Coolier - 新生・東方創想話

La Flamme de L'amour(後編)

2009/09/02 21:23:39
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9.



 卯の花くたしの長雨がつづいている。
 五月が終わったばかりだから、もちろん、まだ梅雨には入っていない。
 それでも注意は必要だ。魔法の森の六月はひどく湿気る。蔵書や薬液が駄目にならない
ように、水よけのお札やら除湿効果のある流木やらを、たくさん準備した。
 ある日、ふと自分の部屋のすみを見ると、花冠が腐っていた。
 アリスと丘の上の結婚式で交換した、―――あの花冠。
 嫌な匂いを立てて、触ると粘つくような水気を帯びていた。裏がえしたら足の多い虫が
何匹か集っていて、ぎょっとして花冠を取り落とす。
 べちゃり、と言う音がして、床に落ちた花冠は形をくずした。

 ざぁ。
 ざぁ。
 ざぁ。
 嫌な雨。


「アリス」

「何」

「お前から貰った冠、壊れちゃった」

「かんむり?」

「結婚式の晩の」

「結婚式?」

「お前から、恋人になってって言われた晩のあれだよ」

「ああ」

「………壊れちゃったんだ」

「そうね、じゃあまた作らないと!」

「………そりゃ違うだろ」


 アリスの執着の薄い性質には慣れている。
 ただ。
 今だけは無くしたものを惜しみたい気分だった。
 一人で外に出る。
 雨はしっとりと世界につけ入って、たんたんと湿度を上げていく。森も家もぜんぶが形を
失って、溶けていくような気がした。
 中庭をよこぎって、森の淵に出る。
 そこには大きなニレの木がある。うずくまり、浅く土を掘って、そこにこわれた花冠を
とむらった。エプロンドレスが水気を吸って、少しずつ重くなる。私は眼をとじて何かを想う
フリをしながら、影のようにしのび寄る不安をやり過ごした。

 ため息とともに確認する。
 ………私は、今のアリスとの生活に、不満を感じている。

 なにか特別なことがあったわけじゃない。
 何もなかった。
 何もない日々が一週間くらいつづいて、その中で日常はゆっくりと輝きを失った。
 認めたくなかった。結婚式、舞踏会、アリスと過ごしたきらきらとした時間が、こんなに
あっさりと錆び付いてしまうだなんて。あの夜の思い出があれば永遠の孤独にも耐えられる
気がしていたのに、なんて安っぽい話。

 お伽話のお姫さまたちを思う。
 きれいなハッピーエンドのあとに延々とつづく日常を、あの子たちはいったいどんな風に
飼い殺したんだろう。日々が腐るにあわせて心を鈍らせていったのか。もしくは、ときおり
与えられる、炭酸の抜けたシードルのようなキスで満足したフリをしていたのか。
 それとも。

(………キスの先があれば、満足できるのかな)

 無感動に、そう考えた。
 こんなことを。
 無感動に考えるだなんて、思いもしなかった。


「ふと思ったんだけど、恋愛っていつ終わるのかしら」


 夕食のときに、アリスがものすごいことを言い出した。
 
「おいおいちょっと待てよ。―――アリスは終わらせたいのか?」

「そういう訳じゃないけれど、たいていの物事は終りに向かって進むじゃない」

「………まあ、読書も、作曲も、勉強も、そうだよな」

「でしょう? 基本的には、たいていの行為って、終わらせるために続くのよ」

「途中で終わらせないために長引かせたりするけど、最終的には終わらせようとするな」

「じゃあ何かをするって、何かを終わらせようとすることと一緒じゃない」

「それっぽいと言えばそれっぽいけど、探せば例外がありそうだぜ? それ」

「そう、その例外のひとつが恋愛だってことに、最近気付いたのよ」


 アリスはその発見がよっぽど嬉しいらしく、私を指さしてそう言った。もっとも、フォークは
きちんと皿の淵に下ろしていたから、アリスのテーブルマナーと品性は夜逃げをしたわけじゃあ
ないらしい。
 いや、それより。
 なんだこの話題。
 どこへもいけない気持ちに悩んでた時に、なんでこんな話をしなきゃいけないんだ?


「恋愛はなぜか、終わらせないことを前提にした行為。これって矛盾だわ」

「………そんなの、当事者が終わらせたくないだけだろ」

「そういうものなの?」

「だから建前じょう、永遠の愛情とか言うけど、どこかで冷めて終わるんだ、どうせ」

「そう考えるのが妥当そうね」

「ははは。すっごく短い期間を、永遠と取り違えさせるのが、恋の魔力だったりしてな」

「カグヤスティックなものねぇ」

「だったら本当に一瞬で終りだよな。虚しいな。恋する女の子は永遠と須臾の姫君なんだもんな」


 自虐。
 半分やけになりながら、露悪的なことを言ったのは、アリスにそれを止めて欲しかったからだ。
なのにアリスと来たら「上手いこというわね」とかなんとか言いながら、クスクス笑っている。
一体こいつはなんで、理屈をこねくりまわして、私が悲しむようなことを言うんだろう。
 だから。

「笑うなよ」

 私はそう言った。

「は?」

「笑うなよって言ったんだ」

「いや、笑うところだったじゃないの」

「耳が遠くなったのか? お前の一方的な勘違いだったんだよ」

「何で急に怒ってるわけ?」

「知らないぜ。怒るところだからだろ」

「そんな事は知りません。私怒られるようなことしたかしら? したなら謝ります」

「胸に手をあてて考えろよ。じゃあな」

「ちょっと待ちなさいよ魔理沙。まだご飯残ってるわよ」

「知らないぜ。お前の喋りは食欲なくすんだよ」

「何それ? 私たちの喋りなんて、たいていこんな調子でやってきたじゃない」

「それにもうんざりなんだよ。言葉遊びで何でもかんでも軽くしやがって」

「お喋りなんてそんなものでしょう」

「お前には悩みとかないのか?」

「無いわ」

「そうか。私はさしあたり山積みって感じだぜ。じゃあな」

「だから待ちなさいよ」


 椅子をたって部屋に戻ろうとする私のまえに、アリスは先回りした。
 意外だ。怒ってると思ったのに、申し訳なさそうな顔してる。
 肩を落として、ぎゅう、とこぶしをにぎり、伏し目がちに私を見ている。


「………悪いところがあるのなら正すから、教えてよ」

 かっとなった。
 判ってる。
 これは八つあたりだ。寂しくてしょうがない気持ちをアリスにぶつけてるだけ。
 なのにアリスがスキのない正論をかえしたから、返答に困っておこってるんだ。

「知るかよ」

「知るかよっていわれても」

「とにかくお前が悪いんだよ。どれだけ鈍感なんだ。理由がわからなかろうが反省しろ」

 どんな子供も、こんなに支離滅裂なことはいわない。
 怒りと自己嫌悪が刃をたてながら、心は斜面をすべりおちていく。こんな種類のさびしさを、
私はしらなかった。なんでこんなにアリスがそばにいるのに、こんなにもアリスが遠いんだ。

「いい加減にしてよ。そんなことを言われても困るわ」

「お前の都合なんか知らないぜ」

「なにそれ。何処まで身勝手なのよ」

「み、身勝手なのは、お前だろうが」

「………魔理沙?」

「私は、こ、こんなに辛いのに、なんでお前だけ、」

「いや、え?」

「お前だけそんなに余裕な、ん、だよ、私が………んっく、どんな気分で、いっつも、いっつも」

「ちょっと、なんで泣いてるの?」

「お前っ………がぁ、泣かしてるんだよぉ………!」

 
 みっともないな。
 雨にうたれてくずれる砂の山のように、私は泣いた。
 ちっちゃなころ、泣くのが心地よくてよく泣いてた記憶がある。けれど今は泣いても、まるで
辛さがへらない。自分のみじめさを確認するためだけの、なみだ。

 ―――好きだと相手につたえれば、それでなにかが変わるんだと思ってた。
 何も変わらなかった。あの日のおもいでなんて、なかったみたいに日々は進んだ。
 それが。
 悲しくて。
 寂しくて。

 どうしていいか判らないアリスが、私の肩を抱く。
 体温をすいとるようにそっと腕をからめて、指で私の涙をすくいとる。
 こんな。
 こんなときなのに、心が揺れた。
 心臓がどろりとにごった血液をはきだしている。ああ、胸のなかのこの場所はたぶん、アリスを
想うための器官だったんだ。でもずっと気持ちがみたされないから、いまは油のように重く鈍く、
アリスを欲しがるようになった。
 私はつぶやく。

