春が訪れ、夏が過ぎ、秋を感じて、冬になる。
そうして僕はたくさんの時間を彼女らと過ごしてきた。
時には笑い、泣き、怒った日もあった。
それはどれをとっても大切で、儚い思い出。
人間は妖怪と共に生きることはできない。
例えできたとしても、人間が早く死ぬ。
分かってたつもりだった。
同じ種族ではないのだから。当たり前のことなのに…。
何故こうも悲しくなるのだろうか。
博麗霊夢、霧雨魔理沙、十六夜咲夜。
彼女たちは僕が生きる時間の内のほんの少しの時間で、
この世を去ってしまった。
あの日、あの夜、あの時間。
どうして一緒に居てやれなかったのか。
どうして最後の時を見てやれなかったのか。
それだけが今も僕の頭を過っている。
―からんからん。
いつもは客を運んでくる音色も、今ではただの雑音に過ぎない。
「こんばんわ、まだ調子は戻ってないみたいね」
「紫…今は店をやる余裕はないんだ。帰ってくれ」
この女は僕の気持ちを知ってて来たのだろう。だから余計に腹が立つ。
「彼女たちが亡くなって落ち込んでるのでしょうけど、人間は何れああなる運命なのよ。あなたもそれは十分に分かっているでしょう?」
「君は彼女たちが死んで悲しくないのか?確かに君は今までいくつもの人間が亡くなる場面を見ているだろう、それは僕にとっても然りだ。だが親しい人間が死んだとなれば話は別だ」
確かに命あるものは何れ滅びる、それが世界の常識。例えそれが幻想卿であってもだ。
だからといって悲しまない、というのはおかしい。
「悲しいわ、でもこれが現実。これが真理」
その言葉を聞いた瞬間、僕は頭に血が昇ったのを感じた。
「―っ、出てってくれ!命をそんな風にしか考えてない君とは顔も合わせたくない!」
それを言い終えるのが早かったのかは分からないが、既に店の中には僕1人だった。
僕にとって、彼女らは大切な人だった。だから死んだと聞かされた時は、暫くは信じられなかった。
おおかた魔理沙がタチの悪いイタズラでもしてるのだろう、また咲夜が僕をからかってるのだろう。そうとしか考えられなかった。
だが、それは嘘ではなかった。
白い死化粧を纏い、手を前に組み眠る少女たち。
それは死んでるとは思えない程、綺麗な顔だった。
だからこそ僕は気づかされた。
―もう彼女たちは目を覚まさないということを。
彼女たちの笑顔が消えて、1週間。
僕は随分と痩せ細った。体重は測ってないが、恐らく数キロは減っているだろう。
自分のことなんてどうでもよかった。彼女たちが生き返ってくれれば…。
だが、それは輪廻の神様が許してはくれないだろう。
―生命が蘇るということは、新しい生命が生まれないということ。
それが真実かどうかは知らないが、いつか読んだ本にそう書かれてあった。
だからこそ命は儚くて、脆くて、大切なのだ。
そんな命だから、生物は命の尊さを知ることができる。
もし全ての生命が永遠を得てしまったら、
それは血を血で洗う、殺伐とした世界となるだろう。
―かつての幻想卿のように。
霊夢…、君は巫女として悔いの無い時間を過ごしたかい?
魔理沙…、最後に飛んだ空は気持ちよかったかい?
咲夜…、主人に仕えた人生を楽しめたかい?
返ってくるはずのない質問なんだと分かってはいても、せずにはいられなかった。
霊夢は博麗神社に、咲夜は紅魔館に、そして魔理沙は親父さんに無理を言って、香霖堂の裏に埋葬した。
死んでまで、嫌ってた実家に縛り付けるのは彼女が嫌がりそうだったからだ。
居ないはずなのに、僕にとっては魔理沙がそこに居るように見えた。
「僕も歳かな…、こんな幻視をするなんて」
そう、僕もこの先長くは生きられないだろう。
僕は、彼女らが生まれる随分前からここにいる。
もう十分楽しんだ。
そしてとても疲れた…。
死んでしまったら、また魔理沙のところへ行けるだろうか。
そんなことになったら、あの世でも世話を焼きそうだ。
だが…。
「魔理沙がいないこの世に、未練はない。ふふ…そう思うと、あの世が楽しみだな」
僕は彼女たちを失って、少しおかしくなってるのかもしれない。
だけど、そんなの関係なかった。
これ以上、何を楽しみに生きる?
読書?商売?くだらない。
確かに以前は、そんなことでもよかっただろう。
でも僕はそれ以上のものを見つけてしまった。
それに比べたら、趣味に等しい。
趣味と大切なものを天秤に乗せるバカがいるだろうか。
もし、いたとしても僕からしてみれば、それは『愚か』の3文字でしか表せない。
さて…この先長くはない、とは言ったが、
それは人間からしてみれば、まだまだ時間はあるだろう。
さすがに自殺とあっては、生きたくても死んでいった彼女らに合わせる顔がない。
だからこればかりは…来るべき時を待つしかない。
孤独なる『静寂の時間』を。
今までの彼女らとの思い出を肴に、酒を飲むのも悪くない。
さて、どこから始めようか…。
そうして僕は、頭の中のアルバムを開くのだった。
>幻想卿
幻想郷
しんみりと、落ち着きのあるポエムですね。
残された人の気持ちについて考えさせられます。
仰りたいことは御立派ですが、東方らしくないし、霖之助らしくないです。何より説得力が薄い。
咲夜と霖之助なんて親しくもなんともないですしね。親しくなった経緯を省いては違和感が拭えないです。
こういう攻撃性のある世界観を拠り所にして、命の尊さを知ってもらうなんて難しいと思いますよ。
それをあえてやるんですから、人に伝えることをもっと念頭に置いた方が良いと思います。
「少しでも命の尊さを知ってくれると幸いです」だなんて最早失笑しか出てきません。
所詮ゲームのキャラだと命を軽んじてるのは貴方ではないのですか?
あと早苗さん。
言わせる位には心の強い人物。いくら親しい相手が死んで多少寂しく思うことはあっても
あからさまに取り乱したり激昂したりしないと思う。キャラを勉強しなおした方が良い。
これじゃ霖之助である必要が無いし、文章に説得力が無い。
この問いかけに対する答えを筋道立てて述べられなければ、このような話は書くべきではないと私は思います。
それができなければ、あなたは洗脳されているだけです。洗脳されている人の話など、宗教の勧誘と何ら変わりません。
もう一度、よく考えてみてください。
もう少し練り込めばいい話になりそうですね。
頑張ってください。