Coolier - 新生・東方創想話

魔理沙の明るい返本計画 後編

2009/08/17 14:22:10
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 運命を操る程度の能力。
 レミリア・スカーレットの持つ異能。
 他人の運命を読み取り操る、不可視で不可避の非凡な力。
 そう言うと他人からは畏れられる彼女だけど、実際にはそう自由にできるものでもなく、その能力には色々と制限があることを私はおそらく他の誰より細かに知っている。

 それでも強力な力なことには変わりなく、レミィは人の死が分かると、そんなことはとうの昔に知っている。
 そしてレミィは冗談で人が死ぬなどと決して口にしない。
 今から死の運命を変えられるならば一緒になって行動するし、変えられないならば、要するにそういう事だ。

 レミィは魔理沙が死ぬと言ったきり口をつぐんでいる。
 となると、魔理沙が死ぬというのは確定事項なのだろう。
 霧雨魔理沙。
 普通の魔法使い、東洋の西洋魔術師、移動砲台、手の平の悪夢、精密誤射、キノコの会会長。
 若い頃から歳を取った今までの間に様々な二つ名を持った強力な魔法使い。

 最近魔理沙のやって来る頻度が減ってきたし、ここ一ヶ月ほどは顔を見せていない。
 霧雨魔理沙が死ぬ。
 泥棒魔法使いが、老いて弱った人間が、明日死ぬ。

 そしてそう言われても、私の表情は何一つ変わらなかった。
 視界が縦やら横やらにぶれることもなかったし、頭が真っ白になったり耳が遠くなる現象も起きる様子はない。
 全く持って平静なのである。
 当然だ。
 迷惑な人間が一人死んだところでどうだというのだ。やっと本が返って来るということだ。
 良いことではないか。
 むしろ喜ぶべきことだ。
 さようなら霧雨魔理沙。安らかに。
 気がかりがあるとすれば、まだ私の問いかけに対する答えを聞かせてもらってないことか。
 人間は別に妖怪より優れた生き物というわけではないという、その根拠を教えてもらってない。
 結局間に合わなかったか。まあ仕方のない事ね。


 そうして私は無感動であったのに、しかし何故か、図書館の空気がぴんと張り詰めた。
 場の緊張と不安が鼓動のようにドクンドクンと張り詰めては萎んでいき、途端に湿気が増えたように空気が重たげにだぶついた。
 不思議に思って周囲を見渡してみると、小悪魔とメイド副長がさも驚いたように目を見開いて顔を強張らせている所であった。よく見ると冷や汗を浮かべ、拳を握り締めて震えているではないか。

 どうしたのかしら。彼女達にとって魔理沙というのはそんなに大切な存在だったのかしら。
 意外ね、皆あいつには迷惑してるのかと思ってたのに。
 まあ小悪魔はなんだか魔理沙がお気に入りみたいだったから分からないでもないけど、メイド副長がそんなに魔理沙のことを慕っていたのは思いがけなかったわ。
 そしてレミィ。
 あなたどうしてそんな悲しそうな顔をしているの?
 そんな慎重に、緊張した様子で私の顔を窺っているの?

「どうしたのよレミィ。私の顔に何か付いてる?」
「え……?」
 とどこか驚いた顔をするレミィ。

 何故驚くのだろうか。
 彼女との付き合いは長いし感情を隠さない悪魔なのに、今だけはその思考がよく分からない。まあそんな時もあるわね。

「そう、魔理沙が死ぬのね。まあそろそろだとは思ってたけど。人間って八十くらいが寿命なんでしょ? みんな割合早いのね。まああれだけ大暴れしてたら当然かしら」
「あ、えと、パチェ、」
「この図書館の整理も急がないといけないわね。魔理沙が今までに取っていった本は全部で2869冊。どの本を取って行ったかも覚えてるし、今日の内から棚を空けておくかしら」

 動かない大図書館の二つ名は伊達でない。記憶力には自信があるのだ。どの日にどの本を魔理沙が持っていったかも全て覚えている。
 他人の手に渡らせる気は毛頭無く、本が足りなかった時はきっちり捜索するつもりだ。私の目は誤魔化せない。

「小悪魔、返って来る本のリストを作るから該当するジャンルの棚を必要なだけ空けておいて頂戴。まったく、ただでさえ狭くなった図書館に本がまた増えるわね。天井から本棚を生やすにしてももう限界があるし……」
「パチェ!」

 バン、とテーブルを叩き、レミィが勢いよく立ち上がった。
 ティーカップが震え、危うく零れる所までゆらゆらダージリンが揺れ動く。
 メイド副長と小悪魔がびくりと体を震わせたのが分かった。

「レミィ?」

 何故大声を出すのだろうか。
 何を怒っているのだろうか。
 珍しく予想がつかないので聞いてみることにした。

「どうしたのよレミィ。何故そんなにピリピリしているの?」
「なぜって――!」
 レミィは言葉を詰まらせ、一旦息を飲み込んだ。そして硬い表情のまま口を開く。
「魔理沙は、あなたの友達でしょ?」

 友達。魔理沙が。
 はあ。
 まあ、レミィの興奮している理由は大体把握した。
 そんな思い込みを今までしていたとは心外ね。馬鹿馬鹿しいくらいよ。

「まあ、別に友達でもなんでもいいけど」
「パチェ……?」
「あなたは何か勘違いをしているみたいね。今も、今までもずっと」
「……それは、どういう?」
「あのね、レミィ」
 私は軽く肩をすくめて続けた。
「魔理沙は何度もこの大図書館にやってきては本を盗んでいく窃盗犯なのよ? 泥棒なの。百害どころか千害あって一利なし。そんな迷惑に他ならない人間がどうして私の友達? まあそれはさっき言った通り、別に友達だろうが何だろうがどうだっていいのよ。一緒にお茶を飲むことも多かったし、魔理沙が友達かどうかはそう、好きにすればいい」
「でも」
「でもね、レミィ。魔理沙が死ぬからなんだっていうの? そんな深刻そうに私に話すことでもないでしょ?」

 全く、咲夜が死ぬことは私に言わなかったくせに、どうして魔理沙の時は言うのかしら。
 どこかおかしくないかしら? 普通逆でもいいでしょうに。
 はあ、でもまあ分かったわよ。
 要するにそういう事。
 レミィったら、私にとって魔理沙という存在はとても重要、みたいに扱うのね。
 そんなことはないのに。

「あいつは迷惑な人間。泥棒。私にとって魔理沙はただそれだけの存在よ。明日死ぬからってどうってことないわ」

 話は終わりよ。
 私は本を開いて読み始めた。

 が、レミィは立ち尽くしたままなかなか動こうとしなかった。
 痛いくらいの視線を感じる。しかも二方向から。
 顔を上げなくても分かるけど、小悪魔まで睨んできている。
 もう、一体なんなのかしら、落ち着かないわね。

「何?」
 仕方なく顔を上げて見回すと、レミィも小悪魔も揃って眉を曲げ、不満をありありと浮かべていた。メイド副長だけはどうすればいいのか困った様子だ。
 本当に、一体どうしたのかしら。

「何よ。何か不満があるの?」
「…………」

 しばし沈黙が流れた。
 攻撃的な感情が空間で渦巻き、膨らみ、息苦しい。
 私の咳をする音が瞬く間に吸収され、小さくこんこんと響いただけだった。

 やがて小悪魔が何か口を開こうという気配を発した直前、レミィが大きめの声で遮った。

「いいわ」

 何がいいのか分からない。
 ぼんやり眺めていると、レミィは何故だか不満げな具合で嘆息してみせた。

「明日魔理沙のお見舞いに行くわ。パチェ、あなたも行くわよね?」

 まあ、別に死に目に遭うくらい良い。貸した本を本人の口から返すと言ってもらうのもいいだろう。

「ええ、別にいいけど」
「そう。明日、迎えに来るわ」

 そう言い残し、レミィはメイド副長を引き連れ強い足取りで図書館を出て行った。
 バタン、と強く扉が閉まり、私はつと首をかしげる。

 本当になんなのかしら。どうして怒っているのか分からない。
 そして何故かそのことについて考える気にもならない。

 じりじりと突き刺すような視線がまだ残っているのを感じてふと小悪魔に振り向くと、彼女もまた不満を滲ませた顔つきで私をきつく睨んでいた。
 小悪魔が私にこんな表情を向けるなんて本当に珍しい。
 しかも私と目が合ってもやめようとしない。
 とうとう反抗期を迎えたのかしら?

「何?」

 問いかけると、小悪魔はつんと態度悪く顔を背けた。
「別に。何でもないですよ」
「そう」
 とりあえず焼いておいた。



 霧雨魔理沙。
 普通の魔法使い。
 大図書館にやって来る迷惑な黒白泥棒。
 かつて霊夢と共に異変を解決して回った、幻想郷にとってのもう一人の主人公。

 思い返してみれば、魔理沙は幻想郷の栄華の始まりを象徴する存在だったのかもしれない。
 スペルカードルールの登場により、閉塞気味であった幻想郷に風穴が空けられ、退治し退治されといった人と妖怪のより伸び伸びとした良好な関係が花開いた時代の幕開け。
 博麗霊夢。霧雨魔理沙。
 彼女らは幻想郷に生きる者達のまさしく憧れであった。
 どこぞの半獣が書き溜めている歴史書の中、そのどこぞの項目の栄誉ある一番最初には彼女ら二人の名前が燦然と記してあることだろう。
 博麗の巫女と普通の魔法使い。
 今ではそれぞれの後継者が事に当たっているけど、今も尚異変といったらその両者に任されるのは、霊夢と魔理沙の存在が妖怪達の基本的な記憶に焼きついて離れないからだろう。
 異変はあの二人が解決するもの。それが常識となっているのだ。
 霊夢と魔理沙の活躍があまりに輝かしくて、幻想郷という存在がその光を追い求めたまま決して忘れようとしないのだ。

 スペルカードルールがある。
 それを道具に存分に遊びましょう。
 遊びと称して暴れましょう。
 そうしてあの二人に退治されましょう。
 退治される最後の瞬間まで楽しみ尽くしましょう。
 それが余りに嬉しくて喜ばしくて幸せで、もう五十年近く幻想郷に変化は見られない。
 きっとこれからもそうだろう。妖怪達は人間と違って飽きが遅いのだ。スペルカードルールというおもちゃを永くこよなく愛し続けるだろう。
 そして注目すべきは人間である。
 飽きが早いその人間達でさえもまだスペルカードルールに夢中になっている。
 ということは、幻想郷においてはスペルカードルールがほとんど永久と称して良しとするくらい続いていくのではないかと、そう思うのだ。
 妖怪達が無意識に気づいていることではあるので、別にわざわざ述べたりはしないけど。

 異変が起き、それを博麗の巫女とどこぞの魔法使いが解決して回る。
 そこにはたまに暇な協力者が現れることもある。
 何を隠そうその代表格がかつては咲夜。今はメイド副長がそう。彼女は周囲が驚くくらいめきめきと力をつけ、今では弾幕勝負で私相手に五回中二回は勝つようになっている。
 本当に人間というのは成長が早いものだわ。

 彼女は咲夜を目標としているに違いない。完全で瀟洒なメイド長、十六夜咲夜を追い続け己を磨いてきたのかもしれない。
 咲夜、これで満足かしら? あなたの後輩はもう十分完全で瀟洒になったみたいよ。
 彼女はもう異変を解決する主体としての力量を備えているのだ。仕事ぶりも、紅魔館では咲夜と彼女を比べるなどと愚かなことをする者はいないけど、咲夜と比べて劣ることもない。
 まあどうしても時間の力が無いのは物足りないけど、そんなことを望むのは我侭に他ならないだろう。咲夜がいた時が恵まれ過ぎていたのだ。

 そしてうちのメイド副長以外にも、異変解決へのきまぐれな協力者はいる。
 それは今もちょくちょく博麗神社に顔を出しているらしい幻想郷の母、八雲紫であったり、異変と聞いて顔を突っ込むどこぞの新聞記者であったり、ぶつくさ言いながらも本当は魔理沙の子が心配で心配でたまらない過保護な母親のような人形遣いであったり、他にも最近顔を見せ始めた妖怪達も大勢いる。
 ああ、後はそう、私ね。
 魔理沙に協力して異変解決をしたことも何度かあったし、魔理沙の子に請われて力を貸してやったことも何度かある。
 なんでわざわざ私を頼ってくるのか分からないけど。昔から付き合いがあるからかしら? 基本的に暇だからいいんだけど。

『パチュリーはね、骨董品みたいなのよ』

 以前のこと、珍しく魔理沙の子が一人でここにやって来たとき、彼女は私に向かってそんなことを言ったことがある。
 それに対して私は怪訝な顔で応じたものだ。

『骨董品? 何よそれ。古臭いってことかしら』
『違うわよ。ずっと変わらないってこと』
『ふうん……』

 確かに私は変わりない。変わることも諦めた。
 しかしそれでいいのかと、人間のように活発に成長していなくていいのかと、そう思うことはある。
 魔理沙はそれに対して何やら意見があるようだけど、上手いことまとめられていないようだ。

 と、そこでふと気づいたけど、この魔理沙の子はその口調を親から受け継がなかったみたいだ。
 がさつで乱暴な男勝りの言い回しではない。格好が黒白を引き継いだのだから、てっきり口調も魔理沙を真似るかと思ったけどそうはなっていない。
 この子の口調、どこかで聞いたことがあるようなのだけれど、誰から移ったのかしら?
 …………ああ、そうか。
 アリスね。アリスはちょくちょく魔理沙の家に行ってるって聞くし、移ったとしても不思議じゃないわ。
 まあ、いいんじゃないかしら、魔理沙よりは女の子らしくて。

『私、パチュリーといるとなんだか安心するのよ。あなたってなんだかこう、落ち着いてるっていうのかしら。頼りになる。うん、それよ』
『はあ……それで? 今回の異変に協力してほしいってことかしら?』

 その時、幻想郷ではまた新たな異変の真っ最中であった。

『お願いよパチュリー。前みたいに力を貸してほしいの』
『アリスに頼めばいいでしょう。彼女ならある程度ツンツンした後にきっちりデレデレ付き合ってくれるわよ』
『だめよ。ほら、アリスにはなるべくお母さんと一緒にいてほしいわけだし、やっぱり魔法使い同士のほうが分かりがいいじゃない? パチュリーが適任なのよ。ほら、このオプションで力の供給が出来るわ。もうお馴染みだから使い方は分かるわね?』
『はあ……』

 魔理沙の子にしては妙に理屈っぽく育ったものだ。一体誰の影響を受けたのやら。
 きっと引き篭もって本ばかり読んでいる根暗で意地悪い友人がいるに違いない。

『まあ、別にいいわよ。暇だしね』
『ありがとうパチュリー!』
 何が嬉しいのか、彼女は上機嫌で異変解決に向かっていった。

 変な子ね。本当に、何故私なのかしら。
 私が物知りだから? 周囲からは賢者だなんだと言われているけれど、次々起こる常識外れな異変に関して私がそう考え及ぶわけでもなかろうに。
 それでも魔理沙もその子も異変ときたら大抵私の所にやって来る。協力してくれと強引に誘ってくる。
 面倒だっていうのに、その態度を私が隠しもしないのにお構いなしだ。本当に、分からない人達。

