魂魄妖夢は悩んでいた。
今一度、あの主に尽くすべきか、必死で悩んでいた。
「キライ!魔理沙なんか大キライ!あの女のところに行けばいいんだわ!」
「違うんだ!誤解なんだアリス!あの女と私は何の関係もないんだ!」
今月の家計簿を見てみる。そこは赤い文字だらけであった。
普段の生活の中で、食べ物という食べ物が全て主のブラックホールの中に入っていく。
ためしに計算してみたら、エンゲル係数が70を超えていた。
「うそつきっ、魔理沙のうそつきっ、じゃあその首筋にあるマークは何?」
「あ、う、こ、これは」
それもそうかもしれない。
主はといえば、起きている間は四六時中何かを食べている。口に物が入っていないことがないぐらいだ。あれだけ食べてよく太らないものだと感心する。亡霊というものは元々、そんなものなのかもしれないが。
「違うんだ、アリス。これは階段で転んでぶつけてできたものなんだ。ほ、本当だぜ、信じてくれ」
「信じられない、信じられないわ、貴方のことなんて」
それはどうでもよいとして。
問題は、これからこの家計をどうすればよいかということである。
食費を減らそうにも、一体どこから減らすべきか。どこをどう減らせばよいのだろうか。
「し、仕方なかったんだ。あいつが水が飲みたいっていうから」
「そんなの関係ないじゃない、この浮気者!」
いっそのこと、食事という食事をすべてスルメにしてしまうのはどうだろうか。そうすればたくさんかまなければいけないから、空腹を感じることも少なくなる筈だ。
「だから、水を飲ませようと」
「それで3時間出てこなかったわよね。しかも夜中の2時だったわ」
「そ、それは」
「どうせ3時間ずっとにゃんにゃんしてたんでしょ。私にはわかるわ。あの女の匂いがするもの」
ああそうだ、アメ玉でも良いかもしれない。多分、主はお腹が空いているのではなく、口に物を入れていたいだけだ。
半径5センチメートルのアメ玉を口の中に突っ込めば、それだけで一時間はもつだろう。
「もう知らないっ、魔理沙なんて、魔理沙なんて、一生洋食食べてればいいんだわ」
「それは嫌だぜ、味噌汁がないと死んじゃうぜ」
よし、そうと決まれば里に買いに行こう。
今日から幽々子様の食事は、するめと、半径5センチメートルのアメ玉だ。文句は言わせない。
今まで贅沢してもらっていた分、付けが回ってきたということで、納得してもらうことにしよう。
「もうなめこ汁作ってあげないんだからねっ」
「そ、それは困るぜアリス」
「ならどうして、どうしてあの女のところへ行ったのよ」
「だから、アイツが水が飲みたいっていうから、つい」
「言い訳なんか聞きたくないわ。何が水よ、バカじゃないの!?」
魂魄妖夢は、魔法の森のベンチから立って、すぐさま人間の里へと飛んで行った。
人間の里・駄菓子屋。
大小色とりどりのアメ玉が置いてある。
妖夢はそれらを鷲掴みにし、一気に自分の籠へと入れた。
「おや、妖夢じゃないか。そんなにアメを買う気なのか」
声をかけられ、振り返る。
そこに居たのは9本の尻尾を持った妖怪、八雲藍だった。
「これから食事は全部これになります」
「マジでっ」
「本気です。家計がギリギリなんです」
驚く藍をよそに、棚にあるあめというあめを、自分の籠の中にぶち込んでいく。
普段の妖夢とはおおよそかけ離れた、乱暴な行動だった。
「いやまあ、確かにお前の苦労はわかるが、それはちょっとなあ」
「もう決めたことですから。悪いのはあっちなんですから」
そう言いながら、アメ玉をぶちこんでいく妖夢は、ものすごく怒っているように見えた。
相当気が立っているらしい。
「まあ待て、行動に移る前に人の話を聞くというのはどうだ。誰にも相談していないんじゃないか」
藍の言葉を聞きつつも、妖夢は手を止めない。
「今のお前は大分気が立っているようだが、そんなときは碌な行動を取らないことが多い。悪いことは言わないから、誰かに相談してみるのはどうだろうか」
ばさり、ばさりとアメ玉の入った袋を自分の籠に入れていく。
「なんなら、私が相談に乗るぞ」
ぴたり。
藍の言葉に、妖夢は手を止める。
「あなたに」
「なんだ」
「あなたに私の苦労の何がわかるって言うんです」
声を低くして、妖夢は続ける。
「目が覚めたらお腹すいた、ちょっと動けばお腹すいた。いくら食べてもお腹すいたお腹すいた。もういい加減にして欲しいんです。エンゲル係数がついに七割を超えました。ウチの家計の7割が食費に消えているんですよ?70パーセントですよ?挙句の果てに、私の魂魄まで食べる始末……おかげで魂魄が半分になって、私の生きる気力も半分になりました」
「苦労しているんだな、お前」
俯いて喋る妖夢に、藍はそっと手を置く。
