「幽々子様。霊夢をお連れしました」
妖夢が凛とした声で幽々子に伝える。
「あら、霊夢いらっしゃいな。」
いつも通り屈託のない笑顔で来客を出迎える。
「お邪魔するわ」
「ふふふ、お構いなく」
久しぶりの来客に嬉しいのかずっとニコニコしている。
「妖夢、お茶をちょうだい。」
「かしこまりました。」
妖夢が奥へ下がっていく。
「ささ、どうぞどうぞ。」
幽々子がが霊夢を茶室へと案内する。
「いつぞやとはちがって歓迎されてるわね。」
皮肉をこめて意地悪そうに言う。
「だって霊夢がこっちにくるなんて珍しいじゃない。遊びに来たいって言い出した時には驚いたわ。」
「それもそうね。」
茶室へと到着。
そこは落ち着いた雰囲気でくつろぐにはぴったりであった。
「ささ、座って座って。」
「幽々子様、お茶をお持ちいたしました。」
「ありがとう。」
「ありがとね、妖夢。」
「では、私はこれで。」
話が途絶える。
「・・・・・」
霊夢が神妙な面持ちでお茶を飲む。
「どうしたの黙りこくって。」
幽々子が不審そうに尋ねる。
「いやね、最近ちょっと思ったことがあるのよ。今日はそれを聞きに来たってのもあるの。」
庭を見ながら話している。
白玉楼の庭は噂通り見事なものであった。
「あら、何かしら。死後は白玉楼に住みたいとか?」
「残念だけどそうじゃないわ。そうね、幽々子、あなたに関する疑問なのよ。いえ、推測ね。」
庭を見続けながらなおも続ける。
幽々子はよく観察してみたが、霊夢の表情からは何も読み取れない。
「私について?・・・・スリーサイズとか?」
幽々子が笑みを浮かべながら、腕を組み胸を強調させ霊夢に問う。
「違うわ。割と真面目な話ね。」
「そうなの、じゃあもうふざけるのはしまいね。」
幽々子が姿勢をただし霊夢を一直線に見つめる。
「で、何について聞きに来たの?」
空気を呼んだのか幽々子は珍しく真面目な表情をしている。
「幽々子ってさぁ・・・・寂しがり屋よね」
なおも外を見続けながら霊夢が話す。
「・・・・・・・え?」
幽々子は今の発言をよく理解できていないようだ。
「幽々子ってさ、妖夢に無理難題を押し付けてるじゃない?。」
「でもこれぐらいは許してくれるだろうっていう程度の内容の。」
「あら、それは私が悪戯好きってだけじゃない。それに許してくれないようなことをするほど私は馬鹿じゃないわ。」
自信たっぷりに反論する。
「まぁまぁ、まだ途中だから。・・・・・続けるわよ?」
「幽々子はよく食べるじゃない?それって妖夢の作った料理をたくさん食べたいからじゃないの?」
「そんなことないわよ。私は食事自体がすきなのよ。」
胸を叩いて自慢する。
「そうかしら。大食いって有名だけど幽々子が食べてるのってほとんど妖夢の作ったものじゃない。」
「宴会でいろいろな料理があるときでも・・・結局は妖夢の料理ばっかり食べてるし。」
「それに妖夢の料理を食べてる時のあたなの顔がね」
「・・・・私、どんな顔してたのかしら。」
「別に間抜けな顔って言いたいわけじゃないわよ。・・・・すごい幸せそうな顔だったわね。」
「あの顔されちゃあ妖夢も張り切って料理を作るわよ。」
「でも、それはただ妖夢が好きなだけじゃない。それだけでさびしがり屋とは言えないわね。」
「たまに幽々子は私の家に遊びに来るわよね?」
「・・・ええ。でも友達なら普通じゃなくて?」
「でも毎日遊びに来るってわけじゃないのよね。ちょうど一週間の間隔ででうちに来るのよ。」
「これって私の邪魔にならないようにしてるってことじゃないかしら?」
「・・・随分自分勝手な解釈ね。」
