「からかわれたり弄られたときの相手の反応のデータが欲しいから、集めてきて頂戴」
「…はぇ?」
パチュリー様のお言葉に、私は思わず素で返してしまいました。
そんな私にパチュリー様は溜息一つ。そして先ほどと一字一句全く同じ説明を繰り返しているところを見るに、
どうやら先ほどのは私の聞き間違いという訳ではないようです。正直聞き間違いであって欲しかったです。
「あの、パチュリー様。具体的に私は一体何をどうすれば…」
「だから、幻想郷の中で顔見知りの連中でも知らない連中でもいいから、誰彼構わずからかったりしなさい
私が知りたいのは、その時の相手の反応。怒るか慌てるか呆然とするか。その様子をレポートにまとめて明日までに提出して頂戴」
簡単なことでしょう、とでもいう感じでパチュリー様は私にレポート用紙を数枚ほど手渡してきました。
受け取りたくないです。正直こんなの受け取りたくないです。でも受け取らなかったらパチュリー様、きっと
私に対するお小言を始めます。だから受け取ります。本当に嫌ですけど。本当に嫌なんですけど。
私が受け取ったのを確認し、パチュリー様は『それじゃよろしく』とだけ言い残し、視線を手に持つ本へと移されてしまいました。
残された私は、溜息一つ、とぼとぼと大図書館から出ていくしか出来ません。憂鬱です。小悪魔です。凄く憂鬱です。
いつもパチュリー様に雑務を任される私ですが、今回はいつもの更に輪をかけて意味不明なお仕事です。
本当はこんな仕事投げ出して図書館でぽわぽわしてたいのですが、魔女と悪魔の契約は絶対です。頑張ります。
例え心の中では『こんなデータが何の役に立つんだよこんな下らないことやってる暇があるなら外に出て
その不健康な身体にたまには日光でも浴びせてこいやこの紫もやしが』なんて思っていても、決して口にはしません。
私は小悪魔。将来の悪魔界の頂点に立つ、未来明るきエリート。出世街道の為にもこんなところで躓く訳にはいかないのです。
そんな感じで雇い主に対して悪態をついていると、廊下の向こうからやって来るは紅魔館のメイド長と門番さん。
私に気づいたのか、会釈をしてくる二人に、私は溜息をつきながらも、パチュリー様の為に任務を遂行します。
本当は嫌です。嫌々です。何が悲しくて何の罪も無いお二人をからかったり弄ったりしないといけないんですか。
けれど、魔女と悪魔の(以下略)将来の悪魔界の(以下略)。そういう訳で、ごめんなさい。こあは鬼になります。
問題はどちらをターゲットにすべきか…普通に考えるなら門番さんなんですが、それじゃあ少し面白くありません。
こういうのは弄られ慣れてない人を弄るのが楽しいものなのです。具体的にいうとメイド長なんか最高の素材です。
ああ、本当はしたくないんですよ? けれどパチュリー様の(以下略)。という訳で小悪魔、いっきまーす。
「こんにちは、小悪魔ちゃん。今日はパチュリー様の傍にいなくて大丈夫なの?」
私の計画なんて露知らない門番さんはニコニコと笑顔を話してくれます。正直邪魔です。ターゲットが見えません。
門番さんから視線を外し、メイド長の方を見ると、どうやら私には門番さんのように興味を持っていないご様子。
かっちーん。むかちーん。前から思っていたんですが、このメイド長の余裕綽綽の姿は私の癇に障ります。
他の有象無象ならいくら無視しても構わないんですが、この私は将来の悪魔界の頂点に立つエリート中のエリート、
悪魔の中の悪魔と謳われる(予定)のらぶりーぷりちーエンジェル小悪魔ちゃんですよ。それを無視て。殺す。
「メイド長っ!! これは一体どういうことですかっ!!」
「へ?」
「…え?」
突然の私の絶叫に、二人とも当然反応。最初の「へ?」は門番さん。後の「え?」がメイド長です。
どうしたのかと、視線だけ交わして訳が分からないといった様子のお二人に、私の攻撃はまだまだ続きます。絶対殺す。
「どうして! どうしてメイド長は門番さんと一緒に居るんですか!?昨日の夜、私に言ってくれた言葉は
全部ウソだったんですか!? これじゃ信じていた私が馬鹿みたいじゃないですかっ!!」
「昨日の夜? ちょ、ちょっと待ちなさい小悪魔。貴女一体何を…」
「触らないで下さいっ!!」
メイド長の差し出した手をパシンと払いのける私。あ、今凄く気持ち良かった。もう一回叩きたいなあ。
何が起こっているのか現状を把握出来ないメイド長に対し、ダメ押しのように泣き真似を始める私。
ああ、もうこうなると後は楽です。本当、ちょろい仕事です。だって、複数人いるときに、こういう場面になると大抵の場合…
「ちょ、ちょっと小悪魔。貴女話を…」
「…待って下さい、咲夜さん。これ、一体どういうことですか?」
私とメイド長の間に割って入る門番さん。ああ、本当に素晴らしいです。ちょっと泣き真似するだけで、
こんな風に正義感の無駄に強い人間が前にしゃしゃり出てくれるんですから。まさに計画通りです。
「小悪魔ちゃんの様子、尋常じゃないです。
それに昨日の夜って…咲夜さん、小悪魔ちゃんに一体何をしたんですか?」
「何もしてないわよ! 勝手に訳の分からないことを喚いて勝手に泣いて…むしろ私が聞きたいくらいだわ!」
「ひ、酷い…昨日の夜はあんなに私の身体を弄びながら『私が愛するのは貴女だけよ』って言ってくれたのに…」
「ぶっ!?」
「それなのに、今は門番さんと…うええええん!! 私、もう何も信じられないです!!」
メイド長が噴き出してるところ、初めて見ました。良かった、間に門番さんが居てくれて。
すんすんと泣いている(真似)私に、門番さんは頭を優しく撫でてくれながら(正直鬱陶しいです)、言葉をかけてくれました。
「小悪魔ちゃん…昨日の夜のことはね、全部夢なの。小悪魔ちゃんの見た唯の悪夢。
咲夜さんは小悪魔ちゃんに対して、何もしてないし、小悪魔ちゃんは何もされてないの」
「ぐすっ…そうなんですか…?」
「そうだよ。だから全部忘れちゃって構わないから。ね?」
こくんと頷く私を確認し、門番さんは笑顔を見せてくれました。この人、外界で生きていけるのかなあ。絶対騙される。
ツラが良いのに勿体ないです。身体もぼんきゅっぼんなのに、致命的にお人好しです。ああ勿体ない勿体ない。
私が門番さんくらいの美貌を将来手に入れたら、絶対その辺の人間(男)騙して○×を△□で●■するのに。
私が泣きやむのを待ち、門番さんはゆっくりとメイド長の方を振り返りました。こちらからでは分かりませんが、
引きつったメイド長の顔を見るに、どうやら私に向けてくれたような笑顔は浮かべてないようですね。ざまあ。
「さて、と…咲夜さん? 貴女の方は勿論夢で終わらせるつもりはないですよね?