「別に、いつものことです」
「そうか」
「いつものことなんです」
いままでよほどストレスを溜めていたのか、生きる気力が半分になっているせいなのか、少しだけ涙腺が緩んでしまう妖夢であった。
「しかし、お前のところも、大変なんだな」
「ええ、もうあきらめていますが」
「本人には言ったのか?」
「いえ」
「むう、一度よく話し合うべきだと思うのだが」
「……」
「まあ、わからなくもないよ。私だって、紫様に進言するのは怖いからな。例えばそう……ばばあとか」
ちょっぴり険しい顔をして、ばばあと呟く藍であった。
その表情には、日々の憎しみが込められているような気がして、妖夢はちょっぴり震えた。
「まあ、私にも色々あるんだよ。そんなに怯えないでくれ」
「は、はあ」
式とか従者とかいうものは、大概そんなものなのかも知れない。
以前、永遠亭の兎とも、そんな愚痴を言い合った気がする。
どうも兎は、よくぱんつを盗撮されるらしい。
お互い苦労するね、と照り焼きチキンの屋台で夜まで飲み明かしたものだ。
「色々あるよな」
「ありますね」
「お互い、苦労するな」
「そうですね」
籠を持ったまま、うんうんと慰めあう二人であった。
「それで、本当にこんなに買う気なのか」
「……」
「少し頭も冷えただろう」
「ええ、まあ」
「なんなら今から家に来ないか?話ならそこでじっくり聞けるだろうし、紫様に相談もできるからな」
藍の言葉に、妖夢は目を丸くする。
「ゆ、紫様ですか」
「ああ、普段から紫様は幽々子様とも親しいからな」
「それは」
「紫様だったら、良い解決策を見つけていただけるかもしれない」
「そうかもしれませんが」
「まあ、寝ていなければの話だが……たたき起こせばよいわけだし」
「そんなことできませんよ」
「いいんだよ、たたき起こして。たたき起こさなければ、夜まで寝ているからな」
「……」
「折角ここで出会ったんだ。良い提案だと思うのだがなあ」
うんうんとうなずく藍に、戸惑う妖夢であった。
「どうせなら、何か食べて行くといい。丁度これから夕飯を作ろうと思っていたところだしな」
「そんな、悪いですよ」
「朝から何も食べてないんだろう」
そんなことはない、そう言おうと思った瞬間、ぐるぐるぐると、妖夢のお腹が音を立てた。
「図星だな」
「う」
ぐるぐるぐるぐる。
そういえば、出て行ったのが朝で、その時から何も食べていなかったことを思い出した。
真っ赤になって腹を抱えこむ。しかし、お腹が空いていることはバレバレだった。
「支度は手伝ってもらうが、いいな」
「え、ちょ、藍さん」
「なあに、遠慮することはないさ。私のほうこそ、お前には沢山相談してきているわけだしな。悩みが解決したら、そのときはご馳走してもらうことにするよ」
「ほ、ほんとうに?」
「そうと決まれば、早く行こう。私もお腹が空いているんだ」
藍が妖夢の手を引く。そして駄菓子屋に籠を置いたまま、ふわりと空に舞い上がる。
「たまにはいいじゃないか」
笑顔で言う藍に、妖夢はなにも返す事ができなかった。
強く手を握られる。
これはもう、流れに身を任せるしかなさそうだった。
こうして妖夢は迷い家にお邪魔することになった。
幻想郷のどこかに存在している迷い家。
妖夢自身、何回かお邪魔したことがあるが、相変わらず、白玉楼並に広い。
そして、家の中に入れば見たことのないものがたくさん置いてある。
黒い大きな箱の中で人が動いていたり、壁の上に取り付けてある白い物体からやけに涼しい風が吹いてきたり。
それも、手のひらに乗るような四角い物体の一部を押すだけで、それらが動いたり動かなかったり。
本当に不思議な家だと思う。これも全て紫様の力なのだろうか。
食虫植物の入ったつぼを観察しながら、妖夢はそんなことを思った。
「さあ、まず野菜を洗おう。皮をむいてくれ、妖夢」
「は、はい」
食虫植物に虫が飲み込まれるところを見ていたせいで、少し反応が遅くなってしまった。
慌てて台所の方へ向かう。そこには割烹着姿の藍がいた。
髪を後ろで縛り、急いで手を洗う。ジャージャーと水が冷たくて気持ちが良い。
言われたとおり、小刀を取り出し、丁寧に芋の皮をむいていく。
「上手いものだなあ」
「そんな事ないですよ」
「いやいや。わたしはどうもね。紫様が外の世界から便利な道具を持ってきてしまうからね。最近腕が落ちてしまって」
皮をむいた野菜をトントンと包丁で切る。一見するとその手ほどきは、一流の料理人のようだ。
小指ほどの幅に、綺麗に野菜が切られていく。
「ああそうだ、その籠のにある野菜の中で、食べられないものはあるか?」
「いいえ、野菜ならなんでも食べられます」
「そうか、ならいいんだ」
