Coolier - 新生・東方創想話

女の子だもん

2009/07/13 22:20:22
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「私は男の子なんかじゃなーい!」
「うるさい黙れ」
「きゃうっ!?」

 神社のお賽銭箱の上で叫ぶリグルを、霊夢がお子様からお年寄りまで安心の簡易夢想封印を放った。
 それはリグルのお尻に命中し、リグルはお賽銭箱から地面へと強制的に、顔面ダイブをさせられた。

「痛いじゃない!」

 顔から偉大なるアースへと突っ込んだリグルは、鼻が痛かったらしく、少し赤くなっていた。

「お賽銭箱の上なんかに立つ罰当たりなやつに、お仕置をしただけよ」
「むむ~鼻が潰れたかと思ったじゃない!」
「あんたを潰してあげようか?」
「鬼巫女!」
「キモリグル! 略してキモグル!」
「名誉毀損だ!」
「黙れキモ虫」
「キモ虫!? 何よ、その新しいイモムシみたいな名前!? 私は蛍よ!」
「蛍なんて、こうプツッと潰せるわね」

 人指し指と親指で摘むような動きを見せる霊夢に、リグルはぞくりとした。

「やめてよ。ちょっと想像しちゃったじゃない」
「想像とか……見掛けによらず、えっちぃわね」
「何の話だよ!?」
「まぁ、そんな話は置いといてさ。あんた、結局何しに来たわけ?」
「あ、そうそう。ちょっと相談したいことがあって……」
「なら、まずは素敵なお賽銭箱へ行きなさい」

 お賽銭箱を指差す霊夢。

「相談料を払えと?」
「そう」
「……仕方無い、とっておきをあげるよ」
「いやっほぉ!」

 リグルはお賽銭箱へと歩み寄る。そして、明らかにお金じゃない物を大量に入れた。
 霊夢のドロップキックが炸裂した。
 リグルは、軽く数メートルは吹っ飛んだ。

「何するのさ!?」
「こっちの台詞よ! あんた、今何を入れた!?」
「カブトムシとクワガタの幼虫だよ! 嬉しいでしょ?」
「くたばれ! 賽銭箱に、変な物入れるな馬鹿!」
「なぁ!? 変な物とは何よ! 虫だって生きてるのよ! 土下座して謝ってよ、虫に!」
「誰が虫相手に土下座なんてするか!」

 がるる、ぐるる、と唸り睨み合う二人。

「こうなったら」
「弾幕で勝負ね!」

 リグルも霊夢も、スペルカードを取り出して、距離を取る。
 暑い陽射しが、二人を包んでいた。

「あ……」
「え?」
「リグル、あんたさ」
「う、うん?」
「さっきの攻撃のせいで、ズボン後ろ破れてるわよ」
「ふえぇ!?」

 リグルが、慌てて自分のお尻部分を見る。
 だが、別に破れていなかった。

「何よ、破れて無いじゃない」
「夢想封印」
「へ? きやぁぁぁぁぁぁう!?」

 前に向き直った瞬間、既に夢想封印が零距離。
 リグルは、ただ叫ぶしか無かった。そして、綺麗な放物線を描きながら、吹っ飛んだ。

「ひ、卑怯すぎる……」
「よそ見なんかするからよ」
「あんたのせいでしょ!」
「あら、まだ喋る元気があるのね。もう数発、いっとく?」
「ひぅっ!? な、何で私がこんな目に……相談に来ただけなのに」

 うぅ、と涙目で丸くなるリグル。
 そんなリグルに、霊夢は――

「はぁ、仕方無いわね」
「え?」
「えいっ!」

 針を投げた。
 リグルがギリギリで避けたことにより、頬を掠めるだけで済んだ。

「な、なな何するの!?」
「いや、悩まなくて良いようにとどめを刺してあげようかな、って」
「相談に乗るという選択肢は無いの!?」
「えー……面倒。大体、あんたの悩みって何かどうでも良さそうだし」
「せめて相談内容聞いてよ……」
「じゃあ5秒だけ。はい、どうぞ」

 突然の時間制限に、戸惑うリグル。

「ええっ!?」
「あと3秒」
「え!? ちょ、わ、私を女にして欲しいの!」
「……」
「……」

 無言が、痛い。
 リグルはリグルで、自分の言った言葉に顔を赤くして固まる。
 霊夢は、口を開けたまま、ぽかーんとしている。
 虫の鳴き声だけが、妙に五月蠅い。

「えーと……それって」
「ち、ちが!? 私を女にして欲しいわけで、いや、違くて、えと、あぅ……」
「あぁ、もう! 落ち着きなさい。とりあえずさ」
「う……」
「部屋、行く?」
「う、うん」