小悪魔ちゃんのような幼子相手に昨夜一体何をしたのか…洗いざらい吐いてもらいましょうか?」
「ちょ、ちょっと美鈴、顔が怖…じゃなくて! だから私は何もしていないと…」
「私、別に咲夜さんが浮気した事には怒ってませんよ? 咲夜さんはとても素晴らしい人で、
私なんかで縛れるような女性ではないですから。ですが、相手が小悪魔ちゃんというなら話は別です。
まだ年端もいかない幼子に、貴女はあんなことやこんなことをしたんですか? 返答次第では本気でお仕置きしますよ?」
「す、するかああ!!! あんな子供相手に一体何をするって言うのよ何を!?」
「だから、したんでしょう? ナニを。…軽蔑します。最低です」
「っっっ!!!いい加減にしなさいよ美鈴!!私が好きなのは貴女だけで…」
何か修羅場ってきたので逃走。とりあえず反応は見れたので、レポートにかきかき、と。任務完了です。
しかし、あの二人、まさか本当に出来てたとは。女同士とか本当にドン引きです。二人ともあれだけの容姿を持ってるのに
男を漁らないとか本気でないですね。あまりに哀れなので今度男を何人か紹介してあげることにしましょう。小悪魔ageha(笑)
お嬢様を弄ると紅魔館から強制退去させられそうだし、妹様は命の危険から論外。よって私は外に出ます。
空を飛んで適当な人を見繕おうと懸命に働く私。まさに今の私は働く現代女性というやつです。スイーツ食べたいです。
こんな日光が照るくそ暑い中、無給で頑張る私。本当、びっくりするぐらい尽くす女です。女の鏡です。
あんの紫もやしの為に頑張る私のなんと健気なことか。本当、人里の人間は私を題に物語を一筆すべきです。
そして大ヒット、映画化。はたまた連続テレビドラマ小説なんてのもいいかもしれません。サインの練習とか必要でしょうか。
そんなことを考えながらぷかぷかと空を飛んでいた私ですが、突如空の彼方から見知った影が。
向こうも私に気づいたのか、ご自慢の帽子を手で押さえながら私の目の前で急ブレーキ。危ないです、衝突するかと
思いました。これだからスピード狂は嫌いなんです。スピード狂なんて地平線に届くように限界までフリキレ!
「よっ。お前が図書館の外に出てるなんて珍しいじゃないか」
目の前のチャバネ(魔理沙さんのこと。チャバネゴキブリって私は影で呼んでる)が失礼なことを言ってます。
私を紫もやしの引き籠り野郎と一緒にしないでほしいです。こう見えて私はアウトドアなんです。昨日は新しい
水着を着て紅魔館の湖で肌を焼いたりしてたんですから。ナンパは誰もきませんでした(むしろ他の人がいない)。
「お前が外に出てるってことは、パチュリーから仕事でも頼まれたか?」
「御察しの通りです。私は外出中なので、図書館でのお茶はセルフサービスでお願いしますね?」
「ああー、そういやいつもお前が淹れてくれてるもんな。いつも美味いお茶サンキュ。
今日のところは咲夜にでも頼むとするよ」
サンキュじゃないですよ馬鹿野郎。いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもチャバネが
無駄に紅茶のおかわりをするから図書館の紅茶は常時品切れ状態になるんですよ。そして私がいつも
メイド長に下げたくも無い頭をヘコヘコ下げて紅茶を貰っているんですよ。それをチャバネは理解してるんですか?
しかも私の淹れるお茶が美味しいって…あのお茶にはいつも雑巾の絞り汁もふんだんに含んでるんですが。
もしかして味覚障害でしょうか。本当、嫌がらせのし甲斐のないチャバネです。気付けよと普通に思います。
それに、今日はメイド長にお茶を淹れて貰うとか言ってましたが、多分無理でしょうね。メイド長、現在進行形で修羅場ってますし。
「それじゃ私は紅魔館に向かうとするよ。じゃあな!」
「あ、ちょっと待って下さい、魔理沙さん」
別れを告げてそそくさと私から逃げようとするチャバネ。しかし、そうはいかんざきすみれ。簡単には逃がしません。
何だ、と首を傾げるチャバネに、私は天に住まう地に住まう神々が見惚れてしまいそうな(=めっちゃラブリー)な
笑顔を浮かべ、チャバネの方へと近づきます。ふふん、これも良い機会です。このいつもいつもいつも図書館で
傍若無人に振舞うチャバネに少しばかり釘を刺しておかないといけません。
あの図書館の主はこの私。あの図書館の本は全て私のモノ。その辺りをしっかり躾けてあげます。
「あの、少しばかり図書館の本のことでお話が…」
「ああ? …あー、もしかしてお前もパチュリーの奴みたいに『本を返せ』とか言うつもりか?
何度も言ったとは思うが、私はちゃんと返すつもりだぜ? その期日は私が死んだ後になるけど」
こあー、何というふざけた物言いでしょう。何様ですか、このクサレチャバネは。
やっぱりお仕置きが必要です。具体的にはそんな簡単には本をぱくれなくするくらいの釘を打つ必要があります。
あの図書館の本は全部私のモノなんです! それをその愚かしい身に刻みなさい! ニーベルン・こあスティ!