鍋に切った野菜を入れ、その中に水を入れる。かまどに薪をくべて、火をつける。パチパチと燃える火を見ていたら、煙が鼻に入り、げほりとむせた。
そういえば、今幽々子様はどうしているのだろうか。
怒って出て行った手前、食事の用意など何もしていない。
もうすぐ日が暮れる。出て行ったのは朝方だったから、かれこれもう半日になる。
今頃お腹をすかしているんじゃないだろうか。自分で何かを作ることはできるのだろうか。
幽々子様の料理は見た事がないからわからない。
火がパチパチと燃えている。煙が外へどんどん昇っていく。
その様子を、妖夢はぼーっと見ていた。
「心配か?」
「え」
藍に声を掛けられ、すっとんきょうな声を出してしまう。
「はは、見ていればわかるよ。幽々子様が心配なのだろう」
「い、いえそんなことは」
「誤魔化さなくてもわかるよ。私がそうなんだから」
笑いながら、かまどに新しい薪をくべる藍であった。
「藍さんも?」
「ああ。私だって、何度も怒ったし、ケンカもしたよ」
「はあ」
「夕方おきて、夜中まで深夜番組を見ながらせんべいをかじり、橙にまで見せようしたときとか。18禁雑誌を見せようとして、雪の中に埋めようとしたこととか。それで面白がっているから性質が悪いんだ。この間なんて、17才の放課後なんていうビデオをルーミア達に見せようとしたんだぞ。もちろん叱ったがな。見ようとした本人たち含めて」
「・・・・・・」
「それでもな、一週間ほど口を聞かないでいると、心配になってくるものなんだよ。なんやかんや言ったって、一緒に暮らしてきた家族みたいなものだからな」
味噌をおたまにすくい、少しずつかき混ぜながら鍋の中に入れていく。そんな作業をしながら、藍は話を進める。
「お前もそうなんだろう、妖夢」
「え」
「なんやかんや言って、幽々子様のおいしそうに食べ物を食べる姿が好きなんだろう」
そう言われて、妖夢はいいえと返すことが出来なかった。
確かに家計はかつかつだし、お腹が空いたとしょっちゅう言われる。
部屋には常におやつが常備してあるし、食べながら寝てしまうこともしばしばある。
時には自分の分までうっかり食べられてしまい、食べられなかったことだってある。
それでも。
それでも、自分の作った料理を食べて、幽々子様がおいしいと言う。とても幸せそうに。
そんな姿を見ていると、何もかもどうでも良くなってくる。
自分の分まで食べられたこととか、一日中台所に立っていたこととか。パンが食べたいと言われ幻想郷中を駆けずり回って、帰ってきた頃にはご飯が食べたいと言われたこととか。
あの人の笑顔を見ていると、なにもかもどうでも良くなってくるのだった。
「ほら」
藍にお椀を渡される。中に入っているのは豚汁だった。
大根に、人参に、豆腐に、ねぎに、こんにゃくに。熱い湯気からは味噌の匂いがする。
「熱いから、気をつけろよ」
「は、はい」
ふうふうと、お椀の中身を冷ましながら、少し口をつける。熱かったが、それにも構わず一口飲む。
……おいしい。
「どうだ、口に合うか?」
「はい、おいしいです」
「それはよかった」
朝から何も食べていなかったおかげで、腹の中にすっとしみこんでくる。
普段自分が作っているものとは少し味が違うが、おいしいことに変わりはない。
よほどお腹が空いていたのだろう。気が付けば、おわんの中身はすっからかんだった。
妖夢はあっという間に一杯食べてしまった。
「もう一杯いるか?なんならご飯もどうだ」
「いえ、そんな、悪いですよ」
「そう言うな。量だけなら沢山あるからな。沢山食べていくといい」
そう言って、藍はさらに豚汁をつぐ。
自分のものと、妖夢のもの、そして他にもう一つだけ。
ご飯をついでくれないか、と言われたので、妖夢はそっちを手伝うこととなった。
おひつの中にはホカホカのご飯がたんまり炊いてあった。
既に一杯食べたはずなのに、またお腹が鳴りそうだった。
お盆の上に全部乗せ、二人は茶の間の方へ持っていった。
「すみません、こんなに沢山」
「いいんだよ。そのかわり、今度はお前の料理を私にご馳走してくれ」
「はい、是非」
正直、現在の経済状況では、白玉楼に誰かを招待してご馳走するなどということは難しいが、今の問題が解決したら、是非手料理をご馳走したい。
妖夢はそう思った。
「ああそうだ、紫様を呼んできてくれないか? 夕食の時間だと。これから少し、おしんことかを作らなきゃいけないんだ。寝ていたら、鼻をつまんでいいぞ」
「は、はい」
「紫様の部屋は、この廊下をまっすぐ行ったところにあるから、よろしく頼む」
「わかりました」
さすがに鼻をつまむことは怖くて出来ないなと思いつつ、藍の言うとおり、紫を起こしに行くことにする妖夢であった。
「うわぁ」
