Coolier - 新生・東方創想話

ハッピーバースデー

2009/08/01 23:57:22
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今日はよく晴れているから大ちゃんと一緒に人里のほうまでお散歩に来た。
大ちゃんはちょっと心配そうだったけど、あたいがいるから絶対だいじょーぶ。
色んなお店のものを見ておしゃべりしながら通りの上をふよふよ浮いていると、あたいたちを見つけたけーねが飛んできた。

「チルノに大妖精か。見ているだけならいいがいたずらをしては駄目だぞ」

「今日はしてないわよ。ところでその持ってるものはなあに?」

「チルノちゃん、まずはあいさつだよ。こんにちは、慧音さん」

そう言って大ちゃんはお辞儀をする。
でもあたいはけーねの持っている白い箱をじーっと見ていた。
だって、そこからすごく甘いにおいがするから。

「む、いきなりこれは不躾だったな…すまない。こんにちは、チルノ、大妖精。で、チルノ。これはバースデーケーキだ」

「バースデーケーキ、ですか?」

「なあに、それ?」

大ちゃんは不思議そうだ。あたいも聞いたことがないからすごく気になる。

「誕生日を祝う洋菓子だ。上に年齢と同じ本数のろうそくを刺してだな……」

けーねが説明をしてくれてるけどよくわかんない。
まず、第一

「「誕生日ってなあに(なんですか)?」」

大ちゃんもおんなじことが気になってたみたい。

「誕生日とはその人が生まれた日のことだ。これまで生きてこれたことを育ててくれた人たちと一緒に祝う。プレゼント…贈り物にその人の喜ぶものを用意してな」

「そうなんですか、おめでとうございます」

大ちゃんが笑顔でお祝いを言う。
でも、あたいは気づいた。大ちゃんちょっとだけ寂しそうな顔してた。

「いや、私ではなくて寺子屋の生徒の誕生日なんだ。寺子屋のみんなで祝おうと思ってな」

「すてきですね。すごく楽しいお祝いになりそうです」

ほら、また。
あたいたち妖精には生まれた日がない。
だってある日気づいたらそこにいるから。

「よかったら来ないか? にぎやかになるし、いたずらしないなら歓迎だぞ」

「いいんですか? ねぇ、チルノちゃんせっかくだし行かない?」

大ちゃんはきっと誕生日がほしいんだ。

「…チルノちゃん?」

誕生日がなければ今日を誕生日にしてしまえばいいの!

「大ちゃん、まってて!」

「え、あ、チルノちゃんどこ行くの~!?」

そうと決まったら用意しなくっちゃ。
大ちゃんにまっててもらってあたいは全速力で飛び出した。



全速力で飛びながら考える。
さっきけーねが言ってた誕生日にいるものは3つ。
ケーキとプレゼントと祝う人だ。
ケーキは今からもらいに行くけどプレゼントはどうしよう?
大ちゃんは何をもらったらよろこぶかなぁ?

…そうだ、お花にしよう!








