「咲夜、この招待状は何?」
レミリアは簡素な紙をピラピラ振って、咲夜に問いかけた。先程、従者から渡されたものだ。
「選ばれた者だけが出られる、特別な大会の参加招待状でございます。お嬢様」
咲夜がかしこまって答える。
「選ばれた者だけが出られる大会?」
「はい。厳正な審査の上、見事、お嬢様が選ばれました」
「ふーん、他の参加者は?」
「白玉楼の庭師、疎と密を操る鬼、楽園の閻魔、守矢の神でございます」
咲夜の答えに、レミリアは部屋に響くほどの高笑いを上げる。
「いいわ。ククク……、それでこそ私、レミリア・スカーレットが出るべき大会ね。咲夜、日程は何時?」
「明日の二十二時でございます」
「準備を万全にしておきなさい。その大会、紅魔館の『紅い悪魔』がもらったぁ!」
~翌日~
『第一回! 幻想郷、ロリコーーーーーーン、グランプリィィぃぃぃーーーーーーーー!!』
『何これぇぇぇーーーーーー!?』
レミリアはライトアップされた舞台で思わず叫んでいた。他の参加者――妖夢、萃香、四季映姫、諏訪子―も同じである。
「ちょっと! 咲夜、どういうことなの!? ていうか、何でそんな審査員みたいな席に座っているの!?」
「審査員みたいじゃないです。ちゃんと審査員ですよ、お嬢様」
『尚、司会は私、幻想郷男子代表、森近霖之助。審査は右から十六夜咲夜さん、西行寺幽々子さん、星熊勇儀さん、小野塚小町さん、八坂神奈子さんの巨乳5。会場は霊夢さんより、博麗神社特設スタジオでお送りします!』
ウオオォォォーーと、深夜に近いはずなのに、会場は異様なボルテージに包まれる。
「観客多っ!? 貴様ら全員変態か!」
『あははー。その発言は否定できませんねー。ちなみにもれなく全員ロリからの罵倒に興奮を覚えるような方々なので、言葉には気を付けたほうがいいですよー』
「ダメだ! この大会開始早々から終わってるーーーー!」
あぁ、確かに一部鼻息が荒い奴がいる。襲われたらさっくり殺しておこう。うん。
レミリアは他の参加者を見渡す。大体自分と同じような反応をしているので、どうやら自分と同じあの審査員席に座っている馬鹿共に騙された被害者らしい。
そのうち、四季映姫がずいっと前に出た。
「この中で一番の責任者はどなたですか?」
声は平静だが、恐らく内では怒りの炎が渦巻いてるに違いない。目がレミリアから見てもとても怖かった。
「あたしだよ」
と、神奈子が不敵に笑って名乗り出る。
「どういうことか一応説明してもらいましょうか?」
ニヤニヤ笑ったまま神奈子は説明する。
「なに、先日ここで宴会があったろ? そこで幻想郷で誰が一番ロリなのか議論になってだな」
「そんな討議が行われていたとは……」
妖夢が呟く。他の参加者も唖然としていた。
続いて、幽々子がニコニコしながら説明する。
「とりあえず、“ロリは比較的低背、貧乳、童顔で、ギャップが大事”ていう定義はまとまったんだけどね。後は全員身内自慢になっちゃって。じゃあってことで、一番を決めるためにこうしてお客さんも集めて大会を開いたってわけなの」
『…………』
「お? どうした?」
「……あの、神奈子。一つ聞いていい?」
「いいぞ。我が自慢のロリっ娘、諏訪子よ」
「…………、……あのさ、私達の意志は?」
「ん? 今そこに立っているだろう?」
諏訪子と他参加者はただただ黙った。
そして、どうやら同じことを考えていたようだ。諏訪子達はすぐに自分達の意志を示した。
すなわち、回れ右をして帰り始めた。
「あぁ、ちょっとちょっと、萃香」
「何、勇儀? あたし達は見ての通り出る意志なんてさらさらないよ」
「まぁいいじゃねぇか。昨日はあんなに意気込んでたんだからさぁ。勝負から逃げるなんて、鬼じゃないぞ?」
「いいよ。人のコンプレックスをこんな形で弄ぶような鬼よりはマシだね。じゃ」
『おおっとぉ!? 参加者たちが一様に帰って行くぞ!? これでは大会はどうなってしまうのかぁ!? 観客も動揺を隠せません!』
ふんっ、とレミリアは鼻で笑う。
知ったこっちゃないわ。こんな変態の変態による変態のための大会になんて誰が出るものですか。そもそも困るのはあの変態達だけで、他のやつは誰も困りはしないわ。
そう、レミリアが高を括っていると
「ちょっと待ちなさい!」
レミリアは驚いて後ろ振り返った。
誰!? こんな変な大会を続行させようって輩は!?
