Coolier - 新生・東方創想話

秘封河童捜索倶楽部

2009/08/28 19:56:44
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「という夢を見たのよ」
 メリーは大学のカフェテラスで私と会うなり夢を話を始め、そしてよく分からないまま終わった。すると頼んでいたカフェラテが2つやってくる。テーブルの上に漂うカフェインの匂いが夢の話と重なる。
 夢のメカニズムはいまだに解明されていない。記憶の整頓とも言われてるが、予知夢を見るということもある。そして目の前には別の世界に行ってしまうという事例がある。月に人類が旅行に行き、京都と東京を1時間以内に移動可能となった現代でも分からないことはたくさんあるということ。
 こんな感じで、彼女の夢の内容を聞いてカウンセリングするというのは前からちょくちょくやっているけど、今回も難易度はかなり高め。ゲームみたいにEasy、Normal、Hardっていう風にたとえるならLunatic、狂った難易度。まず、別の世界に行っているという飛躍的な考えを持たないといけないから一般人には難易度が高すぎるかもね。
 私はメリーの話を思い出しながら、ヒントになりそうなモノを探し始める。メリーはそんな私を見てニヤニヤしながら、カフェラテのカップに口をつける。顔に何かついてるのかな?
「そんなことないわよ。蓮子がこういうことを考えてる顔が好きなだけ」
 ……ごほん、というわけでメリーの夢を最初から解説しよう。何顔を赤くしてるんだ私。
 メリーは川沿いを上流のほうに歩いていた。季節は私達の世界と同じで秋。紅葉がとても綺麗で、川を流れるもみじがとても美しかったらしい。
 川を挟んで反対側には秋をつかさどる神様の姉妹が宴会を開いていたそうだ。他の神様や人間と一緒に楽しそうにしてたという。なんで神様? なんで分かったの? というツッコミはおいておくことにする。メリーがそうだと言ったからそうなのだろう。
 やがてとても大きな滝まで辿り着いた。秋の滝、フォールオブフォール、ずいぶんとしゃれのきいた夢だ。
 そんな場所で一人の河童に会ったという。どうして河童だと分かったのかと聞くと。
「本人がそう名乗ったわ。外見は人間そのものだったけど」
 らしい。夢の話だし、今回もどんな世界に行ったのかも分からないのでそういうことにしておく。景色に浮いた紅のお屋敷、赤い目をした人食い妖怪、炎を操る人、神様ときたらもう河童ぐらいじゃ驚かない。
 河童は『ここから先は天狗の領地、勝手に入ると痛い目にあう』と言ったそうだ。
「あらあらそうなの? でもそんなことで引き下がったら秘封倶楽部の名が泣くわ」
 夢の中のメリーもよく分からない。秘封倶楽部はそんなにえらいものじゃない。大学からすればオカルト的活動をしてない不良オカルトサークルということになってる。
 そこらへんからはよく覚えてないらしい。無事にこちらの世界に帰ってきたということは、天狗にやられずに済んだということだろう。河童と何があったのか、河童はどんな容姿だったのか詳しくは覚えてないらしい。
 ちなみに今回の戦利品はないとのこと。毎回毎回何か持って帰ってこられても困るけどね。
「その河童、手が伸びたり、カメレオンみたいに姿を隠したりしなかった?」
「なんのアニメの話?」
「違うわよ。『芥川龍之介』の河童よ。読んだことないの?」
「学校ではやらなかったわね……」
 そうなのか。メリーって高校まではここにいたのかな。詳しいことは知らないからなぁ。
 そんなことはともかく、これで今日の活動は決まった。
「じゃあメリー、今日は何曜日?」
「あなた、星を見れば分かるでしょう? 今日は13日の金曜日。チェーンソーを持ったマスクの男が美人を殺して回る怖い日よ。私も襲われちゃうかしら?」
 メリーは、怖い怖いとまったくおびえてない顔になって言う。それにあの映画でチェーンソーが使われたのは数回しかない。ほとんどは斧などである。それでもチェーンソーのイメージが強いのか13日の金曜日の殺人鬼といえばソレが浮かぶ。
「ということは、明日は休みだね。メリー、今日はチェーンソー男じゃなくて河童を探しに行かない?」
 メリーが河童の夢を見たのもなにか起こる前の前兆かもしれない。私が芥川龍之介の短編集を読んでたのもその証拠。
「いいけど、チェーンソー男がやってきたら守ってくれる?」
 想像する。
 そんな危ない人に襲われたとして、私にどのような反撃手段があるか。
 もちろんない。
 天才的な頭脳を持っている人間でも、その頭脳だけで戦うのは不可能だ。かの有名なちびっ子名探偵も、現実離れした道具の数々のおかげで悪党や犯人と戦っているのだ。空手の出来るガールフレンドみたいなキャラもいるので道具がなくてもピンチのときは助けてくれる。
 頭は同じくらい良いかもしれないけど、私には現実離れした隠し道具や護身術はない。
 なので、
「そのときは一目散に逃げよう」

