十月。
幻想郷の山々は狂った様に赤々と燃え、大地の一部は秋の実りで輝いていた。
それは春に人間が耕し、種を蒔いた田畑の実り。
物言わぬ一巡りの命は夏にうんと身の丈を伸ばし、秋には衰え、実りを付けた。
里の人間は来年の実りに祈りを籠めてその美しい作物を鋭利な鎌などで刈り取ったことだろう。
太古の神話の再現である。
保食神(うけもちのかみ)、つまり人間の食物を司る神を刃物で殺し、その神の肉体から成った作物を五穀の起源とする神話だ。
生き物を殺すことは決して滅亡に繋がる訳ではない。
人が正しく愛を籠めて秋の成果の命を刈り取れば、また来年も善い実りが幻想郷の神々と約束されるだろう。
そういった人と神との約束や信仰を強める為にも毎年執り行われていることがある。収穫祭だ。
収穫は人にとっても神にとっても重要な行事であり、儀式なのだ。
はて、今年の収穫祭はもう終わったのだっけか。それともまだなのか。
収穫がなされたことは、ある道具によって店に居ながらでも容易に判るのだが……。
──カランカラン
「毎度お馴染み、清く正しい幻想ブン屋。
射命丸文の『文々。新聞』をよろしくお願いします!」
「新聞か、有難う。今日のは随分と厚みがあるね」
「ええ、なんといっても昨日は……いえ、野暮ですね、言わないでおきましょう」
昼の強い日差しによって暗くなった香霖堂に、鴉天狗の新聞記者、射命丸文がやって来た。
肩には新聞や写真機などの入ったやや大きめで丈夫な革の鞄を掛けている。
天狗というのは仲間意識が強くて自分たちの社会に籠りがちだが、この天狗の少女はそうでもない。
この娘自身が頻りに妖怪の山を出て幻想郷中を飛び回っているのも勿論だが、彼女の新聞の内容には天狗の内輪話がないのだ。
その気取らない記事が里の人間にも評価され、仲間の天狗はともかく人間の定期購読は増えつつあると文本人から聞いた。
僕も彼女の新聞のあまり誇張しない所を評価して定期購読している。
内容はともかく、定形化した漫画のような脚色やオーバーな表現がない分、内容を考察するのに難くない。
「昨日は……何があったっけな?」
「わざわざそれを口にするのは野暮です。人が折角その事実を文字という形にしたのですから。
はいコレ、今回の新聞。秋の特別編ですよ♪」
文から直接新聞を手渡され、まずはさっと記事に目を通す。
成程そこには殆ど昨日のことを綴った文字やら写真で一杯だった。
いつも読んでいる新聞は六十年前のことから来週の死亡欄まで幅広いことが書いてあるのだが、やはり今回は特別編と言うだけはある。
「ああ、昨日は人間の里で収穫祭があったのか。
確かに先日、魔理沙達がそんなことを言っていたな。
そうか……昨日だったのか」
新聞には今年の秋の収穫祭の様子が事細かに、しかし誇張することなく描かれていた。
里ではまず収穫した穀物や家畜を供物として神々に捧げ、その後人も神も入り交じって美味しい食べ物と酒を楽しんだ。
そして今年は異国のイベントも幾つか真似てやってみたそうだ。
中でも一番盛り上がったのが特別ゲストの豊穣の神様と行った葡萄の搾汁らしい。
大きくて底の浅い桶を幾つも用意し、そこに葡萄を一杯敷き詰めて多くの若人が神と共に裸足で搾汁したそうだ。
しかし幻想郷の酒と言えばその多くは日本酒や焼酎で、ワインはあまり造られない。単純にワインを造る技術がないのだ。
なので搾汁して得られた葡萄の汁の多くはジュースとして振舞われたそうだ。
女子供は喜んでその甘い果汁を飲み、男は頑なに酒を呑み続け、老人は家の神棚や仏前にジュースを含む供物を供えて手を合わせていた。
残りのジュースはワイン造りの技術を持つ者が受け取ったらしい。
この祭りに参加した人と神は皆無礼講で交じり合い、その熱が冷めぬ内にお開きになった。
今ならまだ祭りのテンションの人間がうろちょろしているそうだ。
「どうです? 実際に祭りに行かなくても祭りの事実を知ることは出来るでしょう?