「………うるさくて、うっとおしいなら、キスしろよ」

「その間だけは、口をふさげるから?」

「ああ」

「そうね」

 いつものように、アリスのくちびると私のくちびるが、重なる。
 けれど、その後はいつものようには行かなかった。
 頭がまっしろになったんだ。

 強く、強く抱き返した。
 そうしてアリスも私も粉々に割れて、まざりあってしまえばいいと思ったけど、私の細い腕は
そういうことには不向きだった。鬼みたいな、吸血鬼みたいな、強くておぞましい手が欲しい。
見合わない気持ちを抱えた体が、すり切れてなくなって行く気がする。
 キスもひどかった。
 渇いた人が水を求めて果実にかぶりつくような、そういうくちづけ。
 わりこませた舌先でどんなにアリスを探っても、不安と怯えの気配しか見つからない。背なが、
すぅっと冷えていく。全力で叫んでも世界がこだまを返してくれない、そういうイメージ。

 いつか思った。
 踏みこんでも、この気持ちが一方通行だって、思い知らされるだけ。
 それでも心のどこかでは想いは届くと想っていて、でも単にそれは甘えで―――私は、今、
この瞬間、それを再確認しただけで、それ以上でもそれ以下でもなくて、なのに、こんなに、
すべてに裏切られたきぶんになっているのは、なんで、なんだろう。

 ふいに突き飛ばされた。
 
「………、やめてよ、魔理沙、何やってるの」

 急に支えを失った私がふらふらとよろける。アリスも後によろけて三歩の距離が出来る。
いつか私も、こんなふうにアリスを突き飛ばしたことがあった。あのとき分けいった森の
真ん中で私はいま、ぐるぐるとさ迷っている。ああ、しめった蔦のむれにからめとられて、
足のさきからゆっくりと爛れていく。
 半泣きのままで、露悪的に言う。

「アリスは、人を好きになるってどんな気持ちか、知りたかったんだよな」

「………そうよ、前までは、そうだったわ」

「こんなだよ。全然キレイなものじゃないぜ」

「………でも、今はもう恋を知りたいなんて考えてないわ。私はただ、恋してる女の子を」

「恋してる女の子も、こんなだよ。
 みっともなくて、あさましくて………もうほんとう、だめだろ? ―――はは、っていうか、
 考えたら今、そうとうひどい顔してるんだろうな、私。
 アリスの前ではかわいくありたいってずっと思ってたのに、なんかもう………こんなだよ」

 ゆっくりと、しゃがみこむ。
 いまさらに体面を気にしても、なんにもならないのに。
 アリスにみっともないところは見せたくないのに、そばにいてほしい。

「大丈夫、魔理沙は、きれいよ」

 うそだってわかった。

「それに、なんとなく判った。私が魔理沙を好きになってあげられないせいで、」

 アリスの言葉は、

「魔理沙がすごく寂しい想いをしてるんだって、」

 ただ、壊れそうになってる私を、つなぎあわせるためだけに、

「だから私が悪いのね。ごめんなさい」

 責任感から出てる、空虚なことば。

「………別にアリスは悪くないぜ」

 それに私は、空虚な言葉で、返した。
 ひとまず、この場は取り繕われた。
 私たちは会話をやめて、二人で逃げるようにリビングを去って、自分の部屋に向かった。


 後手にドアをしめる。
 灯りもつけずにベッドに身を投げて、ゆっくりと身を闇にひたす。
 私は。
 私は今日まで、アリスにとって人形どうぜんの相手だった。
 拒まず、避けず、ちょっかいまじりの猫かわいがりをそのまま受ける、都合のいい人形。
 私もアリスに好かれようとするあまり、どこか人形めいた反応をするようになっていた。
 けれど。
 今日の私はまちがいなく、アリスが求める可愛らしいリアクションの枠を超えていた。
アリスが私に求めている気持ちより、ずっとたくさんの気持ちをアリスに投げ返した。

 最後のアリスの眼には、すこしの感情もこもっていなかった。
 ―――私はアリスが演じる恋愛劇の舞台から、たった今、下ろされた。
 
「ちくしょう」

 こんななのに。
 こんななのに、未練があって。
 体が熱いんだ。指先がアリスの髪の感触を恋しがってる。アリスのくちびるがどんな味を
しているのか、もうすっかり私は覚えこんでしまった。

「………いやだ」

 離れたくない。
 でもどうしよう。
 アリスはたぶん(というか、ほとんど確実だと思う)私に愛想をつかした。生殺しだって
思ってた日々でさえ、今の私からみたら輝かしいものだ。
 時計の針をもとにもどす手品なんて、咲夜だって使えないけど。
 せめて愛情がもどるような魔法は、この世にないだろうか。

「待てよ」

 跳ねおきた。
 ベッドサイドのランプを点す。
 手近な本棚から一冊の本を取り出した。パチュリーのところから借りた精神操作に関する
研究書だったけど、妙なメモがはさまってたのを思い出す。てばやくページを繰る。

「………あった」

 ななめにページに張り付いたメモには、こう書いてあった。

『《Love potionに関する幾つかの覚書》』

 急いで眼をとおす。

『―――Love potionとは泰西に伝わる秘薬であり本邦の言葉においては媚薬ないしは惚れ薬と
 訳すのが適当かと思われる。早い話、服用した者に恋情を齎す薬だ』

 読みすすめる。

『ただし実際の効果の程は疑問視せざるを得ない。
 おそらくはこの薬の効用は相手の好感を上げたり官能を刺激するのが精々であり所謂所の
 《一目惚れ》を起こす事は期待できない。
 人妖を問わず恋愛感情が発生するメカニズムは 不明瞭でありまた極めて複雑なものだと
 推測される。非常に精妙であろうその条件を一の薬剤のみを以って成し遂げるのは―――』


「………つまり、愛着は増しても、恋愛感情は湧かないってことか」

 なかば落ち込んで、なかば安心した。
 アリスが私を真に想ってくれるのなら何よりだけど、そもそも愛着が戻ってくるだけでも、
十分にありがたい。けれど、もとの日々に戻ったらやがて不満を感じるだろうと思い、自分の
現金さをちょっと自嘲する。
 それにしても。
 恋ってなんて不思議なものなんだろう。
 あのパチュリーでさえ『恋愛がどうやって始まるかは良く判りません』って書いてる。
 だとすれば、恋をしらない生き物として作られたアリスに恋を教えるのは、絶対に無理だ。
 
「絶対に?」

 記憶に、なにかが引っ掛かった。
 なんだろう。

 ―――アリスちゃんは、恋のかたちをつかめない。
 ―――恋のかたちは心のかたち。心のかたちは欠落のかたち。

 神綺のことば。
 あの人形劇の中で神綺人形がアリスに言った、あの言葉だ。
 前も思ったけど、あの台詞はアリスが神綺に実際に言われた言葉を、そのまま転用してる
ものだと思う。魔界神のことばのなかには、なにか大きなヒントがあるんじゃないか。


 ―――欠落と欠落をかさねて、恋は生まれるの。


「そっか」


 気付いた。
 まちがいない。
 これが鍵だ。

 さらに早く、ページを繰っていく。

 《楽しさを増す魔術に関する考察》

 これじゃない。

 《感情を増幅させる魔術に関する考察》

 これでも、だめなんだ。

 《多幸感を齎すいくつかの植物を使った実験》

 そうじゃない、楽しさだとか愛着だとか、そういうものをただ増やすだけじゃあ、それは
恋にならないんだ。
 欠落と欠落をかさねて、恋はうまれる。
 お互いが、かつえたように求め合って、それはようやく恋になる。そうして求める心には
満たされるべき空虚さが必要になる。薬膏が傷口をもとめるみたいに、恋する心には一つの
奈落が必要なんだ。
 けれど、アリスの心にはそんなのはない。
 作られた少女。
 魔界神の娘。
 すべすべの陶器のように取り付く島もない心は、恋をしない。
 だから。

 ―――《さびしさを齎す薬毒に関する研究》

 傷を引く必要があったんだ。
 誰でもない、私が。
 

 まずは材料を集めないと。
 アリスに気取られないように、そっと二階の窓から抜け出す。
 雨は止んでいた。でも空気はむせ返るほどの湿り気に満たされていて、これはもっと獰猛な
雨を降らせるための小休止なんだと思う。豪雨の夜は視界が効かない。できるだけ早く探し物を
終わらせたかった。

 心は千々に乱れていたはずなのに。
 目的ができたとたんに体は動く。
 ―――私はいま、とても魔法使いらしいことをしているな、と場違いことを思った。
 つたえきかされた、魔女たちの末路をおもう。
 迫害されてあたりまえだ。こんなに後ろぐらい生き物は、他にはいないだろうから。