紫の部屋に入り、妖夢はまず驚きの声を上げた。なぜなら部屋中が真ッピンク。ベッドからカーテンから全てにおいてピンク。クマのぬいぐるみがいくつもおいてあり、そこはかとなく少女臭がする。
……紫様ってこんな方だったっけ。
妖夢はしばし頭を抱えた。
「うん、それはあなたが悪いんじゃないかしらー」
ベッドの方から紫の声がした。起きているのならば話は早い。鼻をつまんで起こすだなんてこと、死んでもやりたくないことである。
「うん、うん。でもねえ、そこはちゃんと勇気出さなきゃ」
「あの、紫様」
「大丈夫よぉ、骨なら拾ってあげるから。え、何怖い?そりゃそうよ、誰だって」
「紫様」
紫を起こそうと、妖夢はベッドに近付く。布団から顔だけ出している紫に声をかける。
「あ、ちょっと待ってね、今藍が……何」
「ひいっ」
ものすごい形相で睨まれ、思わずベッドから離れてしまう。聞いたこともないような、低い声だった。
「あ、あれ、藍じゃない?」
「すいません、すいませんでしたっ」
出口の方に走り、扉を開けようとする。しかし、外に出ることができなかった。
「ごめんねえ、今取り込んでて。また後で電話するわぁ。……ふぅ」
「ゆ、紫様……」
「妖夢じゃないの、どうしたの?」
「紫様こそ」
なぜなら、目の前には紫が、リボン以外何も身につけていない紫がそこにいたからだ。
驚き半分、怖さ半分、刺激の強さ200パーセント。
幽々子様にも負けず劣らずのナイスバデー。二つの山がプリンのようにプルプルいっている。
なんでリボンまでピンクなんだろうか。どこかへプレゼントする気なのだろうか。
妖夢の思考までピンクに染まりつつあった。
「なんで裸なんですか」
「え、寝るときって、普通裸じゃないの?」
この日、妖夢は紫の認識を改めた。
「そういうことだったのね」
ちゃぶ台の上には、3人分の豚汁と、ご飯と、お漬物と、お茶がおいてある。
ちなみに橙はというと、妖怪の山の宴会に参加してくると言って、藍の反対を押し切って出て行ってしまったという。軽く反抗期らしい。
「私からも言っておくわ。食べすぎは体に良くないわよって」
「はい、ありがとうございます」
現在紫はきちんと普段の格好をしている。
いくらなんでも、お客様がいるのに裸でご飯なんか食べないわよ、と本人が言っていた。
少しだけほっとした妖夢であった。
「それにしても、ひどいわねえ、これ。こんなに食費に消えているの?7割食費じゃない」
「ええ、まあ」
白玉楼の家計簿を見つつ、紫は豚汁をすする。
対する妖夢は、何を言われるか内心ビクビクしていた。
「これじゃあ、ケンカになるのも無理はないわね」
「い、いえ。私も大人気なかったっていうか」
「そうね。こうなる前に、幽々子と話をつけておくべきだったわね」
「うっ」
痛いところを突かれたな、と妖夢は思った。
確かに自分は家計を全て自分で抱え込み、当の本人に相談することを怠っていた。
食べ物のことを進言するのが怖いということもあった。
そして溜まりに溜まった不満が、自分の魂魄を食べられたことにより爆発してしまったのだ。
「まあ、いいわ。当分は家からお金出してあげる。ただし、最低限だけど」
「えっ、そ、そんなこと」
「あなたじゃなくて、幽々子によ。これでまた一つ貸しが出来たわね。ふふっ」
家計を見ながらそう言う紫に、背筋が寒くなる妖夢であった。
まあ、助かったことには助かったのだが。
ここ最近、赤字が酷かったので、次の月の食事が本当にするめとアメ玉になるところであった。
「ちゃんと仲直りするのよ」
「は、はい。ありがとうございます」
ともあれ、これで帰って幽々子様に相談して仲直りすれば、万事解決だ。
本当に仲直りできるかどうかは、まだわからないけれど。
しかし、これだけ迷惑をかけてしまったのだ。仲直りしない訳にはいかない。
がんばって自分の気持ちをぶつけよう。そうすればきっとわかってくださるだろう。
「頑張るのよ。二人のことは、二人にしか解決できないんだから」
「はい」
「藍、おかわり」
あっさりご飯を一杯平らげた紫が、おわんを差し出した。
「妖夢はどうだ」
「いや、私は」
「遠慮するな。たくさん食べていくといい」
そう言われ、お椀に豚汁をもう一杯注がれる。ご飯ももう一杯。
ほかほかしているそれを、一生懸命食べる。
そろそろ帰らなければいけないな、と思いながら。
「そんなに急いで食べることはないのに」
「う」
「紫様、妖夢は心配なのですよ、幽々子様のことが。心配でしょうがないんですよ」
藍に指摘され、言葉に詰まってしまう妖夢であった。
紫はニコニコしながらその様子を見ている。
「そんなに急いでかきこまなくても、隙間使えば一秒で家につけるわよ」
「よくかんで食べたほうが体にいいんだぞ」