「いえいえ、本の返済期日等は私の管轄外なので魔理沙さんに口出しするおつもりはありません」
「そっか。じゃ、何だ? 図書館関係での話なんてそれくらいしか思いつかないけど」
「あの…その、魔理沙さんのご趣味にあまりあれこれ言うのもどうかとは思うのですが…
魔理沙さんはその…か、官能小説や春画本を沢山お借りになられてますよね?」
「ああ、確かに借りて…って、いやいやいやいやいやいやいや!? はあああ!? 何だよそれ!?」
私の突拍子も無い発言に顔を真っ赤にして叫ぶチャバネ。大袈裟なんですよリアクションが。芸人ですか。
しかし弄る側としては実に弄り甲斐があるというものです。さあいきますよチャバネ。私の普段から溜まりに溜まっていた
鬱憤とか苛立ちとかそういうのを感じ取りなさい。こあっこあっこあっ!
「最近、図書館の本で、その…そ、そちら系の本がごっそりと無くなってまして…
パチュリー様に聞いたところ、魔理沙さんがいつもお持ち帰りしているとか」
「す、するかあああーーー!!! ち、違うぞ!? それは決して私じゃない!!
だだだだってそんな本私見ないし!! ほ、本当に違うって!! た、確かに適当に本を袋詰めして持って帰ってはいるけど!」
「べ、別に悪い事だとは思ってないんですよ? ま、魔理沙さんもその…お年頃の女の子ですし」
「やめろーー!!どう見ても寺小屋の子供みたいな形したお前からそんな優しいフォローされたくねえええ!!!
ほ、本当に私じゃないんだって小悪魔!! だだだ、だって私えええエッチな本なんて生まれて一度も見たこと…」
「ですから、えっと、その、ほ、本を返して頂くのは後で構わないんですが…よ、汚したりしないで下さいね?」
「~~~~~!!!!!! うわあああああああああああ!!!!!!!!」
紅魔館とは逆方向にトンデモナイ速度で去っていくチャバネ。顔を真っ赤にして半泣き状態、超ウケル(笑)
とりあえずこれでしばらくは図書館の本を盗んだりはしないでしょう。全く、本当に仕方のないチャバネです。
しかし、チャバネ、あの歳で経験はおろか本も読んだこと無いってどんだけピュアピュアなんですか。魔女のくせに。
とりあえず今度チャバネに対して私のお勧めをいくつか見繕って渡してあげることにしましょう。優しい
私に全幻想郷が泣きそうです。ホンマ小悪魔さんの優しさは五臓六腑に染み渡るでぇ~。
───アタシの名前はこあ。エリートの地位を約束された悪魔見習い。モテカワスリムで恋愛体質の愛されガール♪
アタシがつるんでるご主人様は図書館引き籠りをやってるパチュリー様。
パチュリー様がいるからやっぱり仕事はタイヘン。今日もパチュリー様に変な仕事を押し付けられた。
使い魔契約だとこんなこともあるからストレスが溜まるよね☆ そんな訳でアタシは一人で人里の茶屋にサボりに来ている。
がんばった自分へのご褒美ってやつ?自分らしさの演出とも言うかな!
という訳で私は人里の茶屋で団子を頬張っています。仕事? 飽きました。もうやる気皆無です。レポート用紙?
そんなの人里のゴミ捨て場に投げ捨ててやりました。若さとは振り向かないことって昔誰かも言ってましたし気にしません。
やはり仕事をサボって食べるスイーツは格別です。本当、この時の為に生きてるって感じです。
ちなみに団子を買うお金は、図書館の本をこーりんどーとか言うところに売り払っていつも手に入れています。
勝手にそんなことして良いのかって? いいんです。あの本はパチュリー様のモノではなく私のモノなんです。
もっと言ってしまえば、私は将来悪魔界の頂点に立つエリート悪魔なんです。それ即ち、この世の万物は私のモノ、
つまりどうせ将来私のモノになるんだから、今貰っておいても構わないということです。だから売りました、本。
本棚の管理は私がやってるので、どうせパチュリー様は本が幾つか無くなったことにも気づかないでしょうし。持ちつ
持たれつ。実に素晴らしいことです。本達もあんな薄暗い引き籠り部屋に放置されるよりも、お団子という形で私の
栄養になった方が喜ぶというものです。
そんな感じでお団子とお茶を一人楽しんでると、私の方をじっと見つめてくる二つの瞳があるではありませんか。
しかも陰から見つめるとかじゃなくて、ダイレクトにガン見です。私の目の前一メートルのところからガン見されてます。
容姿は私と同じ程度の幼さでしょうか。頭から三角形に尖った耳とお尻から二本の尻尾を生やしてるところを見るに、
相手は妖獣、それも猫又でしょうか。とりあえず知らない子供です。だったらいつものように良い子の猫を被る必要なんてありません。
視線が本気でウザったいので追い払います。人形は何にも喋らない私の大切なスイーツ・タイムを邪魔するんじゃありません。
「…何よアンタ。何私をガンつけてるの? 超ムカつくんですけど。てかマジありえないんですけど。
正直ウザいっていうか、さっさとどっかに行って欲しいんですけど。マジ空気読めてなくね?」
私の地元(悪魔界)で鍛えた執拗な言葉責めにも、目の前の黒猫は少しも反応しません。何ですかコイツ。
この私の『帰れ』オーラに少しも動じないなんて…おかしいです。私はこれで同じグループ内の悪魔を二人ほど
グループ外へ押しやったのに…これが効かないなんて、こいつただの女じゃないです。私の大嫌いなKY女です。
どうしたものか考えていた私ですが、ふと黒猫の目が私の手元に集中してることに気付きました。
いえ、手元というか団子です。私の団子に興味深々というか、それ以外見えてないみたいです。涎垂らしてるし。
「…何、アンタ、団子が欲しい訳?」
私の問いに、黒猫はようやく反応した様子でコクコクと強く首を縦に振りました。
いや、団子が欲しいから私の団子を見つめるって意味が分かりません。何ですか、強奪する気ですか。
この団子は私が汗水垂らして稼いだお金で(注 図書館から本をパクって勝手に売り払って稼いだお金です)、
いわば私の血と汗と涙の結晶です。イケメンホストの悪魔に貢ぐならまだしも、何が悲しくて私がこんな小チビ猫なんかに
分けてあげなくちゃいけないんですか。マジあり得ません。
「いい? これは私の団子なの。私が『自分の』お金で買った団子なの?
アンタに分けてやる団子なんか一個もないの。分かる? 欲しければ自分の金で買いなさいよ、おチビ」
「私、お金持ってない…」
「はあ? それ何? もしかして可哀そうアピールで私の同情でも買おうっていうの? マジありえないんですけど。
そういうの何ていうか知ってる? 世間一般でアンタみたいなのを乞食って言うのよ。悪魔相手に物乞いって頭おかしいんじゃない?