「そう?うぬぼれかしらね。」
「・・・・・・そうよ。」
「でもね、私は見たのよ。この庭で泣いてるあなたを。」
悲しそうに霊夢が話す。
「本当のあなたは気が弱いものね。家族同然の妖夢にすら本音を打ち明けられない。・・・・・・それはあなたが優しいから。」
「他人を傷つけるのも、自分が傷つけられるのが怖いから、でも一人は嫌で・・・だからそんな弱腰なんてしょ?」
「・・・・・」
霊夢から目を離してうつむく幽々子。
「弁解するわけじゃないけど、別に盗み見ようとしたわけじゃないわよ。ただ妖夢に用事があったのよ。」
「・・・・・」
「私はね、それを見ていてもたってもいられなくなったわ。だから今日こうして出向いたってわけ。」
「・・・・・それは同情かしら?ならやめてちょうだい。」
憮然とした表情で言い返す。
「否定はしないわ。でも・・・・あなたが好きっていうこの気持ちだけは本当よ。」
「・・・・・・・・・・・」
「信じられないって顔ね。」
「・・・・本当はね、私が一番臆病者なのよ。それでさびしがり屋。」
霊夢が立ち上がる。
「・・・・・え?」
「今まで、私は博麗の巫女だとか理由をつけて他人と積極的にかかわろうとしなかったわ。」
「遊びに来た魔理沙や幽々子達が帰るたびに、私に愛想を尽かしたんじゃないか、もう来ないんじゃないかってたまらなく心配になったわ。」
「うっとうしいとか、めんどくさいとか、そんなことばっかり言ってる自分が嫌いだった。本当はみんなともっと仲良くなりたいし喜んで遊びに来てほしい。」
「でも幽々子をみて決心がついたわ。私は、あなたのことが好き。だからあなたといつも一緒にいたい。毎日こうしてお茶をしたい。」
「もう私は逃げないわ。」
霊夢が幽々子に向かってゆっくりと歩き出す。
「・・・・・・・私で・・・・・いいの?」
「あなたでなければだめなのよ。」
「・・・・・・・・私の・・・どこがいいの?」
「こんな風になるまで一人で溜めこんじゃう困った幽霊が好きなのよ。」
「・・・・・・物好きね。」
「よく言われるわ。」
一歩、また一歩と幽々子に近づく
「・・・・・そう・・・・なら約束して。私に寂しい思いはさせないって。」
「約束するわ。その代わり、私の寂しさも・・・ね。」
幽々子の背後にたどりついた。
「・・・・・・・・・わかってるわ。」
幽々子のの背中にだきつく霊夢。
「・・・・・・」
「耳が真っ赤ね。」
「・・・・・・・れいむ」
消え入りそうな声で幽々子がささやく
「なぁに?」
「・・・・・絶対に・・・・私を離さないでね?」
震える幽々子を抱き締める。
「ええ。」
その問いに満面の笑みでこたえる霊夢。
「さびしい思いをさせたら・・・・ゆるざないん・・・えっぐ・・・だからぁ・・・・ぐすん。」
「何泣いてるのよ。これからもっともっと幸せになるんでしょう?今日が始まりなのよ。」
「・・・・・・・うん。」
「やっぱり幽々子はさびしがり屋の甘えん坊ね。」
「・・・・・・・・・れいむは・・・いじわるね。」
恥ずかしくなったのか霊夢の手を解こうとする。
「・・・・離れなくてもいいわよ。・・・違うわね・・・離れないで。あと5分、いえ10分でいいから、このままでいてちょうだい。」
「・・・・・・・・・しょうがないわね。」
その日の白玉楼には、昼過ぎまで仲睦まじく抱き合ってる巫女と幽霊がいたそうだ。。
………………
…………
……
「じゃあ、また明日ね」
霊夢がすっきりとした顔で別れを告げる。
「ええ、また明日」
幽々子はいつもとは違う「また明日」という言葉に喜びを感じていた。