「す、すいません」
自分の考えていることをあっさり当てられて、赤くなる。
やはり人生経験が長いせいだろうか。自分が未熟なだけだろうか。
確かに、折角作ってもらった食べ物を、粗末にしてしまうのも勿体ないかもしれない。
「幽々子にはおにぎりでも作って持っていけばいいわ。藍」
「かしこまりました」
「あ、それなら私が」
「妖夢は座ってなさいな。客なんだから」
紫に制され、仕方なくその場に座る。
たまにはゆっくり食べていきなさいと、紫に言われ、はいとだけ返す。
藍はおひつにあるご飯を握り、おにぎりを作る。
普通の3倍の大きさのおにぎりだった。
流石は紫様と藍様、よく幽々子様のことをよくわかっていらっしゃる。
豚汁をすすりながら、妖夢はそう思った。
「今日はそれで我慢してもらって、明日からはちゃんと貴方が作るのよ。あ、量は考えなさいね」
「すみません、なんだか至れり尽くせりで」
「いいのよ、幽々子のことだし。しかし、こんなに食べて、あの子は大丈夫なのかしら」
「大丈夫とは?」
「いいえ、私ならこんなに食べないわねって話だから。こんなに沢山食べるなんて、貴方の料理がよほどおいしいのね。今度食べてみたいわあ」
「は、はい是非」
なんだか褒められているようで、顔が赤くなってしまう。
「――昔は全然食べなかったのにね」
「へ?」
「なんでもないわ。気にしないで」
ぼそりと紫が放った言葉を、妖夢は上手く聞き取ることができなかった。
「それより、食事を全部アメ玉なんかにしたら、幽々子泣くわよ」
「う、それは」
「ちゃんと心の篭った料理を作ってあげなさいな。そうすれば量が少なくても、幽々子は許してくれるわよ」
「そう……ですかね」
「そうよ。あの子だって、ただ食べていればいいってもんじゃないわ。おいしいものには目がないもの」
「……」
「だから、ちゃんとおいしい料理をつくってあげなさいな」
「はい」
「紫様、これぐらいでよいですか」
話している途中、藍が紫に声をかける。
お盆には大きなおにぎりが3つ、作ってあった。
ふりかけがかかっているらしい。すこし茶色がかっている。
まわりには海苔がちゃんと巻いてある。
「あらおいしそうねえ」
「紫様も食べますか」
「いいえ、幽々子の食事を取ったら、私殺されちゃうわ」
紫は笑ってそう言うが、それもあながち冗談ではないかもしれないと、口には出さずに思う妖夢であった。
「ついでに漬物と、干し魚だ。焼いて食べると良い」
お盆にのっているものを、丁寧に笹の葉の中に詰めていく。全部食べるとなると、相当な量である。
布の袋に入れて、それを渡される。
「ありがとうございます」
ぺこり、と一つ礼をする。
「いいさ、これでちゃんと仲直りするんだぞ」
「はい」
袋の中身は、ほんの少し温かかった。
それからほんの少しお茶を飲み、妖夢は白玉楼に帰ることにした。
本当は、お礼に何かを作りたいところだったが、それよりも早く行った方がよいと、藍に言われたからだ。
片付けも手伝おうとしたが、あっさり断られてしまった。
それに、幽々子様が心配だったというのもあった。
なんやかんやいっても、家族なんだから、という藍の言葉が、頭をよぎった。
「この恩は、必ず返します」
「恩ってほどのことじゃないよ」
「いいえ、藍さんに止められなかったら、私はアメ玉を沢山買うところでした。本当に、感謝しています」
「ははは、アレには全く驚いたよ」
「すいません……」
昼間の行動を思い出し、顔を赤くする妖夢であった。
確かに、あの行動は、完全に頭に血が上った状態だったに違いない。
数少ない家計の残りを無駄にするところだった。
「本当はもうちょっとおしゃべりしたかったんだけどね。しょうがないわね。ここから先が白玉楼よ」
紫が隙間を開く。向こう側には、いつもの縁側が広がっていた。
辺りはすっかり暗い。
出て行ってから大分、時間が経っていたみたいだった。
帰ったら、怒られるだろうか。呆れられるだろうか。
いまの自分にはわからない。
けれど、帰ったらまず、こめんなさいと言おうと思う。
「幽々子、お腹すかして待っているわよ」
「そうですね」
「行ってあげなさい」
「はい、紫様、藍様」
隙間の方へ一歩近付き、後ろを振り返る。
「今日はありがとうございました」
ぺこりと頭を下げて、妖夢は白玉楼の縁側に歩いていった。
「眠い」
「いつも寝ているじゃないですか」
「そうだけどぉ」
妖夢が帰った後の八雲家、居間。
紫は突っ伏していた。
そんな紫を見ながら、藍はやれやれ、客がいなくなったと思ったらこれだ、と、ため息をついた。
「寝ているところをたたき起こされたのよぉ。幽々子から電話がくるから、何事かと思って」
紫はふところ……いや胸の谷間から、手の平サイズのギラギラした四角いものを取り出す。