いい、私の大嫌いな言葉は『甘え』と『24時間テレビ~愛は幻想郷を救う~』なの。他人に甘えてモノを手に入れるとか
冗談じゃないわ。団子が欲しけりゃ自分でなんとかしなさいよ。そうねえ、大好きなママに頼んで買って貰えばあ?」
あまりに正論かつ当たり前過ぎる(注 小悪魔から見てです。世間一般とは異なりますのでご了承ください)
私の主張に、黒猫は何も言い返せずにしょんぼりしてます。何で目の前で落ち込むんですか。落ち込むなら私の見えない
ところで勝手に沈んでて欲しいです、鬱陶しい。しっしと追い払い、とぼとぼと私に背を向けて去る黒猫。
本当、気分悪いです。大体、あの黒猫相手に私が施しをして一体何の得になると…あ、今凄く良いこと思いつきました。
「ちょっと待ちなさい、黒猫」
帰ろうとした黒猫を私は呼び止め、ちょいちょいとこちらに来るように指示します。
私の命令に素直に従う黒猫の口に、私は手に持っていた団子を串ごと押し込んでやりました。
何が起こったのか分からないという様子の黒猫に、私は神話の女神も嫉妬するような(小悪魔の勝手な誇大表現)
笑顔で、黒猫に優しく言葉を投げかけてあげました。
「あげるわ。食べたかったんでしょう?」
コクコクと強く首を縦に振りながらもきゅもきゅと団子を咀嚼する黒猫に、私は残っていた団子も全部あげることにしました。
嬉しそうに団子を食べる黒猫。私は黒猫が全ての団子を胃に入れ終えるのをのんびりと待つことにします。
そして全てを食べ終えたとき、私の計画は実行に移ります。名づけて『パシリゲット大作戦』です。
「いい、黒猫。アンタは私の団子を食べた。それは間違いないわね」
「うん。おいしかった。ありがとう」
「そう、アンタは私に借りが出来た。私はアンタが飢え死にして倒れそうになったところを助けた命の恩人なのよ」
「飢え死にまではしなかったと思うけど…そうなの?」
「そうなの。だからアンタは私に恩を返さないといけないわ。恩を返さないなんて畜生にも劣る所業だものね。
という訳で今日からアンタは私のパシリ決定。いい? いいわよね? 勿論否定権なんかないけれど」
「パシリって何?」
「パシリはパシリよ。アンタは私の命令に対して言う事を訊かないといけないの。いわば私は貴女のご主人様ね」
「ご主人様…藍様が居るからそれは駄目。私は藍様の式だもん」
「はあ? 拒否とか出来る立場だと思ってるの? ていうか式って何よ。私はそんなの求めてないわよ。
アンタは私の言う事を聞けばいいの。拒否するならさっき食べた団子の料金を耳揃えて返してほしいんですけど」
「式じゃなければいいよ。お団子のお礼、ちゃんとしないといけないもん」
…あれ、何か意外と簡単に話がまとまりました。強く拒否したら、もっとねちっこく執拗に精神的に責めてやろうと思ったのに。
どうやらこの黒猫、世間の荒波にあまり揉まれたことのない純粋培養の箱入り子猫みたいです。本当、大甘です。
今回は私のような温厚かつ心優しい悪魔だったからいいようなものの、もし相手がロリ趣味のおっさんとかだったら
一発で発禁な展開です。大人の階段を五段飛ばしくらいで駆けあがってしまいます。まあ、今はもう私のパシリですので、
その辺りの危険もみっちり教えてやろうとは思うのですが。
「…アンタ、本当に運がいいわね。私のパシリになれたことを咽び泣いて感謝しなさいよね」
「? 感謝はしてるよ。ありがとう、悪魔さん」
「悪魔さんって何よ悪魔さんって。私のことは小悪魔様って呼びなさい。
…あれ、何かグレードダウンしてるわね。でも、真名は契約者以外に教えられないし…もっとこう、
格好良い名前を…『永遠に幼き小さい悪魔』とか『スモーレット・デビル』とか」
「小悪魔ちゃん、何をぶつぶつ言ってるのー?」
「ちゃんって言うな! 小悪魔様って呼びなさい、このちんちくりん!」
「ちんちくりんじゃないよ、私は橙」
何か世間ずれしてて役立つかどうかは不明ですが、私は団子という安い投資でパシリという人材を
手に入れることができました。世の中は等価交換だとか何処ぞの誰かがほざいてるみたいですが、
私から言わせて貰えるとお馬鹿な発言です。上手く立ち回って安い投資で高い見返りを得る、これこそが出来る女なのです。
まあ、この黒猫が果たして団子五本分の役に立つかどうかは不明なんですが。というか私、団子二本しか食べてません。くすん。
「いい、あの三人組の女グループがいるでしょう。あれ、真ん中の女がリーダーに見えるけれど、
実際に裏でグループ率いてるのは右側の女だから。あの女、ワザと自分より可愛くない二人を連れ添うことで
自分の容姿を相対的に引き立たせようとしてるの」
「そうなんだあ。何でそんなことするの?」
「馬鹿ね、そんなの男受けが更に良くなるからに決まってるじゃない。女は男にチヤホヤされてナンボなのよ。
でもまあ、プロの視点から言わせてもらうと、あの中で一番狡猾なのは左の女ね。あれは自分の容姿が劣るのを
理解していながら、あのグループに居るの。それが何故だか分かる?」
「ん~…分かんない」
「あれはね、右側の女のお零れをハイエナのように掻っ攫う算段だからよ。
例えば三対三で飲み会とかするでしょう? 当然男達は右側の女を狙う訳よ。でも、選ばれるのは三人のうち一人。
当てが外れた男は、『まあ、容姿は少し劣るけど、一日だけの遊びだしこの女で良いか』という感じで自分を誘いに
来る。そんな感じで来た獲物をパクリと頂いちゃう訳。私が見るに、あの女はかなりのやり手ね」
「人間が人間を食べるの? 変なの」
人里の通り、その場所に設定されている長椅子に腰掛け、私は橙にマンツーマンでみっちり授業を行っています。
授業内容は勿論『人間観察』。この食うか食われるかの弱肉強食の世界において、橙はあまりに無防備過ぎます。
よって私はパシリとして使う前に、知識を教え込むことが大事だと考え、色々と話をしてあげることにしたのです。
ああ、私はなんて部下思いの素敵ガールなんでしょうか。これはもう将来の悪魔界では雑誌とかで
『上司にしたい悪魔ランキング』の一位になってしまうに違いありません。本当に私って素敵。
ただまあ、橙は頭が少しばかりよろしくないみたいで、私の話を全く理解できていないみたいです。これだからオボコは。
そんなどうしようもない橙に対して、私は匙を投げ捨てるような真似はしません。ちゃんと最後まで面倒を見てあげます。
そして近い将来は図書館の仕事を全部押し付けちゃいます。その間に私は人里で男漁りの日々です。さようなら、
日陰の仕事。そしてこんにちは、イケメンボーイズ。ああ、そんな日々が来るかと思うと楽しみで仕方ありません。
だから私は橙をしっかり鍛えます。まずは知識面、橙が将来、立派なアゲ女になる為に。
「あ、良い男発見。橙、あの男とかどう? 見てるだけでそそられるでしょう? ぐっとくるでしょう?
