午前8時
「おーい!霊夢ー!!」
朝も早い時間からやたら元気な声が響き渡る
声の主 魔理沙は箒にまたがり颯爽と空から降り 神社の入り口に着地する
最近力を入れていた実験が成功したので上機嫌で霊夢に歩み寄る
成功の話をしたくて隣を誰かがすれ違ったのに気がつかないくらいだ
「よう霊夢!おはようだぜ!!」
「朝から元気ね、あんた」
「私はいつもこんなもんだよ、それより霊夢!こr「いやよ」…」
「……」
「……」
「………」
「………」
時が止まったかのような沈黙が二人を包む。先に動き出したのは魔理沙だった
「まだ何も言ってないだろ!」
「言わなくたってわかるわよ、どうせ実験が成功したからその試しを手伝ってくれってんでしょ」
「くっ、合ってるけどさ。そんな言い方無いだろ」
「あんたにはこれくらいのほうがちょうどいいわよ。ほっといたら調子に乗って暴走しだすんだから」
にべも無い。そこまで間違ってもいないので言い返すこともできない
「…むぅ」
「はぁ、まぁいいけどね。変な事になっても苦しむのはあんただけだし」
「へ?何を言って…」
「これでしょ?その薬って」
霊夢がひょいっと掲げた小さなビン。中には透明で赤みがかった茶色の液体が入っていた
「ちょ、お前いつの間に!?」
「巫女に不可能は無いのよ」
「なにその最強設定!?」
「メタになりそうな発言はやめなさい。それ」
霊夢がビンを持ってないほうの手を振る。すると魔理沙の周りに円ができ輪となって魔理沙を捕まえる
「ま、待ってくれ霊夢!それはまだ安全性が確認できてないんだ!」
「やっぱり私で調べようとしてたわね。そうは問屋がおろさなかったから殴りこんで寝込みにドロップキックよ」
「いや、意味がわからなって待って、待ってください!こっちに来ないで下さい!!」
ゆったりと歩きながら霊夢が魔理沙に近づく。その顔には見るものを魅了するような綺麗な笑顔があった
魔理沙にとっては鎌を振り上げた死神にしか見えなかったが
「大丈夫よ、貴女の体力なら永遠亭まではもってくれるでしょうから」
「それってやばくなること前提ってア゛ーーー-----!!!」
霊夢が魔理沙の頭をアイアンクローで掴む
「!!!!!!??!!!」
神社に声にならない叫び、断末魔が響いた
午前10時
「リグルいくよ!!これがアタイのとっておきだー!!」
「新しいスペカだね、よしこい!」
「二人とも無茶しないでねー」
湖の上で妖精たちが弾幕ごっこで遊んでいる
対戦をしているのはチルノとリグルで大妖精は応援していた
チルノは最近考えた新しいスペカを試すためにリグルに挑んでいた
当人たちはまじめなのだろうが弾幕がまだ拙いせいか子供がじゃれあってるように見える
湖の近くにに建つ紅魔館の門番、美鈴はそれをほのぼのとしながら見ていた
「本当にに子供みたいですね」
「クスクス、でもかわいいでしょう」
微笑みながらチルノたちを見つづける。二人は変わらず弾幕ごっこで遊んでいる
スペカが終盤に入ったようだ、弾幕の濃さと煌びやかさがさらにあがっていく
その様子はさながら昼に見れる花火のような感じだった
(こういう日が続いているというのはいいですねぇ)
美鈴がフィーっ吐息を吐く
(のどかだなぁ)
平和な日常に感謝しながら肩の力を抜く
そんな彼女にとって幸せな時間は
「だからって貴女が気を抜いていいわけではないのだけれど?」
シンデレラの魔法のごとく霞と消えた
「げっ、咲夜さん!?」
慌ててそちらを向くとそこには咲夜が立っていた
「げっ、とはなによ。げっ、とは。大体貴女ね…」
幸せな時間が終わり地獄のような時間が来る
いつの間にか正座させられて咲夜の説教を受けさせられる
こうなったらしばらくは動けない
(ひーん、私の平和カムバーック)
心の中でなきながら叫ぶ
「ちょっとちゃんと聞いてるの!?」
「は、はいぃ!」
美鈴が開放されたのは1時間後だった
午前11時30分
「次私が鬼~」
「逃げろー」
「わー」
「きゃー」
永遠亭
ここでもイナバ達が先ほどのリグルたちのように無邪気に遊んでいた
今日は天気もいいので遊び日和なのだろう
ズドンッ
そんな中いきなり屋敷から爆発音が響いた
みんなが驚いて音の発生源を見るとその部屋、永琳の部屋から煙が上がっていた
するとそこからてゐと永琳が飛び出してきた
「て~~ゐ~~~~~!!!」
「ご、ごめんウサ!こんなになるなんて思ってなかったウサ!許してーー!」
「だまらっしゃい!!そこを動くな!!」
「ひいいいいいい!!」
恐ろしい勢いで駆け抜けていく二人を見送った後皆が呆然としていると
「な、何今の音!?って煙出てるじゃない!火事!?誰か水!持って来て!」
音に驚いた輝夜が屋敷の奥から慌てて出てきた
輝夜の声にはっとしたイナバ達が急いで消火作業に動き出す
輝夜は率先して指示を出しながら頭をかく
(何だってまたこんな天気のいい日にどたばたしなきゃならないのか)
ため息をついて呆れながら原因の走っていったであろう方向を眺めた
その元凶の兎と蓬莱人
(止まれない!止まったら死ぬ!!)