 合歓木の花。スイカズラの蜜。真新しいトカゲの死がい。
 夾竹桃の茎はほんの少しで良かった。強力な毒をもつ草汁を毒効がなくなるまでうすめると、
毒いがいの薬効をもつようになる。うすめるための水も澄んだものがいいから、井戸じゃなく
近くの小川から水筒にくみとった。
 熟したヤマモモがあっさりと手に入ったのは幸運だった。持ち帰る途中ですこしだけかたちが
崩れたけれど、汁がこぼれ過ぎなかったら問題はない。
 雨が降り出す前に。
 ぜんぶの材料を、あつめることができた。

 忍び出た部屋にもう一度もどる。
 汗をかいていた。
 湿度の高い魔法の森を動き回ったせいだ。
 
 汗を拭いて、服を着替えた。
 水筒にためた小川の水を、ひとくちだけ飲む。
 気持ちが落ち着いた。

 ―――魔道書を読みながら、注意ぶかく調合する。
 秤やケトルは部屋にある。八卦炉を使えば火も起こせるから、薬を作るのに必要なものは部屋に
そろっていた。材料を切りわけるのには、ペーパーナイフとといだ万年筆をつかうことにする。

 できるだけ手早くやった。
 とかげの目をこげるまで焼いて、灰を合歓木の花にまぜてすりつぶす。
 夾竹桃の毒をうすめるのは厄介だったけど、わずかの毒を砂糖にまぜて、その砂糖を丁寧に
測ってから水で溶いたら、うまくいった。できた水を毒見するときは怖かったけど、実際には
なんともなかった。

 それらをまぜて、火にかける。
 つぶしたヤマモモの果汁とスイカズラの蜜を入れてよく煮込み、最後にできたシロップが
「完成品」だ。ケトルの底にしずんだそれをスプーンですくって、ジャムの空き瓶につめる。

 できた。
 この毒をアリスに盛るんだ。
 それできっとうまくいく。完璧だったアリスの心に大きなひびが入り、人と同じく恋をする
生き物へとなり下がる。依存とあこがれを織りまぜた粘っこい心の釜が、アリスの魂のすみかに
なるんだ。
 それは。
 ある意味で。
 アリスを、殺してしまうことと同じじゃないか。

(やめろ、考えるな)

 想いかえす。
 終わらない冬の日。
 久しぶりに見たアリス・マーガトロイドは、空のはざまを楽園と見立てて人形たちと遊んでた。
それはどこまでも閉じた一人遊びだったのに、屈折や孤独をまるきり含んでなかったんだ。
 完璧な情景だった。
 ひとつの絵のように。
 
 きっと、あの日。
 私が気付いていなかっただけで、たぶん恋はあの日に始まってたんだ。
 
(だからなんだ)

 私がアリスを好きになったのは。

(そんなことを考えてなんになる)

 アリスが、人との関わりのなかで汚れない少女だからで。

(たとえなにを失くしても、いまやらないとだめなんだ、全部)

 ―――だから私は、アリスの中のいちばん綺麗な部分を、殺そうとしてるんだ。

(だからって、だからって―――これ以上、満たされない気持ちに、たえられない………)


 雷鳴。


 空気を震わせて、近くにいなずまが落ちた。
 真っ白な光が夜をさく。鳥たちが木々からいっせいに飛び立つ気配がする。
 それと同時に。
 私の中の葛藤も消えた。
 闇といっしょに吹き飛ばされたのかもしれない。
 ただ、押し黙っているだけかもしれない。
 それでも、今やるしかないことだけは確実だったんだ。

 降り始めた雨が、屋根を叩く。
 アリスは九時過ぎにアフターディナーティーを取る習慣がある。
 それを見越して、アリスのカップに毒を塗りこめた。

 あっけなく、すべてが終わった。


「………ん」

 テーブルの上に、置き手紙があった。

《魔理沙へ。
 お夕餉の席では不愉快にさせてしまってごめんなさい。
 とても難しい問題だけど、ふたりで話しあって、ふたりで考えれば、
 きっと、もっとうまくいく方法がみつかると思います。
 食器棚に、魔理沙が好きなハチミツ入りの檸檬水を作っておきました。
 お詫びにもならないかもしれませんけど、のどがかわいたら飲んでおいてください》

「………はは」

 運命が舵を切る音がする。
 心の中で大きな波がひとつ、ふたつ砕けて、凪が訪れた。
 食器棚にあった檸檬水は捨てた。
 空っぽの感情を雨音が埋めていく。
 夜がたわんで、落ちていく。
 
「はは………」

 もっと。
 たくさんの罪悪感があっていいはずだ。
 巧いやり方はまだ残ってるかもしれない。私は私のまま、アリスはアリスのままで、幸せに
なれる方法が見つかるかもしれないんだ。そういう可能性をすべて殺してしまうのは良くない。
手遅れじゃない。今ここでカップを洗えば、やり直せる―――。
 そういう思考のすべてが。
 どうでもよかった。

「もういいよ」

 まとわりつく六月の空気が。汗の残り香が。日々の欠片が。思い出のすべてが。罪のなごりが。
 私のそばを、ひとごとのように通り過ぎていく。
 不快感さえかんじない。ただ、うっとおしい。
 自分の体が自分のよすがであることさえ、不自然だった。



 乾いた力の全てを使って、自嘲した。
 私は。
 魔女。
 たった今、売り払った何かと引き換えに、望んだものは手に入るだろう。




10.(Jardin de la Flamme)



「アリス」

「魔理沙」

「ああ」

「あなたがやったの」

「ああ」
 

 そうして、私はいま、ここにいる。

 アリスは毒を飲んだ。
 確かめるまでもない。みればわかる。
 青いひとみに屈折したひかりが揺れていた。―――寂しさと憎しみ、すがりたいきもちと
たたき伏せたいきもちの間で、アリスは卑怯な逃げ道をさがしている。こんなに複雑で、
やすっぽい表情を、いままでのアリスは絶対にしなかった。
 曇りひとつない鏡が、割れて。
 たくさんのパズルピースに変じた。
 それを繋ぎあわせようと、アリスは四苦八苦している。破片の幾つかがたましいにささり、
ときおり喘ぐような呼吸をくりかえす。ただしい態度とありようを探して、視線は病んだ
ひとのように部屋じゅうをさ迷う。
 その眼が、私に合う。


「………なんで」

「好きだったから」

「なんで」

「寂しかったからだよ」

「なんで!」

「それしか、やり方が思いつかなかったんだ」


 淡々と答える。
 アリスは人を憎むことになれていなかった。まだ不安とわかたれていない怒りの表情は、
どこか母親にあまえる子供のよう―――。
 その表情が、悪意のがわにぶれる。
 ぱん。
 ほほが鳴った。
 顔のひだり半分があつくなる。
 アリスは自分の右手を見ながら、とても不思議な顔をしてる。なぜいま、私に平手打ちを
したのか、自分でも理解できないみたいだった。


「………何よ、これ」

「普通のことだろ」

「ぜんぜん普通じゃないわよ、意味がわからないわよ」

「毒なんて盛られたら、誰だってそんなふうになる」

「そうじゃなくて、そうじゃないのよ、なんで!? なんで!?」


 さけびながら、アリスが膝をおった。
 自分の体をだいて、がくがくとふるえている。ぼろぼろとこぼれる涙はそのままに、
世界を壊すように、問う。

「なんで―――なんで、こんなに寒いのよ。
 今は六月よ? 真冬でも私は、こんな寒さを感じなかった」

「寒さじゃないんだ」

「じゃあ、何なのよ」

「寂しさ」

「………これが」

「そういう毒を盛ったんだ。相手を寂しくさせる、そういう毒を」

「私が、こんなふうになるって、知って?」

「そう」

「私が今どんな気分でいるか、判ってるっていうの?」

「まぁな」


 がしゃん。
 鏡が割れた。
 こんどは比喩じゃない。アリスが床におちてたカップをひろって、狙いをつけずにおもい
きり投げつけたんだ。カップは後の壁に当たるまえに、私の髪をかすめていた。
 アリスが立ち上がる。

「魔理沙ぁ」

 こんどは、ティーポットが犠牲になる。
 床にちらばる破片なんてないみたく、アリスは部屋のなかをさ迷って、目についた物を
たたき壊してまわった。レースとフリルに満たされた空間。アリスがしつらえたこの部屋
だけは汚しちゃだめだと思って、片付けもこまかくやっていたけど。
 アリスが、それを壊していた。

「こんな―――こんな、めちゃくちゃな感情を押し付けておいて、」

 もちろん、アリスも無事じゃすまない。
 魔法使いの体はふつうの女の子と変わらない。レースをさき、テーブルを返し、こぶしを
壁にたたきつけるたびに、生傷をふやしていった。
 丁寧にととのえられた部屋が壊れていく音が、耳に刺さる。
 叫び声の代わりだ。