 河童。
 かの芥川龍之介も小説にした日本のポピュラーな妖怪。蓮子はその小説を最近読み直したらしい。それに影響されて、今日の秘封倶楽部の活動が決まった。
 その妖怪の特徴は、頭に皿を乗せて、背中には亀のような甲羅をしょってて、体は緑色、手足の指は三本と人間とは違う部分が多くて分かりやすい。小説の河童はさらにカメレオンのように背景と自分の体の色を同化させたり、片方の手を縮めて逆の手を伸ばすというアニメのようなことも出来るらしい。そう蓮子に説明されたわ。
 でも私は芥川が書いた河童や、一般に知れ渡ってる河童とは違う姿の河童がいるのではないかと思っているの。
 帽子をかぶって、リュックサックをしょって、人間が好きだけど照れ屋だからいつも隠れて人間を見てる。そんな河童がいるんじゃないかと私は密かに思ってるわ。こんな事いったら蓮子に笑われるんでしょうね。そっちのほうがアニメっぽいって。
 でも夢で見た河童がそんな感じだった。よくは覚えてないけど多分そんな感じ。
 なんてことを考えつつ時計を見る。ちょうど待ち合わせの時間になったけど、蓮子の姿は見えない。いつもどおり遅刻。
 困った子ね……とため息。女の子を待たせるのはマナー違反よ。蓮子も女の子だけどね。
 待ち合わせの場所は町外れの川。一応名前は付いてるらしいけどちょっと思い出せない。夏になると、昼は水遊び、夜は花火と絶好の遊び場になるここも、秋になれば夏の忘れ物とかが転がる。拾い忘れた線香花火、飲み捨てられたコーラの缶、コンビニのビニールなどなど。
 こんなところに河童がいるとは思えないけ、ど……。
 川沿いの空き地の方、今人影が見えた。こんな時間に? 人には内緒で俳優になりたいと思ってる人がこんな時間にこっそりと練習してるとか? いやいや、時間は深夜の25時を回ったわ。そんな時間に活動してるなんて、私達と妖怪ぐらいよ。
 妖怪……。
「ごめーん、待った?」
 ようやく来た。星を見たら時間が分かるくせにどうして遅刻するのかしら。
「3分33秒遅刻よ。ちょうどぞろ目、狙ったのかしら? 次に狙うなら1分11秒ね。もちろん、1分11秒早く着くのよね」
「ごめんってホント」
 私はそっぽを向いてみる。さっき人影が見えたとこを改めて見てみるけど何もいない。やっぱり気のせいかしら。
「も~、どうしたら機嫌直してくれるの?」
 どうしたら、ねぇ……。
 ふと思いついた。でもこんなこと言っても蓮子はしてくれないわよ。いつもみたいに誤魔化されてそのまま。それでも、やっぱり……、
「……手、繋いで」
 蓮子はキョトンとした顔になった。そんなリアクションされちゃうとなぁ。
「メリーもしかして」
 もしかしてももしかしなくても、
「チェーンソー男の話信じてる?」
 思わずアニメみたいなリアクションをしたわ。ズッコケるってこういうことを言うのね。
「違うわよ、も~」
 蓮子に期待した私がバカだったわ。一部の地域じゃ、バカのことを『⑨』と言うらしいの。今の私と蓮子はまさにそれだわ。説明書に『⑧.残機 ⑨.バカ』ってかかれちゃえばいいわ。
 それからそれから、残暑で干上がってゾンビになっちゃえばいいのよ。そんな蓮子を見て私は、十字架を持って、喪服を着て、お経を唱えて、最後にアーメンと言ってあげるわ。もちろん全部メッカの方向を向いてやってあげる。
「はいはい、分かった分かった」
 そう言ったと思うと、私の右手をぎゅっと握る蓮子。走ってきたからか暖かい。その体温が私に流れてきたみたいに、顔まで熱くなってきた。え、何何?
「これで機嫌直してくれるならお安い御用だよ」
「もう……」
 機嫌直しなのかぁ。ちょっと――すっごく――残念。期待したのになぁ。
 まあ、そんなこんなで秘封倶楽部の活動は今日も始まった。