 霧雨魔理沙。

 さっきレミィの言った言葉がぐるぐる回る。

 霧雨魔理沙は明日死ぬ。

 そう言われても、何か反応を求められても困る。
 動かない大図書館ことこの私、パチュリー・ノーレッジはおよそ激情とは縁遠い存在だ。
 よく他人からは冷たい性格だと指摘されて、まあ自分でもそうなんだと分かっている。それが私だから仕方ない。
 何十年も共にいた知り合いが死ぬからといってまさか泣き喚くこともなく、寂しいかと問われたらまあ、少しは寂しいと答えてもいい。
 魔理沙といた五十年ほどは賑やかで騒がしくて、そんな生活はそれまであまりなかったので(まあ紅魔館は別の意味で騒がしい所だけど)いくらか楽しいと思える点はあった。

 また竹林でぼや騒ぎがあったのだとか、花畑の領土が次第に拡大していって小競り合いがあったのだとか、頼んでもいないのに幻想郷のありとあらゆる場所の情報をぺらぺら喋り、たまに魔法談義で周囲がついていけない論を交わし。

 それが、そんな日々が、なくなる。
 僅かな喪失感。
 胸の奥がべこりと窪んで流れが悪くなる。
 これが悲しいという感情なのだろうか。
 咲夜を失った時と似ていると言えば似ている感覚。
 魔理沙、あなた死んでしまうのね。悲しいわ。

 魔理沙を失って私に生じる感情はこのくらい。接してきた時間が長い割にはやけに乾いたものなのかもしれない。
 だけど魔理沙は迷惑な泥棒であったわけだし、私の中でそういう味気ない扱いをされても不思議ではない。

「はあ……」

 さて、考えることも考えたし、今日も本を読もう。
 私は紅茶を一口含み、いつものようにテーブルの上の魔法書をぺらりと捲った。
 私の感情はひどく平らであった。




 翌日、私は半ば強引にレミィに連れられ、小悪魔、メイド副長、妹様と美鈴という紅魔館総出で魔理沙の家に向かっていった。

 時刻は昼過ぎ。雲一つ無い空は、どこかへ飛び立っていく者を遮ることなく青々とした天蓋を広々と晒し出している。
 レミィも妹様も当然日傘を手放せない。まあ多少陽に当たった所でどうということもないんだけど。

 そうしてほぼ無言で飛び続け、それほど時間が掛からず辿り着いたのは魔法の森にある魔理沙の家。結構ぼろがきている。
 私が最後に訪れたのは十年以上前になるかしら。
 私は図書館から出たくないと主張したのだけど、魔理沙の誕生パーティーが開かれるということで無理やり連れてこられたのだ。
 魔法使いだけのパーティー。アリスとやってればいいというのに、何故か私を連れ出すことにこだわっていた。

 そしてその時と比べると、魔理沙の家は明らかに物が増えてきていた。
 窓のほとんどは物品が積まれて中が見えなく、家の向かって右側と背後には雨ざらしにしても問題ないと判断したのだろう、がらくたが足の踏み場もないほど適当に置かれ、いびつな山が出来ている。

 魔理沙の子も着実に収集癖を受け継いでいるらしいので、おそらくこれからもこれらのゴミが減る見込みは無さそうだ。本人達にとっては宝の山らしいけど。

 ふと見ると、何やら見慣れないものが一つ。
 家の左側に何やらちんまりした倉庫が建てられ、扉の上には『書庫』などと書かれたプレートが取り付けられていた。

 書庫って。
 あのね、中のはほとんど私のとこから盗っていった本でしょうが。書庫とか何勝手にやってんのよ。

「はあ……」
 まあ、いい。
 今日全て返してもらうのだから。

「ごめんください」
 ノックをし、ドアの前でメイド副長が私達を代表して呼びかけると、中から聞き慣れた声が返ってきた。
 ドタバタと落ち着きなく足音が近づき、バサリだとかドサリだとかガシャンといった物の落ちる音が何度も聞こえてきた。

 まったく、少しは整理しなさいよ。几帳面なあのアリスですらもお手上げらしいので、最早どうにもならないのかもしれないけど。

「はいはいはーい。一体何かし……」

 現れたのは魔理沙の子だった。
 扉を開け、実に珍しい紅魔館一同の訪問を見やり声を止め、そのおよそ全員の顔が陰気な影を帯びているのを見て取り、途端に顔を強張らせた。
 目を見開き、実に緊張した面持ちで一歩後ずさる。
 私達がこうしてここに来たというのがどういう事なのか、彼女は分かったのだろう。

「あ……を……」
 顔を青ざめさせて何を言ったら良いのか分からず、言葉の切れ端を唇から漏らしている魔理沙の子に対し、レミィは粛々と言い放った。

「魔理沙のお見舞いに来たの。会えるかしら?」

 呆然としていたけれど、震える顎を、魔理沙の子はそっと頷かせた。

「今、アリスも来てるから。その……入って」

 私達は各々断りを入れ、どこか元気を失い暗い色にくすんだ魔理沙の家へと上がり込んでいった。

 空は、相変わらず雲が顔を見せる様子もない。ただ青いだけの空が、何もかもを吸い取ってしまいそうなくらい遠く高くどこまでも突き抜けていた。



「あんたら……!」
 魔理沙の部屋に入ると、中に立っていたアリスがぎょっと目を見開いて私達を見やった。死神でも見たような余裕のない表情だ。
 まああながち間違ってもいないけど。
 死神。
 死を告げる事には違いない、悪魔の館の住人達。

「…………」
 見渡せば、六畳間ほどだろうか、この部屋は魔理沙の家のどこよりもごたごたと物で溢れていた。
 本も、大小さまざまなケースも、単なる紙の束も、全てが混ぜ合わされて山を作り、少なくとも地震が起きたら一瞬で生き埋めになるのは避けられない状態だ。
 以前見たときよりも一層物品が増えている気がする。

 そんな乱雑な物置のような中、部屋の片隅に配置された一つのベッド。
 アリスのすぐ横にあるそこには、どうやら起き上がれないらしい、すっかり痩せ細った魔理沙が横たわっていた。
 最後に見た一ヶ月ほど前と比べると、まるで十何年も歳を取ったように見える。
 命のともし火が、急速に掻き消えようとしている。
 そんな事は、ここの誰もが分かることだった。

 私達がここに来なくてもアリスと魔理沙の子には分かっていたのだろう。
 魔理沙はもうじき逝く。
 ただ、そんなほとんど確定の疑念が、運命の力を持つレミィを筆頭とした私達の登場によって、この時紛れもなく確かなものになったのだ。

「なんだ……来て、くれたの、か」
 起き上がることも出来ないのか、魔理沙は首だけを回して私達に皺くちゃの顔を向けた。
 近づこうとした私達の前に、アリスが立ちはだかる。

「何しに来たのよ」
 その瞳は明らかに敵意に満ちていた。
 アリス・マーガトロイド。
 誰よりも綺麗な物を好んでいた彼女は強くなった。年老いた魔理沙の顔を正視できるくらいに。
 ここ一ヶ月魔理沙が寝たきりになってからも、ずっと世話をしていたのは彼女だと、この前メイド副長から聞かされた。
 そして私達がアリス相手に魔理沙の死を告げるなど、そんなことは出来なかった。

「お見舞いに来たのよ」
 レミィが感情を抑えた声でしずしずと呼びかける。

 が、アリスはそこをどかない。
 魔理沙を守るように、私達をきつく睨んでいるだけだ。まるで私達が魔理沙の命を奪いに来たかのように。
 命を奪う。
 間違ってもいないのかもしれない。
 私達を受け入れれば魔理沙の死を受け入れることになる。アリスは事実を、運命を認めたくないのだろう。

 そして一時の、あまりに重い沈黙。
 とうとう私達の隣に立っていた魔理沙の子が思いつめた様子で何かを言おうとする直前、魔理沙のしゃがれた声が響いた。

「いいんだ、アリス」

 途端、アリスが顔をみるみるくしゃくしゃにしながら振り向く。

「分かってるから。だから、いいんだ」
「魔理沙…………!」

 ベッドに横たわる魔理沙を見つめ、拳を握り締めてぶるぶる打ち震えるアリス。
 そんな彼女の隣に、私達はぞろぞろと立ち並んだ。
 ベッドを取り囲み、皆の視線が集中する。
 そんな中、魔理沙は笑っていた。
 いつもの勝気で不敵な憎たらしい快活な笑みを浮かべ、そして、言った。

「私は、もう死ぬのか」

 私の隣にいるアリスが、誰が見ても明らかなほどぶるりと大きく身震いする。
 霧雨魔理沙は死ぬ。
 この場の誰もが分かっていたことだけど、魔理沙本人しかそれを口にすることは出来なかった。
 栓となっていた禁句が引き抜かれ、せき止められていた情感があふれ出す。
 そして誰が口を挟むまでもなく、いの一番にレミィが頷いた。

「ええ、そうよ」

 私は眉をひそめてレミィを見やった。
 あなたは今日死ぬ。
 そう冷酷に肯定することで、事実を認めることで、周囲から寄せられる非難を一身に受けようというのだ。
 残酷な宣言をした責任を取ろうとしている。あなたは何も悪くないというのに。

 が、それもこの場の誰もが分かっていることだった。
 アリスは堰を切ったように顔を覆いむせび泣き、魔理沙の子も妹様も、よく見ると美鈴と小悪魔も泣いている。
 レミィを責める空気は、生まれなかった。

「まあ、そろそろだと、思ってたよ」
 そんな中、当の魔理沙は暢気なものだった。
「こんな、体たらくだし、な」
「…………」

 私は呆れてため息をつこうとし、代わりに咳が出た。気を取り直して口を開く。

「前から言ってたけど、あなたは本当にいくら年食っても喋り方が変わらないのね。外見に似合わないわよ」

 すると何やらアリスが目を剥いてこちらを振り向き、乱暴に肩を掴んでくる。少し痛い。

「あんたねえ! こんな時に何言ってんのよ! 魔理沙は、魔理沙は、ねえ……」

 そう言われても困る。
 こんな時に湿っぽくなれというのだろうか。そんな事を強制される覚えもない。
 私は私のやりたいようにやればいいだろう。気を使うこともない。

「いいんだ」
 魔理沙の言葉に、一同は注目する。
 彼女は笑っていた。私を見ながら、何故だかどこか、とても嬉しそうに。

「お前は、相変わらず、だなあ」
「悪いかしら?」

 分かっていた。
 魔理沙ならそう言うのだと。
 死ぬ間際まで明るく笑っているのが彼女なのだと、それくらいアリス、あなたも知っているでしょう?

「いいや。暗いのは、好きじゃ、ないんだ」
「そんなこと分かってるわよ」
「はは」

 そんな魔理沙を見つめていたアリスは、放心したように私の肩を掴んでいた手を離し、再び魔理沙に向き直る。

「どこが悪いわけでもないんでしょう?」
 私の問いかけに、魔理沙が苦笑を浮かべて答えた。微妙に肩をすくめる動きもした。

「ああ。もしくは悪いのは、全部、か。永琳にも、診てもらってな。体のあちこちに、ガタがきて、もうどうにも、ならないって、さ」
「騒ぎすぎたのよ。あなた年取ってからも好き放題に魔法使ってたものね」
「はは。後悔は、してない、ぜ」
「でしょうね」

 もしも魔法を使うことによって寿命を早め死に行くのを悔やんでいるのなら、今頃こんな風に横たわってはいないだろう。

「…………」
 それまでじっと魔理沙を見つめていたレミィは、やがてメイド副長に魔理沙の知り合いを集めてくるよう指示した。
 が、それを魔理沙が慌てて引き止める。

「おいおい、やめてくれよ。お前らだけで、十分だ」
「でも……」
 呟いた娘に対し、魔理沙は苦笑いを浮かべる。
「いいんだ。あんまり大勢だと、性に合わない」

 魔理沙には他に親しい知り合いが大勢いる。
 今の博麗の巫女だってそうだし、道具屋の主や大勢の妖怪達。
 魔理沙に会いたがる者などいくらでもいるはずなのに、魔理沙は会いたくないという。

「本当にいいのかしら? 皆に会わなくて」

 私の問いかけに、魔理沙は不思議そうに首をかしげた。

 何よ、私がこんなこと言うのがそんなに珍しいのかしら?
 構わず私は言葉を続ける。

「今まで色々と“借りて”きたんでしょ? あなたの口から返すって言わなくていいの?」

 すると途端、そういうことか、と魔理沙に快活な笑顔が戻った。

「いいんだ。死んだら返す、って、言ってたし、な。私が死んだ後は、そうして、くれ」
「私の所から“借りて”いった本も返してもらうわよ」
「ああ」

 魔理沙はそこで息を吐き、憑き物が落ちたように体を弛緩させた。
 そして、言う。
 知り合って三十年かそこら、ついぞ聞いた事のなかった台詞を、死の淵に立ち、とうとう口にしたのだ。

「私が借りた物は、全部返すよ」

 泥棒魔法使いは、ここで終わった。
 後には長年の大仕事を終えたような、晴れ晴れとした、どこか名残惜しそうにしている一人の人間魔法使いがいる。

 何を惜しそうにしているのだか。まだ借り足りないのかしら。

「ようやくあなたの口からその言葉を聞けたわね」
「はは。そんなに、待ってた、のか?」
「当然よ。大切な本だもの。他の皆もあなたのその言葉を聞きたいと思ってるでしょうね」
「はは。そりゃ、悪いこと、した、な」

 ふと、強烈な視線を感じた。
 どうにも無視できない、射殺すような鋭い眼差しだった。
 アリスだ。
 憎たらしいものでも見るかのように私をじっと凝視している。

「何?」
 訳が分からないので問いかけると、アリスは全身を細かく打ち震えさせたまま口を開いた。
「どうして、よ……」
「? あなた何言ってるの」
「パチェ」
 何故かレミィに袖を引っ張られ止められた。

 私が何かしたかしら。
 首をかしげている間にも、アリスは猛然と言葉を放つ。

「どうしてあんたはそうなのよ! どうしてそんなに、そんな、平気でいるのよ! いつも通りなのよ! 魔理沙が!…………魔理沙、が……魔理沙には…………もう、時間が、ないのよ。それなのに、どうしてそんな、冷静で、落ち着いて、いられるのよ!」
「アリス……」
 魔理沙の呼びかけに、しかしアリスは駄々をこねるように首を横に振った。

「私には無理だった! 魔理沙がそんな、湿っぽいのが嫌だって分かってるのに、それでもどうしても笑えなくて! 何度も泣いて! 困らせて!……………………ねえ、私はおかしい? 最期の最後にこんなにみっともない醜態を晒すなんて、おかしいことかしら? ねえ、どうなのよ。私は、普通よね? こんな時は、泣くのが普通、よね? 仕方ないわよね? それなのに、そうだっていうのに、パチュリー!」

