダム!

 いや、ちょ、なんでそれを紫さんが!?

 だ、だってこんな、美人だし、外人さんだし、大人の女性だし……

 ゆ、紫さんが、オタク、なわけ…………紫さんの、目。

 紫色の目が、何か、激しい感情を湛えて……?

「ブルーレイ版とブルーレイデッキとハイビジョンテレビもあるわっ!」

「一週間お泊りしてもいいですか紫っさぁぁんっ!!!」














「私も寂しかったのよ! ロボアニメ語れる友達がいなくて!」

 場面は変わって紫さんの家。どうやって来たか憶えてません。

 でもそんなことはどうでもいい。紫さんが魂の叫びをあげている……!

「わかります! わかりますよ紫さん!」

 持ってきたお泊りセットもそのままに同意します。

「幽々子や萃香にも見せたのよ? でもね、あの子たち「ふーん」としか言ってくれないの!」

「あああ痛いほどわかる! こんなに面白いのに! ロマンなのに!」

「そうなのよっ! ロマンなのよ! なのにあの子たちったらもうっ!!」

 泣いている……紫さんは血の涙を流している……っ!

「それに藍も橙もわかってくれなくて……! 橙は小さい頃は一緒に観てくれたのに最近じゃもう!」

「悲しいけど女の子は卒業早いんですよ! 入門すらしない子も多いことを思えば……!」

「わかってる、わかってるけど家族の理解が得られないのって辛いのよ……!」

 わかり過ぎて私まで泣いちゃいますっ!

 神奈子様も諏訪子様もその辺ドライなんですよ!

 リアリストっていうか、冷めてるっていうか。神様なのに!

 実用性とか実用化に伴うリスクとかすぐにそんなこと言いだしてっ!

 違うでしょう!? ロボはリアルなんてどうでもいいロマンでしょうっ!?

「早苗ちゃん……ここまでわかってくれる子に会えて私は感激してるわ」

「私もです……ずっと、ずっと独りで楽しむしかなかった……!」

「ふふ……もう言葉は不要ね。さぁ! 一緒に観ましょう! ガ●ダム00をっ!!」

「待ってましたーっ!!」

……

「ええ!? 何言い出してんですかこの子!?」

「ふふ、最後まで見てから文句言うのね」

……

「なんて中国・ロシアらしい……」

「この思い切った作戦は彼以外には出せないわね……」

……

「ろ、ロックォォォォンっ!!」

「彼はガ●ダムマイスターじゃなく自分自身の意思を貫いたのよ!」

……

「おれがガ●ダムだっ!」

「おれたちがガ●ダムだっ!!」













「とまぁそんなことがありまして!」

 鼻息も荒くなっちゃいます!

 一週間のお泊り観賞会を終えて数日。私は神社に遊びに来た霊夢さんに自慢しています。

 あっは! 同士を得た私に怖いものはありません!

 隠れオタク卒業です! フルオープンオタクです!

 孤独じゃないってなんて素晴らしいんでしょう!

「最近見ないと思ったら。ロボねぇ」

 案の定霊夢さんは興味なさげにため息混じりの返事です。

「ロマンなんですよ! ロボは! 人類の夢なんですよっ!」

「ああうん……暑苦しいからちょっと離れて」

「河童さんたちのも心躍りましたけど1/1! フルスケール! ガ●ダムっ!!」

 ああ早く紫さんに会いたい! 霊夢さんじゃダメです霊夢さんじゃ。

 いやでも霊夢さんは何にも知らないようだし……今度観賞会に誘おうかしら?

 意外とこういう冷めてるタイプがハマると聞きますし……

 となると何から見せましょう……オーソドックスに初代ガ●ダム?

