夜雀がある人里を襲った。
といっても、死者やけが人はない。
里の住人全てが鳥目にされ、夜ほとんど出歩くことが出来なくなってしまうというものだった。
霊夢は直ちに夜雀・ミスティア=ローレライを捕まえた。
ミスティアは直ちに異変が自らの仕業であることを認めたが、鳥目の呪いを解除する事は頑なに拒んでいる。
霊夢は呪いを解くまで神社から出さないとミスティアに宣告したが、彼女は一歩も妥協しない。
そうして一夜が明けた。妖力を封じる結界で、ミスティアは社務所の一室から出られなくなっている。
「あんたも強情ね、少し食べたら?」
握り飯を進めるが、彼女は一口も食べない。
「妖怪は食べなくても死なないもん!」 ミスティアは口を尖らせる。
「夜雀の屋台、ずっと営業してないんでしょ、鳥目を解除しないとお客さんも来ないわよ」
「お金の問題じゃないの、人間たちが自分の過ちに気付くまで、絶対止めないから!」
「過ち? 鳥肉を食べること、人間である以上、誰かの命をもらわなければ生きていけないわ」
「そんな事じゃない、私のところに謝りに来るまで、あの里の人間達は鳥目のままよ」
いったい何が彼女をそんなに怒らせてしまったのだろう。
最後の手段として『幽々子を呼ぶぞ』と脅してみたが……、
「好きにして!」
とあっさり突っぱねる。
このままでは埒が明かない。霊夢は件の人里へ再び足を運んだ。
◆
「どうして何もうまくいかないんだ、くそっ」
一人の少年が、買い物かごを提げ、世に対する呪詛をつぶやきながら、里の通りの片隅を歩いている。
彼はかつて、上白沢慧音の寺子屋に通っていたが、今は通っていない。
たびたび他の子供たちと揉め事を起こし、あげく最下位の成績を笑った級友を怪我させて、慧音にもう手に負えないと言われ、そのまま飛び出したきりだ。
その後、弾幕使いになってやろうと霧雨魔理沙に弟子入りするが、才能の有無以前に努力する意思が感じられないと言われ、一週間で破門になった。出て行く前に霧雨邸に火をつけ、ボヤ騒ぎまで起こした。
その後、家の手伝いをしながら無気力に暮らす日々を送っている。
「母さんただいま、これ、頼まれた野菜だよ」
「あんた、また間違えたね、大根じゃなくてごぼうだって言ったのに。それに釣銭ちょろまかしたね」
「してないよ」
「じゃあ、その口についたあんこは何だい? もういい年して、ほんっとにバカだねえ」
「ごめん」
「まったく、慧音先生の寺子屋にも行かない、家の仕事もろくに手伝えない、どうやって生きていくつもりだい、次は庭の掃除でもしてな」
少年はしぶしぶ箒をとる、もし霧雨魔理沙のように箒に乗って空を飛べたらどんなに気持ちいいだろうか、魔法の奥深い知識をマスターし、華麗な弾幕で妖怪を倒し、同じ力を持った人間や妖怪の仲間たちと宴会をする。そんな可能性が自分にもあったかも知れない、白昼夢にひたる、母の叱咤で現実に引き戻される。
「なにやってんだい、掃除ぐらい出来ないのかい、まったく世の中には手足が無い子だっているのに、お前の両手両足を切り取ってその子に移植したほうがよっぽど役に立つよ」
(畜生、なにもそこまで言わなくても……神経に障る言い方ばかりしやがる)
少年は空想にふける以外の鬱屈した想いを晴らす手段を求めていた。
庭に入ってきた黒猫にえさをやろうとするが、フーッと威嚇して逃げていった。
「てめえも俺を否定するのかよ」
隣の家の軒下に、子育てに精を出すツバメがいた。
どす黒い感情が芽生え、箒の柄を掴んで巣に足を進めた。
◆
「らんらんら~ん ツバメのお母さん、今日も大忙し」
人間の姿を装い、鼻歌を歌いながらミスティアは里を歩く。
ある日、屋台の材料を仕入れに里へ行ったとき、家の軒先にかわいらしいツバメが巣を作っていた。
巣立ちの日まで見守るのがミスティアのちょっとした楽しみになった。
次の角を曲れば巣が見える、どれくらい成長しているだろうか。
しかし、あるはずの場所に巣が存在しない。
ふと地面に視線が行き、買い物かごが地面に落ちた。