写真は遠くからでもばっちり写る河童の千里レンズを使い、取材は今日行いました。
人と神の交信の場に妖怪が立ち入るのは無粋というものですからね。
まあ貴方は半分人間ですから、行こうと思えば人間の祭りにも行けるのでしょうが……」
「人間にとって、半分も妖怪の奴は妖怪と大差ないさ」
妖怪を祀る変わり種の祭りならともかく、こういった人と神の祭りに参加しようとする妖怪はまず居ない。
もしあの神遊びの場に割り込んでみようものなら、荒ぶる神罰を受けるだろう。
荒ぶる神は時に人の赤子の首さえもぎ取ってしまう程に残忍なのだ。
「それにしても今回の新聞のネタは新鮮だね。
いつもは今更な感じのするものばかりなんだけど」
「そりゃあ異変やちょっとした事件なら裏を取る必要があってネタの鮮度も落ちやすいですが、祭りに裏なんてありませんからね。
それに今更なお祭りの記事なんて、それこそ後の祭りじゃないですか」
「でも実際にもう祭りは終わったんだろう?」
「いえいえ、確かに神の祭りは終わりましたが、まだ終わっていない祭りがあります。
しかもこれは八坂神社、祇園祭のあとの祭りのようなつまらないものではないのです」
「僕は素戔嗚尊(スサノオ)を祀ったあの祭りは、あとにしろさきにしろ好きだけどね」
実質、この世につまらない物なんてのはない。
人がつまらないと言ってしまうのは、単に物をつまらせる価値観が本人にないか、つまらせる余裕が心にないからだ。
天狗はせっかちで心に余裕を持たないから新聞を面白おかしく誇張して、素朴な物をつまらないと吐き捨てる。
はてさてところで、僕は収穫祭の後に別の祭りがあるのを知らないな。
目の前の天狗の少女が嬉しそうに食指を動かすのを見れば、別に嘘を吐いている訳でもなさそうだ。
「それならその祭りの場に行かなくて良いのかい?
そういえば君はいつもなら新聞を店の前に置くだけなのに、今日は随分と話し込むね」
「ええ、だって今日はここで妖怪と人間の祭りがあるのですから。
ほら新聞のここにしっかり書いてあるでしょう?」
「な、なんだって!?」
文の指差す所には確かに、しっかりと、小さな文字でその旨が隅っこの記事に書かれていた。
ちなみに幹事はいつもの様に魔理沙だ。時刻は今晩、場所はここ香霖堂、酒と肴は各々で、とのことだった。
しかしうちで祭りとは初耳である。今は別に白い妖怪桜は咲いていないし、酒の肴になるような花も咲いていない。
今ここら辺に咲いている目立った花といったら鳥兜くらいだろうか。
しかも妖怪と人間の祭りなんて言ってはいるが、要するにいつもの宴会と一緒じゃないか。
恐らく人と神が楽しそうに遊んでいる様子を見て悔しかったのだろう。
わざわざ収穫祭の後にやるなんて、幻想郷の妖怪達の負けず嫌いな性格が簡単に見てとれる。
「それにしても、流石に早く来過ぎましたね。折角だから店主さんの蘊蓄話でも聴きましょうか。
何か面白い品物はありませんか? 出来ればネタになりそうな物をお願いします。最近平和で困っているんです」
「そうは言っても最近は君の面白がる様な商品は入荷していないんだ」
「ネタになれば良いのです。別に商品でなくとも私は構いません」
「いや、僕が構うのだが……。
まあ良い。今日は目出度い宴会の日の様だから、特別に非売品を紹介しよう」
「宴会ではなくて祭りですよ」
さて、昨日は里の収穫祭。ただ適当な物を紹介するのは無粋というもの。
なので僕は瞬時に思いついたアレを見せることにした。
「まあ取り敢えずお茶でも飲んでいてくれ。まだ淹れたばかりで美味いはずだ。
ちょっと台所に行ってくるから」
「あ、お茶請けは軽い物でお願いします」
「品物を取って来るんだよ……」
僕は台所の戸棚から適当な干菓子を取ってお盆に載せ、目的のアレと一緒に持って行った。
「あややや、『おこし』ですね。
んー。ほんのりと甘くておいしい。この味は今も昔も好きなんです」
「あんまり食べると後で困るんじゃないか?」
「まだ昼過ぎじゃないですか。
それに人間じゃないんだから、お腹なんか大して膨れませんよ。
私は鴉天狗に変じて長いですから、膨れるのは心です。
カロリーなんて気にする必要もありません」
「って別におこしを見せたかったんじゃないよ。紹介する品物は別だ」
「おっとそうでした。勿体振らないで早く見せて下さいよ」
僕は勿体振ったつもりはない。天狗はせっかちである。
そう思って僕が溜め息を一つ吐いた間に、文は手に持っていた湯呑とおこしを手帖とペンに持ち替えていた。