「っと、そうだ。妖夢、霊夢を送って行きなさい。」
「かしこまりました。」
妖夢は頭を下げ、急いで霊夢の後を追う。
「ふふふ、妖夢とも仲良くなってもらわなくちゃね。」
満ち足りた表情で後ろ姿の二人を見る。
以前感じていたような寂しさなどは微塵も感じない。
明日の出会いへの喜びだけが幽々子の心を占めていた。
「霊夢!!送るよ。」
妖夢がようやく霊夢に追いついた。
「あら、ありがとう。」
ほほ笑みながらその申し出に答える。
「・・・・・」
黙々と二人で道を歩き続ける。
「あの・・・・」
妖夢が話しかける
「何かしら?」
「今日、幽々子様と何を話してたんですか?」
気まずそうに尋ねる。
「どうしてそんなこと聞くのかしら?」
「え、いや。今日、霊夢と会ってから幽々子様の様子がおかしいっていうか。」
妖夢があわてながら答える。
「・・・・・クスクス」
霊夢が思わず笑いだす。
「ごめんなさいね、実は私知ってるのよ。今日の私たちの様子、隠れて見てたでしょ?」
「!?」
妖夢が驚き立ち止まる。
「幽々子は気付いてなから安心なさい。・・・・多分。」
「・・・・・・」
妖夢は黙ったままだ。
「私たちはね、お互いにやっと本当のことを言いだせたのよ。好きっていうことをね。」
深呼吸してから話を続ける。
「思いを伝えるっていうのは大変なものね。伝えようとする勇気は今日まで出なかったんだから。」
そのまま続ける。
「・・・それで、霊夢は幽々子様のことが・・・・その・・・・」
「好きよ」
きっぱりと言い切る。
「・・・・・」
「妖夢もそういう人がいるんじゃない?」
こんどは霊夢が聞き返す。
「わ、わたし!?」
「私が思うにあなたは・・・・魔理沙が好きね?」
「ちょ、ちが。私が好きなのはれ」
「いいのよ隠さなくても。宴会でも魔理沙のほうを見てることが多かったじゃないの。」
妖夢に反論の余地も与えずに続ける。
「そ、それはれいむのことを」
「もうここでいいわ。じゃあね、妖夢。」
「ま、まって。だから、私が好きなのはれ」
「いいから、いいから。妖夢はそういうことに鈍感なのね。また明日・・・・・・お休み、妖夢。」
「お、お休み。・・・・・・・行っちゃった。」
「霊夢のばか・・・・・あほ・・・・。」
「鈍感なのは霊夢のほうだ。・・・・初めて会った時から私は・・・・・」
「っ!?・・・だめだめだ!!」
自分の気持ちをごまかすように首を横に振り、白玉楼へと急いで戻った。
「ただ今戻りました。」
「あら、早かったのね。」
「・・・・・はい」
「・・・?」
そのまま妖夢は日課の鍛錬をすることにした。
いつもの素振り。
いつもなら何も考えずに、集中してやれるのだが今日はできそうにもない。
昼の霊夢と幽々子のやりとりが思い出される。
先ほどの霊夢との会話がよみがえってくる。
「・・・・・・・・・・くっ!?」
集中できずに、ただ時間だけが過ぎでいく。
結局、鍛錬は早めに切り上げてしまった。
その後は普段通り食事を作り、なるべく幽々子と顔を合わせないようにして就寝時間を迎えた。
幽々子も今日の出来事のせいか、妖夢の異変には気付かないでいた。
布団の中でも考えはまとまらない。
幽々子も霊夢も大事なのだ。
妖夢が行動を起こして二人の仲を傷つけてしまうことは何としても避けなければならない。
それに妖夢自身が拒絶されるかもしれない。
どうしたらいいかまったく判断がつかない。
今日のぞき見なんてしなければこんなことにはならなかっただろう。
後悔してももう遅い。
どうしたらいいのか、どうするべきなのか何も分からない。