 私をきつく睨みつけ、アリスは荒々しい吐息を何度も吐き出していた。むせ返るような激情の隙間に、どこよりも深く、冷たい沈黙が染み込んでいた。

 魔理沙も今は何も言わない。私とアリスの対峙に、この場の全員の視線が集中していた。

 やがてアリスは、涙を目に溜めながら再び口を開く。
「どうしてよ……どうしてあんたは普通でいられるの? いつも、いつもいつもいつもいつだって!…………魔理沙の望む、あんたでいられるのよ……」
「……おい、アリス…………やめてくれ」
 魔理沙がいつになく真剣な口調でアリスに呼びかけた。
 一方の私は不思議に首を捻る。

 魔理沙の望む私?
 アリスは一体何を言っているのだろうか。
 魔理沙は私に何を望んでいるのだろうか。
 何を望んでいたのか。
 言っている意味がさっぱり分からない。

 そうして疑問符を浮かべる私に構わずアリスは言った。

「あんたは魔理沙が、魔理沙がいなくなるのに悲しくないっていうの!?」

 しんと、場が静まり返った。
 みんなの視線が私に集中するのを感じる。

 そんな中、私は心の中で盛大にため息をついた。実際にため息をつかない私の配慮を称えてほしい。

 まったく、折角の死に目がこんなに激情で荒れるなんて。変な事は言うし、アリスは一体何を考えてるのかしら。
 だって、こういう時は死に行く人が笑顔で逝けるようににこやかな雰囲気を保つべきでしょう?
 魔理沙だってそれを望んでいたはずなのに。それなのにこれは台無しよ。

 私は今度はとうとう本当にため息を付いた。
 するとアリスが信じられない、といった様子で目を剥くけど、構わず私は口を開いた。

「あのね。あなたは私が悲しまないと気が済まないの? 泣き喚くことを望んでいるの? あのねえ、アリス。ひどく当たり前のことを言うんだけどね、いいかしら。私が誰かを失って悲しむかどうか。それは私自身が決めることよ。あなたに言われたからといって今から私が泣いてすがりついても何の意味もないでしょう? だったらあなたが、私に対して、悲しくないかどうか、なんて今聞いたところで何の意義があるっていうの? 泣きたい奴は泣けばいい。そうでない奴はそれでいい。他人があれこれ指図することじゃないでしょう? 死に目では全員が悲しんでなきゃいけないのかしら? そうじゃないでしょ?」
「な…………」
「分かったらもう無駄なことを言うのはやめて頂戴。私は、私の、好きなようにやる」

 そこまで一気に言い切り、私はごほごほ喘息の咳をついた。
 アリスは、まだ表情が固まったままでいる。他の皆は黙っている。
 ただ、レミィと小悪魔だけはどこか困ったように眉を寄せていた。

 まったく、この部屋は、この空気は息苦しいわ。喘息がひどくなりそう。

 と、そんな閉塞した空間を撃ち抜くように、魔理沙の高笑いが響いた。精一杯しゃがれた声を振るわせ、すぐに苦しげに咳をする。

「お、お母さん、無理しないで」
 娘に胸をさすられながら、魔理沙は笑顔を私達に差し向けた。
「そうそう、それでいいんだ、パチュリー。アリスも」
「魔理沙……」
 アリスは眉をへの字に曲げ、放心したようにベッドの脇に膝をつき、魔理沙の痩せこけ皺だらけの手を握った。

「今まで、好き勝手生きてきて、最期の最後に暗くなってたんじゃあ、嫌だ、からな。最後まで、明るく頼む、ぜ」
「…………馬鹿」
 アリスは目に涙を浮かべながら微笑む。

 その後、皆は涙を拭き、口々に魔理沙と会話を始めた。

 妹様が最初に口を開く。
「ねえねえ魔理沙、私、今度お姉さまの隣の部屋に移ることになったんだよ」
「へえ、そうか、フランも、とうとう引き篭もり、脱出か。良かったな」
「うん! これからは色んな人ともっと沢山弾幕勝負もできるよ!」
「はは……お手柔らかに、してやってくれよ」

 メイド副長が尊敬の念を込めるように恭しく魔理沙に礼をする。
「あなたとの弾幕勝負は腕を磨くのに大いに役に立ってたのに、残念ね」
「おいおい、メイド副長さんよ。お前、十分強いだろうよ」
「まだよ。目標は遠いわ」
「ははは……根を詰めると、疲れるぜ。いない奴の背中を追っても、決して追いつけやしないん、だからな。霊夢を追った、私が、そうだった」
「…………」

 レミィが魔理沙の皺の目立つ首筋に手を伸ばす。
「あなた、とうとう私に一滴の血も吸わせなかったわね」
「レミリア……あのな、普通に考えて、血を吸ってもらいたい奴なんて、いないだろう、よ」
「ふふ。最近は結構気持ち良く吸ってあげられようになったのよ」
「……尚更嫌だ、な」

 美鈴が朗らかに笑いかける。
「これから門番が暇になりますよ」
「はは……今までだって、十分暇だった、ろ?」
「それは……その、えーと」
「まあ、お前、咲夜が、いなくなってから、居眠り、してない、けどな」
「え……ええ、まあ……」
「意外と、現金な奴だ、ぜ……」
「う……」

 小悪魔は目に涙を溜めて膝を突く。
「こあぁ……」
「小悪魔。お前の紅茶、なかなか、美味かった。今だから、言うけど、咲夜の淹れたのより私は、好き、だったんだ。もう一度、飲みたかった、な」
「うう……寂しくなります」
「泣くなよ。まったく……」


「魔理沙」
 私も言いたいことはあった。
「あの答え、結局思いつかなかったのかしら?」

 人は短命故に絶えず進化する生き物だ。そんな激烈な優位点を持った存在は、変化のない長寿の妖怪達と比べてずっと優れた生物ではないのか。

 その考えに対し、魔理沙はそれは違うのではないのかと反対した。
 その理由を、まだ聞かせてもらっていない。

「ああ、あれか……」

 周囲の者達は疑問符を浮かべているけど、私は構うこともない。
「何? あなた、忘れてたのかしら」
「はは……別に、忘れては、ない、な。でも、やっぱり…………言えない」
 妙なことを言うので、私は眉をひそめた。
「何よそれ。まだ考えがまとまってないってこと?」

 というより、分かっているがあえて言わない、という方が正しいか。
 ここに来て出し惜しみ?
 いや、もう時間がないだけか。
 なんにしろ、答えは分からずじまいということか。

「はは……どうだかな」
「何よそれ」

 納得はいかなかったのだけど、
「パチュリー」
 魔理沙は不意に私の名を呼んだ。

「なに」
「あのさ……外の、書庫」

 家の隣にあった物置のような書庫。
 書庫より先に倉庫を造るべきだと思うのだけれど、まあ本を優先しているのは感心すべきことね。

「ああ、あれね。あの厚かましいの。私の本で何勝手に書庫やってんのよ。空にしとくわ」
「ははは……ちょっと、頼みが、あってな」
「何よ。言っておくけどきっちり全部回収するわよ。あなたが取っていった本は全部覚えてるんだから。それこそいつ何を持っていったかもね」
「いやいや、そうじゃ、ないんだ」

 魔理沙は私に対して苦笑で答えた。

「逆、だよ」
「逆?」
「ああ。あの書庫の中、さ。お前のじゃない、私の本も、いくつか、混じってるんだ」
「そうなの」
 「ああ」と魔理沙は弱々しく頷く。
「それで、その本も、書庫にある本は、全部、持っていって、ほしいんだ」
「あなたの本も?」
「ああ。貰ってやって、くれ」

 魔理沙は強引に物を借りて行きはするけど、又貸しなどのマナー違反はしないのが彼女だ。貰っても問題はないのだろう。

「はあ……いいけど。どうして?」
「はは、まあ……利子だ」
「……利子、ねえ」

 魔理沙の本。
 どこで手に入れたのか、おそらく私が読んだことのない物だろうけど、本となると私は幾らか興味を持った。
 どんな物だろうか。今まで長い間多くの本を借りられていた分、楽しませてもらえると良いのだけど。

「お母さん……」
 魔理沙の娘が目に涙を湛えて呼びかける。
 血は繋がっていないが、彼女の唯一の家族が魔理沙だったのだ。様々な感情を抑えられなくなったのだろう。

「……っぐ、っぐ、うう……」

 魔理沙が実にたおやかに娘の名を呼び、頬をそっと撫でた。

「私は、こうして、人の生を、全う、するけれど、お前は、お前の、選択を、するんだ」
「……お母さん」
「お前は、一人じゃ、ない。困ったら、遠慮なく、色んな奴を、頼れ」
「……うん」
「子供を、作ったり、引き取ったり、するのも、いい。魔法使いなんて、やめても、いい。私、みたいに、早死に、するし、な」
「……やめないよ」

 娘は涙を拭い、魔理沙の手をぎゅっと力強く握った。
「私はお母さんの一人娘だもん。立派な魔法使いになるよ、絶対」
「はは……お前は、十分、立派、だよ」

 途端、魔理沙の子は涙を溢れさせた。
「ふえ……そう、かなあ……おかあ、さん」
「ああ。私の、自慢の、娘だ」
「う……おかあ……うああ……っう、っぐ……」

 娘が顔を覆って泣き始めるのを眩しそうに眺めていた魔理沙は、やがてアリスに顔を向けた。

 アリスは泣いていなかった。
 ただ泣いていないだけの事であり、突けば壊れそうな、砂の楼閣のような弱々しい、強張った顔で魔理沙をじっと見つめている。
 魔理沙の隣に膝を突き、その皺だらけの頬に手を伸ばし、金色の髪のいくらかと一緒に撫でて、アリスは首をかしげて微笑んだ。

「お前には、色々と、迷惑かけた、なあ」
「…………」
 アリスは何かを言おうと口を開いたけれど、そこから言葉を構成する断片が紡がれることはなかった。何かを喋ったら、また止め処ない感情の堰が決壊してしまいそうだった。

「まったく、よ」
 それでも僅かに、かろうじて微かな囁きを零した。
「本当に、何度も、何度も何度も迷惑かけて、私は知らんぷりしてたけど、本当は必死だったのよ、いつもいつも」
「ああ……知ってたよ」
「…………。何度も人形、壊してくれたわね」
「う……そのつど、謝った、だろ?」
「……無理やり異変に連れ回して。楽しかったけど、迷惑だったわ」
「おいおい、お前が、行くって、言い、出したのも、多かった、だろ?」
「ふふ。そうだったわね」
「ああ、そうだ、な」
「……他には、そう、星屑拾いに一緒に行って、でもあなたは拾いすぎて、しばらく夜空に星が欠けた状態が長く続いて異変だって間違われたり」
「ああ……そんなことも、あったなあ……」
「メディスンの内臓機関を治す部品の調達のために、私と魔理沙、幽香と一緒になって森の奥まで行ったり」
「ああ……懐か、しい……」
「ふふふ、まさか幽香と協力することになるなんてね。まあほとんど足の引っ張り合いだったけど」
「ああ……」
「あと、いつだったかしら、霊夢の誕生日に紅白二色だけの虹を作ったわよね。苦労したのに、『風情が無い』って皆からも霊夢本人からも非難轟々だったわ」
「ああ……」
「でもその後の咲夜の行動には笑ったわね。レミリアの誕生日に紅だけの虹を作りたいって言うんだもの。もはや虹でもなんでもないわよ」
「ああ……」
「その後紅の虹が消えなくなって、異変かと騒がれて霊夢が解決に動いて、実行犯の私達が敵と判断されて霊夢相手に弾幕勝負をして。結局何が原因だったんだっけ? あなた覚えてる?」
「ああ……」

 アリスは微笑み、明るく声を弾ませる。
「ねえ魔理沙、ちゃんと私の言うこと聞こえてる? 私の声小さいかしら? いくら年取ったからって別に耳は遠くなってないわよね。だから、ねえ、ちゃんと聞こえてるの?」
「ああ……」
「もう。魔理沙、話したいことがまだいっぱいあるのよ。ちゃんと聞いてるの? ほら、私のお母さんがこっちに来た時、この子を見て、『私お婆ちゃんになったの!? うええーん!』って早とちりしてたわよね」
「…………」
「あの後どうして弾幕勝負にまで発展したんだっけ。何か余計なごたごたがあったと思ったんだけど……ねえ魔理沙、覚えてる?」
「…………」
「覚えてないの? 仕方ないわね。それじゃあええと他には……他には何があったかしら。いざとなると思い出しにくいものね、あんなに多くのことがあったのに」
「…………」
「……ねえ魔理沙。あなたいつか私に言ったわよね。人生の中で体験したことは全て星になるんだって。自分だけの星空にそうした様々な星を浮かべていって、時に星座が出来たり星団となったり、形を変えて形を作って、そうして愉快な人生を作っていくんだって」

――どこかで聞いた話だ。
 そう、忘れもしない、うちの永遠のメイド長が死に際に言ったこと。
 魔理沙も咲夜の言葉に少なからず影響を受けていたのだ。

「ねえ魔理沙。あなたの星空はとても綺麗ね。綺麗でしょう? あなたそう言ったものね。それでね、いくらかある一等星の内の一つは私だって、言ってくれて、私、すごく嬉しかった……」
「…………」
「ねえ魔理沙。伝えたいことがあるの。私意地っ張りだからさあ、今までずっと言えなかったことなんだけど」
「…………」
「魔理沙。ねえ聞いてる? 大切なことなのよ。魔理沙……ねえ、魔理沙……」
「…………」
「…………………………………………愛してる」

 いつしか部屋は泣き声で溢れ、もう他には何も聞こえなくなった。

 アリスは魔理沙の皺だらけの力の抜けた手を握り締めたままベッドに顔を埋めて体を震わせているし、魔理沙の子も魔理沙にすがり付いて必死に泣き続けている。

 でも紅魔館の住人達は流石に魔理沙の死で泣いたりは………………小悪魔、あなたひどい顔ね。悪魔は悲しみの表情を隠すんじゃなかったの? どう見ても悲しくてしょうがなくて泣き喚いているようにしか見えないんだけど。

 小悪魔。あなたは何故だか魔理沙のことがとてもお気に入りだったわね。気が合ったのかしら、魔理沙が来るとあなたの機嫌は良くなった。
 これからはもうそんな事も無くなるのかしら。

 でもね、単純な話よ。
 魔理沙がいなかった頃に戻ったと、ただそれだけの事。
 何十年も前のことだから忘れているかしら? 嫌でも思い出すわこれからは。

 霧雨魔理沙は死んだ。
 いなくなった。
 永遠に眠り続ける。
 彼女の星空は、ああ、この幻想郷全体に広がっているのだって、そう誰かが言っていた。私がそんな見て回ることはないだろうけれど、さぞかし綺麗に輝いているのでしょう。

 魔理沙の死を知って彼女らは一体どういった反応をするだろう。
 本当に私達だけで看取って良かったの? 今の博麗の巫女や、あの道具屋の主もあなたにとって大切な存在だったろうに。

 でもまあ、それが魔理沙の希望だというならきっと誰もが納得するでしょうね。
 魔理沙の星空に燦然と輝く星々。
 魔理沙はとても満足そうだった。
 幸せそうな死に顔をしている。
 まあ、あれだけ好き放題やっていて幸せじゃなかったとか言ったらぶちのめしてやる所よ。

 魔理沙。
 霊夢が幻想郷にとっての太陽だったとしたら、あなたは月?
 いやいやそんな控えめな奴じゃないわねあなたは。
 もう一つの太陽、の方がしっくりくるわ。だってあなたという存在は本当にうるさくて眩しいくらいだったから。
 そしてその太陽は二つとももう、沈んだ。

 かといって夜がやって来るわけでもなく、また別の太陽が上がってくる。
 だから私達妖怪はもう随分と前から夜に生きていないのかもしれない。
 燦々と輝くいくつもの太陽の下、妖怪達は昼に合わせて弱まった力で精一杯ダンスを踊っている。
 人間と一緒に踊っている。弾幕勝負という無限通りの振り付けで思いの限り舞っている。

 魔理沙、私は上手く踊れていたかしら?

