Coolier - 新生・東方創想話

三日間オヤツ抜きの刑

2009/07/29 23:46:28
最終更新
サイズ
10.54KB
ページ数
1
閲覧数
1577
評価数
12/47
POINT
2420
Rate
10.19

分類タグ


******


「うう…ううう…」
「ひもじい…ひもじいわ…」
二人の神様はとても苦しんでいた。
とある理由によって怒った早苗が三日間オヤツ抜きの刑を二人に執行した為である。
「元はと言えば早苗が大事に取ってたロールケーキを神奈子が食べちゃったから…」
「あんたも半分食べたでしょうが!うぅ…」
仲が良いのか悪いのかさっぱり分からない二人だった。
「こ…こうなったら…」
「何?実はオヤツ作れたの神奈子?凄く見直すわよ」
「違うわ。こうなったら…他の子の家に遊びに行ってオヤツを貰おう大作戦よッ!その名の通り、誰かの所に行ってちゃっかりオヤツを貰う作戦!これで勝てる!」
何に勝つのだろうか。
「な…なんて名案!と言う訳で早速私は紅魔館へいきます。神奈子はついてきちゃ駄目」
「あー!わ、私が狙ってたのに…!まあ…他にも候補地はいっぱいあるしいいか」
そうして、二人の神様のオヤツたかりの行脚が始まった。


******


「さて」
諏訪子は紅魔館へとたどり着いた。
「あれ、お山の神様ですか。何か御用でしょうか」
「遊びに来たの。入れなさい」
「は、はい?失礼ですがご約束は…」
「三秒以内に退かないと撃つわ」
「どうぞお通りください」
「ありがとう」
門番を華麗にスルーして、諏訪子は紅魔館の内部へと侵入した。
どうやら丁度紅魔館はオヤツタイムらしく、そこかしこでメイドたちが美味しそうな洋風の菓子を運んだり摘んだりしている光景が見られた。
「ふふふ…これは大当たりね。さて、恐らく一番良いオヤツを食べていると思われる吸血鬼はと…」
諏訪子はメイドに案内を頼み、レミリアの元へと直行する。神様権限はとても便利だった。
案内された先では、咲夜を従えたレミリアが、丁度午後のティータイムを楽しんでいる所だった。
「こんにちは、吸血鬼風情さん」
「あら、何かしら神様風情様」
「前から貴女と話したいと思ってたの、吸血鬼風情」
「それは光栄ですわ。どうぞ席について下さいなそこの神様風情」
仲が良いのか悪いのかさっぱり分からない二人だった。
「咲夜、お客様にケーキを」
来た。オヤツだ。目的のブツだ。平静を装いながら諏訪子は差し出されたケーキを見て…
「…え?」
…何だろう。これは何だろう。果たしてこれはケーキと名づけても良い物なのか。名状し難い何か、とかそっち系の物ではないのだろうか。
目の前に出された皿の上には、半透明で色を緑から青へとゆらゆらと変えながら『おぉぉ…おぉぉ…』と奇妙な音を発して触手をうねらせる何かがあった。
「さあ召し上がれ」
-これを、食えと?
いや落ち着け。落ち着くんだ諏訪子。貴女は神なのだから、多少毒とかそういう物が混じってても問題は…
『おぉぉ…おぉぉ…?』
-なんかこっち見た!?
目玉っぽい物が浮かんだ気がする。浮かんだ気がした瞬間に諏訪子は咄嗟に目を逸らしたからよく分からなかった。
「あら、どうかしましたか?そこの神様」
諏訪子は恐る恐る皿の上へともう一度目を向ける。もう一度よく見たら普通のケーキに戻っている事を願って。
『おぉぉ…おぉぉ…!』
-増えてる。増えてるよ神奈子。助けて。
目玉が無数に増えていた。無数の目が諏訪子を見据えていた。思わず心の中で神奈子に助けを求めていたが此処には神奈子はいなかった。
レミリアの皿の上にも同じ物が乗っかっている。彼女がそれをフォークで突き刺すと、『ぎぃぃぃぁぁぁー!!!!』と言う声と、ぶちゅりと不気味な音がした。
突き刺した分を口に運んで、咀嚼。普通に食べている。とりあえず諏訪子が知っている普通のケーキはそんな音を出してはいけない。
「今日のは中々の味ね」
「有難うございます、お嬢様。ささ、諏訪子様もどうぞ遠慮なさらず」
来るんじゃなかった、とケーキ(と言う名の名状し難い何か)の前で硬直しながら諏訪子は思った。