『おぉっとぉ!? これはぁ、会場提供の霊夢さんだぁーー!!』
「えぇっ!? ちょ、れ、霊夢!?」
レミリアは驚愕しながらも、疑問に思う。そういや、なんで霊夢はこんな大会に神社を貸したのだろう? 彼女に一体何の得が? いや、ちょっと待てよ……まさか……。
レミリアに限らず、参加者全員はすぐにある程度の予想が出来た。そして、その予想は的中する。
「あんた達がいないと、お金が全然入ってこなくなるでしょうがっ!」
あぁ、やっぱり……。やっぱり金か。金で私達を売ったのか。神社貸したのか。
レミリアは嘆息しつつも、目を細めて悠然と忠告する。
「霊夢、そこを退きなさい。でないと痛い目に遭うわよ?」
「やれるものならやってみなさい。今月の生活はピンチだから、本気で行かせてもらうわ」
「はぁ……いくらあなたでも私達を同時に相手するのは難しいのではないですか?」
「あぁーあ。鬼も舐められたものだねぇ」
「まぁ、その度胸は褒めてやってもいいけどね」
「悪いですけど、こちらも本気で行かせてもらいます!」
こうして、少女達の弾幕勝負が始まった。会場は様々な色と質と量を兼ね備えた弾幕が飛び交い、会場は一時騒然とする。しかし、その弾幕合戦は五分と経たずに収束した。結果は――
「ま、負けた……」
「なんて強さ……」
「金がかかった霊夢がここまで強いとはね……」
「あーうー」
「私なんて……技の一つすら……」
ということで。
『野郎どもぉ! ロリが見たいかーーーー!』
オオォォォーーーー!
『てめぇらはロリコンかーーーー!』
オオォォォォーーーー!
『ならば今宣言しよう! ロリコン諸君! 第一回幻想郷ロリコングランプリ、再開だーーーー!』
ウオオオオォォォォォーーーー!
「くそぅ。変態共がぁ……」
レミリアは悔しそうに呟く。先程の弾幕で服はボロボロである。本当は逃げたいところだが、霊夢がしっかり見張っているため、逃げることは出来ない。
『さて、ルール説明だ。まず、参加者は五人。右から、レミリア・スカーレット選手、魂魄 妖夢選手、伊吹 萃香選手、四季映姫・ヤマザナドゥ選手、洩矢 諏訪子選手だ。まず、この五人の中から一人、シードを選ぶ。そして、気になるシードを決める方法だが……それは、大会責任者の神奈子さんから発表してもらいましょう』
「うむ。選別方法はズバリ、『いきなりロリっ娘人気投票合戦』だ!」
(うわぁ、初っ端からろくなもんじゃなさそう)
「これはいたって簡単なルールだ。この五人を外見だけで誰がよりロリなのかをオーディエンスが投票をして決める。投票方法は、この五つの賽銭箱に一人コイン一枚を放り込む方式だ。ただし、最低百円とする。それで、百の位の数をポイントとし、統計を計るんだ。つまり、百円なら一ポイント。五百円なら五ポイントだ」
「みんなー、出来れば五百円玉にしてねー!」
(うわー、霊夢なんか目が煌いてる。すごく笑顔が輝いてる)
「それでは、各々投票を開始してくれ」
観客投票中……
「さて、集計も終わったな。それにしても、相変わらず金ことになると計算が速いな。霊夢は」
「ふふん。たいしたことじゃないよ」
(投票し終わって五秒で枚数と金額を計算したのが、たいしたことがないんだ……)
「よし、結果を発表しよう。レミリア、六百三十七ポイント。妖夢、三百五十四ポイント。萃香、四百二十三ポイント。四季映姫、五百二十五ポイント。諏訪子、五百四十八票。シードは、レミリア!」
観客は歓声を上げる。博麗神社の大気が震える。
一方、見事シードを得たレミリアは
(……嬉しくない。シード得たのに嬉しくない…………字余り)
陰鬱な表情を浮かべる。
「よし、それでは次の段階へ進もう。シードになったレミリア以外の、妖夢、萃香、四季映姫、諏訪子の四人がトーナメント形式で戦ってもらう。対戦相手を決める方法は、公平にくじ引きといこうか。それでは各人、くじを引いてくれ」
神奈子が手に持っている棒をそれぞれが適当に引く。結果、諏訪子、萃香が赤。妖夢、四季映姫が白だった。
