※本編にはそこそこ百合要素が含まれております。
苦手な方はお気をつけください。
こんにちは。東風谷早苗です。
ただいま人里にて霊夢さんと絶賛デート中です!
……ごめんなさい、嘘です。
食糧や、神奈子様、諏訪子様にお供えする為のお酒が大分減ってきたので
人里まで買い物に行ったところ、たまたま霊夢さんと会いました。
「こんにちは、霊夢さん。」
「あら、早苗じゃない。こんにちは。
もしかしたら早苗も買い物?」
「はい。ということは霊夢さんもですか?」
「うん。ちょっと色々足りないものが出てきちゃって。」
せっかくですし、一緒に行きませんか?と誘ったところ、霊夢さんは了承してくれました。
「足りないものって何ですか?」
「お賽銭なら年中不足してるわよ。」
じとーっと見つめられる。
「え、えと、そんな目で見られましても……。」
「冗談だって。醤油とか塩とかの調味料。」
「早苗は本当に素直なのね」と表情を崩す霊夢さん。
うう、普通に話せるようになったのは嬉しいのですが、
最近からかわれることが多くなったような……。
思えば、出会った頃から負けっぱなしのような気がします。
どうにかして霊夢さんから一本取りたいものです。
お買い物自体はつつがなく終わりました。
まあただのお買い物に何か期待する方がおかしいのですが、せっかくの霊夢さんとの
初めてのお出掛けだったので、ちょっと残念さもあります。
帰り道も途中までは一緒に来ましたが、方角的にここからは逆になってしまいます。
名残惜しいですが霊夢さんとはここでお別れしなければいけません。
「また今度神社に遊びに行かせて頂きますね。」
「ま、お茶くらいなら出して上げるわよ。」
口では素気なく言っていますが、霊夢さんは実際に訪ねたときにはきちんと応対してくれます。
妖怪だろうが人間だろうが、少し前に異変を起こした私だろうが。
霊夢さんのそんなところが私は好きでした。
「じゃあ、何かお茶菓子でも買って……。」
ぽた ぽた
そう言いかけた時、手に何か冷たいものが当たった。
「え?」
ザァァアアアア――――!!!
上空を突然雲が覆ったかと思うと、間髪いれずに洪水のような雨が降り出しました。
って、さっきまで快晴だったのに何で突然!?
「あー、もう!何で突然大雨になるのよ!」
そこにケロちゃんがあるからさ。
じゃなくて、今はとりあえず雨を凌げそうなところを探さないと。
今から人里に戻るのは距離がありすぎるし……。
「霊夢さん、とりあえずあの木の下に行きましょう!」
「分かったわ!」
私達は近くにあった大きな木の下で雨宿りをすることにしました。
でも、これでもう少し霊夢さんと一緒にいられると思うと、
ちょっとこの大雨に感謝しても良いかもしれません。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふう、とりあえずここなら雨は凌げそうですね。」
「もー、体中びしょびしょ……。」
「大丈夫ですか?今はそんなに寒くないですけど気をつけ……」
振り向いた私は、その光景を見て硬直してしまった。
大きな違いがある訳ではない。
いつも髪を結わいているリボンをほどいて、髪をおろしているだけである。
それだけのはずなのに、目が離せない。
(……綺麗……)
雨露に照らされてたなびく黒髪。
雨に濡れて、少し憂いを帯びたように見える表情。
頬を水滴が伝い、それを煩わしそうに手で払う。
そんな仕草さえも艶っぽさを引き立てている。
普段の霊夢さんは「可愛い」と思っていたが、今は大人の女性のような
雰囲気を醸し出していて、「綺麗」としか思えない。
『水も滴るいい女』なんて私は迷信だと思ってた。
一度、わざと雨に打たれて家に帰った時に鏡を見てみたが、
ただの濡れネズミで、全然綺麗に見えなかった。
そのことを神奈子様と諏訪子様に話したら大笑いされたので、
とりあえずお二方とも一週間夕飯抜きにして差し上げた。
でも、今ならあの言葉は本当だったんだなと分かる。
だって、同い年くらいかそれ以下のはずの霊夢さんに、
こんなにも見とれてしまっているのだから。
どうしよう。顔が熱くなっているのが分かる。
「早苗?早苗~。」
