ぷよぷ〇
それは、シンプルながらも、とても奥深いゲームの代表の一つ――――――
幻想郷でぷよぷ〇がブームを起こした際、幻想郷の中でもとくに腕利きの強者四人が、ぷよぷ〇四天王とされ、ぷよぷ〇世界のカリスマ的存在となっていた
ミラクルバッジ、デスティニーバッジ、ラッキーバッジ……そして、隠されたもう一つのシークレットバッジ
この四つのバッジを手に入れた者が、ぷよぷ〇チャンピオンに挑戦することが出来る
しかし、それぞれのバッジ守護者は伏せられている
そして、チャンピオンも
妖夢に敗北した早苗は、四天王の一人ということがバレてしまい、人だかりに囲まれてしまっていた
挑戦者、天狗、野次馬……
「馬鹿みたいですね」
しかし、それを尻目に妖夢の背後に降り立つ天狗が一人いた
「何が四天王ですか。そうだった所で、今の彼女は所詮敗者。インタビューをすべきなのは勝者である貴方のはずでしょうにね」
妖夢が振り返れば、そこにいたのは
「射命丸……文さん、でしたっけ」
「はい、毎度おなじみ射命丸文です」
言って笑顔
だが、マスコミの笑顔は、獲物を見る猛獣の目つきに外ならない事を妖夢は知っている
「インタビュー、宜しいですか?」
「断る、といえば」
「あやややややや、困りましたねえ。手荒な真似はしたくないんですがねぇ。私もぷよぷ〇の腕はそれなり自負していますし、負け惜しみ地味た事をべらべら言う四天王最弱の方よりも余程強い自信があるんですが?」
妖夢がDSを取り出す
「ならば……勝負!!」
文もまた、DSを手に取る
「私はチャンピオンなんかには興味ない。ではなぜ、腕を磨くのか?…………それは、貴方のような人を黙らせるためですよッ!!」
少女通信中...
「受けてみなさい!幻想郷最速の奥義を!「幻想風靡」!!」
文は十字キーに添える指を……下に!!
(始まる前から!?まさか!!)
文はニュートラルキーを下とし、高速で落ちてくるぷよを捌く
「くっ!」
「攻撃こそが最大の防御とはよく言ったものです。自分の被害を押さえるならば、早い話、相手に攻撃させなければいい!!」
(いったいどうすれば……!)
考えろ魂魄妖夢
下キーを押しながらの離れ業、必ず何かを犠牲にしているはず
それは……
妖夢は文の画面に目をくれる
二連鎖 二連鎖 一連鎖 二連鎖……
そう、彼女は手数を増やすが故に、己の攻撃力を削っている
攻撃は最大の防御とは、強力な一撃のことではなく、手数を増やすことにより、反撃をさせない事だ
ならば、こまめに捌く……?
……違う
連続した攻撃と大きな連鎖では攻撃力は違う
それ幸いに、文の攻撃力はそれ程の物ではない
そして、小さな攻撃などを纏めて捌けるシステムがある
そう、フィーバーだ
妖夢は文の波状攻撃を捌く
「受け身ばかりでは私は倒せませんよ!!」
「ええ、今反撃に入らせてもらいます!!」
フィーバー!!
「ちっ!」
「受け身になることで得られる利点もあるのですよ」
「それがどうした!!」
しかし、文のおじゃまぷよはフィーバー中の妖夢の画面に降ってくる事はない
「反撃です!」
「無駄無駄無駄!!全て相殺させていただきます!!」
「ならば、私のスピードに付いて来てみてはどうです?」
「何ですって?速さで私が負けるはずが……」
妖夢が十字キーを下に押し込む!!
フィーバーモードは大連鎖が狙えるだけでなく、ぷよが解りやすい位置に並んでいる
よって、妖夢でも最速かつ高い攻撃力が実現可能になる!