あーもー、ああいう男にナンパされたいなー。してくれないかなー」
「そうだねえ、あの人の食べてるお煎餅は凄く美味しそうだよね。いいなあ…食べたいなあ」
「よねえ、食べちゃいたいよねえ…まあ、私は食べられる方でも全然構わないんだけどー。
私は草食系だろうと肉食系だろうと顔が良ければ良いし? あと長身だと文句無し」
「私は魚が好きかなあ。お肉も嫌いじゃないけど、やっぱり一番はお魚」
「アンタ食い物のことばっかりねえ…って、ちょっとあのイケメン、私を放置して何他の女ナンパしてんのよ!?」
私の視線の先では、私がツバつけていたイケメンが緑髪の日傘を差した女に話しかけていました。
しかも、どう見てもナンパです。しかも相手にされてません。やんわりとあしらう女に、イケメンはトボトボと肩を落として去っていきました。
「うわー、あのレベルの男を袖にするとか信じられない。ありえないわマジで。
でもあの女ムカつくー。人が目をつけてた男をあんな風にあしらうなんて、まるで私の男を見る目が低い
みたいじゃない。ああいうお高く止まった女って本気でウザいっていうか、勘違いすんなよっていうか」
「ねえ、小悪魔ちゃん、私も煎餅が食べたい」
「いや、だからアンタ人の話を…」
聞けと言いかけたんですが、私はそこでまたしても名案を思いつきました。
丁度良いです。橙を利用してあのいけすかないクソ女の鼻っ柱をへし折ってあげましょう。
橙は頭こそ足りないですが、何といっても妖獣、それも化け猫。身体能力は折り紙付きです。
その橙を利用して、あの女をけちょんけちょんにしてあげます。そしてボロボロの姿を私は遠目でニヤニヤと
眺めている事にしましょう。ああ、実に楽しそうです。そうと決まれば善は急げ。(注 悪です、どう見ても)
「橙、煎餅が欲しい?」
「欲しい」
「なら、あの緑髪の女がいるでしょう? あいつに喧嘩を売ってギッタンギッタンにしてやりなさい」
「いいの? でも、藍様が人里で暴れたりしちゃ駄目だって」
「良いのよ。そんなルール、あって無いようなもんだから。私が良いと言ってるんだから良いの。
この世は全て私がルール、私が審判、私がジャスティス、私が世界なのよ。分かったらとっとと行く!」
「そうなんだ。それじゃ、言ってきま~す」
緑髪女に駆けてく橙を見つめながら、私はニヤニヤが抑えられずに表情に出してしまいます。
本当、ああいう勘違い女は見ていてムカつくんです。どう見ても男を誘ってるような容貌をしていながら
『私男なんかに微塵も興味ありません』みたいなオーラを出してお高く止まってる奴には虫唾が走ります。
私が将来悪魔界のトップに立った時はああいう女はみんなけちょんけちょんのフルボッコにしてあげます。
という訳で頑張れ橙。負けるな橙。まあ、化け猫があんな勘違い女に負ける訳がないんですけど。
緑髪女と接触して何かよく分からない会話を繰り広げる橙。対する緑髪女はニコニコと笑顔を浮かべるばかり。
全く、橙は一体何をやってるんですか。さっさとその女をボロボロにしてあげなさい。そして服をひんむいて
その辺に裸で転がしてやるんです。そうしてお高く止まった女は晴れて恥女の汚名を…
「ぴぎゃーーー!!!」
…あれ、何か橙の悲鳴が。一体どういうことでしょう。
橙と緑髪女の方を見ると、橙が緑髪女に頭を掴まれて片手で持ち上げられてます。何あのパワー。おかしいです。
というか、よくよく見れば、あの女から放たれる妖気が尋常じゃないです。何あの化物。お嬢様クラスじゃないですか。
拙い。拙い拙い拙い。非常に拙いです。これはどうやら売ってはいけない相手に喧嘩を売ってしまったようです。
しかし、幸いなことに今あの女に捕まっているのは私ではなく橙。私はまだ気付かれていません。
だったら私のやるべきことは一つです。当然、橙を放置して逃げます。ええ逃げますとも。だって私、悪魔ですから。
折角手に入れたパシリを失うのは痛いですが、私の世界でたった一つの命には代えられません。この世界一
可愛い私の命が失われるなんて世界の損失です。世界遺産登録済みの小悪魔ちゃんの命は何よりも重いのです。
という訳で逃げます。橙、貴女の犠牲は決して無駄にはしません。貴女の事は忘れません、三分くらい。
ゆっくりと長椅子から腰をあげ、私はそろりそろりとその場から逃げだそうとしたその時でした。
「こら、お前は一体何処へ行こうとしているんだい?」
「ぴっ!!」
突如、服の襟元を誰かに掴まれ、私は声にならない声を出してしまいました。
何事かと後ろを振り向くと、そこには呆れるような顔をした金髪のダイナマイトボディの女性が。
特徴的な胸にばかり目がいってしまいましたが、彼女のお尻に携えられているのは九本の金色の尻尾。というか、もしかしなくてもこの人って…
「きゅ、九尾の狐!? もしかしなくても八雲の化狐!?」
「ああ、私のことを知っているのか。なら話は早いな」
私の声にニコニコと笑顔を浮かべてくれる九尾さん。パチュリー様、大変です。小悪魔、凄くピンチです。
この人は幻想郷の管理者である八雲紫の式で、九尾の狐こと八雲藍さん。はっきり言って化物です。
話に聞いただけですが、最強の妖獣とか隙間妖怪と同等の力を発揮するとかとにかく規格外の化物なんです。
そんな化け物がどうして私の襟元を掴んでいるのか意味不明です。私、この人と何も関係無いじゃないですか。
私の考えを見抜いているのか、藍さんは親指で橙達の方を指差して、呆れるように言葉を紡ぎます。
「あれ、貴女が橙を嗾けたんだろう? それを放置して何処へ行くつもりかな?」
「え、えっと、何を勘違いされているのかは存じませんが、私はあの黒猫さんとは何の関係も無い部外者でして…」
「嘘はいけないな。私は君が橙と出会ってからずっと気配を消して傍に居たのだからね。
橙が君のパシリだって? 人の可愛い式をよくもまあ使いパシリなんかにしてくれるものだ」
やややややヤバいです!!この人めっちゃ橙の関係者です!しかも今までの流れを全部聞かれてたみたいです!