 いえ、紫さんの家にはマ●ンガーとかジャイ●ントロボ(今川版)とかもありましたし……

 アニメと云うだけで釣れる可能性もある。観たことないでしょうしねアニメ。

「ふふふ……楽しみですね」

「寒気が」

 私のように一週間同じアニメを観続けるレベルには来れないかもしれませんが……

 いやわかりませんね。遅咲きの方が重症になりやすいとも聞きます。

「ちょっと神奈子……なんか早苗の様子前と全然違うんだけど?」

「スキマ妖怪のとこ行ってからああでねぇ……我慢してたタガが外れたみたいで」

「我慢って?」

「早苗はアニメ大好きッ子なのさー。でもそれを理解してくれる友達が居なかったんだよ」

「あにめ? なによそれ諏訪子」

「んー。動く絵?」

「私らもあんまりわからない世界だったから余計に辛かったんだろうけどさ」

 ふふふ全く以ってそのとおりですよ御三方。だから人を病人みたいに言わないでください。

 はぁ……紫さん来ないかなぁ。アニメ談義したいです。

 帰りもよくわからなくて紫さんの家への行き方わからないんですよね。

 連絡手段ないものでしょうか。携帯電話みたいな。

「ちょっと早苗」

「はい? なんでしょう霊夢さん」

「いやね、友達出来てはしゃぐのはわかるけど……」

「……?」

 なんで霊夢さん、怖い顔してるんでしょう……?

「その、あんまり、さ……」

「はぁ……?」

 むう。要領を得ません。なんでそんな言い難そうにしてるのか。

 霊夢さんらしくない。いつもはもっとはきはきと自分の言いたいことを言うのに。

「あの、どこか具合でも悪いんですか? 顔色も優れてないようですし」

「え、いやそんなことないけど」

 見た感じ熱があるという風でもないですね。

 尚更わかりません。なんでこんなにしどろもどろに。

 心配は要らないみたいですけど、気にかかりますね……

「早苗ちゃん! ガ●ダム00二期のBDよ!」

「待ってましたぁぁぁぁぁっ!!」

 もうぬるりとかにゅるりって感じの登場にも慣れました紫さん!

 むしろ便利ですよねそれ!

「あ、紫……」

「あら? 居たの霊夢。こっちの神社に居るなんて珍しいわね」

「あ、遊びに来たのよ!」

「そうなの? 悪いけど早苗ちゃん借りるわね」

「え……あ、うん……」

 ……やっぱりおかしい。風邪ではないようですがすごくおかしい。

 霊夢さんらしさが全然ありません。いつもの傍若無人さはどこに。

「さて早苗ちゃん、今度はどれくらい泊まる? 話数は同じだけど」

「あんまり神社を空けるのも差し支えますので、三日ほどでお願いします。

神奈子様たちにもそれくらいならと了解していただいてますから」

「それじゃあ支度してらっしゃい。二期も面白いわよ」

「はい!」

 霊夢さんが気にかかりますけど本人がなんでもないと言ってるんですから手出し無用ですね!

 さ、早く三日分の着替えとか用意しなきゃ。

 などとわくわくと走り出した私でしたが、一瞬聞こえた声に背筋を凍らせました。

 でも怖くて振り返れなかったのでそのまま部屋まで走りました。

 あの時霊夢さんは、とても冷たい声で言ったのです。



「――――気に食わないわ」



 ……と。











Interlude...


