" />魔女さんの素敵な実験 作者: 楼閣
Coolier - 新生・東方創想話

魔女さんの素敵な実験

2009/08/22 01:38:44
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「レミリア…ずっとお前に言わねばならないと思っていたことがある」

それは中世ヨーロッパ、紅の館。人呼んで紅魔館。そこで起こった。
レミリアの父、スカーレット家現党首は、その娘であるレミリアを見ながら静かに言った。
娘、即ちレミリアも父を見上げる。まだ姿も心も幼いながら、そのパワーだけは既に一人前のそれだった。つまりタチが悪い。

党首たるスカーレットは、思い悩んでいた。情けなくも病に倒れ、既に五年が過ぎる。回復の見込みは無く、余命も僅かであることは医者に言われる必要すらないほどに明らかだった。
当然、レミリアもその類の話と思ってここに居る。

彼の悩みは一つ。既に妻に先立たれた彼には娘が二人居たのだ。そしてその二人目、レミリアの妹であるフランドールは強大な力を有する。

レミリアに止められるだろうか。

それが彼の、悩みの種。だから今、今一度レミリアに確認がしたかった。

即ち、


「フランドールを、頼むぞ」

と。



丁度直前、館の図書館を陣取るふてぶてしい魔女が実験を見事に失敗、力の余波が彼の発したその言葉の音波をねじ曲げた。

「フランドールを、頼むぞ」
その言葉はその場に居た者、それも頭主以外の者に、こう聞こえた。






「私は…ロリコンなのだ」





「は?」
時間を止める従者などいないはずだが時間が止まった。
彼は分からない。何で皆がそんな反応なのか。
周りの面々は分からない。目の前のおっさんは何のつもりでそんな事を言い出すのか。

「は…はい。そうですか。分かりました」
レミリアは辛うじて返す。聞き間違いである事を祈りながら。
間違った事を聞いたのだと、おかしいのは自分の耳だと言い聞かせ。
「うむ、良い。それで良い」
満足気に微笑むその優しい顔がいやらしく見える。レミリアは身震いを感じた。そう、自分の顔は、体は、幼い。


「この数日、夜な夜なお前たちの事ばかり考えていた…どうすれば良いのかと」
「止めて下さい!」
ぞっとする。

「大体どういうつもりですか。そんな事を今更言い出して…理解されるとでも?」
「無責任であろう事は分かっている」
「責任すらとらないつもりでしたか」
レミリアの表情に怒りが軽く浮かんだ。
「いや、当然やれる事はやるが……」

ヤれる事はヤる……
周りの従者達がざわつき始める。よく今まで堪えていたものだ。

「しかし私はもう長くない」
「したい事して、逃げると?」
「そう言わんでくれ。お前たちの為にも……いや、為などと言うのは少しおかしいな」
「少しじゃない。おかしいのは父上です」
「しかし将来までを見据えれば、必ず必要な事なのだ」
「いや、その…そうかもしれませんが!」
「それだけでも分かってくれれば嬉しい」
「今のをOKだとは解釈しないでくださいよ?」
「ああ、勿論だ」

とりあえず、常識が無いなりに頑張ってるんだろうか。レミリアは嫌悪感を全力でもって隠す。

「しかし、私はこの体たらく。なるべく早めに全て済ませたい」
「こら」

訂正、ただの変態だ。首を大きく縦に振ってついでに自分の目を覚ます。目の前の男は変態だ。敵だ。

「ところでレミリア、最近は体術の腕をどんどん上げているそうじゃないか」
「あ、はぁ、まあ」
父は微笑み、娘の成長に嬉しそうな感情を隠しもしない。
突然話題を変える父に警戒心を強くする。顔がこわばる。
「それだけ強ければ、充分か」
「何が、でしょうか」
「む?話の流れで分かるだろう?最近はフランドールが遊びたがっておってな」
「ああ、左様で…」
話の流れ全くないじゃん、と思う。
「フランドールは最近お馬さんごっこが好きでな。なかなかあれに耐えられる者は多くはないだろう……」
「は?」
話の、流れ……。

ちょっと待て。

思考が嫌な方向に進む。突き進む。

「フランドールが、どうかしたって?」
「そう怖い顔をするな。別にフランドールに後を継がせる訳じゃない」
「そうじゃない」
「なら良いだろう。ただ遊んでやってるだけだ。フランドールは毎回楽しみにしてくれる」
「欺瞞だ。ふざけんな」
大切な妹だ。ふざけるな。それが親のする事かと蔑視、否、怒りを以て睨み付ける。
「そう睨むな……私とて今までに何もしてやれなかった事を悔やんでいるんだ」
「それで罪滅ぼしのつもりですか」
「お前の言うとおり、欺瞞なのだろうな。今まで地下に幽閉しておいて今更遊んでやるなど」
集まった従者達はどうすればいいやらとあたふたしている。当然、皆が一つの結論に達するのだが。