随分と手早いと思ったが、天狗にとってはこれが普通なのだろう。
「別に勿体振ってなんかいないさ。
もうお盆の上に載っているこれがそうさ」
「へ? この古臭いお茶碗がですか?」
文は僕の指差した茶碗を見て目を丸くした。
その茶碗は木製の漆塗りで相当古く、所々が欠けたり剥げたりしている。
それでもまだ少しだけ鮮やかな朱色の塗が残っているがやはり薄汚れていて、所々血のような色合いをしている。
あの吸血鬼のお嬢様ならひょっとすると本当に気に入るかも知れない。
彼女はこの茶碗をそっと手に取り、あたかも自分が鑑定士になったような眼つきで観察している。
「うーん。特に芸術的、歴史的価値のあるお茶碗には見えませんねぇ」
「まあね。これは僕がずっと前に拾ったマヨヒガの茶碗だよ。
この茶碗の価値はその能力にある」
「お茶碗の能力……ですか?」
文が手帖にさらさらと走り書きをし、おこしを頬張りながら次の言葉を待っている。
僕は一旦熱いお茶を啜って一息吐いてから言葉を続けた。
「と言っても僕が直接マヨヒガから持って来た訳じゃなくて、普通の商品のように偶々拾った物だ。
マヨヒガの茶碗と言ったら、持っているだけで幸福になった人間の話が沢山あるだろ?」
「ええ、その話は私も多く知っています。
つまり貴方の能力から見てこのお茶碗は『人間を幸福にする程度の能力』を持つと言う訳ですか?」
「いいや、少し違う。厳密に言うとこの道具は『神々を呼ぶ程度の能力』を持つのさ!」
手帖の紙面上でペンを軽く走らせると、文は不思議そうな顔をしてこちらを見つめた。
どうやら僕の言葉がにわかに信じ難いようだ。
「考えてみてもごらんよ。人の幸福なんてのは千差万別で、それを正しく満たす道具なんてあると思うかい?」
「そんなこと考えたりしませんよ。ああ、そんな物なんだなーって納得してしまいます。
まあそれでも、確かに幸運の兎なんてのは眉唾な物ですが」
「兎に角この道具がマヨヒガの茶碗であり、神を呼ぶ力があるのは僕の能力から見て間違いない。
これを持つ人は神様の御利益によって幸福になることが出来るんだ」
「そんなこと言われても、能力を持つ貴方以外の人には信じられない話ですよ。
なにか証拠とかありません? 神様を呼んでいる決定的瞬間の写真とか」
「写真はないが、証拠はある。今君が食べている、その『おこし』が証拠だよ」
「はい?」
文はいよいよ訳が分からないといった様子でおこしを手に取って、少しの間その米菓を鑑定した。
「神様の御利益で美味しく出来上がったという訳ではないですよね? もぐもぐ」
「ああ。正確にはおこしというより、うちにある穀物そのものが証拠品なんだ」
「確かマヨヒガの茶碗を穀物の計量器として使ったところ、穀物が減らなくなったという話なら聞いたことがあります」
「正にそれだ。実際にうちの五穀もまったく減らないし、秋の収穫の季節になればちゃんとその年の穀物に入れ替わっている。
そのおこしは今朝拵えた物でね。米を量り取る時にはもう櫃に新米が入っていたよ」
「ああ、通りでこのおこしは心の腹に溜まる訳ですね」
僕の言葉を聞いて天狗の少女は納得したように頷いてお茶を飲み干した。
せっかちな彼女は頭の回転も良く、天狗ならではの豊富な経験と知識によって深く理解したようだ。
日本において穀物の起源は古く、保食神の話に出て来る程に、神と密接な関係を持つ。
『米』一つに焦点を当てても、そこには『八十八』の神が『籠め』られている。
このように穀物は決して物理的存在ではなく、その多くを霊的存在に頼る。
だからマヨヒガの茶碗によって呼ばれた神が家に穀物を分け与えてくれるのに何の不思議もない。
別に穀物が無限に沸いている訳でもなく、ただ神様からほんの少し頂いているだけなのだから。
このことを質量保存の法則がどうのこうのといって面白おかしく騒ぎ立てるのは合理主義的な人間だけだ。
この穀物を含む様々な御利益、思し召しを受けた人間が幸福になるのは目に見えている。
子孫繁栄、学業成就、家内安全、無病息災などなど、人の幸福は別に特別な物ではない。
神はただこれを約束してくれているだけで、人間のほんの後押しをしているのに過ぎない。
人間に余る力はその人本人にとって不幸となることが多いが、ちょっとした後ろ楯は人を幸せにしてくれる。助長は決して幸福にはならない。
マヨヒガの茶碗が人を幸福にすると言われるのは、神の力で人を密かに見守ってくれるからだ。
「それじゃあこのマヨヒガのお茶碗は、どうしてそのような能力を持つようになったのでしょうか?