「何よ……誰がやったのよ」
地面には巣の残骸と、明らかに踏み潰された雛鳥の変わり果てた姿があった。
目を伏せ、体を振るわせるミスティア。
「生きるために殺すのなら、まだ許せる……でも」
鋭い爪が伸びていくのを隠しきれず、彼女は一目散に里の外へと走っていく。
このままだと殺害衝動を抑えられなくなりそうだ。
◆
ツバメの雛鳥や、えさを求めて近づいてくる鳩を虐げるのが、彼の密やかな日課となった。
雛鳥を踏み潰すのみならず、くちばしや足を切断する。水に沈めておぼれさせる。
弱い者に暴君として振舞うときにだけ、彼はうだつの上がらない現状を忘れることができた。
多くの人々は当然彼の行為に眉をひそめたが、批判されるたびにこう正当化するのだ。
「糞を撒き散らすあいつらを駆除してやってるんだ、ゴキブリを潰すのとどこが違う」
夜雀の異変で、人々が鳥目状態にされたときも、彼は動じなかった。
むしろ自分の所業に人々が困惑する様をみて、歪んだ快楽すら覚えた。
(俺を見下した連中が、俺の行為に引っ掻き回されてやがる)
そんな彼の全能感は、夜雀の怒りの原因を探す霊夢に見つかるまで続いた。
◆
「ミスティア、こいつよ、ツバメの巣を潰して回ったのは」
少年は全身に護符を張られた状態で、ミスティアの前に連れてこられた。
「離せ博麗、お前も人間だろが」 少年は悪びれない。
「お前だったのか、あの時、ツバメの親たちが泣きながら飛び回っていた。まだ息があった子たちは、お母さん、お母さんって必死に叫んでいた」
ミスティアは静かな怒りをこめた声で、ツバメの苦痛を少年に教えた。
霊夢に拘束されているとは思えない威厳だった。
「ささやかなツバメの幸せを、お前は踏みにじった、そうよね」
「だから何だよ」
「ちょっと、謝っときなさいよ、妖怪は貴方が考える以上に手ごわい存在よ」
「知るか、害鳥駆除しただけだ」
顔を曇らせる霊夢。
「親鳥は悲しんでいた、分かる? お前の行為が、雛鳥の命を奪い、私の怒りを買って里の人に迷惑をかけることになったのよ」
少年は目をそらしたまま黙っている。やがて、ぶつぶつと本音を吐露しだした。
「そりゃあ、俺だってまじめに生きようとしたさ、でも、何をやってもうまくいかない。寺子屋からも追い出された。みんな良かれと思っても必ず裏目に出る。みんなみんな、俺をそろいもそろって馬鹿にする。人の迷惑? 知ったことか、俺の価値を認めない奴らがどうなろうといい気味だ。ツバメの命を奪う? どこが問題だ、命なんてどこでも蔓延るじゃねえか。俺の行動如きでツバメが絶滅するとでも言うのかよ」
「甘ったれるのもいい加減にしなさいよ」
霊夢が護符の封印力を強め、少年が苦痛にあえいだ。
「さあ、謝らなければもっと苦しくなるわ」
「痛えよ……畜生……クソ共がっ、もっと能力を持った人間に生まれていれば、強い存在に生まれてさえいれば、こんなことには、ぐうっ」
少年は一言の謝罪もなく気絶した。
「霊夢、人間には鳥を食べるのを止めて欲しい、でも人間も食べなければ生きていけない、だから、食べる分だけは辛いけど見逃すことにしているの。ヤツメウナギを流行らせ、遠回りにでも鳥肉を食べなくなるようになって欲しい。それが最大限の妥協だった。でもこいつは、生きる上で必要も無いのに、小さな命を奪った。自分の鬱屈した感情を、無抵抗な弱い者へ向けた」
「確かに同情の余地は無いわ、でも命だけは助けてやって、神社で殺生は禁物よ」
ミスティアはどうしてか霊夢の結界を破り、出られないはずの部屋の境界をいともたやすく踏み越えた。
「どうして? あんたぐらいの妖怪が踏み越えられるはずが……」
意識の戻りかけた少年に近づき、頭を掴んで顔を向けさせた。
「てめえ、何する」
「言葉の端々から、お前が幸の薄い人生を送ってきたことは分かる。だけど、必ずしも被害者イコール正義じゃない。虐げられてきた、苦しんできた、そんな過去は決して殺しのライセンスには成り得ない」
「ちょっと、その子をどうするつもり?」 霊夢が弾幕生成の用意をする。