 後から諏訪子様に聞いた話なのですが、こんなことがあったそうです。



 帰ったと思った霊夢さんが夜更けに重武装で神社に来たそうです。

「早苗をあのクソッタレスキマ妖怪から奪い返すいい案があるわ」

 すわ戦争か、と身構えた神奈子様たちに霊夢さんはそう言いました。

「……なんだって?」

 神奈子様は食い付きましたが諏訪子様はどうでもいいとあしらおうとなさりました。

「いや別にいいじゃん。早苗が遊びたがってんだしさあ」

 昔から放任主義ですよね諏訪子様。

 でも私が田んぼに落っこって泣いてた時くらいは手を貸してください。

 自転車ごと落っこちて出るのに難儀したんです。

「それには神奈子、あんたの力が必要なのよ」

「ほう……」

 霊夢さんの怪しい誘いに神奈子様はどんどんのめり込んで行ったとか。

「あのさ、話聞いてる?」

「あんたと私が力を合わせれば――紫も敵じゃない」

「言うねぇ霊夢……」

「あの……」

「伸るか反るか!」

「賭ったぁっ!!」

「ダメだこりゃ」

 あまりにもノリノリ過ぎて諏訪子様は何も言えなくなってしまったそうです。



 親バカにも程があるよ。とは諏訪子様の言。

 ちょっと恥ずかしいですね。


...Interlude Out












 一日で全話観てしまいました。

 流石に12時間ぶっ通し視聴は疲れますね。全然苦じゃありませんけど。

 ふふふ明日はストーリーを理解した上で紫さんと1話から見直しです。

 ああそれにしても劇場版が気になります。あの最後のカットは……

 ん。そういえば前のの劇場版はどうなったんでしょう? 明日紫さんに訊いてみようかな……

「ふぁぁ……」

 眠いですけど興奮し過ぎて中々寝付けません。

 あのラストバトルは良かった……脚本さんはロマンをわかっています。

 ……む、無理じゃなければ紫さんにプラモデル買ってきてもらえないかな……

 いやいやそれは流石に厚かましい。私だって節度くらい弁えてますよ?

 でもアレを観た後では……自分の手で再現したい……!

 河童さんに半田ごて借りられないでしょうか! ビームサーベルの傷跡再現したいです!

 となるとクラッシュモデル用に最低でも三体ずつは用意しないと!

 おこづかい足りるかな!?

 ああ眠れませんっ!



ちゅどおおおおおおぉんっ!!!



「うわぁぁっ!?」

 な、なんですか!? 爆撃ですか!? メメントモリですかっ!?

 パジャマのまま布団を飛び出して障子を開けます。まずは避難経路の確保!

 うわ、雨戸が外れちゃって…………

「わ、わぁぁぁぁぁっ!? 庭には二羽鶏がいました!?」

「落ちついて早苗ちゃん。意味がわからない。それに鶏は飼ってないわ」

「にゃにごちょでしゅかゆかりしゃま!? 結界ぶち抜かれまひたよっ!?」

「藍、呂律が回ってないわ」

 あ。藍さんもパジャマだ。枕抱えてます。

 紫さんは流石ですね。ちゃんと道士服で髪も結われてます。いつもどおり美人さんです。

「ってなに落ちついてるんですか紫さん! に、庭にクレーターが……!」

 すんごい土煙上がってますし。隕石でも落ちたんでしょうか……?

 あ、タイミングよく風が吹いてくれました。

 土煙が晴れてまぁなんて見事なオンバシラ。

「オンバシラっ!?」

 とても大きなオンバシラが紫さん家の庭に垂直に突き刺さってます。

 お祭りを思い出す光景ですね。

「にゃんででっかい柱が!?」

 藍さんの声で正気に戻りました。藍さんまだ目覚めてません?

 そうです変ですなんでここにオンバシラ!? でも、あれは……!

 ま、間違いありません……! 幻想郷中探してもこんな立派なオンバシラを出せるのはただ一柱!

 我が祭神神奈子さ

「迎えに来たわよ早苗……」

 まってあれ霊夢さんだ。

「れ、霊夢さん……?」

 うわぁ。慣れてないんで錯覚だったら嬉しいなぁとしか思えないんですけどこれ殺気ですか?

 秋の夜とはいえ寒過ぎますよえへへ。

「霊夢!? おまえどうやってここに!?」

 藍さん完全に目覚めましたね。

 かみかみの藍さんも可愛くてよかったんですけど。

「どうやってって……こいつでよ」

 ごん、とオンバシラを叩く霊夢さん。

 ……乗ってきたんですか?

「バカな、如何にオンバシラと云えどあの結界を破るなど……!」

「私が力を貸せば容易い」

「神奈子様!?」

 状況というかオンバシラだけ見て確実に居ると思っていた神奈子様が出てらっしゃいました。

 でも、神奈子様の立ち位置が、まるで、霊夢さんに力を与えているような……

「私と霊夢ならあの程度の結界、障子紙に等しいね」

 手を組んでるー!?

「だ、だがどうやってこの場所を!?」

 藍さんの言い分も尤も。二度目の来訪となった私もここがどこなのか全然理解してません。

 しかし霊夢さんはさらりと答えました。

「私のホーミング弾を神奈子の力で超強化。オンバシラをベースにしたショットは私が乗ってもOK。

誘導性能は個別追跡が可能な上速度もパスウェイジョンニードルのおよそ10倍!

