雪が融け初めているのだろう、大量の瘴気と少しの泥に溢れそうな森を歩く・・・足が無いのだから進むのほうが合っているかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えて進む間に、目的地に着いたようだ。
しかし、何時もなら灯りを点けて起きている筈なのに今日は薄暗い。
不審に思いつつも戸を叩いて声を掛けてみる。
「霖之助。いないのかい?」
耳を澄ませて返事を待っても、聞こえるのは風と木々が擦れ合う音だけ。
まるで、他に誰もいないような錯覚を覚えるほど静かだった。
「・・・アイツにしては珍しいな」
折角来たというのにアイツは困ったものだと、言われる側からすれば理不尽極まりない悪態をついて帰ろうとした時。
「・・・魅魔さん、静かにしてもらえませんか?」
誰かに聞かれたら困る話をするように、小さな声で店主が喋る。
静かにしてほしい何てどこぞの騒霊じゃあるまいしと思いつつ
「騒いだ覚えはないんだけどねぇ、騒がしかったかい?」
ついこちらも小声で聞き返す
それにしても、戸をちょっと叩いて声を掛けただけだと言うのに失礼な奴だ。
「・・・今、魔理沙が奥で寝ています」
「・・・それは起こしちゃ悪いね」
今会ってしまうと、あのスキマにまた小言を言われてしまう。
相変わらず賢者様の考えてることは読めないが、とりあえず起きなくて良かった。
「まだ、以前のように接しては駄目なのですか?」
「残念だけど、まだ駄目みたいだ」
まぁ、それを素直に全て受け入れてはいはい従うつもりなんて私には元からないけど。
それはスキマもわかってるだろうし、好きにさせてもらうまでだ。
今のところ何も言ってこないということは、何も問題がないということなのだから。
「今度は、何を魔理沙に渡しますか?」
今まで、あの子に必要そうなのを私が作成して霖之助にあの子が自主的に持って行くように仕組んだり
気付かないまま持っていかなかったりしたものを、私がこっそり家に置いてきたりしてきたけど
そろそろ、あの子が何を必要としているのか解らなくなり始めた。
「あの子は、今何を必要としているのかねぇ」
ドールマスターやエレメンタラーのように追い求めるものが限られているなら話は別だが。
魔法使いと言うものは、個々に求める物が違っているからそれを教えるのは難しい。
あの子は、何を求めて何になろうとしているのだろう、と考えていると。
「・・・そういえば、僕も数日前に聞いただけで実際見たわけだはありませんが」
「ん?何かあったのかい?」
「最近、空を不思議な船が走るという噂があるんですよ」
「天狗にでも聞いたのかい?相変わらず胡散臭い事言って飛び回ってるんだね」
「えぇ、この新聞を制作している射命丸文という天狗から聞きました」
「文々。新聞ねぇ・・・で?その噂がどうかしたのかい?」
普通、船は水の上に浮いて走るものだから空を走るというのは珍しいが幻想郷では大したことではないように思える。
「船というのは、普通は空を走りません例え幻想郷であったとしても」
「まぁ・・・それはそうだろうけど」
「普通じゃないことが起きるということは、霊夢や魔理沙が異変として解決しに行くかもしれません」
「思い浮かばないなら実際見て、足りないと思えるものを探せばいいってことか」
「えぇ、朝になったら魔理沙に神社へのお使いを頼むので運が良ければそのまま行く可能性があります」
「じゃあ、朝になったら後をつけさせてもらおうかねぇ」
東方星蓮船 ~ Undefined Fantastic Object.マニュアルに続く・・・?
オマケ
さっき見せてもらった時に魔理沙と霊夢が載っていたのが気になった。
普段何しているのか気になるのに
スキマが何時も話を濁して話そうとしないから気に食わない。
「ところで霖之助、さっきの新聞なんだが」
「文々。新聞のことですか?」
「あぁ・・・他にもまだ持っているか?」
「少し処分してしまったので全部ありませんが、一応ある程度はありますよ」
「読んでみたいから、持ってきてくれないか」
「わかりました、少し待っていてください霊夢と魔理沙の記事だけでよかったですか?」
「あるもの全部持ってきてくれ、あの子が起きるまでに読むから」
あの子達は今、どんなことをしているのだろう。
どんな妖怪や神と知り合いになったのだろう。
文々。新聞の作者らしい射命丸文という天狗にも話を聞いてみたいと思った。
恥ずかしながら、弟子離れが出来るのは当分先のようだ・・・。
わくわくします。
わくわくしていただけたのなら何よりです。
>>irusuさん
私の中の魅魔様は弟子離れできない師匠馬鹿なので、こんな風になりました。
今さらですがレスさせていただきました、お二方ありがとうございます。