 そんな問いに答える彼女は、もう、いない。


 狭い部屋の中、窮屈に立ち尽くす私達。
 泣き声が一体いつ止んだのか、私の記憶にはなかった。

 ただその後どうにかして何かが動き、何日か日を置いたのかそれともすぐに始まったのか魔理沙の葬式が行われ、そこで多くの妖怪達が泣き喚いているのを、私は端っこの方でぼんやりと眺めていた。
 アリスと魔理沙の子はもう泣いていなかった。涙などとうに出尽くしたのだろう。

 私はただ無感情に、とうとうと、何を考えるでもなく立っていた気がする。
 何故私がこの葬式会場にいたのか分からない。きっとレミィ辺りに連れて来られていたのだろう。
 でも、そんな記憶は何故だか残っていなかった。

 気づいたら葬式に出席していて、
 棺の前に立っていて、
 離れていて、
 そうして記憶が曖昧に途切れ途切れに落とされて、ぶつ切りに断続的に浮いては沈み、私は気づいたらいつもの図書館で座っていた。

 いつ戻ってきたのか記憶がない。

 今は一体いつだろうか?

 時計は、ああ、そうだ、紅魔館に時計はもうないんだった。
 正確な時間はもう、二度と分からないんだ。

「パチュリー様」
 小悪魔がいた。
 何か不満そうに瞳をたぎらせている。

「いつまでそうしているんです? 魔理沙さんの葬式からもう一ヶ月経ちますよ」

 一ヶ月?
 いつの間にそんなに時間が経っていたのかしら。魔理沙が死んだのはついさっきのように思えるのに。

「ごほっ、ごほっ」

 咳が、ひどい。
 最近ずっと咳がひどい。
 最近というのは、何だ、ここ一ヶ月のことか。他に何をしていたのか覚えていないけれど、咳をしていた記憶ならある。薬の量を増やしてもらうのがいいかもしれない。

「パチュリー様……」

 魔理沙がいればあの賑やかさでもって咳をするのも忘れてしまうというのに。彼女はその意味ではいくらか役に立っていた。もういないけど。

「ちょっと永遠亭まで行って来るわ。喘息の薬が足りないのよ」
「パチュリー様!」

 何故か大声を出した小悪魔に構うこともなく、何故か構う余裕など今の私にはない、私は紅魔館を後にした。

 そして咳をした後、口の中では血の味がした。

 その日、私がどうやって永遠亭に行ってどんな風に戻ってきたのかも、覚えていない。
 時間が早くなってしまったようで、私の時間が早くなったようで、まるでどこかへ向かっているような、暗いトンネルの向こうへ滑っていくような。

 分からない、
 切れていく、
 ぐるぐるぐるぐる時が回る、
 私はどこへ行くの?

 もしかして、向かう先は終わりか。

 私という存在が、
 私という時間が、
 急速に老いていくような、
 とても大切にしていたものが急速に失われていくような、
 そんな気がして、
 でもどうにもできない。

 流れに身を任せ、ただただ何が失われようと静寂としじまの間に私は座っているだけ。
 本を読んでいる以外は何もせず、気づいたら机に突っ伏している自分がいる。

 そんなことが何度も繰り返された気がした。

「ごほっ、ごほっ、ごほっ……う、ぐ、げほ」

 最近、口の中では血の味以外しなくなった。
 それを否定するようにごくりと鉄の味を飲み込む。

 私は本を読む。
 本を読んでいる時は他の何もかもが私の耳には入ってこない。

 誰かが来た気がした。
 見知った誰かが私に呼びかけた気がした。
 私の体を揺さぶった気がした。

 でも私はそれを意識しない。
 意に介さない。
 私は本を読んでいるから。
 だから何も聞こえない見えない分からない。

 だって仕方ないじゃない、本を読みたかったんだから。
 とってもとても本を読んでいたかったの。

 それ以外何もしたくなかったの。
 考えたくなかったの。
 そういう時ってあるわよね何もおかしなことじゃないわよね。
 私が本を読むことになんら不思議な点などありはしない。
 だから私は安心して本を読む。
 何度も読んだこともあるとうに覚えてしまった糞みたいに詰まらない本だったけど、内容はなんだったかしら私はそれを何度も何度も読み返す。
 なんでかしら?
 なんでか知らない。

 ああ、本を読むのって楽しい。
 本を読むために本を読んで読んでいるから何も考えなくて読んでいるから読んでいるのであって私は本を読む読み続けるそれが私おかしなことなど何もないのよそうでしょう?
 そうでしょう。

 私は誰に問いかけたの?
 誰に問いかけたかったの?

 そんなことも、本を読めば考えなくても済む話。
 文字の海に飛び込み沈んでいきましょう。
 今の私の体はなんだかとても重いからきっとどこまでも深く潜っていける。
 水面からの声も何も届かなくなるくらいに。
 そのまま私の存在がぶくぶくと消えてしまうように。


 どん、と。


 私がどうやら吹き飛ばされたのはそんな時だった。

 遅れて衝撃音が弾ける。
 私はどうやら宙を舞い、床に何度も激突し、本棚に当たって停止すると、無数の本が雨となって私に降り注いできたようだ。

 本を読む。それしか考えが及ばない私には身を守るという思考は無かった。
 落ちてくる本の全てを身に受け、結構痛い、静かになると、やがて私はのそりと起き上がった。

 見ると小悪魔がいた。

 私に向かって手の平を突き出し、ぶるぶる震えて歯を食いしばってとても悲しいような苦しいような複雑な今にも泣き出しそうな顔でこちらを見ている。

 あれ?
 小悪魔。
 まさか今のはあなたがやったの?
 まさかあなたが私に危害を加えたの?
 攻撃したの?
 私の使い魔であるあなたが?
 主である私を?

 訳が分からない。

「がっ」
 途端、小悪魔は苦悶の表情を浮かべて頭を押さえ、膝を突いてうずくまる。
 叩き付けるようにして床にぶつけた頭のその口からは、おびただしい量の血が吹き出てきた。

「ぐ……うう……くっ」

 馬鹿ね。
 私とあなたの契約。
 主に攻撃を加えればどうなるかはよく知ってるでしょうに。

「あなた、何やってるの?」

 私は手元に魔法書を浮かべながらひたりひたりと歩き近づいていく。
 小悪魔は既に結構弱ってるけど、反乱を起こすような僕を捨て置くことはできない。

「っ……パチュリー……様……」

 小悪魔は普通身動きが取れないほどの激痛に見舞われているはずなのに、それでも立ち上がってきた。
 明らかにふらふらと力の無い足取りで、羽を必死に羽ばたかせ、私から逃げもせずに正面から見つめている。その瞳に映るのは怒り、憤怒、もしくは悲哀か。
 なんにしろ反抗しているのに違いは無い。
 今の私は理由を聞く気にもならない。

 残念ね小悪魔。
 あなたは優秀だったのに。咲夜が死んでからぐちゃぐちゃになったこの図書館の整理がもう終了している。

 あなたは私に反抗した。
 こんなことで終わりになるなんてね。あなたは無茶苦茶なこの紅魔館の皆とも仲良くやれたのに。

 そうして私は空中に青白い魔方陣を出現させ、魔法を紡ぎ始める。
 弾幕勝負の時に発生させるような、派手なだけの威力の無いものではない。
 岩石も瞬時に蒸発させる激烈な威力の込められた本気の魔法。
 偽りではなく真の魔法。
 ただ殺すだけ、壊すための現在では必要の無いはずの暴虐の魔法。
 かつて私がここに住み着く前、レミィとも互角に殺し合った私の力、小悪魔程度塵も残らない。

「何か言い残すことはない?」
 流石に長年の別れに無言であるのもあれなので、私は問いかけてみた。

 すると小悪魔は何を臆するでもなく、怒りの表情のままに言い放つ。

「あります。一杯あります。パチュリー様。あなたに言わなければならないことが、言いたいことが山ほどあります」
「興味ないわ」
「それでも、言わないといけません。パチュリー様」
「何よ」

 小悪魔はそこで、すうっと息を吸い込む。
 緊張しているのではない。これから大声を出すために呼吸を大にしたというそれだけのことだった。

 一瞬の静寂。

 そして、声をあげる。図書館中に響かんばかりの大声で。

「いつまでそうやって腐ってやがんだこの根暗女あ!」

 しん、と場が静まり返った。

 私の視界が斜めになったと思ったら、ああ、私がこれでもかというくらい首をかしげていたからか。それくらい首を傾げたくなるほどに理解が難しかった。

 ねえ、今この子は何を言ったの?
 主である私に対してなんと言ったの?

 そうこうしている内にも小悪魔は矢継ぎ早に言葉を続ける。

「どうして素直にならないんですか!? 他人には偉そうな事を言っておいて、自分のこととなると何も分からないんですね! 自分がどれだけ好かれていたかも! 自分がどれだけ好いていたかも! パチュリー様は魔理沙さんのことが好きだったんでしょう? 大好きだったんでしょう? 愛していたんでしょう!? それなのに自分は冷静だからと言って泣きもしないで悲しむ素振りも見せないで沈着でいて…………そんなの嘘です! 自分に嘘を吐いているんです! 無理をしているだけじゃないですか! 以前アリスさんにはあんなこと言いましたけど、本当は魔理沙さんが歳を取って皺だらけになるのが嫌だったんでしょう? 魔理沙さんが死んで悲しかったんでしょう!? なのにそんな感情を必死に押し隠して、自分は冷淡な性格だと決め付けて、諦めて!…………何が賢者ですか。ただのか弱い女の子ですあなたは。怖かったんでしょう? 自分の感情を出してそれを否定されるのが嫌だったんでしょう? だから魔理沙さんに本物の魔法使いになってほしいと一回しか言わなかった。拒否された時のダメージをあなたは嫌がったから。本当はアリスさんのように泣いてすがり付きたかったんでしょう? 『魔法使いは精神的に強靭でないといけない』? ははっ! とんだお笑い種ですよ。あなたのどこが強いんですか。心が動かないように。動かないように細心の注意を払ってびくびく縮こまってるだけであって、あなたは全然強くもなんともない。誰かを無闇に好きにならないように心に隙を作らないように怯えている臆病者ですよあなたは」

 そう、小悪魔は言いきり、肩で息をしながら私のほうを臆することなくじっと見る。

 小悪魔。
 あなた、何を。言っているの?
 私が魔理沙のことを好いている?
 愛している?

 そんなこと、ありえない。
 愛している。
 そんなことはない。
 臆病者などと、好きに言えばいい。

 だからただ粛々と、諾々と、私は宣告する。
 使えなくなった僕に対し言い放つ。

「あなた、随分と魔理沙のことを好いていたわね。だからそんな事を言うのね」

 私より魔理沙が大事だと、そういうことかしら。僕として失格ね。

「ええ、好きでしたよ」
 小悪魔はきっぱりと言った。
「だって魔理沙さんが来るとパチュリー様が幸せになってましたから」
 そんな馬鹿なことを言った。

「言いたいことは……それだけかしら?」

 小悪魔はぼろぼろ涙を流しながらしゃくり上げる。
「パチュリー様……じゃあ聞きますけど、どうして本を取り戻しにいかないんですか? 大切な本なんでしょう? 魔理沙さんが返すって言っていたじゃないですか。本当に魔理沙さんのことをどうとも思っていないならさっさと回収すれば済む話じゃないですか」
「それは……」

 私はこの時、言い返せない。

 そうだ、何故本を取り戻しにいかないのだ。
 それは、なんだか気が進まないからだ。
 単に今は本を読むので忙しいから取りに行かないと、ただそれだけの話のはずだけど、大切な本をあそこに放置しているのは心配なはずで、私がそんな雑な取り扱いを本に対してするわけがなくて、でも取りに行きたくない、魔理沙の家に行きたくない何も考えたくない、本を読んで読んでいたい他に何も無くなるから無になるから、真っ白になってしまうから楽だから、それでいいといいでしょういいわよね邪魔をしないで誰も誰も。

「パチュリー様……それでも受け取りにいかないのは、本が戻れば魔理沙さんの死を実感してしまうからじゃないですか。所々本の抜け落ちたこの図書館の本棚を取っておきたいからじゃないですか。魔理沙さんの足跡を消したくないからじゃないですか」
「違う」
 私の声は、思ったより弱々しかった。

「本を取り戻さないのは……たまたまよ」
「嘘です」
 小悪魔は即座に言い放った。

「パチュリー様は魔理沙さんに生きていてほしかったんです。もっと一緒にいたかったんです。そんなこと、私もレミリアお嬢様もこの館の住人は誰も彼もが分かっていることですよ」
「何を……根拠に」

 馬鹿げてる。
 魔理沙は私にとって単なる迷惑者に過ぎない。
 特別な存在などでは、ない。
 本を持っていくだけの、ただの泥棒だったと、ただそれだけのことだ。

「根拠? ははっ! パチュリー様。一体何を仰っているんですか」

 小悪魔は、ひどく馬鹿にしたような、もしくは悲しそうな笑みを浮かべた。

 分からない。
 何故そこで笑う?
 私の心をこの子が推し量れるはずも無い。
 私は、無敵だ。
 私の心に隙などない。
 それなのに小悪魔は笑う。

「それじゃあ見てください。あなたが今まで読んでいた本を。ここ一ヶ月何度も何十回も読み返してとっくに覚えてしまっているはずなのに読むのを止めようとしなかった魔法書を。さあ! そこにありますよ!」

 魔法書? 魔法書がどうしたというのだ。
 そして私は、ふと足元に落ちている魔法書を見つめた。

 さっきまで私が読んでいた物。
 何度も読み返して内容など既に一字一句暗記してしまっているのにそれでも読み続けていた魔法書。
 一応禁書に指定されているけれど、とても詰まらなくて糞みたいなくだらない間違いだらけの二流魔法書。
 その表紙にはこう書かれていた。




『禁書:蘇生魔法への探求』




「あ……」

 ああ。
 あれ?
 何、これ。

 私は今どんな顔をしているのか、そんなことにも気が回らない。

 蘇生魔法?
 私は何を、どうしてこんな物を何度も何度も読み返して。
 そんな、馬鹿な。
 ありえない。誰を生き返らせたかったのか。

 そんな、魔理沙が死んだすぐ後に読み始めて、そんな、馬鹿な。
 違う。
 私は。
 魔理沙のことなど。
 でも。
 欲しかったのは。
 求めていたのか。蘇生などと。馬鹿なことを。