いかなる結界をもブチ破りつつどんな場所に居る奴も必ず追い詰めるっ!

これの追跡を逃れる手段は食らいボムくらいしかないわっ!」

 神奈子with霊夢! と叫ばれましても!

 わ、私でも認めざるを得ない天才の霊夢さんに超武闘派の神奈子様が……

 チートってレベルじゃないですよ!? 勝ち目がないとかそんな問題じゃない!

 誰が勝てるっていうんですかこんなの!?

 なんですかこれ悪夢ですか! 博麗悪夢に改名してくださいよっ!?

「二度は出来ないっていうかしたくない裏技よ……

神力がオーバーロードし過ぎて明日には全身筋肉痛確実だわ」

 うわわオーラがガスバーナーみたいに全身から噴き出してる……

 レミリアさんのスペルみたい……

「山の神が随分軽率な真似をするわね」

 漸くと云うべきか、紫さんが割って入りました。

「こっちも巫女を取られっぱなしじゃ腹の虫が治まらないんでね」

 取られ、って……泊まりに来ただけじゃないですか!? どういうことですかこれ!?

 話が通じないと判断したのか紫さんは霊夢さんに向き直ります。

 霊夢さんと神奈子様は並んでいるのでほんのちょっと角度変えただけですけど。

「霊夢……何故こんなことを……」

「黙れ女狐。…………藍じゃないわよ」

 そういえば藍さんは狐ですね。しかも女性ですね。

「今日という今日は堪忍袋の緒が切れたわっ! あんたの女たらしっぷりにはうんざりよっ!

叩きのめしてぎゃふんと言わせてやるから覚悟なさいっ!」

 古いです霊夢さんっ! 流石にぎゃふんは死語です! 

 あ。ってことは幻想郷じゃ流行りなんでしょうか。

 なんて言ってる場合じゃないですよ!

 霊夢さんの背後に神奈子様みたいにオンバシラが何本も浮いてます! カリスマです!

 あわわわ……れ、霊夢さんが神奈子様の攻撃力取り入れたら……

 ん? 女たらし。紫さんが?

「へ? ちょ、霊夢? 何言って」

「聞く耳持たんっ!!」

 紫さんは鳩が豆鉄砲食らったような顔をしています。

「おまえなんぞにうちの娘はやらないよ!」

「ちょ、神奈子までなに言い出すのよ!?」

 あー……? どういう勘違いされてるんでしょう……?

 何時の間にやら紫さんが悪役に。あれ? 私囚われのヒロインですか?

 えへへ恥ずかしいですね。

「問答無用! 即興秘奥義「御柱弾幕結界」をくらえぃっ!!」

「隙間がないとなっ!?」

 でも攻撃方法がどう見ても悪役ですよ霊夢さんっ!

 狙われてるの紫さんなのに私まで物凄く怖いです!

 ひええオンバシラが所狭しと飛び回ってます!

「待ちなさ、うひゃっ!? く、み「魅力的な四重結界」っ!!」

 強力な結界で防いでますけど防ぎきれません!

 わ、私も手伝った方がいいんでしょうか……あっ!

「紫さん危ない! 乾神招来 御柱っ!!」

 オンバシラによる絶対防御! よかったまだ使えました!

 しかしオンバシラをオンバシラで防ぐって物凄い絵面ですね!

「って止まりませんよー!? こ、坤神招来 盾!」

 ひいいいくら防いでも限がありませんー!

「あはははは神の力にひれ伏せぇぇぇいっ!!」

 ああ! 藍さんがブッ飛ばされたー!

ぶっつん

 え? なんの音ですか?

「廃線「ぶらり廃駅下車の旅-平日朝のラッシュ-」ーっっっ!!!」

 無数の古い電車がオンバシラを弾き飛ばしたーっ!?