てゐは背後から来る圧殺的なプレッシャーにおびえながら自己新の走りで駆け抜けていた
後ろは向けない 向けばその分コンマ数秒遅くなる
後ろにいるのは悪鬼だ、羅刹だ、捕まったらその瞬間自分の生は終わる
ただ唯一の救いはてゐが永琳より足が若干速いことだ
今もなお少しずつだが距離を開けている
(このままいけば逃げ切れる、生き残って見せるウサ!!)
確かな手ごたえとともに希望を見出す
しかしその希望は
ガッ
「うひゃぁ!」
絶望となった
ぐるぐると視界が回る
ようやく止まって混乱から立ち直ろうとするてゐを
「うふふふふふふふ、捕まえた」
死神は捕まえた
全身からさぁっと血の気が引く
「ま、待って!待ってください!話せばわかるウサ!」
振り返って弁明しようとする
「ええ、そうね。だから私の部屋でゆっくり話しましょう。ゆっくりね…」
永琳はそれに菩薩のような笑顔が返した、その仮面の下には別の何かが潜んでいたが
掴まれた肩が悲鳴を上げている
「ノオオオオオオオオ!!誰かヘルプミイイイイイイ!!」
タブーを犯した嘘吐き兎はグリーンマイルを引きずられていく
助けを求める声は二人が入っていった部屋の障子が閉められるまで続いた
そして
「私は見てない聞いてない知らない私は……」
今回の事件の全容を知っていて中途半端な正義感から止めようとして見事に羅刹と化した永琳を直視してしまった鈴仙はその光景が頭から離れなくなって動けなくなっていた
そんな彼女に天啓が与えられた
「貴女は何も悪くないですよ、だから気にすることなどないのです」
肩をぽんとたたかれて告げられた言葉それは驚くほどにすっと鈴仙の心の中に染み渡った
(そうだ、そのとおりだ。私は何も悪いことなんかしてない。てゐが全部悪いんだ)
「そうよね!そうだよね!私は何も悪くない!」
なんだか元気になった鈴仙はがばっと立ち上がりそのままの勢いで走り出した
彼女の姿は竹林の中に消えていった
午後1時
「ねぇ藍、あれ食べたいわ」
「何いってるんですか紫様。先ご飯食べたばっかりでしょう」
八雲一家は里を歩いていた
食糧の備蓄が減ってきていてちょうど紫も起きていたのでみんなで買い物に出てきたのだ
お昼も近かったのでついでに店で食事をしたのが先ほどの話
なのにまた食べ物が欲しいと言う紫の我侭に藍が呆れた
「藍様ー、私あれが食べてみたいです」
「いいぞ!どれだ橙!?」
しかし自分の式である橙が言うわがままに即反応する藍
これに紫は慌てた
「ちょ、ちょっと待ちなさい藍!貴女ご主人様の言葉はないがしろにして式には甘いってどういうこと!?」
「かわいいからいいんです!!」
「意味不明だわ!?」
何なんだその理屈は、と怒ろうとしたとき
「クスクス」
誰かに笑われた
三人が声のするほうを見ると反対側から歩いてきていた黒髪の少女が自分たちを見て笑っていた
少女は紫たちと目が合うと慌てて顔を伏せてすれ違っていってしまった
「ほら、紫様のせいで笑われてしまったではありませんか」
「何でよ!何で私のせいなのよ!」
なぜか自分のせいにされた紫は怒り出ししばらくの間、藍が機嫌取りにお菓子を買うまで、不貞腐れてしまった
午後2時30分
妖怪の山の中新聞記者の天狗は頭を抱えていた、何故かといえば
「ネタがなーい!」
そういうことだ
ここ最近は事件が特に起きていないせいでネタ切れになってしまったのだ
どっかの誰かが長寿記録更新なんてものを書いてもつまらない記事にしかならない
自分がマッチポンプになろうかなんて考えもしたがそんなものは記者としてやってはいけないことだ
頭をガシガシかきながら考える
「あーあ、霊夢さんあたりがまた何かしでかしてくれませんかねぇ」
なんとなしに言う、と
スコーン
その瞬間、文の意識はとんだ
「お茶持ってきましたって大丈夫ですか?!」
天狗謎の襲撃事件、犯人は何処
新聞のネタはできたようだ
午後3時
山の頂上 神社の中
「く~」
諏訪子は寝ていて
「~♪」
早苗は境内の掃除をしていて
「ふっふふ~ん♪」