私にはやっぱりただの古ぼけたお茶碗にしか見えないのです」
文が率直な疑問を言う。
確かにそうだ。能力なんて物は当然、その能力を持つ物に縁ある物でなければならない。
僕自身の能力だって道具に対する愛があるからこそ存在し、この天狗の少女だって鴉天狗だから風を操る程度の能力を持つ。
ではこの茶碗は何故神を呼ぶことが出来るのか。その答えは至って簡単だ。
僕はその答えを一杯のお茶を飲み込んでから吐き出した。
「実は、君の言う通りこれはただの古ぼけた茶碗でしかないんだ。
マヨヒガの物かどうかは能力とあまり関係がない。
しかし古ぼけているからこそこの茶碗は神を呼ぶ。これは正に和魂の籠った付喪神なんだ」
「付喪神……ですか?」
「物には総じて神が宿っているから、それを粗末に扱ってはいけない。
もし粗末に扱えば道具は荒ぶる付喪神となり、化けて百鬼夜行を始めるだろう?」
「ええ、その通りです。少し前に某巫女が私の新聞を粗末に扱っていましてね。
付喪神の恐ろしさをきちんと教えてやりましたよ」
某巫女というのは霊夢のことだろう。紙舞の記事は前に読んだ記憶がある。
「その某紅白のことは置いておくとして……。
それじゃあ道具を丁寧に扱い続けたらどうなるか判るかい?」
「道具に宿る神ならば、その道具が道具として使われることを望むでしょうから、化けることはまずないと思います」
「そうだ。そして大事に扱われた道具が古くなると、いずれ神寂びて和魂を持つ付喪神になる。
昔から日本人が古い物を大事にして来たのもその為だ。
生活に欠かせない茶碗に宿る付喪神は人々の生活に御利益を与える。
人は御利益があれば神を信仰するだろう? その信心がまた神を呼ぶのさ」
「なんだか人頼みな能力ですね。結局は人が神様を呼んでいるじゃないですか」
「道具なんてのは総じて人頼みな物だよ。だがそこに神が宿るから人は道具に頼る。
人も道具もお互いに愛や感謝の念を忘れてはいけないんだ。特に人間がね。
道具は常に人間に対して、一途な想いを寄せているから」
僕は話を終え、お茶を啜り、手早い天狗によって残り一つとなったおこしを頬張った。
神によって与えられた今年の新米の香りが口から鼻に抜けるのが鮮明に判る。
神様にとって半分も人間の僕は、人間と大差ないのだろう。
★
──カランカラン
「よーし。今回も私が一番だな。文は広告係だし、香霖は零番だ。
霊夢には二番の称号を奢ってやろう」
「魔理沙のそれは、もう負け惜しみね」
日も大分傾いた頃に霊夢と魔理沙を始め、多くの人間や妖怪、亡霊、妖精までもがやって来た。
その数は僕の想像を遥かに超え、香霖堂の中も外も有象無象で溢れ返ってしまった。
こんなことなら早めに逃げ出して、場所だけを提供しておけば良かったかも知れない。
だがそれももう遅い。僕が逃げ出そうとすると皆こぞって引き留めるのだ。
仕方がないので僕は居間の隅っこで今年の葡萄で造ったというヴィンテージの赤ワインを呑んでいた。
ちなみに外の方が屋内より少しは静かなのだが、泥棒や悪戯妖精を見張る為に我慢している。
僕はそうやって店内の物を見ながら、どうして今回の宴会をうちで行ったのかを考えていた。
どうしてこんなにも物の散らかった所を宴会場に選んだのだろうか。
今日ここで宴会を行うと聞いてから、僕はそのことがずっと気になっていた。
そうして夜も更けた頃、店内やら酔っ払いやらを見ていた僕はその答えがふと判った。
昼間に僕が文に話していたように、道具には神が宿り、それは究極的にマヨヒガの茶碗の様な付喪神になる。
そして僕の店、香霖堂の『香』は『神』である。ここは人も妖も神も、全て受け入れる古道具屋だ。
いわばここは三者の懸け橋であり、交流の場としては持って来いという訳だ。
昔のようにこの三者がいがみ合う必要はもうなくなった。
いずれ今回の様に人間と妖怪と神様の交流の機会も増えることだろう。
勿論それぞれが過剰に画一的にならない為にも、形式的にでも対立して立場を明確にする必要はある。
それは儀式であったり、妖怪退治であったり、人喰いであったり──
──これら全てを兼ね揃えた物がスペルカードルールだ。
さっきから窓の外には弾幕の花火が浮かんでは消えている。
勝負をしている者は多く、それは山の神や鬼や天狗や人間などであった。