 蘇生魔法の不可能性など、これまで何度も証明されているはずなのに。分かっていたはずなのに。
 それでも私は、何かを求めて、無様にも藁にもすがり付いていたのか。
 私は。
 私はわたしはいつだっていつもどんな時も私のままで冷静でいて私のままって一体何わからない一歩も考えられない進めないでも――

「私は……」
 私は気づいたらふらふらと飛び立っていた。
 小悪魔も放っておき、図書館から、紅魔館から飛び立っていく。
 いつしか空は翳り、鉛色の雲が低い位置に垂れ込めていた。

「ごほっ、ごほっ」

 何も考えられない。
 何か考えられるだけだった。
 何かを求めていた。
 それは答えか。
 それとも他の、漠然とした何か大切なものを探しに行きたかったのか。
 答え。
 そうだ、魔理沙からまだ聞かせてもらってなかった。
 人間と妖怪に優劣などないと、その理屈を聞いていない。

 でも、もう分からないのだろうか。それとも、何か言っていただろうか。
 それを確かめたくて、確かめたいからかそれとも他の理由からか、私は魔理沙の家に向かった。

 そういえば、魔理沙は死に際に何かをもらってくれと言っていた。
 私に何を残していっただろう。答えだろうか。
 魔理沙に教えてもらおう。私がわざわざ出向いてやるんだからそれくらいしてくれるわよね?
 魔理沙。そこにいるの?
 何も分からないの。



 魔法の森にある魔理沙の家。
 そこはこの前来た時となんら変わった所はなかった。家の周囲のごみためが全く解消されていない。
 よく見ると家の中も同じ感じで、要するに誰も物を取り返しに来ていないということ。

『物が戻れば魔理沙さんの死を実感してしまうからじゃないですか』

 先ほど小悪魔の言った言葉が頭に浮かんだ。
 みんな同じ気持ちなのか。

 家の前に降り立つと、隣の小さな書庫が目に留まった。

 あそこか。あそこに、魔理沙が私から奪っていった全てがある。
 人の本で構成された厚かましい建物。

 その書庫の前に私は立った。霧雨魔理沙の小さな宝箱。
 なぜ本だけを他と分けているのか、そういえば不思議に思ったけどどうでもいいや考えられない。

 扉を、開ける。
 宝箱の蓋を開ける。

 すると途端、懐かしい匂いが吹き出てきた。
 魔理沙といた図書館の空気だ。どこかとても、安心できる。

 見ると、本はそれなりにきちんと整理されていた。痛んでいる様子も無い。

 思い切って書庫の中に入ると、途端に雨が降り出し、ざあざあと飛沫が弾ける音が響いてきた。

 これでは外へ出られない。
 まるで閉じ込められたようだ。
 誰に?

 構わず私は周囲を見渡す。
 見覚えのある本たち。
 私が本の事を忘れるはずも無い。
 私と魔理沙のあらゆる時間がそこにはあった。

「あ……」

 どの本をいつ魔理沙が持っていったのか、私ははっきりと覚えている。
 それに間違いはない。
 だから記憶が、溢れる。
 今まで必死に目を背けておいたのに、閉じ込めていたのに、乱暴な光によって開け放たれる。

 あの本。あの本を魔理沙が借りていった日、私と魔理沙とアリスとで魔法談義に火が付き、その日は二人とも図書館に泊まっていった。机に突っ伏し眠りこけた魔理沙を、アリスと小悪魔とで別室に運んでいっていた。

 あの本。あの本を魔理沙が借りていった日、魔理沙は新しい博麗の巫女のことについてその子がどれだけ頑張っているかを話していた。霊夢よりもずっと真面目だって笑っていた。

 あの本。あの本を魔理沙が借りていった日、地底の異変を解決した後に、その裏に潜んでいるらしき連中についてアリスやらも図書館に集まって一緒になって推測していた。山の神社に行くべしというのは私の提言だった。

 あの本。あの本を魔理沙が借りていった日、魔理沙はスランプに陥ったみたいで、何の魔法も使えなくなっていた。私は特に何もしなかったんだけど、図書館でだらだらしているうちに魔理沙はやがて勢いよく立ち上がり、迷いはなくなったのか、全力で飛び出していった。
 あの時どうしてスランプから立ち直ったのか分からず、小悪魔が「教えて差し上げましょうか?」とにたにた笑っていたので吹き飛ばしておいた。

 あの本。あの本も、あの本も、あの本もあの本も全てが記憶の宝箱となって私の視界を埋め尽くす。

 ああ、そうだ。
 私の周りにはいつも本があった。
 私と魔理沙と一緒にいつも本があった。
 本そのものが命の震えを感じ取り、私の記憶装置となっていた。
 忘れない。
 見れば思い出す。
 ここにある本は全部私と魔理沙の記憶そのものだ。

 霧雨魔理沙はここにいる。

『この前魔法で失敗しちゃってさあ。このキノコ使ったんだけど何がいけなかったと思う?』
『ういーっすパチュリー。茶。菓子。本』
『あのさ、子供を引き取ったはいいんだけど名前が無いみたいでさ。お前何か縁起のいい名前付けてやってくれないか? そういうの得意だろ?』

 魔理沙は私の周囲に陣取り、取り囲み、いつものように軽口を聞かせてくれる。
 何度も何度も繰り返し私の中に反響して途切れることがない。
 安心、する。
 落ち着く。
 咳も出ない。
 そんな、馬鹿な。
 私にとって魔理沙はそんなにも大切な存在だっていうの?
 大切な存在だったっていうの?
 そんな、ありえない。

 違う。違うのよ。否定したいの。
 どうして?
 どうして私はそんなに躍起になって否定するの? 分からない。

 ねえ、声が、魔理沙の声が聞こえる。
 本から、全ての本から聞こえる。
 どうしようもなく心地よくなってしまう記憶の会話。
 あの本も、あの本もあの本も。
 全ては魔理沙と過ごした日々の録音媒体となっていた。
 そしてあの本も。

「……?」

 あの本は…………何の本?

 無数の本に埋もれるようにして、一冊の本があった。
 それからは魔理沙の声が聞こえてこなかった。
 茶色い新しめの本で、周囲の本の中、際立って分厚く巨大な魔法書。

 こんな大きく読みにくそうな本を作る馬鹿はどこのどいつよ、と一瞬呆れていたら、本の背表紙には『著:霧雨魔理沙』と書かれていた。お前か。

 魔理沙の書いた本。
 もしや貰ってほしいというのはこれか。あなたの書いた本。魔理沙はもしや、私にこれをあげたかったのか。

 私は山積みされた本の中からそれを抜き取った。ばらばらと本が崩れるが気にすることはない。

 魔理沙の魔法書は、こうして見ると本当に巨大だった。抱えるのも難しい正方形の本。

 読みにくいったらありゃしないわね。
 魔法で宙に浮かべ、あいつにしては地味な茶色い表紙には『霧雨魔法大全』と書かれていた。

 あいつにしては本当に地味なタイトルね。

 そうしてぱらぱらと捲ってみると、どうやら星の魔法やら光線魔法やらの術式が細かに記述されているようだった。

 これは意外と貴重なものかもしれない。魔理沙は自分の魔法を秘密にしとても大切にしていたのに、ここには魔理沙の魔法のほとんど全てが記されている。魔理沙の使っていた魔法ということで欲しがる者も多いだろう。
 それをどうして私に残す?
 せめて自分の娘に残すべきでは?

 不思議に思いつつ、私はとうとう前書きへと目を移す。

 そこに、魔理沙の言葉がある。
 彼女は一体、何を思ってこれを書いたのだろうか?
 何を目指していたのだろうか?
 彼女の心境が分かるかもしれない。

 魔理沙は遺書の類を残さなかった。
 ではこれは?

 震える手を抑え、私はそっと捲ってみた。






『  始めに

 私は霧雨魔理沙。この魔法書を書いた魔法使いだ。とは言ってもこの本はなるべく誰にも見せてほしくないので、たまたまこの本を手にしたという者は今すぐ閉じろ』

 いきなり閉じろとはなんだこの本は。
 まあ魔理沙だからということで私は次へと目を移す。

『と言っても仕方ないけどな。しかし私の魔法は私だけのものだという自負がある。まあ他人の魔法を参考にしてきた私が言うのもなんだが。
 でも考えてもみてほしい。周囲の者が一斉に自分と同じ魔法を使い始めるなどと嫌だろう。
 だからこの本はとある図書館の中で埃を被っているべきものだと思っている。ゆえにこれから先は私のことを知っている者でないと分からないような記述が出てくるので、分からないという者は読む必要はない。
 要するにこれが言いたかっただけで、実のところ私の魔法をモノにしてしまっても一向に構わない。是非とも有効に活用してほしい』

 言っていることが一貫してない。
 これもやはり、魔理沙だ。
 笑い声が聞こえると思ったら、私の零したものだった。
 なんで笑うの?

『さて本題に入るが、何故私がこの魔法書を書こうとしたきっかけについてだ。
 というのも、私はその人生の多くを本を共に過ごしてきた。
 とはいっても私の本ではなく、とある図書館の本だ。
 そこにある本と、そこに住まうとある魔法使いのおかげで私の人生は何度も転換し、劇的な革命を引き起こしていた。魔法使いで良かったと心から思えたのはあの場所のおかげだろう。
 何冊も何冊も魔法書を読んで練習をして腕を上げて、そんな恩恵に与っていた私が魔法書を書く主体になりたいと、思わないわけがない。
 それがこの本を書くきっかけだ。
 要するに書いてみたかったから書いたわけだな。
 そして実際に内容を書くのはそんなに大変ではなかった。今まで多くの魔法書を読んできたわけだし、苦労も少なかった。むしろこの前書きのほうが大変だったくらいだ。
 と言うと何か大層なありがたい言葉が書いてあるのかと思われるかもしれないが、ここにはそんな大したことは書かれていない。ただ私について書かれているだけだ。それでもいいなら続きを読んでほしい。私という存在についてだ。

 私は生涯において人間であった。
 誰に言われても本物の魔法使いなろうとは思わなかった。
 私は人間霧雨魔理沙であり続ける。
 それが私という存在なのだと、私そのものなのだと、人間でなくなると自分が自分でなくなるのだと、そう、思っていた。
 そしてそれは間違った考えではないと今でも思っている。
 私は人間霧雨魔理沙という一度限りの人生に他の色を混ぜたくなかったのだ。
 それに、永遠に長い命を考えたとき、私はしばしば途方に暮れる。
 果てしなく長い道のりを考え、どこへ行けばいいのか分からなくなる。
 そんなに長い時間をどう消費すればいいのか、私は手に余らせたのだ。
 だから人間として生き、人間として死んでいくべきなのだと、そうありたいと決意した。

 そのはずだった。
 しかし私は一人の魔法使いと出会った。図書館に置かれた彫像のような、どこまでも変わらず、どこまでも動かない平静の少女だった』

 私は心臓が飛び出てきたかと思った。
 何故ここで私が登場するのか。
 私という存在は魔理沙にとってなんだというのか。

『彼女と友達になった、と言うと友達になった覚えはないと文句を言われるかもしれないが、私が友達と言えば友達なんだ。
 でまあその友人と出会い、共にしたことと言えば数えるほどしかない。
 図書館で共に本を読み、とてもとても楽しい魔法談義に花を咲かせ、たまに関係ない小話を挟み、紅茶を飲み、異変解決に協力し。
 そんな幸せな日常、生活。
 どれだけ同じことを続けても飽きたりはしなかった。
 いや、同じことではない。
 私達が開いている本の種類によってその日その日で違った話題が生まれる。本はそれ自体が愉快な生活を生み出す至高の魔法を発生させていたのだ。
 彼女と共に本を読んだ。
 本を読んだ。
 どこまでも、いつ訪れても本を読み続けた。
 それが、そんな日々がこれからももっとずっと長く、それこそあの図書館の本を全部読み尽くすくらい、いや読み終えてもまた一から読み返し、といった程にいつまでも続く。
 人間という百年余りの寿命を超えて。

 それも良いのではないかと、私は人間をやめるのもいいかもしれないと、その友人と共にいる時だけは考えてしまったことがあるのだ。
 彼女と共にいるためなら、あのかび臭い図書館で共に過ごす時間のためだけに、人間という一度限りの掛け替えのない人生を、途中で他の色に切り変えてもいいのではないかと、そう、思ったことがあるのだ。
 人間とか妖怪とか小難しいことを考えず、ただ本能に身を任せて楽しそうな方へ行ってしまえばいいのだと、そう考えたことがあるのだ、あの図書館で彼女といる時。

 私はかつて彼女に問いかけたことがある。

 長い長い時間の中、お前は一体何を思って生きているのかと。

 そんな無神経な私の質問に、彼女は呆れ混じりにこう答えたものだ。

「あなたと同じよ。好きなように生きてるだけ」

 この時、この瞬間ほど私の心が強く揺さぶられたことはなかった。
 そうだ、例え寿命がいくら長かったとしても、やることは今と変わらない。
 やりたいことをやる。
 好きなように本を読む。
 それでいいのだと、この時あと一歩間違えば危うく本物の魔法使いになってしまうところだった。

 それでも人間のままでいたのは、まあ色々あるのだが、やはり人間のほうがしっくり来るのだというそれだけの、その友人に言わせてみればひどくいい加減な理由からだ。これは結局生涯譲ることがなかった私の信念だ


 さてその友人だが、以前おかしなことを言っていた。

「人間は素晴らしい変化を伴う生き物であり、変化をしない妖怪よりもずっと優れた生き物ではないかしら」

 といったことだ』


 私は眉をひそめる。
 私の言ったことだ。まさかここで出てくるとは思わなかった。
 魔理沙はこの問いかけを忘れてはいなかったのだ。
 いや、死に際にこの魔法書を私に託したのもこれのためか。
 答えがあるのか。


『友人はそのことについて珍しく気にしていたみたいだが、私はそれを聞いてひどく愕然としてしまった。
 これまで抱いていた価値観ががらりと変わるような、魔法書を読んでいる時にしばしば受けるその衝撃に近かった。妖怪である友人はそんなことを考えていたのかと、意外で仕方なかった。

 そして私は即座に思っていたのだ。
 そんなことはない。
 人間が妖怪より優れているとかいないとか、そんなことはない。
 それでそのことをすぐに思い至ったのだが、照れくさいので私は黙っていた。

 何故照れくさいのかって?
 それはまあ、またひどく感情的な話だからだ。私は彼女と逆のことを考えていたのだから。

 妖怪は人間よりも良い生き物だと、私は友人がそう言うまでぼんやりとだがずっとそう思っていた。
 でも先述のことを言われて目が覚めた思いがした。
 妖怪も人間を羨んでいるんだなあ、と衝撃を受けたものだ。
 そして馬鹿らしくなった。
 お互いに無い物をうらやましがって。隣の花は赤いとはこのことか。