橙の奴、こんな化物がご主人様だったなんて私何も聞いてないです。あのお馬鹿猫、本当に最悪です。
ガタガタと震える私に、藍さんは『まあ、それは構わないんだが』と前置きした上で言葉を続けます。
「貴女は橙のご主人様なんだろう? そのご主人様が部下を放置して一人逃げるというのはいけないな。
命令をした貴女には橙を助ける義務がある。違うか? 貴女は体を張って橙を助けにいかなければいけない」
「あわわわ…で、ですがあの人はどう考えても私なんかじゃ敵わないですし…」
「そこはココの見せ所だろう? 貴女は悪魔だ。悪知恵だけなら誰にも負けないだろうしね」
トントンと頭を指で叩きながら、藍さんは『さっさと助けてこい』と視線を投げつけてます。
拙いです。本当に拙いです。これ多分私が逃げようとしたら、藍さんが直々に私をボコボコにするつもりです。
行くも死、戻るも死。前門の虎、後門の狼。最悪です。何で私がこんな目にあわなければいけないんですか。
あれもこれも全部鈍間な橙が悪いんです。私は泣きたい気持ちを抑え、ふらふらと覚束ない足取りで緑髪の女性の方へと向かいます。
このまま藍さんを説得出来るとは思えませんし、まだ緑髪のいけすかない女に頭を下げて許しを請うた方が
命が助かる確率が高いという算段のもとです。ええい、死んだらパチュリー様に憑りついてやります!
「あ、あの…もうその辺りで許してあげては頂けないでしょうか」
「…何、貴女」
「こ、小悪魔ちゃあああん!!!」
私の存在に気づいた緑髪女は、ギロリと私の方を睨みつけてきます。怖い怖い怖い怖い本気で怖いです。
どうやら興味は私の方へ渡ってしまったらしく、掌から橙を開放してくれました。泣きながら橙はそそくさと
私の背後に隠れてしまいました。なんて頼りにならない妖獣ですか。泣きたいのはこっちの方です。畜生。
「えっと、この娘もワザとやった訳ではないと申しますか…悪気はなかったと申しますか。
き、きっと出来心だったんです! 貴女様があまりに美しかったから、きっと身分不相応な嫉妬心にかられてしまったんです!」
「えええ!?やれって言ったのは小悪魔ちゃ…むぎゅっ」
「どうかお願いします! この娘もこんなに謝っていますので、どうか今回のことは水に流して下さいませんか!」
余計な事を口走ろうとした橙の頭を押さえつけ、私は必死に頭を何度も下げました。
危ないです。もう少しで私がこの危険女のターゲットになるところでした。この馬鹿橙、本当に最悪です。
ヘコヘコとする私に、緑髪女は少し考えるような素振りを見せた後に笑顔で死刑宣告をして下さいました。
「駄目よ。売られた喧嘩は買うのが私の信条なの。やられた分はきっちり利子をつけて返さないとね。
それに私、貴女の言葉を一ミリたりとも真剣に聞くつもりはないから。悪魔の世迷い言は友人のモノだけでお腹一杯」
「そそそそそんなっ! それは悪魔差別です! 悪魔にだって良い人は沢山いるんですよ!?
世の中にはこんな素敵な名言があるんですよ!?『悪魔にだって友情はあるんだー!』」
「表面では取り繕いながら腹の底では何を考えたか分かったものじゃない、それが悪魔よね。
まあ、そういう生き方は嫌いじゃないけれど。さあて、お話はお終い。二人仲良くきっちり虐めてあげるわ」
あああああヤバいヤバいヤバい非常にヤバいです! 私の決め台詞が全く通用してません!
一歩また一歩と私に近づいてくる緑髪女。もう、橙のアホ! 大馬鹿! なんでこんな化物に喧嘩売ったんですか!(←売らせた張本人)
「いいいい良いんですか私に手を出して!? 私に手を出すと地元の悪魔達が許しませんよ!?
私は悪魔界で『出美瑠・命・喰羅居』ってチームの頭を張ってる悪魔と友達なんですよ!?
私に手を出すと彼を始めとした悪魔達が貴女を制裁しに来ますよ!? い、今なら許してあげますけど!」
「へえ、それはつまり貴女を虐めれば悪魔達と沢山楽しい事が出来るってこと? 尚更止められないわねえ」
「あ、あわわわわ…そ、それだけじゃありませんよ!? 私のお父さんは悪魔階級九位で悪魔界暗黒市の職員で
地域振興課で働いていて休日は接待ゴルフ三昧なんですよ!? 私のお母さんは悪魔階級十位で今は専業主婦で
最近はデビ流ドラマにはまってレンタルビデオ店に足を運ぶ毎日…ぴぎゅっ!!」
私の台詞を最後まで聞くことなく、緑髪の女は私の頭を橙の時と同様に鷲掴みにし、力を加え始めます。
痛い痛い痛い痛い痛い!! 本気で痛い!! ありえません、本当にありないくらい馬鹿力です!
もう嫌です! なんで清廉潔白で清く正しい私がこんな目にあわないといけないんですか! 意味が分かりません!
「悪魔って嘘つきよねえ。本当、変な嘘をつこうとしなければ痛い目にあわずに済むでしょうに」
「ぴぃーーー!! ごめんなさいごめんなさい嘘ついてましたー!!全部本当のことを言いますうう!!