手のひらを私の顔の前でひらひらさせる。
「あんたもしかして熱あるんじゃない?顔赤いわよ。」
霊夢さんが右の手を私の額に当てる。
ひやっとした手が乗せられたのに、私の顔の熱は一向に収まりを見せない。
「あー、やっぱりちょっと熱いわね。全く、気をつけなきゃいけないのはあんたの方じゃない。」
少しだけ心配そうな顔で言う。
でもその言葉は私の頭には入っていなかった。
(鴉の濡羽色ってこういう色のことなのかなぁ)
すぐ目の前に霊夢さんの顔があるのに、そんな感想しか出てこない。
普段の私なら焦りまくってすぐに離れていたことだろう。
ああ、もしかしたら本当に熱があるのかもしれない。
「ちょっと……本当に大丈夫?」
返事がない私を訝しく思ったのか、霊夢さんはますます顔を近づける。
もうほとんど目と鼻の先である。
(霊夢さん、睫毛長いんだな……)
自然と私の目は霊夢さんの顔を辿っていき、
目から鼻、そして唇へと辿り着く。
(霊夢さんの唇……)
雨に濡れて少し湿っている、綺麗なピンク色の唇。
――私は自然と目を瞑り、顔を前に出していた――
唇に柔らかい感触が伝わってくる。
雨に濡れていたせいか、少ししょっぱい味がした。
「んっ……」
漏れ出た声はどちらの物か分からない。
少しの間私たちはそのままでいた。
10秒だったかもしれないし、1分だったかもしれない。
あるいは一瞬だったのかもしれない。
どちらともなく、唇を離す。
「……いきなり何するのよ。」
目を開けると、真っ赤な顔をした霊夢さんが見えた。
恥ずかしいのか、それとも怒っているのか。
本当、何やってるんでしょうね、私。
「何って、キスですよ。」
「そ、そんなこと分かってるわよ!そうじゃなくて、
何でいきなりキ、キスなんて……。」
「霊夢さんがすごく綺麗でしたから。」
ああ、もう自分で何を言っているのか分からなくなってきた。
頭がボーっとしてきて、何も考えられない。
ただ感じたことだけが口から出ていく。
「嫌でしたか?」
「そういう問題じゃなくて!」
「良かった……、嫌われたらどうしようってちょっとドキドキしてたんです。」
そこまで言ったところで、私の意識は遠のいていった。
(ようやく霊夢さんから一本取れたかな?)
倒れる直前に思ったのは、そんなことだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「全く、何で私がこんなことしなきゃいけないのよ。」
目の前には私の布団ですうすうと眠る早苗の姿があった。
熱もそんなに高くはないようだし、これなら大丈夫だろう。
あの後、私はしばらく呆然としていた。
早苗の突然の行為、その後に言われた「綺麗」という言葉が
余りにも衝撃的だったからだ。
はっと我に返ると、慌てて倒れた早苗を抱き起こした。
衰弱しているというほどではないが、このまま放っておく訳にもいかないので、
急いで神社に連れて帰り、服を着替えさせてから自分の布団に寝かしつけた。
(本当に手のかかる子なんだから)
こうして眠る早苗の顔を見ていると、どうしても先ほどの光景が
頭に浮かんできてしまい、慌てて首を振る。
(そ、そりゃ私だって早苗のことは嫌いじゃないけどさ)
素直で優しいけれど、思い込みが激しくてどこか危ういところがあって……。
それでもどこか憎めなくて、世話を焼きたくなる。
そんなところが早苗の魅力であって、そんな風に思ってしまう私も
早苗に惹かれているんだろうなと思った。
そう、だからあの時も驚きはしたし、恥ずかしかったけれど、決して――。
(「嫌でしたか?」)
「……別に嫌って訳じゃないわよ。でもいきなりあんなことされたら
誰だって驚くわよ。」
赤くなっているであろう顔で、寝ている人間に文句を言う。
その人間はまるで意に介さないと言った感じで、気持ち良さそうに寝息を立てている。
……何となく癪だ。
1つ、仕返しを思いつく。
うん、今日はやられっぱなしだしこれくらいは良いだろう。
「お休みなさい、早苗。」
私は眠る早苗の額にそっと口付けを落とした。
(終)
苦手な方はお気をつけください。
こんにちは。東風谷早苗です。
ただいま人里にて霊夢さんと絶賛デート中です!