それを見て、藍はうわぁと思った。
「紫様」
「なあに」
「いい加減デコ電やめましょうよ、年柄にもない……ちょっ、なにするんですかっ、熱いじゃないですかっ」
「私はまだ17歳よ」
あついお茶の入った湯のみをおでこに当てられ、藍は後ずさった。
「いいじゃない、可愛いんだもの」
「は、はあ」
紫はギラギラと光った四角いものをパカパカと開けたり閉めたりしている。
少し気に障ったようだ。
これ以上言ったら殺される、藍はそう思った。
「そういえば、紫様」
「なによ。これ以上言ったらお茶かけるわよ」
「い、いえ、とてもお似合いですとも」
「本当かしら」
「本当ですって」
これ以上この話題は命にかかわることだと、藍は思った。
しかし、それ以上に、一つだけ聞きたいことがあったのだ。
「それよりも」
「なに」
「さっきの言葉の意味は何だったのですか」
妖夢は聞き取ることができなかったが、藍にはしっかり聞こえていた。
紫が懐かしそうに漏らした言葉を。
藍の質問に、少しだけ体を動かす紫だった。
「あら、聞いていたのね。幽々子が全然物を食べなかったってこと」
紫はギラギラした……もといデコ電をパタリと閉めて、再び胸の隙間に入れた。
そしてお茶を一口飲み、ふうと一息ついた。
「ききたい?」
「い、いえ別に」
「いいわ、聞かせてあげる。折角だし。大したことじゃないのよ」
「そうなのですか」
藍は側に座って、黙って紫の話を聞くことにした。
「あの子はね、生前全く物を食べなかったのよ。食べようとしなかった。あえてそんな道を選んでいた。見ていて辛いぐらいに。その理由は、あなたの察しのとおりよ」
はるか昔のことだった。
西行妖がまだ咲いていた頃。
人を死に追いやる能力を持った少女は、自らの命を絶った。
その姿を、紫は見ていた。
死ぬ間際までも。死んでからも。
「だからね、私は嬉しいの。おいしいと言ってあの子が物を食べるようになったことが」
その頃の面影は、今でも残っている。
亡霊となった彼女は、まさにあの頃の少女そのものだった。
けれども、あの頃少女にまとわりついていた影は、今はもうない。
それどころか、普通の生きている人間よりも、楽しそうに生きている。
「幽霊になったとしても。私は嬉しいの」
紫は思う。
そんな日常が、彼女が望んだ日常が、誰も彼女を傷つけることのない日常が。
ようやく今、ここにあるのではないかと。
自分のことは完全に忘れてしまっていたけれど。
それよりも、彼女がずっと自然に笑っていてくれる。
そのことが、嬉しかった。
「そう、ですか」
「そう、ただそれだけ。……なんだか湿っぽくなっちゃったわね。やめましょう、この話は」
ただ、それだけのことである。
「二人、仲直りできるといいですね」
「あの様子なら、きっと大丈夫よ」
「そうですね」
「あなたも早く仲直りしなさいな。こっちがハラハラするわ」
「……耳が痛いお言葉で」
きっと二人は大丈夫だろう。
心配をする必要もない。
そんなことよりも、自分の式と、式の式の関係のほうが心配なぐらいだ。
17歳の放課後を見たっていい年だと思うのに、この式は頭が固い。
ともあれ、全ては本人たち次第である。
電話でたたき起こされた分、早く寝たいと紫は思った。
いや、きっとまたかかってくるだろう。
仲直りしたって。
白玉楼に戻ったとき、灯りが全て消えていることにまずびっくりした。
暗い。
ものすごく暗い。
それもそのはず、いつも灯りを付けるのは妖夢自身なのだから。それにしたって暗すぎることは確かだが。
幽々子様は灯りをつけなかったのだろうか。辺りはもうすっかり夜で、星まで出ている。
早く幽々子様を探さなくてはいけないと、妖夢は蝋燭片手に中を歩いた。
「ゆ、幽々子様ー」
廊下に灯りをつけながら、少しずつ進んでいく。
白玉楼の廊下は長い。二人で住むには大きすぎる屋敷だ。
客室が沢山あるが、利用する者は見たことがない。
とりあえず、幽々子が居そうなところ、幽々子の部屋か、台所、居間辺りを見て回ることにした。
「幽々子様ー」
そこは誰も居なかった。
いつものように、お菓子とお茶が机においてあるだけだった。
台所にも居ない、居間にもいない。
だとすれば一体どこにいるのだろう。てっきりもう寝ているとばかり思っていたのに。
「どこへ行ったんですかー、話があるので出てきてください」
大声で呼んでも、屋敷の中はしいんと静まったまま。
東西南北、どの部屋を見ても見当たらない。
ためしに、客室、居間、隅々まで見て回った。四半刻ほどかかってしまった。
しかし、人の気配はない。
静まり返った屋敷は、なんとなく不気味にさえ感じられる。
「幽々子様ー」
返事はない。