地元の友達の前では普段ビッチぶってますが、実は男の人とは目を合わせて会話することも出来ないんですぅぅ!!
男友達沢山いるように振舞ってますが、実は男友達なんて過去含めて一人も居ませんでしたあああ!!!
エッチな経験談を友達の前で語ってましたが、あれ全部少女コミックからの受け売りだったんですぅぅ!!許して下さいいー!!」
「…お前は一体何を言っているのよ?」
「もう二度と嘘なんかつきませんから許してええー!!ぴぎぃーー!!!」
プライドも何もかも投げ捨て、自身の保身(本当の命的な意味で)に走った私に、
呆れて興味も失せたのか、緑髪の女はあっさり手を離してくれました。私はワンワン泣きっぱなしです。だって怖かったですもん。
「馬鹿らしくなってきたから帰るわ。次からは相手を見て喧嘩を売りなさい、お嬢さん達」
スタスタと歩き去っていく緑髪の女の背中を見ながら、私は思います。『にどとくんな!』って。
嗚咽を漏らす私に、橙が『大丈夫?』と声をかけてくれます。大丈夫な訳ないじゃないですか。この私の様子を見て
大丈夫だと思える奴がいたらそいつは病院に行くべきです。むしろ死ぬべきです。
「まあ…ぐすっ…あんな奴如き…うぐっ…私の敵じゃ…ぐすん…ないわね」
「いや、泣きながら言っても何の説得力もないと思うが」
「藍様っ!」
泣きじゃくる私の元に現れたのは、この惨劇を招いた張本人(←小悪魔の勝手な考えです)。
元はといえばコイツが私を嗾けるのが悪いんです。コイツのせいで墓まで持っていくつもりだった私の秘密を
カミングアウトする羽目になったんです。ええそうですよそうですよ。処○で悪いんですか。○女で悪いんですかコノヤロー。
全ての元凶の狐(決め付け)は、私達の方をみて笑みを零しつつ(嫌味ですかコノヤロウ)、言葉をかけてくれました。
「あまり格好良いとは言えなかったが、橙のピンチを助けたのは見事だったぞ。
流石は橙のご主人様なだけのことはある。橙、ちゃんとお礼は言わないとな」
「はいっ! ありがとうね、小悪魔ちゃん。私、凄く怖かったから、助けてくれて嬉しかったよ!」
ふざけるなコンチクショウ。助けないと殺すみたいなオーラを出したのは一体何処の誰ですか。
もう嫌です。二度とこんな真似は御免です。二度と橙とは行動しません。この馬鹿親と顔を合わせない為に。
そんなつもりで、さっさとこの場をスタコラしようとしたその時、お狐様がまた私の襟首を掴んでとんでもない事を言い出しました。
「さて、橙の恩人に対して親も同然たる私が何もしないのも寝覚めが悪い。
今日は是非とも我が家で食事でも楽しんでいって貰えないか。紫様もきっとお前の来客を歓迎するだろう」
「…へ? え、えっと、私はその…」
「橙にとって初めての『友人』だからな。橙もその方が嬉しいだろう?」
「はいっ!! 小悪魔ちゃんともっともっとお話したいですから凄く嬉しいです!」
「そうかそうか。ん、どうした小悪魔。まさかとは思うが、よもや私達の誘いを断るなどと言うつもりでは」
ははは、いっそ殺して下さい、フ○ック。こちとら拒否権なんか持ち合わせていないですよ。常任理事国どもめ。
崩れ落ちる私の身体をお狐様が抱き止め、ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべています。ああ、この人はあれです、
私で遊ぶつもりです。女狐、性格が最悪です。こんな性悪妖怪みたことがありません。恐ろしいです。
一体私が何をしたというのか。今日という日に恨みつらみを心の奥底で語り続ける私を放置し、橙とお狐様は
私を引っ張って立派なお屋敷へと案内して下さいました。そこからの記憶は…正直語りたくないです。ほぼ死にかけました。
もうすぐ日付が変更になろうかという時刻、私はフラフラの身体で紅魔館へ戻ることができました。
自分のか弱い身体を抱きしめて生の素晴らしさを実感する私。生きているって素晴らしいです。
もう橙の家での宴会は終わったんです。最強の妖怪やら鬼やら亡霊やらがどんちゃん騒ぎするあの場所から
私は生きて帰ることが出来たんです。私には帰る場所があるんです。こんなに嬉しいことはありません。
あと何故か隙間妖怪に気に入られました。一週間に一度は遊びに来いと約束(命令)されました。死にたい。
「お帰りなさい、小悪魔」
ボロボロになった私を、図書館に入るなり迎えてくれたのは私の主、パチュリー様。
パチュリー様が嫌にニヤニヤしてたので、不思議に思っていると、何のことはありませんでした。
パチュリー様の机の上に用意されたのは、遠見が出来る水晶玉。すなわち、パチュリー様は
今までの私の出来事を全て第三者として見ていたんです。このクソアマ、本当に性格が腐ってます。
「今日は実に楽しい時間を過ごせたみたいじゃない」
「ええ、おかげ様で五回くらい死にかけました。ああ、レポートなら人里のゴミ捨て場にありますから
自分で取ってきてください。私はもうこの図書館で引き籠り生活を一生送ることに決めましたので」
「レポート? ああ、そういえばそんな理由で送り出したんだったわね。すっかり忘れてたわ」
舐めてます。本当に舐め腐ってます、このアマ。結局のところ、データ集め云々はパチュリー様の適当な
理由付けで。この人は私が外界で右往左往して慌てふためくところが見たかっただけなんですね。
そしてその光景をコメディを見る観客のように楽しんでいた、と。本当、ぶち殺しますよこの紫もやしが。
いつかパチュリー様が寝ている間に、髪型を勝手に弄ってあげようとか計画することにしました。
昇天ペガサスMIX盛りとか凄く良いと思います。問題はパチュリー様が睡眠を必要としないことくらいでしょうか。
「貴女の幽香に虐められていた姿、実に笑えたわよ。滑稽過ぎてお腹が痛くて痛くて」
「そうですか。流石はパチュリー様、実に性根が腐ってますね。一回本気で死んでください」
「それは仕方がない。だって私は魔女であり、ほかの誰でもない貴女のご主人様なんですもの」
クククと笑うパチュリー様は実に妖艶で、それでいて実に腹黒くて。
そんな笑みを見て、私は思うんです。ああ、やっぱりこの人は私のご主人様なんだな、と。