 あ、霊夢さんと神奈子様が轢かれた。








「正座」

「いや、あの」

「正座」

「わ、私らはその、早苗を」

「正座」

「……ごめんなさい……」

「……すいませんでした……」

 霊夢さんと神奈子様が庭に正座させられてます。

 紫さんの怒りも御尤もです。庭も家も滅茶苦茶です。

 あちこちに古い電車とオンバシラが突き刺さりまくってます。

 藍さん生きてるでしょうか……

「で? なんでこんなことしたのかしら?」

「だから早苗を」

「霊夢に訊いてるの。黙れ神奈子」

「ごめんなさい」

 神奈子様が頭下げてるのなんて初めて見ました……

「…………」

 しかし霊夢さんは憮然とした表情を崩しません。

 口を尖らせて黙り込んでます。

 むう。この期に及んで往生際の悪い。

「霊夢?」

「…………」

「霊夢?」

「…………」

「れ・い・む?」

「いだだあだだだだっ!?」

 おおう。アイアンクローです。ミシミシいってます。

「いだいいだいいだい痛いってば!」

「じゃあ無視やめなさい」

 紫さんの長い指が外されました。

「で?」

「……さ、早苗に……」

「あなたもそれ? まったく、モテモテね早苗ちゃん」

「え? もて?」

 何を言い出してるんでしょう紫さん。

 霊夢さんはまだ言いきってませんよ?

「あんたが早苗にばっか構うから!!」

 ほら、目を白黒させてる場合じゃありませんよ紫さん。

 なんとなく霊夢さんと紫さんの話だと察しました。だから紫さんの背を押してあげます。

「え、ちょ、ちょっと……どういうこと?」

 きょとんとしてる紫さんを霊夢さんは睨みつけます。

「あにめだかロボだか知らないけど、私にはなんにもわかんないけどさ!