******


「………」
「………」
ずずず。
お茶を啜る音だけが静かな博麗神社に響く。
「………」
「………」
ずずず。
「………」
「………」
ずずず。
「………」
「………。いい加減うっとい!何しに来たのよ!」
「……え?私の事かしら?」
いつまで経っても黙ったまま座っていた神奈子に霊夢はキレた。神を神とも思わぬ振る舞いだった。
「他に誰がいるって言うのよ?それで、何か用?」
「いや、用って訳ではないけれど」
-まだか。
神奈子はただじっと待っていた。霊夢がオヤツタイムに突入する時を。
「大方オヤツをタカりに来たんでしょう。早苗から聞いてるわよ」
「!?」
なんと言う事だ。既に霊夢には知られていたのだ。これでは他の子の家に遊びに行ってオヤツを貰おう大作戦が台無しになってしまう。
神奈子は焦った。今から別の場所に行く時間はあるだろうか。他のところのオヤツタイムに間に合うだろうか。
「まあ安心なさい。私は鬼じゃないから」
そう言って、霊夢は雑巾と箒を神様に押し付けた。神を神とも思わぬ振る舞いだった。
「…これは何?」
「掃除したらオヤツよ。頑張って」
笑顔だった。
神をも恐れぬ笑顔だった。
だがしかし…
-掃除…掃除すればオヤツが手に入る。
諏訪子だけ美味しい思いをして、自分は収穫0で帰れるわけがない。そんな風に妙な競争心が神奈子の中に芽生えた。
「わかった…やってあげるわよ」
それから…
二時間の労役を経て、
「ご苦労様。はい、オヤツ」
「…………え?」
渡されたのは、しけた煎餅が一枚だった。
「言って置くけど探しても何も無いわよ。それが最後の一枚」
「…………え?」
この二時間は何だったのだろう。二時間に渡る屈辱的な艱難辛苦を乗り越え、手にしたのは煎餅が一枚。けれど最後の一枚だと言うのなら巫女を責める気にもなんだかならない。
そもそもよく考えたらこんな所に来て良いオヤツが食べられるわけがない。最初に気付くべきだった。
来るんじゃなかった、と煎餅を齧り、茶を啜りながら神奈子は思った。


******


「うう…ううう…」
「ひもじい…ひもじいわ…」
二人の神様は今日も苦しんでいた。
とある理由によって怒った早苗が三日間オヤツ抜きの刑を二人に執行した為である。
「元はと言えば早苗が大事に取ってたロールケーキを神奈子が食べちゃったから…」
「あんたも半分食べたでしょうが!うぅ…」
昨日と同じく仲が良いのか悪いのかさっぱり分からない二人だった。
「こ…こうなったら…」
「何?今度こそ実はオヤツ作れたの神奈子?凄く見直すわよ」
「違うわ。こうなったら…うっかりオヤツの場に居合わせたからご相伴大作戦よッ!その名の通り、誰かの所に行ってちゃっかりオヤツを貰う作戦!これで勝てる!」
昨日は惨敗だった。
「昨日に引き続いてなんて名案!と言う訳で早速私は地霊殿へいきます。神奈子はついてきちゃ駄目」
「あー!わ、私が狙ってたのに…!まあ…他にも候補地はいっぱいあるしいいか」
そうして、二人の神様のオヤツたかりの行脚二日目が始まった。