妖夢の画面上部の薄いおじゃまぷよの壁はいとも簡単に破れた
「ふん、こんなもの、全て相殺して相殺して相殺して……!!」
そして文が受け身に回った瞬間、絶望の顔色に代わる
「ぷよは攻撃を行う剣だけではない。おじゃまぷよを弾き返す盾でもある」
「――――ッ!?」
「射命丸文、貴方はぷよを攻撃に使いすぎた!!」
ぷよが一つ二つしか残っていなかった文の画面は、次の瞬間おじゃまぷよに埋め尽くされた
「私の勝ちですね」
「ええ、私の完敗です。インタビューは諦めます」
「では」と立ち去ろうとした妖夢に、文が声をかける
「折角ですからいい事教えましょう」
「いい事?」
「デスティニーバッジの守護者です」
「!!」
「ふふふ……天狗の情報網を舐めないでください」
「で、誰なんですか?」
「紅魔館の主―――レミリア・スカーレットですよ」
館へ走り出す妖夢の背中を見ながら、文が呟いた
「やれやれ、先週からもう二連敗……。やはり四天王を倒すだけはありますね。さて、どちらがぷよぷ〇の頂点に立つのか……これは見物です」
紅魔館
霧の湖の中央付近の島に聳える紅き館
(ここにデスティニーバッジが……)
だが、妖夢はここで違和感を感じる
静か過ぎるのだ、館が
門番もいない
(門番がいないんでは入れないんだけど……)
と、門から一歩踏み出したその時だ
妖夢は門の傍らにばたんきゅーする一つの影を見つけた
間違いない。紅魔館の門番、紅美鈴だ
「美鈴さん!どうしたんですか美鈴さん!」
美鈴は返事をしない
明らかに不自然
(館で何かがあった……?)
妖夢は不気味な静けさを放つ館へ入って行った
館の内部でも沢山の妖精メイドがばたんきゅーしている
やはり何かあったのは間違いない
2階にあがると、また一人見覚えのある姿を捉えた
メイド長の十六夜咲夜だった
「咲夜さん!!」
「貴方は……白玉楼の……」
「一体何があったんですか!?誰にやられたんですか!?」
「早く……お嬢様の部屋へ……お嬢様が危な……い…………」
「咲夜さん!咲夜さん!!十六夜咲夜さん!!」
咲夜はばたんきゅーしてしまった
彼女程の者がこんな事になってしまうとは、いったい何があったのか
とにかく、妖夢はレミリアの部屋へ急ぐ事にした
レミリアの部屋は三階に上がればすぐそこにあった
中には――――
「レミリアさん!?」
「お客さんかしら?」
それはレミリアの声ではなかった
なぜなら、彼女は今、目の前でばたんきゅーしているのだから
だが、その声には聞き覚えがある
「ごめんなさいね。デスティニーバッジの守護者はもう使い物にならなくなったわ。もっとも、私の目的はこんなバッジじゃないんだけれども」
「誰だ!姿を表せ!」
「あら、誰かと思えばその声は妖夢?」
カーテンの掛かったベッドから出て来たのは――――
「博麗……霊夢さん……!!」
「お久しぶりね」
「貴方が……これをやったんですか」
「ええ。金欠だからご飯でもたかりに来たらあのメイドが文句を言うもんだから、奪っちゃえって思って」
清々しいまでの外道っぷりだ
博麗霊夢、もはや巫女にあらず……!!
「許しません!!」
「どう、許さないのかしら?」
妖夢はDSを取り出す
「今度は貴方がばたんきゅーする番です!レミリアさんの、咲夜さんの、そして沢山の妖精メイドたちの分まで!!」
「さりげに美鈴は無視なのね」
「……美鈴さんの分まで!」
「上等、本気になった博麗の巫女の力を見せてあげようじゃない!」
少女通信中...
妖夢は積み上げて行く中、まず一つの違和感に気付いた
(攻撃して来ない……?)
いや、戸惑う事はない
ならばこちらから攻めるまでだ
現時点で妖夢が積める最高の連鎖、十一連鎖!!
………………………………
…………………
………
…
(落ちてこない……?)
妖夢は霊夢の画面を見やる
そこではとんでもない積み上げ方がされていた!!
(なんだこれは……!?)