「なんで、そんなに涼しい顔をしてるのよ、」


 部屋じゅうのものを、小さいものから大きなじゅんに壊していったアリスは、さいごに
ひとつだけ壊しそこねた物がある事に気付く。
 私だ。
 ふらふらと、こっちに寄る。


「魔理沙、あなたはなんで!? 私をこんなにしても何も感じないの!?」


 ここで壊されても、いいかなと思った。


「アリス」

「………何よ」

「すっごいよくわかるぜ。アリスの気持ち」

「嘘よ嘘よ嘘!! こんなに、寒くて体が凍りついたみたいで、今にも胸の中がくだけて、世界の
 底が割れちゃいそうで―――こんな、こんな気持ち、判るわけがないじゃない!!」

「私が、ずっと、そんなだったからな」

「何をいってるの?」

「アリスがそんなふうにしたんだよ」

「私が? それこそ嘘じゃない! 私は魔理沙に毒なんて盛らなかったし、だいいちこんな感情が
 この世にあるなんて知らなかったのよ!? 自分でも知らない感情を、どうやってあいてに
 押し付けるって言うのよ!」

「知らなくても意識しなくても、アリスはそれをやったんだよ」

「私そんなことしてない」

「してないつもりでやってたんだ。ずるいよな。無垢なつもりで、罪なんてしらないつもりで、
 アリスは毎日私に毒を注ぎつづけたんだよ」

「してないったらしてないの!! なんで魔理沙は私を混乱させるようなうそばっかりつくの!?
 わ、私をこんな気持ちにして何がたのしいのよ!? 他人のたましいをもてあそんで! その上
 じぶんが被害者みたいなことまでいいだして!!」

「はは。おんなじことお前に言いたいぜ。すっごいいい気味―――ざまぁみろ」

「………っ! うるさい! 仮にほんとうだったとして、魔理沙の気持ちなんて知ったことじゃない!
 私が魔理沙になにをしていようがどうでもいい!!
 私が今苦しんでいることのほうがよっぽど大事よ!!」


 こぼれる涙が歪める碧い目は、まるでゆらめく炎のよう。
 アリスの指が、私の首にかかる。

 でも―――やっぱりアリスは、私を壊せないだろうな、と思う。
 アリスの暴れかたは、敵意をぶつけているというよりも、混乱しきった自分のこころに
責任をとってくれる誰かを探してるみたいだった。私があばれてるのはお前のせいだ、
止めたかったら私の心をなんとかしろ、そんなふうに。
 だから人形も使わない。
 ほんとうに壊しちゃいけないものは、壊せないからだ。

 ふいに、アリスが私から手をはなした。
 というよりも体ごと後ずさった。ほとんど飛びのくような勢いだ。


「どうした?」

「………判らないのよ」

「お前のこころをめちゃくちゃにした悪い魔女は私だぜ。それが目の前にいるのに、なんで
 逃げようとしてるんだよ。もう許しちゃったのか?
 それとも、首をしめるのが怖くなったのか?」

「そうじゃない、そうじゃないのよ」

「だったらやればいい。簡単だぜ。首をしめるだけだ。力が足りないんなら人形繰りの糸を
 使えばいい。それだけでおまえの邪魔者は、この世から消えてなくなるんだ」

「そんなの言わなくたってわかる、でも、これ―――なに? なに?」


 こんどは私が、一歩ずつ、アリスに近寄っていく。
 アリスが後ずさる。


「アリス」

「いや」

「教えてやろうか」

「やめて、来ないで」

「お前が私の首を絞められなかったのは、抱きつくしぐさに似てたからだよ」

「もういい! 聞きたくない」

「聞けよ! 寂しくなったら誰かにすがりつきたくなるのは当たり前なんだ。お前がいま私から
 手をはなしたのは―――、」


 アリスが私を突き飛ばす。
 おもわず、アリスの手をつかもうとする。
 それを逃れたアリスは素早くドアをあけて、外に飛び出した。

 あのお祭りの夜の私みたいだ。
 相手に近よるのがこわくて、逃げ出す。
 自分のなかの好きな気持ちを飼いならせなくて、背を向けてしまう。
 けれど間違えてる。アリスは逃げだしたつもりで、飛びこんだんだ。私がそこをさ迷った
暗くて深い森は、いっけん出口にみえる場所にまちかまえている。

 アリスを追って、外に出た。
 ひどい豪雨だった。波に化けた空気があまつぶをはらんで、小さな船のような魔法の家を
何度もゆさぶっていた。眺めの端、青いワンピースが駆けていく姿がみえる。
 この天気じゃ空の上のほうは風が出てるから、空を飛んで逃げることはかんがえにくい。
箒や八卦炉はいらない。ただ走って、アリスをおいかけるだけ。

 ―――影絵のような木々が、左右にわかれてながれていく。
 魔女の目はよく利いた。
 べつに魔法の目薬をさしたわけじゃない。視界のない森の雨夜を走るためにひつような、
落ち着きと想像力を、追う立場の余裕が与えてくれた。一方の動転しているアリスはひどい
もので、すぐに足を木にひっかけたり、ぬかるみに足をとられたりする。

 私は。
 お姫さまになれなかった。
 自分からはもとめずに、ただアリスの求めるようにふるまっていれば、私はアリス専用の
お姫さまになれたと思う。気を引くことなんてまるで考えてません、っていう顔で、ただ
相手からあたえられるゆるやかな愛情をうけいれる。
 それは、なんて素敵なことだろう。
 世界でいちばん甘い幻想。
 けれど。
 私は、そうなれなかったんだ。

(だから、手を汚した)

 毒を盛った。
 相手のたましいを傷つけた。
 私はもうお姫さまなんかじゃなくて、それをかどわかす悪い魔女。
 悲しむ資格なんかない。だから悲しまないことにする。惜しむ資格なんてない。だから
惜しまないことにする。私の恋は祝福されるべきものなんかじゃなくて、誰にとってもただ
忌まわしいだけのものに成りさがった。
 それでもよかった。
 アリスの心が、欲しかった。

 
「―――見つけた」

 
 嵐の森のまんなか。
 木々のあいだにひらけた場所で、アリスは座りこんでいた。
 グラスアイをおもわせる視線は、どこにも焦点があっていない。いままで知らなかった
はげしい心のうずを制しきれなくなって、アリスの心は動くことをやめてしまっている。
 森がうなる。
 ブナも、ナラも、ただの木々であることをとっくにやめていて、風にあわせて腕をのばし
たわめる、まっくろな炎の海のようだった。

「魔理沙」

 アリスのつぶやきは、はっきりと聞こえた。
 風にちぎられた小さな音でも、アリスの声だけはぜったいに聞きたがえない。

「魔理沙、私を、逃がして」

「何からだ」

「―――魔理沙のそばにいたいって思う、私の気持ちから」

 アリスも、風のなかで私の声が聞こえてるみたいだった。
 同じくらいつよい気持ちで私を求めてくれているんだ。
 
「………それは、むりだ。それに、できてもやらない」

「怖いよ。胸の中で火花が散ってる。ふとした拍子で火をよんで、ぜんぶ燃えそう」

「そっか」

「魔理沙から離れるのもいや。魔理沙にちかづくのもいや」

「―――悪い、アリス」

 私は会話を打ち切って、そう切り出した。

「私はアリスのいうことにこたえられない。アリスをそんなにしたのは私だし、アリスを
 そんな風にしたことを、私はぜんぜん後悔してないんだ。
 それにもう、アリスを離したくない」

「好きだから?」

「好きだから」

「………勝手」

「勝手でいい」

「私、ひょっとしたら、魔理沙のこと好きかもしれない」

「そっか」

「人を好きになったら、自分勝手になっちゃうの? そんなのいや。死にたい」

「好きなだけ勝手になっていい」

「魔理沙を独りじめして、どこか世界の果てに隠しちゃうかも」

「いいよ」

「そんなのだめ。魔理沙がよくても、だめ」

「帰ろうぜ」

「いやよ。私はここからうごきたくない」

「こんな嵐じゃ、へたしたら帰れなくなる」

「帰れなくなるまで、ここにいたいの」


 アリスはじべたに座り込んだままで、膝をかかえてしまった。
 いますぐ駆けよりたいけど、不安定な今のアリスへ急に距離をつめることに、ためらいが
あった。もちろん離れる気なんて絶対におきない。雨粒がどんなに体をぬらしても、ここに
とどまるつもりだった。
 そのとき。
 がさり、という音がした。
 視界の端にまっくろな影がおちる。
 風でいたんだ木の枝が、たおれこんだんだ。