妖夢は一晩泣き続けた。
妖夢が凛とした声で幽々子に伝える。
「あら、霊夢いらっしゃいな。」
いつも通り屈託のない笑顔で来客を出迎える。
「お邪魔するわ」
「ふふふ、お構いなく」
久しぶりの来客に嬉しいのかずっとニコニコしている。
「妖夢、お茶をちょうだい。」
「かしこまりました。」
妖夢が奥へ下がっていく。
「ささ、どうぞどうぞ。」
幽々子がが霊夢を茶室へと案内する。
「いつぞやとはちがって歓迎されてるわね。」
皮肉をこめて意地悪そうに言う。
「だって霊夢がこっちにくるなんて珍しいじゃない。遊びに来たいって言い出した時には驚いたわ。」
「それもそうね。」
茶室へと到着。
そこは落ち着いた雰囲気でくつろぐにはぴったりであった。
「ささ、座って座って。」
「幽々子様、お茶をお持ちいたしました。」
「ありがとう。」
「ありがとね、妖夢。」
「では、私はこれで。」
話が途絶える。
「・・・・・」
霊夢が神妙な面持ちでお茶を飲む。
「どうしたの黙りこくって。」
幽々子が不審そうに尋ねる。
「いやね、最近ちょっと思ったことがあるのよ。今日はそれを聞きに来たってのもあるの。」
庭を見ながら話している。
白玉楼の庭は噂通り見事なものであった。
「あら、何かしら。死後は白玉楼に住みたいとか?」
「残念だけどそうじゃないわ。そうね、幽々子、あなたに関する疑問なのよ。いえ、推測ね。」
庭を見続けながらなおも続ける。
幽々子はよく観察してみたが、霊夢の表情からは何も読み取れない。
「私について?・・・・スリーサイズとか?」
幽々子が笑みを浮かべながら、腕を組み胸を強調させ霊夢に問う。
「違うわ。割と真面目な話ね。」
「そうなの、じゃあもうふざけるのはしまいね。」
幽々子が姿勢をただし霊夢を一直線に見つめる。
「で、何について聞きに来たの?」
空気を呼んだのか幽々子は珍しく真面目な表情をしている。
「幽々子ってさぁ・・・・寂しがり屋よね」
なおも外を見続けながら霊夢が話す。
「・・・・・・・え?」
幽々子は今の発言をよく理解できていないようだ。
「幽々子ってさ、妖夢に無理難題を押し付けてるじゃない?。」
「でもこれぐらいは許してくれるだろうっていう程度の内容の。」
「あら、それは私が悪戯好きってだけじゃない。それに許してくれないようなことをするほど私は馬鹿じゃないわ。」
自信たっぷりに反論する。
「まぁまぁ、まだ途中だから。・・・・・続けるわよ?」
「幽々子はよく食べるじゃない?それって妖夢の作った料理をたくさん食べたいからじゃないの?」
「そんなことないわよ。私は食事自体がすきなのよ。」
胸を叩いて自慢する。
「そうかしら。大食いって有名だけど幽々子が食べてるのってほとんど妖夢の作ったものじゃない。」
「宴会でいろいろな料理があるときでも・・・結局は妖夢の料理ばっかり食べてるし。」
「それに妖夢の料理を食べてる時のあたなの顔がね」
「・・・・私、どんな顔してたのかしら。」
「別に間抜けな顔って言いたいわけじゃないわよ。・・・・すごい幸せそうな顔だったわね。」
「あの顔されちゃあ妖夢も張り切って料理を作るわよ。」
「でも、それはただ妖夢が好きなだけじゃない。それだけでさびしがり屋とは言えないわね。」
「たまに幽々子は私の家に遊びに来るわよね?」
「・・・ええ。でも友達なら普通じゃなくて?」
「でも毎日遊びに来るってわけじゃないのよね。ちょうど一週間の間隔ででうちに来るのよ。」
「これって私の邪魔にならないようにしてるってことじゃないかしら?」
「・・・随分自分勝手な解釈ね。」