全てのぷよが例外無く三つ繋げられている
霊夢は妖夢が十一連鎖を組み上げている時に、完全なる防御の形を整えていたのだ
そして流れてくる片方のぷよでぷよを消し、もう片方のぷよで確実に三つ繋がったぷよを作って行くという反撃
尋常でない計算力である
「これが博麗の巫女究極奥義「博麗弾幕結界」!!この結界を破る攻撃等存在しないわ!!」
「クッ!!」
「何をボーッとしているのかしら?フィーバーよ!!」
「しまった!?」
妖夢は慌てて防御用のぷよを積む
この技を破る方法はなんだ?
なにかあるはずなのだ
そう、霊夢とよくたたかっている魔理沙
彼女はいつもどういう立ち回りで霊夢と戦っている?
……いや、考えるまでも無いことだった
「真に強力な一撃には小細工なんて通用しないぜ」
弾幕はパワー
いくら強力な結界を、バリアを、シールドを張ろうと、それをぶち破る程の火力で正面突破するのが彼女のやり方
ならば――――――
妖夢は文との戦いの時のように高速でぷよを捌きフィーバーを放つ
そして互いにぷよを相殺仕切った――――
(今が勝負!!)
妖夢はぷよを積む
七連鎖 もっと高く
十一連鎖 もっともっと高く
パワーの限界へ――――――!!
――――十四連鎖!!
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「!?」
霊夢の顔色が焦りに変わる
消す消す消す消す!!
消えない消えない消えない消えない!!
「クソッ!?けど、まだだっ!!」
フィーバー!
「これが駄目押しです!!」
妖夢の五連鎖!!
「ぐぅ!?うおおぉぉぉぉぉぉぉ!?この博麗弾幕結界が!?この、博麗霊夢がぁぁ!?馬鹿なっ……ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
おじゃまぷよが、霊夢の結界を突き破った
「ありがとう魂魄妖夢。助かったわ」
「いえいえ」
レミリアは懐から赤く光るものを取り出す
「デスティニーバッジよ」
「え……?そんな、私はまだレミリアさんとは……」
「いいのよ。私を倒した霊夢を貴方は倒した。貴方は私より強いわ。受け取りなさい」
妖夢はレミリアからバッジを受け取った
「ありがとうございます」
そういうとレミリアは微笑んだ
「レミリアさん」
「何かしら」
「四天王の後二人、ラッキーバッジとシークレットバッジの守護者は誰か知りませんか?」
「……生憎、シークレットバッジの守護者は知らないわ。四天王の中でも最強の存在と聞いたけど」
「ラッキーバッジの守護者は?」
「因幡てゐ」
「永遠亭の……?」
「中ボスだからって甘く見ては駄目よ。かなり手強いわ」
「……はい」
妖夢はその場を去る
レミリアが言った
「頑張りなさい」
「……はい!!」
迷いの竹林
広く、同じような景色が続くので迷いやすく、まず因幡てゐに出会うのが難しい
だが、存外早く見付かった
「ファイターの気配は分かりやすい」
彼女はいつの間にか妖夢の目の前にいた
「……ならば分かりやすく済ませましょうか」
「そうね」
二人はDSを取り出す
ファイターが戦うのに理由はいらない
互いの闘志がぶつかり合うとき、それは自然と発生してしまうものなのだ
「ぷよぷ〇は実力だけではない。あんまり堅い計算してると予想外の出来事に全然対応出来ないわ。運。そう、ぷよを信じることも大事。そして私こそが幻想郷一のギャンブラー!中ボスだからって甘く見てると怪我するよ!!」
少女通信中...
てゐの置き方もまた変わった置き方だ
だが霊夢のような凄みを感じない
彼女の置き方はどうみても無計画に両端に積み上げているようにしかみえないのだ
(これは一体何の真似だ……?)
解らない時はまず攻める
ただし迂闊であってはならない
師の教えだ
「四連鎖!」
もう少し積んでもよかったか?
「幸運のウサギ……その力は伊達じゃないのよ」
三連鎖!!二連鎖!!
「成る程、無計画に流しているわけじゃないというわけですか……」
「いいえ、一重に運よ」
「戯言を!」
積む積む積む!