「やば、」

 おもわず走り出す。
 あの枝がアリスに当たったらどうしよう。
 よく見えなかったけどけっこう大きい気がするし、意気消沈してるいまのアリスには
多分よけられない。もし頭にでも当たったら、大事になりかねないと思う。でも私の
足を動かしたいちばんの力は、そういう冷静な考察じゃなくて。
 アリスを傷つけるものは、許せない。
 そういう感情だった。

「―――うっわ!」

 前をむいて、驚く。
 さっきまで座ってたアリスが、こっちに走ってきてる。
 止まろうとして、足がもつれた。そこに飛び込んできたアリスが私を押したおして
地にふせって、そのすぐ上を木の枝が通過していった。
 アリスも。
 私とおなじことを、考えたんだ。
 

「………魔理沙、」

「………ああ、あいにく大丈夫だ」


 大地にねっころがったまま、すぐ上から降ってくるアリスの目線を受ける。
 このときのアリスの目を、私はぜったいに忘れない。
 誰にも盗られないように、心の底の一番だいじなぶぶんに、しまい込むことにする。

 抱きとめられた。
 呼吸がとまるくらいに、強く。


「魔理沙ぁ、どうしよう………」

「―――はは」

「もうだめ、むり、魔理沙の胸の中から、私出られないかも」

「私も出ていかない。カギかけて閉じ込めてもいいぜ」

「そんなのいやよ、魔理沙を抱きしめるためだけの腕なんて、私いらない」

「私は大好きだぜ。すらっと伸びてて、爪の先まで綺麗だから」


 そういうと、アリスは細い腕に、もういちど力をこめる。


「やだ………なんだかもう、どんどん好きになってく」

「それでいいよ」

「ずるいわ。人の心をめちゃくちゃにして、自分のものになったら甘い顔」

「ずるくていい」

「良くない。私はゆるさない」

「ゆるさなくって、いいよ」

「うん。忘れない。魔理沙が私を傷つけたんだって、私はずっと忘れない」


 アリスは私のくちびるに、キスをおとした。
 かみつくようなキスだった。アリスが私にこんなことをするのは、はじめてだった。
人形劇の恋人ごっこじゃとても出来ない、はげしいキス。
 痛みがはしった。
 つたなく求め合ううちに、私の唇が切れたんだ。
 身をはなしたときにかかった橋には、赤いものが混じってたと思う。
 血の味がする。これは傷の味、私がアリスに入れたヒビの味なんだ。
 そう思うと。
 もう、どうしようもなく胸が熱くなって。

 おかしかった。
 アリスは私が付けた傷のせいで私を好きになっていて、その好きな気持ちをうけて
私はいま、とても満たされたここちになっている。私は自分で引いた傷を、自分で
愛してるんだ。なんで閉じた循環だろう。
 そんなにいびつな恋なのに。
 はじめてキスをしたあの日みたいに、心臓がたかなっている。
 こんなに清い幸せなんてうそだと思った。
 そんなのは私なんかにはふさわしくない。
 もっと暗くて湿った場所が、今の私にふさわしい住処のはずなのに。


「魔理沙」

「………何だよ」

「もっとたくさん、魔理沙に傷をつけたい」

「怖いよ」

「なのに、なぜか守りたいの。へんだわ、こんなの」

「別に。普通だぜ」

「魔理沙もこんな気分なの?」

「そうだ」

「夢みたいなこの気持ちを家に持ちかえったら、もどれなくなりそう。現実がぜんぶ、
 溶けてしまいそう」

「大丈夫。もどれなくなったその先に、私もいるから」

「この雨がかわくときに、消えちゃいたい」

「だめだ。アリスは絶対連れてかえる」

「わがまま。いじわる」

「それでいいから、わがままを聞いてくれ」

「………なぁに?」

「もっかいキスして、帰ろう」

「………うん」


 私たちは首を絞めるように抱き合って、
 つなぎとめるようにキスをする。

 ひとつだけ。
 まちがいが許されるなら。
 この嘘といかさまで出来上がった私たちの恋を、寿いでもいいだろうか。
 今だけはむつみあう自分たちを、仔犬のようだと思ってもいいだろうか。
 誰かに問う。もちろん答えはない。罪や罰や許しやあがないをつかさどる、私のなかの
大きななにかはどこかに雲隠れしてしまった。私は永遠にゆるされないし、罰されない。
吊り橋の上ですんなりと立って、生きていくしかない。
 それでいいと思った。

 私たちは耳をふさぐように抱き合って、
 ひとみをとじるようにキスをする。
 











 ―――夜半過ぎに、雨は上がった。
 嵐のあとの森はびっくりするほど静かで、シーツの擦れるおとが目立つのがはずかしい。
はやく世界にたくさんの営みがもどって、夜を感じさせてほしかった。
 
「そう思う? 魔理沙には静かにおもえるの?」

「うん」

「私にはちがう」

「そうか?」

「雲のむこうでゆっくりと月がすりへるおとが、聞こえる」

 汗をすったキャミソールは執着のなえどこ。
 肌と闇のにおいと柔らかな髪の毛。すぐそばで燃える蒼い炎のけはい。

「夜が終わっていく」

「そっか」

「うん、耳をすませて。こんなに豊かになにかが終わっていくなんて、思わなかった」

 私はアリスのゆびにゆびを絡めて、アリスが名ざしたものを聞き取ろうとする。
 まどの向こうで夜が香る。
 雨に洗われた沈丁花の花が開いたんだ。

 しずかに思えていた世界のあちこちから、たくさんの音がこの家に届く。
 そうした、さまざまのものたちに彩られながら、夢の淵はあくまでも端正だ。
 柔らかなふくらみに耳を押し当てると、アリスの心音が聞こえる。心臓。恋を結ぶ場所。
今は乳飲み子のように穏やかなリズムで、血液をめぐらせている。
 瞳をとじて、眠りに落ちるまでのわずかな時間に、今私たちを抱いているものはなにか、
それについて思いを馳せた。




Encore.




 蝉の声でめがさめる。
 ベッドから起きてあたりをみまわすと、きのう花瓶にさした露草がひらいていた。
私のへやにあるのは派手な花ばかりだったけどれでようやく落ちつきが出そう。
 けれど、一緒にいれた伊勢花火と高砂槿は一日花。
 花瓶のなかの調和はたぶん、あと半日くらいしかもたない。
 きのう、こちらの花とおもえば、今日はこちらの花で、世界の色はとりどりだ。


 葬式に出るための喪服はいらなかった。
 いつもの白黒のエプロンドレスで、じゅうぶんに辛気くささはこと足りる。


 人間の郷の朝は、ようしゃなく賑やかだ。
 通りのすみずみまで活気にみちあふれ、これから始まる一日に備えている。
 その片隅に鯨幕。
 そこだけは切り離されたように、空気がしずか。
 箒でとんできた私をみとめると「彼女」の両親は涙をながした。

「―――娘は、とても、魔理沙さんを慕っていて」

「そうか」

「まさかこんなことになるだなんて、病気でもなし、階段から足をすべらせただけの」

「大丈夫だぜ。これだけの人に好かれて死ねば、三途の河の渡し賃には困らない」

「そうでしょうか」

「万一があれば、死神にでも話を通すさ。聞いてくれるかわからないけど」

「ありがとうございます。ありがとうございます」

 靴をぬぐと、上がりかまちを踏んで家の中に入る。
 夏だから遺体はいたんでいるだろうと思ったけど、ちゃんと綺麗で、匂いもない。
 あの日の、すみれのような、穏やかな表情のままだ。

「ごめんな。私だけずるして幸せになった」

 ひつぎの中の彼女に、そう話しかける。

「そんだけ。じゃあな」

 彼女の、永遠にあいまいな微笑をうかべた顔は、私のことばに何一つ応じない。
 私はそのまま、葬儀場をあとにした。



「遅いわよ魔理沙、どこいってたの!」

「悪い。ちょっと人間の里に野暮用でな」

 帰ってきた私を出迎えたのは、アリスのせかすような声だった。
 午後の来客にそなえて、色々の準備をしていたらしい。

「もうっ。そんなふうに行き先を誤魔化すのは、やめてほしいんだけど」

「これ」

「何」

「凌霄花、家で飾れないかとおもってな」

「部屋のなかですっごい成長しそう。月まで届け、魔理沙の花」

「それはそれで面白いぜ」

 軽口をたたきながら、台所に腰をおろす。
 さすがに日が高くなるとあつくて仕様がない。魔法の森は幻想郷のほかの場所より
だいぶ涼しいのだけど、それでも夏のけはいはイヤというほど漂ってくる。
 時計をみる。
 予定のじかんまで、あと少しあった。