 だから私は思ったんだ。
 人間も、妖怪も、お互いに良いところがある。
 それでいいじゃないか優劣など無いんだ。
 人間が変化するというならそれがいい所なんだし、妖怪。
 妖怪の良いところは私が考えるところ、変わらないところだ。

 妖怪は寿命が長く、ちょっとやそっとのことじゃ変わらない。友人がそうであった。
 図書館に配置された彫像のように動かず、変わらず、静かでいた。
 私は彼女に憧れていた。
 なんと素晴らしい魔法使いの中の魔法使いなのだと羨んでいた。
 何があっても変わらずにいて、だからこそ安心できる。
 周囲がめまぐるしく移り変わる中、彼女は時が止まったかのように不変でいる。
 貴重なアンティークのような静謐の存在。
 彼女の側にいると私はひどく落ち着くのだ。
 だから図書館に入り浸ってしまい、他の友人から文句を言われることもあってごたごたが、と、まあそれは置いておいて。

 とにかく彼女は変わらないことが魅力であったのだ。
 その彼女が変わることを羨んでいるという。
 私はその時、彼女のことがひどく身近に感じられた。
 何がかは上手く説明できないけど、同じなんだと、そう思ったのだ。

 私は変わらない妖怪が良いと思う。
 だから人間が妖怪より優れていることなどないのだと、と、まあこれが答えになっているかどうかは分からないけれど、要するにそういうことなのだ。

 お前はこの答えで満足してくれただろうか。
 筋が通っていないと怒るかもしれないけど、お前が人間を羨むというのならば私は妖怪を羨んでいた。おあいこだな。
 人間が優れているとかいうのは、お前の持っている価値観がそう判断しているにすぎないんだよ。
 気づかない事だって沢山ある。
 だってお前、知ってたか?
 私はお前のことが好きだったんだ。』


 何を。
 言っているのだろう。
 書いているのだろう、こんな所で。
 語りかけるように、まるでここにいるかのように。


『いや今までごちゃごちゃ書いてきたんだけどさあ、もうどうでも良くなってきた。これまでの全部忘れてくれ。
 要するに単純な話なんだ。私はシンプルなのが好きだ。』


 本当に何を書いているんだろう、こいつは。

 もう滅茶苦茶だ。
 滅茶苦茶なのが霧雨魔理沙か。


『要するにだ、私はお前のことが好きなんだ。
 いやアリスや香霖のことも好きだけどさ、それとはまた別に、とか言うとまた怒られるんだけど、そういうことなんだよ。
 私が妖怪を羨んだり魔法使いになってもいいかもと思ったり、そういうのは全部お前のことが好きだからこそなんだ。
 お前とずっと一緒にいたい。
 ずっと一緒に本を読んでいたい。
 そういうことだ。
 単純なんだよ。
 ずっと前から好きだったし、今この時も、きっと死ぬ時まで私はお前のことが好きだ。

 こんなこと言ってもお前は馬鹿な奴と切り捨てるに違いないから絶対に言わなかったけど、本当なら書くこともないと思っていたけど、お前に問いかけられたもんな。
 人間が妖怪よりも優れていないという根拠。
 それを聞かれたから答えてやってるだけなんだぜ。
 だからお前はこれを最後まで読む義務がある。

 私はお前のことが好きだ。
 妖怪のことを良いものだと思ってない奴が妖怪を好きになったりするか? しないだろ?
 要するにそういうことだ。
 私のこの心こそが証拠だ。
 人間と妖怪に優劣などきっとない。
 その証明をここに示した。


 納得いってくれたか?
 ってまあ、そんなわけないか。馬鹿な奴って笑ってやってくれ。
 価値観なんてそれぞれなんだし、お前が人間は優れてると思ってるなら光栄なことながらお前にとってはそうなのかもしれない。

 ただ一つ言っておきたいのは、私にとって、お前にはとてつもない価値があった。
 だから自分に価値がないみたいに言うのはやめてくれ。
 お前は私にとって非常にかけがえのない存在だった。
 偉そうに言うけど、胸を張って生きてくれ。
 長々と書いてきたけど、私が言いたいのはそれなんだ。

 今までありがとう。
 お前がいてくれて本当に良かった。

                            親愛なる友人、パチュリー・ノーレッジに捧ぐ』










 なんだこれは。

 ぽつり、
 ぽつり。
 雨が、降る。
 魔法書に、水滴が染みこんで滲んでいく。

 私は魔法書を握り締めたまま固まっていた。

 なんなんだこれは。

 ああ、雨が降っているから水滴が弾けるから本が濡れてしまう。
 でも、私の体は動かない。
 針金でがんじがらめにされたようにびくとも動かない。

 こんな滅茶苦茶な魔法書で。
 こんな支離滅裂な前書きに。
 こんな、変な、馬鹿な、何を。

 そうこうしている内にも水滴は数を増していく。
 折角の魔理沙の魔法書が汚れてしまう。
 でも私にはどうしようもできない。
 本を閉じることもできず、私は全く動けない。

 ああ。あ。
 魔理沙。
 何を。
 私を、友人などと。
 そんな、私はあんなにあなたにぶっきら棒に接していたのに。
 それなのにあなたは。
 好きだと。
 私のことを。
 そんな馬鹿な。
 あなたはアリスと仲が良かったはずなのに、まだそんな事を言う。
 冗談とはどこにも書いてはいない。
 魔理沙。
 あなたはこんな想いを抱いていたというの。
 ずっと言わないでいたの。
 面と向かって言えば私はあしらっていたのは間違いない。
 だからこうして本として、遺書のように、手紙のように残して。

 これは、卑怯、よ。
 どこに叩き返せばいいっていうの。
 こんな物を残して。私にどうしろというの。
 貰ってほしいというのかこれのことだったの。これを読んでほしかったの。
 本を返す時にこんなものを読ませる計画を仕込んでおいたなんて。

 ええ、ええ、分かっているわよ。
 きっとあなたは何も考えてない。好きなことをやったまでなのね。
 本当に、勝手な奴。

 書庫の外で、中で、雨は勢いを増す。

 そうか、霧雨魔理沙。
 そうだった。
 私にとって彼女はそんなにも重要か。
 かけがえがないほどになっていたか。

 色々と小難しいことを考えていたけれど、複雑な想いがあった気がしたけれど、この前書きを読んでなんだかどうでもよくなってきた。
 もう嘘はやめにしよう。
 小悪魔、あなたの言う通りだった。

 私は怖かった。
 誰かを好きになってそれを失うのが怖かった。
 咲夜の時は仕方なかった。彼女の存在を私は落ち着いてずっと受け入れていられた。

 しかし魔理沙、あなたは違う。
 あなたの登場は余りにも突然だった。
 だから私は心の準備ができず、嫌だと、誰か大切な人ができてそれを失うのに駄々をこねていた。だから素っ気無い対応をした。

 魔理沙は大切なんかじゃない。
 魔理沙のことを好きではない。
 だから死んでも大丈夫。いなくなってもどうということもない。

 そうして壁を作って膝を抱えて縮こまっていたはずなのに、あなたは何も気にせず障害をぶち抜いてきて私の体を揺さぶった。
 その所為でほら、魔理沙。今私は本当に苦しいわ。

 あなたと一緒に本を読んで紅茶を飲んで話をして。
 迷惑だと決め付けて嘘をついて生きてきて。
 魔理沙、今になって正直に言うけれど。
 ほんとはね、私はあなたのことが大切だった。
 あなたがいなくなって喘息がひどくなり、とても苦しいくらいに。死にそうなくらいに。
 かつてのレミィでも私を殺せなかったのに、あなたはこんなにあっさり私の生殺与奪を握ってしまう。
 本当に、困った奴。死んだ後でも困った人間。

 必死に隠していたけれど、あなたが私に残した傷痕はとても大きかった。
 その傷から、私自身目を背けていた。

 でもそれももうこれまで。
 だってどうでもよくなったんだもの。

「あーあ」
 私は涙を零しながら微笑み、ため息を付く。

 ねえ魔理沙。
 さっきから咳が全然出ないの。
 苦しくないの。

 魔理沙。
 あなたは本当に馬鹿で、
 自分勝手で、
 いい加減で、
 本を沢山盗んでいって、
 迷惑で、
 一緒に本を読んで、
 お茶を飲んで、
 会話して、
 勝手に笑って。

 文句はいくらでも言った。
 でも私はまだ言い足りないわよ。
 今気づいた。
 私はこれが言いたかったんだ。
 この感情に気づきたかったんだ。
 自分の中の内なる歓喜を呼び起こし、確固たる希望に従い続けることこそ生きる意味だったのに。
 咳がひどかったのも何も考えられなかったのも、私の中に眠る真の希望に背いていたことへの警告だったんだ。拒否反応だったか。
 ならもう逆らいはしない。
 ねえ魔理沙。

 ありがとう。
 あなたと過ごした日々は、静かな深海で瞬く蛍火だった。
 それはこれからもずっと永久に消えることなく私の深いところで燃え続ける。心地よい火傷の痛みを私はずっと抱えていく。

 霧雨魔理沙。
 私の大切な、かけがえのない友人。

 どこよりも何よりも私が一番魔理沙を感じるこの場所で、彼女に向かって私は言う。


 私もあなたのことが好きよ。


 もう嘘はつかない。
 この想いをあなたには伝えられなかったけれど、こんな所で呟くけれど、あなたはそれでいいんだと言うでしょう?
 私とあなたはこれくらいが、きっと丁度いいんだから。

 小さな図書館に、魔理沙の残響が存在する空間に、私の声がはっきりと響いていた。




 さあて、ここにある本は全て図書館に戻してやろう。
 色々と考えることはあるけれど、取られた物は取り返すのが筋であるし、魔理沙の希望でもある。
 図書館の整理を急がないといけないわね。

 そうそうそれと、なんだか無性に小悪魔の淹れた紅茶を飲みたくなった。
 帰ったらあの生意気な使い魔の傷の手当をしてやろう。そしてこき使ってやろう。
 もう大丈夫だと、言ってやろう。




 でも、今はまだここにいたい。
 このかび臭い懐かしい匂いのする場所に留まっていたい。
 魔理沙と過ごした日々を決して忘れないように耳を澄ましていたい。
 古いアンティークにあなたの記憶を刻み込んでおきたい。

 私と魔理沙が読んだ本に囲まれ、その小さな図書館で、私はいつまでも魔理沙の魔法書を抱えて立ち尽くしていた。
 雨は、いつしかやんでしまっていた。
 しかし静寂など微塵もなく、魔理沙と過ごした日々が洪水となってどこまでも私の耳を満たしていた。



 果たして、私という存在は魔理沙によって変わったのかどうか。
 妖怪でも変わることが出来るのかどうか。


 変わらなくてもいいや。


 もうどうでもよくなったの。
 変わろうとどうなろうといいじゃないの。私は私であり続ける。

 あなたの所為でそう思うようになった私は生きていく。
 これからもずっと、出来る限り精一杯。

 だから私はなんとも誇らしげに、紛れもない友人に向かって呼びかけたのだ。

「それでいいでしょう? この泥棒魔法使い」


                                  了
 もっと短い話を数多く書くのはどうだろう、ということで、書籍文花帖の記事一つごとにそこからネタを出し、物語を一つ作ってみよう、という試みをしてみました。
 最初の記事は紅魔館に泥棒現る、というもの。
 そして書いてみたはいいものの、あまりの微妙な出来に嫌になり、いっそのこともうどれだけ長くなってもいいや、ということで魔理沙が本を返すまでを際限なく書き足した結果がこれです。
 次に書く予定の長編も文花帖とは関係ないですし、自分に合ったようにするのが良いかもしれません。
 この話の後日談も色々と考えたのですが、どうしても蛇足になってしまうので全てカットしました。

 オリキャラ三名についてですが、目立たせたくなかったのであえて名前を出してません。
 私は書いていて何かとオリキャラが出てきてしまうので、注意して自重するようにしました。
 しかしサイドストーリーをいくつも思いつきます。
 中でも、紅魔館で起きたとある異常事態の解決後、メイド副長がメイド長に昇格する、という話はこの小説のコンセプトからしてもどうにかして入れたかったのですが、この話のラストより更に先の話になりそうなので入りきりませんでした。
 やっぱりオリキャラ中心の話なので微妙かもしれませんが……。

 あと、この話の中では人間は変わる変わると言ってますが、それはパチュリーの視点から言っているのであって、変わらないはずの妖怪だって変わるんです、人間も別に無理して変わらなくていいと思います。
 ということを誰かに言わせたかったのですが入りきりませんでした。
 しかし読者の方にはそれが作品の中で伝わっていると幸いです。

 読了感謝します。

追記:パチュリーとアリスが自身の時計を壊した、という表現ですが、二人共捨虫の魔法で寿命を無限にした、という意味で使いました。分かりにくかったかもしれません、修正しておきます。

 あと、この話はパチュリー視点なので分かりにくいかったかもしれませんが、この魔理沙はどちらかといえばアリス寄りとして書いたつもりです。百合要素はあまり出したくなかったので、表現を控えた分わかりにくくなったかもしれません。

 展開についてですが、何人かがご指摘の通り強引な点があったかもしれません。それがどうにも抜け切らない癖でして、これからも精進していきたいと思います。
yamamo
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コメント



0.17900簡易評価
1.100ななし削除
泣かせていただきました。

言いたい事が最初から最後までぶれなかった。
オリキャラもとても上手に自然に描かれていて、違和感は殆ど感じませんでした。
後書きで書かれていたこと、ちゃんと伝わってきましたよ。
3.100名前が無い程度の能力削除
物語で涙を流すのは久しぶりだ。
今日もまた、ここに新たな名作が誕生した。
これからも、すばらしい作品を作り続けてください。
応援しています。
6.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしかったです。
それ以上ありません。
次の作品でも泣かせてください。
7.100名前が無い程度の能力削除
万点はいきますよ。コレ。
10.100名前が無い程度の能力削除
チクショウ卑怯です。一気に読みましたよ。

泣きました。どう考えても100点じゃ足りません。
11.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい作品でした
オリキャラ違和感なかったですよ
14.100名前が無い程度の能力削除
最高でした


この一言に尽きる

前編と合わせて楽しみました
いや、楽しむと言うより、この物語の中に引き込まれていました



これは伸びる
15.100名前が無い程度の能力削除
お見事です
涙しました
20.100名前が無い程度の能力削除
すばらしい、文句無し満点です
21.100名前が無い程度の能力削除
もうなんていうか非常に目頭の熱くなる作品でした。
熱くなるというか涙させてもらいました