この平和的で美しい決闘方法が決められた頃、多くの妖怪はやる気を失せていたが、今ではそんな妖怪達もこのルールにすっかり嵌っている。
つまりスペルカードもまた、香霖堂のように三者の懸け橋なのだ。
そして香霖堂の店主である僕もまた、然り。
今夜ここで僕はスペルカードという物にとても興味を持ち、益々弾幕勝負をする気が失せた。
何故なら、僕がスペルカードを用いる理由など毛頭ないと判ったのだから──。
幻想郷の山々は狂った様に赤々と燃え、大地の一部は秋の実りで輝いていた。
それは春に人間が耕し、種を蒔いた田畑の実り。
物言わぬ一巡りの命は夏にうんと身の丈を伸ばし、秋には衰え、実りを付けた。
里の人間は来年の実りに祈りを籠めてその美しい作物を鋭利な鎌などで刈り取ったことだろう。
太古の神話の再現である。
保食神(うけもちのかみ)、つまり人間の食物を司る神を刃物で殺し、その神の肉体から成った作物を五穀の起源とする神話だ。
生き物を殺すことは決して滅亡に繋がる訳ではない。
人が正しく愛を籠めて秋の成果の命を刈り取れば、また来年も善い実りが幻想郷の神々と約束されるだろう。
そういった人と神との約束や信仰を強める為にも毎年執り行われていることがある。収穫祭だ。
収穫は人にとっても神にとっても重要な行事であり、儀式なのだ。
はて、今年の収穫祭はもう終わったのだっけか。それともまだなのか。
収穫がなされたことは、ある道具によって店に居ながらでも容易に判るのだが……。
──カランカラン
「毎度お馴染み、清く正しい幻想ブン屋。
射命丸文の『文々。新聞』をよろしくお願いします!」
「新聞か、有難う。今日のは随分と厚みがあるね」
「ええ、なんといっても昨日は……いえ、野暮ですね、言わないでおきましょう」
昼の強い日差しによって暗くなった香霖堂に、鴉天狗の新聞記者、射命丸文がやって来た。
肩には新聞や写真機などの入ったやや大きめで丈夫な革の鞄を掛けている。
天狗というのは仲間意識が強くて自分たちの社会に籠りがちだが、この天狗の少女はそうでもない。
この娘自身が頻りに妖怪の山を出て幻想郷中を飛び回っているのも勿論だが、彼女の新聞の内容には天狗の内輪話がないのだ。
その気取らない記事が里の人間にも評価され、仲間の天狗はともかく人間の定期購読は増えつつあると文本人から聞いた。
僕も彼女の新聞のあまり誇張しない所を評価して定期購読している。
内容はともかく、定形化した漫画のような脚色やオーバーな表現がない分、内容を考察するのに難くない。
「昨日は……何があったっけな?」
「わざわざそれを口にするのは野暮です。人が折角その事実を文字という形にしたのですから。
はいコレ、今回の新聞。秋の特別編ですよ♪」
文から直接新聞を手渡され、まずはさっと記事に目を通す。
成程そこには殆ど昨日のことを綴った文字やら写真で一杯だった。
いつも読んでいる新聞は六十年前のことから来週の死亡欄まで幅広いことが書いてあるのだが、やはり今回は特別編と言うだけはある。
「ああ、昨日は人間の里で収穫祭があったのか。
確かに先日、魔理沙達がそんなことを言っていたな。
そうか……昨日だったのか」
新聞には今年の秋の収穫祭の様子が事細かに、しかし誇張することなく描かれていた。
里ではまず収穫した穀物や家畜を供物として神々に捧げ、その後人も神も入り交じって美味しい食べ物と酒を楽しんだ。
そして今年は異国のイベントも幾つか真似てやってみたそうだ。
中でも一番盛り上がったのが特別ゲストの豊穣の神様と行った葡萄の搾汁らしい。
大きくて底の浅い桶を幾つも用意し、そこに葡萄を一杯敷き詰めて多くの若人が神と共に裸足で搾汁したそうだ。
しかし幻想郷の酒と言えばその多くは日本酒や焼酎で、ワインはあまり造られない。単純にワインを造る技術がないのだ。
なので搾汁して得られた葡萄の汁の多くはジュースとして振舞われたそうだ。
女子供は喜んでその甘い果汁を飲み、男は頑なに酒を呑み続け、老人は家の神棚や仏前にジュースを含む供物を供えて手を合わせていた。
残りのジュースはワイン造りの技術を持つ者が受け取ったらしい。
この祭りに参加した人と神は皆無礼講で交じり合い、その熱が冷めぬ内にお開きになった。
今ならまだ祭りのテンションの人間がうろちょろしているそうだ。
「どうです? 実際に祭りに行かなくても祭りの事実を知ることは出来るでしょう?