 この霊夢の言葉も、意味を取り間違えると大分恥ずかしい言葉なのだが、二人とも気付かない。

 そして、床の間。
 卓袱台前に、ちょこんと正座しているリグル。
 霊夢はお茶を入れに行った。
 珍しいものを見るかのように、目を輝かせて部屋を見渡す。

「別に何も珍しいものは無いわよ」

 霊夢が、お茶をリグルの前に置く。
 熱い湯気が、少し鬱陶しい。

「私からすれば、全部珍しいから」
「ここ、かなり簡素よ?」
「それでも、普段は見ないものばかりだし」

 畳に卓袱台、木製の箪笥に、先日河童に取り付けて貰った新しい明かり一式。それくらいしか無い。年相応の女の子らしいお人形やらは、一切無い。
 それでも、普段こういう物に触れることの無いリグルにとっては、十分珍しかった。

「で、えーと……女にして欲しい、だっけ?」
「え、ゃ、だから違くて……」

 リグルは顔に紅葉を散らして、わたわたと慌ただしく両手を動かす。

「落ち着きなさい。はい、深呼吸」
「し、しんこきゅー……」
「吸ってー」
「すぅー」
「吐いてー」
「ふぁー」
「吸って吸って吸って吸って吸って!」
「すぅーすぅーすぅーすぅーすぅー……ごふっ!」

 せき込むリグル。ちょっと涙目になっていた。霊夢からすれば、こんなことに引っ掛かるとは……といった感じだった。
 呼吸が正常に戻ったリグルが、涙目のまま霊夢を睨む。

「そんな熱いまなざしを向けられても、ごめんなさい。私はリグルの気持ちに応えられない」
「何の話さ! というか話を戻そう!」
「キモ虫」
「戻しすぎ!? 真面目に聞いてよ!」
「はいはい、分かったわよ」

 うー、と唸るリグルを軽く流す。

「で、本当はどういう意味なわけ? 女にして欲しいって……」
「私、男の子に見られることが多いの」
「あぁ……ぺったんこだもんね」
「うぐぐ……否定出来ない。それで、どうしたら女の子っぽくなれるかなぁ、って」
「……何で私に相談?」
「妖怪人間問わず、みんな霊夢に相談来てるって聞いたから」
「あー……」

 確かに妖怪人間種族問わずに、みんな霊夢の元へよく訪れる。霊夢からすれば迷惑なだけなので、適当に相手をして、帰らせるのだが。

「じゃあ、服装を変えれば良いんじゃない?」
「服装を? でも、これ以外の服持って無いし……」

 俯くリグル。

「私の服着てみる? 巫女服でも、大分印象変わるわよ」
「え、でも……」
「私も巫女服以外を着てみたいし」
「え? 私の服着るの?」
「交換で」
「……分かったわ」



 少女、着替え中につき、しばらく音声のみでお楽しみ下さい。

「んっ……ちょっとあんたの服キツいわね」
「破かないでよ」
「大丈夫よ」
「霊夢、巫女服ってどうやって着るの?」
「あぁ、分からないのね。ほら、動かないで」
「ひゃあ!? な、何して……」
「さらしを巻いてるの」
「うわっ……ちょっと擦れるって!?」
「慣れれば大丈夫よ」
「んっ、キツいキツい!」
「あ、ごめん。はい、次は巫女服ね」
「う、うん」



 少女、着替え終了。



「あら、似合ってるわよ」
「ん、ちょっとぶかぶかだけど」

 霊夢より少しだけ、リグルは小さい。胸も。そのせいで、ぶかっとさせた巫女服を身に纏っているリグル。手が半分しか出ていない。
 それとは逆に、霊夢はちょっとキツそうにリグルの服を着ている。
 なんというか、巫女服以外の霊夢は凄く新鮮で、しかも意外に似合っていた。

「やっぱり服も原因の一つだったんじゃない? 私、何か男の子になった気分よ」
「私は、自分じゃ分からないけど……どうかな?」
「ん、可愛い可愛い。ちゃんと女の子ね」
「そ、そう? えへへ~」

 少し頬を赤くして、その場で一回転する。
 霊夢は、自分自身の身体を見ている。
 互いに珍しいのだろう。

「でも、下がちょっと……」
「ん?」
「す、スースーして……は、恥ずかしいかも」
「あー……ズボン派にはちょっと違和感あるかもね。そう言えば、あんたはドロワーズじゃないしね」
「ちょ、そういうこと言わないでよ。仕方無いじゃない。ズボンじゃあ、ドロワーズはちょっと……」
「それにしても意外だったわ。あんな可愛い純白のショーツだなんて」
「だから言うなぁ!」
「ふむふむ、なるほど」
「ふぇ!?」

 霊夢とリグルの間に、文が居た。
 いつの間にやら文が居た。
 ニコニコ笑顔で文が居た。
 リグルと霊夢、二人揃って蹴り飛ばした。

「いきなり何するんですか!?」
「こっちの」
「台詞だ!」

 抗議をする文に、霊夢とリグルは怒る。

「いえいえ、何か面白いそうでしたから」
「どこから居たの?」
「ついさっきです」
「本当は?」
「着替えのシーンから」
「くたばれ!」

 霊夢が、かかと落としをしようとするが――

「ま、待って下さい! 良いアイディアがあるんです!」
「良いアイディア?」

 ぴたりと止める。
 リグルも霊夢も、文の言葉に耳を傾ける。

「リグルさん、あなたは女の子らしくない、と悩んでいましたね?」
「う……うん」
「私が新聞で今日のリグルさんを広めたら、リグルさんの女の子イメージが幻想郷中に広まりますよ!」
「あー! 良いんじゃない?」
「え、でも……ちょっと恥ずかしい、かな」