100点を何回も入れたくなるような感動作品どうもありがとう。
23.100煉獄削除
涙を流しそうになるほど良いお話でした。
魔理沙の魔法書に書かれていた彼女の想いの籠められた文章を読んだ
パチュリーの涙や感情、色々な人達の想いが話の中に詰め込まれていて
素晴らしいお話でした。
24.100名前が無い程度の能力削除
ぶわっ
25.100名前が無い程度の能力削除
ただただ素晴らしいと。
31.100ティファーリア削除
これはすごい。
鳥肌と同時に涙腺が緩むほどの良作に出会えました。
一本の短編映画でも見ているような映像を幻視できるくらいすごい文章でした。
34.100名前が無い程度の能力削除
泣きました。
一緒に過ごした時間...
かけがえのない友だち...
37.100名前が無い程度の能力削除
最高だ。これ以外に言葉が浮かばないほどに。
42.100名前が無い程度の能力削除
泣かせて頂きました。
心の描写が美しかったです。
次回作も楽しみにしています。
43.100名前が無い程度の能力削除
ヤバい。初めてそそわでマジ泣きした。
44.100名前が無い程度の能力削除
許されるなら100点を十個つけたい。
物語でこんなに涙腺がゆるんだのは久しぶりだ。

感情の描き方がすばらしかった。自分もいつかこんな風に書いてみたいものです。
45.100名前が無い程度の能力削除
やられた。心がやられた。
50.100名前が無い程度の能力削除
おかしいぞ? 目から雨が降ってやがる…
本当に素晴らしい作品でした

できるなら点数を100倍にしてつけたい気分です…

良い作品をありがとうございました
51.70名前が無い程度の能力削除
前編で「身を堕ち~」てありましたが、この作品ではアリスとパチュリーは元人間って事ですか?
そこが気になって

ちなみに、私的には小悪魔が一番でした
53.100名前が無い程度の能力削除
色々と伝えたい事がありますが一つだけ。
素晴らしい時間を有難う御座いました。
58.100名前が無い程度の能力削除
セリフ回しが最高でした
満点
60.100名前が無い程度の能力削除
オリキャラがどうとか、そんな些細なことを気にするのさえ憚られる。
瑣末な事を問題にするなんて無粋。そんな読後感。

色んな意味でお腹いっぱい。
61.100名前が無い程度の能力削除
泣いた マジ泣いた

すばらしい作品をありがとうございました
62.100名前が無い程度の能力削除
これはすごい。
心に残る名作をありがとう。
63.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。とにかく素晴らしい。

オリキャラも違和感無く続きが欲しいくらいですが…それは無粋ですな。
64.100名前が無い程度の能力削除
読後、ほう、と一言ついた後、続く台詞が浮かびません
いや何にせよ素晴らしい。素晴らしいですとも。
65.100名前が無い程度の能力削除
最高です
66.100名前が無い程度の能力削除
ああキモい まじキモい
何がって、涙と鼻水だらけになった俺の顔が
67.10名前が無い程度の能力削除
くっだらねぇ
こんな美談なんかねぇよ
老衰した人間に一月ぶりに会いに行っても向こうはこっちの顔なんて分からない。忘れてるんだ
69.100名前が無い程度の能力削除
ああ良いなぁ。
素晴らしい物語でした。
73.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙が亡くなってからの展開の衝撃は大きいなんてもんじゃないです。
78.100名前が無い程度の能力削除
みんな明日に向かって生きている。人間も妖怪も、どんな生き物であってもそれは同じ。
そういう当たり前なんだけど忘れてしまいがちな事を、改めて思い出させて下さいました。

作者様、本当にありがとうございます。
魔理沙、本当におつかれさま、そしてありがとう。
オリキャラ3人、立派に生きてくれ。
パチュリー、喘息なんかに負けないで、いつまでも元気に頑張れ、超頑張って生きろ!
79.90名前が無い程度の能力削除
本当の自分の気持ちに気付いて素直になることが一番大事だと思いますよねやっぱり。

人が死ぬときなんて意外とあっけないものですが、だからこそこういう話が美談になるんじゃないでしょうか。

本当にいいものはなかなか手が届かないものですしね。
86.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙と他2名は種族が違うんだから、いつかはこういう日が来て当然なんだよなあ
そう考えると、物語が妙にリアルさを増して切なさ全開だわ
88.100名前が無い程度の能力削除
いい話だった
もうそれしか言えない
89.100名前が無い程度の能力削除
本当に感動しました。
私の世代なんかは無気力無感動世代と呼ばれているのに、本当に感動できる物語に出会えて良かったです。
90.無評価名前が無い程度の能力削除
最後にパチェさんは救われたみたいだけどアリスはどうなんでしょうね。
パチェさんには(自分の事は棚上げにして)ボロクソに言われ、魔理沙には介護の果てに先立たれ。
何か救い(の描写)があっても良かったんじゃないかと、どう考えても暗い未来しか想像できません

アリス好きの私には後味の悪い物語でした
91.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙は50代前半で死んだのか……
3人ともまだ若かったのに……

とても感動しました
久しぶりに泣いてしまいました
93.100名前が無い程度の能力削除
涙・腺・崩・壊
涙がとまらねぇ・・・
オリキャラは立派に生きてくれるでしょう。
作者様、素晴しいSSをありがとう!
94.100名前が無い程度の能力削除
最近、他の作家さんの作品で、魔理沙が色々アレな目に遭う話を幾つか読んで、
それに対して、そのアレな目を肯定するようなコメを目にして、
実は魔理沙って嫌われてるのか?等と詮無いことを考えていたのですが、
この作品で、少しだけ救われた気がします。
97.100名前が無い程度の能力削除
気づいたら涙が流れてた
いい話をありがとう
100点じゃ足りないくらいです
99.100名前が無い程度の能力削除
あれ・・?俺の部屋雨漏りしてたっけ?
100.100名前が無い程度の能力削除
一番無茶してるように思う魔理沙が長生きするのも因果ですなぁ。
よい物を読ませて頂きありがとうございました。

アリススキーな自分としては尽くして報われなかった彼女がちょいと引っかかる……
101.100砂漠なゴーストタウン削除
自身は自を基準とした価値観で他を測ろうとする。←比喩として“定規”を“価値観”に当てたかったため、“量る”ではなく“測る”としました。

わかっていた、でもたまに忘れてる。 そんでもって些細なきっかけで、思い出す。
(大げさに言えば「今日の占い」とかもそんな感じで見る物かもしれませんね~)

日常の何気ない物事って重要やねw 泣ける話を ありがとう^^ノ


いつか自分もssにチャレンジしてみようと、思います。
102.100名前が無い程度の能力削除
泣いた。久々に胸が苦しくなるくらい泣いた。あと、小悪魔が可愛すぎる。
104.100名前が無い程度の能力削除
いや、素晴らしい作品でした。
久しぶりに大泣きしてしまった。
105.100名前が無い程度の能力削除
孝行しなきゃいけねぇなと思った...
109.80名前が無い程度の能力削除
後編は少し感動の押し売りのような気がした。
でも前編はとても面白く名作でした。
112.無評価名前が無い程度の能力削除
話の前半部からオチが予想出来る時点で、文章やキャラクターで魅せるエンターテイメントだと思う。
けれど文章が特に上手いとも思えないし、前編には口調が明らかにおかしいと感じる部分も数ヶ所あった。


後個人的な意見だけど、アリスや他の妖怪たちのメンタルが弱すぎるように感じる。
113.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙はかっこいいなあ
パチュリーはかわいいぜ
115.90名前が無い程度の能力削除
おい、どうするんだ?
目から脱水症状だぜ
119.100名前が無い程度の能力削除
やばい、滅茶苦茶心に来た。

素晴らしい作品を有難う。堪能させていただきました。
123.100774削除
素晴らしい作品でした。
ありがとう。
125.無評価名前が無い程度の能力削除
まぁ昔からよくあるテンプレみたいな話。意外性も独創性も説得力もないカマボコ金太郎飴。
特定の人物達のために精神面の脆さが酷くむき出しに書かれすぎて誰テメェなキャラが多かったので
その辺のバランスも取って欲しかった。
かなり共感できない部分が多く、安易なお涙頂戴なところも多々あり点数は付けられないから今回はフリーレスで。
131.100名前が無い程度の能力削除
王道いいじゃない。うまいなぁと思った。
でも書いてる本人が一番この作品を楽しんだんだろうな。
なんかちょっとうらやましい。
執筆時間とか知りたくなった。この長編書き上げたってだけでなんかすごい。

読者視点で言えば後日談カットは正解だと思うな。
余韻を残しつつ美しくまとまってる。
133.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙の最後やパチュリーが涙する場面も泣けたけど、
自分的に一番来たのはこあのこのセリフ


いつまで腐ってやがんだこの根暗女ぁ!
137.無評価名前が無い程度の能力削除
この作品で一番共感できるのはアリスだったなぁ。
普通はこれほど死について達観できるわけじゃないし、どんなに醜くてもがむしゃらになるのが自然な姿だよ。
139.100名前が無い程度の能力削除
予想外の落ちが待ってるわけでもない。
なんだかんだ突っかかるところもあった。
けど最後まで読んだ俺の負けです。GJ!
144.100名前が無い程度の能力削除
感動した
146.100名前が無い程度の能力削除
長編お疲れ様でした。
とてもまとまっていて良いお話になっていたと思います。
個人的にパチュリーの心境に共感できるなぁ…
いつも終わってしまってから気がつく自分です。
147.100名前が無い程度の能力削除
今までに人間組の死を描いた作品はたくさん読んできたけどこれが一番好きだ。
文句なしの100点!むしろそれ以上
149.100名前が無い程度の能力削除
本当によかった、ありがとう
150.100名前が無い程度の能力削除
いい話でした
さりげなくめーさくが混ざってるのもまたよし
151.100名前が無い程度の能力削除
非常に感動した、満点です!
…ただ、サイドストーリーとかは蛇足な気がします個人的に
153.50名前が無い程度の能力削除
アリスが全くアリスに見えませんでしたがその点以外は良いお話でした。
感動の押し売り感や先人の作品を踏襲した感は否めませんがこういう物もたまにはいいかと。
154.100名前が無い程度の能力削除
初めてそそわで泣きました。
155.100名前が無い程度の能力削除
生死を扱うお話は、その人の価値観によって経験によって捉え方がそれこそ無限に広がるもの。
自分は、身内がほとんど健在で亡くなった友人もいないという幸せな環境にある為、まだ実際の死の悲しみを味わっていませんし、アリスや他の者達の気持ちがわかるとはいえません。でも親しい友人や両親が亡くなることを考えると絶対いやだと思うし、涙が出てきそうになります。そういう意味で共感が持てる話だと思いました。
次のお話も期待しております。
159.100名前が無い程度の能力削除
ここ最近で死を題材の一部に含む多くの本を読み、小説サイトに入り浸っていましたが、唯一この作品に胸打たれました。
いつか私もこんな小説を書けるようになりたいと思っています。
素敵な作品をありがとうございます。
160.100名前が無い程度の能力削除
とてもよかったです。
こんな作品を読ませてくれてありがとうございます
167.80桶屋削除
パチュリーは生まれついての魔女な気がしたけれどそんな些末なことはどうでも良い。
感動しました。良かったです。
惜しむらくは後半やや私はだれてしまった。
171.100名前が無い程度の能力削除
アリス…
172.100名前が無い程度の能力削除
最後の方のパチュリーさんに涙しました。色々細かい所でおかしな事はありましたが、そこは、まぁ、ねwww

小悪魔GJとお伝え下さい。
175.100名前が無い程度の能力削除
王道をしっかり見せてもらいました。
177.100you削除
久々に泣きました。ありがとうございます。
178.100ゆでまご削除
つい引き込まれてしまう、とてもいいお話でした。
作者様のパチュリーのキャラクターが非常によく立てられていました。
文句なしの点数です。素晴らしかった、ありがとうございました。
181.100名前が無い程度の能力削除
yamamoさん渾身の一作が来ましたねー。お待ちしてました。
人の生き死にの話、別れ、そして手紙とど真ん中ですね。
何年後に読んでも優しくなれるお話、ありがとうございました。
182.100名前が無い程度の能力削除
逆に聞く。
この作品に100点を入れずして、どの作品に100点を入れられるというのか・・・

またひとつ、そそわに名作が生まれましたね。
185.100名前が無い程度の能力削除
何も言うことはない
186.100名前が無い程度の能力削除
感動しました。
187.100名前が無い程度の能力削除
とりあえず100点を入れさせてくれ。
190.100名前が無い程度の能力削除
どんな感想を入れてやろうか、と前編を読み終えた時に考えていたのですが、

読み終えた今、そんな事は頭からぶっ飛んでしまっています。

素敵な作品をありがとう。
196.無評価つーさん削除
こあに惚れた。
198.100名前が無い程度の能力削除
こんな美談があってたまるか?
あったっていいじゃない、幻想郷だもの、忘れられそうな美談があったってさ
200.無評価名前が無い程度の能力削除
月並ですが、素晴らしかったです。
201.100名前が無い程度の能力削除
目から水のような液体を垂れ流しながら後編まですっ飛んできたが、今度は正真正銘どうみても涙です、本当にあり(ry

個人的には前編・後編通して小悪魔とアリスがよかったなぁ…

この作品に出会えたことを本当に喜ばしく思う

ありがとう
203.100名前が無い程度の能力削除
すっげえよかった!
204.50名前が無い程度の能力削除
話自体がよくある物だからこれほど長く書く必要があったのか疑問。長い話を書くことは良いことだと思うけれど、それが逆に細かいところのミスに繋がったり、文章を冗長にしてしまっていると思う。
これはただ長いだけだけれど、あなたならもっと素晴らしい話にできる。
205.100名前が無い程度の能力削除
小悪魔…GJ
206.100名前が無い程度の能力削除
泣いた、
とにかく泣いた。
感動した。
小説で初めて泣いた。
私も小説書こうとおもった。
209.100オカム削除
今までで色んな作品を見てきましたがマジで泣きましたね…。
素晴らしい1作です…
213.100名前が無い程度の能力削除
眼球が渇水状態になってしまった。
最高でした。
美しいお話を有り難う御座いました。
214.100名前が無い程度の能力削除
ばでぃざあああああああ!!!
でいぶうううううううううううう!!!!
んほおおおおおおおお!!!
215.90名前が無い程度の能力削除
ど真ん中ストレート。
だが、それがいい。
216.100名前が無い程度の能力削除
久々に素晴らしい作品でした
232.90名前が無い程度の能力削除
アリスは娘によって救われるのだと想像しました
233.無評価名前が無い程度の能力削除
おい!点数が足りないぞ!
243.100名前が無い程度の能力削除
あれ?おかしいな・・・目の前が霞んで画面が見えない
245.100名前が無い程度の能力削除
もう本当に最高でした。キャラの造形が完璧すぎる。
葬式の後のパチュリーは辛くて見てられませんでしたが、小悪魔が頑張ってくれて私的にも救われました。パチュリーは良い使い魔を持ったなぁ。
249.100名前が無い程度の能力削除
途中何度鳥肌がたったことか!
素晴らしい作品を感謝!!
260.100たぁ削除
°・(ノД`)・°・
261.100名前が無い程度の能力削除
たまにこういう作品があるからここは怖いwww不意打ちの涙ってやつやね。

お見事!!!5万ぐらいは行くんじゃね?
264.100名前が無い程度の能力削除
さて困った、感想をうまく言語化できない。語彙の少なさが嫌になります。
267.100名前が無い程度の能力削除
最高でした!
サイドストーリーも読んでみたいですが、これで終わるのがいいんでしょうね。
素晴らしい作品をありがとうございます!
271.100名前が無い程度の能力削除
何も言葉にできない