……ごめんなさい、嘘です。
食糧や、神奈子様、諏訪子様にお供えする為のお酒が大分減ってきたので
人里まで買い物に行ったところ、たまたま霊夢さんと会いました。
「こんにちは、霊夢さん。」
「あら、早苗じゃない。こんにちは。
もしかしたら早苗も買い物?」
「はい。ということは霊夢さんもですか?」
「うん。ちょっと色々足りないものが出てきちゃって。」
せっかくですし、一緒に行きませんか?と誘ったところ、霊夢さんは了承してくれました。
「足りないものって何ですか?」
「お賽銭なら年中不足してるわよ。」
じとーっと見つめられる。
「え、えと、そんな目で見られましても……。」
「冗談だって。醤油とか塩とかの調味料。」
「早苗は本当に素直なのね」と表情を崩す霊夢さん。
うう、普通に話せるようになったのは嬉しいのですが、
最近からかわれることが多くなったような……。
思えば、出会った頃から負けっぱなしのような気がします。
どうにかして霊夢さんから一本取りたいものです。
お買い物自体はつつがなく終わりました。
まあただのお買い物に何か期待する方がおかしいのですが、せっかくの霊夢さんとの
初めてのお出掛けだったので、ちょっと残念さもあります。
帰り道も途中までは一緒に来ましたが、方角的にここからは逆になってしまいます。
名残惜しいですが霊夢さんとはここでお別れしなければいけません。
「また今度神社に遊びに行かせて頂きますね。」
「ま、お茶くらいなら出して上げるわよ。」
口では素気なく言っていますが、霊夢さんは実際に訪ねたときにはきちんと応対してくれます。
妖怪だろうが人間だろうが、少し前に異変を起こした私だろうが。
霊夢さんのそんなところが私は好きでした。
「じゃあ、何かお茶菓子でも買って……。」
ぽた ぽた
そう言いかけた時、手に何か冷たいものが当たった。
「え?」
ザァァアアアア――――!!!
上空を突然雲が覆ったかと思うと、間髪いれずに洪水のような雨が降り出しました。
って、さっきまで快晴だったのに何で突然!?
「あー、もう!何で突然大雨になるのよ!」
そこにケロちゃんがあるからさ。
じゃなくて、今はとりあえず雨を凌げそうなところを探さないと。
今から人里に戻るのは距離がありすぎるし……。
「霊夢さん、とりあえずあの木の下に行きましょう!」
「分かったわ!」
私達は近くにあった大きな木の下で雨宿りをすることにしました。
でも、これでもう少し霊夢さんと一緒にいられると思うと、
ちょっとこの大雨に感謝しても良いかもしれません。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ふう、とりあえずここなら雨は凌げそうですね。」
「もー、体中びしょびしょ……。」
「大丈夫ですか?今はそんなに寒くないですけど気をつけ……」
振り向いた私は、その光景を見て硬直してしまった。
大きな違いがある訳ではない。
いつも髪を結わいているリボンをほどいて、髪をおろしているだけである。
それだけのはずなのに、目が離せない。
(……綺麗……)
雨露に照らされてたなびく黒髪。
雨に濡れて、少し憂いを帯びたように見える表情。
頬を水滴が伝い、それを煩わしそうに手で払う。
そんな仕草さえも艶っぽさを引き立てている。
普段の霊夢さんは「可愛い」と思っていたが、今は大人の女性のような
雰囲気を醸し出していて、「綺麗」としか思えない。
『水も滴るいい女』なんて私は迷信だと思ってた。
一度、わざと雨に打たれて家に帰った時に鏡を見てみたが、
ただの濡れネズミで、全然綺麗に見えなかった。
そのことを神奈子様と諏訪子様に話したら大笑いされたので、
とりあえずお二方とも一週間夕飯抜きにして差し上げた。
でも、今ならあの言葉は本当だったんだなと分かる。
だって、同い年くらいかそれ以下のはずの霊夢さんに、
こんなにも見とれてしまっているのだから。
どうしよう。顔が熱くなっているのが分かる。
「早苗?早苗~。」
手のひらを私の顔の前でひらひらさせる。
「あんたもしかして熱あるんじゃない?顔赤いわよ。」
霊夢さんが右の手を私の額に当てる。
ひやっとした手が乗せられたのに、私の顔の熱は一向に収まりを見せない。
「あー、やっぱりちょっと熱いわね。全く、気をつけなきゃいけないのはあんたの方じゃない。」
少しだけ心配そうな顔で言う。