 顔を赤くして、頬を指でかくリグル。
 巫女服効果もあって、とっても可愛らしかった。

「リグルさん! 今のあなたは可愛いです! 自信を持って!」
「ぅ……でも」
「良いんじゃない? 私も可愛いと思うわよ」

 霊夢は逆に、服の効果があってか、白い歯を見せながら笑うその仕草は、格好良かった。

「じ、じゃあ……その、お願いしよう……かな?」
「分かりましたぁ! それじゃあ、作って来ます!」
「あ……逃げたわね」

 文は敬礼し、速攻で二人の視界から消えた。
 霊夢は、結局とどめを刺せなかったことに、小さく舌打ちした。

「あの、霊夢」
「んー?」
「今日はありがと」
「お礼を言うなら賽銭箱へ」
「お金持ってないよ」
「でしょうね」

 互いに、小さく笑った。
 結局、霊夢は予備の巫女服を一着だけリグルにあげた。
 少し遠慮はしていたものの、最終的には霊夢が強引に押し付けるようにして渡した。
 リグルは、良い笑顔でお礼を言って帰って行った。





◇◇◇





「リグル、女の子っぽいね」
「リグル、お前ってこんなにも女の子だったんだな」
「見事な女の子ね。リグル」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁん!」

 次の日、リグルは新聞を読んだ魔理沙やらいろんな人物に女の子だね、と言われた。
 それもそうだろう。
 新聞の一面には、リグルが純白のショーツとさらしのみの姿で、綺麗に写っていたのだから。やはり主にショーツが、衝撃的だったようである。
 リグルは泣きながら、味方になってくれるだろうかつ、事情を知っている唯一の人物、霊夢の元へ向かった。

「霊夢ぅ~」
「うん、立派に可愛い女の子ね」
「ふわぁぁぁぁぁん!?」
こちらでは20回目の投稿です。喉飴です。
リグルは可愛い女の子、そんなイメージがあります。
巫女服リグル、可愛いと思うのです。
それでは、読了ありがとうございました。
少しでも楽しんで下さったなら、幸いです。
喉飴
http://amedamadaisuki.blog20.fc2.com/
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コメント



0.3080簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
これを読み終わって落ち着こうと思い、煙草を手にとって火をつけようとするも興奮してなかなか火が付かなかった。
4.100名前が無い程度の能力削除
衣装を交換した二人やショーツリグルを想像できない自分が悔しい!!
6.60名前が無い程度の能力削除
う~ん。ネタはどうあれ、まだ素材段階な感じがします。
短めにサッパリとやりたかったのであれば、序盤部分等々削れる所もあったのではと。
料理の本を見て「これが作りたい!」とノリノリで、材料にも凝って本格的に用意したけど、調理が超大味という感じでしょうか。
とりあえず巫女リグルはGJと言わざるをえないです。あとリグル服霊夢。
9.100名前が無い程度の能力削除
その文々。新聞一部ください!
17.80名前が無い程度の能力削除
むしろ可愛くないリグルなんて想像出来ません><
21.100名前が無い程度の能力削除
巫女服リグル!巫女服リグル!ついでに純白のショ(リグルキック
30.100謳魚削除
霊リグフラグですね分かr(ry
36.100名前が無い程度の能力削除
喉飴さんの作品はエッセンスが凝縮されていて大好物です
45.100奇声を発する程度の能力削除
誰かイラスト書いてください!!!!
51.80名前が無い程度の能力削除
ええい、文々。新聞はどこで買える!?
54.100名前が無い程度の能力削除
>>3と俺の状況があまりにシンクロし過ぎてて吹いたw
手が震えるww
55.無評価喉飴削除
>>3様
楽しんでもらえて、良かったですw

>>4様
恥じらうリグルなら、多分みんな想像出来ます!

>>6様
貴重な御意見ありがとうございます。
今後、参考にさせていただきます。

>>9様
どうぞ! 無料ですよ。

>>17様
リグル可愛いですよね。立派な女の子です。

>>21様
恥ずかしそうに頬を染めながら、キックするリグルが幻視出来ました。

>>謳魚様
流石です。良く分かっていらっしゃる!

>>36様
ありがたいお言葉です。
そう言って貰えると、本当に嬉しいです。

>>奇声を発する程度の能力様
巫女服リグル絵、ありそうで無いですねw

>>51様
今回特別無料で配っています。

>>54様
まさかのシンクロですかw楽しんでもらえて、良かったです。
59.100名前が無い程度の能力削除
リグルきゅんなんて呼んでごめん
85.80ミスターX削除
紫「どうして『霊夢の着替えシーンがない』のよぉォォォ~~~~~っ!!!」
文「載せたら私が死ぬからです」