写真は遠くからでもばっちり写る河童の千里レンズを使い、取材は今日行いました。
人と神の交信の場に妖怪が立ち入るのは無粋というものですからね。
まあ貴方は半分人間ですから、行こうと思えば人間の祭りにも行けるのでしょうが……」
「人間にとって、半分も妖怪の奴は妖怪と大差ないさ」
妖怪を祀る変わり種の祭りならともかく、こういった人と神の祭りに参加しようとする妖怪はまず居ない。
もしあの神遊びの場に割り込んでみようものなら、荒ぶる神罰を受けるだろう。
荒ぶる神は時に人の赤子の首さえもぎ取ってしまう程に残忍なのだ。
「それにしても今回の新聞のネタは新鮮だね。
いつもは今更な感じのするものばかりなんだけど」
「そりゃあ異変やちょっとした事件なら裏を取る必要があってネタの鮮度も落ちやすいですが、祭りに裏なんてありませんからね。
それに今更なお祭りの記事なんて、それこそ後の祭りじゃないですか」
「でも実際にもう祭りは終わったんだろう?」
「いえいえ、確かに神の祭りは終わりましたが、まだ終わっていない祭りがあります。
しかもこれは八坂神社、祇園祭のあとの祭りのようなつまらないものではないのです」
「僕は素戔嗚尊(スサノオ)を祀ったあの祭りは、あとにしろさきにしろ好きだけどね」
実質、この世につまらない物なんてのはない。
人がつまらないと言ってしまうのは、単に物をつまらせる価値観が本人にないか、つまらせる余裕が心にないからだ。
天狗はせっかちで心に余裕を持たないから新聞を面白おかしく誇張して、素朴な物をつまらないと吐き捨てる。
はてさてところで、僕は収穫祭の後に別の祭りがあるのを知らないな。
目の前の天狗の少女が嬉しそうに食指を動かすのを見れば、別に嘘を吐いている訳でもなさそうだ。
「それならその祭りの場に行かなくて良いのかい?
そういえば君はいつもなら新聞を店の前に置くだけなのに、今日は随分と話し込むね」
「ええ、だって今日はここで妖怪と人間の祭りがあるのですから。
ほら新聞のここにしっかり書いてあるでしょう?」
「な、なんだって!?」
文の指差す所には確かに、しっかりと、小さな文字でその旨が隅っこの記事に書かれていた。
ちなみに幹事はいつもの様に魔理沙だ。時刻は今晩、場所はここ香霖堂、酒と肴は各々で、とのことだった。
しかしうちで祭りとは初耳である。今は別に白い妖怪桜は咲いていないし、酒の肴になるような花も咲いていない。
今ここら辺に咲いている目立った花といったら鳥兜くらいだろうか。
しかも妖怪と人間の祭りなんて言ってはいるが、要するにいつもの宴会と一緒じゃないか。
恐らく人と神が楽しそうに遊んでいる様子を見て悔しかったのだろう。
わざわざ収穫祭の後にやるなんて、幻想郷の妖怪達の負けず嫌いな性格が簡単に見てとれる。
「それにしても、流石に早く来過ぎましたね。折角だから店主さんの蘊蓄話でも聴きましょうか。
何か面白い品物はありませんか? 出来ればネタになりそうな物をお願いします。最近平和で困っているんです」
「そうは言っても最近は君の面白がる様な商品は入荷していないんだ」
「ネタになれば良いのです。別に商品でなくとも私は構いません」
「いや、僕が構うのだが……。
まあ良い。今日は目出度い宴会の日の様だから、特別に非売品を紹介しよう」
「宴会ではなくて祭りですよ」
さて、昨日は里の収穫祭。ただ適当な物を紹介するのは無粋というもの。
なので僕は瞬時に思いついたアレを見せることにした。
「まあ取り敢えずお茶でも飲んでいてくれ。まだ淹れたばかりで美味いはずだ。
ちょっと台所に行ってくるから」
「あ、お茶請けは軽い物でお願いします」
「品物を取って来るんだよ……」
僕は台所の戸棚から適当な干菓子を取ってお盆に載せ、目的のアレと一緒に持って行った。
「あややや、『おこし』ですね。
んー。ほんのりと甘くておいしい。この味は今も昔も好きなんです」
「あんまり食べると後で困るんじゃないか?」
「まだ昼過ぎじゃないですか。
それに人間じゃないんだから、お腹なんか大して膨れませんよ。
私は鴉天狗に変じて長いですから、膨れるのは心です。
カロリーなんて気にする必要もありません」
「って別におこしを見せたかったんじゃないよ。紹介する品物は別だ」
「おっとそうでした。勿体振らないで早く見せて下さいよ」
僕は勿体振ったつもりはない。天狗はせっかちである。
そう思って僕が溜め息を一つ吐いた間に、文は手に持っていた湯呑とおこしを手帖とペンに持ち替えていた。