しかし、ぷよは通れど決定打を与えられない
てゐはあっという間にフィーバーへ突入する
速さは高いが、攻撃的ではない攻め方だ
適当な積み方ではあるが、ぷよは予想外の動きで連鎖してゆく為、読みにくい
さらに、おじゃまぷよが積み上がっても、両端に建てられたぷよタワーなお陰で消しやすい
成る程、徹底した効率の置き方
だが、弱い
所詮は射命丸文に毛が生えた程度だ
霊夢のように絶対防御の結界を張っているわけでもない
フィーバーでいくらでも返せる
妖夢は受け身に回り、ゲージを溜める
てゐ側はおじゃまぷよこそないが、ぷよ自体が山積みになっている
(これならあと一押し)
ウサウサウサウサ……
(?)
ウサウサウサウサウサウサ!!
(!?)
ウサウサウサウサウサウサウサウサウサウサウサウサ!!!!
てゐが狂ったように笑い出す
「何を……」
「私の勝ちウサ」
「何を言っている……?」
「そっちこそ、何を見ているウサ?」
「!?」
妖夢は気付いた
てゐが、一体 何を仕込んだのか
「十二連鎖……だと……!?」
バラバラに並べられているように見える積み上げ方は、よく見れば大連鎖になっている
一見、バラバラに積み、何気なく消していた積み方は、全てカモフラージュ
本当に大事なぷよをさりげなく残してこの大連鎖を汲み上げた――――!!
「よく数えられたウサね……でも、かわせるウサ?」
十二連鎖が着火される
大きい連鎖は完成まで時間が掛かる
それまで、出来る限りのぷよを妖夢は積み上げる
(ウサウサウサウサウサ!!何が幸運!?何がぷよを信じる!?そんな不確かなものに頼るようなやつが勝利等ありえないウサ!結局最後に勝つのはぁ……ずる賢い奴なんだよォォォォォォォ!!ウ―サウサウサウサウサウサ!ウ―サウサウサウサウサ!!(この間わずか一秒))
そうして妖夢が組み上げたのは……三連鎖
しかし、フィーバーに入ることは出来る
「フィーバー!!」
(そして、ここからがどうするか……ただ、フィーバーに甘えるだけでは勝てない。もっと強力な……フィーバーを越える一撃を────!(この間わずか一秒))
「なん……だと……?」
てゐは妖夢の奇行に目を疑う
フィーバーとは、もとより、ぷよの詰んである状態の物が降ってくる状態
それを妖夢は……さらに積む!!
「うおおおおおおおおおおっ!!」
「そんな……!!そんな積み方が……!!」
「これで……終わりだァァァァァァァァァァ!!!」
「ぬ、ぬわ―――――――――――――――――!!!」
「か、完敗ウサ……」
「なかなかいい試合だったと思いますよ」
「ともあれ、ラッキーバッジは渡すウサ。私を破ったのは二人目ウサ」
「二人目……?誰ですか?」
「それは……」
その時、言いかけたてゐと妖夢の間に青白い閃光が走った
「ナイスファイトでした。四天王てゐ、そして、三つ目のバッジを手にした者、魂魄妖夢さん」
「ど、どこから……?」
辺りを見渡すが、誰もいない
その透き通った声が、ただ聞こえるだけ
「とくに、ナイスフィーバーでしたよ。魂魄妖夢さん」
「姿を表せ!何者だ!!」
妖夢はDSを構える
「これは失礼……」
っずどん!!
一際大きな閃光が、妖夢の正面に堕ちる
立ち込める煙の中から出て来たのは……!!
「はじめまして。私は四天王最後の、シークレットバッジを守護する者……」
「「お、お前は――――――――――!?」」
to be Continued...
……と言いたいところだけど最後の四天王はきっとあの人だろう。トラボルタ的な意味で。
バッヂ云々はくるみ?
もう少しバトル以外での会話が欲しかったかなと思いました。
文の攻撃連発や霊夢とてゐの連鎖や妖夢の展開など面白かったですよ。
下キーの押しっぱなしはある程度うまい人なら普通では?