鈴蘭畑についた。
ひまわり畑もあったんだけど大ちゃんには鈴蘭のほうが似合うよね。
ちょっと摘んでいこう。

「待ちなさい」

摘もうとしたところで声をかけられた。

「なあに?」

「スーさんを勝手に摘もうとしないで」

「あなたのお花畑なの?」

「そう」

「今日、大ちゃんの誕生日なの。少しでいいから分けてくれない?」

「いや」

「あら、メディ。そんなに邪険にしては駄目よ」

ちっちゃい子に断られそうなところで、赤と青の服を着た女の人が助けてくれた。

「なんで? 永琳」

「あなたは閉鎖的過ぎるって閻魔様にも怒られたでしょう。さて、そっちの子はなんで鈴蘭がほしいの?」

「大ちゃんの誕生日プレゼントにしたいの。鈴蘭はすごくきれいできっと大ちゃんに似合うから」

「ね、悪意がないわ。こういう子と交流できるのはいいことよ」

「うぅ…しょうがないなぁ。ちょっとだけよ?」

「ありがとう!」

「どういたしまして。あと、よかったらその子の誕生日私たちにも祝わせてくれないかしら?」

「永琳!?」

「うん! 人里で祝うから来て!」

「人里? 永琳、わたしは嫌よ!」

「メディ、逃げていては駄目よ。人間全体を恨んでるようでは人形開放は遠いわ」

「だって…」

「愛でられている人形も持ち主から引き離すつもり?」

「それは…」

「人それぞれよ。わからなくなったらこの子に聞いてみなさい。ねえ、あなたは人間ってどう思う?」

「ん~、れーむは体がふわふわするときは怖いけど、いつもはぐーたらで怖くないわ。けーねはいたずらしたら頭突きするけど、何もしてないときはお菓子くれたりなでてくれたりするの」