「そう?うぬぼれかしらね。」
「・・・・・・そうよ。」
「でもね、私は見たのよ。この庭で泣いてるあなたを。」
悲しそうに霊夢が話す。
「本当のあなたは気が弱いものね。家族同然の妖夢にすら本音を打ち明けられない。・・・・・・それはあなたが優しいから。」
「他人を傷つけるのも、自分が傷つけられるのが怖いから、でも一人は嫌で・・・だからそんな弱腰なんてしょ?」
「・・・・・」
霊夢から目を離してうつむく幽々子。
「弁解するわけじゃないけど、別に盗み見ようとしたわけじゃないわよ。ただ妖夢に用事があったのよ。」
「・・・・・」
「私はね、それを見ていてもたってもいられなくなったわ。だから今日こうして出向いたってわけ。」
「・・・・・それは同情かしら?ならやめてちょうだい。」
憮然とした表情で言い返す。
「否定はしないわ。でも・・・・あなたが好きっていうこの気持ちだけは本当よ。」
「・・・・・・・・・・・」
「信じられないって顔ね。」
「・・・・本当はね、私が一番臆病者なのよ。それでさびしがり屋。」
霊夢が立ち上がる。
「・・・・・え?」
「今まで、私は博麗の巫女だとか理由をつけて他人と積極的にかかわろうとしなかったわ。」
「遊びに来た魔理沙や幽々子達が帰るたびに、私に愛想を尽かしたんじゃないか、もう来ないんじゃないかってたまらなく心配になったわ。」
「うっとうしいとか、めんどくさいとか、そんなことばっかり言ってる自分が嫌いだった。本当はみんなともっと仲良くなりたいし喜んで遊びに来てほしい。」
「でも幽々子をみて決心がついたわ。私は、あなたのことが好き。だからあなたといつも一緒にいたい。毎日こうしてお茶をしたい。」
「もう私は逃げないわ。」
霊夢が幽々子に向かってゆっくりと歩き出す。
「・・・・・・・私で・・・・・いいの?」
「あなたでなければだめなのよ。」
「・・・・・・・・私の・・・どこがいいの?」
「こんな風になるまで一人で溜めこんじゃう困った幽霊が好きなのよ。」
「・・・・・・物好きね。」
「よく言われるわ。」
一歩、また一歩と幽々子に近づく
「・・・・・そう・・・・なら約束して。私に寂しい思いはさせないって。」
「約束するわ。その代わり、私の寂しさも・・・ね。」
幽々子の背後にたどりついた。
「・・・・・・・・・わかってるわ。」
幽々子のの背中にだきつく霊夢。
「・・・・・・」
「耳が真っ赤ね。」
「・・・・・・・れいむ」
消え入りそうな声で幽々子がささやく
「なぁに?」
「・・・・・絶対に・・・・私を離さないでね?」
震える幽々子を抱き締める。
「ええ。」
その問いに満面の笑みでこたえる霊夢。
「さびしい思いをさせたら・・・・ゆるざないん・・・えっぐ・・・だからぁ・・・・ぐすん。」
「何泣いてるのよ。これからもっともっと幸せになるんでしょう?今日が始まりなのよ。」
「・・・・・・・うん。」
「やっぱり幽々子はさびしがり屋の甘えん坊ね。」
「・・・・・・・・・れいむは・・・いじわるね。」
恥ずかしくなったのか霊夢の手を解こうとする。
「・・・・離れなくてもいいわよ。・・・違うわね・・・離れないで。あと5分、いえ10分でいいから、このままでいてちょうだい。」
「・・・・・・・・・しょうがないわね。」
その日の白玉楼には、昼過ぎまで仲睦まじく抱き合ってる巫女と幽霊がいたそうだ。。
………………
…………
……
「じゃあ、また明日ね」
霊夢がすっきりとした顔で別れを告げる。
「ええ、また明日」
幽々子はいつもとは違う「また明日」という言葉に喜びを感じていた。