でもその言葉は私の頭には入っていなかった。
(鴉の濡羽色ってこういう色のことなのかなぁ)
すぐ目の前に霊夢さんの顔があるのに、そんな感想しか出てこない。
普段の私なら焦りまくってすぐに離れていたことだろう。
ああ、もしかしたら本当に熱があるのかもしれない。
「ちょっと……本当に大丈夫?」
返事がない私を訝しく思ったのか、霊夢さんはますます顔を近づける。
もうほとんど目と鼻の先である。
(霊夢さん、睫毛長いんだな……)
自然と私の目は霊夢さんの顔を辿っていき、
目から鼻、そして唇へと辿り着く。
(霊夢さんの唇……)
雨に濡れて少し湿っている、綺麗なピンク色の唇。
――私は自然と目を瞑り、顔を前に出していた――
唇に柔らかい感触が伝わってくる。
雨に濡れていたせいか、少ししょっぱい味がした。
「んっ……」
漏れ出た声はどちらの物か分からない。
少しの間私たちはそのままでいた。
10秒だったかもしれないし、1分だったかもしれない。
あるいは一瞬だったのかもしれない。
どちらともなく、唇を離す。
「……いきなり何するのよ。」
目を開けると、真っ赤な顔をした霊夢さんが見えた。
恥ずかしいのか、それとも怒っているのか。
本当、何やってるんでしょうね、私。
「何って、キスですよ。」
「そ、そんなこと分かってるわよ!そうじゃなくて、
何でいきなりキ、キスなんて……。」
「霊夢さんがすごく綺麗でしたから。」
ああ、もう自分で何を言っているのか分からなくなってきた。
頭がボーっとしてきて、何も考えられない。
ただ感じたことだけが口から出ていく。
「嫌でしたか?」
「そういう問題じゃなくて!」
「良かった……、嫌われたらどうしようってちょっとドキドキしてたんです。」
そこまで言ったところで、私の意識は遠のいていった。
(ようやく霊夢さんから一本取れたかな?)
倒れる直前に思ったのは、そんなことだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「全く、何で私がこんなことしなきゃいけないのよ。」
目の前には私の布団ですうすうと眠る早苗の姿があった。
熱もそんなに高くはないようだし、これなら大丈夫だろう。
あの後、私はしばらく呆然としていた。
早苗の突然の行為、その後に言われた「綺麗」という言葉が
余りにも衝撃的だったからだ。
はっと我に返ると、慌てて倒れた早苗を抱き起こした。
衰弱しているというほどではないが、このまま放っておく訳にもいかないので、
急いで神社に連れて帰り、服を着替えさせてから自分の布団に寝かしつけた。
(本当に手のかかる子なんだから)
こうして眠る早苗の顔を見ていると、どうしても先ほどの光景が
頭に浮かんできてしまい、慌てて首を振る。
(そ、そりゃ私だって早苗のことは嫌いじゃないけどさ)
素直で優しいけれど、思い込みが激しくてどこか危ういところがあって……。
それでもどこか憎めなくて、世話を焼きたくなる。
そんなところが早苗の魅力であって、そんな風に思ってしまう私も
早苗に惹かれているんだろうなと思った。
そう、だからあの時も驚きはしたし、恥ずかしかったけれど、決して――。
(「嫌でしたか?」)
「……別に嫌って訳じゃないわよ。でもいきなりあんなことされたら
誰だって驚くわよ。」
赤くなっているであろう顔で、寝ている人間に文句を言う。
その人間はまるで意に介さないと言った感じで、気持ち良さそうに寝息を立てている。
……何となく癪だ。
1つ、仕返しを思いつく。
うん、今日はやられっぱなしだしこれくらいは良いだろう。
「お休みなさい、早苗。」
私は眠る早苗の額にそっと口付けを落とした。
(終)
検閲された部分を(ry
濡れ羽色の髪ってのは日本人女性の理想さね
安易に染めちゃうのはどうかと思うよ、うん
ヘアダメージってのは案外キツイものがあるのさ
コメントを下さった方もそうでない方も、本当にありがとうございます!
>>13様
なんとなく、霊夢の髪が雨に濡れたら
そんな感じになるんじゃないかなと思いました。
>>24様
検閲された部分を読み返してみたら、結構きわどかったので(汗)
>>27様
黒髪もレイサナも良いですよね!
そういえば早苗さんって染めているんだろうか……。
もしそうならヘアダメージがあるのかも……。
>>47様
是非とも、これを機にレイサナに目覚めて頂けると嬉しいです!