「こういうことよ。何か感じないかしら?」

「う~、わかった。行くわ」

よくわかんないけどお花ももらえたし、祝ってくれる人も増えたみたい。大ちゃん喜んでくれるかなあ…

「ねぇ、あなたメディと仲良くしてくれるかしら?」

「ちょっと、永琳?!」

「お花くれたもん。友達ね! あたい、チルノ! あなたは?」

「あ…わたしはメディ。鈴蘭の妖怪よ」

「私は永琳。薬師よ」

「ありがとう。メディ、永琳、またね!」

手を振る二人と別れる。

次はケーキをもらいに行かなくちゃ。









紅魔館についた。
ケーキをもらわなくっちゃ。
いっつも門にいる美鈴に頼んでみよう。

「美鈴!」

「あ、チルノちゃんこんにちは。そんなに急いでどうしたの?」

「あのね、大ちゃんがね、今日誕生日なの」

「そうなの?おめでとう」

美鈴は祝ってくれるみたい。でもなんだか不思議そう。

「本当は無いんだけどね、今日を誕生日にするの!だからね美鈴、ケーキちょうだい!」

「そうなの。じゃあ咲夜さんに頼んでみるからちょっ…「駄目よ」」

美鈴が頼んでくれそうだったのに、日傘を差したちっちゃい子が割り込んで来た。
大ちゃんにケーキを届けなきゃいけないのに

「なんで?」

「この屋敷の物はすべて私のもの。あなたにはあげないわ」

「お嬢様、ケーキの1つくらい恵んでもいいではありませんか。お友達が誕生日だそうですし」

「聞いていたわ。でもだめね」

ちっちゃい子はすごくえらいみたい。美鈴が頼んでも聞いてくれない。
でも、こんなに大きな家に住んでるのにくれないなんて

「けち!」

「なんですって?」

「けちっていったのよ!少しくらいくれたっていいじゃない!」

「私のものを私がどうしようと勝手でしょ。どうしてもというなら力づくで持っていきなさい」

「お嬢様!お戯れが過ぎます!」

「いいのよ、ちょうどいい暇つぶしだわ。そうね…私はここから動かない、私の日傘にあなたが触ったらあなたの勝ち、弾幕はもちろんあり。どう…やってみるかしら?」

「やるわ!」

「チルノちゃん!」

美鈴が心配そうに見ているけどケーキをもらうためなの。

「美鈴、これもっていて。大ちゃんにあげる花なの」

「チルノちゃん、お嬢様はすごく強いのよ? 危ないからやめて。ケーキは私が何とかするから」

「だいじょーぶよ。ケーキはあたいが自分でもらって大ちゃんにあげたいし、それに…」

「それに?」

「あたいったらさいきょーなんだから!」

そう言ってあたいはちっちゃい子の方に向き直す。



「準備はいいかしら?」

「いいわ」

美鈴は遠くに離れているからプレゼントは大丈夫。

「来なさい!」

「いくよ!」

日傘に触れば勝ちなんだから思いっきり前へ飛ぶ。

「甘いわ」

目の前が赤くなって後ろに弾き飛ばされる。
あの子の放った赤い弾に当たったみたい。

「前に進むだけなら猪にでもできる。もっと考えて楽しませてちょうだい」

すごい量の弾幕が後から後から飛んでくる。前に進むどころかよけるのが精一杯だ。

「あら、前に進むことすらできないの? お友達もあきれちゃうわね」

…大ちゃん、きっと待ってるよね。あたい、すぐ行くから!
そうよ!避けて進めなければ避けなければいいの!

無理に前に出たけれどやっぱり弾に当たる…当たっても前に進む!

「ふーん、当たった反動を後ろに弾幕を放って相殺か。考えたじゃない」

痛い、痛いけどいける!あと10歩!

「ただ、それだけでどうにかなると思わないことね」

赤い弾幕の量が減って赤くて長いものに集まっていく。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

やばい!

「雹符『ヘイル…「無駄よ」」

赤い光があたいの放った弾幕を貫いた。



「それなりに楽しめたわね」

あの子の声が聞こえる。なんだか体が痛い。

「チルノちゃんしっかりして!」

泣きそうな美鈴の声が聞こえる。砂と血の味がする。
必死で顔を上げるとあの子が背を向けようとしていた。

「チルノちゃん!大…「動かないで!」」

ごめんね、美鈴。あたいあきらめない。

「まだ意識があったの?」

「まだ続けられるわ」

「その体で?ぼろぼろじゃない」

「あたいが続けるといったら続けるのよ!逃げる気!?」

「逃げる?どうやら身の程を知りたいみたいね」

「行くよ!」

言うと同時に全力で前へ飛ぶ。

「ふん、やる気は十分ね。いいわ、ここからはグングニルだけよ」

赤い光が集まって槍の形になる。大丈夫1本なら避けられる!

「甘いわね、グングニルだけにしたのは手加減のためじゃないのよ」

投げる体制に入った。よく見て避ければ…

「これを出させたあなたへの敬意を表すため、そして絶望的な力の差を思い知らせるためよ」

見えない!

背中から地面に叩きつけられる。
大丈夫、意識はある。まだいける!

「まだ立つのね。いいわ、来なさい」

前へ飛ぶのよ!






また吹き飛ばされた。でも、まだよ!

「しつこいわね。いい加減に諦めたらどう?」

「あなたがケーキをくれるならあきらめる」

「それはできない相談ね」

「じゃあ、力ずくでもらっていく!」

もう目は片方見えない。足もがくがくいってる。でも、空さえ飛べればまだ戦える!

「来るのね。あなたの策はあらかた破ったのだけど」

そう、あの槍に弾幕をぶつけてみたり弾幕を目くらましに動いてみたり考えた事はみんな破られてしまった。
その成果はは倒れたときの地面が冷たくて気持ちよくなっただけ。

もう弾幕を放つ力もない。ただ前に飛ぶだけ。

「力なく飛ぶ様は憐憫を誘うわね。終わりにしましょう」

今までで一番たくさんの光があの子の手に集まる。
力のためが長い、これを避けれればもう撃つ時間はない。避ける!

「終わりよ」

投げた瞬間必死で体を下げる。前髪がちりちりとなる。かすめた槍があたいの羽を吹き飛ばした。
槍の勢いで体ごと持っていかれそうになるのを必死で耐える。

「外した!?」

驚いているあの子の顔を見ながら前に進む。
羽もなくなって飛ぶこともできなくなった。
震える足を必死で前に出す。
ダメ、もう立てない。
地面にはいつくばって進む。
冷たい地面が気持ちよくて眠たくなる。
ダメ!大ちゃんにケーキを渡すまで寝れないの!
あと歩いて2歩の距離が遠い。
もう腕にも力が入らない。
必死に体を起こして日傘に手を伸ばす。
支えにした手が震えてバランスを崩した。
バランスを崩した体はそれでも前に倒れこむ。

そして、指先が確かに日傘の柄に触れた。









なんか柔らかい。お日様のにおいがする。

「…んぅ」

なんか赤い。どうしてこんなところにいるんだっけ?
今日は晴れてたから大ちゃんと人里に行ってけーねと会って…

「そうだ!ケーキ!」

「ここにあるわよ」

起き上がって横を見るとあの子が白い箱を持っていた。
甘いにおいがする、ケーキだ!