目を逸らす。


流石に主に集められた場から勝手に逃亡は出来ない。というかレミリアが心配だ。

「フランドールは大事な妹です」
「ああ…ああ、分かっている。今更父親面などおこがましい事も。だが、それでもこのままではいられんのだ」
いや、おこがましい以前にそれは父親面ではない。そう言ってやりたい気持ちが沸き起こってくるが、抑える。今理性が切れてしまえば目の前の変態は妹に何をしだすか分かったものじゃない。
「2、3、5、7、11、13、17、19…」
必死だ。

「…57。……ふぅ。父上。貴女は私に何を言いたいのですか?」
「何……と?分からんか?」
「意図も狙いも分かりたくないのです」
そうか、と一息ついた主は、言い直せば良いものをこう言った。
「私亡き後は、お前がフランドールを……」
「今死ね!」

ついにキレた。
「レミリアっ……お前には分からんか!フランドールは独りだった!私の愚行で!誰かが温もりをやらねばならんのだ!」
「やかましい!それで何でそうなるっ!温もりなら抱きしめてやれば良いんだ!」
「抱きしめるだけでは伝わらぬ事もある!」
「うっさい黙れこのクズ吸血鬼!吸血鬼の道を外れた外道!伝えられれば手段は、フランの心はどうでもいいのか!」
流石に従者も居辛くなってくる。
今まで信じていた主の最低な行為を知り、反省は欠片も見えず。レミリアのこの怒りは当然であり、主の意図がさっぱり分からない。
「レミリア!お前ならばわかるだろう!」
「欠片も分からん!お前が外道で最低だった事しか分からん!」

主は吸血鬼の中でも強大な力を持ち(だから娘二人もあんななのだが)、相応のプライドを持っている。そんな強大な力の持ち主が、実の娘とは言えここまで貶められたら流石に怒りも湧きおこる。そう、彼は間違った事を言ってはいない。
「あまり図に乗りすぎるなよ……!レミリア!!」
「ハッ……病気で動けないかと思ったら夜な夜なハイテンションになってやがるおじさんに何か言われる筋合いはないね!」
従者たちは頭を低くする。この感じはやばい。
馬鹿みたいに、それこそここに居る100人規模の従者たち全員でも勝てない吸血鬼がここには二人いて、その二人が喧嘩直前。命の危機だ。
「じじいだからと愚弄するか!!?」
「枯れてないのはあっちだけだろうこの外道!!」
両者が腕に、脚に力を込める。正に今、最悪の親子喧嘩が始まろうとしていた、その時、事は起こった。


ドオオォォォォン……


「………?」
「何だ?」
「地下?」
「妹様か?」
「いや、図書館かもしれんぞ…?」

何かの音が鳴って、爆発寸前だった二人の動きが止まる。

「あー、ごめんごめん。ちょっと失敗ー」
地下から現れたのは紫色の服をまとった魔女。
「ノーレッジ!!お前今度は何をした!」
「ああ、ちょこっと音波いじりをしたら代わりに空気振動をいじっちゃっただけ。つまり失敗よ、失敗。そんな事よりあんたはどうしたのさ?娘さんと睨み合って」
ノーレッジと呼ばれた魔女は目の前に広がる異常な―――親子が睨み合って殺意をぶつけ合い従者が揃って逃げ出す準備をしている―――光景に疑問符を浮かべる。

「ああ、レミリアがまったくの分からず屋でな!誰に似たんだか!」
「糞親父が!最低も最低、くずの外道だよお前は!!」
「………何があったのさ」
「私がフランドールを頼むと言ったら突然これだ」
「その前に言った事があるだろう?ド変態」
「ド変態だと?何を言ってるこの馬鹿娘!私は最初からそれしか言ってないだろうが!」
「なーにがそれしか、だ!魔女の前だからって良い子ぶってんじゃないよ!従者のみんなも聞いてたろ!?こいつはさっき自分がロリコンだと暴露した挙句妹を汚した事を赤裸々に語ったばかりじゃないか!!」
「……何の話だ?」
「は?この期に及んでとぼけるのは情けないを通り越してるよ?ねえノーレッジ?」
声をかけられた魔女は、

何故か―――――目を逸らしていた。

「どしたの?」
「あー……それってもしかして……」
若干青ざめた顔をしている。
当主が早かった。

「お前っまさか……直前にも何か失敗したか!?」
「あ……ははははははははは……まぁ、ほら、何、その、うん、仲良くしなさんな、ね?」
目を逸らしたまま。

「さっき音波とか言ったな?」
今度はレミリアが責める。目を逸らしていた方向から顔を寄せる。
「あらぁ……やっばい」
「のはあんたの頭!!!!!!何ですぐ言わなかったぁぁぁぁ!!!!」