「当然さらうのよ、霊夢は黙ってて」 ミスティアは動じない。
「まさか喰うんじゃ……」
「黙れ!」
霊夢は制止しようとしたが、ミスティアに一括され、思わず陰陽玉を取り落としてしまう。宝玉はむなしく床を転がっていく。
「今私がさらわないで、親も慧音も見離したこいつを、誰が止めるのよ」
能天気に歌を歌う妖怪ぐらいとしか思ってなかったが、まさか彼女が、これほどの激しさを内に秘めていると誰が想像しただろうか。
「お前には人間としての生を捨ててもらう」
ミスティアは少年を抱きかかえ、風のように消え去った。
霊夢はただ呆然と立ち尽くすのみだった。
◆
文々。新聞
夜雀屋台に二号店が登場
焼き鳥撲滅のため、夜雀のミスティア=ローレライ氏が経営しているヤツメウナギの屋台が人気だが、先日新たな屋台がオープンした。切り盛りしているのは彼女がさらってきた人間の男性。彼は当初非常に反抗的だったが、ある方法で幽霊を憑依させることで、非常に頼もしい戦力になってくれたという。
ミスティア氏のコメント
「最初のうちはともかく、最近は自発的に協力してくれるようになったわね。彼も仕事を楽しんでいるみたい。人間がベースだから計算も私より正確にこなせるし、便利な使い魔みたいなものね」
彼は里の社会に順応できず、トラブルを繰り返しており、それに目をつけたミスティア氏が、労働力になってもらうのと引き換えに新たな人生を用意してあげたとの事、罪人更正のひとつのテストケースとして是非曲直庁も注目している。
二号店男性のコメント
「非常にヤりがイのあル仕事。こレからモ彼女と協力シ合って焼き鳥をナくしテいキたいデす」
といっても、死者やけが人はない。
里の住人全てが鳥目にされ、夜ほとんど出歩くことが出来なくなってしまうというものだった。
霊夢は直ちに夜雀・ミスティア=ローレライを捕まえた。
ミスティアは直ちに異変が自らの仕業であることを認めたが、鳥目の呪いを解除する事は頑なに拒んでいる。
霊夢は呪いを解くまで神社から出さないとミスティアに宣告したが、彼女は一歩も妥協しない。
そうして一夜が明けた。妖力を封じる結界で、ミスティアは社務所の一室から出られなくなっている。
「あんたも強情ね、少し食べたら?」
握り飯を進めるが、彼女は一口も食べない。
「妖怪は食べなくても死なないもん!」 ミスティアは口を尖らせる。
「夜雀の屋台、ずっと営業してないんでしょ、鳥目を解除しないとお客さんも来ないわよ」
「お金の問題じゃないの、人間たちが自分の過ちに気付くまで、絶対止めないから!」
「過ち? 鳥肉を食べること、人間である以上、誰かの命をもらわなければ生きていけないわ」
「そんな事じゃない、私のところに謝りに来るまで、あの里の人間達は鳥目のままよ」
いったい何が彼女をそんなに怒らせてしまったのだろう。
最後の手段として『幽々子を呼ぶぞ』と脅してみたが……、
「好きにして!」
とあっさり突っぱねる。
このままでは埒が明かない。霊夢は件の人里へ再び足を運んだ。
◆
「どうして何もうまくいかないんだ、くそっ」
一人の少年が、買い物かごを提げ、世に対する呪詛をつぶやきながら、里の通りの片隅を歩いている。
彼はかつて、上白沢慧音の寺子屋に通っていたが、今は通っていない。
たびたび他の子供たちと揉め事を起こし、あげく最下位の成績を笑った級友を怪我させて、慧音にもう手に負えないと言われ、そのまま飛び出したきりだ。
その後、弾幕使いになってやろうと霧雨魔理沙に弟子入りするが、才能の有無以前に努力する意思が感じられないと言われ、一週間で破門になった。出て行く前に霧雨邸に火をつけ、ボヤ騒ぎまで起こした。
その後、家の手伝いをしながら無気力に暮らす日々を送っている。
「母さんただいま、これ、頼まれた野菜だよ」
「あんた、また間違えたね、大根じゃなくてごぼうだって言ったのに。それに釣銭ちょろまかしたね」
「してないよ」
「じゃあ、その口についたあんこは何だい? もういい年して、ほんっとにバカだねえ」
「ごめん」