******


「ささ、どうぞ」
『おぉぉ…おぉぉ…』
「………」
諏訪子はさとりに差し出された『ケーキ』を前に硬直していた。
いやそれはケーキと言う呼び名は相応しくないので『名状し難い何か』とか表現すべき物だった。
昨日に引き続いて、此処でも諏訪子はアレを出されたのだ。
流行ってるのだろうか。もしかして幻想郷特有の極上スイーツだったりするのだろうか。そういえば今日のは色が違う気がする。
「ああ、餌が違いますからね」
「餌!?」
『コレ』は餌を食べるのか。そんな物をケーキと呼んでいいのか。ケーキとはいったい…うごごご!
そんな事を思っていると、『ケーキ』が諏訪子の視線に気付いたようで、
『おぉぉ…おぉぉ…?』
-こっちを見るな。目玉を増やすな。
そっちを見たり目玉を増やしてみたりしていた。
『ぎぃぃぃぁぁぁー!!』
ぶちゅり。
目の前ではさとりが何食わぬ顔でそれを食らっていた。
「…美味しいですよ?」
-………。
来るんじゃなかった、とケーキ(と言う名の名状し難い何か)の前で硬直しながら諏訪子は思った。


******


何事もなく白玉楼にたどり着いた神奈子は、さりげなく幽々子の隣に座り、談笑しながらその時を待っていた。
「妖夢ー今日のオヤツはー?」
「はいはい、今持っていきますよ。ああ、お客様も遠慮なさらずにどうぞ」
-来た。今度こそ来た。
妖夢が幽々子と神奈子の間に九本の串団子を置いて行った。
-九本だから、私は客と言う立場だし遠慮を含めて私の分は五本ね。
遠慮と言う言葉を覚えなおした方が良い神様がいた。
如何にも遠慮している風に(実際はまるでしていないのだが)、さりげなく、団子に神奈子は手を伸ばし…
神奈子には見える筈だった。今や無限の近さにまで接している念願のオヤツが、
念願のオヤツが、
オヤツは、
-何処だ。
神奈子には見えない。今まさに神奈子の精神を打ち砕かんとする非情な現実が、神奈子には見えない。
-私のオヤツは何処だ。
それは魔食であった。
源流となったのは仏蘭西の早食い技術である。
強豪遍く仏蘭西格闘ディナー界にあって、無双を誇ったシャルダン流。その技は、同じ食卓を囲んだ者にすら、食事の姿を見せない事を骨頂としたと言う。
その技法は今や書物に残るのみであり、またその記述は、曰く舌を数mの長さに伸ばし素早く食べ物を巻き取るだの、或いは口内に数kgの物を一挙に詰め込むだのと、荒唐無稽なる代物である。
-しかし幽々子は、其れを為す。
正確に言えば、幽々子は後者の技術を習得したのみである。だがしかし、それを知らない人間からすれば、矢張りその食事は神速のうちに行われたように見え…否、その動きは正しく目にも止まらなかったであろう。
しかし神奈子は人間ではない。人間よりも遥かに優れた、神速の反射を為す。故にこれだけであれば、彼女の目にも幽々子の食事が見えた筈だ。
-第一の工夫は是。口の中に一挙に食物を運び込む事である。そして、第二の工夫は手の内にある。
通常、串に刺さった団子を食す時は根元を親指と人差し指で挟み、横から齧りつく形となる。
早食いに於いて、その食事の作法は致命的なタイムロスとなる。故に、幽々子はこの作法を破壊し、構造的脱却を図った。
左の五指を用い、四本。右の五指を用い、四本。両の手の小指同士を併せる事で更に一本を挟ませ、同時に九本。これを幽々子は、正面から、喉へ向けて突き刺すように食す。
これは際立った工夫に拠る食ではない。型をなぞるだけならば誰にでも可能な技である。
だが一つ加減を間違えれば喉の奥に串を突き刺しかねない実食の最中に於いて、斯くの如き要求に応える事など誰にか出来よう。
早食い、大食いに対する、愛のような執念が、それを幽々子に可能ならしめたのだ。
斯くして、幽々子の食は此処に結実した。
-魔食・六塵団子無縫突き。
「私の…オヤツ…」
後には、満面の笑顔で団子を咀嚼する幽々子と、魂が抜けたような表情の神奈子が残った。