 さっきからメリーと手を繋いだまま。たまにはこういうのもいいかもね。
 暗い川沿いには私達だけ。聞こえてくるのは2つの足跡、水の流れる音、メリーのソプラノのような澄んだ声。
 これで時間が深夜じゃなくて、目的が河童探し、または結界の境界探しじゃなかったらいい感じとか思われちゃうのかも。でも私はこういうのも好き。
 深夜の川沿いは、近くのマンションの明かりぐらいしか光源がなく私達以外の人間(あるいは妖怪とか幽霊とか)がこっそり後をつけていても分からないほどに暗い。
 そんな中、メリーはさっき謎の人影を見たと言った。こんな時間にさまよってるのはメリーの言うとおり私たちか、変な人か、妖怪でしょう。やっぱりチェーンソー男でもいるのかな。妖怪チェーンソー男……ぞっとしないなぁ。名作ホラー映画がB級映画になっちゃう。
 そんなものは現れないまま、川沿いを歩き出して15分。ちょうど公園ぽいところを見つけた。木製のテーブルや椅子があって、天気のいい休日に家族がお弁当を食べるような場所だ。大都会である京都には珍しい場所かもしれない。
「ちょっと休憩しようか?」
 そうね、とメリー。
「このあと、どうしようか? メリー、あれから何か見つけたり、見えたりした?」
 私には残念ながら特別なものは見えない。
 メリーのちょっと気味が悪いその目と能力のおかげで私達秘封倶楽部は活動できるのだ。もしメリーがいなかったら。秘封倶楽部か私の考察と妄想の繰り返しとなるサークルでもなんでもないモノになる。これで同人誌を出したら売れるかなとか思ったけど、それはとっくに時代遅れ。遷都が行われる前だったら有名サークルとして『その方面』では有名になれたかもしれない。あくまで『その方面』ではだから、私の望んだものとは大きくかけ離れたモノになるかも。
 幸か不幸か、私は京都の大学でメリーと出会い、この不良サークルの活動をしているのだ。
 そんな秘封倶楽部の『目』ともいえるメリーは、私の問いかけに対し首を横に振る。
「特に何もないわ。見えてる境界だって、中はそんなに面白いものじゃないし」
 と言って木の椅子に腰を掛ける。ということは今のところは収穫なしか。私も隣の椅子に座って、頬杖を片手で付いて考える。
 そもそも、今日は私の気まぐれみたいなもので動いている。最近ふとしたきっかけで『河童』を読んだというそれだけのもの。
 あの物語みたいに、河童を無我夢中で追いかけたら知らない世界に行けると思ったから。メリーと一緒なら、河童だけじゃなくパラレルワールドの私にだって会えるかもしれない。
 ……そんなことを考えてる私は多分、メリーが羨ましいのだと思う。
 普通の人間が見えないものが見えて、私には行けない所に行ける。そりゃちょっと危なかったり、時には死と隣り合わせみたいなことだってあるかもしれないけど、普通の生活よりもそのほうが面白い。
 ため息をつく。……とあるものが目に入った。
「ねぇ、メリー。あんなのこんなところにあったっけ?」
 公園とはちょっと離れた場所に一箇所の明かりがある。街灯とか車の明かりじゃない光。
「どれ?」
「ほら、あそこ」
 私が指差したのは青い自動販売機。どこから電気を引っ張って来てるのか分からないくらい不自然な場所にそれはある。タバコじゃなくてジュースなんだろうけどそれでもやっぱり不自然。
「あら、ホントね。こんな場所にあっても売れないでしょう」
 まったくその通りだ。自販は人通りの多かったり、店や会社の近くにあるのが当たり前。工事現場とかにもよく置かれたりするけどこの辺で工事をやってたりする様子も無い。
「ちょっと気になるわね」
 とメリー。
「なら行ってみましょう。ついでにコーヒーが飲みたいしね」
「カフェインばかり取ってると中毒になるわよ」
「大丈夫。もうとっくになってるから」