「地面が冷やされて蜃気楼が生まれるなんてね。負けたわ。約束どおり持っていきなさい」

「うん!」

ケーキを受け取って外にでる。もう夕方になってしまった。
急いで大ちゃんに届けないと!

「待ちなさい」

飛び立とうとしたところに声をかけられて振り返る。

「遊びとはいえ私に土をつけたのだから名乗っていきなさい。私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主よ」

「あたいはチルノ!氷の妖精よ」

「そう。チルノ、また会いましょう」

「うん!バイバイ、レミリア」

レミリアに手を振って今度こそ飛び立つ。

門では美鈴にちょっと叱られてその後涙目で抱きしめられた。心配させてごめんね、美鈴。










人里についた。大ちゃんはどこかなぁ?

「チルノちゃん!」

あ、大ちゃんだ。大ちゃんのほうから見つけてくれたみたい。

「どこいってたの? ぼろぼろじゃない!」

そういえばあたいすごくぼろぼろなんだった。顔はあざだらけだし羽は半分溶けてるし。

「もうっ!心配させてぼろぼろで帰ってきてチルノちゃんの馬鹿っ!」

ごめんね、バカで。でもね…

「大ちゃん、お誕生日おめでとう」

ケーキと花束を大ちゃんに手渡す。

「え、チルノちゃん? これ…」

「あのね、大ちゃんが寂しそうだったから。それにね、誕生日がないなら今日を誕生日にしてしまえばいいの」

寂しそうな笑顔の大ちゃんは嫌だ。あたいがどんなにぼろぼろになるよりも。

「ありがとう…ありがとうチルノちゃん」

泣き笑いの大ちゃんを見て嬉しくなった。
やっぱり大ちゃんにはそうやって笑っててほしい。



「じゃあ、お誕生日パーティしないと!」

「そうだね。慧音さんに寺子屋貸してもらえないか頼んでみよっか」

その後、寺子屋でお誕生日パーティーをした。
永琳とメディから話を聞いた永遠亭の人たちや、美鈴が連れてきた紅魔館のみんな、
けーねと寺子屋に残っていた生徒たちもあわせてみんなで大ちゃんのことを祝ってくれた。



大ちゃんは今までで一番素敵な笑顔をしていた。
はじめまして、tuzukaと申します。

この作品がはじめて書いた小説で、はじめての投稿となるので感想、批評ともども頂けたら幸いです。
tuzuka
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コメント



0.450簡易評価
4.30名前が無い程度の能力削除
展開が強引でかなり無理を感じました。
5.50名前が無い程度の能力削除
アイデア自体はすごくいいんだけどなぁ
6.80名前が無い程度の能力削除
面白かったけど展開が駆け足気味に感じました。
もう一つ二つ話が欲しいかな?
11.70名前が無い程度の能力削除
中々面白かったので、こんどは短めじゃないのを読みたいです。
12.50名前が無い程度の能力削除
もっと長ければ……
13.90名前が無い程度の能力削除
おぉう チルノちゃんめっちゃいい子やん
あとレミィがカリスマの方向性を見失ってるのがレミリアらしくてよかったです
……はじめからあげるつもりだったのでしょうか?

さて点数のマイナス分は
絶対にいい素材!
すごく旨い料理!
もう少しボリュームと味の深みがほしい、そんなかんじです