「魔理沙、お化粧する?」

「自分でやる。アリス好みの、あんまり華やかすぎるのはだめだ」

「私の【もてカワのお化粧人形】を認められないっていうの?」

「なに新型つくってるんだよ………」

 アリスの創作意欲がどこに向かうか不安だ。
 それはともかく。
 だいじな日だ。予定ははやくにこなして、後に準備する時間をつくるに限る。
 私は自分の部屋にひっこんで、準備をととのえることにした。


 来客は、正午過ぎにおとずれた。

「こんにちは」

「おう」

「………久しぶり」

「アリスちゃん、その子が貴方の恋人さん?」

「そうよ」

「恋人さんだぜ。どこに出しても恥ずかしくないくらいのな」

 神綺。
 魔界の神という大仰な肩書きとはうらはらに、力の抜けた笑顔としぐさで
私たちの向かいの席にすわる。けれど以前あったときとは違う、どこか底の
知れない、有無をいわせない力を神綺から感じた。
 母親の力だ。
 くすり、と神綺が笑う。

「恥ずかしい、の主語は、貴方? 私? それともアリス?」

「さぁ。出された場所にいる連中とかじゃないのか」

「それじゃあ他人ごとねぇ」

「世間ごとだ。ながい付き合いになったら、けっこう大事だぜ」

「ながい付き合いね」

「ああ」

「本当に永くなるのね」

「ああ」

 
 そこまで喋ると、神綺はためいきをついて、差し出された水を一杯飲んだ。
 そうして私に問いかける。

「貴方はいつだったか、魔界に攻めてきた魔法使いだったかしら」

「ああ。魔界に遊びにきた魔法使いで合ってる」

「あのときとはずいぶん印象が違うのね。何かあったの?」

「あの頃から性格がまったく変わってなかったら、そっちのほうがおかしい」

「何もなかったのねぇ」

「ああ」

「でも、アリスちゃんのほうには何かあったみたいじゃない」
 
「何か合ったんじゃなくて、私が何かしたんだよ」

「その二つはどう違うの?」

「出来事は裁けないけど、私がなにかやらかしたのなら、私を裁けばいい」

「そう。―――それで、何をしたの?」


 さっきから、アリスは押しだまっている。
 アリスは神綺に『恋人を作ってくる』と宣言して、私に恋人ごっこをもちかけた。
私とアリスの今の関係はその結果としてある。実際に悪いことをしたのは私だけど、
アリスは神綺に対して、罪悪感を感じてるみたいだ。
 神綺からもらった、欠落をもたないまっさらな心に。
 ひびを入れてしまったという罪。
 おかしな話だ。
 どう考えても守れなかったアリスじゃなく、壊してしまった私が悪いのに。

「私が、アリスにさびしさを齎す毒を飲ませた」

「そう」

「それで、もろくなったアリスの心につけこんで、恋をさせた」

「それに関して、申し開きはないかしら?」

「ない。悪いともおもってないし、アリスを返すつもりもない」


 だから、はっきり言ってやった。
 すぐ横のアリスが、目を白黒させながらこっちを見てる。
 そろそろ罪がどうとか言うのも飽きてきたころだ。
 私を否定したいのならすればいい。でも私からアリスを取るような真似は、絶対
させない。あいてが魔界の神だろうか、アリスの母親だろうが関係ない。誰かが
誰かを独占したいきもちは、ひとしく身勝手で無根拠だ。

「そう」

「許せないか?」

「私はそうでもないわ。正直アリスちゃんをこんなふうにされたのは、悔しくって
 しょうがないけど―――アリスちゃんにも心はあるんだから、私のてをはなれて
 育っていくのも、自然なことだとおもうの」

「そっか。ありがとうな」

「でも私がつくった他の娘たちは、貴方を嫌いになるかもしれない。アリスちゃんは
 アイドルみたいなものだったから」

「別にいいよ」

 私はこれからアリスが誰かとしゃべっていたら嫉妬すると思うし。
 誰かがアリスを好きになったら、そいつを嫌いになると思う。
 だから他のやつのねちねちとした感情も、決してうけいれられないものじゃない。

 そのとき、となりにいたアリスが、口を開いた。

「お母さま」

「なぁに? アリスちゃん」

「みんなに伝えておいて。………魔理沙のこときらいな人は、私は嫌いだって」

「かばってあげるの? アリスちゃんは優しいわね」

「勘違いしないでよ。魔理沙のためにやってるんじゃないんだから。―――ただ、
 せっかくはじまった新しい生活を邪魔されるようなら、気分が悪いってだけ」

「そう、伝えておくわ。それじゃあ最後に、魔理沙ちゃんにひとこと」

「何だ」

「あなたねぇ、いつ人間やめるの?」

「………アリスより背が高くなってから」

「そう」そういうと神綺は席を立って、玄関に向かった。「でも貴方、背伸びないと
 思うわ。童顔だし、いつまでもお人形さんみたいな女の子のままじゃないかしら」

「いや伸びる。っていうか伸ばす。すらっとした姿勢が似合うお姉さんになって、
 アリスにかっこいいって言わせてやる」

「はいはい、がんばりなさい」

 その一言とともに、魔界神は消えた。
 ドアが開いた気配はなかったのに、神綺のけはいだけが消えた。空間を無視して
移動できるのに、りちぎに玄関まで出かけていくのが神綺の神綺たるゆえんだった。
 ふとふりかえると、アリスがぐにょっとだらけていた。

「何だアリス。ついに魔法が解けてもとのスライムにもどるのか」

「変な設定つくらない! 単に緊張の糸が切れたのよ!」

「そっか。私はぜんぜん緊張しなかったけどな」

「………魔理沙はみょうに、度胸がついたわよね」

「アリスはなんか、照れ屋さんになったよな」

「うるさい」

「はは、なんかさ」

「なぁに?」

「これからどんどん変わっていくのかもなー、私も、アリスも」

「百年後くらいには、魔理沙が紫みたいな性格になってたりして」

「アリスがさとりみたいな性格になってたりしてな」

「私が引きこもりだって言いたいわけ?」

「アリスこそ、私が胡散臭いっていいたいのか?」

「揚げ足をとらない!」

「重箱のすみをつっつくな」

 
 はぁ、とふたりでため息をつく。
 ものうい夏の午後に、これからあと何回、こんなため息をつくことになるんだ。
 これからは、長い時間をいきる心の準備をしなければならない。
 知人のお墓をまいることも、多くなるだろう。
 別に、それはそれでいいとおもった。そのときだけ悲しんで、しばらくしたら
適当に立ちなおろうと思う。
 真摯な生き方じゃ、ないんだろう。
 ―――でもこれからは、無限の時間があるんだ。
 ずっと真剣に生きていたら、とてもやっていけない。
 

「アリス、すいか冷やしてたっけ」

「冷やしたら酒臭いのが抜けるのかしら」

「いやいや、萃香じゃなくて西瓜だよ」

「………誰?」

「誰何でもなくて」


 やがて日が暮れる。


 あまやかな紫色の闇に沈んだ一日のおわりは、疲れも憂鬱もすべてとかして、
団欒するひとたちの心を、不思議な満足で満たす。
 心からこぼれるような喜びでもなくて。
 自分の存在意義を果たしたような興奮でもなくて。
 それはどこか達観ににた、おかしな感情。
 
 ドラマチックな恋のはじまりを経た私たちは、きっと永遠のたそがれのなかで
終わらない薄闇をみつめつづけるのだろう。私は、それに親しみたいと思う。
 きのう、こちらの花とおもえば、今日はこちらの花で、世界の色はとりどりだ。
 大丈夫、私たちはやっていける。

 空に月が出る。
 毎日おなじ軌道で空を泳ぐそれは、さ迷っているのか進んでいるのかさえ曖昧で、
なんだか終わりあぐねた物語のようだった。
 私はそこから視線を切って、となりでうとうとしているアリスの髪をなでる。


                            
                         (おわり)
ご無沙汰しておりました。浅井キャビア(養殖)です。

まずは長いあいだお待たせしてしまってすみません。
それに伴い、自分でもびっくりするくらい長くなってしまいました。
(前編から数えて、原稿用紙150枚弱?)
できるかぎり読みやすく、を考えていろいろ工夫したつもりですが、
この量の前では焼け石に水かもわかりません。
途中で疲れた方は、ぜひ檸檬水の蜂蜜割りを飲んで休んでください。

プロットどおり進んだのに
実際に文章を読んでみると、好き嫌いの分かれそうな終幕になっててびっくり。
好んでいただければ幸いです。
好んでいただけなくとも幸せ。
それでは。
浅井キャビア
[email protected]
http://sucrette.blog88.fc2.com/
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コメント



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6.90削除
心の中でもやもやしたものが晴れたかと思いきや、やっぱりもやもやしたままでした。
切なくて、綺麗で、素敵な話をどうもありがとうございました。
9.90名前が無い程度の能力削除
Nous vous souhaitons le bonheur eternel.
今はこの一言のみお伝えしましょう。
10.100名前が無い程度の能力削除
お待ちしておりましたー!
中編の冒頭でガラッと雰囲気が変わったのでハラハラしましたが
魔理沙がアリスと幸せになれてよかった…
これで明日からも戦える!