もしかして、お腹が空きすぎてどこかで野垂れ死にしているんじゃないだろうか。
自分と入れ違いで、迷い家に行っているとか。
自分が行っている間も影に潜んで見ていたかもしれない。あの人ならやりかねない。
けれど、食糧を探してどこか別の場所に行ってしまったのかもしれない。
「外行ったのかなあ」
だとすれば、仕方がない。
外とは行っても、そんなに遠くには行っていないはずだ。
自分の部屋に戻り、荷物を置いて探すことにしよう。
妖夢は自分の部屋へと歩いていった。
妖夢の部屋は、幽々子とは少し離れたところにある。
具体的に言えば、水場が近い。
なぜここにしたかというと、掃除とか、洗濯とかがしやすいからだ。
台所には少し遠いが、そこは気合いである。
灯りをともして、部屋の前にやってくる。
なにやら奇妙な音がした。
「うっ、ひっ」
壁に耳をやると、声が聞こえる。
そういえば、絶対ここには来ないだろうと踏んで、見ていなかったのだった。
「うっ、ぐずっ」
聞きなれた声。
だけど、泣き声はあまり聞いたことがなかった気がする。
いつもふざけて笑っている声しか聞いたことがない。それか、ふわふわと笑っている声しか。
もしかしたら、ずっとここに居たのだろうか。
扉に手をかけ、ガラリと戸を開ける。一見誰もいないように見えた。
けれども暗がりに隠れて、彼女はそこにいた。
部屋の隅っこに座って、膝を抱えている。
その人物は間違いなく、幽々子本人だった。
「えっと」
小さくなって座っている幽々子を見て、妖夢はどうすればいいかわからなくなる。
とりあえず、側に座って話しかけることにした。
「幽々子様」
「うっ、うっ」
「帰ってきましたよ、幽々子様」
「……妖夢?」
ゆさゆさを肩をゆすると、ようやく顔を上げてくれる。
目から鼻から色んなものが出てきて、ぐっしゃぐしゃだった。
手には先ほど紫が持っていたような、四角いものを持っている。しかし、違うのはそれが白いということである。
この人は一体いつからここにいたのだろうか。
ケンカをしたのは早朝だったはずだ。
もしかして、それからずっとここにいたのだとしたら。
妖夢の心がちくりと痛んだ。
「すいません、あのときはカッとなってしまって。これ、おみやげ」
「うわあああんっ、妖夢ぅっ!」
急に抱きつかれ、妖夢はバランスを崩す。そのまま畳の上に倒れこむ。
端から見れば、幽々子が妖夢をおそっているように見えるが、この際そんなことはどうでも良い。
「おっ、うっ、お腹っ、えぐっ、すいっ、うっ」
ぐるぐるぐると、幽々子のお腹が大きな音を立てた。
謝りたい気持ちが山々だったが、それよりもまず腹ごしらえのほうが先だろう。
抱きつかれた体制のまま、袋の中からおにぎりを一個出す。
とんでもない速さで奪われた。
「うぐっ、えぐっ、ほふぅ」
「食べながら喋らないで下さいよ。米粒飛んでいるじゃないですか」
「ほへんははい」
「いや、もう気にしていないので、それ食べることに集中してください」
幽々子の下からなんとか抜け出し、隣に座る。持ってきたお土産は、あっという間に消えていく。
よほどお腹が空いていたのだろう。
それにしても、おおよそ18時間ぶりに見る、幽々子様の幸せそうな顔。
やっぱり好きだな、と思う妖夢であった。
部屋の中にはむしゃむしゃとおにぎりを食べる音がする。
全くよい食べっぷりである。
3個目のおにぎりを手にしたところで、幽々子は手を止めた。
食べるのをやめるなんて、珍しいなと妖夢は思った。
「ごめんなさい、妖夢」
「何のことですか」
「貴方の魂魄」
「ああ、途中で藍さんに出会って、少しご馳走になったので、ちゃんと回復しましたよ」
「……」
「いいから、どうぞ召し上がってください。お茶持ってきますから」
いつもなら、貴方だけご馳走食べるなんてずるいわ、と言われるところであったが、今日に限ってそれはなかった。
余程こたえたのだろうか。
いつもよりもやけにしおらしい幽々子に、なんだか調子が狂ってしまう妖夢であった。
台所に行き、お茶を淹れる。
それを自分の部屋まで持っていく。
扉を開けたときには、笹の葉の中身はすっからかんになっていた。流石だな、と妖夢は思った。
「……」
「……」
幽々子はしょんぼりと正座していた。妖夢は何を言ったらよいかわからなかった。
とりあえず、淹れたお茶を差し出すことにした。
「お茶です」
「……」
「とりあえず、飲んでください。あれだけ一気に食べたのですから、体に悪いです」
「……そうね」
ふう、と重いため息をつく幽々子に、調子が狂ってしまう妖夢であった。
……反省は、しているみたいである。
迷い家で言われたとおり、きちんと話し合わなければいけない。
ここで、自分の意見をきっちり言わなくてはいけない。