寂しかったんならなんで私に何も言わないのよ!」

「だ、だって霊夢は女の子で、こういうのに興味ないと……」

「早苗だって女でしょうがっ!」

「でも、興味ないのに付き合わせちゃ悪いかな、って」

「興味も何も訊かれてすらいないからさっぱりよ! わかんないわよっ!」

 言い切って、霊夢さんは俯きました。

「……だから、こんなカチコミ仕掛けてきたの?」

 霊夢さんの顔が真っ赤になってます。

 でもまぁ、気持ちはわかります。

「ごめんなさい霊夢さん」

「……む」

「一人だけ仲間外れにしちゃって」

 初めてロボ友達が出来て浮かれ過ぎちゃいました。

 除け者扱いは辛くて、寂しいですよね……

「――怒る訳にいかなくなったじゃない」

 紫さんは深々と溜息を吐きました。

 そして、そっと霊夢さんを抱き締めます。

「ごめんなさい。……寂しい想いさせちゃったわね」

「……そんなんじゃ、ない……」

 口ではそんなこと言いながらも霊夢さんは紫さんの袖をきゅっと握ります。

「これからは……一緒にガ●ダム観ましょうね、霊夢」

 感動的です、思わず貰い泣きです……

 理解し合うのって、なんて素晴らしいんでしょう。

「……あの、早苗……」

 あ、居たんですか神奈子様。























 ――なんて大騒ぎから一月が過ぎました。

 空もすっかり秋模様で夏の名残は残っていません。

 あれから私が紫さんの家に遊びに行く頻度も日数も減りました。

 お泊りなんてあれから一回しかしてません。

 でも霊夢さんと紫さんとお喋りしながら観るアニメは面白かった。

 また三人でお泊りしたいものです。

 すぐにアニメが観れなくなったのは寂しいですけど、今はいいと思います。

 霊夢さんがアニメを勉強中ですし……私にはこれがありますから。

 紫さんに頼んで買ってきてもらったプラモデルにほくほくです。

 オーガ●ダム実戦配備型とガ●ダムエク●アRⅡのプラモデルが三体ずつ。

 うふふこれでしばらく楽しめます。にとりさんに半田ごて借りなきゃ。

 罰として諏訪子様に吊るされてる神奈子様を見ないようにしながら立ち上がります。

 空が高くなりました。これからは稔りの季節。

 早く霊夢さんと対等にアニメを楽しみたいですねぇ――





 ……それにしても――


「なんで霊夢さんはあんなに必死だったのかな……?」
「ちょっと紫! 劇場版はないの!?」

「え? 劇場版は来年公開よ?」

「うわ、生殺しとは言わないけどきっついわ……」

「そうねぇ。じゃあ来年、公開したら一緒に観に行きましょうか」

「え?」

「ほら、いつぞやの約束。まだ行けてないでしょ?」

「え、でも……巫女の仕事、あるし……」

「一日くらい大丈夫よ。それとも私と一緒は嫌?」

「……そんなこと……ないわよ」

「じゃあ決まりね。来年、一緒に映画を観に行きましょう」



三十度目まして猫井です

非想天則で早苗さんが見せてくれた少年マインドにやられました

ロボはロマンなんですよ諏訪子様!



※誤字修正しました。コメント12番さんありがとうございました
9/6
※誤字修正しました。コメント53番さんありがとうございました
9/7
>コメント64番さん
今更表現を変えられませんのでこのままで……
勉強になりました。ありがとうございました
猫井はかま
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コメント



0.4000簡易評価
7.90名前が無い程度の能力削除
さwwwwなwwwえwwwさwwwんwwwww
非想天則では確かに良い少年マインドを持ってましたねw
しかしこゆい・・・!

序盤は爆笑できたけれど、でも中盤辺りから少しツッコミ役が恋しくなったかなぁ。
早苗さんじゃちょっとマイルドすぎたよーな気がします。個人的に、ですが。
9.90煉獄削除
早苗が等身大ガ○ダムの記事を見て叫んだり紫様と一緒にDVDを観たり
後には霊夢も加わったりと面白かったです。
吊るされている神奈子とそれを見ないようにしている早苗も良かったです。
10.90名前が無い程度の能力削除
お台場は混雑してましたよ~
帰りのバスなんか、途中からお客が乗れなくなってましたし。

非想天則での早苗さんは、確かに予想外でしたね。まさか、巨大ロボがツボだったとは…
とはいえ、幻想郷には、よほどのマイナーでないと流れ着かないですよねw

あ~、OO最初から見直してぇ~
11.70名前が無い程度の能力削除
等身大ガンダムならアリスに動かしてもらえばいいんじゃね?

ついでに寝ぼけた藍さまの等身大人形もうごか(ry
12.無評価名前が無い程度の能力削除
東風谷じゃない?
14.100名前が無い程度の能力削除
悲しいけど、これゆかれいむなのよね


ガンダムが無性に見たくなったwwww
15.80名前が無い程度の能力削除
ガンダムもいいけど、ACも・・・・
レイヴン人口増えてー!
17.90名前が無い程度の能力削除
最近のガ●ダムは消費者に媚び媚びで好きくない
好きくない…が、巨大ロボへのロマンとゆかれいむに罪はなし!
20.100名前が無い程度の能力削除
平日の朝ラッシュって何だその不可避っぽそうなwww

はんだごてで傷跡を再現とは早苗、できる…!
26.100奇声を発する程度の能力削除
ロボはロマン。
これ世界の鉄則。
27.100名前が無い程度の能力削除
良いね、早苗さん達が実に良い。

ロボットはロマンだよ!!

それが分かってるだけでGJ
28.100名前が無い程度の能力削除
ああ、ロボのロマンは素晴らしいですね。
思わずGN粒子が溢れてしまいそうになりましたよ
29.90名前が無い程度の能力削除
この早苗は他人とは思えない‥はっ、そうか!
私が早苗だったんだっ!(あまりの楽しさに錯乱中)