神奈子は御柱としめ縄の整備をしていた
その姿は
「お、ここも汚れてる」
その姿は
「ふー、綺麗になった」
老人の盆sゲフンゲフンとても落ち着いた光景だった
午後4時20分
「ここら辺は最近いじってなかったからなー」
妖夢は庭の手入れをしていた
「んーもうちょと切ろうか」
周りの木を見てバランスを確認しながら切る、割と忘れられていたりするが自分の庭師としての実力には結構な自慢がある
主張しすぎず、かといって個性がなくなるようにはせずに調和を持たせて完成させた庭には評判もある
剣も大事だが妖夢にとってはこっちも大事なことなので手は抜かない
今は幽々子も奥でお茶をゆっくり飲んでいるので気兼ねなく作業できる
「っ!!」
妖夢が駆け出す。全力で庭を駆け抜けたどり着くのは白玉楼の門
誰かがここに来たのを感じたのだ
「誰だ!!ここに勝手に入ってくるやつは!?」
刀を抜いて構える
返答は無い
いつでも動けるように緊張を保つ
気配を感じられないので動けない
(よっぽどの手慣れか?)
周囲に目を配り集中する
…………
………
……
「…あれ?」
来るはずの襲撃がいつまで経ってもこない
ただ階段下から流れる風がかすかに音を立てているだけだ
「もしかして、気のせい?」
ぽかんとした後顔が一気に真っ赤になる
(う、うわー。恥ずかしい!)
しゃがみこんで顔を隠す
つまるところ今までの自分の行動は全て、勘違い、独り相撲
刀を落としたことすら気づかずに顔を隠す
穴があったら入りたいとはまさにこのことだ
しばらく悶絶した後、妖夢は何事も無かったかのように立ち上がった
つまり無かったことにした
そのまま刀を閉まって庭に戻っていく
(でもなぁ、確かに誰か来たのを感じたんだけどなぁ)
首を傾げて考えても答えは出なかった
その後しばらくして作業を終えた妖夢は幽々子の元へ行った
「幽々子様、そろそろ夕食の支度に入りますね」
「ええ、お願いね。今日はどうするの」
「あじの干物が残ってるので今日はそれで」
「えー、お肉じゃないのー?」
「明日買ってきますから。今日は干物です」
「はいはい、じゃあ明日はよろしくね」
「んもぅ、もう明日の夕食を楽しみにして。今日のご飯抜きにしますよ?」
「ひどい!!妖夢ったらそれでも人間!?」
「半人半霊です。冗談ですから。そんなむくれないで下さいよ」
「ぶー」
「全く」
妖夢は少し呆れながら、幽々子の隣にあった二個の湯飲みと急須を台所へ持っていった
午後6時
「霊夢ー、いるー?」
神社の境内に降りてきたアリスは霊夢を呼んだ
しかし霊夢から返答は無かった
「あれ、留守かしら?」
少し辺りを探す、しかし霊夢はどこにも見つからなかった
「アリスー、霊夢はいたー?」
霊夢を探すアリスの後ろから声がかけられた
すとっと下りてきた声の主はにとりだった
「だめね、留守みたい」
「え、そうなの?」
「えぇ、神社のどこにもいなかったわ」
「困ったなぁ、あの子の起動は実験的になるから結界の専門家にいてもらったほうがよかったんだけど」
「いないものは仕方が無いわ。パチュリーもいるし、彼女に協力してもらいましょう」
「そうだね」
そう言って二人は霊夢を探すのを諦めて神社の入り口に向かう
「ん?」
にとりが何か足元に見つけてそれを拾い上げる
それは破れた紙だった、表には何かが描かれていた
「なんだろう、これ」
「にとりー、どうしたのー?」
気になって眺めていると先に行っていたアリスから声をかけられた
「あ、なんでもない。待ってー」
にとりはアリスを小走りで追いかける
「早く行きましょうよ、私だってあの子がどうなるか気になってるんだから」
「ごめんごめん」
二人の言っているあの子とは共同で製作した新型の人形だ
動力は機械的なものにしながら思考回路は魔力を使ったもので二人にとって初の試みになる
そのため足は自然と速くなっていた
「楽しみだね」
「フフ、えぇそうね」
彼女たちにとって今日の夜は長くなるのだろう
二人はやがて神社の入り口から飛び立っていった
次に期待
次回楽しみにしてます