「っと、そうだ。妖夢、霊夢を送って行きなさい。」
「かしこまりました。」
妖夢は頭を下げ、急いで霊夢の後を追う。
「ふふふ、妖夢とも仲良くなってもらわなくちゃね。」
満ち足りた表情で後ろ姿の二人を見る。
以前感じていたような寂しさなどは微塵も感じない。
明日の出会いへの喜びだけが幽々子の心を占めていた。
「霊夢!!送るよ。」
妖夢がようやく霊夢に追いついた。
「あら、ありがとう。」
ほほ笑みながらその申し出に答える。
「・・・・・」
黙々と二人で道を歩き続ける。
「あの・・・・」
妖夢が話しかける
「何かしら?」
「今日、幽々子様と何を話してたんですか?」
気まずそうに尋ねる。
「どうしてそんなこと聞くのかしら?」
「え、いや。今日、霊夢と会ってから幽々子様の様子がおかしいっていうか。」
妖夢があわてながら答える。
「・・・・・クスクス」
霊夢が思わず笑いだす。
「ごめんなさいね、実は私知ってるのよ。今日の私たちの様子、隠れて見てたでしょ?」
「!?」
妖夢が驚き立ち止まる。
「幽々子は気付いてなから安心なさい。・・・・多分。」
「・・・・・・」
妖夢は黙ったままだ。
「私たちはね、お互いにやっと本当のことを言いだせたのよ。好きっていうことをね。」
深呼吸してから話を続ける。
「思いを伝えるっていうのは大変なものね。伝えようとする勇気は今日まで出なかったんだから。」
そのまま続ける。
「・・・それで、霊夢は幽々子様のことが・・・・その・・・・」
「好きよ」
きっぱりと言い切る。
「・・・・・」
「妖夢もそういう人がいるんじゃない?」
こんどは霊夢が聞き返す。
「わ、わたし!?」
「私が思うにあなたは・・・・魔理沙が好きね?」
「ちょ、ちが。私が好きなのはれ」
「いいのよ隠さなくても。宴会でも魔理沙のほうを見てることが多かったじゃないの。」
妖夢に反論の余地も与えずに続ける。
「そ、それはれいむのことを」
「もうここでいいわ。じゃあね、妖夢。」
「ま、まって。だから、私が好きなのはれ」
「いいから、いいから。妖夢はそういうことに鈍感なのね。また明日・・・・・・お休み、妖夢。」
「お、お休み。・・・・・・・行っちゃった。」
「霊夢のばか・・・・・あほ・・・・。」
「鈍感なのは霊夢のほうだ。・・・・初めて会った時から私は・・・・・」
「っ!?・・・だめだめだ!!」
自分の気持ちをごまかすように首を横に振り、白玉楼へと急いで戻った。
「ただ今戻りました。」
「あら、早かったのね。」
「・・・・・はい」
「・・・?」
そのまま妖夢は日課の鍛錬をすることにした。
いつもの素振り。
いつもなら何も考えずに、集中してやれるのだが今日はできそうにもない。
昼の霊夢と幽々子のやりとりが思い出される。
先ほどの霊夢との会話がよみがえってくる。
「・・・・・・・・・・くっ!?」
集中できずに、ただ時間だけが過ぎでいく。
結局、鍛錬は早めに切り上げてしまった。
その後は普段通り食事を作り、なるべく幽々子と顔を合わせないようにして就寝時間を迎えた。
幽々子も今日の出来事のせいか、妖夢の異変には気付かないでいた。
布団の中でも考えはまとまらない。
幽々子も霊夢も大事なのだ。
妖夢が行動を起こして二人の仲を傷つけてしまうことは何としても避けなければならない。
それに妖夢自身が拒絶されるかもしれない。
どうしたらいいかまったく判断がつかない。
今日のぞき見なんてしなければこんなことにはならなかっただろう。
後悔してももう遅い。
どうしたらいいのか、どうするべきなのか何も分からない。
妖夢は一晩泣き続けた。