いやー、面白かったです。
鈍感な(つーか、普通のオタクの)紫と早苗に対比した
やきもち焼きの霊夢も可愛かったです。
32.100名前が無い程度の能力削除
面白かった!
早苗さんの主張が楽しい!
34.80名前が無い程度の能力削除
早苗さんwwwwww
35.100名前が無い程度の能力削除
最近のガンダムとACとゲッターはかっ飛び過ぎてて困る
とりあえず非想天則を魔改造して乗れるようにしようか
43.100名前が無い程度の能力削除
ロボといえば最近やってるマジンガーも忘れないでねっ!
48.90名前が無い程度の能力削除
早苗さんは機神咆哮もってそうな気がする
49.80名前が無い程度の能力削除
感情的な霊夢がこんなに可愛らしいものだとは思わなかった……。
50.70名前が無い程度の能力削除
とりあえず自重ww
53.90名前が無い程度の能力削除
誤字かな?
誤)メメモントモリ → 正)メメントモリ かと
こゆい早苗さんも良かったけど、霊夢が可愛すぎて可愛すぎて・・・
ガ●ダムは見に行きたかった・・・っ
57.100名前が無い程度の能力削除
非想天則において会話端々からロボ好きを隠しもせず駄々漏れてた早苗さん。
非の勝ちセリフで早苗さんに優しく、お台場にアレを見に行ったかのようなセリフもあったゆかりん。
同じく非の勝ちセリフで魔理沙には言えてもゆかりんには「退屈なんだけど…」の続きが言い出せなかった霊夢。
非の三人が見事に盛り込まれた話でした。
特に霊夢可愛いw
そりゃ一週間も好きな相手が自分と同じ年頃の女の子泊めてて自慢されて、尚且つまた三日も泊まりと知ったらキレるよね。
自分は誘いもしなかったのに、実は幽々子や萃香は以前誘ったことあるのあとで知ったら、またゆかりんはキレられそうだw
59.90名前が無い程度の能力削除
AC分が足りない!
コジマが足りない!
汚染度が足りない!

個人的にかなりツボでした。
60.100名前が無い程度の能力削除
レイブンとか……リンクスしか知らないんだよ~~

まぁノリがよくて楽しかった。
61.90名前が無い程度の能力削除
早苗さん、紫様……あんたらの気持ちよくわかるぜ!
62.100名前が無い程度の能力削除
そうかあの少年マインドの元が分かったぜ!
ガ○ダムだったか!!
63.90名前が無い程度の能力削除
百合とギャグの配分が素晴らしい!

好きなお話でした。
64.90名前が無い程度の能力削除
霊夢が中盤で紫に構ってオーラ出してるとこらへんから百合要因?の霊夢はマリみてにでもハマるのかと思ったけど別にそんなんじゃなかったぜ

あとはまあ、憮然はムスっとしてるって意味ではありませんよ。
65.100名前が無い程度の能力削除
紫と早苗のはっちゃけぶりがガンダムオタクの先輩(女)そのもので吹いたw
66.100名前が無い程度の能力削除
低度のV-ポジティブとAMS適正持ちのゴミナントが通りますよと……
ロボはロマン。激しく同意ですな。
69.100名前が無い程度の能力削除
劇種のことはもう許してやれよ・・・・
71.100名前が無い程度の能力削除
こんな女の子身近にいれば…
77.80名前が無い程度の能力削除
上手く説明できないが共感した
78.90名前が無い程度の能力削除
こんな女友達がほすぃ…
79.100名前が無い程度の能力削除
>>「これからは……一緒にガ●ダム観ましょうね、霊夢」
感動的な場面のはずなのに、このセリフのせいで何だかよく分からないけど、いろいろと台無しで笑った
81.100名前が無い程度の能力削除
少年マインドも重要だけど
ホットケーキを炭にする早苗さんも大概だと思うんだ
83.100名前が無い程度の能力削除
霊夢…紅白(赤・白)
加奈子…赤・青
霊夢+加奈子…赤・青・白
なんというトリコロールカラー
84.100謳魚削除
霊夢さんがヤンデレるかと期待した結果がこれだよっ!
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ほう、外界デートとな?
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霊夢が可愛すぎて汝ら罪あり。
早苗さんぐらいの年なら、ビッグオーとかキングゲイナーも観てるのかな。
107.100名前が無い程度の能力削除
あとがきの「いつぞやの約束」が氏の作品(映画館にて)と何気につながりがあって2828できた
それにしてもこの早苗、テンション高いなぁw
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イイネ
128.100名前が無い程度の能力削除
パシフィックリムしか好きじゃねぇ!