「まったく、慧音先生の寺子屋にも行かない、家の仕事もろくに手伝えない、どうやって生きていくつもりだい、次は庭の掃除でもしてな」
少年はしぶしぶ箒をとる、もし霧雨魔理沙のように箒に乗って空を飛べたらどんなに気持ちいいだろうか、魔法の奥深い知識をマスターし、華麗な弾幕で妖怪を倒し、同じ力を持った人間や妖怪の仲間たちと宴会をする。そんな可能性が自分にもあったかも知れない、白昼夢にひたる、母の叱咤で現実に引き戻される。
「なにやってんだい、掃除ぐらい出来ないのかい、まったく世の中には手足が無い子だっているのに、お前の両手両足を切り取ってその子に移植したほうがよっぽど役に立つよ」
(畜生、なにもそこまで言わなくても……神経に障る言い方ばかりしやがる)
少年は空想にふける以外の鬱屈した想いを晴らす手段を求めていた。
庭に入ってきた黒猫にえさをやろうとするが、フーッと威嚇して逃げていった。
「てめえも俺を否定するのかよ」
隣の家の軒下に、子育てに精を出すツバメがいた。
どす黒い感情が芽生え、箒の柄を掴んで巣に足を進めた。
◆
「らんらんら~ん ツバメのお母さん、今日も大忙し」
人間の姿を装い、鼻歌を歌いながらミスティアは里を歩く。
ある日、屋台の材料を仕入れに里へ行ったとき、家の軒先にかわいらしいツバメが巣を作っていた。
巣立ちの日まで見守るのがミスティアのちょっとした楽しみになった。
次の角を曲れば巣が見える、どれくらい成長しているだろうか。
しかし、あるはずの場所に巣が存在しない。
ふと地面に視線が行き、買い物かごが地面に落ちた。
「何よ……誰がやったのよ」
地面には巣の残骸と、明らかに踏み潰された雛鳥の変わり果てた姿があった。
目を伏せ、体を振るわせるミスティア。
「生きるために殺すのなら、まだ許せる……でも」
鋭い爪が伸びていくのを隠しきれず、彼女は一目散に里の外へと走っていく。
このままだと殺害衝動を抑えられなくなりそうだ。
◆
ツバメの雛鳥や、えさを求めて近づいてくる鳩を虐げるのが、彼の密やかな日課となった。
雛鳥を踏み潰すのみならず、くちばしや足を切断する。水に沈めておぼれさせる。
弱い者に暴君として振舞うときにだけ、彼はうだつの上がらない現状を忘れることができた。
多くの人々は当然彼の行為に眉をひそめたが、批判されるたびにこう正当化するのだ。
「糞を撒き散らすあいつらを駆除してやってるんだ、ゴキブリを潰すのとどこが違う」
夜雀の異変で、人々が鳥目状態にされたときも、彼は動じなかった。
むしろ自分の所業に人々が困惑する様をみて、歪んだ快楽すら覚えた。
(俺を見下した連中が、俺の行為に引っ掻き回されてやがる)
そんな彼の全能感は、夜雀の怒りの原因を探す霊夢に見つかるまで続いた。
◆
「ミスティア、こいつよ、ツバメの巣を潰して回ったのは」
少年は全身に護符を張られた状態で、ミスティアの前に連れてこられた。
「離せ博麗、お前も人間だろが」 少年は悪びれない。
「お前だったのか、あの時、ツバメの親たちが泣きながら飛び回っていた。まだ息があった子たちは、お母さん、お母さんって必死に叫んでいた」
ミスティアは静かな怒りをこめた声で、ツバメの苦痛を少年に教えた。
霊夢に拘束されているとは思えない威厳だった。
「ささやかなツバメの幸せを、お前は踏みにじった、そうよね」
「だから何だよ」
「ちょっと、謝っときなさいよ、妖怪は貴方が考える以上に手ごわい存在よ」
「知るか、害鳥駆除しただけだ」
顔を曇らせる霊夢。
「親鳥は悲しんでいた、分かる? お前の行為が、雛鳥の命を奪い、私の怒りを買って里の人に迷惑をかけることになったのよ」
少年は目をそらしたまま黙っている。やがて、ぶつぶつと本音を吐露しだした。
「そりゃあ、俺だってまじめに生きようとしたさ、でも、何をやってもうまくいかない。寺子屋からも追い出された。みんな良かれと思っても必ず裏目に出る。みんなみんな、俺をそろいもそろって馬鹿にする。人の迷惑? 知ったことか、俺の価値を認めない奴らがどうなろうといい気味だ。ツバメの命を奪う? どこが問題だ、命なんてどこでも蔓延るじゃねえか。俺の行動如きでツバメが絶滅するとでも言うのかよ」