******


「うう…ううう…」
「ひもじい…ひもじいわ…」
二人の神様は今日も苦しんでいた。
とある理由によって怒った早苗が三日間オヤツ抜きの刑を二人に執行した為である。
「元はと言えば早苗が大事に取ってたロールケーキを神奈子が食べちゃったから…」
「あんたも半分食べたでしょうが!うぅ…」
毎度同じく仲が良いのか悪いのかさっぱり分からない二人だった。
「こ…こうなったら…」
「こうなったら…どうするのでしょうか?神奈子様、諏訪子様」
「………」
「………」
さなえが あらわれた!
「な、なんでもないわよ!」
「そ、そうそう!なんでもないよ!」
「そうですか…ところで、最近お出かけになる事が多いようですが」
二人とも凄くイヤな予感に襲われていた。
何故だろう。こっちの方が偉い筈なのに逆らえない。不思議な感覚が二人を襲う。
「お二人とも神様なので大丈夫だとは思いますが…まさか、他所の家の方に迷惑なんか、かけてませんよね?」
「え、えっと…」
「な、何の事かしら?」
「そうですよね、まさか神様ともあろう方々が、博麗神社の煎餅を漁ったり、紅魔館や地霊殿のケーキを食い荒らしたり、白玉楼の団子を食べつくしたりなんか、してませんよね」
「「ちょ…ちょっと待てー!」」
断じてそんな事はしていなかった。思い出すだけで泣きたくなるような二日を過ごしていた二人は即座に否定しようとしたが…
そう言えば互いが互いに意地を張って、さも良いオヤツを食べて帰って来たかのように振舞った事を思い出した。
こいつに負けた事がバレるくらいなら…と二人がつまらない意地を張って動きが止まった所で、
「…一週間オヤツ抜き&外出禁止の刑」
ぽつり、と早苗がそう言った。
「そ…それは流石にやりすぎよ。諏訪子が可哀想だわ」
「え?神奈子に対する刑じゃないの?」
「お二人ともです。さて、私はお二人が迷惑をかけた方々にお菓子を持っていきますので」
「「そ、そんな…」」
早苗が去った後には、世界の終わりが来たような表情をした神様二人が残った。


******
-ia!ia!Ph'nglui mglw'nafh Cthulhu R'lyeh wgah'nagl fhtagn!(【存在0-非存在+?以前(虚0居る<有る>)】の方の方言でこんにちはの意味)

最後までお付き合い下さり有難うございました。
初めましての方は初めまして。そうでない方は想いは、重なって、力となる自分のSSを再び手にとって下さり有難うございます。
自分の中では何故かパワーバランスが早苗さん>神様二人になってます。と言うか神様二人がアホの子です。アホの子は可愛いので正義(キリッ

何か急にアレな方向にぶっ飛ぶ団子のくだりは刃鳴散らすのパロディです。あとらんま。どれだけの人が分かるんでしょう。

それでは、機会があれば次もまた読んで頂けると嬉しいです。
目玉紳士
medamasinsi@yahoo.co.jp
http://medamasinsi.blog58.fc2.com/
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1400簡易評価
9.90名前が無い程度の能力削除
さとりんに食べられたい
おぉぉ…おぉぉ…
10.80名前が無い程度の能力削除
格闘ディナー編懐かしいww
きっと、ゆゆ様はアン→ドゥ→トロワのリズムで食事ができるんだろうなぁ……
12.90名前が無い程度の能力削除
するといずれゆゆ様の御口は……。
13.80名前が無い程度の能力削除
やべぇw2分の1ネタが卑怯すぎるww
18.無評価名前が無い程度の能力削除
いあ!いあ!

そして格闘ディナー吹いたw
19.90名前が無い程度の能力削除
早苗さんが本編で出世していくと同時に、二次ではどんどん二柱の扱いが悪くなっていくような…。
26.80名前が無い程度の能力削除
>ケーキとはいったい…うごごご!
大変だ!諏訪子様が無に飲み込まれるw
30.100名前が無い程度の能力削除
エクスデスで腹筋崩壊したwww
33.100名前が無い程度の能力削除
フォアグラwww
36.100名前が無い程度の能力削除
格闘ディナーwwwなつかしいなぁwwwあいつの口は化け物だろwwwww
41.80名前が無い程度の能力削除
グルメ・デ・フォアグラw
「しぱぱぱぱ」って効果音で食うのかなやっぱ
44.60名前が無い程度の能力削除
うむ
45.70名前が無い程度の能力削除
ぎぃぃぃぁぁぁー!!