Coolier - 新生・東方創想話

萃まる夢は儚い塵に

2009/07/14 17:43:10
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「ふぅん、貴女がこの異変の主犯だったの…。
異変を起こしたからにはやられる覚悟はできているわよね?」

紅白の巫女は不機嫌そうにそんな事を言った。


  *   *   *   *


遅い春の訪れが幻想郷にやってきた。

しかし、季節が流れるのは早く気付けばもう夏。

神社では何故か、三日おきに宴会が開かれていた。

最初の内は、皆は喜び宴を楽しんだ。

だが何度ども繰り返される内に皆は不信感を抱き始め周りの動向を伺いだす。

宴のはずだが妙な雰囲気が漂い始めていた。

それでも宴は繰り返される。

何度でも。




「萃香。」

私を呼ぶ声がする。

「ん、なんだい紫。」

砕かれた月の下に二人はいた。

「あれで良かったの?」

「あれって?」

「宴の事よ。」

「あぁ。」

その事か…。

「貴女の力ならあのまま宴を続ける事はできたのに、何故解決させたの?」

「お前がそんな事を気にするとは珍しい。」

私は紫がそんな事を言うとは思っていなかったので、つい声にだして笑ってしまう。

「誰だって気になる事はあるのよ。」

紫は少し不満そうだ。

「ごめん、ごめん。妖怪賢者様にも疑問に思う事があるなんて思わなくて。」

その言葉を聞いて紫は

「もしかして、私からかわれているのかしら?」

そう言った。

私は、冗談だ。と一言いい

「簡単な事だよ。形在るものなら何時かは無くなるだろ、
それと同じで萃まった私の夢が叶い散っただけ。 ただそれだけの話さ。」

そう返す。

「そういう物かしら?」

「そういう物なんだよ。」

紫と顔を見合わせるとおかしくて笑った。

「それじゃ、今宵は二人だけの宴を開きましょう。」

紫が隙間から一升瓶を取り出す。

「自ら、鬼と酒を飲もうとはやっぱりお前は変わった妖怪だよ。」

砕かれた月は私達を照らす。

それは、優しい光で二人の宴を祝福していた。




私の萃めた夢は、散ったけどきっとまた誰かが集めるだろう…。

その時は、馬鹿な夢を見る私と同じ馬鹿な奴と一緒に酒を飲みたいと思う…。



  *   *   *   *



季節は流れ流れ、幻想郷に今年も夏がやってきた。

これは、まだ幻想郷のあちこちで異常気象が起きる前の話。



「そろそろね…。」

天界から地上を見下ろしながらそう呟く。

異変を起こす準備は整った。

あとはスイッチを押すだけ。

「へぇ、面白そうな事をしているね。」

誰も居る筈のない背後から声が聞えた。

「だ、誰?」

流石に驚く。

「私は、伊吹 萃香。今じゃ幻想郷に只一人の鬼さ。
自分から名乗らない失礼なお前こそ一体誰?」

その小さな鬼は外見と中身が全く合っていなかった。

「私は、比那名居 天子。天人よ。鬼の貴女が私に何の用かしら?」

失礼な奴呼ばわりされて少しカチンときた。

「用って程じゃない。只、お前がやろうとしている事に興味があってね。
ふむ、気質を萃めているのか…。この量だと地震でも起こす気かな?」

この鬼…。

「貴女には関係ないでしょ。」

睨みつける。

「そう睨まなくてもいいじゃないか。確かに関係無いが、
その宴に参加させて貰う事にしたよ。」

「何に勝手な事を…。」

「まぁまぁ、仲間外れの似たもの同士仲良くしようじゃないか。」

鬼はそんな勝手な事を言いながら笑っている。

でも、その笑いは何処か自虐めいていて普段の私なら激怒している筈なのに
怒りが湧いてくる事は無かった。

「ふん、勝手にすればいいじゃない。」

私はそれだけを言いその場を立ち去る事にする。

「ふふ、これは楽しい宴になりそうだ。」

鬼はそう呟いた。

でも、私には聞えることは無かった。






「へぇ、それで結局霊夢と紫にボロボロにされたのか。御愁傷様。」

萃香は私があの二人にボロボロにされた話を聞いて笑っていた。

「そんなに笑わなくてもいいじゃない…。」

ちょっとだけヘコむ。

「それにしても、まさか紫まで出てくるとはなぁ…。
てっきり今回も見てるだけと思ったんだけど。」

「あの人凄く怒ってたわ。」

あの怒りようを思いだし思わず苦笑する。

「天子に力を貸していた事を紫にバレなくて良かったよ。
あの紫がそこまで激怒するとは全くもって予想外だった。」

萃香も苦笑していた。

私はふと疑問に思った事を聞く

「そういえば、萃香って何で私に手を貸してくれたの?」

「聞きたい?」

「聞きたい。」

即答する。

「それはね、私と天子が似たもの同士ってのもあったけど、
一番の理由は天子が散って無くなった私の夢を集めていたからさ。」

「夢?」

聞き返す。

「そ、幻想郷中で馬鹿騒ぎしたいっていう馬鹿な夢だよ。」

萃香はそう言って笑っている。

「そっか…。また、私達の夢を誰かが萃めてくれるのかな。」

「きっと、また馬鹿な奴が萃めてくれるさ。」

私達は笑った。

「よし、宴を開こう。」

萃香が突然そんな事を言った。

「二人だけで?」

「私達で萃めるのさ!!」

私達はまた笑う。




暫くすると、天界は有象無象、妖怪変化達の大宴会となっていた。



きっとまた私達の夢を誰かが萃めてくれる。

そう思うとなんだか私は嬉しくなった。





-萃まる想いは夢となり、何時かは夢も塵となる。
されど塵を萃めれば、再び想いは夢となる。-
ここまで付き合って頂いた方ありがとうございました。
天子と萃香は意外と仲が良さそうだなぁ。と思い書き始めた作品でした。

自分の夢も何時かは塵となって消えてしまうのか。
そう思うとなんだか毎日を一生懸命に生きないと勿体無い気がしてきます…。
GAZ
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コメント



0.760簡易評価
14.80名前が無い程度の能力削除
そうですよね
こう、改めて幻想郷媒体で言われると幻じゃなくて、現実に最も重み置けよ的なことを新しい別の面から言われているように感じられます。
19.100irusu削除
そしてまた誰かが二人の夢を集めるんですね。