 自販の近くに誰かいる。時間は深夜25時半。こんな時間に自販に用があるということは、徹夜で原稿を上げている作家か漫画家ぐらいじゃないかと思う。妖怪『締め切りぎりぎり漫画家』 ……まったく格好がつかない。それなら海老がボクシングをしているほうがいい。シュールで話題性も抜群だ。
 で、その自販機の前にいる人は夜なのに帽子、リュックをしょっている。そして何を買おうかと考えているのかボケーっと自販を見つめている。
 年は私達より下だろう。こんなお年頃の女の子がこんな時間に出歩いてるとは……。
「怪しいわね」
 夜中なのに帽子を被って河童を探してる私達もその分類に入るけどね。それは棚においておく。
「そうかしら? 夜でも帽子を被ってる人は私の目の前にもいるし、猛烈にコーヒーが飲みたくなったおかしなカフェイン中毒者かもしれないわよ」
 いや、その発想のほうがおかしい。あと私の目の前にも帽子を被ってる人はいる。
 帽子の人はそんなくだらない話をしてる私達に気づいたようにこちらを向く。そして私達を見るなり大きな目を見開いた。まるで妖怪でも見たかのように――
「ひゅい!?」
 妙な声を上げるとその人は一目散に逃げ出した。そう思っていると、すぐ隣にいたはずのメリーがその人を追いかけ始めているじゃないか。私もあわてて後を追いかける。
 何故逃げるのだろう。そして何故メリーは追いかけてるのだろう。別にどちらもチェーンソーみたいな凶器を持っているわけじゃない。メリーは実はFBIとかそういう組織のエージェントで、指名手配中の犯人を見つけた……なんてことはないだろう。それはそれで面白そうなのは確かだけど。
 そんなくだらないことを考えながら、ようやくメリーと並ぶ。割と知らない町並みが流れていくけど、私の能力なら道に迷うことも無いだろう。夜明けまでに終わればだけど。
「ちょっとメリー、なんで追いかけるの?」
 すると息が上がっているのか、かなり興奮した声で、
「あの人妖怪よ、妖怪。この世界の匂いじゃないもの」
 匂いって……嗅いだりしたかな? メリーの能力って目だけじゃないのかな。
「匂いもそうだけど、感じからして妖怪……河童よ。私達は『芥川龍之介の河童』を見つけたのよ」
 この辺の話だったかな? っていうかあれはそもそも作り話、創作だから存在するはずが無い。この辺には河童のお話や伝説も無い。勝手に決め付けていいのかなぁ。
 でもメリーが言うと信じられる。私には見えないモノが見えるメリーなら。
 このままあの人を追いかければ、河童の国に行けるかもしれない。
 私は本気でそう思った。
「曲がったわよ。9時の方向。車と電車飛び出し注意よ」
 電車は出てこないだろう。でもメリーが言うのなら出てくるのかもしれない。



 走った。久しぶりにこんなに走った。マラソンなんて何年ぶりだろう。
 こんなに走ったのに結局見失った。やっぱり河童の国に行くには精神病を患う必要があるようだ。その考えでいくと、私もメリーも正常な思考の持ち主だということだ。
 そんなこんなで戻ってきたのはスタート地点。赤い自動販売機がさっきと同じようにおいてある。あれ、赤だったっけ?
「まるで消えたみたいに気配までなくなったわ……。こんなことってあるのかしら」
 実際に起こったらそんなこともあるんでしょう。って、
「メリー、何してるの?!」
「何って? 地面が冷たくて気持ちいいわよ」
 綺麗に舗装された地面にメリーは大の字に倒れていた。確かにこの時期、こういう地面はひんやりしてていいかもしれない。でも、いくら人が見てないからって……。
「あら、いいじゃない。たまにはみっともないことしたって。見て蓮子、星が綺麗よ」
 都心からはちょっと離れたこの場所。余計な光もなく、星が綺麗に空を覆っていた。
「ここから見ると天然のプラネタリウムね。こんな綺麗なものを見ないなんて蓮子は損をしているわ」
 いや、でもそんな服が汚れるし。
「ああ、蓮子はなんて冷たいのかしら。こんなに冷たいと夏場でも凍え死んでしまうわ。そんな私を蓮子は何もせずただ見つめるだけ。そして私は雪女になって蓮子を襲いに行くんだわ。そしてこの辺は夏場でも雪が降る異常な場として有名になるの。もちろん黒幕は私。そんなことになったら蓮子はどう責任をとるのかしら?」
 分かったよ、私もやればいいんでしょ、もう。
 しぶしぶ腰を下ろしてそのまま横になる。確かに地面はひんやりしてて気持ちがよかった。汗でびしょびしょだしどっちにしても洗濯しないとなぁ。
 星空は天然のプラネタリウム。確かにその比喩表現は正しかった。視界全体に見える星空。
「綺麗だね」
「そうね~」