死に行く者の淡々とした語りに自然に涙が流れていました
276.100名前が無い程度の能力削除
惹きこまれるような文章でした。
素晴らしかったです。
277.100名前が無い程度の能力削除
静かに、心に澄み渡るような物語でした。
ありがとう。
279.100名前が無い程度の能力削除
ストレート、ど真ん中。
最高級の作品を読めた事に感謝。
281.100名前が無い程度の能力削除
なんという素晴しいSS・・・!
最高でした!
285.100名前が無い程度の能力削除
思いっきり泣きました。
すばらしい作品をありがとう。
287.100名前が無い程度の能力削除
別に泣くつもりはなかったけど
涙が出ちゃったんだからしょうがない
288.100名前が無い程度の能力削除
大図書館を動かした小さな図書館。死を題材にした作品は人により様々に解釈されますが良い作品だと思います。色々とサイドストーリーも展開出来そうですし、もし続きがあるのなら楽しみにしています。個人的には小悪魔がツボでした。
293.100名前が無い程度の能力削除
俺のキーボードにも大雨洪水注意報発令です
295.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙は大変なものを盗んでいきました。
301.100名前が無い程度の能力削除
あれ、なんでだろう?モニターがゆがんで見えない・・・
303.無評価名前が無い程度の能力削除
前半の淡々としていたパチュリーと魔理沙の薄くとも通じ合っていた友情が心地良かったので、
後半の展開には逆にあれれ。と思いました
もちろん私の趣味です。すみません
貴方の様に書けたらいいなと思います
305.100名前が無い程度の能力削除
すばらしかったですいつもは泣かないのに泣きっぱなしでした
これからも作品を書き続けてもらいたいです
ありがとうございました
308.100名前が無い程度の能力削除
こぁのキャラがいいですね・・・
泣かせていただきました。
313.無評価名前が無い程度の能力削除
妖怪勢の精神面がちと脆すぎるように感じました。
まぁ私が妖怪に対して飄々としたイメージを持っているせいもありますが。
あと、パチュリー視点だから仕方ないけどもアリスカワイソス。

ぐだぐだと失礼しました。
315.100名前が無い程度の能力削除
長いけどそれがいい。それでいい
316.100名前が無い程度の能力削除
おかしいな…目から汗が止まらないぜ…
この作品を読めたことに感謝しています
317.100名前が無い程度の能力削除
いい作品でした、思わず泣いてしまいました。
次の作品も期待したいと思います。
この作品に出会わせてくれた感謝を込めて満点とさせていただきます。
323.90名前が無い程度の能力削除
まいった。長くてもいいやって割り切りは、真剣であれば意外と良い方向に転がることが多いですよね
325.100名前が無い程度の能力削除
物語の登場人物たちと同じ気持ちを共有できた気がします。
涙が、その証拠です。
331.80名前が無い程度の能力削除
面白かったです
332.100名前が無い程度の能力削除
泣いた。寝よう。泣いた。
335.100名前が無い程度の能力削除
泣けた。ひたすら泣けた。
それとアリススキーからの批判がちらほら見られるが
アリスには彼女なりに、話に語られてない処で救いがあったんだ…と信じたい。
337.100名前が無い程度の能力削除
何を言えばいいのかわからないけれども
素っ気ない言い方だけれども
とにかくよかった
この感覚をどういえばいいかわからない
340.100名前が無い程度の能力削除
思わず泣いてしまった。いい話だ。
342.100名前が無い程度の能力削除
パッチェさん…良かったね、本当に良かったね。
343.100名前が無い程度の能力削除
泣きました
感動をありがとう
346.100名前が無い程度の能力削除
とにかく、感動したの一言。
彼女ら三人の死後の話ならいくつか読んだことがあるけれど、パチュリーが中心の話は初めて。
魔理沙が死ぬまで、自身の感情を廃し理性と客観視によってのみ自らの心をを観察、制御したパチュリーだが、やはり最後はその凍りきった心が魔理沙(の魔導書)によって溶かされるまでの流れに脱帽を禁じ得ない。
最後の展開は、大雑把には想像できたけれども、興醒めする事無く、安心して感動を感じることができた。


魔理沙の死の直後までのパチュリーの考えや物の捉え方や価値観は、個人的には共感できる。
冷めた視線を以って、冷たい心を以って客観視する事は物事をより正確に捉えるための方法の一つである。自身の性格とおおよそかぶる。
しかし今回、パチュリーの場合はそんな自分を凌駕した、自身の最果てのような象徴に思えた。自身のこの性格を見直すよう警鐘を鳴らすためにはちょうど良い物語だと、個人的には、酷く、そう思う。


――だぁー。感動したの一言から何だらだらと……。
よくわからないことをぐだぐだ書いてきたけれども、結局は素晴らしい感動作でした、という訳で。長々と申し訳ない。
泣きはしなかったけれども傑作だ。文句なしの100点。


――でも、守矢一家は?
347.90名前が無い程度の能力削除
泣いた
349.80名前が無い程度の能力削除
いくつもある死後話のなかで突出したものは感じませんでした。
でも間違いなく良かったと言える作品でした。
魔理沙が(私のイメージ通りの)魔理沙らしく逝ったのは是非とも評価させて頂きたい。
350.100名前が無い程度の能力削除
あなたの書くお話はだいたい読ませていただいてますが、ここにきてまたすごいの来ましたね。
話の内容とか構成は珍しいものではないですが、すごく上手く料理されてらっしゃる。
ありふれたものを素晴らしいものまでに輝かせるには、ありふれたものだとわかっていてそれを隠さず真剣に付き合うことが大切なんだと教わったような気がします。
道端に落ちているものに自分のなにかを乗せてなにかすっごいものに変えてしまうなんて、だれにでもできそうでなかなかできることではない。道に落ちている石ころが心臓に当たれば、人がたおれてしまうくらいの力になります。
実際わたしもあなたの文章にやられました。素晴らしい作品をありがとう。」
354.100名前が無い程度の能力削除
パチュリー視点で魔理沙メインのお話だったけど、霊夢や咲夜のお話もよかったです。
オリキャラもそんなに気になるものでもなかったですし、物語の進行上、引き継いで
いくという部分ですんなりと受け入れられたんじゃないでしょうか。
その過程と理由もちゃんと説明されてましたしね。
さすが、二万点超えの評価は伊達じゃなかった。
素晴らしい作品をありがとうございました。
356.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい
358.100名前が無い程度の能力削除
シリアスを読んで、いつもならほろりと来るものが
今回に限ってはこう、一段深いところがぎゅっとなるような感じ
題材はありがちな寿命ものであるにも関わらず、今まで読んだシリアス作品の中でも珠玉の一篇でした。
いやーおいしかったごちそうさまです
362.100名前が無い程度の能力削除
外も中も大雨だぜ。
365.100名前が無い程度の能力削除
『親愛なる友人、パチュリー・ノーレッジに捧ぐ』

ここで、涙腺崩壊でした。王道展開だけど良い話だった…。
次回作も楽しみにしています。
368.100名前が無い程度の能力削除
大河ドラマだな。
370.100名前が無い程度の能力削除
誰もがやっていて誰も書き切れなかった話。
しかと読ませていただきました。

完成はここにあった。
377.100名前が無い程度の能力削除
ちくしょう、感動した
寿命ネタなのに後味が悪くない、引きずるものがない。
でも余韻は残る。顔がポーっとする
名作です。よく見るしありがちなコメントだから言いたくないけど

久しぶりに泣いた
383.100名前が無い程度の能力削除
いい作品でした。
とりま100点を(ry
388.100名前が無い程度の能力削除
何故だ。画面がぼやけて文字が見えない。
家の中のパソコンの前で雨が降っているみたいだ。
389.無評価名前が無い程度の能力削除
ただ、「香霖」…?
400.100名前が無い程度の能力削除
泣いた。
小悪魔の台詞にも違う意味で泣いた。
いつまでそうやって腐ってやがんだこの根暗女あ!…か。
403.100名前が無い程度の能力削除
SS読んで初めて涙ぐんだ。
生死感は人それぞれだが、これはなかなか共感できる。
細かな描写もしっかりしてあってよかった
404.90名前が無い程度の能力削除
アリスが報われなさすぎて吹いた
いいお話でした
406.100名前が無い程度の能力削除
これは良いと、私は感じる。
多分、それでいい。

最後は泣いちゃったけど、号泣しないのは実にパチュリーらしいな。
407.100名前が無い程度の能力削除
感動しました
素晴らしい作品をありがとう
408.100名前が無い程度の能力削除
自分はただ長いだけの駄作しか作れない…
色々と参考にさせてもらいます
410.100名前が無い程度の能力削除
魔理紗が息を引き取った後のアリスの「~…………愛してる」
ここで涙が滝のように出た。
411.100名前が無い程度の能力削除
文章は読みやすく、話も非常に面白かった。
ですが100歳を超える妖怪たちにしては少し精神的に幼すぎる印象を受けました。

アリスも最後まで幼いままでしたし、後書きを読んだ後でも少し不憫だと感じましたね。
氏の作品は好きなので、これからも長編を楽しみにしてます。
413.100名前が無い程度の能力削除
お涙頂戴の王道展開。
だが、それがいい。
415.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいパチェリー視点。
417.無評価名前が無い程度の能力削除
少し小悪魔の扱いがひどすぎるのではありませんか?不快です
426.100miyamo削除
以前読ませていただきそのときは感動のあまり何も書くことが出来ませんでした。
そして今日、改めてこの作品を読み、改めて思いました。
すごい。すごすぎる。
特に最後の方でパチュリーが自分の正直な心と向きあった所なんかもう涙が止まりませんでした。
何度読み返しても涙が止まりません。
未熟ながらこの作品に感銘を受けてSSを書き始めました。
この感動をどう表現したらよいのか分からないのですが最後に一言だけ
こんなにすばらしい作品を読ませていただき本当にありがとうございました。
長文ですいません
431.100名前が無い程度の能力削除
もう言葉に出来ません…

素晴らしい作品をありがとうございました
438.100名前が無い程度の能力削除
王道過ぎて何も言えない。泣いた。
443.90名前が無い程度の能力削除
感想としては、どういう方向にもっていきたいかという著者の思惑を露骨に感じる作品でした。
しかし重要なのは、その露骨な意向にどれだけ読者を感情移入させ、その世界に引き込めるかです。
少なくとも私は、そういった著者の思惑を感じながらも、それを不快に思うことはなく、楽しく読ませていただきました。
446.100名前が無い程度の能力削除
感動しました。このパチェは凄まじいツンデレですね。
449.100名前が無い程度の能力削除
テンプレ?判子?金太郎飴?
いいじゃない、王道バンザイ
こまけえこたぁいいんだよ!

…ところで画面が歪んでるんだが、誰か原因を教えてくれないか?
451.100名前が無い程度の能力削除
久々に泣いちまった…
453.100DD51削除
テンプレだろうが、有りがちだろうが、それを格調高い物語にもっていくのは並大抵のレベルでは出来ません(私は1つの作品として見ましたが)。また、パチュリーの冷静を装いつつ考えた死生感と、死にネタに「有りがち」な、"人外に身を窶して長寿を掴む"という説得との対比は、久々に考えさせられるものが有りました。跡継ぎの3人も上手く動かせていましたし、話の内容が一貫している。これを実現出来ていて、非常にレベルが高い。最新作からかなり時間が経っているので、次作を書いてくれるとはあまり思えませんが、次作以降も期待しています。
457.100名前が無い程度の能力削除
感動を持ってけ泥棒。
459.100名前が無い程度の能力削除
王道とかありきたりとかいっても自分にはこれは書けない
間違いなくこれは作者さんのもの
466.100名前が無い程度の能力削除
よかった。
後編がもう少し長かったらもっとよかったのにと思う。
でも100てん。
467.100名前が無い程度の能力削除
これを泣かずには無理
476.100名前が無い程度の能力削除
最高でした
478.100リペヤー削除
最近、誰しもいつかは死ぬということを考えます。
考えてるうちにめちゃくちゃ鬱になるのですぐに考えるのをやめますが。

極めてリアルに「死」を描いたこの作品を、こんな感情の時に読めて本当に良かった。
死とか変化とか、自分の中で何か踏ん切りが着いたような気がします。

ありがとうございました。
心からこの言葉を送ります。



あとあんたのせいでパチュマリに目覚めただろうがどうしてくれんだこの野郎
485.100名前が無い程度の能力削除
あんたぁ、すげぇや
487.100名前が無い程度の能力削除
こんなので泣くわけないだろ!!……あれ画面がぼやけてる
491.100名前が無い程度の能力削除
いいです、とても
500.100名前が無い程度の能力削除
一言、最高の作品でした
503.100名前が無い程度の能力削除
うぅ、悲しいのは嫌いなはずなのに100点をつけなければいけないとは……
508.100名前が無い程度の能力削除
最後のほうから涙をボロボロ流しながら読んでいました。
最高の作品です。
509.100シープ削除
ホントにいい話…
515.80名前が無い程度の能力削除
良くも悪くも王道だった。
521.100名前が無い程度の能力削除
パチュリーとアリスの対比が面白かった。
レミリアもだけど人間達が死ぬ前にやれるだけのことやった方が後悔無くて立ち直るのも早い気がする。
後編の後に前編を読み返すと何ともいえない気持ちになります。咳ひとつで心情を表せてしまうのは凄いなぁ。
霊夢咲夜、そしてパチュリーといった鈍感どもが可愛くてしょうがない。

529.100Admiral削除
>「それでいいでしょう? この泥棒魔法使い」
奴はとんでもないモノを盗んでいきました。

容量的には中編くらいなのに、密度の濃さに圧倒されました。
人間3人の死を正面から描いた意欲作、圧巻です。
あんたは最高だ!
533.100非現実世界に棲む者削除
何故だろう。
私が嫌いなネタなのに何故こんなにも心があったかいのだろうか。
もうなにもいえない...
546.100名前が無い程度の能力削除
ストーリーは彼女達が作るんです。
展開とか無粋な言葉はいりません。彼女と彼女が生涯を懸けて書き上げた記憶の本は大変に素晴らしい物でした。
作者様ありがとう。
547.100名前が無い程度の能力削除
 それも良いのではないかと、私は人間をやめるのもいいかもしれないと、その友人と共にいる時だけは考えてしまったことがあるのだ。

よくもまあこんな人を泣かせる表現思いつくもんだ
こっから最後まで涙止まらなかった
553.100名前がない程度の能力削除
何処が明るいだ
泣かされたじゃないか
555.100名前が無い程度の能力削除
この作品に100点をいれ忘れるなど私としたことが
556.100名前が無い程度の能力削除
すごい。とても面白かったです。ありがとうございます。
557.100UTABITO削除
どこまでも客観的に、自分を通してきたパチュリーが、本当は誰よりも脆くて、魔理沙をどうしようもなく慕っている、前編では見えない形で書かれていたものが後編であふれ出ていたのが胸を打ちました。
読み終わった後には「はー…」と思わず感嘆の息が出ていました。もの書きもしている立場として、こんな作品、書けるようになりたいです