「よし、第一回戦が諏訪子対萃香。第二回戦が妖夢対四季映姫だ。まぁ、とりあえず審査員が対決方法を審議するんで、選手は試合まで待機してくれ。観客も休んでいいぞー。トイレとか行っとかないと、試合の途中で急に尿意が襲ってきたりして大変だからな。神社に簡単だがトイレを五個作ってあるから、そこを使ってくれ。ただし、使用料は一回五百円だ」
「金取るの!? せこっ!」
「まぁ、大丈夫だ。もちろん、ただのトイレではない。それぞれに参加者のあられもない姿の写真が張ってあるから、それを見ながら存分に用を足すといい」
『ふざけんなぁーーーーーーーー!!』
「それでは、参加者も休んでくれ。オンバシラ!」
参加者の回りに円形状に空から御柱が囲む。もちろん、屋根付き。これでオンバシラログハウスの完成である。
「こらっ! 神奈子! 出せー! 今すぐここから出せー!」
「まぁまぁ諏訪子よ。そんなに試合に出たいのは分かったが、まだ競技方法も決めていないんだ。ゆっくりと英気を養って、それから試合に臨んでくれ」
「違うっ! 私はそんな意志ない! それより、何!? あられもない写真って!? 聞いてないよ!?」
「なに、私が天狗に頼んでだな。それぞれの着替えとか、入浴とか、とにかくマニアが喜びそうなもんを取らせたんだよ」
「盗撮っ!? 神奈子! 後でどうなるか分かってるんでしょうねぇ!!」
「お前の魅力がたっぷり拝めるんだろう? おっと、私はここで行かせてもらうよ。他のやつらと魅力をより多く出せるような競技を考えてくるから。じゃあな」
「待て! 写真を、写真を置いていけぇぇぇえええええ!」
足音がログハウスから遠ざかっていく。諏訪子は他の参加者と共にこのログハウスを破壊しようとするが、結界が張っているらしく、破壊することは出来なかった。
薄暗い部屋の中で全員沈鬱な面持ちでその場にへたり込む。それは写真の恐怖か、次の競技への絶望か。誰一人として口を開く者はいない。
しばらく黙っていると、諏訪子が申し訳なさそうに口を開く。
「ごめんね、みんな……。神奈子のせいで、こんな目に遭わせちゃって……。私が不甲斐ないばかりに……」
その謝罪の言葉に、妖夢が慌てる。
「いえっ! あなたのせいではありませんよ! どちらかと言えば、私が幽々子様を止められなかったせいで――」
「いいや。それだったらあたしが勇儀の魂胆を見抜けなかったのにも責任があるよ」
「いいえ。私が普段小町をよく躾なかったからこんなことに……。閻魔として恥ずかしい限りです」
「躾ならうちの咲夜にも同じことが言えるわ。主人の恩をこんな形で裏切るなんて。帰ったらお仕置きが必要だわ」
「……っぷ」
「ふふふ……」
『あはははははははっ!』
おかしさに笑い声が自然と出る。ログハウスにはしばらく笑い声が響いていた。
「何だ。みんな言うこと一緒じゃない」
涙を拭いながら諏訪子が言う。
「そうですね。今更こんなこと言ってもしょうがないですね」
「せっかくの祭りだ。こんなのでも盛り上がっていかないとな」
「まぁ、仕事が残ってますから。さっさと終わらせませんと」
「出るなら絶対に勝つ。それが私の信条。だから負けるつもりはないわよ」
「まぁともかく、この大会を盛り上げていこうぜ!」
『おうっ!』
『それではー、第一回戦が始まります。それぞれ席について、選手もスタンバって下さい』
「それじゃ、行こうか!」
萃香が結界が解かれた扉を思い切り開ける。
さぁ、いざ行かん! と思って出たら、
鼻息を荒くしてトイレから出てくる集団を目撃した。
『………………………………』
前言撤回。やっぱ帰りたい。
なら何故藍様と橙がいないのだ!
正しくは霖之助ですよ
6様。私は別荘として欲しいです。
10様。すみません。紫様は冬眠中で、藍様は橙を溺愛しています。
11様。藍様はこんな変態の大会に自分の式を参加させたくなかったのでしょうねぇ。
12様。ご指摘ありがとうございました。きちんと修正しました。今度は気を付けます。
18様。褒め言葉をありがとうございます。
塊様。あなたの評価もGJです。