妖夢は口を開くことにした。
「幽々子様、会計のことで相談があるんです」
「……全部、アメ玉になるのよね」
「いえ、そうじゃないです。今までよりも、量が少なくなっちゃうとは思います」
「……」
「それでもよいですか?」
「……え?」
妖夢の言葉に、目を丸くする幽々子だった。
その様子に、妖夢自身はびっくりした。
「いやだから」
「アメ玉じゃないの?」
「これからもちゃんと作りますよ、飴玉なんかじゃなくて。第一どっから聞いたんですか、飴玉なんて話。ただ、量は今までの半分ぐらいになっちゃうと思うんですが」
「……」
「やっぱり、その、私の料理をおいしいそうに食べている幽々子様が好きなんで……」
最後のほうはなんとなく気恥ずかしくなってしまい、声が小さくなってしまう。
これでも納得してくれるだろうか。
もしもしてくれなかったとしたら、また話せば良いだけなのであるが。
「だから、これからも、ちゃんと作りま……わっ、ちょ、ゆゆこさまっ!」
全て言うよりも早く、幽々子は妖夢に抱きついた。身動きが取れなくて固まってしまう。
一体何だろうかとびっくりした。
幽々子は肩をふるわせてうーうー泣いていた。よかった、よかったあと言いながら。そんなに泣くほどアメ玉が嫌だったのだろうかと、妖夢は思った。
「でも、半分ですよ、今までの」
「うん、うん」
「いいんですね?」
「うん。妖夢の料理ならなんでもいい」
耳元でそう言われると、なんだか気恥ずかしくなってしまう。
そんなに自分の料理が愛されているなんて思ってもみなかった。
今までの半分にするとなると、幽々子にとってはきついかもしれない。
けれどもそれでも、自分の料理ならばよいと言ってくれている。
よかった。
ちゃんと話せばわかってくれるじゃないか。
「幽々子様」
「う、ぐず、なに?」
「ごめんなさい、勝手に飛び出して。こんな時間までほっといてしまって」
抱きつかれながら、耳元で謝る。
「いいの、私が悪かったんだから。家計が火の車だったなんて知らなかった、貴方には無理させたわ」
「私もきちんと言うべきでした。でも、私のせいでもあるんですよ。幽々子様があまりにおいしそうに食べているものだから」
「妖夢……」
「さて、この話はこれで終わりにしましょう。今日はもう遅いですし。家計のことも、解決しましたので」
妖夢は幽々子を引き離す。
そして互いに向き直る。
ぐるぐるぐる。
お腹が鳴る音がした。
「妖夢」
「なんですか」
「……お腹空いてきた」
「私もです」
どうやら、明日の朝ごはんよりも、今日の夜食の方が先らしい。
「何がいいですか?あるものでよければ、いくらでも作りますよ」
「でも、今半分って」
「今日の分は、まだ一個も作っていないから平気です。それに、私もお腹空いていますから」
妖夢が笑うと、幽々子もつられてえへへ、と笑う。
久しぶりに見る、幽々子の笑顔に、ほっとする妖夢だった。
たった一日だけなのに、とても久しぶりに思えた。
「とにかく、何がいいですか。できる範囲であればなんでも作りますよ」
「まかせるわ」
「へっ?」
「なんでもいいから何か作って」
「……しょうがないですね」
やれやれと言いつつ、台所に向かう妖夢は、心なしか嬉しそうだった。
「私も手伝うわ」
「いえ、手伝いなんて」
「いいの。そのほうが、作っている間、お腹空かなくてすむから一石二鳥よぉ」
「……」
「どうしたの」
「い、いや珍しいなって思って」
「そうかしら」
「そうですよ」
明日からはご飯が少なくなるけれど、二人で食べればいつでもおいしい。
エンゲル係数が70になることも、きっともうないだろう。
二人は笑いながら、廊下を歩いていった。
おわり
冒頭部分のオチはどうしたwwwwwwwwwww
すげぇ投げグングニルっぷりだぜーッ!!
ギャグかと思ったら良い話。うーん、こんなゆゆことみょんも良いねっ!
個人的には三点リーダー使った方がいいんじゃないかなって思うけど。なんか・・・だと力強い感じがあるし。でもその程度じゃ減点にならないね。個人の自由だし。
んー、ご馳走さまでした。
良いお話でした。
登場キャラがみんな良い味出してます。
おにぎり最近食べてないなぁ。
ゆかりんの家はマヨヒガじゃないよー、といちいち言うのは野暮なのかな……
しかし半径5センチの飴玉でもこのゆゆさまなら丸呑みにしそうで怖いw
ゆゆ様かぁいい。
エンゲル係数70以上とかゆゆ様ぱねぇ。
読んだあとの幸せ感でゲシュタルト崩壊だよっ!
と思ったら↑のいくつかのコメントのせいで、折角忘れてた冒頭の修羅場が気になってきたww
中身はもちのろんでGJ
実にいいお話でしたw
とてもいい話でした!
良い話で面白かったです