>魔法が解けてもとのスライムに
ま、まさか…ビーナ様…?
13.100名前が無い程度の能力削除
正座して待っていた甲斐がありました。
無類のマリアリ好きですが、これはマリアリでなくても引き込まれる文章だったと思います。
この切なさが堪らない・・・!
素敵なお話ありがとうございました。
20.90名前が無い程度の能力削除
待ってました!
二人の掛け合いが面白かったです。
途中雰囲気が変わったのでどうなることかと思っていたのですがGOODENDで安心しました
22.100名前が無い程度の能力削除
これは素晴らしい。
おもわず夢中で読みふけってしまいました。
よいマリアリごちそうさまです。
26.100名前が無い程度の能力削除
おいいい これはいい作品すぐるでしょう?
100点じゃ足りNEEEEEEEEEEEEEEEEE と言いたいが追加点は後々の方に任せる。
魔理沙のヤンデレENDと肝を冷やしましたがすばらしい。魔理沙が人間を止めたときのお話もあれば是非是非見たいものです。
ファンになりそうです。次の作品も期待しております。是非、またこのようなアリスと魔理沙主軸のお話を期待しております
出来ればあなたの書いたアリスと霊夢の作品も見てみたいような・・・っとわがままは駄目ですね。
次回もマジで期待してるので頑張ってください
29.100名前が無い程度の能力削除
寂しさを知ったアリスの動揺がもう…ね
切なくも上質な物語をありがとうございました
なんだろう、グッドエンドなのに胸が痛いw
31.100名前が無い程度の能力削除
これは良い作品を見させてもらいました。
グッドエンドのハズなのに、胸がなんかもやっとしたままなのは
ホントなんでなんだろう?(笑
32.100名前が無い程度の能力削除
ほぅ、「アリスの心は初めから完成され、安定していたから恋が出来なかった」と。
「アリスの心にひびを入れれば、完全な球体のようだった心の形は崩れ、その不安定さを補うために恋をする」と?
・・・スッゲー!!!あんた発想が良い、凄く良い!!
そしてそのアイデアを十分に活かす文章力!感服致しましたッ!!
33.100名前が無い程度の能力削除
「待ってた甲斐があった」、これに尽きます。
これは正しく混じりっ気の無い百合恋愛。
17の人の言葉通り、人形劇から恋愛劇といった印象です。

魔理沙のやったことは非難されて然るべきことでしょう。
中篇までに居たアリスはもう居なくなってしまったわけですから。
しかしそれら全てを内包しつつ、最上の形だったのではないかと思えます。

語りたいことも上手く語りきれない、そんな気持ちです。
最高でした!
35.100名前が無い程度の能力削除
感動しました。凄い夢中によんだ
36.100名前が無い程度の能力削除
続きをお待ちしていました。
全編通して読みやすく、見せ場が要所要所にあってぐいぐいと引き込まれたのですが、
特に中編での人形劇の言葉回しと、後編でのアリスの動揺の描写が秀逸でした。
良い作品をありがとうございます。
37.100+ 900点 = 1000点削除
100点じゃとても足りないので勝手に1000点入れさせて頂きます。

もうひたすら圧倒されました。
巨大スクリーンで感動巨編の映画を3時間くらいぶっ通しで観た後のような余韻と虚脱感に支配されている状態です。

そして前編からは凡そ予想が出来なかったこの終わり方。
清濁全て飲み込んで最後に残るのが『幸せ』なら、これもありだと思います。
大変素晴らしいお話を読ませて頂き、本当にありがとうございました。
38.100名前が無い程度の能力削除
ダメだ、感想まとまんねぇ。
さっきから書いて消し、書いて消ししてて・・・
さっさと100点上げたい気持ちが溢れて止まんないから、もうあげちゃうw

最高だったぜ!
40.100名前が無い程度の能力削除
前編のアリスの人間離れした性格をこのように料理するとは素晴らしい。
魔理沙がとても人間らしい性格で大好きだ。
45.100名前が無い程度の能力削除
これは伸びる
46.100名前が無い程度の能力削除
前編の設定からどう締めるのか興味津々だったが実にいいエンドだと思う。人間らしいエゴを通した魔理沙が実にいい
47.100奇声を発する程度の能力削除
言いたい事はいっぱいあるけど纏まんない…orz
とにかく、物凄い感動しました!!!!!
48.80名前が無い程度の能力削除
百合は正直あまり好きじゃないです。
でも感情の動きの表現がうますぎる。恋したくなった
49.100名前が無い程度の能力削除
論理だけで構成されたアリスと人間らしい感情に支配された魔理沙のすれ違いからぐいぐい引き込まれました。
中編の10.を読んだときにはどんな鬱エンドになるのかとひやひやしましたが、
一応ハッピーエンドとなって個人的にはホッとしましたw

…だのになぜか胸が痛い…
せめて感情を手に入れたアリスが幸せになってくれることを祈るばかりです。
50.100名前が無い程度の能力削除
中編の頭の雰囲気からバッドエンドかと不安だったけど。
ハッピーエンドで本当によかった。
51.100名前が無い程度の能力削除
時間を忘れて読んでしまいました!
52.100名前が無い程度の能力削除
言葉がでてこない。
素晴らしいマリアリをありがとうございました。
53.100名前が無い程度の能力削除
すごかった。この一言につきます。
それにしても、なんか恋がしたくなってきた…作者さん結婚してくれ
56.100名前が無い程度の能力削除
この一ヶ月……私は待つのが楽しかったっ……!
前編何度も読んでなんとなく悲劇的な結末を想像して先が読みたいような怖いような
悶々と待った一ヶ月そして全部読み終えた今のこの気持ちなにこれなに
こんなにイレ込んだSSは初めてですハラショ!
58.100名前が無い程度の能力削除
確かに好き嫌いは分かれそうだけど、好きな人にとってはとってもよかったです!
あと、「パンがないなら~」の魔理沙がかわいかったw
59.90名前が無い程度の能力削除
自分だけが好き、でなぜ満足できないんだろう。
好きな人に好かれたいという欲求は、かなり多くの人が持っていると思うけど
よく考えると凄く不健康な欲求な気がします。

恋愛の楽しい部分だけじゃなくて、理不尽さや滑稽さといった泥臭い部分も
いっぱい詰まった作品だと思いました
60.90名前が無い程度の能力削除
良いです
63.100名前が無い程度の能力削除
とにかく物語に引き込まれました。
素晴らしいの一言です。
あー恋がしたい。
64.100名前が無い程度の能力削除
純真無垢ほど残酷なモノは無い、という言葉を思い出してしまいました。
禁断の果実を食べさせてしまったようですけど、この薬の効果は永続...ですよね?

さてと。誰も貰っていかないようなので、頂いていきますね。
がっつくようですけど、好物なのです。

っ【檸檬水の蜂蜜割り】ミ
68.100名前が無い程度の能力削除
\すげえ!/
70.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。前編のあのノリをこう料理されるとは
美味しゅうございました
71.100名前が無い程度の能力削除
切なく胸を打つお話でした。
個人的にはEncore以降にちょっととってつけた感がありますが
その感じも含めて大好きです。
74.100名前が無い程度の能力削除
一発であなたのファンになりました。
これはおれの厳選まりあり集.txt行きだな…
75.100名前が無い程度の能力削除
あまい
うま
77.100名前が無い程度の能力削除
何て言葉で表せばいいのか… もどかしいです。
一言、とても素晴らしかったです。
78.100名前が無い程度の能力削除
二人の心理描写が丁寧に描かれ、自然なストーリーになっている点がとてもとてもすばらしかった…
会話や地の文がすごい魅力的で心に残るうえに掛け合いのテンポもすごく良かったです。文句なし
84.100名前が無い程度の能力削除
お美事にござりまする。
恋だの何だのは私にはとても分かりませんが、
完璧だろうが曇りなかろうが、相手の都合関係なくぶち破るということは
各異変、特に永夜抄を思い起こさせます。
それにしても言葉が上手ですね。
90.100名前が無い程度の能力削除
読後感が半端じゃない。よかった。
作品についてはなんかもう、何も言えないけれど、ありがとうございます。
91.100図書屋he-suke削除
生々しさが壮絶
すばらしい
94.100ねじ巻き式ウーパールーパー削除
なぜかコメントが消えていたので、もう一度コメント投稿させていただきます。
素晴らしいアリマリでした。ごちそうさまでした。
95.100名前が無い程度の能力削除
前編で砂糖を吐いた俺の口にビターチョコ(中編)とブラックコーヒー(後編)をありがとう。
ヤンデレ魔理沙に俺脳内で、Star Dustが流れた。某動画のやつ。