随分と手早いと思ったが、天狗にとってはこれが普通なのだろう。
「別に勿体振ってなんかいないさ。
もうお盆の上に載っているこれがそうさ」
「へ? この古臭いお茶碗がですか?」
文は僕の指差した茶碗を見て目を丸くした。
その茶碗は木製の漆塗りで相当古く、所々が欠けたり剥げたりしている。
それでもまだ少しだけ鮮やかな朱色の塗が残っているがやはり薄汚れていて、所々血のような色合いをしている。
あの吸血鬼のお嬢様ならひょっとすると本当に気に入るかも知れない。
彼女はこの茶碗をそっと手に取り、あたかも自分が鑑定士になったような眼つきで観察している。
「うーん。特に芸術的、歴史的価値のあるお茶碗には見えませんねぇ」
「まあね。これは僕がずっと前に拾ったマヨヒガの茶碗だよ。
この茶碗の価値はその能力にある」
「お茶碗の能力……ですか?」
文が手帖にさらさらと走り書きをし、おこしを頬張りながら次の言葉を待っている。
僕は一旦熱いお茶を啜って一息吐いてから言葉を続けた。
「と言っても僕が直接マヨヒガから持って来た訳じゃなくて、普通の商品のように偶々拾った物だ。
マヨヒガの茶碗と言ったら、持っているだけで幸福になった人間の話が沢山あるだろ?」
「ええ、その話は私も多く知っています。
つまり貴方の能力から見てこのお茶碗は『人間を幸福にする程度の能力』を持つと言う訳ですか?」
「いいや、少し違う。厳密に言うとこの道具は『神々を呼ぶ程度の能力』を持つのさ!」
手帖の紙面上でペンを軽く走らせると、文は不思議そうな顔をしてこちらを見つめた。
どうやら僕の言葉がにわかに信じ難いようだ。
「考えてみてもごらんよ。人の幸福なんてのは千差万別で、それを正しく満たす道具なんてあると思うかい?」
「そんなこと考えたりしませんよ。ああ、そんな物なんだなーって納得してしまいます。
まあそれでも、確かに幸運の兎なんてのは眉唾な物ですが」
「兎に角この道具がマヨヒガの茶碗であり、神を呼ぶ力があるのは僕の能力から見て間違いない。
これを持つ人は神様の御利益によって幸福になることが出来るんだ」
「そんなこと言われても、能力を持つ貴方以外の人には信じられない話ですよ。
なにか証拠とかありません? 神様を呼んでいる決定的瞬間の写真とか」
「写真はないが、証拠はある。今君が食べている、その『おこし』が証拠だよ」
「はい?」
文はいよいよ訳が分からないといった様子でおこしを手に取って、少しの間その米菓を鑑定した。
「神様の御利益で美味しく出来上がったという訳ではないですよね? もぐもぐ」
「ああ。正確にはおこしというより、うちにある穀物そのものが証拠品なんだ」
「確かマヨヒガの茶碗を穀物の計量器として使ったところ、穀物が減らなくなったという話なら聞いたことがあります」
「正にそれだ。実際にうちの五穀もまったく減らないし、秋の収穫の季節になればちゃんとその年の穀物に入れ替わっている。
そのおこしは今朝拵えた物でね。米を量り取る時にはもう櫃に新米が入っていたよ」
「ああ、通りでこのおこしは心の腹に溜まる訳ですね」
僕の言葉を聞いて天狗の少女は納得したように頷いてお茶を飲み干した。
せっかちな彼女は頭の回転も良く、天狗ならではの豊富な経験と知識によって深く理解したようだ。
日本において穀物の起源は古く、保食神の話に出て来る程に、神と密接な関係を持つ。
『米』一つに焦点を当てても、そこには『八十八』の神が『籠め』られている。
このように穀物は決して物理的存在ではなく、その多くを霊的存在に頼る。
だからマヨヒガの茶碗によって呼ばれた神が家に穀物を分け与えてくれるのに何の不思議もない。
別に穀物が無限に沸いている訳でもなく、ただ神様からほんの少し頂いているだけなのだから。
このことを質量保存の法則がどうのこうのといって面白おかしく騒ぎ立てるのは合理主義的な人間だけだ。
この穀物を含む様々な御利益、思し召しを受けた人間が幸福になるのは目に見えている。
子孫繁栄、学業成就、家内安全、無病息災などなど、人の幸福は別に特別な物ではない。
神はただこれを約束してくれているだけで、人間のほんの後押しをしているのに過ぎない。
人間に余る力はその人本人にとって不幸となることが多いが、ちょっとした後ろ楯は人を幸せにしてくれる。助長は決して幸福にはならない。
マヨヒガの茶碗が人を幸福にすると言われるのは、神の力で人を密かに見守ってくれるからだ。
「それじゃあこのマヨヒガのお茶碗は、どうしてそのような能力を持つようになったのでしょうか?