他者を玩具のように扱っても何も気にしないところなんか最高です。だからこそ、私はいつも沢山の気持ちを込めてこう言うのです。
「大好きですっ、パチュリー様(死に腐れ、この紫もやしが)」
そして美鈴ではなく咲夜さんをターゲットにする辺り、小悪魔は分かっている。
実によく分かっている。
小悪魔ageha(笑)
なんていうか…ぶっとんでますなwww
魔理沙可愛い
いやしっぺ返しというよりは最初の方の悪戯にオチがついてないというべきか。
最後のカミングアウトで中和されたけど途中まではちょっと不快でした。特にチャバネ
それじゃあしかたないな。
うんしかたない
しかしそんな貴女が嫌いじゃないのです。
あとにゃおさんの生き様が余りにシェルブリット過ぎます。
2次創作である以上、やはりその大元のキャラが(程度によるが)強く貶められるのはショックが大きいかと思います。
オリジナルか、東方キャラに思い入れが無い人にとっては、テンポもよく面白い話だとおもいます。
ただ「東方の2次創作」としては個人的にはこの点で。
オリジナルのお話としてなら70点ぐらい面白かったです。
俺の身体を動かす心のハートが盛大に脈打ち、
その大きな鼓動が俺に「小悪魔に恋をした」ことを告げた
スイーツ(笑)
そして、このお話を読み、不快に感じられた多くの方々に謝罪申し上げます。本当にごめんなさい。
今回は『小悪魔』という不定形なキャラクターをいつもの良い子ではなく、より小悪魔的に表現してみたいと考え、
常時腹黒いけど実はただのませた子供なこあをアップテンポ調で物語を書こうとしたのですが、その結果、
魔理沙や他キャラに対する表現が貶めと不快を伴うモノという作者として一番やってはいけない結果をもたらしてしまいました。
過去に二十作近くお話を書いておきながら今更この失敗は本当に情けないです。東方キャラに思い入れがないとお叱り頂いても仕方がないと思います。
読んで楽しいと感じて頂けるようなお話作りを常に心掛けていた筈が、読者を不快にさせるという正反対の結果になってしまったことを
心よりお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。
本当、自分は一体何をやってるんでしょう…情けないし悔しいです。本当にごめんなさいです…
小悪魔が悪ぶってるってことが、最初の一段でわかったからそこまでキャラが貶められた印象は持たなかったなぁ。
後日談も気になるが、この話は小悪魔視点なんだから、その目の届かないところの話までカバーするのもそれはそれで不自然な気がする。
>作者さん
あんまり自虐的になられると楽しんで読んでた俺は一体……ってなっちゃうからほどほどにしてくださいな。俺以外にも結構楽しんでたようですし。
人それぞれ感じ方に差がありますから、今作のようなアクの強い作品は万人受けしないこともあるでしょう。
受け入れられない人の意見ももっともです。それに真摯に向き合うあなたも立派です。
それでも、評価されたことも忘れないで次の作品に臨んでくださいな。
ただ、走り書きだったのかな?
一貫性が無かった気がします。
これはひどい小悪魔orz
個人的に小悪魔へのしっぺ返しが少ないなと思いました
幽香に虐められ、八雲家におもちゃにされた後にも
小悪魔が弄ってきたキャラ達に面白おかしく仕返しされれば
後味もよくなり全体的にいいかなと思いました
過去作品を読んできたから作者にはちゃんと東方に
思い入れがあると分かってますから大丈夫かと
じゃなかったらあんなに書けない、読者を引きこめない
まぁ弘法も筆の誤りといいますし
こういう話もいいと思っている人もいるので
そんなに気にしなくてもいいと思います
あなたの過去の作品のパラレルワールドの小悪魔として、見ることにします!!
「ちび美鈴」のお話の時の、小悪魔と少し違う感じがしましたから!
前の印象があったから、ちょっと変な小悪魔だなぁ…と、思ってしまっただけだと思います。
個の作品としては面白いかったです!
作者さんが東方を愛してる事はもうわかってますよww
個人的な意見としては、橙へのイヂワルや幽香に売った喧嘩などは失敗に終わりましたが、それ以前の行動も何かにつけて最終的に失敗していたのなら小悪魔が「憎めないキャラ」になっていたのではないかな、と思います。
こうゆう小悪魔的な小悪魔もアリですよ。
作者様の作品は好きなので次回も楽しみにしています。
正直注意書きが欲しかったな~
そうすれば読む前に心構えが出来たのに……
分類には得にありませんでしたが、過去作品とは別物であることを冒頭で述べたほうがいいと思います。
めーりんとさっきゅんのカップリングが出来上がってたり、小悪魔やパチェにも違和感が出るでしょうから
さて、にゃおさん。俺だ、結婚してくれ。
オチは最初の三行位で読めてたけどね、それでもおもしろかったw
注意書きの有無とかで点数下がるのは何だかおかしい気がするけど、
にゃおさんだからなぁ、仕方ないのか?(今までの歴史的に考えて)
でも、続きものの場合はちゃんと注意書き書いてた覚えがあるので、やっぱり納得いかない。
……余計なことほざいてすいませんでした。
高評価を入れてる方が多いので少数派なんでしょうけど。
「紫もやし」ってひでえなw
こんな小悪魔も好きですよ? ウザいけどなw
あと個人的に藍様が好き。
橙を溺愛するでもなく、かと言って放任するでもないこの立ち位置が、俺の思う藍様像にジャストフィットすると言うか。
「私が欲しいと貴女は言った」の後に読んだんだけど、十分楽しめた。
設定が定まって無い小悪魔でこの話は全然おかしな所も無いし。
てか設定改変してなくても気に食わなければ鬼のように叩かれて
設定いじってても自分の好きな展開なら100点連発って書くほうも大変だな。
この小悪魔はマジ愛おしい。
悪魔とか魔女という括りを、単なる能力や口調の違いとしか認識していない人は理解が足りないと思うよ。
元のキャラと言っても饅頭の皮だけみたいなもんなんだよなぁ
個人差はあるからとにかく言うつもりはないけど…
私にとってはよくある優しい司書、悪魔っぽくない司書より
このくらい毒が強くてはっちゃけてる方が好きです。
変に威張ってる処とかが私にとっての低級悪魔らしくいい感じでした。