そしてなぜか一文が生まれた。
『I now do in love』
文法無視だが空耳で『愛などいらん(世紀末)』無理やり訳せば『私は今、愛を殺します』
……なにをやってんだ、俺?
98.100名前が無い程度の能力削除
素敵なマリアリありがとうございました。
99.100名前が無い程度の能力削除
>>「百年後くらいには、魔理沙が紫みたいな性格になってたりして」
>>「アリスがさとりみたいな性格になってたりしてな」

この二人ならきっとそうなるんだろうなとなぜか納得できてしまいました。
恋を知り、そして与えた魔女達に幸あれ。

そして永劫に呪われる事でしょう。

素晴らしい作品でした。
102.100名前が無い程度の能力削除
あれ? 俺の付けたコメントが消えてる……ってことでもう一度。
素晴らしい話でした。この一言に尽きます。
うーん、恋がしたい。
103.100名前が無い程度の能力削除
あー恋したいなぁ
104.100名前が無い程度の能力削除
呪われてあれ
106.100名前が無い程度の能力削除
流れるようなテキスト
装飾性が高く透明感のある表現
ほどよい緊張感がありお洒落な雰囲気
前編だけでも何度も読み返すほどおもしろいのに、期待以上の話の展開とたたみ方
歪な夜の星空観察倶楽部の人が久しぶりに登場したのは、この作品があまりにもすばらしかったから
と思えるほどの出来
アリスと魔理沙がとてもかわいくて、それでいてやり取りはとてもそれっぽい
本当に楽しめるすばらしい作品に対して、心からの拍手と感謝を
109.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいとしか言い様がないです。
恋ですねー。恋したくなった。
110.無評価浅井キャビア削除
浅井です。
誤字脱字、文法的におかしいセンテンスを幾つか修正しました。
見返すと結構あるものなのですね、あやややや。

スパイスも結構入ったこの物語の、終りあぐねたこの終りを
多くの方々に楽しんで頂けたことは望外の幸せです。
それはもう感謝し切れないくらいなのですが、
どのみち書き手が為しうる恩返しなんて、より面白い話を書くことくらいなので。

次はもっと面白く。
そう思って頑張っていきます。
111.100名前が無い程度の能力削除
完結、および修正お疲れ様でした。前編からとても楽しませてもらっていました。

お互いが幸せなのに、グッドエンドともハッピーエンドとも言い難いこの複雑な結末、心に非常に跡を残すよい物語でした。
これからの二人には幸せのままでいてほしいものです。
114.100名前が無い程度の能力削除
前編から一気に読んでしまったのが勿体ないくらい素晴らしい作品でした。
台詞回しがとても綺麗で、一つ一つが心に響いてきました。
115.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。
綺麗にまとめましたね~。
118.100名前が無い程度の能力削除
あなたが神か。                              とてもよかったです!感動しました!
119.100名前が無い程度の能力削除
本当に素晴らしい作品をありがとうございました。
今まで読んだどのマリアリよりも、心に響きました。
124.100名前が無い程度の能力削除
ここまでしないと両開通の愛情にはならないというのか
マリアリの道は恐ろしく険しいのかもしれない

長文ながら飽きの来ない文、展開、一つ一つが素晴らしいものに感じました
ごちそうさまでした
125.100シンリ削除
きっともっと違う道があったはずなのに、欲望のままに手を汚した魔理沙
自分が汚れるだけならまだしも、相手を壊してまで手に入れようとしたその傲慢
とても歪で卑怯でずるくて脆い、人間臭すぎる魔理沙がいいですね
これはバッドエンドなのでしょう。不健康に閉じた世界の泥沼みたいな幸せの形
祝福はできないけれど、そもそもこの二人は他人からの祝福なんて望まないのでしょうね

テンション高すぎて長文すみません……心揺さぶられる素晴らしい作品でした
ありがとうございます。
127.100名前が無い程度の能力削除
いいですねぇ、こういうの。
128.100名前が無い程度の能力削除
何これおもしろい。
131.100名前が無い程度の能力削除
苦甘いぜ、まさに恋。
132.100名前が無い程度の能力削除
これはいいマリアリ。100点じゃ足りないじゃないか

神綺「さくやはおたのしみでしたね」
136.100名前が無い程度の能力削除
請いの瘴気を留め置く、魔法の森の閉塞性こそ悲しけれ。

いや、凄い物語でした。
139.100名前が無い程度の能力削除
構成・文章ともに素晴らしい上に好みの話ときてはひいきせざるを得ません。
143.100名前が無い程度の能力削除
ビターチョコレートの舌の奥に感じる甘さがたまらない。
144.100名前が無い程度の能力削除
びっくりするほど面白かった。
146.100名前が無い程度の能力削除
人形劇すごかった。
まりさの感情の動き、苦しみがすごく伝わってきた。
100点以外つけられません。
149.100名前が無い程度の能力削除
なんというバッドエンディングなんだ。
魔理沙が毒を盛る前に後、一ヶ月。いや一週間もあればアリスが恋を学ぶ事も出来ただろう。
魔理沙が後少しでも毒を盛る事を我慢する事が出来たのならば、ハッピーエンドにたどり着く可能性もあったのに残念です。
結局魔理沙のやった事は、アリスを魔理沙の望むような人形に仕立て上げただけだった。
前半のアリスが成長仕切れなかった事が悲しいです。
ハッピーデンディングが見たかったなぁ。
でも、バッドエンドも大好きです。
151.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいです
159.100名前が無い程度の能力削除
結局恋ってどういうものなんでしょう。よくわかりません。
でもこのお話はとても面白かった。それだけは確かです。
160.100名前が無い程度の能力削除
よかった、素晴らしかったです。
161.100名前が無い程度の能力削除
この呪いを祝おう
162.100名前が無い程度の能力削除
何故この作品をもっと早くに読まなかったのか
魔理沙の心情が、見ていて胸が痛くなるくらいでした
168.100名前が無い程度の能力削除
手を汚したからバッドエンドだとか妖怪になるからダメだとか
そういうのはどうも違うと感じるね
この上ない最上のハッピーエンドだと思いました
たったひとつの作品でたった一人のキャラクターに
これほど多くの感情を詰め込められる力量に
脱帽するしかないです
169.100名前が無い程度の能力削除
素敵な作品でした。
171.80名前が無い程度の能力削除
恋は愛おしさや嫉妬や寂しさなど様々な感情が折り重なったもの。
それがわからないアリスは、アリスが考える理想通りにしか進まない人形劇に魔理沙を巻き込み苦しめた。

魔理沙は演じる事に疲れ、他の道を模索するでもなく、利己的な理由でその人形劇をぶち壊した。

結局、お互いがお互いを欲っした故の、悲しいエゴの押し付けあいだったのだなと私は感じました。
172.90名前が無い程度の能力削除
エゴの押し付けあいを我慢すんのが愛なんじゃん?
まぁ魔理沙の一杯一杯感は可哀想ではあったけど
媚薬は卑怯な気が、、、

色々考えさせられました。
177.100名前が無い程度の能力削除
>>172
魔理沙が盛ったのは媚薬じゃないですよ

完全無欠なアリスの心を殺して不完全なものに仕立て上げた。しかし不完全であるからこそ完成するのが心とも言える。
果たしてそこにあったのが身勝手なエゴにすぎない物だったのだとしても、それも一つの欠けた心の姿なのでしょう。
178.100名前が無い程度の能力削除
後編の魔理沙の、「何も悪いと思ってない」っぷりが凄く素敵でした。

この泥臭さが恋愛の面白さだよなぁ、と思いました。本当に素晴らしかったです。


ちくしょうアリマリを期待して読んだらマリアリで騙された!でもニヤニヤしちゃう!二千点あげたくなっちゃう!←
184.100名前が無い程度の能力削除
素敵でした
185.100非現実世界に棲む者削除
私の予感は杞憂に終わったようだ。よかったよかった。だが切なさは増してしまった。
二人共末長く、お幸せに。
195.100名前が無い程度の能力削除
不完全でこそ恋はなりたつ
人間や妖怪が不完全であるのも恋のためなのかもしれませんね