私にはやっぱりただの古ぼけたお茶碗にしか見えないのです」
文が率直な疑問を言う。
確かにそうだ。能力なんて物は当然、その能力を持つ物に縁ある物でなければならない。
僕自身の能力だって道具に対する愛があるからこそ存在し、この天狗の少女だって鴉天狗だから風を操る程度の能力を持つ。
ではこの茶碗は何故神を呼ぶことが出来るのか。その答えは至って簡単だ。
僕はその答えを一杯のお茶を飲み込んでから吐き出した。
「実は、君の言う通りこれはただの古ぼけた茶碗でしかないんだ。
マヨヒガの物かどうかは能力とあまり関係がない。
しかし古ぼけているからこそこの茶碗は神を呼ぶ。これは正に和魂の籠った付喪神なんだ」
「付喪神……ですか?」
「物には総じて神が宿っているから、それを粗末に扱ってはいけない。
もし粗末に扱えば道具は荒ぶる付喪神となり、化けて百鬼夜行を始めるだろう?」
「ええ、その通りです。少し前に某巫女が私の新聞を粗末に扱っていましてね。
付喪神の恐ろしさをきちんと教えてやりましたよ」
某巫女というのは霊夢のことだろう。紙舞の記事は前に読んだ記憶がある。
「その某紅白のことは置いておくとして……。
それじゃあ道具を丁寧に扱い続けたらどうなるか判るかい?」
「道具に宿る神ならば、その道具が道具として使われることを望むでしょうから、化けることはまずないと思います」
「そうだ。そして大事に扱われた道具が古くなると、いずれ神寂びて和魂を持つ付喪神になる。
昔から日本人が古い物を大事にして来たのもその為だ。
生活に欠かせない茶碗に宿る付喪神は人々の生活に御利益を与える。
人は御利益があれば神を信仰するだろう? その信心がまた神を呼ぶのさ」
「なんだか人頼みな能力ですね。結局は人が神様を呼んでいるじゃないですか」
「道具なんてのは総じて人頼みな物だよ。だがそこに神が宿るから人は道具に頼る。
人も道具もお互いに愛や感謝の念を忘れてはいけないんだ。特に人間がね。
道具は常に人間に対して、一途な想いを寄せているから」
僕は話を終え、お茶を啜り、手早い天狗によって残り一つとなったおこしを頬張った。
神によって与えられた今年の新米の香りが口から鼻に抜けるのが鮮明に判る。
神様にとって半分も人間の僕は、人間と大差ないのだろう。
★
──カランカラン
「よーし。今回も私が一番だな。文は広告係だし、香霖は零番だ。
霊夢には二番の称号を奢ってやろう」
「魔理沙のそれは、もう負け惜しみね」
日も大分傾いた頃に霊夢と魔理沙を始め、多くの人間や妖怪、亡霊、妖精までもがやって来た。
その数は僕の想像を遥かに超え、香霖堂の中も外も有象無象で溢れ返ってしまった。
こんなことなら早めに逃げ出して、場所だけを提供しておけば良かったかも知れない。
だがそれももう遅い。僕が逃げ出そうとすると皆こぞって引き留めるのだ。
仕方がないので僕は居間の隅っこで今年の葡萄で造ったというヴィンテージの赤ワインを呑んでいた。
ちなみに外の方が屋内より少しは静かなのだが、泥棒や悪戯妖精を見張る為に我慢している。
僕はそうやって店内の物を見ながら、どうして今回の宴会をうちで行ったのかを考えていた。
どうしてこんなにも物の散らかった所を宴会場に選んだのだろうか。
今日ここで宴会を行うと聞いてから、僕はそのことがずっと気になっていた。
そうして夜も更けた頃、店内やら酔っ払いやらを見ていた僕はその答えがふと判った。
昼間に僕が文に話していたように、道具には神が宿り、それは究極的にマヨヒガの茶碗の様な付喪神になる。
そして僕の店、香霖堂の『香』は『神』である。ここは人も妖も神も、全て受け入れる古道具屋だ。
いわばここは三者の懸け橋であり、交流の場としては持って来いという訳だ。
昔のようにこの三者がいがみ合う必要はもうなくなった。
いずれ今回の様に人間と妖怪と神様の交流の機会も増えることだろう。
勿論それぞれが過剰に画一的にならない為にも、形式的にでも対立して立場を明確にする必要はある。
それは儀式であったり、妖怪退治であったり、人喰いであったり──
──これら全てを兼ね揃えた物がスペルカードルールだ。
さっきから窓の外には弾幕の花火が浮かんでは消えている。
勝負をしている者は多く、それは山の神や鬼や天狗や人間などであった。
この平和的で美しい決闘方法が決められた頃、多くの妖怪はやる気を失せていたが、今ではそんな妖怪達もこのルールにすっかり嵌っている。
つまりスペルカードもまた、香霖堂のように三者の懸け橋なのだ。
そして香霖堂の店主である僕もまた、然り。
今夜ここで僕はスペルカードという物にとても興味を持ち、益々弾幕勝負をする気が失せた。
何故なら、僕がスペルカードを用いる理由など毛頭ないと判ったのだから──。
今の現代人には心のゆとりが欠けている気がしてなりませんね…。
それはそうと、咲夜さんお手製のワインの飲み心地は如何程のものか
保食神の死は、月と太陽が顔を会わせなくなった原因なんだよな。
自分もこれくらい巧く書ければなぁ。
霖之助の語る内容が物語の雰囲気、流れに溶け込んで引き込まれるように読めました。
いや、お見事。
心地よい空気、考えさせられる薀蓄、思わずニヤリとしてしまう展開。
どれも素晴らしいです。
さくやんが作ったと思って納得しときます。
ごちそうさまです。
咲夜さんのワインかーいいなぁ。