 すでに河童のことなんてどうでもよかったわ。こうして蓮子と二人で何かをしてる。それだけで私は満足。河童探しなんかじゃなくて、最初から天体観測にすればよかったのよ。今度はそうしてほしいわ。
 綺麗な夜空。ボケーっと空をまっすぐ見る蓮子の目には何が映ってるのかしら? 現在時刻? 今の場所を示す印?
 でももうちょっと私を見て欲しいなぁ。いっつも不思議だ、境界だ、時間だって言ってるんですもの。
 だからね、
「ねえ、蓮子」
 私は返事を待たずに蓮子の腕に抱きついた。
「な、ななな、なんでしょうメリーさん」
「ねぇ、私を見て」
 顔を真っ赤にしてなるべく私を顔を合わせないようにしてる蓮子。ずっと顔を近づけるて、もう一度、
「私を見て」
 なんだかお酒でも飲んでるような気分。
「……うん」
 観念したのかようやく私を見てくれた。顔は真っ赤。汗もだらだら。緊張したような顔が可愛いわ。
「蓮子……」
「な、んっ!?」

「もう……こんなところでしなくたって」
「あら、いいじゃない。誰も見てないんだし」
 いや、それはそうだけどね。
「それに、服だって全部脱いでないんだし」
 ちょっとはだけた服を直しながらメリーはそんなことを言い出す。それは誤解を招くから、
「そ、そういう発言は禁止ー」
 Aまで、A以降はやってないから。服だってホントは脱いでないし、この汗はさっき走ったから、それに暑いしね、うん。
 AとかBとかそういう言い方はすでに幻想なのかもしれないけど、他にいい表現方法が思いつかない。も~、メリーがこんなことしだすから。
「あらあら、あんなに激しくしてきたのに」
「そっ……そんなこと、ない、やもしれない、とも言い切れない、けどあれ、だから、ここじゃなかったら」
「ここじゃなかったら、もっとしてくれたの?」
 そ、それは……。
「ほ、ほら、もう帰らないと。予定の時間よりもこんなに遅れたんだから」
「そうね。ねえ、蓮子?」
 メリーの手を引いて早く帰ろうと思ったとき、ちょっと切なそうな声でメリーは私を呼んだ。
「今日、泊まっていっていい?」
 今晩、寝れないかもしれない。



「来たぜ」
 川沿いにあるとある河童の家。最近仲良くなった魔法を使う人間が今日もやってきた。
 白黒のいかにも魔法使いらしい格好をした少女はいつもどおり、他の人間や妖怪のところにやってくるのと同じように無遠慮に家に上がる。
「やあ、いらっしゃい」
 そんなことを知ってるのか河童は気にせずに挨拶。昼なのに今起きたように目をこすってのが気になった。
「おん? どうした寝不足か?」
「うん~。なんか人間に追いかけられる夢を見てね、寝た気がしないんだ」
「なら、薬師のところにでもいって薬をもらってくるといい。なんでも蝶になって空を優雅に飛ぶ夢が見られる薬があるらしいぜ」
「ん~、でも私はきゅうり食べ放題の夢がいいなぁ」
 初投稿で、一回投稿に失敗してるのは内緒です。

 ブログにちょくちょく書いてたりしましたが、やっぱりもっとたくさんの人に見てもらいたくて投稿です。

 また書けたら投稿していこうと思いますのでもしよかったらまた見てやってください。
雨竜三斗
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コメント



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>夢を話
夢の話

二人の仲の良さは微笑ましく思います。
地の文の視点が統一されていなかったので少し読みにくいように思いました。また、ところどころにあるパロディネタがこのお話の雰囲気にはあまりあっていないように感じました。
6.60名前が無い程度の能力削除
こういう話大好き。雰囲気を大切にする感じ。
だからこそ、3の人の指摘している特に部分が目立つ。
それと、この話には百合分はいらない気がした。ほのぼのと甘々は似て非なるものだと俺は思ってるから。

でも、最初に言った通りこの雰囲気とかは大好き。秘封倶楽部も好きだし。次、待ってるぜよ。
8.30名前が無い程度の能力削除
視点人物をまず統一してください。
途中で視点が変わると読み手が混乱します。

読んだ感想としてはこの話に、河童(にとり?)は必要ないような気がします。
普通に境界を探しに行った二人。という設定だけでも同じことができる気がします。
説明だけならそれほど関係ありませんが、キャラとして出すなら主人公と絡めることも大切です。

偉そうな感想で申し訳ありません。
10.100名前が無い程度の能力削除
念レス