空しく怒鳴り声が響いた。







その後30分に渡って親子間で正しい内容の会話が為され、レミリアははっきりと責任を受けると頷いた。
従者たちの命の危機も免れ、実質被害はタイムロス程度に収まったのを見て、魔女は思う。




こんな感じなら、……また仕掛けてみようかな、と。

確信犯の魔女は、今日も怪しげな実験をする。
その目的は、成功か、失敗か。
勘違いした二人の怒鳴り合いは密かに水晶玉に隠し撮りされ、保存され続けたという。今も図書館のどこかに…………



うわーい。
予備校に通う道すがらふと思いついたネタです。何となく、紅魔館の昔の話ってやっぱりシリアスだもんなぁ、とか思って。

意外と思い込んでいて間違っている事があるかもしれません。会話に違和感を感じたら確かめるのも勇気。じゃないとこんな風に恥をかくかもしれません。

因みに魔女さんはパチュリーさんの先代?なのかな?細かい事は考えてないので妄想に任せます。魔女は子供作らないだろうし、まあきっと何かあった人です。
書いててやっぱり楽しかったので読んで頂いた皆様にも楽しんで頂けたら幸いです。それでは、ありがとうございました。
最近永遠亭で一本書いてみたい楼閣でした。
楼閣
http://ameblo.jp/danmaku-banzai
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コメント



0.1230点簡易評価
2.無評価名前が無い程度の能力 削除
確信犯ではなく故意犯なんだぜ……
3.100点奇声を発する程度の能力 削除
>枯れてないのはあっちだけ
ちょwwwwwお嬢様wwwwww
あと、先代のパチェさん、テンションがやたらと高いwww
9.100点煉獄 削除
冒頭の音波が捻じ曲がった結果「ロリコン」発言に聞こえたという部分から
ニヤニヤが止まりませんでした。
本人とレミリアたちの話の食い違いやパチュリーの先代らしき人が出てきてからの
展開なども面白かったですよ。
17.90点名前が無い程度の能力 削除
一発ネタで勝負って感じでしたが面白かったです。
19.90点名前が無い程度の能力 削除
実にスピード感のある話。
面白かったですww
21.100点名前が無い程度の能力 削除
どう捻じ曲がってそうなったwww

アンジャッシュのコントを見てる様な気分でしたwww
23.90点名前が無い程度の能力 削除
魔女が…アホの子です…!
26.100点名前が無い程度の能力 削除
面白かったw なんだかんだで妹想いなレミリアがとてもかわいかったです。
27.100点名前が無い程度の能力 削除
ひどいwww

レミリアたちの勘違いっぷりにニヤニヤしながら読みましたw
29.無評価楼閣 削除
アンジャッシュwww
なるほどたしかに。という訳でお返事させて頂きますね。

2 >
辞書さんが仰るに「確信犯=犯罪者」、「故意犯=犯罪」という事でしたので、確信犯で問題ない…と自信を持って言いたかったのですがこの書き方だとどっちにも取れてしまいますね。すみませんでした。この文での『確信犯』は魔女さんを指しているものなので問題はありません。ご指摘、ありがとうございました。以降表現に注意して書こうと思います。

3 >
書いて投稿を完了してからふと思う。「これ年齢制限平気だよ……な?」
初期稿には入れてなかった追加発言だったので、入れて良かったーと。
ビフォーぱっちぇさんは何かこんな、変な人。いや、勝手なイメージですが(そもそも先代とかはなさそうですしねー

煉獄 様>
食い違いで会話を持たせるのが大変でした。不自然にならないように…って第3者には不自然にしか思えないけどなっ!(笑)

17 >
お察しの通り…一発ネタですぜ。ぱっと思いついて携帯にメモ。そして家でぐだぐだと。
書きながら思うのは「俺…馬鹿だなぁ(ふふっ」

19 >
が―――――っとまくし立てる感じが表現できていれば幸いです。
スピードで勝負!!

21 >
どう捻じ曲がって?そりゃあ………俺が知りたい!!
アンジャッシュはなるほどと。彼らのような面白い雰囲気が作れていたら嬉しいです。

23 >
魔女は…アホなのです…!
「アホじゃなきゃ紅魔館でなんてやっていけないわ」by魔女さん

26 >
何だかんだで妹想いなレミリアさんが好きです。仲良しであってほしい。
そんなレミリアが可愛いとな!?もうありがとうしか歌えない(をい

27 >
こ れ は ひ ど い w
この後話し合った二人は相当気まずかったに違いない…!


たくさんのコメントや評価をありがとうございます。
しっかし現在シリアスネタを二本同時進行中……終わりは遠いのぜ…(明後日を見る目
32.100点名前が無い程度の能力 削除
こwwwれwwwはwww
非常に面白かったですw
36.無評価楼閣 削除
コメントを確認しているつもりで出来ていない。すみません。

32>
楽しんで頂けて良かった! 
書いてる私も楽しく書けた話なのでそう言って頂けると幸いです。

ありがとうございました!