「甘ったれるのもいい加減にしなさいよ」
霊夢が護符の封印力を強め、少年が苦痛にあえいだ。
「さあ、謝らなければもっと苦しくなるわ」
「痛えよ……畜生……クソ共がっ、もっと能力を持った人間に生まれていれば、強い存在に生まれてさえいれば、こんなことには、ぐうっ」
少年は一言の謝罪もなく気絶した。
「霊夢、人間には鳥を食べるのを止めて欲しい、でも人間も食べなければ生きていけない、だから、食べる分だけは辛いけど見逃すことにしているの。ヤツメウナギを流行らせ、遠回りにでも鳥肉を食べなくなるようになって欲しい。それが最大限の妥協だった。でもこいつは、生きる上で必要も無いのに、小さな命を奪った。自分の鬱屈した感情を、無抵抗な弱い者へ向けた」
「確かに同情の余地は無いわ、でも命だけは助けてやって、神社で殺生は禁物よ」
ミスティアはどうしてか霊夢の結界を破り、出られないはずの部屋の境界をいともたやすく踏み越えた。
「どうして? あんたぐらいの妖怪が踏み越えられるはずが……」
意識の戻りかけた少年に近づき、頭を掴んで顔を向けさせた。
「てめえ、何する」
「言葉の端々から、お前が幸の薄い人生を送ってきたことは分かる。だけど、必ずしも被害者イコール正義じゃない。虐げられてきた、苦しんできた、そんな過去は決して殺しのライセンスには成り得ない」
「ちょっと、その子をどうするつもり?」 霊夢が弾幕生成の用意をする。
「当然さらうのよ、霊夢は黙ってて」 ミスティアは動じない。
「まさか喰うんじゃ……」
「黙れ!」
霊夢は制止しようとしたが、ミスティアに一括され、思わず陰陽玉を取り落としてしまう。宝玉はむなしく床を転がっていく。
「今私がさらわないで、親も慧音も見離したこいつを、誰が止めるのよ」
能天気に歌を歌う妖怪ぐらいとしか思ってなかったが、まさか彼女が、これほどの激しさを内に秘めていると誰が想像しただろうか。
「お前には人間としての生を捨ててもらう」
ミスティアは少年を抱きかかえ、風のように消え去った。
霊夢はただ呆然と立ち尽くすのみだった。
◆
文々。新聞
夜雀屋台に二号店が登場
焼き鳥撲滅のため、夜雀のミスティア=ローレライ氏が経営しているヤツメウナギの屋台が人気だが、先日新たな屋台がオープンした。切り盛りしているのは彼女がさらってきた人間の男性。彼は当初非常に反抗的だったが、ある方法で幽霊を憑依させることで、非常に頼もしい戦力になってくれたという。
ミスティア氏のコメント
「最初のうちはともかく、最近は自発的に協力してくれるようになったわね。彼も仕事を楽しんでいるみたい。人間がベースだから計算も私より正確にこなせるし、便利な使い魔みたいなものね」
彼は里の社会に順応できず、トラブルを繰り返しており、それに目をつけたミスティア氏が、労働力になってもらうのと引き換えに新たな人生を用意してあげたとの事、罪人更正のひとつのテストケースとして是非曲直庁も注目している。
二号店男性のコメント
「非常にヤりがイのあル仕事。こレからモ彼女と協力シ合って焼き鳥をナくしテいキたいデす」
霊夢が妖側のミスティアをたてて人間に制裁を加えているのに違和感を感じました。
みすちー が かりすま だ
EXミスティア最高
つか幻想郷にまともな司法制度なんてないだろうし、
「罪を憎んで人を憎まず」みたいな綺麗事じゃなくて、こんな力ずくの解決策も有りですよ
少年が最低だから対比でそう見えるだけかと思います。
ある偉人はこう自伝に書いています。
「自らを価値が無いと思っている者こそ真に価値無き者なのだ!」
この少年の場合は自分の価値を見つける気すら無いにもかかわらず、
他者に価値を認めて貰おうと言うのだからで最悪ですね。
護られるべき対象の人間にも限度はあるのかな
それにしても救いがない
普通にみすち~がかっこよかったですよ。